説明

研磨工具

【課題】被研磨物の凹凸形状に追随してバリなどを確実に除去しつつ、長寿命化を図ることのできる研磨工具の提供。
【解決手段】回転軸8に装着可能な芯材4を設ける。芯材4の周囲に複数枚の研磨布5を放射状に固着する。研磨布5の間にスペーサー13を介設する。研磨布5の先端側に切り込み14を形成して複数の短冊状の研磨片6を形成する。互いに分離した研磨片6が柔軟に撓んで被研磨物3の凹凸形状に追随する。バリなどを確実かつ効率よく除去することができる。研磨片6の砥粒面が被研磨物3に当たるので、研磨片6がちぎれにくく、研磨工具1の長寿命化が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば金属製品に打ち抜き加工を施す際に生じるバリを除去するための研磨工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属製品などは、研磨工具を用いて研磨することにより、その表面を良好な状態に仕上げるようにしている(特許文献1参照)。
【0003】
図4に特許文献1の研磨工具を示す。研磨工具101は、方形状の不織布シート102を芯材103の周方向に積層しつつ、その径方向内側を芯材表面に固定してなる円柱状とされ、積層した不織布シート102の外周面を研磨面104として被研磨物を研磨するようになっている。
【0004】
ただ、研磨工具101は、方形状の不織布シート102を円柱状に積層した構造であるため、その研磨面104が被研磨物の凹凸形状に追随しにくく、打ち抜き加工を施した金属製品のバリの除去に使用することができない。つまり、研磨工具101を用いてバリを除去しようとしても、そのバリが変形して打ち抜き加工面側に逃げるので、良好な仕上げ面を得ることができず、そのため、金属製品のバリの除去には、研磨効率が低下するものの被研磨物の凹凸形状に追随しやすいバリ取りブラシを用いることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−263453(段落番号0014、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、バリ取りブラシよりも効率よくバリを除去することのできる研磨工具が求められており、図5に示すように、研磨工具105を円盤状の研磨布106を中心軸方向に多数枚重ねた構成とし、その研磨布106に放射状の切り込み107を入れて短冊状の研磨片108を形成することが考えられる。この研磨工具105は、各研磨片108が他の研磨片108と分離しているので、被研磨物の凹凸形状に追随することができ、金属製品に打ち抜き加工を施す際に生じるバリを効率よく除去することが期待できる。
【0007】
しかし、研磨工具105を中心軸周りに回転させながら研磨することにより、短冊状の研磨片108がその幅方向に移動しながら被研磨物に当たるので、その分、研磨片108がちぎれやすく、研磨工具105の消耗が早くなるおそれがある。
【0008】
本発明は、被研磨物の凹凸形状に追随してバリなどを確実に除去しつつ、長寿命化を図ることのできる研磨工具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る研磨工具は、回転軸に装着可能な芯材に、この芯材の周囲を取り囲むよう放射状に配置した複数枚の研磨布を固着し、その研磨布に先端側から芯材の径方向に沿って複数の切り込みを形成することにより、研磨布の先端側に複数の短冊状の研磨片を形成したものである。
【0010】
上記構成によれば、複数の研磨片を互いに分離させて形成するので、各研磨片が被研磨物の凹凸形状に追随して、バリなどを確実かつ効率よく除去することができる。しかも、研磨工具をその中心軸周りに回転させて被研磨物を研磨することにより、研磨片がその幅方向と直交する方向に移動しながら被研磨物に当たるので、研磨片をちぎれにくくすることができ、研磨工具の長寿命化を図ることができる。
【0011】
また、研磨布の研磨片を先端側ほど芯材の周方向に傾斜する湾曲形状に癖付けすることができる。この構成によれば、被研磨物に研磨片の研磨面を当てて研磨することができるので、研磨片の先端縁のみを当てる構成よりも被研磨物を均一に研磨することができる。
【0012】
また、複数の研磨布の基端部間にスペーサーを介設することができる。この構成によれば、研磨布と研磨布との間に間隔をあけるので、研磨片同士の擦れを抑えて各研磨片を柔軟に撓ませることができ、被研磨物の凹凸に追随しやすくすることができる。
【0013】
また、研磨布の基端部を芯材の周囲を取り囲む係止リングに係止することができる。この構成によれば、単に研磨布の基端を芯材に接着剤で接着しただけのものよりも、研磨布の基端を芯材に強固に固着することができ、しかも、係止リングで研磨布を位置決めできるので、研磨工具の寸法精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のとおり、本発明によると、芯材の周囲に放射状に配置した研磨布に切り込みを形成して短冊状の研磨片を形成するので、その研磨片が被研磨物の凹凸形状に追随してバリなどを確実に除去することができる。しかも、研磨片がその幅方向と直交する方向に移動しながら被研磨物に当たって研磨するので、研磨片がちぎれにくく、研磨工具の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る研磨工具を装着した自動研磨機の斜視図
