説明

砥石およびその製造方法

【課題】砥石チップの接着面に凹凸を形成することにより、アンカー効果と接着表面積の増大を可能にした砥石およびその製造方法を提供する。
【解決手段】連続気孔を有しない独立気孔16を持った砥石チップ12の接着面12aを、砥石コア11のチップ取付面11aに接着剤18を介して接着した砥石10にして、砥石チップの接着面に凹凸形成手段によって凹凸17を形成した。砥石チップは、例えば、立方晶窒化ホウ素粒またはダイヤモンド粒からなる超砥粒を、酸化物粒子と非結晶ガラスとからなるビトリファイドボンド結合剤により結合してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続気孔を持たない砥石チップと砥石コアとの接着力を高めた砥石およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビトリファイドボンド砥石には、連続気孔を有するブリッジ型ビトリファイドボンド砥石チップを砥石コア上に接着したものと、連続気孔を有しない独立気孔を持ったマトリックス型ビトリファイドボンド砥石チップを砥石コア上に接着したものがあり、後者のビトリファイドボンド砥石としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載のものは、ビトリファイドボンド結合剤を、酸化物粒子と非結晶ガラスとによって構成し、結合剤内部に形成される気孔を、外気に連通しない微細孤立気孔としたものである。特許文献1に記載のビトリファイドボンド砥石によれば、外気に連通する連続気孔を有しないため、砥粒の保持力が向上して砥粒の脱落による摩耗が抑制され、砥石の長寿命化を図ることができる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−131699公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたような連続気孔を有しないマトリックス型ビトリファイドボンド砥石チップからなるビトリファイドボンド砥石においては、スチール材等からなる砥石コアの外周面に接着剤によって砥石チップを接着する際に、気孔が外気に連通しない孤立気孔であるがゆえに、気孔内に接着剤が浸入せず、接着剤が気孔内に浸入することによるアンカー効果が得られない。しかも、砥石チップの接着面の起伏が乏しいため、接着面の表面積を多くとることができず、砥石チップの接着力の向上に限界を生ずる問題があった。
【0006】
本発明は、上述した従来の問題を解消するためになされたもので、砥石チップの接着面に凹凸を形成することにより、アンカー効果と接着面積の増大を可能にした砥石およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、連続気孔を有しない独立気孔を持った砥石チップの接着面を、砥石コアのチップ取付面に接着剤を介して接着した砥石にして、前記砥石チップの接着面に凹凸形成手段によって凹凸を形成した砥石である。
【0008】
請求項2に係る発明の特徴は、請求項1において、前記砥石チップは、立方晶窒化ホウ素またはダイヤモンドからなる超砥粒を、酸化物粒子と非結晶ガラスとからなるビトリファイドボンド結合剤により結合した砥石である。
【0009】
請求項3に係る発明の特徴は、連続気孔を有しない独立気孔を持った砥石チップを製作し、該砥石チップの砥石コアへの接着面に凹凸を形成し、該凹凸を形成した前記砥石チップの接着面を、接着剤を塗布した前記砥石コアのチップ取付面に接着した砥石の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、連続気孔を有しない独立気孔を持った砥石チップの接着面に凹凸形成手段によって凹凸を形成したので、凹凸形成手段によって形成された凹凸の凹部内に浸入した接着剤によるアンカー効果によって、砥石コアに対する砥石チップの接着力を向上することができ、併せて、凹凸の形成による砥石チップの接着面の表面積の増大によって、砥石コアに対する砥石チップの接着力を一層向上することができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、砥石チップは、立方晶窒化ホウ素またはダイヤモンドからなる超砥粒を、酸化物粒子と非結晶ガラスとからなるビトリファイドボンド結合剤により結合したので、結合剤内部に外気に連通しない独立気孔を容易に形成することができる