説明

石膏系成形体およびその製造方法

【課題】二水石膏を主原料し、化学反応ではなく物理的、機械的な結合によって得ることができる、高密度、高強度でかつ耐水性を有する石膏系成形体と、該石膏系成形体を低コストで製造するための製造技術を提供する。
【解決手段】二水石膏、粘土鉱物およびマグネシア塩類を必須原料とし、かつ圧縮成形されてなる石膏系成形体であって、二水石膏が70%以上85%以下、粘土鉱物が10%以上20%以下、マグネシア塩類が5%以上10%以下の質量比で含有されてなる石膏系成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏ボード廃材等の石膏系廃材を主原料とし、これに粘土鉱物を複合させてなる建材等に適した高密度、高強度の石膏系成形体と、その製造方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
石膏は、建材等として広く使用されている石膏ボードや抄造石膏板等の主原料である。これら石膏系建材の廃材である石膏系廃材は、年間100万トン以上が廃棄物として産出されており、この石膏系廃材の石膏は二水石膏である。この二水石膏を石膏系成形体のマトリックス形成用原料として再利用する為には、半水または無水の石膏に変換して、水和硬化性を付与することが必要である。二水石膏は、そのままでは水和硬化性を有さないので、石膏系成形体のマトリックス形成用原料としては使用できない。しかし、本発明は、二水石膏に粘土鉱物を介在させ、ファンデルワールス結合理論を適用して物理的、機械的に処理して複合化することより、高密度、高強度の石膏系成形体を作るという、従来技術とは異なるまったく新規な技術により、二水石膏をマトリックス形成用原料として使用することを可能にしたのである。
【0003】
本発明者らは、以前から「石膏組成物と高密度石膏ボード」に関する研究を行ってきた。特許第4024004号(特許文献1)として登録された技術は、二水石膏からなる石膏原料に粘土質を多量に含むパルプスラッジを加えて混合・混練し、粒状または小塊状に加圧成形した組成物に対して、常圧環境下で150℃以上250℃以下の温度範囲に加熱して、前記組成物中の二水石膏をα型焼石膏に変換したうえで、成形体を製造するものである。しかし、二水石膏をα型焼石膏に変換するためのコスト負担が大きいこと、および得られた成形体の耐水性が必ずしも十分ではないという問題がある。そこで、これらの問題点を改良するための研究を行い、二水石膏を主原料とし、これに粘土鉱物を介在させて複合化することにより、高密度、高強度の成形体を得ることができることを見出した。その過程を詳細に分析してみると、高密度および高強度の成形体を得るためには、圧縮成形を行うことによって生ずる成形体中の各粒子間の物理的な結合力が最も重要である。
【0004】
原料を物理的に結合させることによって得られる成形体の強度は、ファンデルワールス理論、すなわちファンデルワールス結合により説明することができる。ファンデルワールス結合は、成形体中の各粒子間の距離の二乗に逆比例する力であり、この力を有効に活用するための手段が、本発明のキーポイントである。
【0005】
高密度の成形体を得るための成形方法は圧縮成形法であり、その好適な例が真空押し出し成形法である。真空押し出し成形法によって製造される建材製品としては、セメント系あるいはスラグ−石膏系の材料が知られている。セメント系材料は、セメントの水和反応によりマトリックスが形成された材料であり、スラグ石膏系材料は、スラグと二水石膏を反応させてエトリンガイトを生成させることによりマトリックスが形成された材料である。例えば、特開平7−69700号公報(特許文献2)には、石膏ボードを粉砕した石膏質原料、水砕スラグ等の水硬性原料および繊維質原料を混合し、押出成形方法で耐火性建築材料を製造する方法が開示されている。しかし、エトリンガイトの生成反応は比較的ゆるやかに進行するので、硬化して成形体を得た後も、成形体中の未反応原料が残存し、この未反応原料が徐々に反応するので、成形体の物性が安定しないという問題点がある。
