説明

石炭燃焼煙道ガスフィルタ

フレームと前記フレーム上に取り付けられた布とを含むフィルタアセンブリであって、前記布が、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)、ポリ(イミドスルホン)およびそれらのブレンド物からなる群から選択される少なくとも1つのポリマー材料(P)を含む繊維(F)を含み、石炭燃焼煙道ガスを通過させるフィルタアセンブリ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全内容が参照により本明細書に援用される、2007年3月23日出願の米国仮特許出願第60/896,567号明細書の優先権を主張するものである。
本発明は、石炭燃焼からの煙道ガスの濾過に有用な、新規フィルタアセンブリおよびかかるフィルタアセンブリを組み込んだ濾過システムに関する。
【背景技術】
【0002】
世界の電力需要は2030年までに60%増加すると予期されている。活動中の石炭燃焼発電所の世界合計が50,000を超え、増加しつつある状態で、国際エネルギー機関(International Energy Agency)は、化石燃料が2030年までに依然としてエネルギー市場の85%の割合を占めるであろうと推定している。石炭は最も豊富な化石燃料であり、石炭燃焼発電所は世界中で使用される電気エネルギーのおよそ40%を提供している。世界組織および国際機関は、化石燃料の燃焼の環境への影響を懸念している。化石燃料の燃焼は、燃料の不純物および化学組成のために酸性雨、地球温暖化および大気汚染に影響を及ぼす。
【0003】
石炭燃焼発電所運転の主要な副産物の1つ、石炭燃焼からの煙道ガスは、煙道ガス煙突を通って大気に排出される。煙道ガスは、二酸化炭素、窒素、酸素および水蒸気、ならびに窒素酸化物、硫黄酸化物、飛散灰、水銀および低レベルのウラン、トリウム、および他の天然産放射性同位元素などの、他の物質を含有する。空気の水素および窒素成分のために、炭素および硫黄の水素化物および窒化物もまた、シアン化水素(HCN)、硝酸硫黄(SNO3)、フッ化水素酸(HF)、塩酸(HCl)および多くの他の毒性物質をはじめとする他の化合物と一緒に、石炭の燃焼中に生成する。
さらに、大気中への窒素酸化物および硫黄酸化物の排出は、亜硫酸、硝酸および硫酸などの酸性化合物の形成につながる。
【0004】
石炭燃焼に関連した主な危険は、上記の化学的に攻撃的な煙道ガス中に同伴する固体粒子状物質の排出である。公衆衛生にとって危険であるかかる固体物質の例には、重力によって煙道ガスから容易に分離しない飛散灰、微細噴煙タイプ粒子、様々なタイプの煤煙、ダストなどが挙げられる。発電所は一般に、バグハウスとして一般に知られる、様々な布濾過材料を用いて煙道ガスから粒子状物質を除去する。煙道ガスは、布中へ、そしてそれを通って流れ、固体粒子状物質を内部に残す。バグハウスの運転資本コストは高いが、それらの効率は優れており、そのためそれらはより普及しつつある。しかしながら、バグハウスの製造のために使用される布の具体的な選択は、関係する効率およびコストに大きく影響を与え得る。
【0005】
バグハウスは、石炭燃焼プラントによって生成する煙道ガスの熱い、研磨性のおよび化学的に攻撃的な環境に長期間暴露されるので、それらの製造のために使用される材料はかかる環境に耐えることができなければならない。特に、それらは、燃焼した燃料および浸食性粒子の圧力に耐えるほど十分に強いものであるべきである。さらに、これらのフィルタはまた、費用効率が高く、腐食、高い熱、温度過渡および熱衝撃に耐える必要があろう。セメント工場は、それらがまた主燃料として石炭を一般に使用するので石炭燃焼発電所に関連したものと同様な環境問題を引き起こす。
【0006】
ルーマニア国特許第119125 B1号明細書は、冶金ガスに耐える、対角交差接続のポリフェニルスルホン繊維糸と250℃ほどに高い温度に耐える、ほぐれた局所的糸とを含む、かつ、良好な機械的特性を特色とする濾過織物を記載している。しかしながら、冶金ガスは、上記の化学的に攻撃的な石炭燃焼煙道ガスとは異なる。当業者は従って、石炭燃焼煙道ガスの特に攻撃的な環境のために、良好な耐熱性および機械的特性に加えて傑出した耐化学薬品性をとりわけ必要とする石炭燃焼煙道ガスフィルタに冶金ガスフィルタの使用を移す気にはならなかった。
【0007】
ポリフェニレンスルフィド(PPS)フィルタが、石炭を燃料とする発電産業においてフィルタシステムの一部として一般に使用される。他の材料もまた、熱ガスフィルタの製造のために使用される。例えば、オーストラリア国特許第2004202196号明細書は、たて糸方向にPPS糸と、よこ糸方向に、ポリアクリロニトリル、ポリイミドおよび/またはポリアクリロニトリル−ポリフェニレンスルフィド繊維でできた糸とを含む、石炭を燃料とする発電所用のバグフィルタを製造するための布を開示している。
【0008】
しかし残念ながら、石炭燃焼煙道ガスの濾過のために使用される場合、既存の熱ガスフィルタでは多数の欠点がある。例えば、ある種のポリマーの供給は非常に限定されているため、フィルタ製造業者は代わりの材料源から利益を得るであろう。さらに、ある種の布、とりわけPPS繊維でできたものは、石炭燃焼煙道ガスに関係するものなどの、酸性環境で酸化分解する。かかる材料がフィルタへ組み込まれるとき、酸化分解は究極的に、フィルタ孔の閉塞、気流の減少につながり、フィルタを交換するまでより頻繁なクリーニングが必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、高温においてさえも傑出した耐化学薬品性を同様に実現しながら、良好な引張特性、加水分解安定性、収縮抵抗および耐熱性を特色とする、石炭燃焼煙道ガスの濾過に好適な改良された濾過デバイスを提供する必要がある。かかるフィルタはさらに、繊維へ容易に造形できる材料でできているべきである。かかる材料の具体的な選択は、このように極めて重要である。さらに、上に説明されたように、選択された材料が、研磨性のおよび化学的に攻撃的な環境だけでなく高温にも耐えることが極めて望ましいであろう。
【0010】
本発明は、高温、厳しい化学および研磨環境での用途において特に好適とされる、引張特性、加水分解安定性、耐熱性、および傑出した耐化学薬品性などの優れた特性を備える新規のフィルタアセンブリをここで利用可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1態様は、フレームと前記フレーム上に取り付けられた布とを含むフィルタアセンブリであって、前記布が、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)、ポリ(イミドスルホン)およびそれらのブレンド物からなる群から選択される少なくとも1つのポリマー材料(P)を含む繊維(F)を含み、石炭燃焼煙道ガスを通過させる前記フィルタアセンブリに関する。
【0012】
本発明のフィルタアセンブリは、異なるデバイスおよびシステムに組み込むことができる。例えば、フィルタアセンブリは濾過システムに組み込まれてもよい。従って、本発明の別の態様は、それらの少なくとも1つが本発明によるフィルタアセンブリである、複数のフィルタアセンブリを含む濾過システムであって、石炭燃焼煙道ガスを受け入れるガス入口をさらに含む濾過システムに関する。おそらく、本発明による濾過システムの各フィルタアセンブリは、上記の通りである。
フィルタアセンブリは、石炭燃焼発電所およびセメント工場用の濾過システムを含むがそれらに限定されない、石炭燃焼煙道ガスの濾過に関係する多数の用途に使用することができる。従って、本発明の別の態様は、本発明によるフィルタアセンブリまたは濾過システムを含む石炭燃焼発電所またはセメント工場に関する。
【0013】
本発明のさらに別の態様は、石炭燃焼煙道ガスの濾過のための、フレームと前記フレーム上に取り付けられた布とを含むフィルタアセンブリであって、前記布が、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)、ポリ(イミドスルホン)およびそれらのブレンド物からなる群から選択され少なくとも1つのポリマー材料(P)を含む繊維(F)を含むフィルタアセンブリの使用に関する。
本発明およびそれの付随する利点の多くは、添付の図面に関連して考える場合に以下の詳細な説明を参照することによってより良く理解され、そのより完全な理解が容易に得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によるフィルタアセンブリを例示する概略図である。
【図2】本発明による濾過システムを例示する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明によるフィルタアセンブリは、フレームと前記フレーム上に取り付けられた布とを含み、石炭燃焼煙道ガスが前記フィルタアセンブリを通過する。前記布は、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)、ポリ(イミドスルホン)およびそれらのブレンド物からなる群から選択される少なくとも1つのポリマー材料(P)を含む繊維(F)を含む。
【0016】
本明細書で用いるところでは、用語「ブレンド物」は、2つ以上の異なるポリマーの物理的な組み合わせを意味する。通常、ブレンド物の異なるポリマー成分は、繊維(F)の内部で互いにある程度拡散し、多くの場合、それらは、繊維中でのそれらの個体性が曖昧になるように繊維の内部で密に拡散する。
本明細書で用いるところでは、用語「ポリマー材料」は、上に定義された通り、単一ポリマー、または2つ以上のポリマーからなるブレンド物を差別せずに意味する。
【0017】
本発明によるフィルタアセンブリに含まれるフレームは、フィルタアセンブリが曝されることになる環境に依存して、異なる構造および異なる組成を有してもよい。それは、かかる厳しい環境に耐える金属またはポリマー材料でできていてもよい。それはとりわけ同じポリマー材料(P)でできていてもよい。
本発明によるフィルタアセンブリに含まれる布は有利には濾布である。それはとりわけ不織布または織布でもよい。
【0018】
繊維(F)はまた、ポリマー材料(P)以外の1つ以上のポリマー(P*)をさらに含むことができる。繊維(F)において、ポリマー(P*)とポリマー材料(P)との質量比[(P*):(P)]は通常0〜5、好ましくは0〜1.00未満、より好ましくは0〜0.30,さらにより好ましくは0〜0.10の範囲である。好ましいと思われる本発明のある種の実施形態では、繊維(F)はポリマー(P*)を本質的に含まない、または全く含まない。
