説明

研磨ホイール

【課題】研磨粉が溝に堆積することを防止できる研磨ホイールを提供する。
【解決手段】本発明の研磨ホイールは、円環状に形成された台金4と、台金4の上面に設けられた研磨領域6を周方向に沿って複数に区画した表面に砥粒を固着して形成された砥粒層8とを備えてなり、砥粒層8の境界に複数の溝10が形成され、肩部は丸みを帯びてなり、肩部には砥粒層8が一部延在している。溝10の横断面の底部18を曲面状に形成し、また、砥粒層8の端の下面20と側壁22との差を収容する段差24を形成し、段差24によって砥粒層8の端の上面26と側壁とを面一とする。さらに、溝10の延在方向における断面を、両端に向かって溝深さが浅くなるように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨ホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
研磨ホイールは、例えば車両用ブレーキパッドなどの被加工製品(以下、ワークという。)の表面を、ダイヤモンド、CBN(立方晶窒化硼素)などの砥粒により研削して、所望の表面粗に加工するものである。
【0003】
より具体的には、円環状の台金の表面にニッケルメッキなどにより砥粒を電着して砥粒層を形成して、台金を回転させながら砥粒層でワークを研磨することが知られている。つまり、ワークを台金の外周側から内周側に向けて搬送しながら、回転している研磨ホイールの砥粒層と接触させることにより、ワークの表面を研磨して所望の面粗さに加工する。
【0004】
ところで、ワークを研磨すると研磨粉が発生し、研磨粉が砥粒層に詰まると研磨ができなくなり、結果として研磨ホイールの寿命が短くなったり、あるいは、詰まった摩擦粉が摩擦熱によって溶解してワークに焼き付くという問題が生じる。
【0005】
これを解決するために、従来研磨ホイールの径方向に延在させて横断面が矩形の溝が設けられている。溝の肩部は丸みを帯びて形成され、砥粒がワークとの摩擦によって剥がれないように、砥粒層が肩部に延在している。研磨粉はこの溝に落ちて、研磨ホイールの回転により外部に排出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の研磨ホイールの溝は、横断面が矩形であるため、研磨粉が溝の側壁の下部に堆積しやすかった。また、溝の肩部に延在する砥粒層の端の上面と溝の側壁とに段差が形成され、堆積した研磨粉が除去されにくく、側壁の上部まで堆積して砥粒層が詰まりやすかった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、研磨粉が溝に堆積することを防止できる研磨ホイールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の研磨ホイールは、駆動装置により回転される台金と、その台金の上面に回転軸を中心として円環状に設けられた研磨領域と、その研磨領域を少なくとも周方向に沿って複数に区画した表面に砥粒を固着して形成された複数の砥粒層と、複数の砥粒層の境界に形成された複数の溝とを備え、その溝は肩部が丸みを帯びて形成され、その肩部に砥粒層が延在して形成されてなり、溝の底部の横断面は曲面状に形成され、側壁の横断面は肩部に延在する砥粒層を収容する段差が形成されてなることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、溝の底部の横断面が曲面状に形成されていることから、研磨粉が溝の側壁の下部に堆積しにくくなる。また、側壁の横断面に肩部に延在する砥粒層を収容する段差を形成し、砥粒層の上面と側壁とを面一にしたから、溝に落ちた研磨粉が排出されやすくなるので、研磨ホイールの溝に研磨粉が詰まることを防止できる。
【0010】
また溝を、円環状の研磨領域に放射状又は螺旋状に形成することもできる。また、延在方向の両端に向かって溝深さを浅く形成することもできる。これにより、溝に落ちた研磨粉をさらに効率よく排出できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、研磨粉が溝に堆積することを防止できる研磨ホイールを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を適用してなる研磨ホイール2の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一機能部品については同一符号を付して重複説明を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態の研磨ホイールを模式的に表した斜視図であり、矢印Aは研磨ホイール2の回転方向、矢印Bはワーク16の搬送方向である。また、図2(a)は、図1の研磨ホイール2の一部を表した平面図であり、図2(b)は、図2(a)のA−A線における断面図である。図2(c)は、図2(a)のB−B線における断面図である。図3は、研磨ホイール2の溝10の形状の一例である。
【0014】
図1,2に示すように、本実施形態の研磨ホイール2は、円環状に形成された台金4と、台金4の上面に設けられた研磨領域6を周方向に沿って複数に区画した表面に砥粒を固着して形成された砥粒層8とを備えている。また、砥粒層8の境界に複数の溝10が形成され、溝10の肩部は丸みを帯びてなり、砥粒層8が一部延在している。砥粒層8は、例えばダイヤモンド、CBNなどの砥粒を電着して形成されている。砥粒層8は、外周側が低く、内周側が高く形成されている。これによってワーク16が研磨領域6を外周側から内周側に移動されるにつれて、ワーク16の表面が必要な量だけ順次研削されるようになっている。
