説明

破壊的行動障害の処置法

本発明は、治療的に有効量の、本明細書に定義され、以下
【化1】


に示されるような、式1および/または式2の1種または複数のカルバメート化合物を、投与を要する被検体に投与する方法を含んでなる、行為障害および反抗性挑戦性障害の双方を含む破壊的行動障害の処置法である。本発明は単独治療およびあるいはまた、少なくとも1種の更なる向精神薬との併用治療を含む、行為障害および反抗性挑戦性障害の双方を含む破壊的行動障害の処置法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願書は2006年10月27日に出願された米国特許仮出願第60/863,137号の35 U.S.C.119(e)下の利益を主張する。前記の関連米国特許出願書の完全な開示は、すべての目的のために引用されることにより本明細書に取り入れらることにする。
【0002】
本発明は、単独治療および少なくとも1種の他の向精神薬との併用治療双方を含む、破壊的行動障害の処置のための特定のカルバメート化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
破壊的行動障害(DBD)は行為障害および反抗性挑戦性障害を含み、通常、幼児期または思春期に最初に診断される関連障害の1群である(非特許文献1参照)。
【0004】
反抗性挑戦性障害(ODD)および行為障害(CD)は幼児および青少年を冒すもっとも一般的な2つの精神障害である。ODDの発生率は個体群抜き取りの本質および確定法に応じて2〜16%の範囲にある。CDの発生率は同様な範囲内にある。
【0005】
DSM−IV−TM(精神障害の診断および統計マユアル、第4版編集(DSM−IV−TM)米国精神医学会、2000)によると、ODDの特徴は、短気である、大人との日常的な言い争い、規則を無視する、他人をわざと困らせる、自分の誤りを他人のせいにする、怒りっぽく、憤慨し、悪意があり、そして執念深い性格を含む。ODDはその重症な形態では、極端な機能障害を伴い、家庭生活に著しく破壊的であり得る。
【0006】
行為(conduct)障害
精神障害の診断および統計マユアル、第4版編集(DSM−IV−TR)はCDの特徴を、12カ月間の一連の基準の3項以上の存在により示されるような、他人または主たる年齢相応な正常人の基本的権利また規則が侵害される、反復的で恒常的な行動パターン;と説明している。これらは、いじめ、脅迫、けんかを始める、害を引き起こすために武器を使用する、動物また人に残酷である、こそ泥、他人に性的行動を強制する、財産の破壊、放火、詐欺または窃盗、家宅または不動産不法侵入、貴重品の窃盗、等、および、13才未満の夜間外出、家出、13才前の不登校、のような規則の重大な侵害、のような、人および動物に対する攻撃を含む。
【0007】
反抗性挑戦性障害
反抗性挑戦性障害は幼児および青少年がかかるもっとも一般的な精神障害の1つである。ODDの発生率は抜き取られた個体群の本質および確定法に応じて2〜16%の範囲にある。精神障害の診断および統計マユアル、第4版編集(DSM−IV−TR)(米国精神医学会、2000)は、ODDの本質的特徴を、少なくとも6カ月間継続する、権威者に対する否定的、挑戦的、非服従的および敵対的行動の反復パターン(基準A)と定義し、そして以下の行動:かっとする(基準A1)、大人と争う(基準A2)、大人の要求または規則に従うことを積極的に拒むまたは拒否する(基準A3)、他人を怒らせるであろうことを意識的に実行する(基準A4)、自分の誤りまたは誤った行動を他人のせいにする(基準A5)、他人に対して気難しくまたは怒りっぽい(基準A6)、怒り、憤慨する(基準A7)あるいは悪意に満ちたまたは執念深い(基準A8)、の少なくとも4項の頻繁な発生を特徴とする。
【0008】
ODDと見なされるためには、その行動は、匹敵する年令および発達段階の個体に典型
的に認められるものより頻繁に発生せねばならず、そして社会的、学究的または職業的機能に重大な損傷をもたらさねばならない(基準B)。
【0009】
行動における障害が、精神障害または気分障害の経過中に専ら起る(基準C)か、あるいは基準が行為障害または反社会的人格障害(18才を超える個体における)(DSM−IV−TR、米国精神医学会、2000)を満たす場合は、その診断をされない。ODDは行為障害(例えば、権威者に対する不服従および反抗)に認められる幾つかの特徴を含むが、それは他人または年令相当の社会の正常人の基本的権利あるいは規則のいずれかが侵される、行動のより重大な形態の恒常的パターンは含まない(DSM−IV−TR、米国精神医学会、2000)。個体の行動パターンが行為障害およびODDの双方の基準を満たす時は、行為障害の診断が優先され、ODDは診断されない(DSM−IV−TR、米国精神医学会、2000)。ICD−10(世界保健機構、1992)はまた、法律または他人の権利を侵害する重大な非社会的または攻撃的行為を伴わない、著しく挑戦的な、不服従の、挑発的行動の存在により規定される、反抗性挑戦性障害のカテゴリーを含む。
【0010】
数人の臨床医および研究者は、ODDが行為障害の軽度の形態であるという考えを表した(非特許文献2)が、この問題は、該再検討の著者等により検討されて(非特許文献3)、破壊的行動の症状は2種のグループ、一方のグループは、けんかおよびいじめのような、すべての反抗性挑戦性障害行動プラス、軽度の身体的攻撃のいくらかの症状よりなり、他方のグループは盗み、騙しおよび失踪のような人目につかない、非攻撃的な行為障害行動よりなるグループに、一貫して統合されるという所見における因子の分析的研究において、かなりの一致が存在すると結論された。2グループへのこの統合は更に、ODDおよび行為障害は相互に異なるという考えを強化する。
【0011】
特定の基準―大部分はDSM−IIIの基準−の使用および標準化されたインタビューに基づいたコミュニティーの試料抜き取りにおけるODDの研究により、5.7%の荷重平均を伴って1.7%〜9.9%間のODDの罹患率が示される。何かの障害をもつすべての幼児のほぼ1/3がODDの診断を有した(非特許文献4参照)。
【0012】
全体として、ODDは幼児の年令に左右されるが、女児よりも男児に、より頻繁に診断され、12才以下の幼児の研究は、女児に認められるものの2倍の、男児におけるODDの罹患率を示す(非特許文献4)が、他方、青春期の研究は女子にODDの高い罹患率を示した。それに対し、大部分の研究において、行為障害はすべての年令群で男子に、より頻繁に診断される。この差はODDと行為障害間の相違の更なる確証である。
【0013】
ODDと注意欠陥多動障害間に高い合併罹患率および更に、ODDと行為障害間に高い合併罹患率が存在し、そしてODDと、分離不安、全般性不安障害と主要抑鬱障害間には幾らかの重複が認められ、そしてODDと意志疎通障害間に関連があるように見える。
【0014】
ODDの診断は長期にわたり安定に留まる。CantwellおよびBaker 1989(非特許文献5参照)はDSM−III障害を罹患していると診断された幼児のグループの4年間の追跡研究を実施し、自閉症と注意欠陥多動障害と一緒のODDがもっとも安定した診断の1つであることを見いだした。ODDはまた、すべての行動性精神障害のうちでもっとも低い回復率を有する。これが、ODDと診断された患者に対する有効な処置の必要を明確に示す。
【0015】
従って、行為障害、反抗性挑戦性障害の双方を含む破壊的行動障害の有効な薬理学的処置を提供する必要が残る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】DSM−lV−TR,Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(精神障害の診断および統計マユアル),4th Edition(第4版),Text Revision(編集),American Psychiatric Association(米国精神医学会),2000
【非特許文献2】Rutter and Shaffer,Am.Acad.Child Psychiatry 12:371−394,(1980)
【非特許文献3】Quay,HC,Psychopathological Disorders of Childhood(幼児期の精神病理学的障害),3rd ed.Edited by Quay HC and Werry JS New York,John Wiley & Sons(1986)