繊維(F)はまた、滑剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤、かぶり防止剤、艶消し剤、顔料、染料および蛍光増白剤などの1つ以上の追加成分をさらに含むことができる。
【0019】
布は、繊維(F)以外の繊維などの、布の他の通常の成分をさらに含んでもよい。かかる繊維の非限定的な例には、ガラス繊維;アスベスト繊維;ポリ(ベンゾチアゾール)繊維、ポリ(ベンゾイミダゾール)繊維、ポリ(ベンゾオキサゾール)繊維、ポリアリールエーテル繊維およびアラミド繊維のような高温エンジニアリング樹脂から形成された有機繊維;炭素繊維;PTFE繊維;(例えば、タングステンまたはカーボネート糸上へのホウ素微細顆粒の沈着によって得られた)ホウ素繊維;金属繊維;窒化ケイ素Si34のようなセラミック繊維;タルク−ガラス繊維;ウォラストナイト・マイクロファイバーのようなケイ酸カルシウム繊維;炭化ケイ素繊維;金属ホウ化物繊維(例えば、TiB2)およびそれらの混合物が挙げられ;炭素繊維は、例えば、レーヨン、ポリアクリロニトリル(PAN)、芳香族ポリアミドまたはフェノール樹脂などの、異なるポリマー前駆体の熱処理および熱分解によってとりわけ得ることができ;本発明に有用な他の炭素繊維は、ピッチの多い材料から得ることができる。用語「グラファイト繊維」は、(2000℃より上の)高温熱分解によって得られた炭素繊維であって、炭素原子がグラファイト構造に類似のやり方で配置される炭素繊維を意味することを意図される。本発明に有用なある種の炭素繊維は、PANベースの炭素繊維、ピッチベースの炭素繊維、グラファイト繊維、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0020】
繊維(F)は特に溶融紡糸法によって得ることができる。かかる方法では、ポリマー材料(P)のペレット(または粉末)を予備乾燥することができる。ペレットは次に押出機へ供給される。押出ポリマー材料(P)は溶融され、溶融ポリマー材料(P)は、ダイ穴を通過させられる。繊維のより糸は、例えば、一連のローラーを用いてダイ穴から引っ張ることができる。引っ張られたより糸は次に糸巻きに巻き取ることができる。より糸の粘度、強度および伸展性は、ポリマー材料(P)中の添加剤のレベル、ポリマー分子量、分子量分布および分子構造などの異なるパラメータを変えることによって制御することができる。これらの流動パラメータはまた、温度と、ローラーによる引張の速度などの、剪断条件とによって制御することもできる。
溶融紡糸法は、一般に容易に溶融加工することができ、かつ、溶融紡糸に適する樹脂について特に有効に働く。好ましくは、溶融紡糸されるポリマー材料(P)は、比較的きれいである(ゲル、ブラックスペック、炭などの汚染物質を含まない)。
【0021】
繊維(F)の製造システムは、押出機、例えば、1.5インチ直径押出機を含むことができる。押出機は、それぞれがダイ穴の房付きダイに供給する、2つの溶融ポンプに供給することができる。例えば、各溶融ポンプは、それぞれが直径0.8mmの、20のダイ穴の2つの房に供給することができる。繊維のより糸は、ローラーのセットによって引っ張ることができる。ローラーの最初のセットの引張線速度は、例えば、約600m/分であることが可能である。ローラーの一連のセットは、例えばローラーの各一連のセットについて引張線速度を上げることによって、より糸をさらに引っ張ることができる。例えば、ローラーの前方セットは約900m/分の引張線速度を有することができる。引っ張られたより糸は次に高速糸巻きに巻き取ることができる。
【0022】
繊維(F)は、上の方法およびシステムに限定されない。例えば、紡糸する前にポリマー材料(P)を溶解させるために溶剤を使用して繊維(F)を製造することが可能である。この溶剤ベースの方法は、ポリマー材料(P)を溶融させるための高温を必要としないという利点を提供する。この方法は、取り扱うのが比較的困難であるおよび/または熱に反応するポリマー材料(P)に好適であり得る。繊維(F)は、表面活性繊維であってもよい。表面活性繊維、すなわち、その表面上に活性化学を提供する繊維は、溶液紡糸によって製造されてもよい。例えば、ヒドロキシル、アミン、シロキサンなどのタイプの活性基を含む繊維は、溶液紡糸法で製造することができる。加えて、添加剤などの、第2材料が第1材料の溶融温度に耐えることができない場合、溶液紡糸を用いて両材料を含む繊維を製造することができる。一方、溶融紡糸法は、溶剤の使用なしに流体ポリマー材料(P)を提供し、このことは、環境問題に応じるために溶剤が追加の工程を必要とし得ることから、有益である可能性がある。
【0023】
繊維(F)はまた、スパンボンド法を用いて製造することもできる。スパンボンド布は、押し出して引っ張られ、次に連続ベルト上にレイダウンされたフィラメントによって形成された不織布である。接合は、ホット−カレンダー処理などの幾つかの方法によってかまたはウェブを高温の飽和水蒸気室に通すことによって成し遂げることができる。スパン布は、1つの繊維タイプまたは2つ以上の混合の繊維タイプを含有してもよいステープルファイバーから製造された布である。スパンレース布は、繊維を繰り返しパターンで絡み合わせてバインダーを含まない強い布を形成することによって製造された不織布である。ステープルは、天然繊維かまたはフィラメントからのカット長さの繊維から構成することができる。ステープル長さは、1インチ未満から数フィートまで変わることができる。人造ステープルファイバーは、それらが紡績システムで加工できるように一定の長さにカットすることができる。用語ステープルは、カットファイバーをフィラメントから区別するために繊維工業で用いられる。メルトブローンは、溶融樹脂が小さいオリフィスを強引に通され、基材またはコンベアベルト上へ「ブローン」ダウンされたものと考えることができる。これは、ランダムに行い、材料の不織またはフェルト様スワッチを製造することができる。
【0024】
繊維(F)は、ローブ、ストライプ、セグメントなどを含むが、それらに限定されない任意の数の断面形を有することができる。繊維(F)はまた、1つまたは複数の樹脂で製造することもできる。例えば、1樹脂が繊維のコアを形成することができ、そして別の樹脂が繊維の外殻を形成することができる。繊維(F)は、数平均直径が一般に1nmほどに低いから100μmほどに高いまでの状態で、直径が非常に広範囲内の繊維を製造することができる。繊維(F)はとりわけナノファイバー、すなわち、その数平均直径が1μm(1000nm)より下である繊維であってもよく;ナノファイバーは少なくとも2、5、10、20、50、100または200nmの数平均直径を有してもよく;ナノファイバーは多くとも500、200、100、50、20または10nmの数平均直径を有してもよい。繊維(F)はまたマイクロファイバー、すなわち、その数平均直径が少なくとも1μm(1000nm)のものである繊維であってもよく;マイクロファイバーは少なくとも2、4、8または12μmの数平均直径を有してもよく;マイクロファイバーは多くとも50、30または20μmの数平均直径を有してもよい。ある種の実施形態では、好ましい繊維は、12〜20μmの範囲の数平均直径を有する。繊維(F)の数平均長さは有利には少なくとも10cm、好ましくは少なくとも25mm、より好ましくは少なくとも50mmのものである。少なくとも50mmの数平均長さの繊維は、良好な濾過効率を有する。繊維(F)の数平均長さは特に限定されない。それは、多くとも100、200または500mmのものでもよいが、それはまた連続繊維の場合のようにはるかに高いものでもよい。さらに他の直径および長さも可能である。
【0025】
2成分系で、1ポリマー材料(P)の多く(多くの場合、少なくとも100)のより糸(例えば、600)を、ポリマー材料(P)とは異なるポリマー材料(P2)のマトリックス中に形成することができ、全てが数平均直径で合計して2、3ミクロン(多くの場合、少なくとも2.0μm)、例えば、10μmになる。かかる技法は時々「海中の島」技法と言われる。マトリックスポリマー材料(P2)が洗い流される(例えば、それが溶剤によって溶解される)場合、マトリックス中に形成されたより糸の数と同じほど多くのナノファイバー(ここでは、600ナノファイバー)を得ることができる。
【0026】
一般に、繊維(F)はナノメートルからミリメートルの直径を有することができ、長さの点で糸巻きには非常に短いものであり得る。繊維は、布または織物構造物の基本要素を形成する材料の単位である。繊維(F)は、その数平均直径の少なくとも10、100、1,000倍または、ある種の場合には、10,000倍さえの数平均長さを有することができる。
さらに、繊維(F)は、円形、卵形、星様、コア/シェルなどの、異なる断面形を有することができる。本出願者は、本発明のある種の実施形態では、非円形繊維断面形、特に星様断面形の繊維が強化された濾過能力を提供するので、好ましいという意見である。
加えて、繊維(F)は、異なる値、例えば、11〜12のクリンプ/インチを取る波形(または単位長さ当たりのクリンプ)を有することができる。他のクリンプ値は可能である。
【0027】
図1に見られるように、フィルタアセンブリ100は、繊維110でできた濾布(典型的には、バッグ)を含む。濾布は、繊維110から製造された、フェルト、または織布だけでなく不織布でもよい。好ましい実施形態では、濾布120は、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)、例えば、ラデル(RADEL)(登録商標)Rポリマーなどの、ポリフェニルスルホンでできた繊維110を組み込んでいる。別の好ましい実施形態では、濾布120はポリ(イミドスルホン)でできた繊維110を組み込んでいる。別の好ましい実施形態では、濾布120は、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)とポリ(イミドスルホン)とのブレンド物でできた繊維110を組み込んでいる。その上別の好ましい実施形態では、濾布120は、ポリ(フェニレンスルフィド)繊維を含まない。
【0028】
フィルタアセンブリ100は、ガスが各フィルタアセンブリ100を通過するときに粒子状物質を粒子状物質負荷ガスから濾過することができる。各フィルタアセンブリ100は、濾過システム200(図2)のチューブシート250に連結したフランジ140でその上端を支持することができ、かつ、実質的に垂直方向に下方に垂れ下がることができる。フランジ140は、チューブシート250に取り付けられたときにフィルタアセンブリ100の質量に耐えることができる。フランジは、型打ちした、延伸したまたは別の方法で成形した金属などの、好適な材料から製造される。
