説明

石炭燃焼公共施設のためのアンモニア酸化触媒

アンモニア(NH)の注入による窒素酸化物(NOx)の選択的触媒還元(SCR)に供した煙道ガスから過剰のアンモニアを酸化で除去する方法が記述される。本発明の方法は、金属酸化物、たとえばチタニア上貴金属及びバナジアの二次触媒を組み込んで、二酸化硫黄(SO)量を維持しつつアンモニア及び一酸化炭素(CO)の両方を酸化せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア(NH)の注入による窒素酸化物(NOx)の選択的触媒還元(SCR)に供した煙道ガスから過剰のアンモニアを触媒酸化で除去する方法に関する。本発明は、更に残存アンモニアを、飛灰上に付着する前に煙道ガスから除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界中の家庭及び事業で使用される多くの電力は、ボイラーで化石燃料(即ち石炭、石油、またはガス)を燃焼させる発電所で作られる。その結果の熱い廃ガス(または時に「煙道ガス」)はガスタービンを回転しまたは水を沸騰させて水蒸気として水蒸気タービンを回転させ、そしてこのタービンが発電機と協同して電力を作る。次いで煙道ガス流は空気予熱器、例えば回転車熱交換器を通過し、そこで煙道ガスの熱が流入する空気流に移り、この空気が燃焼器に流れる。部分的に冷却された煙道ガスは空気予熱器から廃ガス煙突に向かう。
【0003】
この煙道ガスは、石炭を一次燃料源として使用する場合、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)及びスス粒子のような汚染物を含む。これら汚染物すべての大気への放出は煙道ガス成分量を厳しく制限する州及び地方の法令に規制されている。
【0004】
環境法令によって必要とされる発電所からのNOx排出量の低減に適合するために、多くの化石燃料火力発電機装置は選択的触媒低減(SCR)技術または選択的非触媒低減(SNCR)技術を備えつつある。SCRにおいて、使用されている最も普通の方法は、アンモニアを反応させて窒素酸化物を低減する酸化バナジウム触媒の存在下にアンモニアまたは尿素に基づく試剤を注入することである。SCRは一般的にはSNCRより低温で運転される。SCRシステムは典型的には300−450℃の範囲の煙道ガス温度で運転される。特許文献1はある公知のSCR装置を例示する。
【0005】
SNCRの場合、使用される最も普通の方法は、アンモニアまたは尿素に基づく試剤を上流炉に注入して、触媒を使用せずに窒素酸化物を減じるものである。このSCNRは850−1150℃の範囲の煙道ガス温度で運転される。特許文献2、3、及び4は公知の種類のSNCR法を例示する。
【0006】
石炭燃焼発電所において、SCR及びSNCRシステムに対するアンモニア注入系は、典型的には煙道ガス流の高温及び高粉塵域に設置され、典型的には灰分捕集前にある。SCR及びSNCR技術に関するある共通の問題は、アンモニアスリップとして知られる残存アンモニアが下流の各部分及び工程、例えば空気予熱器の汚れ、飛灰の汚れ、及びアンモニアガスの大気への放出のような悪い影響を与えないことである。アンモニアスリップの問題は、SCR触媒表面の劣化並びに煙道ガス速度、温度、及びアンモニア及びNOxの濃度の変動として更に悪化する。
【0007】
現状の方法の更なる問題は、増量アンモニアの注入がより効果的に窒素酸化物を除去するが、過剰なアンモニアは煙道ガス中のアンモニアスリップを増大させるであろう。石炭火力発電所において、この過剰なアンモニアは更に生じる石炭に基づく飛灰を汚染する。
【0008】
天然ガスまたは石油に基づく発電所でさえ、消費されたアンモニアの環境への影響は望ましくない。EPAはNOxの低減を狙った種々の規制を主導し、化石燃料の燃焼がNOx放出の主たる原因であることを決定した。これらの規制は、EPAにより、クリーンエアー条例修正1990年の主題IVのもとに確立された。1997年7月、EPAは新原料行動基準において他の変更を提案した。この修正はSCR技術で達成できる成果に基づくものであった。
【0009】
簡単に上述したように、ボイラーなどからの排気ガスの処理は次の欠点を呈する:
(1)いくらかのアンモニアは除去されずに処理したガス中に残る;
(2)NOx分解速度は低い;
(3)アンモニアを多量に消費する。
【0010】
