説明

石炭貯蔵設備

【課題】温度センサを貯炭槽の側壁部以外の位置で保持可能な石炭貯蔵設備を提供する。
【解決手段】本発明の石炭貯蔵設備100は、互いに区画され内部に石炭が貯蔵可能な貯炭槽102と、前記複数の貯炭槽102のそれぞれの天井部103より前記貯炭槽102内部に吊り下げられた温度センサ213sと、を備える。温度センサ213sが貯炭槽102の天井部103より、貯炭槽102内部に吊り下げられているので、石炭を貯炭槽102の側壁部から離れた位置において石炭の温度を測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所等において使用するまでの間、石炭を貯蔵する石炭貯蔵設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火力発電所は、石炭、石油、天然ガス等を燃料として、電気エネルギを得ている。これらの燃料のうち石炭は、輸送された後、ボイラで燃焼されるまでの期間、石炭貯蔵設備内の貯炭槽で積み上げて貯蔵される場合が多い。積み上げて貯蔵されると、石炭は、時間の経過と共に酸化反応が進み、発熱する場合がある。
【0003】
このため、長期にわたり貯蔵される石炭が生じないように、石炭サイロの内部に複数個の貯炭槽を設け、それぞれの貯炭槽に石炭を分けて貯蔵し、貯蔵日時を記憶し、先に貯蔵された石炭から先に使用している(いわゆる先入れ先出し)。
【0004】
しかし、石炭貯蔵量が多くなると、先入れ先出しを行っていても、石炭の貯蔵期間が長くなり、使用の順番が来る前に温度が上昇する場合もある。このため、貯炭槽に温度センサを設置し、温度が上昇した場合に、石炭の積み替えを行い、石炭を搬送することにより空冷している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−45564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
石炭は、貯炭槽の天井部から、貯炭槽の略中央部に落下されて積み上げられる。石炭の積み上げ高さは、石炭が落下される中央部を頂部とし、その頂部から離れるに従って低くなる。したがって、貯炭槽の側壁部に温度センサを設置しても、石炭の積み上げ高さが低く、十分な温度測定ができない可能性がある。したがって、温度センサは、貯炭槽の側壁部以外の位置で保持することが好ましい。
【0007】
本発明の課題は、温度センサを貯炭槽の側壁部以外の位置で保持可能な石炭貯蔵設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。
【0009】
(1)互いに区画され内部に石炭が貯蔵可能な複数の貯炭槽と、前記複数の貯炭槽のそれぞれの天井部より前記貯炭槽の内部に吊り下げられた温度センサと、を備える石炭貯蔵設備を提供する。
【0010】
本発明によると、温度センサが貯炭槽の天井部より、貯炭槽の内部に吊り下げられているので、貯炭槽の側壁部以外の位置において石炭の温度を測定することができる。
【0011】
(2)また、前記温度センサは、前記天井部から異なる距離に配置された複数の温度測定部を有してもよい。
これによると、天井部から吊り下げられた温度センサが、天井部から異なる距離に配置された複数の温度測定部を有しているので、貯炭槽内部における異なる水平位置の温度を測定することができる。
【0012】
(3)更に、上記の前記貯炭槽の水平断面は矩形であり、前記貯炭槽の前記天井部には、前記水平断面の一辺に沿った第1の方向の中央を通り、該水平断面の他辺に沿った第2の方向に沿って移動可能に設けられ、搬入された石炭を前記第2の方向に沿って前記貯炭槽内に落下させる石炭搬入装置と、を備え、前記温度測定センサは、前記天井部における、前記第2の方向の中央部であって、前記石炭搬入装置と前記貯炭槽の側壁部との間における前記石炭搬入装置寄りの位置から吊り下げられていてもよい。
【0013】
上述のように、石炭は、貯炭槽内部に天井部から落下される。石炭搬入装置は、貯炭槽の天井部における水平断面の一辺に沿った第1の方向の中央を通り、該水平断面の他辺に沿った第2の方向に沿って貯炭槽の天井部を移動する。このため、石炭は貯炭槽内において第1の方向の中央部が一番高く、その両側が低い山状に積み上げられる。温度センサは、石炭搬入装置と貯炭槽の側壁部との間における石炭搬入装置に近い位置から吊り下げられている。即ち、石炭の山の頂部近傍に吊り下げられている。このため、石炭に埋まる可能性が高く、他の箇所に設けられている場合と比べて石炭の内部温度測定を確実に行うことができる。
