説明

石膏ボード用塗材およびこれを用いた内装仕上げ方法

【課題】本発明は、石膏ボード間の目地処理剤としても、石膏ボード表面の仕上げ用塗材や下塗り材としても好適に用いることができ、かつVOCが発生しない、シラス含有の石膏ボード用塗材およびこれを用いた内装仕上げ方法を提供することを目的とする。
【解決手段】シラス、石膏、植物性澱粉糊、粘度調整剤および適宜量の水を混練してなり、石膏ボードと吸水率が実質的に同一であることを特徴とする石膏ボード用塗材およびこれを用いた内装仕上げ方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の壁や天井等の内装壁の下地として広く用いられている石膏ボードの表面仕上げや石膏ボード間の目地処理に好適な石膏ボード用塗材およびこれを用いた内装仕上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の壁や天井等の内装壁は、一般的に、下地となる複数の石膏ボードを所定位置に固定した後、石膏ボード間の目地処理を行い、必要に応じて石膏ボード表面に下塗りを施し、さらに石膏ボードの表面に仕上げ塗りを施すもしくは壁紙等を貼り付けることで形成されている。また、上記目地処理は、通常、石膏ボード間の僅かな隙間をコーキング材や目地パテで埋めた後、例えば、布、ビニール、グラスファイバー製等のメッシュ状に加工したテープ材をボンド系の接着剤で目地に沿って貼り、最後にこのテープ材の上に目地ジョイントパテを約8〜12cmの幅で目地に沿って平滑に塗布することで行われている。
【0003】
しかし、従来の、石膏ボードを下地として用いた場合における内装壁の内装仕上げ方法では、石膏ボード間の目地処理から石膏ボードの表面仕上げを完了するまでに最低でも2日以上を要し、また、その分余計にコストもかかってしまう。
【0004】
また、従来の方法により処理された石膏ボード間の目地および目地周辺部(以下、目地処理部という)は、石膏ボード表面部よりも数mm盛り上がってしまうため、その上から仕上げ用塗材を塗布する場合には、当該目地処理部の盛り上がりを覆うように、かつ該塗材の塗布層表面が平坦になるように塗布する必要が生じる。つまり、この場合、石膏ボード表面に仕上げ用塗材を3mm以下程度に薄く均一に塗布することは困難である。
【0005】
さらに、石膏ボード間の目地処理部は、通常、水分の吸水率が他の場所よりも大きいため、目地処理部上に塗布された仕上げ用塗材の乾燥のみが早く進行し、その結果、仕上げ用塗材塗布層にひび割れや色違い等の不具合が発生する恐れがある。
【0006】
さらに、石膏ボード間の処理に用いる目地パテ、テープ材や壁紙を貼るための接着剤、石膏ボード表面に塗布する塗材などには、近年、大きな問題となっているシックハウス症候群の原因であるVOC(揮発性有機化合物)を発生しうるものが依然として広く用いられており、これに代わる各種内装仕上げ用材料が強く望まれている。
【0007】
一方、近年、南九州に広く分布し、白色粗しょうの火山噴出物の一種であるシラスを豊富な資源として有効に活用しようとする様々な試みが為されている。代表的な例としては、シラスを急速加熱して得られる中空形状のシラスバルーンを軽量骨材や断熱材として各種の建築用材料に配合することが挙げられる。
【特許文献1】特開2000−213145号公報
【特許文献2】特開2002−348169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、建築物の内装壁下地として固定された石膏ボードの表面処理および石膏ボード間の目地処理のいずれにも対応することが可能で、かつVOCが発生しない、シラス含有の石膏ボード用塗材およびこれを用いた内装仕上げ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記(1)〜(9)に記載の事項をその特徴とするものである。
【0010】
(1) 建築物の内装壁として固定された石膏ボードの表面および/または石膏ボード間の目地を処理するための石膏ボード用塗材であって、シラス、石膏、植物性澱粉糊、粘度調整剤および適宜量の水を混練してなり、塗布乾燥後の吸水率が前記石膏ボードと実質的に同一であることを特徴とする石膏ボード用塗材。
【0011】
(2)前記シラスを10〜30重量%、前記石膏を65〜85重量%、前記植物性澱粉糊を1〜5重量%および前記粘度調整剤を0.1〜1重量%含むことを特徴とする上記(1)に記載の石膏ボード用塗材。