この欠点(1)及び(2)は関連がある。
【0011】
例えばNOxの分解速度を高めるためにアンモニア供給量を増大させると、処理したガス中の残存アンモニアの割合は高くなるであろう。この残存アンモニアは大気へ放出してもよい現存法令の許容量を越える可能性がある。かくして公知の方法の窒素酸化物分離効率は、大気へ放出できる未反応のアンモニア量によって制限される。
【0012】
その他、燃焼装置の負荷の変動は、アンモニアを導入する地点における温度を、最適温度範囲から逸脱する温度へ変化させ、これが順次分解速度を減じて残存アンモニアの割合を増大させがちである。残存アンモニアは、少割合でさえ、廃ガス中の硫酸含有物と迅速に反応して酸性硫酸アンモニウムを生成する。この生成物は比較的低温領域において熱交換器表面に、例えば空気予熱器及び関連するボイラー部分の加熱表面に付着して、圧損の上昇をもたらし、燃焼装置の運転を妨害し、そして時に装置材料を腐食させるであろう。
【0013】
上述したように、処理した廃ガス中に除去されずに残るアンモニアは実際の運転では主たる障害となる。結果として、アンモニア供給量に上限が存在し、当然NOx分解速度は低下する。これは高温無触媒脱窒素の実施には問題であった。更に高温領域に導入されるアンモニアはそれ自体を分解する併発反応を受け、アンモニアの過剰な、またはNOx分解反応の等量以上の消費という欠点(3)をもたらす。この傾向は、アンモニア注入量を分解速度の増大を予想して増量するにつれて深刻になるであろう。これは通常達成すべきNOx分解速度に対する他の制限因子であった。
【0014】
NOx及びアンモニアの最大に可能な反応に対して、アンモニア及びNOxを効率よく反応させることは重要である。この反応が完結するならば、NOxまたはアンモニアのいずれか(または両方)は、煙突から大気へ放出できる。NOx及びアンモニアの両方は、汚染物として分類され、その放出は法令限界内に維持しなければならない。更に空気予熱器の冷端の温度に依存して、過剰なアンモニアスリップは、硫酸/硫酸水素アンモニウムの生成及び/または飛灰の凝集のために隣る空気予熱器の加熱要素間の空間を閉塞させる原因となりうる。これは熱交換器の圧損の増大、装置の腐食、そして結果として長期の不安定な運転及び他の欠点をもたらす。
【0015】
更に多くの石炭火力発電所は、集められた飛灰を、商業的用途(即ちコンクリート混合物に対する軽量凝集物)のために更に加工する購入者に売ることによって飛灰を処理している。石炭火力発電所で生じる飛灰は、通常ポゾラン混合物として及びセメントの部分的代替物としてコンクリート向けに使用される。飛灰はコンクリート及びモルタルの高アルカリ性条件下に反応して更なるセメント質化合物を生成するアルミノーシリケートガラスからなる。飛灰は高性能コンクリートの必須成分である。飛灰は密度の増大及び長期の強度、透過性の低下及び改良された耐化学品性を含むコンクリートに有利な多くの特性に寄与する。また飛灰は新鮮なコンクリートの作業性も改善する。
【0016】
アンモニアで汚れた飛灰をポルトランドセメントに基づくモルタル及びコンクリートの用途に使用する場合、アンモニウム塩は水に溶解してNHとなる。セメントのアルカリでもたらされる高pH(pH>12)条件下では、このアンモニウムカチオン(NH)は溶解したアンモニアガス(NH)に転化される。アンモニアガスは新鮮なモルタルまたはコンクリート混合物からコンクリート作業者の空気中へ蒸発する。アンモニアガスの発生速度は、アンモニアの濃度、混合強度、露出表面積、及び大気温度に依存する。発生するアンモニアはコンクリートの品質(強度、透過性など)に認められるほどの影響を示さないと信じられているが、アンモニアガスは少しの不快感から潜在的な健康障害までの範囲の影響をもたらす。人間の鼻は5−10ppmの量でアンモニア臭を検知する。OSHA閾値及び許容限界は時間重量平均(TWA)(8時間)及び短期露呈限界(STEL)(15分)に対してそれぞれ25及び35ppmに設定されている。150−200ppmのアンモニアガス濃度は一般的な不快感を与える。400−700ppmの濃度では、アンモニアガスは深刻な痛みを引き起こす。500ppmでは、アンモニアガスは健康に対して直接危険である。2000ppmでは数分以内に死亡に至る。
【0017】
