説明

研磨布紙および研磨体

【課題】表面が硬い皮膜で覆われた被研磨物であっても効果的に研磨をすることができる研磨布紙および研磨体を提供する。
【解決手段】研磨布紙3は、固着部3aと、研磨材付着部3bと、可撓部3cとを有するものし、この研磨布紙3をベルト部材2の長さ方向に多数枚順次位置をずらして重ね合わせようにして取り付けて研磨ベルト1を得る。ここで、固着部3aは、ベルト部材2の周回運動方向Rの先行側に設けられてベルト部材2の外周側表面に固着される部位であり、研磨材付着部3bは、ベルト部材2の周回運動方向Rの後行側に設けられて被研磨物に接当可能に研磨材6が付着される部位であり、可撓部3cは、固着部3aと研磨材付着部3bとの間に設けられてベルト部材2と被研磨物18との間で柔軟に撓む部位であるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば金属製品などの表面を研磨するのに好適に用いられる研磨布紙および研磨体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば金属製品の表面を研磨するのに好適に用いられる研磨体として、周回運動するベルト部材に多数の研磨布紙を取り付けてなるものがある(特許文献1参照)。また、回転運動するディスク部材あるいは円筒部材に多数の研磨布紙を取り付けたものもある(特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−11069号公報
【特許文献2】特開2005−262400号公報
【特許文献3】特開平9−309074号公報
【0004】
ところで、特許文献1〜3に係る研磨体において、研磨布紙は、基材の表面全体に研磨材が均一に接着されて構成されている。
このため、研磨布紙全体が硬くて柔軟性に乏しく、周回運動や回転運動に伴う遠心力が研磨布紙に作用したとしても、研磨布紙が十分に立ち上がらなくて寝た状態で研磨対象である被研磨物に接触されることになる。
したがって、被研磨物が例えば黒皮と称される酸化皮膜で覆われた鉄板のように、表面が硬い皮膜で覆われたものである場合、研磨布紙を被研磨物に押し当てて研磨しようとしても、その皮膜への食い込みが悪くてその皮膜の上で滑ってしまい、効果的に研磨をすることができないという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、表面が硬い皮膜で覆われた被研磨物であっても効果的に研磨をすることができる研磨布紙および研磨体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、第1発明による研磨布紙は、
所定の運動方向に駆動される被駆動体に取り付けられ、研磨対象物である被研磨物に押し当てられることによってその被研磨物を研磨する研磨布紙であって、
前記被駆動体の運動方向の先行側に設けられ、前記被駆動体に固着される固着部と、
前記被駆動体の運動方向の後行側に設けられ、被研磨物に接当可能に研磨材が付着される研磨材付着部と、
前記固着部と前記研磨材付着部との間に設けられ、前記被駆動体と被研磨物との間で柔軟に撓む可撓部とを有することを特徴とするものである。
【0007】
また、第2発明による研磨体は、
所定の運動方向に駆動される被駆動体と、この被駆動体に取り付けられ、研磨対象物である被研磨物に押し当てられることによってその被研磨物を研磨する研磨布紙とを備えて構成される研磨体であって、
前記研磨布紙は、
前記被駆動体の運動方向の先行側に設けられ、前記被駆動体に固着される固着部と、
前記被駆動体の運動方向の後行側に設けられ、被研磨物に接当可能に研磨材が付着される研磨材付着部と、
前記固着部と前記研磨材付着部との間に設けられ、前記被駆動体と被研磨物との間で柔軟に撓む可撓部とを有することを特徴とするものである。
【0008】
また、第3発明による研磨体は、
所定の運動方向に駆動される被駆動体と、この被駆動体に取り付けられ、研磨対象物である被研磨物に押し当てられることによってその被研磨物を研磨する研磨布紙と、この研磨布紙を裏面側から支持するように前記被駆動体に取り付けられるバックアップシートとを備えて構成される研磨体であって、
前記研磨布紙は、
前記被駆動体の運動方向の先行側に設けられ、前記被駆動体に固着される固着部と、
前記被駆動体の運動方向の後行側に設けられ、被研磨物に接当可能に研磨材が付着される研磨材付着部と、
