説明

研削盤の回転軸構造

【課題】低コストな構造とする。砥石の回転軸への取付不良を回避する。砥石を大きさに関係なく自動交換できるようにする。
【解決手段】回転軸本体4は内部に第1中空部41を先端に開口するように有している。第1中空部41内には、螺進・螺退可能な螺子部材5が収容されている。回転軸本体4の周壁には、連通孔42が第1中空部41に連通するように形成されている。第1中空部41内の螺子部材5より回転軸本体4基端側には、ボール部材6が収容されている。ボール部材6は、回転軸本体4を取付孔71に嵌挿した状態で、螺子部材5の螺進動作に連動して連通孔42から回転軸本体4の外部に突出して砥石2の取付孔71内周面に圧接することで砥石2を回転軸本体4に取り付け、螺子部材5の螺退動作に連動して連通孔42から第1中空部41内へ没入して砥石2の取付孔71内周面から離れることで砥石2の回転軸本体4への取付状態を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石の交換を自動で行う研削盤において、砥石の取付孔に嵌挿される回転軸構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特に大きな砥石を扱う研削盤では、砥石の交換を人手を介して行うのが困難であるため、砥石を自動交換するようにしている。一般的に砥石の自動交換は、砥石の取付孔に回転軸の回転軸本体を嵌挿した後、上記回転軸本体の先端側から締付ナットを螺合して上記砥石を研削盤へ取り付ける作業と、上記締付ナットを緩めて上記回転軸本体から取り除いた後、上記砥石を回転軸本体から取り外す作業とからなっている。
【0003】
また、特許文献1では、プルスタッドボルトが回転軸本体の先端側軸上に突設されていて、砥石には、回転軸本体を嵌挿する取付孔が形成された取付ホルダと、上記プルスタッドボルトを咬持するコレットと、上記コレットを保持するコレットホルダとが設けられていて、当該コレットホルダは上記取付ホルダに固定されている。上記取付ホルダの回転軸反嵌挿側には、上記コレットと繋がる保持部材が設けられていて、該保持部材は、上記取付ホルダとの間に設けられ、且つ、回転軸本体周辺に配設された複数のコイルバネで取付ホルダから離間する方向に付勢されている。そして、砥石の取付孔に回転軸本体を嵌挿した状態において、上記コレットは、コイルバネの付勢力で保持部材に引っ張られて上記プルスタッドボルトを咬持し、コイルバネの付勢力に抗して保持部材を研削盤本体側に押すことで上記プルスタッドボルトを開放するようになっていて、この保持部材を動かすことで砥石の自動交換が行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−270057号公報(段落0015欄、図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前者の場合、回転軸本体に締付ナットを螺合する際に、回転軸本体に対する締付ナットの位置決めがばらつき、回転軸本体の軸心と締付ナットの軸心とがずれたまま螺合すると、締付ナットが回転軸本体に噛み込んで取付不良を引き起こしてしまうばかりか、締付ナット又は回転軸本体の螺子山が潰れてしまい、ひいては、これら締付ナットや回転軸本体の交換が必要となってランニングコストが嵩むこととなってしまう。
【0006】
また、後者の場合、取付ホルダの取付孔周りに複数のコイルバネを配設する必要があり、この構造を採用すると当該取付ホルダの外形が大きくなってしまうので、必然的に大きな砥石しか自動交換の対象にできなくなってしまう。
【0007】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、低コストで、且つ、砥石の回転軸への取付不良を回避でき、しかも、砥石を大きさに関係なく自動交換できる研削盤の回転軸構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、螺子部材を予め回転軸本体に螺合した状態のまま回転軸本体に砥石を取り付けることを可能とし、さらには、その取付部分をコンパクトな構造としたことを特徴とする。
【0009】