【非特許文献4】Anderson et al.,Arch.Gen.Psychiatry 44:69−613,(1987)
【非特許文献5】Cantwell DP and Baker L,J.Am.Acad.Child Adolesc.Psychiatry Za:691−700(1989)
【発明の概要】
【0017】
発明の要約
本発明は、式1または式2:
【0018】
【化1】

【0019】
式中、
、R、RおよびRは独立して水素またはC−Cアルキルであり、ここで
1−アルキルはフェニルで置換されていてもまたは置換されていなくてもよく、そしてここで
フェニルは、独立して、ハロゲン、C1−アルキル、C1−アルコキシ、ニトロ、シアノおよびアミノから選択される5個までの置換基で置換されていてもまたは置換されていなくてもよく、ここで
アミノは場合により、C1−アルキルでモノまたはジ置換されていてもよく、そして
、X、X、XおよびXは独立して水素、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素である、
の少なくとも一方の化合物またはその製薬学的に許容されうる塩またはエステル形態を含んでなる、治療的に有効量の組成物を、投与を要する被検体に投与する方法を含んでなる
、行為障害および反抗性挑戦性障害の双方を含む破壊的行動障害の処置法に関する。
【0020】
本発明の実施態様は、そのX、X、X、XおよびXが独立して、水素、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素から選択される式1または式2の化合物を含む。
【0021】
特定の実施態様において、X、X、X、XおよびXは独立して水素または塩素から選択される。
【0022】
他の実施態様において、Xはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素から選択される。他の実施態様において、Xは塩素であり、そしてX、X、XおよびXは水素である。他の実施態様において、R、R、RおよびRは水素である。
【0023】
本発明は、投与を要する被検体における行為障害、反抗性挑戦性障害またはDBD NOSのいずれかを含む破壊的行動障害を処置するための、式1または式2のエナンチオマーを提供する。特定の実施態様において、式1または式2の化合物はその単一のエナンチオマーの形態にあるであろう。他の実施形態においては、式1または式2の化合物は、片方のエナンチオマーが他方のエナンチオマーに対して優位を占めるエナンチオマー混合物の形態にあるであろう。
【0024】
他の態様において、一方のエナンチオマーは約90%以上の範囲で優位を占める。更なる態様において、一方のエナンチオマーは約98%以上の範囲で優位を占める。
【0025】
本発明はまた、式中、R、R、RおよびRが独立して水素またはC−Cアルキルから選択され、そしてX、X、X、XおよびXが独立して水素、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素から選択される、式1または式2の少なくとも一方の化合物を含んでなる、予防的または治療的に有効量の組成物を被検体に投与する方法を含んでなる方法を提供する。
【0026】
本発明は更に、治療的に有効量の少なくとも1種の抗鬱剤および式1または式2の化合物による合併治療を、それを要する被検体に投与する方法を含んでなる、行為障害および反抗性挑戦性障害の双方を含む破壊的行動障害の処置法に関する。本発明を具体的に表すものは、治療的に有効量の前記のいずれかの化合物または製薬学的組成物を、投与を要する被検体に投与する方法を含んでなる、行為障害および反抗性挑戦性障害の双方を含む破壊的行動障害の処置法である。
【0027】
他の例において、本発明は、前記のいずれかの化合物または製薬学的組成物と組み合わせた、少なくとも1種の更なる向精神薬を、投与を要する被検体に投与する方法を含んでなる、行為障害および反抗性挑戦性障害の双方を含む破壊的行動障害の処置法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】DSR装置を示す。
【図2】餌容器で過ごした時間に対する、化合物#7およびフルオキセチンによる服従ラットの処置効果を示す。
【図3】ラットのペアにおける支配レベルに対する化合物#7およびフルオキセチンの効果を示す。
【図4】餌容器で過ごした時間に対する化合物#7およびリチウムによる支配ラットの処置の効果を示す。
【図5】ラットのペアにおける支配レベルに対する化合物#7およびリチウムの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
本発明は、治療的有効量の、2−フェニル−1,2−エタンジオールモノカルバメートおよびジカルバメートを含む組成物を、投与を要する被検体に投与する方法を含んでなる、行為障害および反抗性挑戦性障害の双方を含む破壊的行動障害の処置法に関する。
【0030】
発明のカルバメート化合物
本発明に従う代表的カルバメート化合物は式1または式2:
【0031】
【化2】

【0032】
式中、
、R、RおよびRは独立して水素またはC−Cアルキルであり、ここで
1−アルキルはフェニルで置換されていてもまたは置換されていなくてもよく、そしてここで
フェニルはハロゲン、C1−アルキル、C1−アルコキシ、ニトロ、シアノおよびアミノから独立して選択される5個までの置換基で置換されていてもまたは置換され
ていなくてもよく、ここで
アミノは場合により、C1−アルキルでモノまたはジ置換されていてもよく、そして
、X、X、XおよびXは独立して水素、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素である、
を有する化合物またはそれらの製薬学的に許容されうる塩またはエステル形態を含む。
【0033】
本明細書で使用される「C−Cアルキル」は1〜4個の炭素原子を有する置換または未置換脂肪族炭化水素を表す。「アルキル」の定義内に特に含れるものは、場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素である。本発明の好ましい実施態様において、C−Cアルキルは未置換であるかまたはフェニルで置換されているかのいずれかである。
【0034】
本明細書で使用される用語「フェニル」は、単独で使用されても他の基の一部として使用されても、6個の炭素原子を有する置換または未置換の芳香族炭化水素環式基と定義される。「フェニル」の定義内に特に含まれるものは、場合により置換されていてもよいフェニル基である。例えば、本発明の好ましい実施態様において、「フェニル」基は未置換であるかまたはハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、アミノ、ニトロまたはシアノで置換されている。
【0035】
本発明の好ましい実施態様において、Xはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、そしてX、X、XおよびXは水素である。
【0036】
本発明の他の好ましい実施態様において、X、X、X、XおよびXは独立して塩素または水素である。
【0037】
本発明の他の好ましい実施態様において、R,R,RおよびRはすべて水素である。
【0038】
本発明の化合物上の置換基および置換パターンは、化学的に安定で、当該技術分野で知られた方法並びに本明細書に提供された方法により容易に合成することができる化合物を提供するように、当業者の一人により選択されることができることは理解される。
【0039】
代表的な2−フェニル−1,2−エタンジオールモノカルバメートおよびジカルバメートは例えば以下の化合物:
【0040】
【化3】

【0041】
【化4】

【0042】
を含む。
【0043】
本発明の方法に使用される、カルバメートのエナンチオマーを含むカルバメート化合物を合成し、精製する適切な方法は当業者に周知である。例えば、2−フェニル−1,2−エタンジオールモノカルバメートおよびジカルバメートの純粋なエナンチオマー形態およびエナンチオマー混合物は米国特許第5,854,283号;第5,698,588号および第6,103,759号に記載されており、それらの開示はそれらの全体を引用することにより本明細書に編入されたこととする。
