説明

石綿処理システム及び石綿処理方法

【課題】石綿及び石綿含有廃棄物1を安全に無害化する装置を具えることを特徴とする石綿処理システム及び石綿処理方法を提供する。
【解決手段】本発明の石綿処理システム及び石綿処理方法は、石綿及び石綿含有廃棄物1を1000℃以上の温度において溶融処理する装置を具えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は石綿及び石綿含有廃棄物を処理するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石綿は、経済的に安価であり、物質的特性にも優れているため、様々な工業製品に使用されてきた。優れた特性としては、不燃・断熱性、抗張力、絶縁性、耐薬品性、耐食・耐久性、親和性、防音性、耐摩耗性があげられる。
【0003】
不燃・断熱性に優れているために、建築物用建材として広範囲で使用され、建物の屋根、屋根用波板、石膏板及び天井用化粧板等に使用されていた。
【0004】
その反面、石綿は耐火・耐熱性に富んだ資材であったため焼却処理が出来なかった。そのため多くはシュレッダーで破砕して埋立てしていたため、石綿繊維の飛散が大問題であった。
【0005】
その空中に飛散した石綿繊維を肺に吸入すると、約20年から40年の潜伏期間を経た後に、肺がんや中皮腫の病気を引き起こす確率が高いため、衛生上・環境上非常に大きな問題である。
【0006】
廃棄する石綿は、埋立する以外は、処理する方法が無いのが現状であった。
【0007】
溶融固化する方法として、その融点以上に加熱して溶かして固化する方法(請求項1)もあるが、クリソタイル(白石綿)の融点は1521℃であり、連続かつ大量に溶解固化させるのは現実的でない。
【0008】
特許文献1に記載された処理方法は、石綿を硬化させるだけであり、石綿の処理時においての飛散の防止には努めていない。
【特許文献1】 特許公開2002−137976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、石綿及び石綿含有廃棄物1の処理システム及び処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、1000℃以上の温度を保つことのできる溶融装置2を具えることにある。
【0011】
溶融装置2の内部雰囲気を1000℃以上に保ち、その溶融装置2の内部に石綿及び石綿含有廃棄物1を装入する。
【0012】
溶融装置2の内部温度は1200℃以上が好ましい。
【0013】
しかし、溶融装置2の中に請求項3から請求項8に記載した副資材3を添加すること、更に石綿を請求項9の塩基度(CaO/SiO又は(CaO+MgO)/(SiO+Al))に調整することにより石綿の融点を下げることができ、1200℃以下でも溶融可能となる。
【0014】
しかも、石綿及び石綿含有廃棄物1を溶融装置2により溶融した際スラグ4となり、その生成したスラグ4は、セメントの材料や肥料や道路の路盤材やレンガ等に利用可能である。
【0015】
本発明の石綿処理方法は、石綿及び石綿含有廃棄物1を1000℃以上(1200℃以上が望ましい)の温度において溶融処理する工程とを具えることにある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、今まで処理が困難で埋立ばかりされてきた石綿及び石綿含有廃棄物1を無害化処理することができる。
【0017】
また、シュレッダー等の破砕工程が不要なため、石綿及び石綿含有廃棄物1中の石綿の針状繊維が飛散して環境が汚染されるのを防止でき、飛散した石綿繊維を吸った際におこる人的被害の低減に大きく寄与できる。
【0018】
さらに、石綿及び石綿含有廃棄物1を無害化して再資源化することが可能になるため、埋立地の問題や埋立後の環境汚染を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、石綿処理方法は、石綿及び石綿含有廃棄物1を1000℃以上の温度において溶融処理する溶融装置2のフローチャートを示したものである。
【0020】
図1に示す溶融装置2は装置内部の雰囲気温度を1000℃以上に保つような構造をしている。
【0021】
溶融装置2内部の温度を1000℃以上に昇温する燃料は、石炭やコークス等の固形燃料が望ましいが、重油や灯油等の液体燃料や天然ガスを利用したバーナー等でもよい。
【0022】
石綿及び石綿含有廃棄物1を溶融装置2に装入して溶融する際、請求項3から請求項7に記述した副資材3を添加して石綿の融点を下げることにより、石綿独自で溶融するより低い温度で溶融できる。