前記固着部と前記研磨材付着部との間に設けられ、前記被駆動体と被研磨物との間で柔軟に撓む可撓部とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の研磨布紙においては、被駆動体の運動方向の後行側、つまり先端部側に研磨材付着部が設けられ、基端部側の固着部とその研磨材付着部との間に可撓部が設けられる。これにより、例えば被駆動体の周回運動や回転運動等に伴う遠心力が研磨布紙に作用したときに、研磨材付着部が錘のように機能し、可撓部が柔軟に撓んで、研磨布紙が十分に立ち上げられた状態で研磨対象である被研磨物に接触されることになる。したがって、被研磨物の表面が硬い皮膜で覆われていたとしても、研磨材付着部がその皮膜に鋭く食い込み、その皮膜に裂け目を入れて捲り取り、被研磨物の表面を効果的に研磨することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る研磨体としての研磨ベルトの一部を表す斜視図(a)および研磨布紙の構造説明図(b)
【図2】第1の実施形態の研磨ベルトの使用態様説明図
【図3】第1の実施形態の研磨ベルトによる研磨動作説明図(a)および(a)のA部拡大図(b)
【図4】本発明に係る研磨布紙の摩耗状態説明図(a)、(a)のB部拡大図(b)、従来の研磨布紙の摩耗状態説明図(c)および(c)のC部拡大図(d)
【図5】第1の実施形態の変形例に係る研磨ベルトの一部を表す斜視図(a)、研磨布紙の構造説明図(b)およびバックアップシートの構造説明図(c)
【図6】第1の実施形態の変形例に係る研磨ベルトによる研磨動作説明図
【図7】本発明の第2の実施形態に係る研磨体としての研磨ホイールの正面図(a)、(a)のD−D線断面図(b)および研磨布紙の構造説明図(c)
【図8】第2の実施形態の研磨ホイールによる研磨動作説明図
【図9】第2の実施形態の変形例に係る研磨ホイールの正面図(a)、(a)のE−E線断面図(b)、研磨布紙の構造説明図(c)およびバックアップシートの構造説明図(d)
【図10】第2の実施形態の変形例に係る研磨ホイールによる研磨動作説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明による研磨布紙および研磨体の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
〔第1の実施形態〕
図1には、本発明の第1の実施形態に係る研磨体としての研磨ベルトの一部を表す斜視図(a)および研磨布紙の構造説明図(b)がそれぞれ示されている。
【0013】
<研磨ベルトの概略説明>
図1(a)に示される研磨ベルト1は、強靭なベルト部材2の外周側表面に、短冊状の研磨布紙3がベルト部材2の長さ方向に多数枚順次位置をずらして重ね合わせようにして取り付けられた構成のものである。
【0014】
<研磨布紙の説明>
図1(b)に示されるように、研磨布紙3は、基材5を備えている。この基材5は、ベルト部材2の幅寸法に合わせた幅寸法で、ベルト部材2の長さ方向に所定長さで延設される四角形状のシート部材である。
基材5の基端部は、ベルト部材2の周回運動方向Rの先行側に配され、ベルト部材2の表面に接着剤等によって固着される固着部3aとされる。
基材5の先端部は、ベルト部材2の周回運動方向Rの後行側に配されている。この基材5の先端部には、その表面側に接着剤層7を介して研磨材6が付着されている。こうして、基材5の先端部と研磨材6と接着剤層7とによって、被研磨物に接当可能な研磨材付着部3bが形成される。
基材5の長さ方向中間部は、ベルト部材2と被研磨物との間で自由に動くことができるように、ベルト部材2に固着されることなく開放されている。また、この基材5の長さ方向中間部には、研磨材6など何ら付着されておらず、基材5そのものが露出されており、柔軟に撓むことができるようになっている。こうして、固着部3aと研磨材付着部3bとの間に、ベルト部材2と被研磨物との間で柔軟に撓む可撓部3cが形成される。
【0015】
<基材、研磨材、研磨材の具体例の説明>
上記の基材5としては、可撓性を有するシート材の中から適宜に選択可能で、例えば綿布や合繊布、クラフト紙、不織布、金属網、合成樹脂シートなどが用いられる。
研磨材(砥粒)6としては、例えばダイヤモンドやCBN(立方晶窒化ホウ素)、BC、Al、SiO、SiCの中から選択される少なくとも1種類以上からなるものが挙げられる。
接着剤層7は、研磨材(砥粒)6同士を接着する結合剤と、研磨材(砥粒)6を基材5に接着する接着剤とから構成されている。
研磨材6同士を接着する結合剤としては、一般的に使用されているメタル、電着、ビトリファイド、レジン等の中から適宜に選択される。