OSHAの露呈限界以外、飛灰中のアンモニアの許容量に関する規制、工業またはASTMの基準、または指針は現在存在していない。しかしながら、工業での経験に基づけば、100mg/kg以下のアンモニア濃度の飛灰は、混合済みコンクリートで感じる臭いを与えないようにみえる。現場及び天候状態に依存して、100−200mg/kgの範囲にあるアンモニア濃度の飛灰は、不快なまたは不安全なコンクリート施工及び仕上げ作業環境をもたらす。200mg/kgを越えるアンモニア濃度の飛灰は、混合済みコンクリートの用途に使用する場合に許容できない臭いを生じるであろう。
【0018】
アンモニアを含んだ灰を用いて作ったコンクリートから発生するアンモニアガスへの人間の露呈による危険に加えて、アンモニアを含んだ灰の、石炭火力発電所での埋立て及び池への廃棄は、人間及び環境に潜在的な危険を誘発する。飛灰中のアンモニウム塩化合物は、非常に可溶性である。水と接触したときにアンモニウム塩は水中にしみだし、地下水及び付近の河川に入り、潜在的な環境被害、例えば地下水汚染、魚類死、及び富栄養化の原因となりうる。アンモニアガスはアルカリ性飛灰、例えば西部亜瀝青炭の燃焼で生じるものが湿ったときにも発生しうる。アルカリ性飛灰の、水調整及び湿潤による廃棄は、発電所作業員をアンモニアガスにさらすことになろう。
【0019】
クリグモント(Krigmont)らの特許文献5は、SNCR処理、次いでSCR処理を用いて煙道ガス流中のNOxを減じる制御法を開示する。このクリグモントらの方法は、あるアンモニアスリップ規制にあった、そして更なるアンモニアをSCR段階で注入する、SNCR段階におけるNOxの除去を最大にする試みである。
【0020】
マンスア(Mansour)らによる特許文献6は、SNCR/SCRの組み合わせ法を開示している。この方法では、SCRを一次NOx還元に用い、SCR放出物のNOx含量が予め選択した設定最高値を越えた時に始めてNHをSNCR域に注入するものである。
【0021】
ミンカラ(Minkara)らのよる特許願(米国第2003/0202927号)は、石炭火力発電所及び他の炭化水素燃料を使用する工場からの、アンモニアの濃度及び放出を低減する方法を開示している。ミンカラらの方法は、アンモニア酸化触媒、特に二酸化マンガンを、SCRシステムの下流に付加して、アンモニアを煙道ガス中に存在する残存ガスと反応させることにより望ましくないアンモニアスリップを除去している。
【0022】
上述したように、窒素酸化物のアンモニアによるSCRがよく働き、NOxを最低値にするためには、過剰のアンモニアの使用できることが好適である。しかしながら、アンモニアの使用量がSCRを通してNOxを効果的に除去するのに十分である場合、過剰のアンモニアのいくらかが未変化のまま触媒を通り抜けて煙道ガス中にアンモニアスリップとして排出されれば、排出ガス中の有毒反応性ガスという問題が生じる。特に石炭火力発電所の煙道ガスに出る過剰なアンモニアによってもたらされる他の大きな問題は、そのアンモニアがセメントと混合してコンクリートを作るために使用することが意図された飛灰を汚染することである。かくして、一次SCR触媒の下流でアンモニアスリップを最小にする安全で有効な方法が必要とされている。
【特許文献1】米国特許第5104629号
【特許文献2】米国特許第3900554号
【特許文献3】米国特許第4208386号
【特許文献4】米国特許第4325924号
【特許文献5】米国特許第5233934号
【特許文献6】米国特許第5510092号
【発明の開示】
【0023】
本発明は、アンモニアを、窒素酸化物の還元用触媒とともに、選択的触媒還元剤として使用する、煙道ガス中のアンモニア除去法に関する。本発明の方法は、アンモニアを煙道ガスに添加して窒素酸化物をSCR条件下に還元し、そして未反応のアンモニアを、金属酸化物担体上貴金属及びバナジアの二次触媒で酸化して煙道ガス中のアンモニア含量を減じることを含んでなる。本発明の二次触媒は、一次SCR触媒の下流に位置し、放出される煙道ガス中のアンモニア及びCOの濃度をSOの酸化なしに減少せしめる。
【0024】
本発明の一つの観点は、石炭火力発電所からの飛灰を汚染しないであろう且つ石炭火力発電所及び他の炭化水素燃料を使用する工場における望ましくないアンモニア放出値を更に減じるであろう程度までアンモニア濃度を減ずる商業的に実行可能な方法を提供することである。
【0025】
本発明の他の観点は、比較的二酸化硫黄酸化を起こさせないで、アンモニア及び一酸化炭素の両方を酸化する方法を提供することである。