【0029】
フィルタアセンブリ100の長さは、例えば2、3センチメートルから2、3メートルで変わることができる。また、フィルタアセンブリ100は直列に連結することができる。例えば、フィルタアセンブリ100は、幾つかのフィルタアセンブリでできた濾過システムのモジュールでもよい。フィルタアセンブリ100は好ましくは両端で開いている。あるいはまた、フィルタアセンブリ100は一端かまたは両端で閉じていることができる。フィルタアセンブリ100は、例えば円形、卵形または正方形などの、任意の好適な形状断面を有することができる。
【0030】
濾布120は、半径方向に濾布120を支持するために配置構成されたフレーム130上に取り付けられる。フレーム130は、濾布120に縫い込まれた支持リングを含むことができる。あるいはまた、または加えて、フレーム130は、支持ケージまたは穿孔チューブを含むことができ、そのチューブ上に濾布120が取り付けられる。支持リング130および/または支持ケージおよび/またはチューブは、金属、穿孔シート金属、エキスパンドメタルもしくはメッシュスクリーン、または他の好適な材料でできていることができる。支持リング、チューブおよび/またはケージはフランジ140に連結することができる。
濾布120は、実質的にチューブ状形状で形成することができる。好ましくは、濾布120は、その内周および外周でアコーディオン折りの必須(pleaded)要素を含む。濾布120は、例えば、注封材料によって、フランジおよび/または支持リング/ケージ/チューブに取り付けることができる。
【0031】
フィルタアセンブリ100は、例えば、石炭を燃料とする発電所またはセメント工場の、濾過システム、またはバグハウスに組み込むことができる。その点に関して、フィルタアセンブリ100は、ポリ(フェニレンスルフィド)繊維を含む現在一般に使用されるフィルタアセンブリと置き換わることができよう。本発明による繊維110はこのように、定期的に交換される必要がある、工業フィルタアセンブリに使用される従来の材料の制限された供給に対処するための代わりの材料源を提供することができる。繊維110はまた、高い運転温度および酸性環境に耐えることができるフィルタアセンブリ100を提供することもできる。
【0032】
上に議論されたように、繊維110は、ポリフェニルスルホンなどの、スルホンポリマーから製造することができる。非限定的な好ましい実施形態では、繊維110は、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)もしくはポリ(イミドスルホン)またはそれらのブレンド物から製造することができる。この場合に、繊維110は、それらがポリ(フェニレンスルフィド)と比較して酸化に対するより強い耐性を提供することができるような化学組成を有する。繊維110はまた耐加水分解性を示す。こうして、高温および/または酸性および/または塩基性雰囲気の非常に厳しい環境中で、本発明によるフィルタアセンブリ100は、工業フィルタアセンブリのために多数の利益を提供することができる。特に、ラデル(RADEL)(登録商標)R繊維110は酸化分解せず、こうしてフィルタアセンブリ100の寿命を向上させ、フィルタアセンブリは、それほど早く閉塞せず、頻繁に取り換える必要がない。
【0033】
フィルタアセンブリ100は、より高い温度で動作することができ、こうして全体装置の向上した運転効率を提供する。フィルタアセンブリ100は、より多い振盪機サイクルによって運転することができ、それによってフィルタアセンブリ寿命を延ばす。さらに、繊維110の物理的特質は、新しい、改良されたデザイン選択肢を提供し、さらなる濾過改良さえも可能にする。
【0034】
石炭燃焼煙道ガスは典型的には5容量%より十分に上のCO2、頻繁に10容量%より上のCO2、および多くの場合に12.5容量%以上のCO2を含有する。それはまた一般に、石炭組成に依存して、400、600、800、1000、1200または1400ppm超さえの硫黄酸化物(SOx)および125、250、375または500ppm超さえの窒素酸化物(NOx)を含む。「SOx」は、硫黄酸化物の混合物に与えられる一般用語であり、その2つの主成分は二酸化硫黄(SO2)および三酸化硫黄(SO3)である。一方、「NOx」は、窒素酸化物の混合物に与えられる一般用語であり、その2つの主成分一酸化窒素(NO)および二酸化窒素(NO2)である。石炭燃焼煙道ガスは、典型的には10μg/m03より十分に上または100μg/m03(m03=273Kおよび1013ミリバールでのm3)より十分に上さえの、非常にはるかに多くの場合に1mg/m03(m03=273Kおよび1013ミリバールでのm3)より上、非常に多くの場合に5mg/m03より上、多くの場合に15mg/m03より上の固体粒子負荷を有し;それは時々少なくとも20、または少なくとも25mg/m03さえのものでもよい。
【0035】
本発明によるフィルタアセンブリは有利には、石炭燃焼煙道ガスの存在下に、特に、硫黄酸化物および窒素酸化物から生成する、硝酸または硫酸の存在下に酸化分解しない。さらに、本発明によるフィルタアセンブリは有利には、燃焼ゾーンへの距離、すなわち、煙道ガス煙突中のフィルタの正確な位置に依存して、典型的には125℃、150℃、170℃、200℃より上、220℃以上さえである、石炭燃焼煙道ガス煙突環境中で分解しない。
本発明によるフィルタアセンブリはまた、表面活性繊維を含んでもよい。
本発明によるフィルタアセンブリは、石炭燃焼発電所煙道ガスの濾過に特に好適である。
【0036】
フィルタアセンブリを組み込んだ濾過システムの説明
本発明による濾過システムは、それらの少なくとも1つが上記のようなフィルタアセンブリである、複数のフィルタアセンブリを含み、前記濾過システムは、石炭燃焼煙道ガスを受け入れるガス入口をさらに含む。好ましい実施形態では、本発明による濾過システムのフィルタアセンブリのそれぞれは、上記の通りである。
【0037】
図2は、繊維110のフィルタアセンブリ100を含む本発明による濾過システム(またはスクラバーシステム、またはバグハウス)200の非限定的な実施形態を例示する概略図である。濾過システム200は、石炭燃焼発電所にまたは、ぼたおよび/またはセメント工場にならびにスチールおよび/またはコークス工場などの、処理工場に組み込むことができる。濾過システム200は、ガス入口210を含み、その中に濾過されるべき煙道ガスが挿入される。ガスは次に、多数のフィルタアセンブリ(またはフィルタバッグ)220に通される。フィルタアセンブリ220のそれぞれは、図1に示される濾布120のフィルタアセンブリ100に類似のものでもよいが、他の形状も可能である。フィルタアセンブリ220は、繊維110のような繊維でできた布を含む。フィルタアセンブリ220は、それらのフランジによってチューブシート250に取り付けることができる。フィルタアセンブリ220は装置の内部に垂直に垂れ下がることができ、締め具、留め金バンドまたはホールドダウンによって適所に保持することができる。フィルタアセンブリ220は、飛散灰、二酸化硫黄、SO3、CO2、水銀、二酸化窒素、ならびに他の汚染分子および燃焼残渣をはじめとする様々な成分を煙道ガスから捕捉することができる。フィルタアセンブリ220は、機械的におよび/または、例えば表面活性繊維によって化学的にこれらの成分を捕捉することができる。濾過ガスは次に、ガス出口290を通って濾過システム200を出る。
【0038】
フィルタアセンブリ220は、高温環境中で、例えば約170℃で、および酸性環境中で(例えば、硫酸または硝酸の存在下に)長期間(例えば、3年以上)機能することができる。この期間中に、フィルタアセンブリ220は、パルスジェット、振盪機システム、逆洗空気またはそれらのいくつかの組み合わせなどの、あるタイプのかき混ぜシステムによって、定期的にきれいするか、または破片を排出させることができる。例えば、濾過システム200は、圧縮空気の噴出を発生させるために配置構成されたパルスジェット・システム260を含むことができ、圧縮空気の噴出はフィルタアセンブリ220の開口部の最上部中へ注入される。空気は、フィルタアセンブリの上に置かれたベンチュリに注ぐブローパイプから供給することができる。空気噴出は衝撃波を生み出し、衝撃波はバッグを収縮させ、粒子状物質を下のホッパー270中へ放出させる。時間の経過に伴う破片の蓄積、フィルタアセンブリのかき混ぜおよび苛酷な環境のために、フィルタアセンブリ220は劣化し、最終的には取り換える必要がある。フィルタアセンブリは、最上部アクセスハッチ280を通して補修し、取り換えることができる。
【0039】
濾過システム200は、数千のかかるフィルタアセンブリ220を含むことができる。例えば、石炭燃焼発電所では、濾過システム200は、数千ポンドの繊維を意味する、10,000のフィルタアセンブリ220を含むことができる。このように、フィルタが閉塞し、取り換える必要がある場合、その取り換えに非常に費用がかかる可能性がある。これは、フィルタの寿命の増加がこれらの用途において特に有益であり得、かつ、本発明の濾過システムが顕著な費用効果につながり得る別の理由である。
【0040】
本発明の別の態様は、本発明によるフィルタアセンブリまたは濾過システムを含む石炭燃焼発電所またはセメント工場に関する。
本発明のさらに別の態様は、石炭燃焼煙道ガスの濾過のための、フレームと前記フレーム上に取り付けられた布とを含むフィルタアセンブリであって、前記布が、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)、ポリ(イミドスルホン)およびそれらのブレンド物からなる群から選択され少なくとも1つのポリマー材料(P)を含む繊維(F)を含むフィルタアセンブリの使用に関する。
前記燃焼煙道ガスは、石炭燃焼発電所煙道ガスであってもよく、典型的には、400ppm超の硫黄酸化物および125ppm超の窒素酸化物を含んでもよい。
【0041】
ポリマー材料(P)
ポリマー材料(P)は、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)、ポリ(イミドスルホン)およびそれらのブレンド物からなる群から選択される。
【0042】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)
米国仮特許出願第60/835,430号明細書に記載されているように、用語「ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)」は、任意のポリマー、一般に、その繰り返し単位の50質量%超が少なくとも1つのp−ビフェニレン基:
【化1】