【0044】
本発明は式1または式2の単離エナンチオマーの使用を含む。
【0045】
1つの好ましい実施態様において、式1の単離S−エナンチオマーを含んでなる製薬学的組成物が被検体における鬱病を処置するために使用される。
【0046】
他の好ましい実施態様において、式2の単離R−エナンチオマーを含んでなる製薬学的組成物が被検体における行為障害、反抗性挑戦性障害および破壊的行動障害を処置するために使用される。
【0047】
他の実施態様において、式1の単離S−エナンチオマーおよび式2の単離R−エナンチオマーを含んでなる製薬学的組成物を、処置を要する被検体における破壊的行動障害を処置するために使用することができる。
【0048】
本発明はまた、式1または式2のエナンチオマーの混合物の使用を含む。本発明の1つの態様において、一方のエナンチオマーが優位を占めるであろう。混合物中で優位を占めるエナンチオマーは、混合物に存在する他のあらゆるエナンチオマーよりも多量で、例えば50%を超える量で混合物中に存在するものである。1つの態様において、一方のエナンチオマーは90%の程度まで、または91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%以上の程度まで優位を占めるであろう。
【0049】
1つの好ましい実施態様において、式1の化合物を含んでなる組成物中で優位を占めるエナンチオマーは式1のS−エナンチオマーである。他の好ましい実施態様において、式2の化合物を含んでなる組成物中で優位を占めるエナンチオマーは式2のR−エナンチオマーである。
【0050】
本発明の好ましい実施態様において、本発明の組成物中の単独のエナンチオマーとしてまたは優位を占めるエナンチオマーとして存在するエナンチオマーは、式3または式5[ここで、X、X、X、X、X、R、R、RおよびRは前記に定義の通りである]により、あるいは式7または式8により表される。
【0051】
【化5】

【0052】
【化6】

【0053】
本発明は、式1および式2により表される化合物またはそれらの製薬学的に許容されうる塩またはエステル形態のエナンチオマーおよびエナンチオマー混合物を使用する方法を提供する。
【0054】
式1または式2のカルバメートエナンチオマーは、フェニル環に隣接する脂肪族炭素であるベンジル位の非対称性キラル炭素を含む。
【0055】
単離されるエナンチオマーは、実質的に対応するエナンチオマーを含まないものである。従って、単離エナンチオマーは分離法により分離されるか、または対応するエナンチオマーを含まずに調製される化合物を表す。
【0056】
本明細書で使用される用語「実質的に含まない」は、その化合物が有意に、より多量の割合の、一方のエナンチオマーよりなることを意味する。好ましい実施態様において、その化合物は少なくとも約90重量%の好ましいエナンチオマーを含む。
【0057】
本発明の他の実施態様において、化合物は少なくとも約99重量%の好ましいエナンチオマーを含む。好ましいエナンチオマーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびキラル塩の形成および晶出を含む当業者に知られたいずれかの方法によりラセミ混合物から単離するか、あるいは好ましいエナンチオマーを本明細書に記載の方法により調製することができる。
【0058】
好ましいエナンチオマーの製法は当業者に知られていると考えられ、例えばJacques,et al.,Enantiomers,Racemates and Resolutions(エナンチオマー、ラセミ化合物および分離)(Wiley Interscience,New York,1981);Wilen,S.H.,et al.,Tetrahedron 33:2725(1977);Eliel,E.L.Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw−Hill,NY,1962);and Wilen,S.H.Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p.268(E.L.Eliel,Ed.,Univ.of Notre Dame Press,Notre Dame,IN 1972).に記載されている。
【0059】
更に、本発明の化合物は、米国特許第3,265,728号(その明細はその全体をすべての目的のために引用することにより、本明細書に編入されたこととする)、第3,313,692号(その明細はその全体をすべての目的のために引用することにより、本明
細書に編入されたこととする)並びに前記に引用された米国特許第5,854,283号;第5,698,588号および第6,103,759号(それらの明細はその全体をすべての目的のために引用することにより、本明細書に編入されたこととする)に記載されたように調製することができる。
【0060】
本発明は更に、少なくとも1種の更なる向精神薬と組み合わせた、治療的に有効量の式1または式2の化合物を、投与を要する被検体に投与する方法を含んでなる、行為障害および反抗性挑戦性障害の双方を含む破壊的行動障害の処置に関する。
【0061】
本明細書で使用される用語「破壊的行動障害」または「(DBD)」は、これらの障害がDSM−lV−TR(精神障害の診断および統計マユアル、第4版、編集(DSM−IV−TR)、米国精神病学会,2000)に記載されているように、行為障害、幼児−発症タイプ312.81;行為障害、青年期−発症タイプ312.82;行為障害、非特定発症312.89;反抗性挑戦性障害313.81および他に特定されない破壊的行動障害312.9を含むと定義されることとする。
【0062】
本明細書に使用される用語「向精神薬」は別記されない限り、行為障害、反抗性挑戦性障害および破壊的行動障害NOS双方を含む破壊的行動障害を処置またはその処置を増強するために使用することができるあらゆる製薬学的物質を意味することとする。適当な例は、それらに限定はされないが;メチルフェニデート、アンフェタミンおよびモダフィニルに限定はされないが、それらを含む刺激剤、モリンドン、ハロペリドールおよびクロルプロマジンのような主要トランキライザー、ベンゾジアゼピンを含む弱いトランキライザー、それらに限定はされないが、イミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン、ノルトリプチリン、ドキセピン、プロトリプチリン、トリミプラミン、クロミプラミン、アモキサピン、等のような三環系化合物を含む抗鬱剤、マプロチリン等のような四環系化合物;ノミフェンシン等のような非環系化合物;トラゾドン等のようなトリアゾロピリジン;フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、シタロプラム、フルボキサミン、等のようなセロトニン再取り込みインヒビター;ネファゾドン、等のようなセロトニン受容体アンタゴニスト;ベンラファキシン、ミルナシプラン等のような組み合わせたセロトニン−ノルアドレナリン作動性再取り込みインヒビター;ミルタザピン等のようなノルアドレナリンおよび特異的セロトニン作動性剤;レボキセチン等のようなノルアドレナリン再取り込みインヒビター;ブプロピオン、等のような非定型抗鬱剤;カバカバ、セントジョンズ草、等のような天然産物;s−アデノシルメチオニン、等のような栄養補助食品、フェネルジン、トラニルシプロミン、モクロベミド、等のようなモノアミンオキシダーゼインヒビターを含む。刺激剤は好ましくは、メチルフェニデートおよびモダフィニルよりなる群から選択される。抗鬱剤は好ましくは、フルオキセチン、パロキセチン、シタロプラム、フルボキサミン、ブプロピオン、ベンラファキシンおよびセルトラリンよりなる群から選択される。
【0063】
当業者は、薬剤包装物挿入物、FDA指針、医師の机上参考書、等のような適当な参考書を参考にすることにより、抗鬱剤、トランキライザー、抗精神病薬および刺激剤を含む、知られたそして/または市販の向精神薬の推奨投与レベルを容易に決定することができると考えられる。
【0064】
本明細書で使用される用語「被検体」は、処置、観察または実験の対象であった動物、好ましくは哺乳動物、もっとも好ましくはヒトを表す。
【0065】