【0014】
(4)前記温度センサは、前記天井部に固定される固定部と、前記固定部から延びるワイヤ部とを備え、前記ワイヤ部は、測定箇所の数に対応したシース熱電対と、前記シース熱電対の回りを囲むように配置された複数のワイヤロープと、を備えてもよい。
この温度センサによると、シース熱電対がワイヤロープで囲まれているため、石炭が崩れて衝突等しても、シース熱電対がワイヤロープによって保護される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、温度センサを貯炭槽の側壁部以外の位置で保持可能な石炭貯蔵設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】火力発電所における石炭サイロ、ボイラ、タービン及び発電機の関係を示す図である。
【図2】石炭サイロ及びその周囲の石炭搬送装置を含む石炭貯蔵設備を示す図である。
【図3】石炭サイロの下部に備えられた石炭搬出用のホッパ、払出機及びホッパ下コンベアを説明する図である。
【図4】温度センサの配置を示す図である。
【図5】第2温度センサを示す図であり、(a)は第2温度センサの側面図、(b)は第2温度センサの水平断面図である。
【図6】天井に取り付けられた状態の第2温度センサを示す図である。
【図7】石炭貯蔵設備の搬送制御システムのブロック図である。
【図8】搬送制御装置の外部供給制御を示すフローチャートである。
【図9】石炭の石炭積替制御を含む、全体的な制御を示すフローチャートである。
【図10】石炭積替制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面等を参照して、本発明の一実施形態に係る火力発電所の石炭貯蔵設備について説明する。図1は、火力発電所における石炭サイロ4、ボイラ7、タービン10,11,12及び発電機13,14の関係を示す図である。なお、図を簡単に分かりやすくするため、火力発電所におけるその他の機器は省略してある。石炭船1で火力発電所まで運ばれた石炭は、連続式揚炭機(アンローダ)2で石炭船1からサイロ行コンベア4Aに陸揚げされ、石炭サイロ4に運ばれて、実際に使用されるまでの期間、一時的に貯蔵される。
【0018】
石炭サイロ4での貯蔵後、石炭は、バンカ行コンベア4Bによりバンカ5に搬送される。バンカ5に搬送された石炭は、高性能微粉炭機6で粉末(微粉炭)にされてボイラ7に投入される。微粉炭はボイラ7内で燃焼して、給水8を高温(例えば、約600度)の熱エネルギを有する蒸気9に変える。この蒸気9は、高圧タービン10や中圧タービン11で機械エネルギとなってこれらを回転させ、これらに連結された発電機13を駆動して電気エネルギを生成する。また、余熱を低圧タービン12に導き、これに連結された発電機14も駆動する。
【0019】
図2は、石炭サイロ4及びその周囲の石炭搬送装置を含む石炭貯蔵設備100の一例を示す図である。石炭サイロ4は、その周囲を外壁101で囲まれている。
【0020】
図2に示すように、石炭サイロ4の貯炭エリアは、横方向(図2におけるY方向)にA,B,Cの3列に区分けされ(A,B,Cの符号は外壁101の屋根に図示)、各列は更に、縦方向(図2におけるX方向)にa,b,c,dの4つに区分けされ(a,b,c,dの符号は外壁101の側面下部に図示)、合計12個の貯炭槽102を備えている。なお、貯炭槽102の数は、これに限定されず、それ以上でもそれ以下でもよい。
【0021】
各貯炭槽102を形成する隔壁は、鉛直方向(Z方向)に延びる主柱104と、隣接する主柱104間において複数本鉛直方向(Z方向)に延びる主柱104より細い中間柱105及び水平方向のリング梁106とを有する。そして、これらの柱や梁によってそれぞれの貯炭槽102は、水平断面略矩形状に形成され、各貯炭槽102の上部は、天井柱103aが架け渡され、天井部103が設けられている。
【0022】