【発明の詳細な開示】
【0026】
煙道ガス及び排気ガス、例えば石炭火力発電所のガスタービンエンジンで発生する廃ガスから窒素酸化物の放出を低減するために、窒素酸化物を含む排気ガス流にアンモニアを添加し、ついでこのガス流を昇温下に適当な触媒と接触させて、窒素酸化物のアンモニアでの還元を触媒させる。窒素酸化物のアンモニアでの還元による窒素及び水の生成反応は、好ましくはアンモニアの、窒素酸化物酸素による酸化に帰結する適当な触媒により触媒される。かくしてこの方法はしばしば窒素酸化物の「選択的」触媒還元(SCR)として言及される。窒素酸化物のSCRは次の反応式で記述できる:
4NO + 4NH + O → 4N + 6HO (1)
4NO + 4NH + O → 3N + 6HO (2)
SCR法で用いる触媒は、理想的には高温使用条件、例えば400℃またはそれ以上において、水熱条件下に、及び硫黄化合物の存在下に良好な触媒活性を保持しうるべきである。高温及び水熱条件は、ガスタービンエンジン排気ガスの処理の場合のようにしばしば実際に遭遇する。硫黄または硫黄化合物の存在は、石炭火力発電所の及び含硫黄燃料、例えば燃料油などを用いるタービンまたは他のエンジンの排気ガスを処理する際にしばしば当てはまる。
【0027】
理論的には、SCR法において、存在する窒素酸化物と完全に反応するのに必要とされる化学量論量の過剰量でアンモニアを与えて、反応の完結を有利に駆動し、且つアンモニアのガス流への不適切な混合を克服することは望ましいであろう。しかしながら実際には、未反応のアンモニアの触媒からの放出がそれ自体大気汚染問題を生むから、普通化学量論量以上のかなり過剰なアンモニアを付与しない。そのような未反応アンモニアの放出は、アンモニアが化学量論量または準化学量論量でしか存在しない場合でさえ、不完全な反応及び/またはガス流中でのアンモニアの貧弱な混合の結果として、起こりうる。高アンモニア濃度の通り道は、貧弱な混合でガス流中に形成され、複数の細いガス流路が平行して延びる耐火物を含んでなる一体型ハニカム基材担体を含む触媒を使用する場合には、粒状触媒床の時と異なって流路間のガスの混合機会がないから、特に関心事である。
【0028】
使用する還元触媒は、バナジウム及び酸化タングステン含有二酸化チタン触媒とは別に、イオン交換ゼオライト、例えばZSM−5、モルデナイト、及びファウジャサイトでもある。使用できる他のSCR触媒は、本明細書に参考文献として引用されるバイルーヌ(Byrne)の特許(米国特許第4961917号)に開示されているごときゼオライト触媒である。
【0029】
バイルーヌ特許の従来法に示されるように、高いシリカとアルミナ比の使用はゼオライトの耐酸性を高め、ゼオライトの、酸硫黄被毒に対する耐性を高めることが知られている。一般にはシリカとアルミナ比は最小10以上でよく使用される。アンモニアによるNOx還元が90%以上の高転化効率は少なくとも20のシリカ対アルミナ比を持つ新鮮な銅担持ベータゼオライトで達成され、75%以上の転化効率はシリカ対アルミナ比が46の新鮮な銅担持ZSM−5ゼオライトで達成されている。しかしながらシリカ対アルミナ比が8及び30の新鮮な銅担持USYゼオライトは、それぞれNOx転化率85%及び39%を与えた。これは少なくともUSYの場合、シリカ対アルミナ比が30よりもかなり低くてよいことを示唆する。
【0030】
しかしながら、短期硫黄被毒への耐性及びSCR法及びアンモニアの酸素による酸化の両方における高度活性の維持能力は、反応物分子NO及びNH並びに生成物分子N及びHOの入りと出を可能にするのに十分な大きさのポアサイズも示すゼオライトによって与えられることが分かった。硫黄酸化物分子存在下のポア系は短期の硫黄被毒に由来し及び/またはサルフェート付着は長期の硫黄被毒に由来するものである。適当なサイズのポア系はすべての結晶学的三次元において互いに連結している。同業者には十分公知のように、ゼオライトの結晶構造は、多かれ少なかれ規則的に反復する連結、交叉などを有する複雑なポア構造を示す。特別な特性、例えば与えられた寸法の直径または横断面形状を有するポアは、これらのポアが他の同様のポアと交叉しないならば一次元であると言われる。ポアが与えられた平面内だけで他の同様のポアと交叉するならば、その特性のポアは(結晶学的に)二次元で相互に連結されていると言われる。