少なくとも1つのエーテル基(−O−)および少なくとも1つのスルホン基(−SO2−)を含有する1つ以上の式の繰り返し単位(R1)である、重縮合物を意味することを意図される。
【0043】
好ましくは、繰り返し単位(R1)は、一般タイプ:
【化2】

(式中、R1〜R4は−O−、−SO2−、−S−、−CO−であり、ただし、R1〜R4の少なくとも1つは−SO2−であり、R1〜R4の少なくとも1つは−O−であり;Ar1、Ar2およびAr3は、6〜24個の炭素原子を含有するアリーレン基であり、好ましくはフェニレンまたはp−ビフェニレンであり;aおよびbは0または1のいずれかである)
の1つ以上の式の繰り返し単位である。
【0044】
より好ましくは、繰り返し単位(R1)は、
【化3】

およびそれらの混合物から選択される。
【0045】
さらにより好ましくは、繰り返し単位(R1)は、
【化4】


【化5】

または
【化6】


【化7】

とのミックスかのいずれかであり、
ここで、ミックスを構成する繰り返し単位(4)および(6)の総量を基準とする、ミックスに含有される繰り返し単位(6)の質量は10〜99%、好ましくは50〜95%である。
【0046】
最良の特性は、繰り返し単位(4)かまたは繰り返し単位(4)と(6)とのミックスを繰り返し単位(R1)として使用するときに達成され得る。一方、繰り返し単位(2)を繰り返し単位(R1)として使用すると、一般に、最良の全体コスト特性バランス、および最高レベルの強靱性を提供する。本発明の目的のためには、ポリフェニルスルホンは、その繰り返し単位の50質量%超が式(2)の繰り返し単位(R1)である任意の重縮合ポリマーを意味することが意図される。
【0047】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)はとりわけホモポリマー、ランダム、交互またはブロックコポリマ−であってもよい。ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)がコポリマーであるとき、その繰り返し単位はとりわけ、(i)式(2)、(3)、(4)、(5)もしくは(6)から選択される少なくとも2つの異なる式の繰り返し単位(R1)、または(ii)式(2)、(3)、(4)、(5)もしくは(6)から選択される1つ以上の式の繰り返し単位(R1)(特に、式(2)の繰り返し単位)および
【化8】