研磨材6を基材5に接着する接着剤としては、膠や合成樹脂などが用いられる。使用される主な合成樹脂としては、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。なお、炭酸カルシウムなどの充填剤が配合されることもある。
【0016】
<研磨ベルトの使用態様の説明>
このように構成される研磨ベルト1は、例えば図2に示されるように、図示されない支持体に所定の軸間距離を隔てて上下に設けられる2個のホイール11,12に巻き掛けられる。
下側のホイール12を支持する支持軸13には、従動プーリ14が固定され、この従動プーリ14と所定の軸間距離を隔てて配される駆動プーリ15が駆動モータ16の出力軸16aに固定されている。駆動プーリ15と従動プーリ14とには、伝動ベルト17が巻き掛けられ、駆動モータ16の作動により、伝動ベルト17を介して回転力が下側のホイール12に伝達され、研磨ベルト1が2個のホイール11,12の間で周回運動(実際には楕円運動)するように駆動される。
【0017】
<研磨動作の説明>
駆動モータ16により駆動される研磨ベルト1において、下側のホイール12に巻き掛けられた部分を、研磨対象物である被研磨物18の表面に接触させる。ここで、被研磨物18としては、例えば、黒皮と称される酸化皮膜で覆われた鉄板などのように、表面が硬い皮膜18aで覆われたものを例に、以下の研磨動作の説明を行うこととする。
【0018】
図1(b)に示されるように、研磨布紙3は、固着部3aと研磨材付着部3bとの間に可撓部3cを有しているため、また、その先端部側に研磨材付着部3bを有しているため、図3(a)中記号「K」で示される研磨点の前後で、研磨ベルト1の周回運動に伴う遠心力の作用により、研磨材付着部3bが錘のように機能し、可撓部3cが柔軟に撓んで、外側、つまりベルト部材2から被研磨物18に向かう側に押し出され、同図(b)に示されるように、ベルト部材2に対して十分に立ち上げられた状態で被研磨物18に接触されることになる。これにより、被研磨物18の表面が硬い皮膜18aで覆われていたとしても、研磨材付着部3bの先端側角部がその皮膜18aに鋭く食い込み、その皮膜18aに裂け目を入れて捲り取り、被研磨物18の表面を効果的に研磨することができる。
【0019】
図4(c)に示されるように、基材5の表面全体に研磨材6が均一に接着されてなる従来の研磨布紙100では、研磨布紙100全体が硬くて柔軟性に乏しく、周回運動に伴う遠心力が研磨布紙100に作用したとしても、ベルト部材2に対して研磨布紙100が十分に立ち上がることができずに寝た状態で被研磨物18に接触されることになる。
このため、研磨布紙100を被研磨物18に押し当てて研磨しようとしても、その硬い皮膜18aへの食い込みが悪くてその皮膜18aの上で滑ってしまい、効果的に研磨をすることができない。
【0020】
図4(a)に示されるように、本実施形態の研磨布紙3では、研磨ベルト1の周回運動に伴う遠心力の作用により、ベルト部材2に対して十分に立ち上がった状態で被研磨物18に接触される。これに対し、図4(c)に示されるように、従来の研磨布紙100では、周回運動に伴う遠心力が作用しても、十分に立ち上がらずに寝た状態で被研磨物18に接触される。
このため、研磨布紙3の摩耗の進行に伴う基材5の出現領域S(図4(b)参照)と、研磨布紙100の摩耗の進行に伴う基材5の出現領域S(同図(d)参照)とを比べると、出現領域Sよりも出現領域Sの方がかなり大きく(S>>S)、この出現領域Sの部分が次に被研磨物18に接触しようとしている研磨布紙100の砥粒部分を広い範囲で塞いでしまい、研磨性能を妨げていた。
本実施形態の研磨布紙3では、その先端部分から基材5と研磨材6とが均等に近い形で、出現領域Sが最小限に抑えられて擦り減るため、次に被研磨物18に接触しようとしている研磨布紙3の砥粒部分が最大限に出現され、研磨性能が落ちるようなことがない。
【0021】
なお、本実施形態の研磨ベルト1において、短冊状の研磨布紙3が取り付けられる被駆動体としてベルト部材2が用いられる例を示したが、これに限定されるものではなく、ベルト部材2に代えて、例えば所要の内径・外径寸法に設定された円筒部材を用いることも可能である。
【0022】
〔第1の実施形態の変形例〕
図5には、第1の実施形態の変形例に係る研磨ベルトの一部を表す斜視図(a)、研磨布紙の構造説明図(b)およびバックアップシートの構造説明図(c)がそれぞれ示されている。また、図6には、第1の実施形態の変形例に係る研磨ベルトによる研磨動作説明図が示されている。
【0023】