具体的には、砥石の回転中心に設けられた取付孔に着脱可能に嵌挿される研削盤の回転軸構造において、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明では、少なくとも先端側内部に中空部を先端に開口するように有し、該中空部内周面に雌螺子部が形成された回転軸本体と、該回転軸本体の上記中空部内に収容され、上記雌螺子部に螺進・螺退可能に螺合する雄螺子部が外周面に形成された螺子部材と、上記回転軸本体の周壁に上記螺子部材より回転軸本体基端側で上記中空部に連通するように形成された連通孔と、上記中空部内の螺子部材より回転軸本体基端側に収容され、上記回転軸本体を上記取付孔に嵌挿した状態で、上記螺子部材の螺進動作に連動して上記連通孔から上記回転軸本体の外部に突出して上記砥石の取付孔内周面に圧接することで上記砥石を回転軸本体に取り付ける一方、上記螺子部材の螺退動作に連動して上記連通孔から上記中空部内へ没入して上記砥石の取付孔内周面から離れることで上記砥石の回転軸本体への取付状態を解除する抜止部材とを備えたことを特徴とする。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、上記連通孔は、上記回転軸本体の周壁に軸心周りに間隔をあけて複数形成され、上記抜止部材はボール部材からなり、該ボール部材が上記各連通孔に対応するように上記中空部内に複数収容されていることを特徴とする。
【0012】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、上記砥石の取付孔内周面の回転軸反嵌挿側には、係止片が内方に向かって突設され、上記螺子部材は、螺退動作により上記係止片を回転軸反嵌挿側に押圧して、上記砥石を回転軸本体から離間させるようになっていることを特徴とする。
【0013】
第4の発明では、第1から3のいずれか1つの発明において、上記砥石の取付孔内周面には、上記回転軸本体を取付孔に嵌挿した状態で上記連通孔に対応する凹部が形成され、上記螺子部材の螺進動作により上記抜止部材を上記凹部内に突出させて該凹部壁面に圧接させることで上記砥石を回転軸本体に取り付けるようになっていることを特徴とする。
【0014】
第5の発明では、第4の発明において、上記凹部の開放側には、上記砥石を回転軸本体から取り外す際に、上記抜止部材を取り外し動作に連動して押圧することで中空部内に押し込む傾斜面が回転軸嵌挿方向に縮径するように形成されていることを特徴とする。
【0015】
第6の発明では、第1から5のいずれか1つの発明において、上記回転軸本体の基端側内部にも、中空部が基端に開口するように形成され、オートバランサが上記中空部内に収容されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明では、螺子部材が回転軸本体の先端側内側に予め螺合した状態であるので、砥石を回転軸に取り付ける際に、螺子部材が回転軸本体に噛み込んでしまうといった事態を無くして砥石の回転軸本体への取付不良を回避することができる。それに加えて、螺子部材が回転軸本体に噛み込んで螺子山が潰れてしまうことによる螺子部材及び回転軸本体の交換を無くすことでランニングコストを低く抑えることができる。また、砥石を回転軸本体に取り付けるための機構を主に回転軸本体側に設けているので、砥石側に特許文献1の如き複数のコイルバネを設ける必要がなくなる。したがって、砥石の取付孔周辺をコンパクトにして、小さな砥石の自動交換を可能にできる。
【0017】
第2の発明では、抜止部材が球形状なので、螺子部材の螺進・螺退動作に連動して、連通孔から回転軸本体の外部に突出したり、連通孔から中空部内へ没入したりする抜止部材の動作が滑らかになり、砥石の回転軸への取り付け又は取り外しを確実に行うことができる。
【0018】
第3の発明では、螺子部材の螺退動作に連動して、砥石及び回転軸本体に互いに離間する方向に力が働くので、砥石の回転軸からの取り外しを確実に行うことができる。
【0019】
第4の発明では、砥石に回転軸本体に対する抜け方向の力が作用したときに、圧接力だけでなく抜止部材が凹部壁面に引っ掛かることによって回転軸本体から砥石が抜けるのを確実に防ぐことができる。
【0020】
第5の発明では、砥石の回転軸本体から離間する動作に連動して、傾斜面によって抜止部材に回転軸本体の中空部側への力が働くようになるので、抜止部材を回転軸本体内部に収容するのを確実に行うことができる。
【0021】
第6の発明では、砥石を回転軸本体へ取り付ける構造を工夫して回転軸本体先端側をコンパクトにしたので、残りの回転軸本体基端側を利用してオートバランサが配設可能となる。したがって、回転軸にオートバランサを1つ配設するだけでよく、砥石毎にオートバランサを配設する必要が無くなるのでコストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る研削盤の回転軸及び砥石の断面図であり、砥石を回転軸に取り付ける前の状態を示す図である。