【0006】
また、建材等として使用する成形体には、少なくともある程度の耐水性が必要とされる。しかし、石膏および粘土鉱物とも、単に成形しただけでは耐水性が乏しい物資である。一方、石膏は天然鉱物としても産出する物質である。そこで、本発明者らは天然石膏に数%含まれているMgO成分に着目し、これを手がかりとして二水石膏を主原料とする石膏系成形体に耐水性を付与するための技術を研究し本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4024004号公報
【特許文献2】特開2002−293605公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
すなわち、本発明における第1の課題は、石膏系廃材の石膏、即ち二水石膏を成形してなる石膏系成形体の密度および強度をいかにして高めるかということである。段落番号0004に記載したように、ファンデルワールス結合により各粒子間で高い結合力を得るための条件、即ち機械的な手段を用いて、いかにして粒子間隙を小さくし、内装用大形建材として望ましい条件である見かけ密度1.5〜2.5g/cc、曲げ強度15〜20N/mm2、ヤング率10〜15KN/mm2以上という物性を有する成形体を得るかということである。
【0009】
また、本発明における第2の課題は、二水石膏を成形してなる石膏系成形体にいかにして耐水性を付与するかということである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した2つの課題を解決する第1の発明に係る石膏系成形体は、二水石膏、粘土鉱物およびマグネシア塩類を必須原料とし、かつ圧縮成形されてなる石膏系成形体であって、二水石膏が70%以上85%以下、粘土鉱物が10%以上20%以下、マグネシア塩類が5%以上10%以下の質量比で含有されてなる石膏系成形体である。
【0011】
上記した2つの課題を解決する第2の発明に係る石膏系成形体は、前記必須原料に加え、充填材および/または補強繊維を原料とすることを特徴とする。
【0012】
上記した2つの課題を解決する第3の発明に係る石膏系成形体は、前記二水石膏が、石膏系廃材を粉砕してなる粉砕物粒子であって、かつ前記粉砕物粒子は、目開きが500μmのフルイを通過するものであることを特徴とする。
【0013】
上記した2つの課題を解決する第4の発明に係る石膏系成形体は、前記粘土鉱物の粒径が1μm以下であり、かつ前記粉砕物粒子間には該粘土鉱物が配置され、該粉砕物粒子と該粘土鉱物とがファンデルワールス結合により結合されてなることを特徴とする。
【0014】
上記した2つの課題を解決する第5の発明に係る石膏系成形体は、前記粘土鉱物が、モンモリロナイト、ベントナイト、ハロイサイトおよびカオリナイトの群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする。
【0015】
上記した2つの課題を解決する第6の発明に係る石膏系成形体は、前記マグネシア塩類が、軽焼マグネシアと塩化マグネシウムとから成るマグネシアオキシクロライドであることを特徴とする
【0016】
上記した2つの課題を解決する第7の発明に係る石膏系成形体の製造方法は、必須原料として、二水石膏、粘土鉱物およびマグネシア塩類を用い、二水石膏を70%以上85%以下、粘土鉱物を10%以上20%以下、マグネシア塩類を5%以上10%以下の質量比とし、含水率を20%から30%に調整した原料混合物を、マイナス0.8KPa〜マイナス1.0KPaの真空脱気性能を有する真空押し出し成形機により円筒状に押し出し成形し、次いでこれを切開し、さらにローラー圧延装置を用いて平板状に成形し、しかる後に乾燥することを特徴とする。
【0017】