および
【化9】

などの、繰り返し単位(R1)とは異なる、繰り返し単位(R1*)からなってもよい。
【0048】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)の繰り返し単位の好ましくは70質量%超、より好ましくは85質量%超が繰り返し単位(R1)である。さらにより好ましくは、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)の繰り返し単位は本質的に全て繰り返し単位(R1)である。最も好ましくは、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)の繰り返し単位は全て繰り返し単位(R1)である。
【0049】
優れた結果は一般に、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)がポリフェニルスルホンホモポリマーである、すなわち、そのポリマーがたとえ全てではなくても本質的に全て、繰り返し単位が式(2)のものであるポリマーであるときに得られる。ソルベー・アドバンスト・ポリマーズ、L.L.C(Solvay Advanced Polymers,L.L.C.)製のラデル(RADEL)(登録商標)Rポリフェニルスルホンがポリフェニルスルホンホモポリマーの例である。
【0050】
ポリ(イミドスルホン)
本発明の目的のためには、ポリ(イミドスルホン)は、一般式(I):
【化10】

(式中、Vは、リンカーがポリ(イミドスルホン)の合成または使用を妨げない限り、限定なしに4価のリンカーであり;式(I)中のRは、2価の有機ラジカルがポリ(イミドスルホン)の合成または使用を妨げない限り、限定なしに置換または非置換の2価の有機ラジカルである)
を有する構造単位(R2)を含むイミド含有、スルホン含有ポリマーを意味することを意図される。
【0051】
ポリ(イミドスルホン)は、ポリ(イミドスルホン)の総質量を基準として、5質量%より上、好ましくは50質量%より上、より好ましくは90質量%の構造単位(R2)を一般に含む。さらにより好ましくは、ポリ(イミドスルホン)はポリ(イミドスルホン)ホモポリマーである、すなわち、ポリ(イミドスルホン)の構造単位は、たとえ全てではなくても本質的に全て構造単位(R2)である。
ポリマー鎖当たりの構造単位(R2)の数は、ポリマーの定義によって、1より上であり;それは典型的には約10〜約1000以上、好ましくは約10〜約500である。
【0052】
好適なリンカーは、(a)約5〜約50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換の、飽和、不飽和もしくは芳香族の単環式もしくは多環式基、(b)1〜約30個の炭素原子を有する置換もしくは非置換の、線状もしくは分岐の、飽和もしくは不飽和のアルキル基、またはそれらの混合物を含むが、それらに限定されない。好ましいリンカーは、
【化11】

などの、4価の芳香族ラジカルを含むがそれらに限定されず、
式中、Wは幾つかの実施形態では、−O−、−S−、−C(O)−、−SO2−、−Cy2y−(yは1〜5の整数である)および、パーフルオロアルキレン基をはじめとする、それらのハロゲン化誘導体、または式−O−D−O−の基からなる群から選択される2価の部分であり、ここで、−O−もしくは−O−D−O−基の2価の結合は3,3’、3,4’、4,3’、または4,4’位にあり、かつここで、Dは式:
【化12】

の2価のラジカルを含み、
ここで、上記の式
【化13】

中のQは、−O−、−S−、−C(O)−、−SO2−、−C(CH32などの−Cy2y−(yは1〜5の整数である)、および、パーフルオロアルキレン基をはじめとするそれらのハロゲン化誘導体からなる群から選択される2価の部分を含むが、それらに限定されない。
ベンジル位プロトンを含まない基が、多くの場合に秀でた溶融安定性にとって好ましい。
【0053】
式(I)中のRは、(a)約6〜約20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素ラジカルおよびそれらのハロゲン化誘導体、(b)約2〜約20個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキレンラジカル、(c)約3〜約20個の炭素原子を有するシクロアルキレンラジカル、または(d)一般式(II):
【化14】

(式中、Qは、−O−、−S−、−C(O)−、−SO2−、−C(CH32−などの−Cy2y−(yは1〜5の整数である)、および、パーフルオロアルキレン基をはじめとする、それらのハロゲン化誘導体からなる群から選択される2価の部分を含むが、それらの限定されない)
の2価のラジカルなどの置換もしくは非置換の2価の有機ラジカルを含むが、それらに限定されない。特定の実施形態では、Rはベンジル位水素を本質的に含まない。別の特定の実施形態では、ポリ(イミドスルホン)はポリエーテルイミドスルホンであり、Rはまた、任意のポリエーテルイミドスルホンの繰り返し単位の少なくとも50モル%が少なくとも1つのアリールエーテル結合、少なくとも1つのアリールスルホン結合および少なくとも2つのアリールイミド結合を含有するように、アリールスルホンおよび/またはアリールエーテル結合を含有する。
【0054】
さらに他の実施形態では、4価の芳香族ラジカル中の連結基Wは、式:
【化15】

(式中、R3は、ハロゲン、フルオロ、クロロ、ブロモ、C1〜32アルキル、シクロアルキル、もしくはアルケニル;C1〜32アルコキシもしくはアルケニルオキシ;またはシアノからなる群から選択され、「q」は0〜3の値を有する)
におけるように式−O−D−O−の基を含む。幾つかの特定の実施形態では、「q」はゼロであり、式中、「D」は、ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素に由来する2価の芳香族基であり、一般式(III):
【化16】