<研磨ベルトの概略説明>
図5(a)に示される研磨ベルト1Aは、強靭なベルト部材2の外周側表面に、短冊状の研磨布紙3とバックアップシート20とが所定の配置でベルト部材2の長さ方向に多数枚順次位置をずらして重ね合わせようにして取り付けられた構成のものである。
【0024】
<研磨布紙とバックアップシートの配置の説明>
図5(a)に示されるように、本変形例では、1枚の研磨布紙3に対し、その研磨布紙3の裏面側に3枚連続でバックアップシート20が配置されている。言い換えれば、ベルト部材2の長さ方向に多数枚配されるバックアップシート20の3枚おきに1枚の研磨布紙3が介挿される配置関係とされている。
なお、この配置関係に限定されるものではなく、例えば、ベルト部材2の長さ方向に研磨布紙3とバックアップシート20とを1枚ずつ交互に配置したり、ベルト部材2の長さ方向に多数枚配されるバックアップシート20の2枚もしくは4枚以上の適宜枚数おきに研磨布紙3を1枚もしくは適宜枚数配置したりしてもよい。
これら研磨布紙3およびバックアップシート20は、その基端部(周回運動方向Rの先行側端部)が適宜寸法接着剤によってベルト部材2の表面に接着され、その自由端状態にある先端部(周回運動方向Rの後行側端部)が少しずつ露出するように位置をずらせて多数枚重ね合わされて配置されている。
【0025】
<バックアップシートの説明>
バックアップシート20は、研磨布紙3を構成する基材5と基本的に同じものである。すなわち、ベルト部材2の幅寸法に合わせた幅寸法で、ベルト部材2の長さ方向に所定長さで延設される四角形状のシート部材で、例えば綿布や合繊布、クラフト紙、不織布、金属網、合成樹脂シートなどからなり、研磨布紙3を裏面側から支持するように配されている。
【0026】
<研磨動作の説明>
図6に示されるように、研磨布紙3は、第1の実施形態と同様に、研磨ベルト1Aの周回運動に伴う遠心力の作用により、研磨材付着部3bが錘のように機能し、可撓部3cが柔軟に撓んで、外側、つまりベルト部材2から被研磨物18に向かう側に押し出される。さらに、研磨布紙3は、その裏面側において同遠心力の作用によって立ち上げられる3枚のバックアップシート20によっても押し出される。
これらの押出作用により、研磨布紙3は、より強固に立ち上げられ、ベルト部材2に対して十分に立ち上げられた状態が3枚のバックアップシート20によって強固に保持された状態で被研磨物18に接触されることになる。
【0027】
<作用効果の説明>
本変形例の研磨ベルト1Aによっても、第1の実施形態と同様に、研磨材付着部3bの先端側角部が皮膜18aに鋭く食い込み、その皮膜18aに裂け目を入れて捲り取り、被研磨物18の表面を効果的に研磨することができる。この際、研磨布紙3は、その裏面側に配される3枚のバックアップシート20によってその立ち上げられた状態が強固に保持されているので、皮膜18aをより確実に捲り取ることができる。
【0028】
なお、本変形例の研磨ベルト1Aにおいて、短冊状の研磨布紙3とバックアップシート20とが取り付けられる被駆動体としてベルト部材2が用いられる例を示したが、これに限定されるものではなく、ベルト部材2に代えて、例えば所要の内径・外径寸法に設定された円筒部材を用いることも可能である。
【0029】
〔第2の実施形態〕
図7には、本発明の第2の実施形態に係る研磨体としての研磨ホイールの正面図(a)、(a)のD−D線断面図(b)および研磨布紙の構造説明図(c)がそれぞれ示されている。また、図8には、第2の実施形態の研磨ホイールによる研磨動作説明図が示されている。
【0030】
<研磨ホイールの概略説明>
図7(a)(b)に示される研磨ホイール21は、カップ部22aの周囲に所要の傾斜角で外向きにフランジ部22bが張り出されてなるディスク部材22を備えている。
このディスク部材22におけるフランジ部22bの表面には、研磨布紙23が周方向に多数枚順次位置をずらして重ね合わせようにして取り付けられている。
【0031】
<研磨布紙の説明>
図7(c)に示されるように、研磨布紙23は、基材25を備えている。この基材25は、ディスク部材22のフランジ部22bの幅寸法よりやや短い長さで所要の寸法の撥形状のシート部材である。
基材25の基端部は、ディスク部材22の回転運動方向Rの先行側に配され、フランジ部22bの表面に接着剤等によって固着される固着部23aとされる。
基材25の先端部は、ディスク部材22の回転運動方向Rの後行側に配されている。この基材25の先端部には、その表面側に接着剤層27を介して研磨材26が付着されている。こうして、基材25の先端部と研磨材26と接着剤層27とによって、被研磨物に接当可能な研磨材付着部23bが形成される。
