説明

研削ディスクの製造方法及び研削ディスク

本発明は、キャップを提供する工程と、研磨部品を提供する工程と、キャップを研磨部品上に置いて組立品を形成する工程と、組立品を保持しキャップと研磨部品とを接合するためにキャップと研磨部品との間のすき間及び研磨部品内に成形材料を注入する工程と、を含む研削ディスクの製造方法に関する。当該方法によって製造される研削ディスクも開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削ディスクの製造方法及び同方法を使用して製造する研削ディスクに関し、より詳細には、射出成形によって研削ディスクを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研削ディスクは研磨/研削ツールに取り付けられる消耗品である。研磨/研削ツールの高速回転によって、研削ディスクの周辺部は被削材の表面と接触し摩擦し、その結果被削材の表面を滑らかにする。
【0003】
従来の研削ディスクはキャップ及び研磨部品を含む。キャップは通常円盤状のプラスチック部分である。研磨部品は、一緒に接着された紙、布、又は繊維のディスクで、中心にスルーホールが設けられる。キャップの一端部は、研磨部品の中心穴に挿入され、キャップ及び研磨部品は一緒に接着される。
【0004】
しかしながら、そのような接着モードで製造される研削ディスクは、高速(例えば、10,000rpm)で回転する研磨/研削ツールで使用されるとき、容易に壊れる。更に、接着モードは多くの補助具を必要とし、接着剤は凝固するのに長い時間かかる。更に、接着剤が不均一に配分されるので、研削ディスクの重量も不均一に配分され、そのため研削ディスクが回転するとき振動が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、速く単純な研削ディスクの製造方法が必要で、該方法によって製造される研削ディスクは高速回転中に容易に壊れず、研削ディスクの回転中に振動が減少するように研削ディスクの重量が均一に配分される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、キャップ及び研磨部品が射出成形によって接合される、速く単純な研削ディスクの製造方法を目的とする。
【0007】
本発明は更に、高速回転中に容易に壊れず、回転中の研削ディスクの振動が減少するように均等に配分された重量を有する研削ディスクを目的とする。
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は次の工程を含む研削ディスクの製造方法を提供する。キャップが提供される。研磨部品が提供される。キャップが研磨部品上に置かれ組立品を形成する。組立品が保持され、キャップ及び研磨部品が接合されるように、成形材料をキャップと研磨部品との間のすき間、及び研磨部品の内部のすき間に注入する。
【0009】
本発明は更に、研磨部品、及び研磨部品上に配置されるキャップを含む研削ディスクを提供する。キャップ及び研磨部品は、キャップと研磨部品との間のすき間、及び研磨部品の内部のすき間に成形材料を注入することによって接合される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態によるキャップの底面図。
【図2】図1の2−2線における断面図。
【図3】図1のキャップが研磨部品上に置かれている断面図。
【図4】成形材料がキャップと研磨部品との間のすき間、及び研磨部品の内部のすき間に注入される断面図。
【図5】成形材料がキャップの底部で流れる概略図。
【図6】本発明の別の実施形態によるキャップの底面図。
【図7】図6の7−7線における断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び図2に示されるように、本発明の好ましい実施形態による研削ディスクの製造方法が提供される。まず、キャップ1が提供される。キャップ1は、スルーホール11を備えた実質的に円盤状のキャップ本体10を有する。包囲壁13及び外周辺縁部14は、キャップ本体10の底部から下方に延びる。包囲壁13はスルーホール11を取り囲む。包囲壁13は、第1の直径方向に対向するスロットの対15、15及び第2の直径方向に対向するスロットの対17、17で形成される。第2の対向するスロットの対17、17及び第1の対向するスロットの対15、15は、ほぼ直角モードに配置される。この実施形態では、第1の対向するスロットの対15、15の長さは第2の対向するスロットの対17、17の長さを超える。外周辺縁部14は底側141を有する。
【0012】
図1に示されるように、キャップ1は2つの誘導壁19、19を更に含む。2つの誘導壁19、19は、第1の対向するスロットの対15、15の2つの外側のそれぞれに沿ってキャップ本体10の底部から延びる。誘導壁19のそれぞれは底側191を有する。2つの誘導壁19、19の底側191、191は外周辺縁部14の底側141と少なくとも同一平面上にある。図2に示されるように、この実施形態では、2つの誘導壁19、19の底側191、191は外周辺縁部14の底側141を超えて延びる。
【0013】
図2に示されるように、この実施形態では、キャップ1は射出成形によって矢印Aで示される位置に成形材料を注入することによって一体形成される。しかしながら、キャップ1は他の方法によって、及び/又は他の材料を使用して形成され得る。
【0014】
次に、研磨部品3が提供される。研磨部品3は実質的に円盤状で中心穴31及び上面33を有する。この実施形態では、研磨部品31は不織布で作製される。しかしながら、研磨部品31は紙、布、又は繊維等の他の材料でも作製され得る。
【0015】
