説明

石綿管破砕用超高圧水噴射装置

【課題】超高圧水の噴射圧に応じて、ブレーキ力を比例的かつ自動的に増減させることにより、回転式噴射ノズルの回転数を適性範囲に維持可能とする。
【解決手段】石綿管破砕用超高圧水噴射装置13は、超高圧水の送給路が接続され、内部に回転自在に保持されるとともに、超高圧水流路13dが形成された回転軸部13Eを備えるスイベルジョイント13Aと、前記回転軸部13Eの先端側に設けられ、1又は複数の噴射ノズル38を備えるとともに、噴射位置を回転中心から偏倚させることにより噴射力によって自回転する回転噴射ノズルユニット13Bと、前記回転軸部13Eの回転に伴い同調的に回転するように前記回転噴射ノズルユニット13Bに設けられるとともに、支軸39によって揺動可能に軸支され、回転に伴う遠心力によって拡開する拡開式ブレーキシュー13Cと、この拡開式ブレーキシュー13Cを囲む摺動管13Dとからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の躯体に埋設されている石綿管(アスベスト)を超高圧水の噴射によって破砕するための石綿管破砕用超高圧水噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在では、アスベスト粉塵が中皮腫や肺ガンを引き起こす原因となることが判明しているため、その使用には厳しい制限が設けられているが、従来はアスベスト(石綿)に対する規制が無かったため、建築物では断熱材や絶縁材としてアスベストが頻繁に使用されていた。
【0003】
近年、アスベストを使用している過去の古い建物の解体時期が来ており、その解体方法が問題となっている。たとえば、集合住宅等では浴室風呂釜用として石綿で内面をライニングした排熱管が躯体中に埋設され、またビル等でボイラー管として石綿で内面をライニングした排熱管が躯体中に埋設されており、これら建物の解体に当たっては、躯体解体に先だって先ず石綿管撤去が行われる。石綿管の撤去に当たっては、従来、管の埋設方向に沿って躯体をブレーカなどのハツリ機により破砕し、石綿管を露出させたならば水などを十分噴霧することにより湿潤状態を維持しアスベストが飛散しないようにしながら作業が進められていた。
【0004】
しかし、前述した解体方法では、躯体のハツリ作業にかなりの時間と手間が掛かるため解体作業が効率的に行えないなどの問題があるとともに、極力アスベストが飛散しないように湿潤化を図りながら作業を行ってもアスベストの飛散を完全に防止することは出来ず、作業者および周囲の住人がアスベスト粉塵の危険に侵される危険性があるなどの問題が発生していた。
【0005】
この問題を解決すべく、近年は、下記特許文献1〜3に示されるように、超高圧水の噴射によって石綿管を破砕するようにした超高圧水噴射装置が開示されている。
【0006】
前記特許文献1において、下面側に複数のキャスターを備えた装置ベースと、この装置ベースの上面側に起立支持されたガイド支柱と、このガイド支柱に沿って昇降自在とされる駆動推進装置と、この推進装置によって軸芯周りに回転自在かつ部材長手方向に沿って前後進自在に支持された、先端に超高圧水噴射ノズルヘッドを備えたシャフトとからなる石綿管破砕装置が開示されている。
【0007】
下記特許文献2においては、先端部分に回転噴射ノズルヘッドを備える超高圧水噴射ユニットと、この超高圧水噴射ユニットの後端部に接続され超高圧水を送給する超高圧ホースと、前記超高圧ホースを石綿管内へ送り出し自在かつ石綿管内から引上げ自在に保持する昇降ユニットと、前記超高圧水噴射ユニットの後端部に接続され前記回転噴射ノズルヘッドに回転駆動力を伝達するフレキシブルシャフトと、このフレキシブルシャフトに回転駆動力を与える回転駆動ユニットとから構成される石綿管破砕装置が開示されている。
【0008】
さらに下記特許文献3においては、建物の躯体内に埋設された石綿管を撤去するための石綿管破砕装置において、高圧水を噴射することによって回転するノズルと、前記ノズルが一端に接続されるロータリージョイントと、前記ロータリージョイントの他端に接続されるパイプと、前記パイプに接続される高圧ホースと、前記ノズルの回転に対して負荷を与えるブレーキ機構とを備え、前記ノズルにおける高圧水を噴射する複数の噴射口が、ノズル本体の中心からずれた位置に設けられ、前記噴射口から高圧水を噴射することによって、ノズルに回転力が生ずると共に、前記ブレーキ機構によって前記ノズルが所定範囲の回転数になるように構成された石綿管破砕装置が開示されている。