【0012】
(3)前記シラスの平均粒径が300μm以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の石膏ボード用塗材。
【0013】
(4)前記植物性澱粉糊が、綿花材、つのまた、またはこれらの混合物であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の石膏ボード用塗材。
【0014】
(5)前記粘度調整剤が水溶性セルロースエーテル、水溶性メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の石膏ボード用塗材。
【0015】
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の石膏ボード用塗材を、内装壁として固定された石膏ボードの表面および/または石膏ボード間の目地に塗布する工程、を有することを特徴とする内装仕上げ方法。
【0016】
(7)前記石膏ボード用塗材を塗布して形成された塗布層の厚みが3mm以下であることを特徴とする上記(6)に記載の内装仕上げ方法。
【0017】
(8)前記石膏ボード用塗材を塗布して形成された塗布層表面に、シラスを50重量%以上含む上塗り材をさらに塗布する工程を有することを特徴とする上記(6)または(7)に記載の内装仕上げ方法。
【0018】
(9)前記上塗り材が、シラスを50〜70重量%および石膏を20〜40重量%含むことを特徴とする上記(8)に記載の内装仕上げ方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、石膏ボード間の目地処理剤としても、石膏ボード表面の下塗り材もしくは仕上げ用塗り材としても好適に用いることができ、かつVOCが発生しない、シラス含有の石膏ボード用塗材およびこれを用いた内装仕上げ方法を提供することが可能となる。
【0020】
つまり、本発明の石膏ボード用塗材は、特別な前処理を行うことなしに、石膏ボード間の目地(溝)に塗布(充填)するだけで目地処理を行うことができ、なおかつ、石膏ボード表面の仕上げ処理を行うことができるため、当該本発明の塗材のみで1度に石膏ボードの表面処理と石膏ボード間の目地処理を行うことができ、その結果、これら処理を1日で終わらすことができ、従来と比較して大幅な工期短縮とコスト削減を実現することが可能となる。さらに、従来技術と比較して目地処理部の盛り上がりを抑えることができるため、石膏ボードの表面処理層(塗布層)を3mm以下程度の厚みで薄く均一に形成することも可能となる。また、塗材の塗布乾燥後の吸水率が塗布対象となる石膏ボードと実質的に同一であるため、当該塗材層やその上に形成されうる上塗り材層にひび割れや色違いといった不具合が生じ難い。
【0021】
また、石膏ボード表面に本発明の石膏ボード用塗材を下塗り材として塗布し、その上にシラスを主成分として含む上塗り材、特にシラスと石膏を含む上塗り材を塗布した場合には、両塗り材層間の接着性や追従性などが向上し、さらには、脱臭性、調湿性、断熱性、吸音性、マイナスイオン発生機能などのシラスが有する様々な特性を内装壁表面に付与することができるため、室内を常に快適な環境に保つことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の石膏ボード用塗材は、建築物の内装壁として固定された石膏ボードの表面および/または石膏ボード間の目地を処理するためのものであって、シラス、石膏、植物性澱粉糊、粘度調整剤を含む塗材原料を適宜量の水と混練してなるものであり、かつ塗布乾燥後の吸水率が下地となる石膏ボードと実質的に同一であることをその特徴とするものである。
【0023】
本発明の塗材に配合される上記シラスは、南九州に広く分布する火山噴出物の一種で、高温マグマの冷却により結晶分化作用が起こり、マグマの主成分であるSiO、Ai、Fe、FeO、MgO、CaO、NaO、KO等が互いに集まり鉱物として晶出し、その後ほどなく爆発的に噴出して形成されたものであり、約3割の結晶鉱物と約7割の非晶質の火山ガラスから成っているものである。また、前述したように、近年では、これを豊富な資源として有効に活用しようとする様々な試みが為されており、特に、シラスを加熱処理等して製造されるシラスバルーンは、様々な材料の軽量骨材や増量剤として用いられているが、本願発明において使用する上記シラスは、そのような高温加熱処理等は施さずに、自然乾燥し、篩いにかけて粒径を整えただけのものである。もちろん、上記シラスとは別にシラスバルーンを本発明の塗材に配合してもよく、この場合には、塗布層表面の仕上がりをふわりとソフトな感じにすることができる。