本明細書に使用される用語「治療的に有効量」は、処置されている疾患または障害の症状の軽減を含む、研究者、獣医、医学博士または他の臨床医により追求されている組織系、動物またはヒトにおける生物学的または医学的反応を誘発する有効化合物または製薬学
的物質の量を意味する。
【0066】
本発明が式1または式2の1種または複数の化合物および1種または複数の向精神薬の投与を含んでなる、併用治療または組み合わせ治療に関する場合、「治療的有効量」は、組み合わせた効果が所望の生物学的または医学的反応を誘発するように、一緒に受けた薬剤の組み合わせ物の量を意味することとする。例えば、式(I)または式(II)の化合物および少なくとも1種の抗鬱剤の投与を含んでなる併用治療の治療的有効量は、一緒にまたは連続して投与される時に、治療的に有効な組み合わせ効果を有する、式(I)または式(II)の化合物の量および向精神薬の量であると考えられる。更に、前記の例におけるような治療的有効量による併用治療の場合には、式1または式2の化合物の量および/または向精神薬の量は個別には、治療的に有効であっても有効でなくてもよいことは当業者により認められるであろう。
【0067】
本明細書で使用される用語「併用治療」および「組み合わせ治療」は、1種または複数の式1または式2の化合物および1種または複数の更なる向精神薬がいずれかの適当な方法により同時に、連続的に、別々にまたは単一の製薬学的調合物中で投与される、1種または複数の更なる向精神薬と組み合わせた式1または式2の1種または複数の化合物を投与することによる、処置を要する被検体の処置を意味することとする。1種または複数の式1または式2の化合物および1種または複数の更なる向精神薬が別の投与剤形で投与される場合は、各化合物に対する1日当たり投与される服用回数は同一でも異なってもよい。
【0068】
1種または複数の式1または式2の化合物および1種または複数の更なる向精神薬は、同一のまたは異なる投与経路により投与されてもよい。適当な投与法の例は、限定はされないが、経口(po)、静脈内(iv)、筋肉内(im)、皮下(sc)、経皮的および直腸内を含む。化合物はまた、ポンプ装置を使用してまたは使用せずに、頭蓋内または脊椎内用針および/またはカテーテルを介する送達による、限定はされないが、脳内、室内、脳室内、鞘内、槽内、脊髄内および/または脊髄周囲の投与経路を含む神経系に直接投与することができる。1種または複数の式1または式2の化合物および1種または複数の更なる向精神薬は、分割形態でまたは単一の形態で、同時に、治療経過中同時にまたは異なる時間に、同時のまたは交互の計画に従って投与することができる。
【0069】
本発明の1つの実施態様は、限定はされないが、メチルフェニデート、アンフェタミンおよびモダフィニルを含む刺激剤、モリンドン、ハロペリドールおよびクロルプロマジンのような主要トランキライザー、ベンゾジアゼピンを含む弱いトランキライザー、限定はしないが、イミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン、ノルトリプチリン、ドキセピン、プロトリプチリン、トリミプラミン、クロミプラミン、アモキサピン、等のような三環系化合物を含む抗鬱剤;マプロチリン等のような四環系化合物;ノミフェンシン等のような非環系化合物;トラゾドン等のようなトリアゾロピリジン;フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、シタロプラム、フルボキサミン、等のようなセロトニン再取り込みインヒビター;ネファゾドン、等のようなセロトニン受容体アンタゴニスト;ベンラファキシン、ミルナシプラン等のような組み合わせたセロトニン−ノルアドレナリン作動性再取り込みインヒビター;ミルタザピン等のようなノルアドレナリンおよび特異的セロトニン作動性剤;レボキセチン等のようなノルアドレナリン再取り込みインヒビター;ブプロピオン、等のような非定型抗鬱剤;カバカバ、セントジョンズ草、等のような天然産物;s−アデノシルメチオニン、等のような栄養補助食品、フェネルジン、トラニルシプロミン、モクロベミド、等のようなモノアミンオキシダーゼインヒビター、よりなる群から選択される1種または複数の化合物との、1種または複数の式1または式2の化合物の組み合わせ物を、投与を要する被検体に投与する方法を含んでなる、破壊的行動障害または(DBD)の処置法である。
【0070】
1種または複数の式1または式2の化合物は好ましくは、限定はされないが、メチルフェニデート、アンフェタミンおよびモダフィニルを含む刺激剤、モリンドン、ハロペリドールおよびクロルプロマジンのような主要トランキライザー、ベンゾジアゼピンを含む弱いトランキライザー、、限定はしないが、イミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン、ノルトリプチリン、ドキセピン、プロトリプチリン、トリミプラミン、クロミプラミン、アモキサピン、等のような三環系化合物を含む抗鬱剤;マプロチリン等のような四環系化合物;ノミフェンシン等のような非環系化合物;トラゾドン等のようなトリアゾロピリジン;フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、シタロプラム、フルボキサミン、等のようなセロトニン再取り込みインヒビター;ネファゾドン、等のようなセロトニン受容体アンタゴニスト;ベンラファキシン、ミルナシプラン等のような組み合わせたセロトニン−ノルアドレナリン作動性再取り込みインヒビター;ミルタザピン等のようなノルアドレナリンおよび特異的セロトニン作動性剤;レボキセチン等のようなノルアドレナリン再取り込みインヒビター;ブプロピオン、等のような非定型抗鬱剤;カバカバ、セントジョンズ草、等のような天然産物;s−アデノシルメチオニン、等のような栄養補助食品、フェネルジン、トラニルシプロミン、モクロベミド、等のようなモノアミンオキシダーゼインヒビター、よりなる群から選択される1種または複数の化合物と組み合わせて、投与される。
【0071】
1種または複数の式1または式2の化合物は、より好ましくは、刺激剤、主要トランキライザー、モノアミノオキシダーゼインヒビター、三環系化合物およびセロトニン再取り込みインヒビターよりなる群から選択される1種または複数の化合物と組み合わせて投与される。
【0072】
1種または複数の式1または式2の化合物は、もっとも好ましくは、刺激剤およびセロトニン再取り込みインヒビターよりなる群から選択される1種または複数の化合物と組み合わせて投与される。
【0073】
本明細書で使用される「ハロゲン」は、別記されない限り、塩素、臭素、フッ素およびヨウ素を意味することとする。
【0074】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、別記されない限り、単独で使用されようと、置換基の一部として使用されようと、直鎖および分枝鎖を含む。アルキル基は例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル等を含む。別記されない限り、アルキルとともに使用される時の「低級」は、1〜4個の炭素原子の炭素鎖組成物を意味する。
【0075】
本明細書で使用される「アルコキシ」は別記されない限り、前記の直鎖または分枝鎖アルキル基の酸素エーテル基、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ヘキシルオキシ等を意味することとする。
【0076】
本明細書で使用される記号「」はステレオジェン中心の存在を表すこととする。
【0077】
特定の基が「置換されている」(例えば、アルキル、アリール、等)時は、その基は、置換基のリストから独立して選択される、1個または複数の置換基、好ましくは1〜5個の置換基、より好ましくは1〜3個の置換基、もっとも好ましくは1〜2個の置換基をもつことができる。
【0078】
置換基に関連して、用語「独立して」は、2個以上のこのような置換基が可能である時に、このような置換基が相互に同一でも異なってもよいことを意味する。
【0079】
本開示全体で使用される標準命名法に基づくと、指定される側鎖の末端部分が最初に記載され、次に結合点の方向に隣接官能基が記載される。従って、例えば「フェニル−アルキル−アミノ−カルボニル−アルキル」置換基は、式
【0080】
【化7】

【0081】