【図2】図2(a)は、回転軸を砥石の取付孔に嵌挿した直後の状態を示した図であり、図2(b)は、図2(a)のA−A線における断面図である。
【図3】図3(a)は、抜止部材を砥石の取付孔内周面に圧接させて砥石を回転軸に取り付けた状態を示した図であり、図3(b)は、図3(a)のB−B線における断面図である。
【図4】砥石を回転軸から取り外している状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0024】
図1は、工作物の仕上げ等を行う研削盤の主軸ヘッド1周辺を示している。該主軸ヘッド1には、本発明の実施形態に係る回転軸3が取り付けられていて、該回転軸3は、高速回転して工作物の研磨や切断等を行う略円盤状の砥石2を回転自在に支持するようになっている。
【0025】
上記砥石2は、研磨砥粒を結合材で焼結して形成された環状の砥石本体8と、該砥石本体8の中心部分に設けられた略円筒状の取付ホルダ7とを備えていて、該取付ホルダ7の回転中心には、上記回転軸3に対応させて近づけることにより当該回転軸3が着脱可能に嵌挿される取付孔71が形成されている。上記取付孔71の回転軸3嵌挿側から中程には、回転軸3反嵌挿側に行くにしたがって緩やかに、且つ、直線的に縮径するテーパ面7aが形成されている。
【0026】
また、上記取付孔71内周面の回転軸3反嵌挿側には、該回転軸3の径方向外側に窪む環状凹部72が形成されている。該環状凹部72の開放側には、回転軸3嵌挿方向に緩やかに湾曲しながら縮径する傾斜面73が形成されていて、該傾斜面73は、後述するボール部材(抜止部材)6の外周面に沿うように緩やかに湾曲している。
【0027】
さらに、上記取付孔71内周面の回転軸3反嵌挿側端縁には、環状係止片74が内方に向かって突設されていて、該環状係止片74は、回転軸3から砥石2を取り外す際に、後述する螺子部材5の螺退動作により螺子部材5の回転軸本体4の先端側端縁が接触することで回転軸3反嵌挿側に押圧されて、上記砥石2を回転軸本体4から離間させるようになっている。
【0028】
一方、上記回転軸3は、図2乃至図4にも示すように、鋼材を加工して形成された筒状の回転軸本体4を備えていて、該回転軸本体4の基端側から中程の外周面には、上記取付孔71のテーパ面7aに対応するように、上記回転軸本体4の先端側に行くにつれて緩やかに、且つ、直線的に縮径するテーパ面4aが形成されている。上記回転軸本体4の内部は、仕切部材9で2分されていて、先端側内部には、先端に開口する中空部(以下、第1中空部という)41が、基端側内部には、基端に開口する中空部(以下、第2中空部という)43が設けられている。そして、上記第1中空部41内周面には、雌螺子部41aが形成されている。
【0029】
また、上記回転軸本体4先端側の周壁には、上記雌螺子部41aより回転軸本体4基端側で略円形状の連通孔42が上記第1中空部41に連通するように形成されていて、該連通孔42は、上記回転軸本体4の周壁に軸心周りに間隔をあけて8つ形成されている。上記連通孔42は、上記回転軸本体4を取付孔71に嵌挿した状態で、砥石2の環状凹部72に対応する位置となっている。
【0030】
上記回転軸本体4の第1中空部41内には、上記雌螺子部41aに螺合する螺子部材5が回転軸本体4の軸心方向に螺進・螺退可能に収容されている。上記螺子部材5は、上記雌螺子部41aに螺進・螺退可能に螺合する雄螺子部51bが外周面に形成された螺合部材51と、該螺合部材51の回転軸本体4基端側に位置する押圧部材53と、該押圧部材53を螺合部材51に取り付ける取付部材54とを備えていて、上記押圧部材53及び取付部材54は、ピンPを介して結合されている。そして、上記螺子部材5は、予め雌螺子部41aに螺合されている。
【0031】
上記螺合部材51は、略円筒状をなしていて、当該螺合部材51の回転軸本体4先端側には、先端に開放して六角レンチR(図2乃至図4に記載)が嵌合する嵌合部51aが形成されている。
【0032】