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、連続気孔を有しない独立気孔を持った砥石チップを製作し、砥石チップの砥石コアへの接着面に凹凸を形成し、凹凸を形成した砥石チップの接着面を、接着剤を塗布した砥石コアのチップ取付面に接着したので、接着剤が砥石チップの接着面に形成された凹凸の凹部内に浸入し、アンカー効果が得られるとともに、凹凸の形成によって、砥石チップの接着面の表面積を容易に増大することができるようになり、砥石コアに対する砥石チップの接着力を向上することが可能が砥石の製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態を示すビトリファイドボンド砥石の全体図である。
【図2】マトリックス型ビトリファイドボンド砥石チップの構成を示す模式図である。
【図3】ビトリファイドボンド砥石の製造方法を示す図である。
【図4】ビトリファイドボンド砥石チップの接着面にショットブラスト処理を施した状態を示す図である。
【図5】ショットブラスト処理する前後のビトリファイドボンド砥石チップの接着面の表面を示す写真である。
【図6】ビトリファイドボンド砥石チップを砥石コアに接着した状態を示す図である。
【図7】接着力の比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、ビトリファイドボンド砥石からなる砥石車10を示し、当該砥石車10は、鉄またはアルミニウム等の金属で成形された円盤状の砥石コア11のチップ取付面としての外周面11aに、厚さが5〜10mmの円弧状の複数のビトリファイドボンド砥石チップ12を接着して構成されている。
【0015】
砥石チップ12は、図2の模式図に示すように、立方晶窒化ホウ素(CBN)またはダイヤモンド等の超砥粒14と、酸化物粒子15aおよび結合剤である非結晶ガラス15bからなるビトリファイドボンド結合剤15とから構成されている。超砥粒14はビトリファイドボンド結合剤15によって覆われ、かつビトリファイドボンド結合剤15内には微細で孤立した気孔(独立気孔)16が所定量設けられており、外気に連通する連続気孔は有していない。
【0016】
酸化物粒子15aは、特許文献1にも記載されているように、非結晶ガラス15bの強度を高めるために添加されるものであり、例えばケイ酸塩鉱物であるZrSiO4(ジルコン)やTiO2(チタニア)、ZrO2(ジルコニア)、Cr23(クロミア)等が用いられ、非結晶ガラス15bは、例えばホウケイ酸ガラス等が用いられる。酸化物粒子15aと、結晶ガラス15bは、温度の変化によって剥離することがないように、ほぼ同じ線熱膨張係数のものが望ましい。
【0017】
次に、ビトリファイドボンド砥石(砥石車)10を製造する方法を図3に基づいて説明する。まず、ビトリファイドボンド結合剤15の原材料となる酸化剤粒子15aの粉末と、非結晶ガラス15bの粉末とを所定の体積比で均一に混ぜ合わせた後、ビトリファイドボンド結合剤15の中に立方晶窒化ホウ素(CBN)、またはダイヤモンド等の超砥粒14を所定の比率で混入し、均等に分散させる。
【0018】
次いで、ビトリファイドボンド結合剤15中に微細な独立気孔16を形成するために、発泡剤である例えばHBN(6方晶窒化ホウ素)等を粉末状態にて均等に混ぜ合わせる。しかる状態で、ビトリファイドボンド結合剤15を型内で所定の圧力にてプレスし成形した後、焼成する。この焼成により、発泡剤である例えばHBNと、非結晶ガラス15bとが反応してガスが発生し、発生したガスは独立気孔16としてビトリファイドボンド結合剤15内に所定量が形成され、図1に示すような円弧状をしたビトリファイドボンド砥石チップ12が製造される(図3のステップI)。
【0019】
次に、ビトリファイドボンド砥石チップ12の砥石コア11との接着面12aにショットブラスト処理を施す(同ステップII)。ショットブラストに用いる砥材としては、マトリックス型砥石に用いている結合剤15より強く、超砥粒14より弱いものを選定する。これにより、図4に示すように、ビトリファイドボンド結合剤15が除去され、砥石チップ12の接着面12aの表面が荒らされて凹凸17が形成される。図5(A)は、ショットブラスト処理を行う前の平坦状をなす砥石チップ12の接着面12aの表面の写真を示し、図5(B)は、ショットブラスト処理を行ったことによって凹凸17が形成された砥石チップ12の接着面12aの表面の写真を示している。
【0020】