【特許文献1】特開2000−226942号公報
【特許文献2】特開2003−97059号公報
【特許文献3】特許第3273138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1又は2記載の石綿管破砕装置の場合には、噴射ノズルを備えたシャフト又は回転噴射ノズルヘッドを直接的に、駆動推進装置又は駆動ユニットによって回転させるため、回転数の制御は任意に調整が可能であるけれども、上記特許文献3記載の石綿管破砕装置のように、超高圧水の噴射力を利用した自回転方式の場合には、ブレーキ機構によって所定範囲の回転数となるように制動力の調整がなされるけれども、回転数の調整が非常に困難であった。すなわち、ブレーキ力を所定の回転数に合わせて調整した場合であっても、ブレーキ力は摺動する相手側の摩耗の進行によって絶えず変化するため、長時間、所定範囲の回転数を維持することが困難であった。また、本来は超高圧水の噴射圧に応じてブレーキ力を比例的に増減させ、回転式噴射ノズルの回転数を所定の範囲内に維持することが望ましいのであるが、ブレーキ力を固定的に設定した場合には、超高圧水の圧力を増減した際、ブレーキ力が過大又は過小となってしまい回転ノズルの回転数を適性に保つことができないなどの問題もあった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、超高圧水の噴射圧に応じて、ブレーキ力を比例的かつ自動的に増減させることにより、回転式噴射ノズルの回転数を適性範囲に維持可能とした石綿管破砕用超高圧水噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、超高圧水の噴射力によって自回転する回転噴射ノズルを備えた石綿管破砕用超高圧水噴射装置において、
前記超高圧水噴射装置は、超高圧水の送給路が接続され、内部に回転自在に保持されるとともに、超高圧水流路が形成された回転軸部を備えるスイベルジョイントと、前記回転軸部の先端側に設けられ、1又は複数の噴射ノズルを備えるとともに、噴射位置を回転中心から偏倚させることにより噴射力によって自回転する回転噴射ノズルユニットと、前記回転軸部の回転に伴い同調的に回転するように前記回転軸部又は回転噴射ノズルユニットに設けられるとともに、支軸によって揺動可能に軸支され、回転に伴う遠心力によって外方に拡開する拡開式ブレーキシューと、この拡開式ブレーキシューを囲むように外嵌する摺動管とからなることを特徴とする石綿管破砕用超高圧水噴射装置が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の本発明においては、前記回転軸部又は回転噴射ノズルユニットに揺動可能に軸支され、回転に伴う遠心力によって外方に拡開する拡開式ブレーキシューを設けるとともに、この拡開式ブレーキシューを囲むように外嵌する摺動管を設けるようにした。従って、前記拡開式ブレーキシューは、前記回転軸部や回転噴射ノズルユニットの回転数に応じて遠心力が増減し、摺動管の内壁面に対する摩擦力(ブレーキ力)が増減するため、超高圧水の噴射圧に応じて、ブレーキ力を比例的かつ自動的に増減させることができ、回転式噴射ノズルの回転数を適性範囲に維持することが可能となる。
【0013】
請求項2に係る本発明として、前記スイベルジョイントを支持部材として、石綿管内での昇降をガイドする昇降ガイドを備える請求項1記載の石綿管破砕用超高圧水噴射装置が提供される。
【0014】
上記請求項2記載の本発明においては、前記スイベルジョイントを支持部材として、石綿管内での昇降をガイドする昇降ガイドを備えるようにしたため、石綿管内に挿入した際、どの昇降位置にあっても、本超高圧水噴射装置を石綿管のほぼ中心に位置決めすることが可能となる。
【0015】
請求項3に係る本発明として、前記噴射ノズルはネジ込み式によって着脱可能とされる請求項1、2いずれかに記載の石綿管破砕用超高圧水噴射装置が提供される。
【0016】