【0024】
また、上記シラスの粒径は、特に限定されないが、300μm以下(60目アンダー)であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましい。この粒径が300μmを越えると、塗布層表面が粗くなり、仕上がりのなめらかさを保てなく恐れがある。もちろん、塗布層表面をあえて粗く仕上げるデザインにする場合には、300μmを越える粒径のシラスを用いても構わない。
【0025】
また、上記シラスは、本発明の塗材の原料(水以外の成分、以下同じ)中、10〜30重量%含まれることが好ましく、15〜25重量%含まれることがより好ましい。
【0026】
本発明の塗材に配合される上記石膏は、収縮ひび割れ等に対し比較的強度を有する自硬性の結合材であり、例えば、焼き石膏(CaSO)を主原料とするものを好ましく用いることができる。また、石膏につのまたやゼラチン等の硬化遅延材を添加して硬化時間を調整した石膏プラスターや当該石膏プラスターにさらに川砂、けい砂、軽量骨材、炭酸カルシウム等を混合した石膏プラスターであってもよく、夫々用途に応じて使い分けることができる。
【0027】
また、上記石膏は、本発明の塗材の原料中、65〜85重量%含まれることが好ましく、70〜80重量%含まれることがより好ましい。
【0028】
本発明の塗材に配合される上記植物性澱粉糊は、塗材の塗布作業性、接着性、保水性(吸水率)などを調整するために配合するものであり、その種類は特に限定されないが、例えば、綿花材、つのまた、またはこれらの混合物を用いることができる。
【0029】
また、上記植物性澱粉糊は、本発明の塗材の原料中、1〜5重量%含まれることが好ましく、1〜3重量%含まれることがより好ましい。
【0030】
本発明の塗材に配合される上記粘度調整剤は、塗材の塗布作業性、接着性、保水性(吸水率)などを調整するために配合するものであり、その種類は特に限定されないが、好ましくは、天然のセルロース(パルプ繊維)を原料とする、水溶性セルロースエーテル、水溶性メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース等を採用する。
【0031】
また、上記粘度調整剤の配合量は、本発明の塗材の原料中、0.1〜1重量%含まれることが好ましく、0.5〜1重量%含まれることがより好ましい。
【0032】
本発明の塗材には、上記必須成分の他に、必要に応じて、公知の顔料や骨材等の添加材を、本発明の塗材の特性を損なわない範囲で配合してもよい。
【0033】
本発明の塗材は、上記塗材原料、すなわち、上記必須成分および必要に応じて添加される添加材を適宜量の水と混練してなるものである。配合する水の量は、塗材の塗布作業性等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、好ましくは、本発明の塗材の原料100重量部に対して、20〜50重量部程度配合することが好ましい。
【0034】
また、本発明の塗材を塗布、乾燥してなる塗布層の吸水率が石膏ボードのそれと実質的に同一であることが好ましく、さらには、その伸縮率も実質的に同一であることが好ましい。本発明の塗材の吸水率や伸縮率を石膏ボードのそれと同一にすることで、当該塗材層やその上に形成されるる上塗り材層に生じうるひび割れ等を効果的に防ぐことが可能となる。なお、本発明の塗材の吸水率や伸縮性は、必須成分の配合量を適宜調整することで、所望の値に調整することが可能である。また、本発明において上記「実質的に同一である」とは、本発明の塗材塗布層の吸水率と、処理対象となる石膏ボードの吸水率との差が、3%以内であることを意味し、望ましくは1%以内である(伸縮率も同様)。また、吸水率は、JIS A 6901(石膏ボード製品、吸水試験)に準拠して測定することができる。
【0035】