基材25の長さ方向中間部は、ディスク部材22と被研磨物との間で自由に動くことができるように、フランジ部22bに固着されることなく開放されている。また、この基材25の長さ方向中間部には、研磨材26など何ら付着されておらず、基材25そのものが露出されており、柔軟に撓むことができるようになっている。こうして、固着部23aと研磨材付着部23bとの間に、ディスク部材22と被研磨物との間で柔軟に撓む可撓部23cが形成される。
【0032】
<基材、研磨材、研磨材の具体例の説明>
上記の基材25、研磨材26および接着剤層27に関する具体例としては、第1の実施形態における基材5、研磨材6および接着剤層7の具体例と同様である。
【0033】
<研磨ホイールの使用態様の説明>
このように構成される研磨ホイール21は、例えば図示されないハンドグラインダの回転軸に取り付けられて回転駆動される。
【0034】
<研磨動作の説明>
回転駆動される研磨ホイール21を、被研磨物18との接触圧を適宜に調整しながら被研磨物18の表面に接触させる。ここで、被研磨物18としては、第1の実施形態と同様に、表面が硬い皮膜18aで覆われたものを例に、以下の研磨動作の説明を行うこととする。
【0035】
図8に示されるように、研磨布紙23は、固着部23aと研磨材付着部23bとの間に可撓部23cを有しているため、また、その先端部側に研磨材付着部23bを有しているため、研磨ホイール21の回転運動に伴う遠心力(この場合は、フランジ部22bの傾斜角に応じた遠心力の分力)の作用により、研磨材付着部23bが錘のように機能し、可撓部23cが柔軟に撓んで、外側、つまりディスク部材22から被研磨物18に向かう側に押し出され、ディスク部材22に対して十分に立ち上げられた状態で被研磨物18に接触されることになる。これにより、被研磨物18の表面が硬い皮膜18aで覆われていたとしても、研磨材付着部23bの先端側角部がその皮膜18aに鋭く食い込み、その皮膜18aに裂け目を入れて捲り取り、被研磨物18の表面を効果的に研磨することができる。
【0036】
〔第2の実施形態の変形例〕
図9には、第2の実施形態の変形例に係る研磨ホイールの正面図(a)、(a)のE−E線断面図(b)、研磨布紙の構造説明図(c)およびバックアップシートの構造説明図(d)がそれぞれ示されている。また、図10には、第2の実施形態の変形例に係る研磨ホイールによる研磨動作説明図が示されている。
【0037】
<研磨ホイールの概略説明>
図9(a)(b)に示される研磨ホイール21Aは、ディスク部材22のフランジ部22bの表面に、研磨布紙23とバックアップシート30とが所定の配置でディスク部材22の周方向に多数枚順次位置をずらして重ね合わせようにして取り付けられた構成のものである。
【0038】
<研磨布紙とバックアップシートの配置の説明>
図9(a)に示されるように、本変形例では、1枚の研磨布紙23に対し、その研磨布紙23の裏面側に3枚連続でバックアップシート30が配置されている。言い換えれば、ディスク部材22の周方向に多数枚配されるバックアップシート30の3枚おきに1枚の研磨布紙23が介挿される配置関係とされている。
なお、この配置関係に限定されるものではなく、例えば、ディスク部材22の周方向に研磨布紙23とバックアップシート30とを1枚ずつ交互に配置したり、ディスク部材22の長さ方向に多数枚配されるバックアップシート30の2枚もしくは4枚以上の適宜枚数おきに研磨布紙23を1枚もしくは適宜枚数配置したりしてもよい。
これら研磨布紙23およびバックアップシート30は、その基端部(回転運動方向Rの先行側端部)が適宜寸法接着剤によってディスク部材22のフランジ部23bの表面に接着され、その自由端状態にある先端部(回転運動方向Rの後行側端部)が少しずつ露出するように位置をずらせて多数枚重ね合わされて配置されている。
【0039】
<バックアップシートの説明>
バックアップシート30は、研磨布紙23を構成する基材25と基本的に同じものである。すなわち、ディスク部材22のフランジ部22bの幅寸法よりやや短い長さで所要の寸法の撥形状のシート部材で、例えば綿布や合繊布、クラフト紙、不織布、金属網、合成樹脂シートなどからなり、研磨布紙23を裏面側から支持するように配されている。
【0040】
<研磨動作の説明>