上記請求項3記載の本発明は、前記噴射ノズルはネジ込み式によって着脱可能としたものであり、予め、長さ寸法の異なる噴射ノズル(先端に噴射ノズルを備えたノズル管)を複数種用意しておくことにより、破砕対象となる石綿管の管径が異なる場合であっても、石綿管の管径に応じて噴射ノズルを交換することにより、適性な噴射位置にノズルを設定することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上詳説のとおり本発明によれば、前記拡開式としたブレーキシューによって、超高圧水の噴射圧に応じて、ブレーキ力を比例的かつ自動的に増減させることができるようになるため、回転式噴射ノズルの回転数を適性範囲に維持できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0019】
図1に示される古い集合住宅Tでは、浴室風呂釜からの排熱管として、各住戸毎に石綿管1,1…が鉛直方向に沿って躯体に埋設されている。図示の例では、図2に示されるように、コンクリート壁体2中に各階毎の石綿管1A〜1Dが並んで埋設されているとともに、各石綿管1は下端部には2つの排熱口1a,1bを有し、上部口1cが排熱放出口となっている。
【0020】
〔第1形態例〕
(装置構成)
かかる石綿管1を撤去するために、本形態例に係る方法では図3に示されるように、撤去対象石綿管1の排熱放出口部1c部位に設置される石綿管破砕装置3と、この石綿管破砕装置3に超高圧水を供給するためのポンプ車4と、前記石綿管1下端の排熱口1aに吸引ホース10が接続されたバキューム車5とを用いて撤去が行われる。なお、前記バキューム車5の吸引ホース10は、図4に示されるように、2つある排熱口1a、1bの内、下端側排熱口1aに対して接続され、上段側排熱口1bの方は排熱口封鎖板12によって少なくとも施工中は塞がれている。
【0021】
前記石綿管破砕装置3は、図5に示されるように、超高圧水の噴射力によって自回転する回転噴射ノズルを備えた超高圧水噴射装置13と、この高圧水噴射装置13に接続され超高圧水を供給するための超高圧ホース14と、この超高圧ホース14を石綿管内へ送り出し自在かつ石綿管内から引上げ自在に保持する昇降ユニット15と、石綿管1の上部口1cを封鎖するとともに、前記超高圧ホース14を挿通するためのシール挿通部を備えた石綿管上部封鎖具16と、この石綿管上部封鎖具16に接続された吸引用ホース18と、この吸引用ホース18が接続された減圧集塵装置17とから構成されるものである。
【0022】
前記超高圧水噴射装置13は、図7〜図9等に示されるように、超高圧水の送給路が接続され、内部に軸芯回りに回転自在に保持されるとともに、超高圧水流路が形成された回転軸部13Eを備えるスイベルジョイント13Aと、前記回転軸部13Eの先端側に設けられ、1又は複数の噴射ノズル38を備えるとともに、噴射位置を回転中心から偏倚させることにより噴射力によって自回転する回転噴射ノズルユニット13Bと、前記回転軸部13Eの回転に伴い同調的に回転するように前記回転噴射ノズルユニット13Bに設けられるとともに、支軸によって揺動可能に軸支され、回転に伴う遠心力によって外方に拡開する拡開式ブレーキシュー13Cと、この拡開式ブレーキシュー13Cを囲むように外嵌する摺動管13Dとから構成され、更に前記スイベルジョイント13Aを支持体として固定された昇降ガイド37を備えるものである。
【0023】
前記超高圧水噴射装置13は、組立て状態では図9に示されるように、前記スイベルジョイント13Aの下端側に前記摺動管13Dが接続され、前記スイベルジョイント13Aの回転軸部13Eの先端に対して前記回転噴射ノズルユニット13Bが接続され、前記回転噴射ノズルユニット13Bの上面に一体的に設けられた拡開式ブレーキシュー13Cが前記摺動管13Dに内設されるようになっている。
【0024】
以下、更に具体的に詳述すると、
前記スイベルジョイント13Aは、外筒13cの上部に、超高圧水ホース14の接続口13aを備える接続アダプター13bを備えるとともに、前記外筒13cの内部に、各種ベアリングによって軸芯回りに回転自在に保持されるとともに、超高圧水流路13dが形成された回転軸部13Eを備えた部材である。前記回転軸部13Eは、スイベルジョイント13Aの下面より突出し、その先端部外周には回転噴射ノズルユニット13Bとの接続のためにネジ部が形成されている。
【0025】
また、前記外筒13cの下端外周にはネジが形成され、前記摺動管13Dが接続可能となっている。前記摺動管13Dは、断面略H形状を成す管材で、隔壁13eによって前記外筒13cの下面を封鎖するとともに、組立て状態では前記拡開式ブレーキシュー13Cを囲むように外側に位置し、後述するように、前記拡開式ブレーキシュー13Cが摺動管13Dの内面を摺動することにより、回転噴射ノズルユニット13Bの回転に対し制動力を与えるようになっている。