(式中、「A1」は、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレンなどを含むが、それらに限定されない芳香族基を表す)
を有する。幾つかの実施形態では、「E」は、メチレン、エチレン、エチリデン、プロピレン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチレン、ブチリデン、イソブチリデン、アミレン、アミリデン、イソアミリデンなどを含むが、それらに限定されないアルキレンもしくはアルキリデン基であってもよい。他の実施形態では、「E」がアルキレンもしくはアルキリデン基であるとき、それはまた、芳香族結合;第三級窒素結合;エーテル結合;カルボニル結合;ケイ素含有結合、シラン、シロキシ;またはスルフィド、スルホキシド、スルホンなどを含むが、それらに限定されない硫黄含有結合;またはホスフィニル、ホスホニルなどを含むが、それらに限定されないリン含有結合を含むが、それらに限定されない、アルキレンもしくはアルキリデンとは異なる部分によって連結された2つ以上のアルキレンもしくはアルキリデン基からなってもよい。
【0055】
他の実施形態では、「E」は、その非限定的な例がシクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン、メチルシクロヘキシリデン、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプチリデン、1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、およびアダマンチリデンを含む脂環式基;スルフィド、スルホキシドもしくはスルホンを含むが、それらに限定されない硫黄含有結合;ホスフィニルもしくはホスホニルなどを含むが、それらに限定されないリン含有結合;エーテル結合;カルボニル基;第三級窒素基;またはシランもしくはシロキシを含むが、それらに限定されないケイ素含有結合であってもよい。R4は独立してそれぞれ、アルケニル、アリル、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、またはシクロアルキルを含むが、それらに限定されない1価の炭化水素基を含む。様々な実施形態で、R4の1価の炭化水素基は、少なくとも1つのZが塩素または臭素であるという規定に従うことを条件として、例えば式C=CZ2(式中、各Zは、水素、塩素、または臭素である)のジハロアルキリデン基におけるように、ハロゲン置換、特にフルオロ−またはクロロ−置換されていてもよく、前述の部分の混合物であってもよい。
【0056】
特定の実施形態では、ジハロアルキリデン基はジクロロアルキリデン、特にgem−ジクロロアルキリデン基である。Y1は独立してそれぞれ、ハロゲン(フッ素、臭素、塩素)を含むが、それらに限定されない無機原子;ニトロを含むが、それに限定されない2個以上の無機原子を含有する無機基;アルケニル、アリル、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、もしくはシクロアルキルを含むが、それらに限定されない1価の炭化水素基、またはOR5(ここで、R5はアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、もしくはシクロアルキルを含むが、それらに限定されない1価の炭化水素基である)を含むが、それらに限定されないオキシ基を含むが、それらに限定されない有機基であってもよく;Y1はポリマーを製造するために使用される反応体および反応条件に不活性であり、かつ、それらによって影響を受けないことのみが必要である。
【0057】
幾つかの特定の実施形態では、Y1はハロ基またはC1〜C6アルキル基を含む。文字「m」は、ゼロからおよびゼロを含み、置換に利用可能なA上の置換可能な水素の数までの任意の整数を表し;「p」は、ゼロからおよびゼロを含み、置換に利用可能なE上の置換可能な水素の数までの整数を表し;「t」は、少なくとも1に等しい整数を表し;「s」は、ゼロまたは1のいずれかに等しい整数を表し;「u」は、ゼロをはじめとする任意の整数を表す。幾つかの特定の実施形態では、「u」は0〜約5の値の整数である。ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素「D」において、2つ以上のY1置換基が存在するとき、それらは同じものまたは異なるものであってもよい。同じことはR’置換基についても言える。「s」が式(III)においてゼロであり、「u」がゼロでない場合、芳香環は、介在するアルキリデンまたは他のブリッジが全くなしに共有結合によって直接結合する。芳香族核残基A1上のヒドロキシル基の位置は、オルト、メタ、またはパラ位に変わることができ、基は、ビシナル、非対称または対称関係にあることができ、ここで、炭化水素残基の2つ以上の環炭素原子はY1およびヒドロキシル基で置換されている。
【0058】
幾つかの特定の実施形態では、パラメータ「t」、「s」、および「u」はそれぞれ1の値を有し、両A1ラジカルは非置換フェニレンラジカルであり、Eは、イソプロピリデンなどのアルキリデン基である。幾つかの特定の実施形態では、両方ともo−もしくはm−フェニレンであっても、または1つはo−もしくはm−フェニレンで、他はp−フェニレンであってもよいが、両A1ラジカルはp−フェニレンである。
【0059】
ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素の幾つかの実施形態では、「E」は不飽和のアルキリデン基であってもよい。このタイプの好適なジヒドロキシ置換芳香族炭化水素は、式(IV):
【化17】

(式中、各Rは独立して水素、塩素、臭素、またはC1〜30の1価の炭化水素もしくはヒドロカーボンオキシ基であり、各Zは、少なくとも1つのZが塩素または臭素であるという規定に従うことを条件として水素、塩素または臭素である)
のものを含む。
【0060】
好適なジヒドロキシ置換芳香族炭化水素はまた、式(V):
【化18】

(式中、各R7は独立して水素、塩素、臭素、またはC1〜30の1価の炭化水素もしくはヒドロカーボンオキシ基であり、R8およびR9は独立して水素、またはC1〜30炭化水素基である)
のものを含む。
【0061】
本発明の実施形態では、使用されてもよいジヒドロキシ置換芳香族炭化水素は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、1,4−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−オキシジフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール;4,4’−ビス(3,5−ジメチル)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン;4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン;2,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン;ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン;ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン;ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3−メトキシフェニル)メタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−クロロフェニル)エタン;2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン;3,5,3’,5’−テトラクロロ−4,4’−ジヒドロキシフェニル)プロパン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン;2,4’−ジヒドロキシフェニルスルホン;ジヒドロキシナフタレン;2,6−ジヒドロキシナフタレン;ヒドロキノン;レゾルシノール;C1〜3アルキル置換レゾルシノール;メチルレゾルシノール、カテコール、1,4−ジヒドロキシ−3−メチルベンゼン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;4,4’−ジヒドロキシジフェニル;2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン;1,1−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン;2,2−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,4−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン;3,3−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン;1,1−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン;1,1−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホンおよびビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドを含むが、それらに限定されない。特定の実施形態では、ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素はビスフェノールAを含む。
【0062】
ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素の幾つかの実施形態では、部分「E」がアルキレンもしくはアルキリデン基であるとき、それは、1つのヒドロキシ置換基を有する1つ以上の芳香族基に結合した1つ以上の縮合環の一部であってもよい。
【0063】
このタイプの好適なジヒドロキシ置換芳香族炭化水素は、3−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,3−トリメチルインダン−5−オールおよび1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン−5−オールなどのインダン構造単位を含有するものを含む。1つ以上のアルキレンもしくはアルキリデン基を縮合環の一部として含むタイプのジヒドロキシ置換芳香族炭化水素のうちに、2,2,2’,2’−テトラヒドロ−1,1’−スピロビ[lH−インデン]ジオールが含まれ、その例示的な例は、2,2,2’,2’−テトラヒドロ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビ[1H−インデン]−6,6’−ジオール(時々「SBI」として知られる)を含む。前述のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素のいずれかを含む混合物もまた用いられてもよい。
【0064】
好ましいポリ(イミドスルホン)樹脂は、2以上、典型的には約10〜約1000以上、より好ましくは約10〜約500の式(VI);
【化19】

(式中、部分Rは、式(I)について先に定義された通りであり;Tは−O−または式−O−D−O−の基であり、ここで、−O−または−O−D−O−基の2価の結合は3,3’、3,4’、4,3’、または4,4’位にあり、かつここで、Dは上に定義されたような2価のラジカルを含むが、それらに限定されない)
の構造単位を含むポリエーテルイミドスルホン樹脂である。
【0065】
他の実施形態では、ポリエーテルイミドスルホンは、上記のエーテルイミド単位に加えて、式(VII)
【化20】

(式中、Rは、式(I)について先に定義された通りであり、Mは、
【化21】

から選択される式(VIII)のラジカルを含むが、それらに限定されない)
のポリイミド構造単位をさらに含有するコポリマーであってもよい。
【0066】
熱可塑性ポリ(イミドスルホン)は、1つ以上の芳香族ジアミンまたはそれらの化学的に同等な誘導体と1つ以上の芳香族テトラカルボン酸環状二酸無水物(時々本明細書では以下芳香族二酸無水物と称される)、芳香族テトラカルボン酸、または環状酸無水物を形成することができるそれらの誘導体とを含む反応体から誘導することができる。加えて、芳香族ジアミンと芳香族二酸無水物とを含む反応体の1つもしくは他のものの少なくとも一部、または反応体のそれぞれの少なくとも一部はスルホン結合を含む。特定の実施形態では、芳香族ジアミンと芳香族二酸無水物とを含む反応体の1つもしくは他のものの全てまたは反応体のそれぞれは、スルホン結合を含む。反応体は反応して、環状イミド結合とスルホン結合とを含むポリマーを形成する。
【0067】
芳香族二酸無水物の例示的な例は、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二酸無水物;4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二酸無水物;4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二酸無水物およびそれらの混合物を含む。
【0068】
他の有用な芳香族二酸無水物は、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二酸無水物;4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二酸無水物;4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二酸無水物;4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二酸無水物;2,2−ビス([4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二酸無水物;4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二酸無水物;4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二酸無水物;4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二酸無水物;2−[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]−2−[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二酸無水物;4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二酸無水物;4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二酸無水物;4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二酸無水物;1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二酸無水物;3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二酸無水物;2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二酸無水物;3,4,3’,4’−オキシジフタル酸無水物;2,3,3’,4’−オキシジフタル酸無水物;3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二酸無水物;2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二酸無水物;2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二酸無水物;ピロメリット酸二無水物;3,4,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二酸無水物;2,3,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二酸無水物;1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二酸無水物;および2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二酸無水物を含む。2つ以上の二酸無水物を含む混合物に由来する構造単位のポリ(イミドスルホン)もまた、本発明の範囲内である。
【0069】
特定の一実施形態では、ポリ(イミドスルホン)組成物の合成に用いられる芳香族二酸無水物は、存在する全体モル二酸無水物を基準として、少なくとも約90モル%の2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二酸無水物、または少なくとも約95モル%の2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二酸無水物を含む芳香族ビス(エーテル酸無水物)組成物を含む。時々本明細書では以下、この特定の芳香族ビス(エーテル酸無水物)組成物は、ビスフェノールA二酸無水物または「BPADA」と称される。他の実施形態では、好ましい芳香族二酸無水物は、ビスフェノールA二酸無水物、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二酸無水物、オキシジフタル酸無水物およびそれらの混合物である。
【0070】
様々な実施形態で、好適な芳香族ジアミンは、6〜約24個の炭素原子を有する芳香族炭化水素ラジカルおよびそれの置換誘導体から選択される2価の有機ラジカルを含む。様々な実施形態で、前記芳香族炭化水素ラジカルは、単環式、多環式または縮合型であってもよい。
【0071】
幾つかの実施形態では、好適な芳香族ジアミンは、一般式(IX)
【化22】