しかる後、砥石コア11の外周面11aに接着剤18(図6参照)を塗布し、その状態で、ショットブラスト処理を施した砥石チップ12の接着面12aを、砥石コア11の外周面11a上に円周方向に沿って複数配列する。そして、砥石チップ12を、乾燥炉内で所定温度で所定時間乾燥することにより、接着剤18を硬化させて砥石チップ12を砥石コア11に接着し(同ステップIII)、ビトリファイドボンド砥石10を製造する。
【0021】
これにより、接着剤18がショットブラスト処理によって形成された砥石チップ12の凹凸17の凹部内に浸入し、アンカー効果が得られるようになる。しかも、ショットブラスト処理による凹凸17の形成によって、砥石チップ12の接着面12aの表面積も増大される。その結果、砥石コア11に対する砥石チップ12の接着力を大幅に向上することができる。
【0022】
図7は、ショットブラスト処理を施した場合(ショットあり)の砥石コア11に対する砥石チップ12の接着力と、ショットブラスト処理を施こさない場合(ショットなし)の砥石コア11に対する砥石チップ12の接着力とを比較したグラフで、このグラフよりショットブラスト処理を施したものが、接着力を大幅に向上できることが理解できる。
【0023】
このように製造されたビトリファイドボンド砥石(砥石車)10を用いて、工作物を研削加工することにより、加工熱や研削負荷、あるいは研削液による接着剤の劣化等により、仮に砥石チップ12の接着力が徐々に低下しても、使用上安全な接着力を長期に亘って確保することができるようになり、砥石寿命を向上することが可能となる。
【0024】
上記した実施の形態においては、砥石チップ12の接着面12aに、ショットブラスト処理によって凹凸17を形成する例について述べたが、凹凸17を形成する手段(凹凸形成手段)は、ショットブラスト処理に限定されるものではなく、例えば、WA砥石によってビトリファイドボンド結合剤15を除去して凹凸を形成するものであってもよい。
【0025】
また、上記した実施の形態においては、連続気孔を有しないマトリックス型のビトリファイドボンド砥石10を例に説明したが、本発明は、ビトリファイドボンド砥石10に限定されるものではなく、例えば、連続気孔を有するビトリファイドボンド砥石において、気孔部を樹脂等で充填させたようなビトリファイドボンド砥石にも適用できるものである。さらには、ビトリファイドボンドに限らず、レジンボンドやメタルボンドによって超砥粒を結合したマトリックス型砥石にも適用できるものである。
【0026】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係る砥石およびその製造方法は、連続気孔を有しない独立気孔を持ったマトリックス型砥石チップを砥石コアに接着剤を用いて接着する砥石に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0028】
10…砥石車、11…砥石コア、11a…チップ取付面(外周面)、12…砥石チップ、12a…接着面、14…超砥粒、15…結合剤、16…独立気孔、17…凹凸、18…接着剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続気孔を有しない独立気孔を持った砥石チップの接着面を、砥石コアのチップ取付面に接着剤を介して接着した砥石にして、前記砥石チップの接着面に凹凸形成手段によって凹凸を形成したことを特徴とする砥石。
【請求項2】
請求項1において、前記砥石チップは、立方晶窒化ホウ素またはダイヤモンドからなる超砥粒を、酸化物粒子と非結晶ガラスとからなるビトリファイドボンド結合剤により結合したことを特徴とする砥石。
【請求項3】
連続気孔を有しない独立気孔を持った砥石チップを製作し、該砥石チップの砥石コアへの接着面に凹凸を形成し、該凹凸を形成した前記砥石チップの接着面を、接着剤を塗布した前記砥石コアのチップ取付面に接着したことを特徴とする砥石の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−91291(P2012−91291A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241411(P2010−241411)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(591043721)豊田バンモップス株式会社 (29)
【Fターム(参考)】