【0026】
前記回転噴射ノズルユニット13B及び拡開式ブレーキシュー13Cは、詳細には図10に示されるように、回転噴射ノズルユニット13Bの上面に、前記拡開式ブレーキシュー13Cが一体的に設けられた構造となっている。
【0027】
前記回転噴射ノズルユニット13Bは、上面中央に前記回転軸部13Eの先端が螺入されるネジ孔13fが形成されるとともに、このネジ孔13fに連通して二股状に分岐する超高圧水流路13g,13hが形成され、この超高圧水流路13g,13hの吐出部に噴射ノズル38,38がネジ込み式によって着脱可能に設けられている。また、前記回転噴射ノズルユニット13Bの先端面には、噴射ノズル38、38に石綿粉塵が付着しづらいように、ノズルカバー41が設けられている。
【0028】
なお、図8〜図10の例では、突出長の短いチップ状ノズル38を装着した例となっているが、石綿管1の内径に応じて噴射位置を適性位置とするために、図7に示されるように、管先端にノズルを備えた所定長さの噴射ノズル管38A、38Aに交換可能となっている。
【0029】
前記噴射ノズル38,38は、図10(C)に示されるように、噴射位置を回転中心から偏倚させており(偏倚量D)、超高圧水の噴射力によって回転噴射ノズルユニット13Bに回転モーメントが与えられ、前記拡開式ブレーキシュー13Cが回転軸部13Eと共に自回転するようになっている。
【0030】
一方、前記拡開式ブレーキシュー13Cは、ネジ軸39によって拡開方向に揺動可能に支持された左右一対の円弧状ブレーキシュー40A、40Bからなるもので、図11に示されるように、回転噴射ノズルユニット13Bの自回転に伴い、遠心力によって外方に拡開し、前記摺動管13Dの内面に摺動することにより回転数に応じた制動力を与えるようになっている。かかる拡開式のブレーキシュー13Cとすることにより、回転噴射ノズルユニット13Bの回転数に応じて遠心力が増減し、摺動管13Dの内壁面に対する摩擦力(ブレーキ力)を増減させることができ、超高圧水の噴射圧に応じてブレーキ力を比例的に増減させることができるようになるため、回転数を適性範囲に維持することが可能となる。なお、前記拡開式ブレーキシュー13Cは、本例では回転噴射ノズルユニット13Bに設けるようにしたが、回転軸部13Eに設けるようにしてもよい。
【0031】
他方、前記昇降ガイド37は、超高圧水噴射装置13を石綿管1内に挿入した際、前記回転噴射ノズルユニット13Bを石綿管1の略中心部に位置決めするためのものである。昇降ガイド37は、図示例では、管材により構成されたフレーム部材であり、下端部に環状部材37aを有し、この環状部材37aから上方向に延在する4本の縦方向部材37b、37b…が設けられ、上部において前記縦方向部材37b、37b…が中心側に屈曲し、超高圧ホース14を挿通させるリング37cに接続され、前記縦方向部材37b、37b…に設けられた連結部材37d、37d…が前記スイベルジョイント13Aに外嵌される締結部材37eに連結された構造となっている。
【0032】
前記石綿管上部封鎖具16は、図5に示されるように、函体形状(ボックス状)を成し、石綿管1の封鎖板部となる底面板部16aに、シール挿通部を備える石綿吸引器具16Bが設けられ、函体部16Aの側面には函体部16A内の状況を観察できるようにするための覗き窓16dが設けられているとともに、上面には昇降ユニット15を載置するための載置台24が設けられている。
【0033】
前記石綿吸引器具16Bは、縦管16bと、この縦管16bの側面に接続された横管16cとからなり、前記縦管16bの上部には、図6に示されるように、放射状に切込みが形成されたゴムシール体からなるシール挿通部材19が設けられ、石綿粉塵が外部に飛散するのを防止している。
【0034】
前記横管16cには、吸引用ホース18が接続されるとともに、この吸引用ホース18の他端が減圧集塵機17に接続されている。
【0035】