(式中、芳香環に関して指定されていない位置異性体は、Qに対してメタまたはパラのいずれかであり、Qは共有結合かまたは式(X):
【化23】

および式Cy2y(式中、yは1〜5を含めた整数である)のアルキレンもしくはアルキリデンからなる群から選択されるメンバーである)
の2価の芳香族炭化水素ラジカルを含む。幾つかの特定の実施形態では、yは1または2の値を有する。例示的な連結基は、メチレン、エチレン、エチリデン、ビニリデン、ハロゲン置換ビニリデン、およびイソプロピリデンを含むが、それらに限定されない。他の特定の実施形態では、式(IX)において芳香環に関して指定されていない位置異性体は、Qに対してパラである。
【0072】
様々な実施形態で、芳香族ジアミンの2つのアミノ基は、少なくとも2個の環炭素原子によって、時々少なくとも3個の環炭素原子によって分離される。アミノ基が多環式芳香族部分の異なる芳香環に置かれるとき、それらは多くの場合、任意の2つの芳香環間の直接結合からまたは連結部分から少なくとも2個の環炭素原子によって、時々少なくとも3個の環炭素原子によって分離される。例示的で非限定的な例では、芳香族ジアミンは、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ビス(フェニル)−2、2−プロパン、およびそれらの置換誘導体を含むが、それらに限定されない芳香族炭化水素ラジカルを含む。特定の実施形態では、置換基は、フルオロ、クロロ、もしくはブロモ、またはそれらの混合物などの、1つ以上のハロゲン基;または、メチル、第三級ブチル、もしくはそれらの混合物などの、1〜22個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖、分岐、もしくはシクロアルキル基を含む。特定の実施形態では、芳香族炭化水素ラジカルのための置換基は、存在するとき、ハロゲン、クロロ、エーテル、スルホン、パーフルオロアルキル、メチル、t−ブチルおよびそれらの混合物からなる群から選択される。他の特定の実施形態では、前記芳香族炭化水素ラジカルは非置換である。
【0073】
幾つかの特定の実施形態では、好適な芳香族ジアミンは、メタ−フェニレンジアミン;パラ−フェニレンジアミン;メタ−およびパラ−フェニレンジアミンの混合物;異性体の2−メチル−および5−メチル−4,6−ジエチル−1,3−フェニレンジアミンまたはそれらの混合物;ビス(4−アミノフェニル)−2,2−プロパン;ビス(2−クロロ−4−アミノ−3,5−ジエチルフェニル)メタン、4,4’−ジアミノジフェニル、3,4’−ジアミノジフェニル、4、4’−ジアミノジフェニルエーテル(時々4,4’−オキシジアニリンと称される);3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド;3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド;4,4’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(一般に4,4’−メチレンジアニリンと命名される);4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,5−ジアミノナフタレン;3,3−ジメチルベンジジン;3,3−ジメトキシベンジジン;ベンジジン;m−キシリレンジアミン;ビス(アミノフェノキシ)フルオレン、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)フェニルスルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2’−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス(アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−アミノ−4−イソプロピルベンゼン;1,2−ビス(3−アミノフェノキシ)エタン;2,4−ビス(ベータ−アミノ−t−ブチル)トルエン;ビス(p−ベータ−メチル−o−アミノフェニル)ベンゼン;ビス(p−ベータ−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテルおよび2,4−トルエンジアミンを含む。2つ以上のジアミンの混合物もまた用いられてもよい。最も好ましいジアミンはメタ−およびパラ−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンおよびオキシジアニリンである。
【0074】
好ましい芳香族ジアミンは、ベンジル位水素を含まず、そしてまたアリールスルホン結合を含有する。ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、ビス(アミノフェノキシフェニル)スルホン(BAPS)およびそれらの混合物が特に好ましい芳香族ジアミンである。
【0075】
ポリ(イミドスルホン)に含有されるスルホン基は一般に、4価のリンカーにおよび/または2価のラジカルRに含有される。
【0076】
スルホン基を含む第1の好適な4価のリンカーVは、
【化24】

(式中、Wは−SO2−である)
である。
【0077】
スルホン基を含む別の好適な4価のリンカーVは、
【化25】

(式中、Wは−O−D−O−基であり、ここで、Dは、
【化26】

であり、ここで、Qは−SO2−である)
である。
【0078】
スルホン基を含むさらに別の好適な4価のリンカーVは、
【化27】

(式中、R3は、ハロゲン、フルオロ、クロロ、ブロモ、C1〜32アルキル、シクロアルキル、もしくはアルケニル;Cl〜32アルコキシもしくはアルケニルオキシ;またはシアノからなる群から選択され;「q」は0〜3の値を有し;
式中、「D」は、ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素に由来する2価の芳香族基であり、一般式:
【化28】

を有する)
であり、
式(III)において、
−Eは、スルホン部分によって連結された2つ以上のアルキレンもしくはアルキリデン基からなるか、またはEはスルホン結合であるかのいずれかであり;
−A1は、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレンなどを含むが、それらに限定されない芳香族基を表し;
−R4は独立してそれぞれ、アルケニル、アリル、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、またはシクロアルキルを含むが、それらに限定されない1価の炭化水素基を含み;
−Y1は独立してそれぞれ、ハロゲン(フッ素、臭素、塩素)を含むが、それらに限定されない無機原子;ニトロを含むが、それらに限定されない2つ以上の無機原子を含有する無機基;アルケニル、アリル、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、もしくはシクロアルキルを含むが、それらに限定されない1価の炭化水素基、またはOR5(ここで、R5はアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、もしくはシクロアルキルを含むが、それらに限定されない1価の炭化水素基である)を含むが、それらに限定されないオキシ基を含むが、それらに限定されない有機基であってもよく;Y1はポリマーを製造するために使用される試薬および反応条件に不活性であり、かつ、それらによって影響を受けないことのみが必要であり;
−文字「m」は、ゼロからおよびゼロを含み、置換に利用可能なA上の置換可能な水素の数までの任意の整数を表し;「p」は、ゼロからおよびゼロを含み、置換に利用可能なE上の置換可能な水素の数までの整数を表し;「t」は、少なくとも1に等しい整数を表し;「s」は、1に等しい整数および1のみを表し;「u」は、ゼロをはじめとする任意の整数を表す。
【0079】
スルホン基を含む好適な2価のラジカルRは、
【化29】