の基を表す。
【0082】
本発明に従う化合物が少なくとも1個のキラル中心をもつ場合は、それらはそれに従ってエナンチオマーとして存在することができる。それらの化合物が2個以上のキラル中心をもつ場合は、それらは更にジアステレオマーとして存在することができる。すべてのこのような異性体およびそれらの混合物が本発明の範囲内に含まれることが理解される。更に、それらの化合物の幾つかの結晶形態は多形体として存在することができ、それらも本発明に含まれることが意図される。更に、幾つかの化合物は水(すなわち水和物)または一般的有機溶媒と溶媒和を形成することができ、そしてそのような溶媒和もまた本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0083】
医薬中への使用のための本発明の化合物の塩は、無毒の「製薬学的に許容されうる塩」を表す。しかし、他の塩は本発明に従う化合物またはそれらの製薬学的に許容されうる塩の調製に有用であることができる。化合物の適当な製薬学的に許容されうる塩は、例えば、塩酸、硫酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、炭酸またはリン酸のような製薬学的に許容されうる酸の溶液と化合物の溶液を混合する工程により形成することができる酸付加塩を含む。更に、本発明の化合物が酸性部分を担持する場合は、それらの適切な製薬学的に許容されうる塩は、アルカリ金属塩、例えばナトリウムまたはカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えばカルシウムまたはマグネシウム塩;および適切な有機リガンドとともに形成される塩、例えば第四級アンモニウム塩、を含むことができる。従って、代表的な製薬学的に許容されうる塩は、以下:
アセテート、ベンゼンスルホネート、ベンゾエート、ビカルボネート、ビスルフェート、ビタルトレート、ボレート、ブロミド、カルシウムエデテート、カムシラート、カルボネート、クロリド、クラブラネート、シトレート、ジヒドロクロリド、エデテート、エジシラート、エストレート、エシラート、フマレート、グルセプテート、グルコネート、グルタメート、グリコリルアルサニレート、ヘキシルレソルシネート、ヒドラバミン、ヒドロブロミド、ヒドロクロリド、ヒドロキシナフトエート、ヨージド、イソチオネート、ラクテート、ラクトビオネート、ラウレート、マレート、マレエート、マンデレート、メシラート、メチルブロミド、メチルナイトレート、メチルスルフェート、ムケート、ナプシレート、ナイトレート、N−メチルグルカミン・アンモニウム塩、オレエート、パモエート(エンボネート)、パルミテート、パントテネート、ホスフェート/ジホスフェート、ポリガラクツロネート、サリチレート、ステアレート、スルフェート、サブアセテート、スクシネート、タンネート、タルトレート、テオクレート、トシラート、トリエチオジドおよびバレレート、を含む。
【0084】
製薬学的に許容されうる塩の調製に使用することができる代表的酸および塩基は以下:酢酸、2,2−ジクロロ酢酸、アシル化アミノ酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビ
ン酸、L−アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4−アセトアミド安息香酸、(+)−カンファー酸、カンファースルホン酸、(+)−(1S)−カンファー−10−スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、D−グルコン酸、D−グルコロン酸、L−グルタミン酸、α−オキソ−グルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩化水素酸、(+)−L−乳酸、(±)−DL−乳酸、ラクトビオニック酸、マレイン酸、(−)−L−リンゴ酸、マロン酸、(±)−DL−マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロチン酸、蓚酸、パルミトリン酸、パモエ酸、リン酸、L−ピログルタミン酸、サリチル酸、4−アミノ−サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)−L−酒石酸、チオシアン酸、p−トルエンスルホン酸およびウンデシレン酸、を含む酸、並びに
アンモニア、L−アルギニン、ベネサミン、ベンザシン、カルシウムヒドロキシド、コリン、デアノール、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2−(ジエチルアミノ)−エタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチル−グルカミン、ヒドラバミン、1H−イミダゾール、L−リシン、マグネシウムヒドロキシド、4−(2−ヒドロキシエチル)−モルホリン、ピペラジン、カリウムヒドロキシド、1−(2−ヒドロキシエチル)−ピロリジン、第二級アミン、ナトリウムヒドロキシド、トリエタノールアミン、トロメサミンおよび水酸化亜鉛、を含む塩基、を含む。
【0085】
化合物は、例えば、(−)−ジ−p−トルオイル−D−酒石酸および/または(+)−ジ−p−トルオイル−L−酒石酸のような光学活性酸との塩形成によるジアステレオマー対の形成、次に分別結晶および遊離塩基の再生のような標準的方法によりそれらの成分のエナンチオマーに分割することができる。化合物はまた、ジアステレオマーエステルまたはアミドの形成、次にクロマトグラフィー分離およびキラル補助剤の除去により分割することができる。あるいはまた、化合物をキラルHPLCカラムを使用して分割することができる。
【0086】
本発明は更に、製薬学的に許容されうる担体をともに1種または複数の式(I)の化合物を含む製薬学的組成物を含んでなる。有効成分として、本明細書に記載された1種または複数の本発明の化合物を含む製薬学的組成物は、従来の製薬学的配合法に従って、1種または複数の化合物を製薬学的担体と密接に混合することにより調製することができる。その担体は、投与の所望される経路(例えば、経口、非経口)に応じて広範な形態を採ることができる。従って、懸濁物、エリキシルおよび液剤のような液体経口調製物に適する担体および添加剤は、水、グリコール、油、アルコール、香り付け剤、保存剤、安定剤、着色剤、等を含み;散剤、カプセルおよび錠剤のような固形経口調製物に適する担体および添加剤は、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等を含む。固形経口調製物はまた、糖のような物質でコートするか、または吸収の主要部位を改変するように腸溶コートすることができる。非経口投与のための担体は通常は、滅菌水よりなり、そして溶解度または保存性を増加するための他の成分を添加することができる。注射用懸濁物または液剤はまた、適当な添加剤と一緒に水性担体を利用して調製することができる。
【0087】
本発明の製薬学的組成物を調製するためには、有効成分として1種または複数の本発明の化合物を従来の製薬学的配合法に従って製薬学的担体と密接に混合し、その担体は、投与に所望される調製形態、例えば、経口または、筋肉内のような非経口に応じて、広範な形態を採ることができる。
【0088】
経口剤形の組成物を調製する時は、いずれかの通常の製薬学的媒質を使用することがで
きる。従って、例えば懸濁物、エリキシルおよび液剤のような液体経口調製物に適する担体および添加剤は、水、グリコール、油、アルコール、香り付け剤、保存剤、安定剤、着色剤、等を含み;例えば散剤、カプセル、カプレット、ゲルカプおよび錠剤のような固形経口調製物に適する担体および添加剤は、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等を含む。それらの投与の容易性のために、錠剤およびカプセルがもっとも有利な経口投与単位剤形を表し、その場合は固形の製薬学的担体が明らかに使用される。所望される場合は、錠剤は標準的方法により糖コートまたは腸溶コートすることができる。
【0089】
非経口のための担体は、例えば溶解度を補助するまたは保存のためのような目的の、他の成分を含むことができるが、通常は、滅菌水を含んでなるであろう。注射用懸濁物もまた、調製することができ、その場合は、適当な液体担体、懸濁剤等を使用することができる。本明細書における製薬学的組成物は、投与単位、例えば錠剤、カプセル、散剤、注射、茶サジ、等につき、前記の有効量を送達するのに必要な有効成分量を含むであろう。