続いて、キャップ1の包囲壁13は研磨部品3の中心穴31に挿入される。このとき、キャップ1の底部で外周辺縁部14の底側141は研磨部品3の上面33と接触する。2つの誘導壁19、19の底側191、191は少なくとも研磨部品3の上面33と接触する。図3に示されるように、この実施形態では、底側191、191は研磨部品3内に直接押し込まれる。したがって、キャップ1及び研磨部品3は組立品5を形成する。
【0016】
図4に示されるように、組立品5が金型内に置かれ(図示せず)、次に、成形材料が矢印Bで示される方向に注入される。図5に示されるように、この実施形態では、合計3つの注入穴51が設けられる。
【0017】
成形材料はキャップ1及び研磨部品3を保持するために使用される。硬化した成形材料を含有する研磨部品3は被削材を研削する働きをすることができないので、成形材料が研磨部品3の外側領域に流れることで、研磨部品3の有効寿命が短くなるのを防ぐために、成形材料を流す方向は制御されなければならない。図4に示されるように、この実施形態では、金型の設計により、注入される成形材料はまずキャップ1と研磨部品3との間のすき間を満たし、続いて第1の対向するスロットの対15、15、及び第2の対向するスロットの対17、17を通って流れる。キャップ1の外周辺縁部14により、外周辺縁部14の底側141は研磨部品3の上面31と接触し、その結果、成形材料はキャップ1から流れ出ることができず、研磨部品3内に浸透されることのみが可能である。更に、第1の対向するスロットの対15、15の長さは第2の対向するスロットの対17、17の長さを超える。したがって、成形材料が第1の対向するスロットの対15、15を通って過度に流れ、それによって成形材料が不均等に配分されることを防ぐために、第1の対向するスロットの対15、15の外側の誘導壁19、19は底側191、191によって研磨部品3の上面33と少なくとも接触し、その結果、成形材料が誘導壁19、19に沿って流れることのみが可能である。このように、第1の対向するスロットの対15、15を通って流れる成形材料は、第2の対向するスロットの対17、17の方に向かって流れるように誘導される。したがって、成形材料は研磨部品3の内部の特定領域に均一に配分され得る。
【0018】
図4に示されるように、注入した成形材料の硬化後、研削ディスク7が形成されるようにキャップ1及び研磨部品3が接合される。この研削ディスク7では、成形材料がキャップ1と研磨部品3との間に保持部分53を形成する。保持部分53は、研磨/研削ツールの軸上で研削ディスク7を固定するのに使用する軸穴55を有する。
【0019】
本発明の方法は速く単純で、製造される研削ディスクは、高速回転(15,000rpm以上)中に容易に壊れず、回転中の研削ディスクの振動が減少するように均等に配分された重量を有する。
【0020】
本発明の好ましい実施形態を上述してきた。しかしながら、本発明は代替設計も有する。例えば、軸穴55はねじ切りされてもよく、その結果、軸穴55は研削ディスク7が研磨/研削ツールの一致するねじ山と共に軸に螺入されるように提供される。更に、図6及び7に示されるように、第1の対向するスロットのそれぞれの長さは第2の対向するスロットのそれぞれの長さと同じであってもよい。したがって、誘導壁を配置するべきかどうかは実際の需要によって決まる。
【0021】
本発明の技術的解決法、及び技術的特徴を上述したが、当業者は本発明の趣旨から逸脱することなく本発明の教示及び開示に基づいて置換及び変更を更に行うことができる。したがって、本発明の範囲は実施形態に関する開示に制限されるべきでなく、「請求の範囲」に定義されるように本発明から逸脱することなく様々な置換及び変更が対象として含まれるべきである。
【0022】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削ディスク(7)の製造方法であって、
キャップ(1)を提供する工程と、
研磨部品(3)を提供する工程と、
前記キャップ(1)を前記研磨部品(3)上に置いて組立品(5)を形成する工程と、
前記組立品(5)を保持し、前記キャップ(1)と前記研磨部品(3)とを接合するために、前記キャップ(1)と前記研磨部品(3)との間のすき間及び前記研磨部品(3)内に成形材料を注入する工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記キャップ(1)は射出成形によって製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記研磨部品(3)は不織材料で作製される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記研磨部品(3)は実質的に円盤状で中心穴(31)を有し、前記キャップ(1)はスルーホール(11)を備えた実質的に円盤状のキャップ本体(10)と、前記キャップ本体(10)の底部から延び前記スルーホール(11)を取り囲む包囲壁(13)と、を有し、前記キャップ(1)が前記研磨部品(3)上に置かれるとき、前記包囲壁(13)は前記研磨部品(3)の前記中心穴(31)に嵌合するように、前記包囲壁(13)は第1の対向するスロットの対(15、15)を有し、前記キャップ(1)と前記研磨部品(3)とを接合するために前記成形材料は前記スルーホール(11)と前記スロット(15、15)とを通って注入され、前記キャップ(1)と前記研磨部品(3)との接触領域にわたって配分され、かつ前記研磨部品(3)内に配分される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記キャップ(1)は、下方に延び底側(141)を有する外周辺縁部(14)と、前記キャップ本体(10)の底部から前記第1の対向するスロットの対(15、15)のそれぞれのスロット(15)の外部に沿ってそれぞれ延び底側(191)を有する2つの誘導壁(19、19)と、を更に含み、前記キャップ(1)が前記研磨