上記押圧部材53は、上記螺子部材5が螺進する際に後述するボール部材6を押圧する略傘形状の部材であり、上記押圧部材53の回転軸本体4基端側は略円柱状をなす一方、回転軸本体4先端側は外側方に張り出している。そして、その張出部分の回転軸本体4基端側には、回転軸本体4先端側に行くにしたがって直線的に拡径する第1傾斜面53aと、該第1傾斜面53aの外周縁から回転軸本体4先端側に行くにしたがって緩やかに湾曲しながら拡径する第2傾斜面53bとが形成されていて、該第2傾斜面53bは、ボール部材6の外周面に沿う形状となっている。
【0033】
そして、上記押圧部材53は、上記取付部材54を用いて上記螺合部材51に回転軸本体4の軸心周りに回転可能に取り付けられていて、上記螺合部材51の螺進・螺退動作に連動して、第1中空部41内を回転軸本体4の軸心方向に直線的に移動するようになっている。尚、上記押圧部材53及び螺合部材51の間には、スラストベアリングSbが取り付けられていて、上記押圧部材53に対して螺合部材51が滑らかに回転できるようになっている。
【0034】
上記仕切部材9の回転軸本体4先端側中央には、凹部91が形成されていて、上記螺子部材5の螺進動作の際に、押圧部材53の回転軸本体4基端側が入り込んで、押圧部材53と仕切部材9とが接触しないようになっている。また、上記仕切部材9の回転軸本体4先端側端面は、当該回転軸本体4の先端側に行くにしたがって緩やかに湾曲しながら縮径する案内面92が形成されていて、該案内面92は、上記ボール部材6の外周面に沿う形状となっている。
【0035】
上記押圧部材53と上記仕切部材9との間には、8個のボール部材6が上記各連通孔42に対応するように収容されている。上記ボール部材6は、鋼材を加工形成したものであり、砥石2を回転軸3に取り付ける前の状態で、押圧部材53の第1傾斜面53a及びガイド部材9の案内面92に挟持されている。
【0036】
そして、上記ボール部材6は、図3に示すように、上記回転軸本体4を上記取付孔71に嵌挿した状態で、上記螺子部材5の螺進動作に連動して押圧部材53の第1傾斜面53aに押されるとともに、上記ガイド部材9の案内面92に案内されて上記連通孔42から上記回転軸本体4の外部に突出するようになっていて、連通孔42から砥石2の環状凹部72に突出して該環状凹部72壁面に圧接することで、砥石2を回転軸本体4に取り付けるようになっている。また、ボール部材6は、図4に示すように、上記螺子部材5の螺退動作に連動して環状凹部72の傾斜面73に押されて上記連通孔42から上記第1中空部41内へ押し込まれて没入して、上記砥石2の取付孔71内周面から離れることで上記砥石2の回転軸本体4への取付状態を解除するようになっている。
【0037】
上記第2中空部43には、略棒状のオートバランサAbが収容されている。該オートバランサAbは、上記回転軸本体4の基端側から中程まで延びる略棒状をなし、砥石2を回転軸3に取り付けた状態で、上記砥石2の回転時のバランスをとるようになっている。本実施形態のオートバランサAbは、図示しないが、ケース内部に形成された空間に移動可能に複数の錘が配設されていて、回転軸3が回転すると、錘が当該回転軸3のアンバランスを相殺するように移動して上記回転軸3の回転バランスを調節するようになっている。
【0038】
尚、上記オートバランサAbは、図示しないが、ケース内部に回転体を設け、該回転体の周方向に沿って配設された複数の液体ポットに液体を注入し、各液体ポットのそれぞれの液量を調整することにより回転軸3の回転バランスを調節する液体式オートバランサを用いても良い。
【0039】
次に、砥石2の回転軸3への取り付けについて説明する。
【0040】
まず初めに、図2に示すように、ボール部材6が回転軸本体4の第1中空部41内に没入した状態で、回転軸3に砥石2を対応させて近づけることにより、該砥石2の取付孔71に上記回転軸3が嵌挿して、回転軸本体4のテーパ面4aに取付孔71のテーパ面7aが密着するとともに連通孔42に環状凹部72が対応する。
【0041】
次に、六角レンチRを螺子部材5の嵌合部51aに嵌合させて、上記螺子部材5を螺進させる。すると、上記螺子部材5の螺合部材51が雌螺子部41aに沿って螺進するとともに押圧部材53が回転軸本体4基端側に直線的に移動し、押圧部材53の第1傾斜面53aがボール部材6を回転軸本体4基端側に押す。すると、上記ボール部材6は、ガイド部材9の案内面92に案内されて、図3の仮想線の位置から実線の位置までスムーズに移動し、上記連通孔42から外部に突出する。そして、上記ボール部材6は取付孔71に形成された環状凹部72内に突出し、上記ボール部材6の外周面が環状凹部72の傾斜面73に沿うとともに押圧部材53の第2傾斜面53bに沿う。