ポアが同一面及び他の面の両方に位置する他の同様のポアと交叉するならば、そのような同様のポアは三次元で相互に連結されている、すなわち「三次元」であると言われる。非常にサルフェート被毒に耐性があり且つSCR工程及びアンモニアの酸素での酸化の両方に良好な活性を示し、また高温、水熱条件、及びサルフェート被毒にあったときでさえ良好な活性を維持するゼオライトは、少なくとも約7オングストロームのポア直径を示し且つ三次元で相互に連結しているゼオライトであることが発見された。バイルーヌ特許は、三次元において少なくとも直径約7オングストロームのポアが相互に連結しているものはサルフェート分子がゼオライト構造中を良好に移動でき、このためにサルフェート分子の触媒からの遊離が可能となり、反応物NOx及びNH分子並びに反応物NH及びO分子に対して多数の存在吸着点を開放することを開示している。上記基準に適合するゼオライトはいずれも本発明の実施に使用するのに適当である。これらの基準に適合する特別なゼオライトはUSY、ベータ、及びZSM−20である。他のゼオライトも上述の基準を満足しうる。
【0031】
一次SCR触媒は、窒素酸化物を還元する工業で公知の触媒形であってよい。窒素酸化物の還元の目的に対しては、押出しの均質な触媒を有することが好適である。あるそのような具体例はバナジア及びチタニア及び随時タングステンの混合物を含む押出された均質なハニカム触媒である。そのような触媒は工業ではよく知られており、約5−約10ppmのアンモニアスリップ値を与える。触媒で被覆されたハニカムまたはプレートも使用できる。
【0032】
本発明は一次SCR触媒から下流に位置する二次アンモニア酸化触媒を含む。このようにしてSCR触媒を通り抜けたアンモニアスリップは、それが二次触媒を通流するにつれて酸化される。この二次触媒は、アンモニアを非常に低酸素量(約2%)の煙道ガス条件下に低値まで減じ、CO値を減じ、そしてSO値を実質的に維持することを含めて、いくつかの有利な特徴を有する。アンモニアの酸化は次の反応で起こる:
4NH + 3O → 2N + 6HO (3)
2NH + 2O → 3NO + 3HO (4)
4NH + 5O → 4NO + 6HO (5)
本明細書に開示される本発明は、非常に有効な二次触媒、すなわちアンモニア酸化触媒をSCRシステムの下流に付加して、望ましくないアンモニアスリップを煙道ガスに存在する残存酸素と反応させることによって除去する。驚くべきことに、ある二次触媒は例え煙道ガス中の残存酸素が少量だけであっても、この目的に使用できることが発見された。約300−450℃で変化する温度において、アンモニアの高転化率はごく少量のNOxを生成するだけで達成できる。
【0033】
本発明に従って処理できる排気ガス流は、しばしば固有に実質的な量の酸素を含む。例えばタービンエンジンの典型的な排気ガスは、約2−15容量%の酸素と約20−500容量ppmの窒素酸化物、普通NOとNOの混合物を含む。普通では存在するすべての窒素酸化物を還元するために必要とされる化学量論量以上の過剰なアンモニアを使用したときでさえ、残存アンモニアを酸化するのに十分な酸素が存在する。しかしながら化学量論量より非常に大過剰でアンモニアを使用する場合、或いは処理すべきガス流が酸素含量に関して不足しているまたは低量である場合には、残存する過剰のアンモニアを酸化するのに適当な酸素が二次触媒域に存在することを保証するために、一次触媒域と二次触媒域との間で酸素含有ガス、普通は空気を導入してもよい。
【0034】
SCR触媒から下流に配置された二次アンモニア酸化触媒は次の基準を有することが望ましい:
(a)煙道ガス温度、酸素濃度、及び流速においてアンモニアを酸化し得る材料;
(b)硫黄酸化物及び窒素の存在下に機能しうる材料;
(c)アンモニアの酸化の副反応で窒素酸化物を最少でしか生成しないような材料;
(d)アンモニアの出口値が2ppmまたはそれ以下となるようにNOxの低減を向上させるような材料;
(e)CO量を減じるような材料;そして
(f)SO量を維持するような材料。
【0035】