部品(3)上に置かれるとき、前記外周辺縁部(14)の前記底側(141)が前記研磨部品(3)の上面(33)と接触し、前記2つの誘導壁(19、19)の前記底側(191、191)が前記研磨部品(3)の前記上面(33)と少なくとも接触するように、前記2つの誘導壁(19、19)の前記底側(191、191)は前記外周辺縁部(14)の前記底側(141)と少なくとも同一平面上にある、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記包囲壁(13)は、前記成形材料が通過するために第2の対向するスロットの対(17、17)を更に有する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記キャップ(1)と前記研磨部品(3)とを接合するために成形材料を注入する工程の後、前記成形材料は前記キャップ(1)と前記研磨部品(3)との間に保持部分(53)を形成し、前記保持部分(53)は軸穴(55)を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記軸穴(55)がねじ切りされる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記キャップ(1)と前記研磨部品(3)とを接合するために成形材料を注入する工程の後、前記成形材料は前記キャップ(1)と前記研磨部品(3)との間に保持部分(53)を形成し、前記保持部分(53)は軸穴(55)を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記軸穴(55)がねじ切りされる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の対向するスロットの対(15、15)の長さは前記第2の対向するスロットの対(17、17)の長さと実質的に同じである、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
研削ディスク(7)であって、
研磨部品(3)と、
前記研磨部品(3)上に提供されるキャップ(1)と、を含み、
前記研磨部品(3)と前記キャップ(1)とは、前記キャップ(1)と前記研磨部品(3)との間のすき間、及び研磨部品(3)内に成形材料を注入することによって接合される、研削ディスク。
【請求項13】
前記キャップ(1)は射出成形によって製造される、請求項12に記載の研削ディスク。
【請求項14】
前記研磨部品(3)は不織材料で作製される、請求項12に記載の研削ディスク。
【請求項15】
前記研磨部品(3)は実質的に円盤状で中心穴(31)を有し、前記キャップ(1)はスルーホール(11)を備えた実質的に円盤状のキャップ本体(10)と、前記キャップ本体(10)の底部から延び前記スルーホール(11)を取り囲む包囲壁(13)と、を有し、前記包囲壁(11)は第1の対向するスロットの対(15、15)を有し、前記包囲壁(11)は前記研磨部品(3)の前記中心穴(31)に嵌合し、前記キャップ(1)と前記研磨部品(3)とを接合するために前記成形材料は前記スルーホール(11)と前記スロット(15、15)とを通って注入され、前記キャップ(1)と前記研磨部品(3)との接触領域にわたって配分され、かつ前記研磨部品(3)内に配分される、請求項12に記載の研削ディスク。
【請求項16】
前記キャップ(1)は、下方に延び底側(141)を有する外周辺縁部(14)と、前記キャップ本体(10)の底部から前記第1の対向するスロットの対(15、15)のそれぞれのスロット(15)の外部に沿ってそれぞれ延び底側(191)を有する2つの誘導壁(19、19)と、を更に含み、前記2つの誘導壁(19、19)の前記底側(191、191)は前記外周辺縁部(14)の前記底側(141)と少なくとも同一平面上にあり、前記外周辺縁部(14)の前記底側(141)が前記研磨部品(3)の上面(33)と接触し、前記2つの誘導壁(19、19)の前記底側(191、191)は前記研磨部品(3)の前記上面(33)と少なくとも接触する、請求項15に記載の研削ディスク。
【請求項17】
前記包囲壁(13)は前記成形材料が通過するために第2の対向するスロットの対(17、17)を更に有する、請求項15に記載の研削ディスク。
【請求項18】
前記成形材料は前記キャップ(1)と前記研磨部品(3)との間に保持部分(53)を形成し、前記保持部分(53)は軸穴(55)を有する、請求項14に記載の研削ディスク。
【請求項19】
前記軸穴(55)がねじ切りされる、請求項18に記載の研削ディスク。
【請求項20】
前記成形材料は前記キャップ(1)と前記研磨部品(3)との間に保持部分(53)を形成し、前記保持部分(53)は軸穴(55)を有する、請求項15に記載の研削ディスク。
【請求項21】
前記軸穴(55)がねじ切りされる、請求項20に記載の研削ディスク。
【請求項22】
前記第1の対向するスロットの対(15、15)の長さは前記第2の対向するスロットの対(17、17)の長さと実質的に同じである、請求項17に記載の研削ディスク。
【請求項23】
請求項1〜11のうちのいずれか一項に記載の方法によって製造される研削ディスク(7)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−515619(P2013−515619A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546104(P2012−546104)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/061210
【国際公開番号】WO2011/079059
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】