【図2】上半分は研磨工具の側面図で、下半分は縦断面図
【図3】上半分は研磨工具の正面図で、下半分はA−A断面図
【図4】従来の研磨工具の斜視図
【図5】円盤状の研磨布を中心軸方向に多数枚重ねて構成した研磨工具の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る研磨工具を実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。
【0017】
図1〜図3に示すように、研磨工具1は、例えば、自動研磨機2に装備して金属製品などの被研磨物3を研磨することにより、金属製品の打ち抜き加工時に発生するバリを除去したり、ステンレス製あるいはアルミニウム製の平板や角パイプ、丸パイプなどの表面を良好な状態に仕上げたりするためのものであり、芯材4の周囲に複数枚の長方形の研磨布5を放射状に固着すると共に、研磨布5の先端側に複数の短冊状の研磨片6を形成した構造とされる。
【0018】
図1に示すように、自動研磨機2は、鉛直軸周りに回転自在な研磨機本体7と、研磨機本体7から水平に突出する複数本の回転軸8とを備え、回転軸8に研磨工具1を装着して、研磨機本体7及び回転軸8を回転させることにより、自動研磨機2の下方に位置するコンベア9に載置した被研磨物3を研磨するようになっている。
【0019】
芯材4は、発泡スチロールや塩化ビニルからなる円筒状とされ、その中央穴10の両端部に設けられた軸受け11に回転軸8を挿入することにより、研磨工具1が自動研磨機2に装着される。
【0020】
研磨布5は、例えば、フェノール樹脂などの接着剤を用いて布面にシリコンカーバイトやアルミナなどの砥粒を接着し、さらに、その表面をフェノール樹脂などで覆って砥粒の脱落を防止したものであり、砥粒面側が凸に反るように形成される。
【0021】
この研磨布5は、例えば50mm程度の間隔で平行に配置した複数の係止リング12に基端部を係止すると共に、その基端部間に厚紙などからなるスペーサー13を介設することにより、複数枚の研磨布5が間隔を空けて放射状に配置される。これにより、全体として例えば外径が350mm程度のリング状の構造体が構成され、この構造体を芯材4の外周側に配置することにより、芯材4の周囲を取り囲むよう複数枚の研磨布5が放射状に配置される。
【0022】
リング状の構造体は、その内側を例えばエポキシ二液性の接着剤で芯材4の外周面に接着され、さらに、例えば70℃程度に加熱して乾燥することにより、その接着剤が固められる。これにより、研磨布5の基端部が、芯材4の周囲を取り囲む係止リング12に係止されると共に、芯材4の外周面に接着されて強固に固着される。
【0023】
研磨片6は、研磨布5に6mm程度の間隔で先端側から芯材4の径方向に沿う複数の切り込み14を形成することにより、研磨布5の先端側に短冊状に複数ずつ形成される。さらに、リング状の構造体を芯材4に接着する接着剤を加熱乾燥して固める際、研磨布5が熱収縮によってより小さく湾曲するよう癖付けされ、その研磨片6が先端側ほど芯材4の周方向に傾斜する湾曲形状に癖付けされる。
【0024】
上記構成によれば、研磨布5の先端側に複数の研磨片6を形成するので、各研磨片5が独立して撓むことにより、被研磨物3の凹凸形状に追随することができ、例えば、金属製品のバリを確実かつ効率よく除去することができる。さらに、研磨片6は、その砥粒面を被研磨物3に当てて研磨するので、被研磨物3を均一に研磨することができ、しかも、研磨片6がその幅方向に当たることによる破断を防止することができ、研磨工具1の寿命を6倍程度に延ばすことができる。
【符号の説明】
【0025】
1 研磨工具
2 自動研磨機
3 被研磨物
4 芯材
5 研磨布
6 研磨片
7 研磨機本体
8 回転軸
9 コンベア
10 中央穴
11 軸受け
12 係止リング
13 スペーサー
14 切り込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に装着可能な芯材に、該芯材の周囲を取り囲むよう放射状に配置された複数枚の研磨布が固着され、前記研磨布に先端側から芯材の径方向に沿って複数の切り込みを形成することにより、前記研磨布の先端側に複数の短冊状の研磨片が形成されたことを特徴とする研磨工具。
【請求項2】
前記研磨布の研磨片は、先端側ほど芯材の周方向に傾斜する湾曲形状に癖付けされたことを特徴とする請求項1に記載の研磨工具。
【請求項3】
前記複数の研磨布の基端部間にスペーサーが介設されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の研磨工具。
【請求項4】
前記研磨布の基端部が、芯材の周囲を取り囲む係止リングに係止されたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の研磨工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−179417(P2010−179417A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25608(P2009−25608)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(598090966)株式会社太陽商会 (2)
【Fターム(参考)】