石炭貯蔵設備100は、サイロ行コンベア4Aで運ばれてきた石炭を受け入れて、貯炭槽102に石炭を搬送する受入れコンベア20(20A,20B,20C)を備える。受入れコンベア20AはA列の貯炭槽102に石炭を搬送し、受入れコンベア20BはB列の貯炭槽102に石炭を搬送し、受入れコンベア20CはC列の貯炭槽102に石炭を搬送する。また、受入れコンベア20は、それぞれ、貯炭槽102の天井部103に設けられた積付機(石炭搬入装置)108(108A,108B,108C)に連結されている。なお、積付機108Aは受入れコンベア20Aに連結され、積付機108Bは受入れコンベア20Bに連結され、積付機108Cは受入れコンベア20Cに連結されている。積付機108は、それぞれの天井部103の横方向(図中Y方向)における中央部を通って縦方向(図中X方向)に移動可能に設けられている。そして、受入れコンベア20に受け入れられた石炭を縦方向に沿って貯炭槽102内に落下可能となっている。
【0023】
図3は、貯炭槽102の下部に備えられた石炭搬出用のホッパ110、払出機130及びホッパ下コンベア140を説明する図である。ホッパ(hopper)は、一般に石炭等を流下させる漏斗、つまり、じょうご状の装置を意味する。本実施形態でホッパ110は、各貯炭槽102の下部に設置されている。ホッパ110は、格子状に構成されたホッパ壁を備える。縦方向(図中X方向)に延在するホッパ壁111,112,113,114…のうち、奇数番目のホッパ壁111,113,…の側壁は斜めになっている。そして、貯炭槽102の下部は、隣接する奇数番目のホッパ同士によって底部へ石炭を流し込む逆台形形状の空間を有している。この空間の中に偶数番目のホッパ壁112,114…が配置され、偶数番目のホッパ壁の下側には、ホッパの底部との間に隙間133が形成され、その隙間133に、ホッパ壁112,114…に沿って移動可能な払出機130が設置されている。また、横方向にもホッパ壁121,122,123…が延び、これらの横方向ホッパ壁121,122,123…によって縦方向ホッパ壁111,112,113,114…の強度の確保と位置決めがなされている。
【0024】
払出機130は、各々が円弧状であって放射状に延びた6本の爪部材を持った回転部材131を有する。回転部材131は、上述のように、偶数番目のホッパ壁112,114…の隙間133の内部において、爪部材が隙間133に配置されるようにしてホッパ壁112,114…に沿って移動可能に設けられている。また、ホッパ110における偶数番目のホッパ壁112,114…の底部には、払出機130の移動方向に沿ってスリット132が設けられている。
【0025】
スリット132の下部には、ホッパ下コンベア140が設置されている。払出機130は、回転部材131を回転させながら、ホッパ内に貯蔵された石炭の内部を偶数番目のホッパ壁112,114…の各々に沿って移動する。これにより、石炭が隙間133から払い出され、スリット132を通過してホッパ下コンベア140に払い出されるようになっている。
【0026】
ホッパ下コンベア140の搬送終点の下部には、一次払出コンベア160が横方向(図2におけるY方向)に配置され、ホッパ下コンベア140に払い出された石炭は、一次払出コンベア160に受け渡される。一次払出コンベア160の搬送終点には、一次払出コンベア160に対して垂直に設けられた二次払出コンベア161が配置されている。一次払出コンベア160によって搬出された石炭は、二次払出コンベア161でその移動方向を90度変換され、図2においてXマイナス方向に搬送される。
【0027】
二次払出コンベア161の搬送終点には、搬送路切替部162が設けられている。搬送路切替部162は、後述する制御装置の指示により、二次払出コンベア161から運ばれた石炭を、石炭貯蔵設備100の外部、即ちボイラ7で燃焼させるためにバンカ5へ送り出すバンカ行コンベア4Bに乗せるか、又は、再度、貯炭槽102に貯蔵させるため再循環コンベア163に載せるかの切り替えを行う。
【0028】
再循環コンベア163は、搬送路切替部162から延び、石炭を貯炭槽102に積み替えするように、受入れコンベア20に連結されている。
【0029】
図2に戻り、各貯炭槽102の天井部103からは、温度センサ213sが吊り下げられている。また、ホッパ110の頂部には、温度センサ213hが取り付けられている(図2においては図示せず)。図4は、温度センサ213の配置を示す概略図である。温度センサ213は、それぞれの貯炭槽102ごとに、ホッパ110の頂部における同一水平位置に6ヶ所(第1温度センサ213h)、及び、ホッパ110の頂部よりも上である貯炭槽102の内部において、異なる水平位置に6ヶ所(第2温度センサ213s)設置されている。