【0015】
研磨ホイール2は、図示しないボルトによって基台12に固定され、基台12を介してモータなどの駆動源を有する駆動装置14によって、台金4の中心軸を回転軸として回転可能に形成されている。ワーク16は研磨対象であり、本実施形態では車両用ブレーキパッドである。
【0016】
ここで、本実施形態の特徴に係る溝10の構成の詳細について、図2を参照して説明する。溝10は、A−A線における横断面の底部18が曲面状に形成され、また、砥粒層8の端の下面20と側壁22との差を収容する段差24が形成されている。段差24により、砥粒層8の端の上面26と側壁22とが面一となっている。
【0017】
このように構成される研磨ホイール2は、図1に示すように、駆動装置14の回転駆動により、基台12を介して台金4を回転させながらワーク16を研磨する。つまり、ワーク16は研磨ホイール2の外周側から内周側へと搬送されながら順次研磨される。研磨の際に発生する研磨粉は、溝10に落ちる。
【0018】
ワーク16を研磨する際は、ワーク16によって溝10の上部の開口が閉じられ、研磨ホイール2の回転により生じる外周と内周の周速差によって生じる圧力差により、溝10内部に内周側から外周側に向かう空気の流れが発生する。この空気の流れにより、溝10に落ちた研磨粉は外部に排出される。溝10の底部18が曲面状に形成され、砥粒層8の端の上面26と側壁22とが面一となっていることから、空気の流れの影響を受けやすくなり、研磨粉を効率よく排出できる。
【0019】
ここで、従来の横断面が矩形の溝と、本発明の溝10とを比較する。前述した空気の流れは、溝10の中心近傍が最も速く、側壁22の近傍では遅くなる。従来の溝では、矩形の底部近傍で空気の流れが乱れやすく、さらに流速が遅くなり、研磨粉が堆積しやすいと考えられる。これに対して本発明の溝10は、底部18が曲面状に形成されていることから、空気の流れが乱れにくく、研磨粉が堆積しにくくなると考えられる。
【0020】
以上説明したように、本実施形態の研磨ホイール2によれば、溝10の底部18の横断面が曲面状に形成されていることから、研磨粉が溝10の側壁22の下部に堆積しにくくなる。また、側壁22の横断面に肩部に延在する砥粒層8を収容する段差24を形成し、砥粒層8の上面26と側壁22とを面一にしたから、溝10に落ちた研磨粉が排出されやすくなるので、溝10に研磨粉が詰まることを防止できる。
【0021】
ここで、別の実施形態について、図2(c)を参照して説明する。本実施形態では、溝10のB−B線における断面が曲面状であり、溝10の深さが、中心が深く、両端に向かって浅くなるように形成されている。これにより、溝10に落ちた研磨粉をさらに効率よく排出できる。本実施形態に、前述した実施形態の溝10の形状を適用することもできる。
【0022】
以上、本実施形態の研磨ホイールについて説明したが、本発明は、この実施形態に限らず適宜構成を変更して適用することができる。例えば、本実施形態では、研磨ホイール2が周方向に沿って複数に区画されたものについて説明したが、図3のように、周方向及び径方向に区画されたものにも適用できる。
【0023】
また、本実施形態では、内周側の砥粒層8が外周側よりも高い例について説明したが、外周側の砥粒層8が内周側よりも高い場合でも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態の研磨ホイールを模式的に表した斜視図である。
【図2】(a)は、研磨ホイールの一部を表した平面図であり、(b)は、(a)のA−A線における断面図である。(c)は、(a)のB−B線における断面図である。
【図3】研磨ホイールの溝の形状の一例である。
【符号の説明】
【0025】
4 台金
6 研磨領域
8 砥粒層
10 溝
14 駆動装置
16 ワーク
18 底部
24 段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置により回転される台金と、該台金の上面に回転軸を中心として円環状に設けられた研磨領域と、該研磨領域を少なくとも周方向に沿って複数に区画した表面に砥粒を固着して形成された複数の砥粒層と、複数の前記砥粒層の境界に形成された複数の溝とを備え、該溝は肩部が丸みを帯びて形成され、該肩部に前記砥粒層が延在して形成されてなる研磨ホイールにおいて、
前記溝は、底部の横断面は曲面状に形成され、側壁の横断面は前記肩部に延在する前記砥粒層を収容する段差が形成されてなることを特徴とする研磨ホイール。
【請求項2】
請求項1に記載に研磨ホイールにおいて、
前記溝は、円環状の前記研磨領域に放射状又は螺旋状に形成されてなることを特徴とする研磨ホイール。
【請求項3】
請求項2に記載に研磨ホイールにおいて、
前記溝は、延在方向の両端に向かって溝深さが浅く形成されてなることを特徴とする研磨ホイール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−269106(P2009−269106A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119749(P2008−119749)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(507317591)ダイヤツール株式会社 (3)
【Fターム(参考)】