上記した2つの課題を解決する第8の発明に係る石膏系成形体の製造方法は、前記必須原料に加え、充填材および/または補強繊維を原料とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る石膏系成形体は、従来技術に於いて例のない新規な成形体である。即ち、水和硬化性石膏を用いた石膏系材料やスラグ−石膏系材料などは、化学反応による強度の発現が基本であるが、本発明に係る石膏系成形体は、ファンデルワールス結合という物理的な結合により高密度化、高強度化を達成し、更に耐水性も有しているので、建材ボード等として好適に使用することができる。また、主原料である二水石膏として、現在有効な利用技術がない為安価で入手することができる石膏系廃材を使用することができるので、原料費を安価にすることができる。
【0019】
また、本発明に係る石膏系成形体の製造方法によれば、製造工程における反応および養生にあまり時間を要する必要がなく、かつ、連続して押し出し成形することができるので、高い生産スピードで製造でき、極めて大きいコストメリットを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に用いる二水石膏としては、天然石膏、排煙脱硫石膏、チタンやリン酸製造時に副産する化学石膏等が使用できる他、石膏系廃材を粉砕してなる粉砕物粒子(以下、「粉砕物粒子」と記載する)を使用することができる。粉砕物粒子を使用することは、省資源や廃棄物削減の観点から好適である。石膏系廃材としては、石膏系建材の製造工程で発生する不良品、新築現場で発生する端材や残材、建物を解体する際に発生する解体廃材などを使用することができる。なお、石膏系廃材が廃石膏ボードである場合には、粉砕物粒子は紙分が取り除かれたものが好適である。粉砕物粒子は、その多くが柱状の形状を有する粒子であり、粒子の幅は0.3μm〜0.5μm、粒子の長さは5μm〜10μm、アスペクト比は15〜20の範囲であった。しかし、粉砕物粒子をフルイ分けしてみたところ、目開きが500μmのフルイによる残分が認められ、目開きが1000μmのフルイによる残分として団粒状の粒子も含まれていた。粉砕物粒子の粒度が大きいと、成形体の密度および強度を高めにくいことから、粉砕物粒子として、目開きが500μmのフルイを通過するものが好適であることを後述する実験により確認した。
【0021】
廃石膏ボードから紙を除去して粉砕した粉砕物粒子を用い、目開きが500μmのフルイを通過した粉砕物粒子(粒度が500μm以下)と、目開きが1000μmのフルイを粉砕物粒子(粒度が1000μm以下)とを用意した。これらの粒度の粉砕物粒子それぞれについて、粉砕物粒子に水と少量のCMCを加えて混練りし、マイナス90KPaの真空脱気下で直径が10mmの丸棒状の生地を押し出し成形し、更にこれを切開し、ローラー圧延して板状に成形し、55℃で24時間乾燥して石膏成形体を得た。この石膏成形体について物性を測定し、粉砕物粒子の粒径の違いによる成形体の物性の差を確認し、上記した結論を得たのである。
【0022】
【表1】

【0023】
本発明に使用する粘土鉱物は、成形する際に可塑性を有するものが好適であり、モンモリロナイト、ベントナイト、ハロイサイト、カオリナイト等を使用することができる。粘土鉱物は、個々の粒子は粒径が5μm以下の微粒子であるが、通常はこの微粒子が凝集して粒径の大きい凝集体を形成している。原料として使用する粘土鉱物の凝集体の粒径は100μm以下が好ましい。凝集体の粒径が100μmを上回ると、他の原料と混合する際に、凝集体を微粒子の粘土鉱物に分離しにくくなり、その結果、粉砕物粒子等の二水石膏粒子間に、微粒子の粘土鉱物が配置されてなる石膏系成形体が得にくくなるからである。
【0024】
そこで、廃石膏ボードから紙を除去して粉砕した粒度が500μm以下の粉砕物粒子を主原料とするとともに、粘土鉱物原料としてベントナイトを用いた場合について、前記した方法と同一の方法により形成体を作製して物性を測定し、粘土鉱物を複合させた場合の効果を実験した。その結果、微粒子であり可塑性の高い粘土鉱物であるベントナイトを加えることにより、本発明が目的とする高密度および高強度の石膏系成形体を得ることができることを確認した(表2)。なお、得られた石膏系成形体を電子顕微鏡で観察すると、柱状形態を有する粉砕物粒子が、長さ方向がほぼ同一方向となるように配向し、粉砕物粒子の粒子間に微粒のベントナイトが存在しており、本発明の第4発明に示す組織を有していることを確認した。また、石膏系成形体の成形方法としては、本発明の第7発明に係る真空押し出し成形機により円筒状に押し出す成形方法が好適であることを確認した。すなわち、円筒状に押し出すことにより、柱状形態を有する粉砕物粒子を、均一にかつ同一方向に配向・整列させることが容易であるからである。