図示されるように、前記昇降ユニット15より送り出された高圧ホース14は、載置台24に形成された孔部(図示せず)を挿通するとともに、前記石綿吸引器具16Bのシール挿通部材19を通して石綿管1内に挿入され、前記超高圧ホース14が、前記昇降ユニット15によって石綿管1内へ送り出し自在かつ石綿管1から引上げ自在に保持されている。この昇降ユニット15は、図12に示されるように、上部側に対向配置された一対の上部側昇降用プーリ20A、20Bと、下部側に対向配置された下部側昇降用プーリ21A、21Bとを上下段で配置するとともに、前記下部側昇降用プーリ21Aの回転軸に電動機22の原動軸を接続するとともに、下部側昇降用プーリ21Aのベルト車21aと上部側昇降用プーリ20Aのベルト車20aとの間にベルト23を巻回した構造の装置で、前記上下段の昇降用プーリ20A・20B、21A・21Bが同調的に回転駆動し、超高圧ホース14が送り出し自在かつ引上げ自在に保持されている。なお、前記超高圧ホース14は、図示しない巻取り装置に巻き取られるようになっている。また、前記電動機22は発電機26から給電ケーブル25によって電源が供給されるとともに、送り出し/引上げのために正逆方向に回転制御されるようになっている。
【0036】
前記減圧集塵機17は、負圧を掛けることにより、石綿管破砕時に生じた石綿粉塵を外部に漏らすことなく、吸引除去し得る装置であればどのようなものであっても良いが、好ましくは減圧機と、貯留タンク又はバグフィルターとからなる装置を作業現場サイトに設備するのが良い。
【0037】
一方、前記石綿管破砕装置3に超高圧水を供給するためのポンプ車4は、機構的には図13に示されるように、油圧ユニット27と、給水ユニット28と、ブースター(増圧機)29と、アキュムレータ30とから構成される超高圧水発生装置6を荷台に搭載した車両で、油圧ユニット27から出された作動油によりブースター29内のピストンが左右に動作され、ウォーターチャンバー内にある水を圧縮し超高圧水を発生させるようになっている。また、アキュムレータ30を送給路途中に介在させることにより超高圧水の圧力が一定に保たれるようになっている。通常は、前記超高圧水発生装置6により1000〜4000kgf/cm程度の超高圧水を発生させることができるが、本石綿管1の破砕では2300〜2500kgf/cmの噴射圧に設定される。
【0038】
(施工手順)
以下、前述した装置を用いた石綿管撤去手順について図14を参照しながら詳述する。
【0039】
まず、作業をはじめる前に、石綿管1の撤去前の状況をCCDカメラによって撮影する。図14(A)に示されるように、シャフト35の先端に小型CCDカメラ36を取り付け、これを石綿管1の上部口1cから挿入し、長手方向全長に亘って撮影を行い、ビデオに収録する。
【0040】
次いで、図14(B)に示されるように、石綿管1の上部口1c部位に本発明に係る石綿管破砕装置3を設置するとともに、石綿管1の下端に設けられた2つの排熱口の内、上段排熱口1bについては排熱口封鎖板12によって塞ぎ、下段側排熱口1aに対してバキューム車5の吸引ホース10を接続する。また、前記石綿管破砕装置3は、前記超高圧ホース14を昇降用プーリ20A・20B、21A・21Bの回転によって繰り出し、超高圧水噴射装置13を石綿管1の管底部まで下降させる。
【0041】
ここまでの準備作業が完了したならば、石綿管1の破砕撤去を開始する。石綿管1の上部口側からは減圧集塵機17により吸引を行うとともに、下端側からはバキューム車5による吸引を行う。
【0042】
次いで、ポンプ車4を稼働させて超高圧水噴射装置13に超高圧水を供給し、ノズルユニット13Bを回転させながら、前記超高圧水噴射装置13を徐々に引上げることにより、超高圧水の噴射によって石綿管1を連続的に破砕する(図14(B)(C)参照)。この際、前記ノズルユニット13Bの回転速度は概ね150〜270rpm、引上げ速度は300〜500mm/minに設定するのが望ましい。
【0043】
前記超高圧噴射装置13を石綿管上部口1cまで引上げ、石綿管1の撤去が完了したならば、破砕残しがないかどうかを確認するため、図14(A)に示される要領にてCCDカメラ36を孔内に挿入し、全長に亘って確認を行い、仮に破砕残しがあったならば、深さ位置を確認した後、超高圧水噴射装置13を前記破砕残し部まで挿入し、この周辺部分を再び超高圧水噴射によって破砕する。
【0044】
上記作業を石綿管1毎に繰り返し行い、すべての石綿管1.1…を撤去する。
【0045】
(廃水処理)
前記バキューム車5により回収された石綿粉塵や石綿片(以下、石綿回収水という。)は、現場サイトの処理施設または所定場所に設けられた処理施設まで運搬され、石綿分が分離された後、放流処理される。
【0046】