【0023】
溶融装置2で石綿及び石綿含有廃棄物1を溶融した際にスラグ4として排出される。このスラグ4は、セメントの材料や肥料や道路の路盤材やレンガ等に利用可能である。
【実施例1】
【0024】
本発明の石綿処理システム(図1)を用いて、石綿及び石綿含有廃棄物1を溶融してできたスラグの成分を測定して、通常のスラグと測定した値を比較したところほとんど差は見られなかった。下表にスラグの主な成分の測定結果を示す。
この結果から、スラグへの影響はほとんどないものと考えてよい。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、今まで処理が困難で埋立処理されてきた石綿及び石綿含有廃棄物1を、埋立処理せずに無害化処理することができる。
【0026】
また、シュレッダー等の破砕工程が不要なため、石綿及び石綿含有廃棄物1中の石綿の針状繊維が飛散して環境が汚染されるのを防止でき、飛散した石綿繊維を吸った際におこる人的被害の低減にも大きく寄与できる。
【0027】
さらに、石綿及び石綿含有廃棄物1を無害化して再資源化することが可能になるため、埋立地の問題や埋立後の環境汚染を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】 本発明に従う石綿処理システムの代表的なフローチャートである。
【符号の説明】
【0029】
1 石綿及び石綿含有廃棄物
2 溶融装置
3 副資材
4 スラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石綿及び石綿を含有する屑等の廃石綿含有廃棄物を、1000℃以上の温度において溶鉱炉、シャフト炉、竪型炉、電気炉、転炉、高周波誘導炉等で溶融固化処理することを特徴とする石綿処理システム。
【請求項2】
請求項1において、石綿及び石綿を含有する屑等の石綿含有廃棄物を溶鉱炉、シャフト炉、竪型炉、電気炉、転炉、高周波誘導炉等に投入して、石綿含有廃棄物を生成するスラグに混合溶解させることにより、石綿の融点を下げる手段を有する石綿処理システム。
【請求項3】
請求項2において、石綿及び石綿を含有する屑等の石綿含有廃棄物を溶鉱炉、シャフト炉、竪型炉、電気炉、転炉、高周波誘導炉等に投入して、廃石綿のスラグへの溶解を容易にするために、造滓剤としてCaO源の石灰石、又はSiO2源の軟珪石、又は両方を廃棄物とともに投入し、石綿と混合溶解させることにより、石綿の融点を下げる手段を有する請求項2記載の石綿処理システム。
【請求項4】
請求項2において、石綿及び石綿を含有する屑等の石綿含有廃棄物を溶鉱炉、シャフト炉、竪型炉、電気炉、転炉、高周波誘導炉等に投入して、廃石綿のスラグへの溶解を容易にするために、造滓剤として焼却灰又は飛灰又は両方を廃棄物とともに投入し、石綿と混合溶解させることにより、石綿の融点を下げる手段を有する請求項2記載の石綿処理システム。
【請求項5】
請求項2において、石綿及び石綿を含有する屑等の石綿含有廃棄物を溶鉱炉、シャフト炉、竪型炉、電気炉、転炉、高周波誘導炉等に投入して、廃石綿のスラグへの溶解を容易にするために、造滓剤としてガラス屑又は陶器屑又は両方を廃棄物とともに投入し、石綿と混合溶解させることにより、石綿の融点を下げる手段を有する請求項2記載の石綿処理システム。
【請求項6】
請求項2において、石綿及び石綿を含有する屑等の石綿含有廃棄物を溶鉱炉、シャフト炉、竪型炉、電気炉、転炉、高周波誘導炉等に投入して、廃石綿のスラグへの溶解を容易にするために、造滓剤として高炉スラグ等の鉄鋼スラグを廃棄物とともに投入し、石綿と混合溶解させることにより、石綿の融点を下げる手段を有する請求項2記載の石綿処理システム。
【請求項7】
請求項2において、石綿及び石綿を含有する屑等の石綿含有廃棄物を溶鉱炉、シャフト炉、竪型炉、電気炉、転炉、高周波誘導炉等に投入して、廃石綿のスラグへの溶解を容易にするために、造滓剤として汚泥、鉱さい、がれき類、ばいじん等の産業廃棄物を廃棄物とともに投入し、石綿と混合溶解させることにより、石綿の融点を下げる手段を有する請求項2記載の石綿処理システム。
【請求項8】
石綿及び石綿を含有する屑等の石綿含有廃棄物を溶鉱炉、シャフト炉、竪型炉、電気炉、転炉、高周波誘導炉等に投入して、廃石綿のスラグへの溶解を容易にするために、造滓剤の成分調整を行い、請求項3から請求項7の組み合わせ投入を行うことでスラグの流動性を良くし、石綿と混合溶解させることにより、石綿の融点を下げる手段を有する請求項2記載の石綿処理システム。
【請求項9】