【0025】
【表2】

【0026】
次に、本発明の第2の課題である耐水性の向上について、以下の実験を行った。原料として質量比で、廃石膏ボードから紙を除去して粉砕した粒度が500μm以下の粉砕物粒子80%、ベントナイト20%を基本組成とし、これにマグネシア塩類としてMgO、MgCl2、または3MgO・MgCl2・nH2o(マグネシアオキシクロライド)を添加して前記した方法と同一の方法により成形体を作製し、得られた成形体について浸水実験を行った。その結果、何れも24時間以上浸水しても崩壊しない事を確認した。特にマグネシア塩類として3MgO・MgCl2・nH2O(マグネシアオキシクロライド)を添加した成形体は、48時間浸水しても崩壊することなく耐水性が優れていた。また、これ等のマグネシア塩類を添加することにより、石膏系成形体の強度も少し向上するという結果を得た。以上のことから、本発明で使用するマグネシア塩類は、軽焼マグネシアと塩化マグネシウムが反応した3MgO・MgCl2・nH2O(マグネシアオキシクロライド)を主成分とするものが好適であることが判った。このマグネシアオキシクロライドは、予め反応させたものを原料として添加するのではなく、原料として添加した軽焼マグネシアと塩化マグネシウムとが成形体内で反応して生成するものである。軽焼マグネシアは、マグネサイト鉱石(炭酸マグネシウム:MgCO3)を800℃程度の比較的低温で焼成して酸化マグネシウム(MgO)としたもので活性度が高いものが好ましく、その粒子径は100μm以下に粉砕したものが好ましい。 塩化マグネシウムは一般的な工業用のものを水溶液として用いればよい。本発明における塩化マグネシウムの配合割合は、無水物として記載する。また、本発明において、軽焼マグネシアは二水石膏および粘土鉱物とともに乾式混合され、一方、塩化マグネシウムは混練水とともに乾式混合された弁量に添加される。
【0027】
本発明において、必須原料である二水石膏、粘土鉱物およびマグネシウム塩類に加えて、必要に応じて各種の充填材や補強繊維を原料として用いることができる。充填材としてはマイカ、ワラストナイト、炭酸カルシウム粉末、珪石粉、酸化チタン、炭化珪素等をあげることができる。充填材は、吸水寸法安定性や耐熱性等の石膏系成形体の物性を向上させる目的で用いられる。補強繊維としてはセルロースパルプ、PVA繊維、炭素繊維、ガラス繊維などが必要に応じて用いられる。充填材および補強繊維は、どちらか一方を用いてもよく、両方を用いてもよい。また、充填材を用いる場合、1種類でもよく2種類以上を併用してもよい。補強繊維を用いる場合も、1種類でもよく2種類以上を併用してもよい。
【0028】
次に、本発明に係る石膏系成形体に占める各原料の比率であるが、質量比で二水石膏が70%以上85%以下、粘土鉱物が10%以上20%以下、およびマグネシア塩類が5%以上10%以下である。二水石膏が70%未満であると原料コスト高になるので本発明の趣旨に合致せず、85%を上回ると強度や耐水性が低下するという問題を生じることから望ましくない。粘土鉱物が10%未満であると石膏系成形体の強度や耐水性が低下するという問題を生じることから望ましくなく、20%を上回ると原料コスト高になるほか、強度や耐水性が低下するという問題を生じることから望ましくない。マグネシア塩類が5%未満であると石膏系成形体の耐水性が不十分となる恐れがあるので望ましくなく、10%を上回ると原料コスト高になるので本発明の趣旨に合致しない。また、各種充填材や補強繊維を使用する場合には、前記必須原料を100とした場合に、質量比(外割)で0.5〜50の範囲が好ましい。0.5未満であると充填材や補強繊維の効果が十分ではなく、50を上回ると二水石膏と粘土鉱物とのファンデルワールス結合が低下するからである。