【0090】
本明細書の製薬学的組成物は、単位投与単位、例えば錠剤、カプセル、散剤、注射、座薬、茶サジ、等、当たり約0.1〜1000mgを含有するであろう、そして約0.01〜200.0mg/kg/日、好ましくは0.1〜100mg/kg/日、より好ましくは約0.5〜50mg/kg/日、更に好ましくは約1.0〜25.0mg/kg/日またはそれらのうちのあらゆる範囲の用量で投与することができる。しかし、用量は、患者の需要、処置されている状態の重篤度および使用されている化合物に応じて異なることができる。毎日の投与または周期後投与のいずれかの使用を利用することができる。
【0091】
これらの組成物は好ましくは、経口、非経口、鼻孔内、舌下または直腸内投与のため、あるいは吸入または吹き込みによる投与のための、錠剤、ピル、カプセル、散剤、顆粒、滅菌非経口液剤または懸濁物、計量エアゾールまたは液体スプレー、滴剤、アンプル、自動注入装置または座薬のような単位投与剤形にある。あるいはまた、組成物は毎週1回または毎月1回の投与に適した形態で提供することができ、例えばデカノエート塩のような有効化合物の不溶性塩は、筋肉内注射のためのデポー調製物を提供するようにさせることができる。
【0092】
錠剤のような固形組成物を調製するためには、主要な有効成分を製薬学的担体、例えばコーンスターチ、ラクトース、蔗糖、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウムまたはガムのような従来の打錠成分、および他の製薬学的希釈剤、例えば水と混合して、本発明の化合物または製薬学的に許容されうるその塩の均一な混合物を含む固形の調合前組成物を形成する。
【0093】
これらの調合前組成物が均一であると言及される時は、それは、組成物が錠剤、ピルおよびカプセルのような、等分に有効な剤形に容易に準分割することができるように、有効成分が組成物全体に均一に分散されていることを意味する。次に、この固形の調合前組成物を、0.1〜約1000mgの本発明の有効成分を含む前記のタイプの単位投与剤形に準分割する。
【0094】
新組成物の錠剤またはピルはコートするかあるいは、持続作用の利点を与える剤形を提供するように配合することができる。例えば、錠剤またはピルは内部投与成分および外部投与成分を含んでなることができ、後者は前者上の封入物の形態にある。2成分は胃内での崩壊に抵抗する役割をもつ腸溶層により分離することができ、内部成分を十二指腸内にそのまま通過させるかまたは放出を遅らせる。種々の物質をこのような腸溶層またはコーティングのために使用することができ、このような物質はセラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースのような物質を含む多数のポリマー酸を含む。
【0095】
本発明の新組成物を経口または注射による投与のために取り入れることができる液体剤形は、水溶液、適当にフレーバーを付けたシロップ、水性または油性懸濁物および、綿実油、ゴマ油、ココナツ油または落花生油のような食用油を含むフレーバー付きエマルション並びにエリキシルおよび同様な製薬学的ベヒクルを含む。水性懸濁物に適した分散または懸濁剤は、トラガカント、アカシア、アルギネート、デキストラン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニル−ピロリドンまたはゼラチンのような合成および天然ガムを含む。
【0096】
本発明中に記載された破壊的行動障害または(DBD)を処置する方法はまた、本明細書に定義されたいずれかの化合物および製薬学的に許容されうる担体を含んでなる製薬学的組成物を使用して実施することができる。製薬学的組成物は約0.1mg〜1000mg、好ましくは約50〜700mgの間の化合物を含むことができ、そして選択される投与法に適したいずれかの剤形に構成することができる。担体は、限定はされないが、結合剤、懸濁剤、滑沢剤、フレーバー付与剤、甘味剤、保存剤、染料およびコーティングを含む、必要なそして不活性な製薬学的賦形剤を含む。
【0097】
経口投与に適した組成物は、ピル、錠剤、カプレット、カプセル(それぞれ即時放出、時限放出および持続放出調合物を包含する)、顆粒および散剤のような固形剤形、並びに液剤、シロップ、エリキシル、エマルションおよび懸濁物のような液体剤形を含む。非経口投与に有用な剤形は滅菌溶液、エマルションおよび懸濁物を含む。
【0098】
本発明の化合物は有利には、1日量を1回で投与することができるかまたは、総1日量を1日に2、3または4回の分割用量で投与することができる。更に、本発明の化合物は適当な鼻腔内ベヒクルの局所使用により鼻腔内形態で、または当業者に周知の経皮的皮膚パッチにより投与することができる。経皮送達系の形態で投与するための用量投与はもちろん、投与計画中、間欠的でなく連続的であろう。
【0099】
例えば、錠剤またはカプセルの形態の経口投与のための有効薬剤成分は、エタノール、グリセロール、水等のような経口の、無毒の、製薬学的に許容されうる不活性担体と組み合わせることができる。更に、所望される時または必要な時は、適当な結合剤、滑沢剤、崩壊剤および着色剤も混合物中に取り入れることができる。適当な結合剤は、限定されないが、デンプン、ゼラチン、ブドウ糖またはベータ−ラクトースのような天然の糖、コーン甘味剤、アカシア、トラガカントまたはオレイン酸ナトリウムのような天然および合成ガム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等を含む。崩壊剤は、限定はされないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガム等を含む。
【0100】
液体は、適当にフレーバーを付けた懸濁剤または、合成および天然ガム、例えばトラガカント、アカシア、メチルセルロース等のような分散剤中に形成される。非経口投与のためには、滅菌懸濁物および液剤が望ましい。静脈内投与が望まれる時は、一般に適当な保存剤を含む等張調製物が使用される。
【0101】
本発明の化合物は、破壊的行動障害または(DBD)の処置が必要な時は常に、以上のいずれかの組成物中に、そして当該技術分野で確立された投与計画に従って投与することができる。
【0102】
製品の1日量は1日当たり成人一人につき0.01〜200mg/kgの広い範囲にわたることができる。経口投与のための組成物は好ましくは、処置される患者に対する用量の、症状による調整のためには、25.0、50.0、100、150、200、250、400、500、600、750および1000ミリグラムの有効成分を含む錠剤の剤
形で提供される。薬剤の有効量は通常、1日に約0.1mg/kg〜約200mg/kg体重の用量レベルで供給される。その範囲は好ましくは、1日に約1.0〜約20.0mg/kg体重であり、より好ましくは、1日に約2.0mg/kg〜約15mg/kgであり、より好ましくは、1日に約4.0〜約12.0mg/kg体重である。化合物は1日に1〜4回の計画で投与することができる。
【0103】
投与される最適用量は当業者により容易に決定することができ、使用される特定の化合物、投与法、調製物の強度、投与法および疾患状態の進行とともに異なるであろう。更に、患者の年齢、体重、食餌および投与時間を含む、処置されている特定の患者に関わる因子が、用量を調節する必要をもたらすであろう。
【0104】
当業者は、適切な、知られたそして一般に許容される細胞および/または動物モデルを使用するインビボおよびインビトロ双方の試験が、与えられる障害を処置または予防するための試験化合物の効力を予測することができることを認めるであろう。
【0105】
当業者は更に、健常人および/または与えられる障害を罹患している患者における、ヒトで最初の使用、用量の範囲および効力試験を含む、鬱病の適用のためのヒトの臨床試験を、臨床および医学分野で周知の方法に従って完成することができることを認めるであろう。
【実施例】
【0106】