【0030】
図5は、第2温度センサ213sを示す図である。図5(a)は第2温度センサ213sの側面図、図5(b)は第2温度センサ213sの水平断面図である。なお、図5(b)は図5(a)に対して拡大して示してある。また、図6は、天井部103に取り付けられた状態の第2温度センサ213sを示す図である。
【0031】
第2温度センサ213sは、ワイヤ式の温度センサである。図5(b)で示すように、温度センサ213sは、2本の素線の周囲を絶縁体で囲み、その外周をシースで覆ったシース型熱電対301を6本備える(なお、6本に限定されず、測定箇所の数に応じて、シース型熱電対301の数を増減することができる)。6本のシース型熱電対301は、束ねられてフレキシブルチューブ303で覆われ、その外周は本実施形態において8本のワイヤロープ302によって囲まれている。
【0032】
図5(a)に示すように第2温度センサ213sは、貯炭槽102内部に延びる下部延在部Aと、下部延在部Aから連続して上方に延び、折れ曲がって下方に延び、更に折れ曲がって上方に延びる中間部Bと、中間部Bから上方に延びる上部延在部Cとを備える。
【0033】
下部延在部Aは、6本のシース型熱電対301に対応して6ヶ所の温度測定部307が設けられている。中間部Bの折れ曲がった部分には、それぞれ第1環状部304と第2環状部305とが形成され、第1環状部304の内周側及び第2環状部305の内周側には、それぞれシンブル304a,305aが取り付けられている。また、ワイヤロープが重なる部分は、ワイヤクリップ306で束ねられている。上部延在部Cの先端には、後述する温度監視部214に接続されたターミナルボックス308が取り付けられている(図6参照)。
【0034】
図6に示すように、貯炭槽102の天井部103には、温度センサ固定枠310が設けられている。温度センサ固定枠310は、図2に示すように、それぞれの貯炭槽102の天井部103における、縦方向(X方向)の略中央部であって、横方向(Y方向)においては積付機108と貯炭槽壁の間における積付機108寄りの位置に設けられている。
【0035】
図6に戻り、温度センサ固定枠310は、天井部103から上に向かって延びる2本の縦枠311とそれらの縦枠311の上端の間を架橋する横枠312とを備える。温度センサ213sの上端に設けられた上述のターミナルボックス308は縦枠311に固定されている。また、横枠312には、その横枠312の内側に吊下部315が設けられている。吊下部315には、2つの孔が設けられ、それぞれの孔にはシャックル316が取り付けられている。シャックル316には、両端に環状部が形成されたワイヤロープ317,318がそれぞれ取り付けられている。
【0036】
ワイヤロープ317,318の他端は、第1環状部304にシャックル319を介して取り付けられている。ワイヤロープの一方であるワイヤロープ318は、第2温度センサ213sを吊り下げるためのロープであり、他方のワイヤロープ317は、ワイヤロープ318に対する予備のワイヤロープである。
【0037】
次に、石炭貯蔵設備100の搬送制御システムに200ついて説明する。図7は、搬送制御システム200を示すブロック図である。搬送制御システム200は、石炭の状態を監視する監視装置210と、石炭を移動させる石炭搬送装置220と、それらの監視装置210及び石炭搬送装置220を制御する制御装置230とを備える。
【0038】
監視装置210は、タイマ211と、このタイマ211に接続され石炭の貯蔵期間を記憶する記憶部212とを有している。タイマ211は、所定の貯炭槽102における石炭の貯蔵期間を計時する。また、記憶部212は、その貯蔵期間を記憶する。
【0039】
また監視装置210は、上述の温度センサ213(213s,213h)と、この温度センサ213に接続され、貯蔵石炭の温度を監視する温度監視部214とを有している。温度センサ213(213s,213h)で感知された温度データは、ターミナルボックス308を介して温度監視部214に送信される。温度監視部214は、どの貯炭槽102の、温度センサ213かというデータと共に、この温度データを制御装置230に送る。
【0040】