【0029】
次に、本発明に成る石膏系成形体の製造方法について説明する。先ず、前記した原料を乾式混合する。ただしマグネシアオキシクロライドを生成するために、原料として塩化マグネシウムを使用する場合は、塩化マグネシウムは除外して乾式混合する。乾式混合した原料をコンクリートミキサー、アイリッヒミキサー等のミキサーを用いて水(マグネシアオキシクロライドを生成するために、原料として塩化マグネシウムを使用する場合は、塩化マグネシウムを使用する水に溶解した水溶液)と混練する。混練水量は押出し成形に適する様適宜決定するが、概ね固形分質量に対して質量比で20〜30%が好ましい。混練した原料はニーダー等で粘土状となるまで更に混練するが、単に押出し成形機内を循環させることにより混練しても良い。なお、塩化マグネシウムは使用する水の全量に溶解して他の原料とともに混練しても良いし、塩化マグネシウムを使用する水の一部に溶解したうえで、他の原料および残りの水とともに混練しても良い。
【0030】
次に、混練して粘土状態にした原料を圧縮成形し生板を作製する。圧縮成形方法としては、真空押し出し成形方法が好適である。この成形方法に用いる真空押し出し成形装置は、公知のものを使用することができるが、装置内部の真空度がマイナス80〜マイナス100KPaの範囲となるものが好ましい。また、生板は最初から平板状に成形してもよいが、予め円筒状に成形した後切開し更にロールで圧延して平板状の生板を得ることにより、最終的な石膏系成形体の強度をより高めることができる。
【0031】
このようにして得られた平板状の生板に対して、特に養生を行うは必要ないが、製造工程の都合上常温で放置することは差しつかえない。平板状の生板に対して乾燥を行うことにより、目的とする石膏系成形体を得ることができる。乾燥方法としては、窯業系不燃建材の製造工程で用いられる一般的な乾燥方法、例えば加熱乾燥を使用することができる。加熱乾燥を行う場合の温度および時間は、目的とする含水率(通常は1質量%〜10質量%)を得るために、二水石膏が脱水分解しない範囲で適宜決定すればよい。一般的には、生板の寸法にもよるが、加熱温度は50〜200℃、加熱時間は10分から36時間程度が目安となる。
【実施例】
【0032】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0033】
使用した原料は次のとおりである。
(1)二水石膏:廃石膏ボードから紙を除去して粉砕した粒度が500μm以下の粉砕物粒子
(2)粘土鉱物:株式会社ホージュン製ベントナイト(商品名:榛名)
(3)軽焼マグネシア:前畑産業株式会社製軽焼マグ92325(325メッシュ通過品)
(4)塩化マグネシウム:馬居化成工業株式会社製塩化マグネシウム六水塩
(5)充填材:ワラストナイト(インド・ウォルケム社製ケモリットA−60)
(6)補強繊維:PVA繊維(クラレ株式会社製ビニロンRMH−182,4mmカット品)
【0034】
上記原料を下記の表3に示す比率(質量比)とし、表3に示す原料100質量部に対して、水を30質量部加え、コンクリートミキサーを用いて15分間混練し、混練原料を得た。この混練原料を、真空押し出し成形機を用いて真空度マイナス95KPa、圧縮応力2.5MPaで押出し成形を行い、外径250mm、肉厚25mm、長さ400mmの円筒状の生板を成形した。次に、この円筒状の生板を切開して幅780mm×長さ400mm×厚さ25mmの平板状の生板を得た。この平板状の生板を、直径250mm、長さ1000mmの上下にローラーを3対持つ圧延装置を通して、幅約780mm×長さ約2000mm×厚さ5mmの平板状の生板とした。この生板を常温(約20℃)の室内に24時間放置し、次いで55℃の加熱乾燥機中で24時間乾燥し石膏系成形体を得た。
【0035】
得られた石膏系成形体に対して、以下に記載する物性を測定した。
(1)見かけ密度:曲げ強度試験片を用いて、体積法により見かけ密度を測定した。