以下の実施例は本発明の理解を助けるために示され、以後に続く請求項に示される本発明をどんな方法でも限定することは意図されず、またそう解釈してはならない。以下の実施例はすべて、本発明の化合物の1つを使用した。本化合物は前記に化合物#7として示され、そして以下の実施例で化合物#7として呼ばれるであろう。本化合物はまた、幾つかの図においてJnJ 10234094と呼ばれ、本化合物に使用されるその他の識別記号はRWJ 333369およびカリスバメート(carisbamate)である。化合物#7の構造は以下;
【0107】
【化8】

【0108】
に示される。
【実施例1】
【0109】
インビボ測定における支配−服従ラット
支配−服従反応における化合物#7の効果、躁病および鬱病の動物モデル(DD02313)
本研究において、餌競争ラットのペアにおける支配または服従行動に対する化合物#7の効果を研究する。抗痙攣剤を含む抗躁病剤が支配を減少させ、そして抗鬱薬が服従を減少させることが示されている。このモデルは躁病のモデルとして支配行動を、そして鬱病
のモデルとして服従的行動を使用する。支配および服従は競争試験に規定され、餌容器への接近を勝ち取るための2匹の食餌制限ラットの相対的成功として測定された。ラットはランダムにペアに組まれ、それらに餌の褒賞を競争させる装置中に入れた。支配−服従関係は2週間後に発生する。2週間の訓練後に選択されたペアの服従または支配動物を5週間、3または30mg/kgの化合物#7で毎週2回(b.i.d.)経口処置された。薬剤処置動物の相手はベヒクルで処置された。
【0110】
30mg/kgの化合物#7投与は支配および服従ラット双方の競争性を増加した。しかし、服従ラットに対する化合物#7の効果はより著明で、より早い開始を見た。この効果は処置の第1週後の服従ラットにおいて有意であり、他方、支配ラットに対しては、処置の第2週後に有意であった。3mg/kgの化合物#7は支配ラットおよび服従ラットに異なる効果をもたらした。それは支配ラットの競争性を減少させ、服従ラットには影響をもたなかった。研究の結論は、化合物#7は大量では抗鬱剤として働き、そして少量では、この薬剤は急性の躁病に気分安定性を示すことができる、ということであった。
【0111】
本研究の目的は、化合物#7が鬱病の服従行動モデル(RSBM)の減少および、躁病の支配行動モデル(RDBM)の減少に有効であるかどうかを決定することであった。1日2回(b.i.d.)の経口投与後に、2種の用量(3および30mg/kg)で測定を実施した。RSBMにおける薬剤の効果をフルオキセチン(10mg/kg)およびビヒクル(0.5%メチルセルロース)の効果に比較した。RDBMにおける薬剤の効果をリチウム(100mg/kg)およびビヒクル(0.5%メチルセルロース)の効果と比較した。測定された最終点は服従または支配行動の有意な減少の発達およびその開始時期であった。
【0112】
支配行動は躁病のモデルとして、そして服従行動は鬱病のモデルとして役立つことができることが示されている(Malatynska E,et al.Reduction
of submissive behavior in rats:a test for antidepressant drug activity(ラットにおける服従行動の減少:抗鬱剤の活性の試験).Pharmacology 2002;64:8.およびMalatynska E,et al.Dominant behavior
measured in a competition test as a model of mania(躁病のモデルとしての競争試験において測定された支配行動).In:International Behavioral Neuroscience Society Meeting(国際行動神経科学会議),ed.IBNSCapri,Italy,2002,p26).
【0113】
イミプラミン、デシプラミンまたはフルオキセチンによる3週間の服従被検体の処置は、有意にそして用量依存性に(フルオキセチン)服従行動を減少させた。効果はデシプラミンによる処置の終結後に強化された。抗不安薬のジアゼパムによる服従ラットの処置(Malatynska E,Goldenberg R,Shuck L,Haque A,Zamecki P,Crites G,Schindler N,Knapp RJ.Reduction of submissive behavior in rats:a test for antidepressant drug activity(ラットにおける服従行動の減少:抗鬱剤の活性の試験).Pharmacology 2002;64:8を参照されたい)または精神刺激剤アンフェタミン(未公表の観察)は無効であった。
【0114】
Gardnerは、支配行動が躁病に関連することを示唆している(躁病および鬱病に対する支配−服従行動の関係についての総論はGardner,1982を参照されたい)。(Gardner R Jr.Mechanisms in manic−depressive disorder:an evolutionary model(躁病−鬱病障害の機序:進化的モデル).Arch Gen Psychiatry 1982;39:1436).
【0115】
我々は、塩化リチウム、ナトリウムバルプロエート、カルバマゼピンおよびクロニジンのような、クリニックにおいて躁病を軽減するために一般に使用される薬剤が、支配ラットに投与されると、競争的行動を有意に軽減したことを示した(Malatynska E,Rapp R,Crites G.Dominant behavior measured in a competition test as a model of
mania(躁病のモデルとして競争試験で測定された支配行動).In:International Behavioral Neuroscience Society
Meeting(国際行動神経科学会議),ed.IBNSCapri,Italy,2002,p26を参照されたい)。
【0116】
試験されたすべての薬剤のこれらの効果の開始は、患者のそれらの治療効果の開始と同様であった。従って、服従行動は抗鬱剤に感受性で、それらにより選択的に減少された。支配行動はヒトにおける躁病を処置するために使用される一連の薬剤に感受性であった。
【0117】
支配−服従関係(DSR)の形成
餌を競争する2匹のラットにより形成されたDSRは図1の装置を使用する。方法および装置は幾つかの刊行物に記載されている(Malatynska E,Goldenberg R,Shuck L,Haque A,Zamecki P,Crites G,Schindler N,Knapp RJ.Reduction of submissive behavior in rats:a test for antidepressant drug activity(ラットの服従行動の減少:抗鬱剤の活性の試験).Pharmacology 2002;64:8;Malatynska E,Rapp R,Crites G.Dominant behavior measured in a competition test as a model of mania(躁病のモデルとしての競争試験で測定された支配行動).In:International Behavioral Neuroscience Society Meeting,ed.IBNSCapri,Italy,2002,p26.;Bonnet U.Moclobemide:therapeutic use and clinical studies(メクロベミド:治療的使用および臨床研究).CNS Drug Rev 2003;9:97;Danysz W,Plaznik A,Kostowski W,Malatynska E,Jarbe TU,Hiltunen AJ,Archer T.Comparison of desipramine,amitriptyline,zimeldine and alaproclate in six animal models used to investigate antidepressant drugs(抗鬱剤を研究するために使用される6匹の動物モデルにおけるデシプラミン、アミトリプチリン、ジメルジンおよびアラプロクレートの比較).Pharmacol Toxicol 1988;62:42;Knapp RJ,Goldenberg R,Shuck C,Cecil A,Watkins J,Miller C,Crites G,Malatynska E.Antidepressant