(式中、Qは−SO2−である)
である。
【0080】
好ましくは、2価のラジカルRはスルホン基を含有し、より好ましくは2価のラジカルRは、
【化30】

(式中、Qは−SO2−である)
である。
【0081】
一方、4価のリンカーVは好ましくはスルホン基を含まない。ポリマー材料(P)として特に好適なポリ(イミドスルホン)は、エクステム(EXTEM)(登録商標)としてソルベー・アドバンスト・ポリマーズ、L.L.C.(SOLVAY ADVANCED POLYMERS,L.L.C.)からとりわけ商業的に入手可能である。
【0082】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)とポリ(イミドスルホン)とのブレンド物
ある種の好ましい実施形態では、ポリマー材料(P)は、本明細書で以下ブレンド物(B)と称される、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)と少なくとも1つのポリ(イミドスルホン)とからなるブレンド物である。ブレンド物(B)に関して、ブレンド物(B)に含有されるポリ(ビフェニルエーテルスルホン)は、任意の好ましいレベルで、上記のようなポリ(ビフェニルエーテルスルホン)の特性を全て有利にも満たし;特に、それは好ましくはポリフェニルスルホンであり;ブレンド物(B)に含有されるポリ(イミドスルホン)は、任意の好ましいレベルで、上記のようなポリ(イミドスルホン)の特性を全て有利にも満たし;ブレンド物(B)の総質量を基準とする[すなわち、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)の質量プラス・ポリ(イミドスルホン)の質量を基準とする]、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)の質量は、有利には少なくとも15%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも35%、さらにより好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも45%であり;加えて、ブレンド物(B)の総質量を基準とする、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)の質量は、有利には多くとも90%、好ましくは多くとも80%、さらにより好ましくは多くとも70%であり;ある種の実施形態では、それは多くとも55%であり;ある種の他の実施形態では、それは55%より上、おそらく少なくとも60%である。
【0083】
ある種の特定の実施形態では、ポリマー材料(P)はまた、上記のようなポリ(ビフェニルエーテルスルホン)およびポリ(イミドスルホン)の両方の繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい。それはブロックまたはランダムコポリマーであってもよい。かかる場合には、コポリマーは好ましくは15質量%超、より好ましくは25質量%超、最も好ましくは50質量%超の、上記のようなポリ(ビフェニルエーテルスルホン)繰り返し単位に相当する繰り返し単位を含む。
【実施例】
【0084】
使用材料は、ポリエーテルスルホン(PESU、ラデル(Radel)(登録商標)A 300、ペレット状)、ポリフェニルスルホン(PPSU、ラデル(Radel)(登録商標)R 5100、ペレット状)およびポリ(フェニレンスルフィド)(PPS、東レ(Toray)から購入)であった。
【0085】
繊維紡糸試行を、24:1のL/Dおよび3:1の圧縮比の、2つの溶融ポンプおよび4つの延伸ローラー付きの、標準1.5インチ単軸スクリュー押出機を含む機械で行った。スクリューは、ミキサーなしの7.5/13.5/15インチ長さの供給、移行および計量供給ゾーンを有した。各溶融ポンプは、それぞれが計80のより糸のための直径0.8mmの20の穴の2つの房を有する紡糸口金中へ材料を供給した。全材料滞留時間は、5ポンド/時押出量速度で約10分であった。より糸を、4つのローラーで引っ張り、それらの速度および温度は独立して制御した。第1ローラーは、ポリマーの溶融状態でより糸を延伸した(「熱」延伸)。残りのローラーからのより糸延伸は、ポリマーの固体状態で行った(「冷」延伸)。325×60×20×20×20メッシュの組み合わせの4つのスクリーンパックを紡糸口金の前に使用した。
【0086】
熱酸化安定性
熱安定性特性は、長期間、繊維に張力を加えない状態で170℃の熱空気オーブン中で暴露させた後の繊維サンプルの%靱性保持率によって測定した。
【0087】
全ての繊維サンプルは、オーブン暴露前に仕上げ化学薬品を除去するために水洗した。PESUおよびPPSUサンプルのDPF値は、6g/9000mのものであり、PPSサンプルについては4g/9000mのものであった。結果を表1に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
PPSUおよびPESUから製造した繊維は、127日間の劣化後でも、目立つ靱性低下を全く示さない。しかしながら、PPSから製造した繊維は、劣化の早期段階中にかなりの靱性低下(約30%)を示す。
【0090】
無機剤に対する耐化学薬品性
繊維の耐化学薬品性は、繊維を試験試薬中に24時間浸漬し、次に引張特性、具体的には化学薬品処理繊維の靱性保持率を測定することによって評価した。試験手順の詳細を以下に示す。
繊維を1インチ直径のガラスチューブに巻き付け(底部へ2/3まで下方へ)、仕上げ剤を除去するために1分間リンスし、次に繊維を紙タオルで乾燥させた。異なる繊維サンプルを装填した6つのチューブを、化学試薬を満たしたガラス製1000ml広口ジャー中へ浸漬した。ジャーに蓋をかぶせ、フード内に室温で24時間放置した。チューブをジャーから取り出し、初期クリーニングのため繊維から残存化学試薬をリンスするために脱イオン水でリンスした。チューブを次に、第2段階の洗浄として水浴中へ浸けた。繊維を次に、引張試験を行う前に1日の間順化させた。
【0091】
耐化学薬品性結果の詳細を表2に示す。PPS繊維は、室温で50質量%の濃硝酸溶液に溶解し、より低い濃度の硝酸溶液中高温で処理したときに靱性保持率が低下した。PESUおよびPPSU繊維は、室温で強塩基および強酸溶液に対して、ならびに高温で中間濃度の塩基および酸溶液に対して秀でた耐性を示す。PPSU繊維はさらに、PESU繊維のそれと比較して向上した耐化学薬品性を特色とする。
【0092】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと前記フレーム上に取り付けられた布とを含むフィルタアセンブリであって、前記布が、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)、ポリ(イミドスルホン)およびそれらのブレンド物からなる群から選択される少なくとも1つのポリマー材料(P)を含む繊維(F)を含み、そして石炭燃焼煙道ガスを通過させるフィルタアセンブリ。
【請求項2】
前記石炭燃焼煙道ガスが5容量%より上のCO2、400ppm超の硫黄酸化物および125ppm超の窒素酸化物を含む、請求項1に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項3】
前記ポリマー材料(P)がポリ(ビフェニルエーテルスルホン)である、請求項1または2に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項4】
前記ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)がポリフェニルスルホンである、請求項3に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項5】
前記ポリマー材料(P)がポリ(イミドスルホン)である、請求項1または2に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項6】
50質量%より上の質量の前記ポリ(イミドスルホン)が式
【化1】

(式中、Vは4価のリンカーであり、そしてRは
【化2】

である)
の構造単位からなる、請求項5に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項7】
Vが
【化3】

であり、Wが−O−または−O−D−O−のいずれかであり、Dが
【化4】

であり、Qが−Cy2y−であり、そしてyが1〜5の整数である、請求項6に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項8】
硫酸の存在下に酸化分解しない、請求項1〜7のいずれか一項に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項9】
約170℃の温度環境で分解しない、請求項1〜8のいずれか一項に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項10】
表面活性繊維を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項11】
前記石炭燃焼煙道ガスが石炭燃焼発電所煙道ガスである、請求項1〜10のいずれか一項に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項12】
複数のフィルタアセンブリを含む濾過システムであって、それらの少なくとも1つが請求項1〜11のいずれか一項に記載のフィルタアセンブリであり、前記石炭燃焼煙道ガスを受け入れるガス入口をさらに含む前記濾過システム。
【請求項13】
前記フィルタアセンブリのそれぞれが請求項1〜11のいずれか一項に記載されている、請求項12に記載の濾過システム。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のフィルタアセンブリまたは請求項12もしくは13に記載の濾過システムを含む石炭燃焼発電所。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のフィルタアセンブリまたは請求項12もしくは13に記載の濾過システムを含むセメント工場。
【請求項16】
石炭燃焼煙道ガスの濾過のための、フレームと前記フレーム上に取り付けられた布とを含むフィルタアセンブリであって、前記布が、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)、ポリ(イミドスルホン)およびそれらのブレンド物からなる群から選択される少なくとも1つのポリマー材料(P)を含む繊維(F)を含むフィルタアセンブリの使用。
【請求項17】
前記石炭燃焼煙道ガスが5容量%より上のCO2、400ppm超の硫黄酸化物および125ppm超の窒素酸化物を含む、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記石炭燃焼煙道ガスが石炭燃焼発電所煙道ガスである、請求項16または17に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−522067(P2010−522067A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553978(P2009−553978)
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/002287
【国際公開番号】WO2008/116606
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(502030880)ソルヴェイ アドバンスド ポリマーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー (39)
【Fターム(参考)】