更に、監視装置210は、各貯炭槽102に設置されたガスセンサ215と、このガスセンサ215に接続され、ガス濃度を監視するガス濃度監視部216とを有している。ガスセンサ215は、CO濃度を測定可能で、それぞれの貯炭槽102ごとに、ホッパ110の頂部においてY方向に等間隔で3ヶ所、及び貯炭槽102の内部に1ヶ所設置されている。更にサイロ全体としての上部に1ヵ所設置されている(いずれも図示せず)。
【0041】
ガスセンサ215で感知されたCOガス濃度データは、ガス濃度監視部216に送信される。ガス濃度監視部216は、どの貯炭槽102のどのガスセンサ215かというデータと共に、このCOガス濃度データを制御装置230に送る。
【0042】
制御装置230は、記憶部212からの貯蔵期間データ及び(払出機130が停止してからの)経過時間データ、温度監視部214からの温度データ、及びガス濃度監視部216からのCOガス濃度データに基づき、石炭を外部に送り出すか、積み替え(再循環)を行うかを制御する。
【0043】
制御装置230は、通常のコンピュータでよく、少なくとも、演算機能を有するCPUと、再循環制御を実行するコンピュータ・プログラムが蓄積されたROMと、作業領域であるRAM、記憶部212、温度監視部214、ガス濃度監視部216及び石炭搬送装置220に接続された入出力制御装置と、モニタ(いずれも図示せず)と、を有している。
【0044】
石炭搬送装置220は、上述の制御装置230の制御に基づいて、石炭を外部に送り出し、又は、再循環させる装置である。石炭搬送装置220は、上述の払出機130、ホッパ下コンベア140、一次払出コンベア160、搬送路切替部162、バンカ行コンベア4B、再循環コンベア163、受入れコンベア20、積付機108を含む搬送部全体をいう。
【0045】
次に、本実施形態の石炭貯蔵設備100で実行される動作について説明する。
【0046】
(先入れ先出し)
まず、上述の石炭貯蔵設備100における、基本的動作である先入れ先出し動作について説明する。貯炭槽102において石炭の平均貯蔵期間を出来るだけ短くするため、原則として、石炭の貯炭槽102への搬入及び外部への搬出は「先入れ先出し」により運用される。
【0047】
サイロ行コンベア4Aで運ばれてきた新しい石炭は、石炭サイロ4の貯炭槽102に受入れコンベア20によって導かれ、積付機108により槽内に落とされ、貯炭槽102に貯蔵される。
【0048】
貯炭槽102で貯蔵が開始されると、タイマ211の計時が開始される。タイマ211の計時に基づき石炭の貯蔵期間が記憶部212によって管理される。そして、石炭使用時(外部に供給してボイラで燃焼させる場合)において、制御装置230は、記憶部212によって管理された貯蔵期間に基づいて、貯蔵期間の最も貯炭槽102の石炭を外部供給するように制御する(以下、この制御を外部供給制御という)。
【0049】
図8は、制御装置230の外部供給制御を示すフローチャートである。
ステップ101(以下、ステップをSで表す)において制御装置230は、上述した貯蔵期間の長い貯炭槽102におけるホッパ110の下部に設置された払出機130を作動させる。これによって、払出機130の回転部材131が回転し、各貯炭槽102の下に形成されたスリット132から石炭は、ホッパ下コンベア140に払い出される。
【0050】
S102において、ホッパ下コンベア140を作動させ、ホッパ下コンベア140上に落下した石炭を搬送する。S103において、一次払出コンベア160及び二次払出コンベア161を作動させる。ホッパ下コンベア140で搬送された石炭は、一次払出コンベア160に移送され、次いで二次払出コンベア161で搬送される。
【0051】
S104において制御装置230は、搬送路切替部162において二次払出コンベア161とバンカ行コンベア4Bとを連結し、S105において、バンカ行コンベア4Bを作動する。これにより、二次払出コンベア161により運ばれた石炭は、外部へ搬出、即ちバンカ行コンベア4Bに乗せられてバンカ5へ運ばれて、ボイラ7で燃焼される。
【0052】
このように、本実施形態の、先入れ先出し方式によると、貯蔵期間の長い貯炭槽102から、また、同一の貯炭槽102においても先に貯蔵された石炭から外部へ搬出される。
【0053】
(積み替え)