二次触媒は窒素酸化物を還元するSCR触媒から下流に位置する。本発明の二次触媒は金属酸化物担体上貴金属及びバナジアを含んでなる。チタニアは好適な金属酸化物担体であるが、アルミナ、シリカ、アルミナーシリカ、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化ハフニウム,酸化ランタンなどを含む他の金属酸化物も担体として使用できる。図2に示すように、実験データは、アンモニアの窒素への転化に対して、チタニアがアルミナよりも選択的であることを示した。チタニアはアルミナ基材よりも少量の窒素酸化物しか生成しないように見える。
【0036】
貴金属、例えば白金、パラジウム、ロジウム、または金が使用できる。白金は最も活性な貴金属であることが分かった。従って白金は好適である。貴金属は1つまたはそれ以上の貴金属の化合物及び/または錯体をチタニアバルク担体材料上に分散させることによりチタニア基材上に含ませうる。本明細書で使用するごとき、「化合物」とは、焼成時にまたは触媒の使用時に分解し、またはさもなければ必ずしも必要ないがしばしば酸化物である触媒活性形に転化する触媒的に活性な成分(または「触媒成分」)の塩、錯体などを意味する。1つまたはそれ以上の貴金属触媒化合物の化合物または錯体は、担体材料を湿らすまたはそれにしみこむ、触媒材料の他の成分と悪い反応をしない、そして加熱及び/または真空の適用時に揮発または分解によって触媒から除去できるいずれかの液体に溶解または懸濁させることができる。一般に経済性及び環境面の観点から可溶性化合物または錯体の水溶液は好適である。例えば、適当な水に可溶な白金族金属化合物は、クロロ白金酸、アミン可溶化水酸化白金、塩化ロジウム、硝酸ロジウム、ヘキサミン塩化ロジウム、硝酸パラジウム、または塩化パラジウムなどである。この化合物含有液体を触媒のバルク担体チタニア粒子のポア中に含浸させ、この含浸させた材料を乾燥し、好ましくは焼成して液体を除去し、白金族金属を担体材料中へ結合させる。いくつかの場合には、触媒を使用するまで且つ高温の排気ガスに供するまで、(例えば結晶水として存在しうる)液体の除去は完結してなくてもよい。焼成工程中、または少なくとも触媒使用の初期相中、そのような化合物は白金族金属またはその化合物の触媒活性形に転化される。バナジウム成分をチタニア担体材料に含ませる場合も類似した手法が行われる。例えばバナジウム塩、例えばシュウ酸バナジルはよく知られており、バナジウムのチタニア担体への導入に使用できる。更にチタニア担体材料の代わりにいずれかの有用な金属酸化物担体も使用できる。
【0037】
典型的には、チタニア上貴金属/バナジア形の二次触媒を基材に適用する。二次触媒に対する基材の構造は、一次触媒のように技術的に公知のいずれの形であってもよい。典型的には基材は、複数の細い平行な、長く延びるガス流路を有する1つまたはそれ以上の耐火物を含んでなる「ハニカム」基材担体としてしばしば言及される有孔体を含んでなる。そのような基材担体は技術的によく知られており、セラミックまたは金属のようないずれか適当な材料から作られていてよい。コーディアライトハニカムは好適である。そのようなハニカムは約11−約64個の別個の通路を含んでいてよく、64個の通路が好適である。
【0038】
二次触媒は粒状物またはセラミックまたは金属構造上のコーティング、例えば上述したハニカム構造の形であってよい。本発明の触媒は、粒状触媒の充填床としてまたは成形体、例えばプレート、サドル、チューブなどとして使用するために、いずれか他の適当な形態の押出し物、ペレット、錠剤、または粒状物の形をしていてもよい。
【0039】
触媒を有孔基材上に付着させるために種々の付着法が技術的に公知である。触媒を有孔基材上に付着する方法は、例えば触媒を液体媒体中でスラリーにし、このスラリーに有孔基材を浸す、またはスラリーを基材上に噴霧することなどによりスラリーで濡らすことを含む。チタニア上貴金属及びバナジアの触媒成分は、典型的には基材、例えばハニカム基材に対して約1.0−約2.5g/inの量で存在する。貴金属の量は一般に金属酸化物担体、例えばチタニアに対して約0.1−2.0重量%の範囲である。貴金属の好適な量は0.7−1.5重量%の範囲であるだろう。バナジアは普通金属酸化物担体の約1.0−10重量%の量で存在しよう。
【実施例1】
【0040】
本実施利では、約90m/gの表面積のチタニア担体上に含浸された種々の金属酸化物を含んでなるサンプル触媒を調製した。金属酸化物は、V、MnO、CuO、ZnO、及びMoOであった。
バナジウム/チタニア触媒は次のように調製した。
1.水中13重量%シュウ酸バナジルの溶液を水7.28gで更に希釈した。