請求項8において、石綿及び石綿を含有する屑等の石綿含有廃棄物を溶鉱炉、シャフト炉、竪型炉、電気炉、転炉、高周波誘導炉等に投入して、廃石綿のスラグへの溶解を容易にするために、造滓剤の成分調整を行い、廃石綿を含むすべての投入物からスラグの成分であるCaOやSiO2やMgOやAl2O3の組成割合を計算・予測し、それらのスラグ組成の塩基度、即ち CaO/SiO2又は(CaO+MgO)/(SiO2+Al2O3)を0.15から1.45の範囲に保ち、スラグを溶けやすくし、廃石綿との接触を容易にすることにより、石綿の融点を下げる手段を有する請求項2記載の石綿処理システム。
【請求項10】
石綿及び石綿を含有する屑等の廃石綿含有廃棄物を、1000℃以上の温度において溶鉱炉、シャフト炉、竪型炉、電気炉、転炉、高周波誘導炉等で溶融固化処理することを特徴とする石綿処理方法。
【請求項11】
請求項10において、石綿及び石綿を含有する屑等の石綿含有廃棄物を溶鉱炉、シャフト炉、竪型炉、電気炉、転炉、高周波誘導炉等に投入して、石綿含有廃棄物を生成するスラグに混合溶解させろことにより、石綿の融点を下げる工程を有する石綿処理方法。
【請求項12】
請求項11において、石綿及び石綿を含有する屑等の石綿含有廃棄物を溶鉱炉、シャフト炉、竪型炉、電気炉、転炉、高周波誘導炉等に投入して、廃石綿のスラグへの溶解を容易にするために、造滓剤としてCaO源の石灰石、又はSiO2源の軟珪石、又は両方を廃棄物とともに投入し、石綿と混合溶解させることにより、石綿の融点を下げる工程を有する請求項11記載の石綿処理方法。
【請求項13】
請求項11において、石綿及び石綿を含有する屑等の石綿含有廃棄物を溶鉱炉、シヤフト炉、竪型炉、電気炉、転炉、高周波誘導炉等に投入して、廃石綿のスラグへの溶解を容易にするために、造滓剤として焼却灰又は飛灰又は両方を廃棄物とともに投入し、石綿と混合溶解させることにより、石綿の融点を下げる工程を有する請求項11記載の石綿処理方法。
【請求項14】
請求項11において、石綿及び石綿を含有する屑等の石綿含有廃棄物を溶鉱炉、シヤフト炉、竪型炉、電気炉、転炉、高周波誘導炉等に投入して、廃石綿のスラグへの溶解を容易にするために、造滓剤としてガラス屑又は陶器屑又は両方を廃棄物とともに投入し、石綿と混合溶解させることにより、石綿の融点を下げる工程を有する請求項2記載の石綿処理方法。
【請求項15】
請求項11において、石綿及び石綿を含有する屑等の石綿含有廃棄物を溶鉱炉、シャフト炉、竪型炉、電気炉、転炉、高周波誘導炉等に投入して、廃石綿のスラグへの溶解を容易にするために、造滓剤として高炉スラグ等の鉄鋼スラグを廃棄物とともに投入し、石綿と混合溶解させることにより、石綿の融点を下げる工程を有する請求項11記載の石綿処理方法。
【請求項16】
請求項11において、石綿及び石綿を含有する屑等の石綿含有廃棄物を溶鉱炉、シャフト炉、竪型炉、電気炉、転炉、高周波誘導炉等に投入して、廃石綿のスラグへの溶解を容易にするために、造滓剤として汚泥、鉱さい、がれき類、ばいじん等の産業廃棄物を廃棄物とともに投入し、石綿と混合溶解させることにより、石綿の融点を下げる工程を有する請求項11記載の石綿処理方法。
【請求項17】
石綿及び石綿を含有する屑等の石綿含有廃棄物を溶鉱炉、シャフト炉、竪型炉、電気炉、転炉、高周波誘導炉等に投入して、廃石綿のスラグへの溶解を容易にするために、造滓剤の成分調整を行い、請求項12から請求項16の組み合わせ投入を行うことでスラグの流動性を良くし、石綿と混合溶解させることにより、石綿の融点を下げる工程を有する請求項11記載の石綿処理システム。
【請求項18】
請求項17において、石綿及び石綿を含有する屑等の石綿含有廃棄物を溶鉱炉、シャフト炉、竪型炉、電気炉、転炉、高周波誘導炉等に投入して、廃石綿のスラグへの溶解を容易にするために、造滓剤の成分調整を行い、廃石綿を含むすべての投入物からスラグの成分であるCaOやSiO2やMgOやAl2O3の組成割合を計算・予測し、それらのスラグ組成の塩基度、即ち CaO/SiO2又は(CaO+MgO)/(SiO2+Al2O3)を0.15から1.45の範囲に保ち、スラグを溶けやすくし、廃石綿との接触を容易にすることにより、石綿の融点を下げる工程を有する請求項11記載の石綿処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−216079(P2007−216079A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−352634(P2005−352634)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(598092166)株式会社還元溶融技術研究所 (22)
【Fターム(参考)】