次に、石炭積み替え動作について説明する。図9は、石炭の石炭積替制御を含む、全体的な制御を示すフローチャートである。図10は石炭積替(再循環)制御を示すフローチャートである。
【0054】
まず、石炭は、受入れコンベア20によって運搬され、積付機108により貯炭槽102内に落下されて貯蔵される。貯炭槽102で貯蔵が開始されると、タイマ211の計時が開始される。タイマ211の計時に基づき石炭の貯蔵期間が記憶部212によって管理される。以上は上述の先入れ先出しの場合と同様である。
【0055】
図9に示すように、制御装置230は、まず、S201において、記憶部212から石炭搬入後からの貯蔵期間データを読み込む。
【0056】
S202で、この貯蔵期間が第1の期間(本実施形態では1.5ヶ月)を超えているか否かを判定する。超えていなければ(S202,No)、S203に進む。超えていれば(S202,Yes)、後述のS210に進み、制御装置230は石炭貯蔵設備100が石炭の積み替えを行うように図10で示す積替制御を行う。
【0057】
図10の積替制御では、制御装置230の外部供給制御と同様に、S301において貯炭槽102におけるホッパ110の下部に設置された払出機130を作動させる。これによって、払出機130の回転部材131が回転し、各貯炭槽102の下に形成されたスリット132から石炭は、ホッパ下コンベア140に払い出される。S302においてホッパ下コンベア140を作動し、ホッパ下コンベア140上の石炭を搬送する。
【0058】
S303において一次払出コンベア160及び二次払出コンベア161を作動させる。ホッパ下コンベア140で搬送され、石炭は一次払出コンベア160に移送され、次いで二次払出コンベア161で搬送される。
【0059】
S304において、制御装置230は、搬送路切替部162において二次払出コンベア161と再循環コンベア163とを連結させる。これにより、石炭は再循環コンベア163によって搬送されて受入れコンベア20に運ばれる。
【0060】
S305において制御装置230は、再循環コンベア163及び受入れコンベア20を作動させる。サイロ行コンベア4Aによって運ばれた新規搬入の石炭と同じように、再循環コンベア163によって運ばれた石炭も積付機108に運ばれ、再び元の貯炭槽102に戻される。なお、元の貯炭槽102に戻す場合、貯蔵されている石炭の管理の効率化を図れるという利点がある。ただし、これに限定されず、他の貯炭槽102に戻すこともできる。
【0061】
「先入れ先出し」の順番がこなくとも、貯蔵期間が一定の期間を超えている場合に、石炭積み替えを行うのは以下の理由による。
【0062】
本実施形態では、石炭利用において原則として、上述の「先入れ先出し」が採用され、貯炭槽102内にある古い石炭から先に出して平均貯炭期間を短くしている。しかし、石炭貯蔵量が多くなると、貯蔵期間が長くなり、長期貯蔵すると、石炭の温度が上昇する可能性がある。このため、石炭搬入後から一定の期間である第1の期間(例えば、1.5ヶ月)を超えて貯蔵する場合は、まだ使用の順番が来ない場合であっても、一旦コンベア上を搬送させ、空冷するのが好ましいからである。
【0063】
このように温度の上がった貯蔵石炭をベルトコンベアで移動することで石炭の温度を下げることができる。石炭は、全く空気が存在しないところでは酸化反応をおこさないため発熱しないが、わずかな空気がゆっくりと流れるような状態で一番発熱しやすい。しかし、コンベア等を用いて搬送して大量の空気に触れる状態にすると、石炭の発熱量より放散熱量の方が多くなり、石炭の温度は下がる。したがって、サイロに貯蔵されて一旦温度が上がった石炭は、コンベアを用いてサイロ外に払い出し、再びサイロ内に戻す再循環をさせることにより空冷が行われる。
【0064】
なお、本実施形態で第1の期間として採用する1.5ヶ月は、本出願人の電発石川火力の石炭昇温実績値、三隅発電所の昇温率の高い石炭(例えば、ブレアソール炭)の昇温実績値より求めた値である。
【0065】
図9に戻り、S202において貯蔵期間が1.5ヶ月を超えていなければ、S203に進む。
S203で、ホッパ110の頂部における同一水平位置に6ヶ所取り付けられた6個の第1温度センサ213h、及びホッパ110の頂部よりも上である貯炭槽102の内部において異なる水平位置に6ヶ所取り付けられた第2温度センサ213sのそれぞれによって測定された温度データが、温度監視部214に送られる。