2.ミレニアム(Millenium)からのチタニア193.7gにシュウ酸バナジル溶液142.86gを含浸させた。
3.この含浸させたチタニア粉末を乾燥し、400℃で2時間焼成した。
【0041】
他のすべての金属酸化物触媒もこれと同一の方法で調製した。表1は原料の重量を示す。
【0042】
【表1】

【実施例2】
【0043】
本実施例では、チタニア上に貴金属及びアルミナ上に貴金属を含んでなる触媒を調製した。
【0044】
ここで使用したチタニア単体は実施例1のものであった。アルミナ担体はアルコア(Alcoa)からのSBA150を含んでなった。このアルミナ担体は約150m/gの表面積を有した。
【0045】
Pt“A”18.2%溶液(モノエタノールアミンに溶解したヘキサヒドロキシ白金酸二水素)1.89gを水111.34gで希釈した。このPt溶液をチタニア205,84gに含浸させた。ついで粉末を乾燥し。400℃で2時間焼成した。他の触媒も同一の方法で調製した。使用した原料の量を表2に示す。
【0046】
【表2】

【実施例3】
【0047】
本実施例では、実施例2のPM含浸アルミナ粉末を用いるハニカム触媒の調製を記述する。
【0048】
実施例2のPM含浸アルミナ粉末のそれぞれ41g、水49g、及び酢酸10gを粒子寸法10ミクロンまたはそれ以下までボールミルで粉砕することによりスラリーを調製した。ついで64cpsiのハニカムを、焼成後1.7g/inの付加量になるようにスラリーでコーティングした。ついでこのハニカムを乾燥し、500℃で1時間焼成した。
【実施例4】
【0049】
実施例2のPM含浸チタニア粉末を用いるハニカム触媒の調製を記述する。
【0050】
実施例2のPM含浸アルミナ粉末のそれぞれ35g及び水65gを粒子寸法10ミクロンまでボールミルで粉砕することによりスラリーを調製した。ついで64cpsiのハニカムを、焼成後1.7g/inの付加量になるようにスラリーでコーティングした。このハニカムを乾燥し、400℃で1時間焼成した。
【実施例5】
【0051】
実施例3及び4に記述したハニカム触媒の、アンモニア転化に対する性能を、CO 25ppm、アンモニア15ppm、酸素15%、水10%、及びNOx 2.5ppmを含むガス流で評価した。アンモニア及びCOの転化率を300℃−500℃で記録した。
【0052】
転化率%は方程式1で計算した:
転嫁率%=[(NH in − NH out)/ NH in]x100(1)
【0053】
NHはエア・テク・インスツルメンツ(Air Tech Instruments)からのフォアコースチック(phoaccoustic)多種ガス分析器1312型を用いて測定した。NOx分析器はカリフォルニア・アナリティカル・インスツルメンツ(California Analytical Instruments)からの600HCLD分析器であった。
【0054】
図1は実施例1の粉末から調製したハニカム(実施例4)を使用したときのアンモニア転化率%に対して生成したNOx量を例示する。図1からは、酸化バナジウム、酸化亜鉛、及び酸化モリブデンがNOxを非常に少量しか生成しないで、アンモニアを窒素に転化するのに非常に選択的であることが分かる。一方酸化マンガン及び酸化銅はアンモニアの転化に関しては活性があるが、アンモニアの高%がこれらの2つの触媒でNOxに転化した。
【0055】
図2は実施例2で調製したロジウム粉末触媒から実施例3及び4において調製した各ハニカム上にガス流を通すことによって生じた出口NOxとアンモニア転化率の結果をグラフにしている。分かるように、チタニア触媒上ロジウムは、アンモニアをより高転化率で窒素に転化するのに実質的により選択的であり、アルミナ上ロジウム触媒はNOx成分をより多量に生成した。
【実施例6】
【0056】
実施例1で調製したようなチタニア上バナジアの触媒粉末を、実施例4に記述したようなハニカム上にコーティングした。このコーティングしたハニカム上に白金2g/ftを含浸させた。Pt処理したハニカムを種々の温度でアンモニア転化に関して試験した。試験結果は図3の通りである。図3に示すように、温度が300℃から500℃へ上昇するにつれて、アンモニアの転化率は20%以上から80%以上まで増加し、一方一酸化炭素は二酸化炭素への転化割合が300℃で丁度20%以下及び450℃で50%以上であった。しかしながら温度が上昇するにつれて、生成するNOxの量はかなり増加した。従ってアンモニア酸化の温度を、500℃以下、好ましくは約300−450℃、より好ましくは300−400℃に保つことが望ましい。