(2)曲げ試験:JIS A1408「建築ボード類の曲げ及び衝撃試験方法」に準拠し、試験片の寸法は5号とした。
(3)ヤング率:曲げ強度測定時の荷重とたわみ量を用い、両者の関係が直線となる部分を用いて算出した。
(4)耐水性:長さ120mm×幅40mm×厚さ5mmの試験片を容器内に平置きし、試験片
の表面から5cmの高さまで水を入れ、15〜48時間静置し、試験片がその形態を維持す
るかあるいは崩壊するかを観察した。
結果を表3に示す。表3から明らかなように、実施例は本発明の目的とする高密度、高強度の石膏系成形体であり、耐水性を有することが確認できた。また、上記した製造方法により、当該石膏系成形体を容易に、かつ高い生産スピードで製造できることを確認した。
【0036】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る石膏系成形体は、二水石膏を主原料とし、粘土鉱物およびマグネシア塩類を原料として併用することにより、原料を化学反応ではなくファンデルワールス結合により結合させた高密度、高強度の成形体であり、耐水性を有するので、建材ボード等として好適に使用することができる。また、本発明に係る石膏系成形体の製造方法によれば、前記石膏系成形体を低コストで効率的に製造することができる。また、原料である二水石膏として石膏系廃材を使用することができるので、産業廃棄物を有効利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二水石膏、粘土鉱物およびマグネシア塩類を必須原料とし、かつ圧縮成形されてなる石膏系成形体であって、二水石膏が70%以上85%以下、粘土鉱物が10%以上20%以下、マグネシア塩類が5%以上10%以下の質量比で含有されてなる石膏系成形体。
【請求項2】
前記必須原料に加え、充填材および/または補強繊維を原料とすることを特徴とする請求項1記載の石膏系成形体。
【請求項3】
前記二水石膏が、石膏系廃材を粉砕してなる粉砕物粒子であって、かつ前記粉砕物粒子は、目開きが500μmのフルイを通過するものであることを特徴とする請求項1乃至2に記載の石膏系成形体。
【請求項4】
前記粘土鉱物の粒径が1μm以下であり、かつ前記粉砕物粒子間には該粘土鉱物が配置され、該粉砕物粒子と該粘土鉱物とがファンデルワールス結合により結合されてなることを特徴とする請求項3記載の石膏系成形体。
【請求項5】
前記粘土鉱物が、モンモリロナイト、ベントナイト、ハロイサイトおよびカオリナイトの群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項1乃至4記載の石膏系成形体。
【請求項6】
前記マグネシア塩類が、軽焼マグネシアと塩化マグネシウムとから成るマグネシアオキシクロライドであることを特徴とする請求項1乃至5記載の石膏系成形体。
【請求項7】
必須原料として、二水石膏、粘土鉱物およびマグネシア塩類を用い、二水石膏を70%以上85%以下、粘土鉱物を10%以上20%以下、マグネシア塩類を5%以上10%以下の質量比とし、含水率を20%から30%に調整した原料混合物を、マイナス0.8KPa〜マイナス1.0KPaの真空脱気性能を有する真空押し出し成形機により円筒状に押し出し成形し、次いで切開し、さらにローラー圧延装置を用いて平板状に成形し、しかる後に乾燥することを特徴とする石膏系成形体の製造方法。
【請求項8】
前記必須原料に加え、充填材および/または補強繊維を原料とすることを特徴とする請求項7記載の石膏系成形体の製造方法。

【公開番号】特開2011−190161(P2011−190161A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60181(P2010−60181)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000129611)株式会社クレー・バーン技術研究所 (11)
【出願人】(000126609)株式会社エーアンドエーマテリアル (99)
【Fターム(参考)】