そして制御装置230は、温度監視部214から、どの貯炭槽102のどの温度センサ213(213h,213s)かというデータと共に温度データを読み込む。
【0066】
S204で、6個の第1温度センサ213hで測定されたホッパ頂部温度thが、第1温度(例えば、45度)を超えているか否かを判定する。それらの第1温度センサ213hのうちのいずれか1つでも第1温度を超えていれば、後述のS220に進む。超えていなければ、S205に進む。
【0067】
S205で、6個の第2温度センサ213sで測定された貯炭槽内部温度tsが、第2温度(例えば、55度)を超えているか否かを判定する。それらの第2温度センサ213sのうちのいずれか1つでも超えていれば、S210に進む。超えていなければ、S206に進む。
【0068】
このように、ホッパ頂部温度th及び貯炭槽内部温度tsを測定するのは以下の理由による。
【0069】
上述のように、長期貯蔵すると、石炭の温度が上昇する可能性があるため、S202では第1の期間を超えたかどうかを判断している。しかし、第1の期間を超えない場合であっても、石炭の温度が上昇する可能性がある。このため、ホッパ頂部温度thを監視し、その温度が45度(摂氏、以下同じ)になった時点でS210へ進み、積み替えを行う。また、ホッパ頂部温度thが45度にならなくとも、貯炭槽内部温度tsが55度になった時点でS210進み、積み替えを行う。
【0070】
ホッパ頂部温度thにおける第1温度を45度、貯炭槽内部温度tsにおける第2温度を55度としたのは以下の理由による。
【0071】
貯蔵された石炭の性質として、酸化開始温度(60度程度)となると低温酸化域に入り徐々に昇温を始め、蒸発開始温度(70度程度)になると低温酸化域が終わり徐々に石炭水分の蒸発が始まり、赤熱開始温度(85度程度)になると石炭水分が蒸発し放置すると急速に赤熱に至る。
【0072】
ホッパ頂部温度thは、上述のように、ホッパ110の頂部における同一水平位置に6ヶ所に設置された第1温度センサ213hで計測した温度である。貯炭槽102に貯蔵された石炭におけるホッパ頂部温度は、貯炭槽102の内部温度よりも一般的に低い。このため、貯炭槽102の内部温度が、赤熱開始温度、蒸発開始温度、赤熱開始温度になる前の、警戒温度としてホッパ頂部温度thを45度としている。
【0073】
貯炭槽内部温度tsとは、上述のように、ホッパ110の頂部よりも上である貯炭槽102の内部において、異なる水平位置に6ヶ所に設置された第2温度センサ213sで計測した温度である。第2温度である55度は、石炭の赤熱開始温度に対して、積み替え(再循環)に要する時間とその積み替え時間における石炭の温度上昇から求めた温度である。
【0074】
図9に戻り、S205においてサイロ内部温度tsが55度を超えていなければ、S206に進む。S206で、ガス濃度監視部216から、どの貯炭槽102のどのガスセンサかというデータと共に、COガス濃度データを読み込む。
【0075】
S207で、COガス濃度が酸化開始を示す第1の濃度(本実施形態では5ppm)を超えているか否かが判定される。超えていれば、S208に進み、監視が強化され、更にS09に進む。超えていなければ、直接S209に進む。
【0076】
S208では、石炭発熱に対する監視が強化される。監視とは、サイロ内監視であり、毎日定時刻にITV(工業用テレビジョン)(図示せず)を使用して12個の槽を順次確認し、更に1回/日の頻度で行う監視員のパトロールである。S209では、このITVによる槽内の確認作業、監視員のパトロールの頻度を更に頻繁に行うようにする。
【0077】
S209で、COガス濃度が直ちに積み替えを要する第2の濃度(本実施形態では20ppm)を超えているか否かが判定される。超えていれば、S210に進み、超えていなければ、S201に戻る。
【0078】
第1の濃度5ppmは、この濃度がガスセンサ215の検出限界濃度であり、また僅かではあるが石炭の酸化が始まっていることを示す濃度である。5ppmが検出されたら、ここで監視強化体制に入る。第2のCO濃度の20ppmは、過去の実績データより石炭の酸化が本格的に起こっていることを示すCO濃度である。20ppmが検出されたら、直ちに石炭積み替えを開始する。
【0079】