以上のような本発明の塗材は、建築物の内装壁下地として固定された石膏ボードの表面や石膏ボード間の目地を容易に処理することができるため、石膏ボード用の内装仕上げ材料として非常に有用なものである。つまり、目地処理については、従来必要であった前処理を行うことなく、単に目地(溝)に本発明の塗材を塗布(充填)すればよいため、大幅にその工期とコストを削減することができ、さらに、これを石膏ボード表面の仕上げ用塗材として兼用することで、石膏ボード表面の塗材層(仕上げ材層)を3mm以下程度に薄く均一に塗布することもでき、なおかつ、施工コストと時間を大幅に削減することが可能となる。
【0036】
本発明の内装仕上げ方法は、例えば、上記本発明の塗材を、内装壁として固定された石膏ボードの表面および/または石膏ボード間の目地に、塗布表面が平坦になるようにコテやローラー等で塗布する工程を有することをその特徴とするものである。
【0037】
また、本発明の内装仕上げ方法において、上記本発明の塗材自体を仕上げ用塗材として用いる場合には、当該塗材層表面の意匠性を高めるために、各種デザインによる表面仕上加工を施してもよい。一方、上記本発明の塗材を下塗り材として用いる場合には、当該塗材層表面に別途、上塗り材(仕上げ用塗材)を塗布する。
【0038】
上記上塗り材としては、特に限定されないが、天然素材を主成分とし、VOCが発生しないものであることが好ましい。具体的には、シラス、ボラ、珪藻土、貝殻粉末などの多孔質物質を主成分とする無機系塗材であることが好ましい。本発明の塗材の塗布層表面との接着性などを考慮すると、シラスを主成分として50重量%以上含む塗材を用いることが好ましく、シラスを50〜70重量%および石膏を20〜40重量%含む塗材を用いることがより好ましい。より具体的には、主原料としてシラスを含み、なおかつ、セメントや石膏等の結合材、粘土材、シラスバルーン、接着補強材等を含む「中霧島壁」(株式会社高千穂製、商品名、シラス含有無機系塗材)が挙げられ、これを用いた場合には、内装壁に脱臭性、調湿性、断熱性、吸音性、マイナスイオン発生機能などのシラスが有する様々な特性を効果的に付与することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の内装壁として固定された石膏ボードの表面および/または石膏ボード間の目地を処理するための石膏ボード用塗材であって、シラス、石膏、植物性澱粉糊、粘度調整剤および適宜量の水を混練してなり、塗布乾燥後の吸水率が前記石膏ボードと実質的に同一であることを特徴とする石膏ボード用塗材。
【請求項2】
前記シラスを10〜30重量%、前記石膏を65〜85重量%、前記植物性澱粉糊を1〜5重量%および前記粘度調整剤を0.1〜1重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の石膏ボード用塗材。
【請求項3】
前記シラスの平均粒径が300μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の石膏ボード用塗材。
【請求項4】
前記植物性澱粉糊が、綿花材、つのまた、またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の石膏ボード用塗材。
【請求項5】
前記粘度調整剤が水溶性セルロースエーテル、水溶性メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の石膏ボード用塗材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の石膏ボード用塗材を、内装壁として固定された石膏ボードの表面および/または石膏ボード間の目地に塗布する工程、
を有することを特徴とする内装仕上げ方法。
【請求項7】
前記石膏ボード用塗材を塗布して形成された塗布層の厚みが3mm以下であることを特徴とする請求項6に記載の内装仕上げ方法。
【請求項8】
前記石膏ボード用塗材を塗布して形成された塗布層表面に、シラスを50重量%以上含む上塗り材をさらに塗布する工程を有することを特徴とする請求項6または7に記載の内装仕上げ方法。
【請求項9】
前記上塗り材が、シラスを50〜70重量%および石膏を20〜40重量%含むことを特徴とする請求項8に記載の内装仕上げ方法。

【公開番号】特開2007−191970(P2007−191970A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12906(P2006−12906)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(597128897)株式会社 高千穂 (11)
【Fターム(参考)】