この状態で、螺子部材5をさらに螺進させると、押圧部材53が上記ボール部材6に圧接するとともに上記環状凹部72の壁面に上記ボール部材6が圧接して、砥石2が回転軸本体4に取り付く。したがって、環状凹部72内にボール部材6が突出することにより、上記砥石2に回転軸本体4に対する抜け方向の力が作用したときに、圧接力だけでなく上記ボール部材6が環状凹部72壁面に引っ掛かることによって回転軸本体4から砥石2が抜けるのを確実に防ぐことができる。また、上記押圧部材53がボール部材6に圧接している状態で螺合部材51を回転させても、上記スラストベアリングSbにより、ボール部材6との間の摩擦抵抗によって回転しなくなる押圧部材53に対して上記螺合部材51が滑らかに回転する。したがって、螺子部材5の螺進動作の際に、必要以上に力を加える必要がなく、砥石2の回転軸3への取付作業を簡易に行うことができる。
【0042】
次に、砥石2の回転軸3からの取り外しについて説明する。
【0043】
まず、砥石2が回転軸3に取り付いた図3の状態から、六角レンチRを螺子部材5の嵌合部51aに嵌合させて上記螺子部材5を螺退させる。すると、上記螺子部材5の回転軸本体4の先端側端縁が取付ホルダ7の環状係止片74に接触する。その状態からさらに上記螺子部材5を螺退させると、当該螺子部材5が上記環状係止片74を回転軸3反嵌挿側に押圧して、これにより図4に示すように、上記砥石2が回転軸本体4から離間する。そして、この砥石2の回転軸3からの取り外し動作に連動して、上記環状凹部72の傾斜面73は、上記ボール部材6を押圧して上記第1中空部41内に押し込む。このように、上記螺子部材5の螺退動作に連動して、砥石2及び回転軸本体4に互いに離間する方向に力が働くので、砥石2の回転軸3からの取り外しを確実に行うことができる。また、砥石2の回転軸本体4から離間する動作に連動して、傾斜面73によってボール部材6に回転軸本体4の第1中空部41側への力が働くようになるので、ボール部材6を回転軸本体4内部に収容するのを確実に行うことができる。
【0044】
しかる後、図4に示すように、上記ボール部材6が回転軸本体4の第1中空部41内に没入し、図示しない自動搬送機等で砥石2が回転軸3から取り外され、必要に応じて、次に使用する砥石2を回転軸3に取り付ける。
【0045】
以上より、本発明の実施形態によれば、螺子部材5が回転軸本体4の先端側内側に予め螺合した状態であるので、砥石2を回転軸3に取り付ける際に、螺子部材5が回転軸本体4に噛み込んでしまうといった事態を無くして砥石2の回転軸本体4への取付不良を回避することができる。それに加えて、螺子部材5が回転軸本体4に噛み込んで螺子山が潰れてしまうことによる螺子部材5及び回転軸本体4の交換を無くすことでランニングコストを低く抑えることができる。また、砥石2を回転軸本体4に取り付けるための機構を主に回転軸本体4側に設けているので、砥石2側に特許文献1の如き複数のコイルバネを設ける必要がなくなる。したがって、砥石2の取付孔71周辺をコンパクトにして、小さな砥石2の自動交換を可能にできる。
【0046】
また、ボール部材6が球形状なので、螺子部材5の螺進・螺退動作に連動して、連通孔42から回転軸本体4の外部に突出したり、連通孔42から第1中空部41内へ没入したりするボール部材6の動作が滑らかになり、砥石2の回転軸3への取り付け又は取り外しを確実に行うことができる。
【0047】
さらに、砥石2を回転軸本体4へ取り付ける構造を工夫して回転軸本体4先端側をコンパクトにしたので、残りの回転軸本体4基端側を利用して第2中空部43内にオートバランサAbが配設可能となる。したがって、回転軸3にオートバランサAbを1つ配設するだけでよく、砥石2毎にオートバランサAbを配設する必要が無くなるのでコストを低く抑えることができる。
【0048】
それに加え、上記押圧部材53は螺合部材51に対して回転自在に取り付けられているので、砥石2の回転軸3への取付作業時に上記押圧部材53がボール部材6に圧接して摩擦抵抗により螺子部材51の回転方向に動かなくなっても、螺合部材51が押圧部材53に対して滑らかに回転するので、螺進動作に伴い発生する負担を低減することができる。
【0049】
尚、本実施形態では、抜止部材に球形状なものを使用したが、特に球形状に限らず、螺子部材5の螺進・螺退動作に連動して、連通孔42から外部に突出したり、連通孔42から第1中空部41内へ没入したりするものであれば、形状にこだわらない。
【0050】