図10に示されるように、研磨布紙23は、第2の実施形態と同様に、研磨ホイール21Aの回転運動に伴う遠心力の作用により、研磨材付着部23bが錘のように機能し、可撓部23cが柔軟に撓んで、外側、つまりディスク部材22から被研磨物18に向かう側に押し出される。さらに、研磨布紙23は、その裏面側において同遠心力の作用によって立ち上げられる3枚のバックアップシート30によっても押し出される。
これらの押出作用により、研磨布紙23は、より強固に立ち上げられ、ディスク部材22に対して十分に立ち上げられた状態が3枚のバックアップシート30によって強固に保持された状態で被研磨物18に接触されることになる。
【0041】
<作用効果の説明>
本変形例の研磨ホイール21Aによっても、第2の実施形態と同様に、研磨材付着部23bの先端側角部が皮膜18aに鋭く食い込み、その皮膜18aに裂け目を入れて捲り取り、被研磨物18の表面を効果的に研磨することができる。この際、研磨布紙23は、その裏面側に配される3枚のバックアップシート30によってその立ち上げられた状態が強固に保持されているので、皮膜18aをより確実に捲り取ることができる。
【0042】
以上、本発明の研磨布紙および研磨体について、複数の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、各実施形態に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の研磨布紙および研磨体は、表面が硬い皮膜で覆われた被研磨物であっても効果的に研磨をすることができるという特性を有していることから、酸化皮膜で覆われた鉄材やセラミック材、メッキ処理が施された部材の研磨の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
1,1A 研磨ベルト(研磨体)
2 ベルト部材(被駆動体)
3 研磨布紙
3a 固着部
3b 研磨材付着部
3c 可撓部
5 基材
6 研磨材
7 接着剤層
20 バックアップシート
21,21A 研磨ホイール(研磨体)
22 ディスク部材(被駆動体)
23 研磨布紙
23a 固着部
23b 研磨材付着部
23c 可撓部
25 基材
26 研磨材
27 接着剤層
30 バックアップシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の運動方向に駆動される被駆動体に取り付けられ、研磨対象物である被研磨物に押し当てられることによってその被研磨物を研磨する研磨布紙であって、
前記被駆動体の運動方向の先行側に設けられ、前記被駆動体に固着される固着部と、
前記被駆動体の運動方向の後行側に設けられ、被研磨物に接当可能に研磨材が付着される研磨材付着部と、
前記固着部と前記研磨材付着部との間に設けられ、前記被駆動体と被研磨物との間で柔軟に撓む可撓部とを有することを特徴とする研磨布紙。
【請求項2】
所定の運動方向に駆動される被駆動体と、この被駆動体に取り付けられ、研磨対象物である被研磨物に押し当てられることによってその被研磨物を研磨する研磨布紙とを備えて構成される研磨体であって、
前記研磨布紙は、
前記被駆動体の運動方向の先行側に設けられ、前記被駆動体に固着される固着部と、
前記被駆動体の運動方向の後行側に設けられ、被研磨物に接当可能に研磨材が付着される研磨材付着部と、
前記固着部と前記研磨材付着部との間に設けられ、前記被駆動体と被研磨物との間で柔軟に撓む可撓部とを有することを特徴とする研磨体。
【請求項3】
所定の運動方向に駆動される被駆動体と、この被駆動体に取り付けられ、研磨対象物である被研磨物に押し当てられることによってその被研磨物を研磨する研磨布紙と、この研磨布紙を裏面側から支持するように前記被駆動体に取り付けられるバックアップシートとを備えて構成される研磨体であって、
前記研磨布紙は、
前記被駆動体の運動方向の先行側に設けられ、前記被駆動体に固着される固着部と、
前記被駆動体の運動方向の後行側に設けられ、被研磨物に接当可能に研磨材が付着される研磨材付着部と、
前記固着部と前記研磨材付着部との間に設けられ、前記被駆動体と被研磨物との間で柔軟に撓む可撓部とを有することを特徴とする研磨体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−39647(P2013−39647A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179338(P2011−179338)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000227445)株式会社ニートレックス本社 (6)
【Fターム(参考)】