【0057】
上記は、本発明を行う最良の方式並びにその方式を構築し且つ使用する方法を記述する。しかしながら本発明は、全く同等である上述したものからの改変や別の構築に対しては敏感である。結果として、本発明を本明細書に開示した特別な具体例に限定することは意図してない。これに対して、本発明は、特許請求の範囲で一般的に記述したような、本発明の主題を特に指摘し且つ明確に請求した本発明の精神及び範囲に入るすべての改変及び別の構築を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】種々の金属酸化物触媒のアンモニア転化率に対しての選択率を比較するグラフ。
【図2】チタニア及びアルミナ担体を用いるアンモニア転化率に対しての選択率を比較するグラフ。
【図3】本発明による二次触媒を用いるアンモニア及びCOの、種々の温度(℃)における転化率を比較するグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.アンモニアを煙道ガスに添加しそして一次触媒の存在下に窒素酸化物を還元して、NOx含量が該煙道ガス以下となった未反応のアンモニアを含んでなる、処理した煙道ガスを生成させ;
b.該処理した煙道ガスを二次アンモニア酸化触媒と接触させてアンモニアの量を減じる、但し該二次触媒が貴金属及びバナジアを金属酸化物担体上に含んでなる、
工程を含んでなる、アンモニアを選択的触媒還元剤として窒素酸化物を還元するための一次触媒と共に使用する煙道ガス中のアンモニアの除去法。
【請求項2】
該金属酸化物担体がチタニアである、請求項1の方法。
【請求項3】
該貴金属が白金、パラジウム、ロジウム及び金からなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項4】
該貴金属が白金である、請求項1の方法。
【請求項5】
該二次触媒をハニカム形の基材上に適用する、請求項1の方法。
【請求項6】
該処理した煙道ガスを約300−約450℃の温度で二次触媒と接触させる、請求項1の方法。
【請求項7】
該二次触媒と接触させる前に、酸素源を該処理した煙道ガスに添加する、請求項1の方法。
【請求項8】
該二次触媒が該基材の立方インチ当り約1.0−約2.5gの範囲で存在する、請求項5の方法。
【請求項9】
該一次触媒がチタニア上バナジア及び随時酸化タングステンである、請求項1の方法。
【請求項10】
該一次触媒が均質な押出し物である、請求項9の方法。
【請求項11】
該煙道ガスが石炭の燃焼に由来する、請求項1の方法。
【請求項12】
該貴金属が白金である、請求項2の方法。
【請求項13】
該二次触媒をハニカム形の基材上に適用する、請求項2の方法。
【請求項14】
該処理した煙道ガスを約300−約450℃の温度で二次触媒と接触させる、請求項2の方法。
【請求項15】
該二次触媒と接触させる前に、酸素源を該処理した煙道ガスに添加する、請求項2の方法。
【請求項16】
該二次触媒が該基材の立方インチ当り約1.0−約2.5gの範囲で存在する、請求項13の方法。
【請求項17】
該貴金属が該金属酸化物担体に比して約0.1−2.0重量%の量で存在する、請求項1の方法。
【請求項18】
該バナジアが該金属酸化物担体の約1.0−10重量%をなす、請求項1の方法。
【請求項19】
該貴金属が該チタニアの約0.1−2.0重量%の量で存在する、請求項16の方法。
【請求項20】
該バナジアが該チタニアの約1.0−10重量%の量で存在する、請求項19の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−529787(P2008−529787A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556157(P2007−556157)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/003270
【国際公開番号】WO2006/088634
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(507166379)バスフ・カタリスツ・エルエルシー (4)
【Fターム(参考)】