また、ボール部材6を回転軸3の軸心周りに8個設けているが、複数設けていればよく、その配設位置も等間隔に設ける必要はない。
【0051】
さらに、本実施形態では、回転軸本体4の内部にオートバランサAbを設けたが、当該オートバランサAbを設けるのは必須ではない。したがって、上記回転軸本体4には、ボール部材6等を収容するために、少なくとも先端に開放する第1中空部41が形成されていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、例えば、砥石の交換を自動で行う研削盤において、砥石の取付孔に嵌挿される回転軸構造に適している。
【符号の説明】
【0053】
1 主軸ヘッド
2 砥石
3 回転軸
4 回転軸本体
5 螺子部材
6 ボール部材(抜止部材)
41 中空部
41a 雌螺子部
42 連通孔
43 中空部
51 螺合部材
51b 雄螺子部
71 取付孔
72 環状凹部
73 傾斜面
74 環状係止片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥石の回転中心に設けられた取付孔に着脱可能に嵌挿される研削盤の回転軸構造であって、
少なくとも先端側内部に中空部を先端に開口するように有し、該中空部内周面に雌螺子部が形成された回転軸本体と、
該回転軸本体の上記中空部内に収容され、上記雌螺子部に螺進・螺退可能に螺合する雄螺子部が外周面に形成された螺子部材と、
上記回転軸本体の周壁に上記螺子部材より回転軸本体基端側で上記中空部に連通するように形成された連通孔と、
上記中空部内の螺子部材より回転軸本体基端側に収容され、上記回転軸本体を上記取付孔に嵌挿した状態で、上記螺子部材の螺進動作に連動して上記連通孔から上記回転軸本体の外部に突出して上記砥石の取付孔内周面に圧接することで上記砥石を回転軸本体に取り付ける一方、上記螺子部材の螺退動作に連動して上記連通孔から上記中空部内へ没入して上記砥石の取付孔内周面から離れることで上記砥石の回転軸本体への取付状態を解除する抜止部材とを備えたことを特徴とする研削盤の回転軸構造。
【請求項2】
請求項1に記載の研削盤の回転軸構造において、
上記連通孔は、上記回転軸本体の周壁に軸心周りに間隔をあけて複数形成され、
上記抜止部材はボール部材からなり、該ボール部材が上記各連通孔に対応するように上記中空部内に複数収容されていることを特徴とする研削盤の回転軸構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の研削盤の回転軸構造において、
上記砥石の取付孔内周面の回転軸反嵌挿側には、係止片が内方に向かって突設され、
上記螺子部材は、螺退動作により上記係止片を回転軸反嵌挿側に押圧して、上記砥石を回転軸本体から離間させるようになっていることを特徴とする研削盤の回転軸構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の研削盤の回転軸構造において、
上記砥石の取付孔内周面には、上記回転軸本体を取付孔に嵌挿した状態で上記連通孔に対応する凹部が形成され、上記螺子部材の螺進動作により上記抜止部材を上記凹部内に突出させて該凹部壁面に圧接させることで上記砥石を回転軸本体に取り付けるようになっていることを特徴とする研削盤の回転軸構造。
【請求項5】
請求項4に記載の研削盤の回転軸構造において、
上記凹部の開放側には、上記砥石を回転軸本体から取り外す際に、上記抜止部材を取り外し動作に連動して押圧することで中空部内に押し込む傾斜面が回転軸嵌挿方向に縮径するように形成されていることを特徴とする研削盤の回転軸構造。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の研削盤の回転軸構造において、
上記回転軸本体の基端側内部にも、中空部が基端に開口するように形成され、オートバランサが上記中空部内に収容されていることを特徴とする研削盤の回転軸構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−6103(P2012−6103A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143383(P2010−143383)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(391003668)トーヨーエイテック株式会社 (145)
【Fターム(参考)】