具体的には、図15に示されるように、内部が隔壁32,32により3つの槽に区画された沈降分離漕31A〜31Cを連設し、先ず第1の沈降分離槽31Aに石綿回収水を投入する。石綿回収水は、各隔壁32、32を溢流した水が順番に区画された槽に流れ込む過程で重力沈降により石綿片等の比較的重量のあるものが沈降分離される。最終区画槽に沈設された水中ポンプ33により次の沈降分離槽31B、31Cの順に移送され、最終沈降槽となる31Cでは高分子凝集剤を添加することにより水中に浮遊している石綿繊維が凝集され沈降分離される。これらの沈降分離槽31A〜31Cによっても分離できない25〜100μmクラスの石綿微細粒子については、これら沈降分離槽31A〜31Cを経た上澄水からさらにフィルター34によって前記石綿微細粒子を取り除いた後、下水に放流処理される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】石綿管1が排熱管として使用されている集合住宅の全体図である。
【図2】石綿管埋設部位の縦断面図である。
【図3】石綿管1の撤去作業要領図である。
【図4】石綿管1の下部での吸引ホース接続要領図である。
【図5】石綿管破砕装置3を示す側面図(一部断面)である。
【図6】図5のVI−VI線矢視図である。
【図7】昇降ガイド付き超高圧水噴射装置13を示す、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図8】超高圧水噴射装置13の分解斜視図である。
【図9】超高圧水噴射装置13の断面図である。
【図10】回転噴射ノズルユニット13B及び拡開式ブレーキシュー13Cを示す、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。
【図11】拡開式ブレーキシュー13Cの拡開状態を示す平面図である。
【図12】昇降ユニット15を示す、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図13】超高圧水発生装置6の装置構成図である。
【図14】(A)〜(C)は石綿管1の撤去要領段階図である。
【図15】回収した石綿管混入水の沈降分離処理要領図である。
【符号の説明】
【0048】
1…石綿管、2…躯体、3…石綿管破砕装置、4…ポンプ車、5…バキューム車、6…超高圧水発生装置、10…吸引ホース、13…超高圧水噴射装置、13A…スイベルジョイント、13B…回転噴射ノズルユニット、13C…拡開式ブレーキシュー、13D…摺動管、13E…回転軸部、14…超高圧ホース、15…昇降ユニット、16…石綿管上部封鎖具、16A…函体部、16B…石綿吸引器具、17…減圧集塵機、37…昇降ガイド、38…噴射ノズル、38A…噴射ノズル管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超高圧水の噴射力によって自回転する回転噴射ノズルを備えた石綿管破砕用超高圧水噴射装置において、
前記超高圧水噴射装置は、超高圧水の送給路が接続され、内部に回転自在に保持されるとともに、超高圧水流路が形成された回転軸部を備えるスイベルジョイントと、前記回転軸部の先端側に設けられ、1又は複数の噴射ノズルを備えるとともに、噴射位置を回転中心から偏倚させることにより噴射力によって自回転する回転噴射ノズルユニットと、前記回転軸部の回転に伴い同調的に回転するように前記回転軸部又は回転噴射ノズルユニットに設けられるとともに、支軸によって揺動可能に軸支され、回転に伴う遠心力によって外方に拡開する拡開式ブレーキシューと、この拡開式ブレーキシューを囲むように外嵌する摺動管とからなることを特徴とする石綿管破砕用超高圧水噴射装置。
【請求項2】
前記スイベルジョイントを支持部材として、石綿管内での昇降をガイドする昇降ガイドを備える請求項1記載の石綿管破砕用超高圧水噴射装置。
【請求項3】
前記噴射ノズルはネジ込み式によって着脱可能とされる請求項1、2いずれかに記載の石綿管破砕用超高圧水噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−102605(P2006−102605A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290950(P2004−290950)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(505000608)株式会社アクアウエスト (2)
【Fターム(参考)】