石炭の温度上昇は、最初は貯蔵石炭に均一に起こるのものではなく局部的に発生し、その後温度上昇は徐々に拡がる。したがって、温度監視用の温度計を用いて、各槽当たり数万トンの石炭を10数箇所で測定するだけでは、石炭の温度上昇を確実に検知することができない場合がある。
【0080】
しかし、石炭は温度が上がっていくと一酸化炭素(CO)を必ず発生する。COは空気より軽いため、石炭サイロの上部に集まってくる。したがって、貯炭槽102の上部にガスセンサ215を設置してCO濃度を監視することで、局部的な石炭の発熱も早期に検知することができる。
【0081】
CO濃度測定のためのガスセンサ215は、人体に対する安全確保のための労働安全法の要請により石炭サイロ4の内部に予め設置されたものであり、これを利用している。
【0082】
S211で、石炭の積み替えが終了したか否かが判定される。終了していなければ、S210に戻り、石炭の積み替え作業が継続される。終了していれば、S201に戻る。
【0083】
以上、本実施形態の石炭貯蔵設備100によれば、第2温度センサ213sが天井部から吊り下げられ、天井部103から異なる距離に配置された複数の温度測定部307を有している。このため、水平方向の異なる位置において石炭の温度を測定することができる。
【0084】
また、石炭は積付機108によって貯炭槽102内部に落下させる。積付機108は、貯炭槽102の天井部103におけるY方向の中央部を通る直線に沿って貯炭槽102の天井部103を移動する。このため、石炭は貯炭槽102内において中央部が一番高くY方向の両側が低い山状に積み上げられる。本実施形態で第2温度センサ213sは、積付機108と貯炭槽102のY方向の側壁部との間における積付機108に近い位置から吊り下げられている。即ち、石炭の山の頂部近傍に吊り下げられている。このため、石炭に埋まる可能性が高く、他の箇所に設けられている場合と比べて石炭の内部の温度測定を確実に行うことができる。なお、天井部103のY方向の中央部は、積付機108が配置されているため第2温度センサ213sを配置することができない。
【0085】
以上、説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0086】
4:石炭サイロ、100:石炭貯蔵設備、102:貯炭槽、103:天井部、103a:天井柱、108:積付機、210:監視装置、212:記憶部、213h:第1温度センサ、213s:第2温度センサ、214:温度監視部、215:ガスセンサ、216:ガス濃度監視部、230:制御装置、307:温度測定部、310:温度センサ固定枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに区画され内部に石炭が貯蔵可能な複数の貯炭槽と、
前記複数の貯炭槽のそれぞれの天井部より前記貯炭槽の内部に吊り下げられた温度センサと、を備える石炭貯蔵設備。
【請求項2】
前記温度センサは、前記天井部から異なる距離に配置された複数の温度測定部を有する請求項1に記載の石炭貯蔵設備。
【請求項3】
前記貯炭槽の水平断面は矩形であり、前記貯炭槽の前記天井部には、前記水平断面の一辺に沿った第1の方向の中央を通り、該水平断面の他辺に沿った第2の方向に沿って移動可能に設けられ、搬入された石炭を前記第2の方向に沿って前記貯炭槽内に落下させる石炭搬入装置と、を備え、
前記温度センサは、前記天井部における、前記第2の方向の中央部であって、前記石炭搬入装置と前記貯炭槽の側壁との間における前記石炭搬入装置寄りの位置から吊り下げられている請求項1又は2のいずれか1項に記載の石炭貯蔵設備。
【請求項4】
前記温度センサは、
前記天井部に固定される固定部と、
前記固定部から延びるワイヤ部と、を備え、
前記ワイヤ部は、
測定箇所の数に対応したシース熱電対と、
前記シース熱電対の回りを囲むように配置された複数のワイヤロープと、を備える請求項1から3のいずれか1項に記載の石炭貯蔵設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−241054(P2011−241054A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114670(P2010−114670)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】