activity of memory−enhancing drugs in the reduction of submissive behavior model(服従行動モデルの減少における記憶促進薬の抗鬱作用).Eur J Pharmacol 2002;440:27;Kostowski W,Malatynska E,Plaznik A,Dyr W,Danysz W.Comparative studies on antidepressant action of alprazolam in different animal models(異なる動物モデルにおけるアルプラゾラムの抗鬱作用についての比較試験).Pol J Pharmacol Pharm 1986;38,471;Malatynska E,De Leon I,Allen D,Yamamura HI.Effects of amitriptyline on GABA−stimulated 36CI uptake in relation to a behavioral model of depression(鬱病の行動モデルに関するGABA−刺激 36CI 取り込みに対するアミトリプチリンの効果).Brain Res Bull 1995;37:53;Malatynska E,Kostowski W.The effect of antidepressant drugs on dominance behavior in rats competing for food(食餌競争ラットにおける支配行動に対する抗鬱剤の効果).Pol J Pharmacol Pharm 1984;36:531;Malatynska E,Kostowski W.Desipramine antagonizes clonidine−induced suppression of dominance in rats:possible involvement of amygdaloid nuclei(デシプラミンが、ラットの支配のクロニジン誘発抑制に拮抗する:扁桃体核の可能な関与).Pol J Pharmacol Pharm 1988;40:357を参照されたい)。
【0118】
この報告に記載の実験において、160〜180g体重のSprague−Dawleyラットを使用した。ペアラット間のDSRの発達の試験を、ラットのペアへのランダムな指定により開始する。ペアからのラットを、試験期間の中間は、他の動物と一緒に4群にして別の入れ物に収容する。動物に水を自由に与えて、1晩絶食させる。
【0119】
試験は、試験装置の相対する室内にペアの各員を入れる方法を伴う。これらの室は、中央に甘くしたミルクの小容器を伴う狭いトンネルを通して連絡されている。一度に1匹のみが餌容器に快適に近寄ることができる。試験は1日1回5分間にわたり実施され、各動物が餌容器上で過した時間を記録する。5分間の試験期間の最後に、動物を分けて、自分のケージに返し、決められた時間(1時間)だけ、自由に餌を与えられた(通常の小実験室動物用飼料)。試験は週末は中断され、この期間中は、動物は自由に飼料に近づくことができる。
【0120】
試験の第1週間(5日)中は、動物を新環境に習熟させる。試験のこの第1週中(5日)に、水飲み評点はかなり変化し、これらのデータは試験ラットのペア内で何か明白な逆転を検出するためのみに使用される。3項の基準が達成される場合に、試験の第2週中に最高評点をもつ動物に支配が指定される。第1に、双方の動物の平均1日水飲み評点間に有意差(両側t−検定、P<0.05)がなければならない。第2に、支配動物の評点が服従動物の評点より少なくとも40%大きくなければならない。第3に、2週間の観察過程中に逆転があってはならない。当初の動物ペアの約25%がこれらの基準を達成する。これらの選択されたペアのみが、次の3〜6週間の研究に継続使用される。
【0121】
表1は、有効な統計的分析に対して十分な結果をもつための、1投与または1動物系統(strain)のいずれかに1種の薬剤を研究するための1実験単位を完了するのに要する必要時間および動物数を示す。表中に示される動物数は手動評点に典型的である。
【0122】
【表1】

【0123】
薬剤処置
化合物#7を鬱病ラットの服従行動減少モデル(RSBM)において評価した(Malatynska,E.,Rapp,R.,Harrawood,D.,and Tunnicliff,G.,Neuroscience and Biobehavioral
Review(神経科学および生体行動の総論),82(2005)306−313;Malatynska,E.,and Knapp,R.J.,Neuroscience and Biobehavioral Review,29(2005)715−737)。
【0124】
本報告に記載される実験において、5匹の服従ラットを3mg/kgの化合物#7でb.i.d.,p.o.処置し、他の5匹の服従ラットを30mg/kgの化合物#7で5週間処置した。これらすべてのペアからの支配ラットをビヒクル(0.5%メチルセルロース)で処置した(b.i.d.,p.o.)。データを我々の以前の実験セット(服従ラットをフルオキセチン(10mg/kg)で1日1回腹腔内処置し、これらのペアからの支配ラットをビヒクル(水)で処置した、n=6)の結果と比較した。
【0125】
別の実験セットにおいて2セットのペア動物からの5匹の支配ラットを、3または30mg/kgの化合物#7で、5週間、処置した(b.i.d.,p.o.)。これらのペアからの服従ラットをビヒクル(0.5%メチルセルロース)で処置した(b.i.d.,p.o.)。データを我々の以前の実験セット(支配ラットを塩化リチウム(100mg/kg)でi.p.処置し、これらのペアからの服従ラットをビヒクル(水)で処置した、n=4)からの結果と比較した。
【0126】
DSRの安定性を示すために化合物#7による両方の実験セットに対照群が存在した(ペアからの支配および服従双方のラットを0.5%メチルセルロースで処置した、n=8)。
【0127】

データ処理および統計分析
これらの実験で測定された終点は、毎日の5分間のセッション中の、ペアからの個々のラットが餌容器上で過した時間であった。次に、その週の平均を計算した(図2および)。ビヒクル処置されたペアラットの行動は、多少は薬剤処置ラットの行動に左右されるため、処置の効果はペアの支配レベルとしてより良く捕らえられる。支配レベルは5日間の週中の平均1日水飲み評点の差と規定され、ペアの両動物の行動を反映する。支配および服従ラットの異なるペアに対する行動レベルは研究の第2週にばらつく可能性があるので、すべてのラットのデータをこの第1週レベルに標準化した(図3および)。従って、支配レベルの%を式
%DL=(T−T)week n×100/(T−T)week 2
[ここで、DL=支配レベル、T=支配ラットが過ごした時間、T=服従ラットが過ごした時間、week n=試験週数n,week 2(図2および)または0(図3または)=最初の(選択)週]、
に従って計算した。
【0128】
ペアラットが餌容器上で過ごした時間の有意差を両側t−検定(Microsoft Excel)を使用して計算した。異なる薬剤で処置されたラットが餌容器上で過した時間の有意差を偏差分析(ANOVA)、次に、GraphPad Prismソフトウエア(GraphPad Prism Software,Inc.,San Diego,CA)を使用するBonferroni複数比較試験により決定した。
【0129】
図2およびは、食餌競争試験におけるペアの支配および服従ラットの行動を表すデータを示す。図2Aおよび2Bに表される実験においては、服従ラットが、そして図4Aおよび4Bにおいては支配ラットが、3または30mg/kgの化合物#7で処置された。それぞれの相手のラットは常にビヒクルで処置された。図2およびのパネルCおよびD上には、正および負の対照データが示される。服従ラット処置の正の対照は、セロトニン再取り込みインヒビターのフルオキセチン(10mg/kg,図2C)による、そして支配ラットに対しては、抗躁病薬、リチウム(100mg/kg,図4C)による処置により提供された。ビヒクルで同時に処置されたペアの支配および服従ラットは双方の実験セット(図2Dおよび4D)に対する負の対照を与えた。これらの実験における従属変数は秒(y軸)における餌容器上で過ごした時間であり、独立変数は週(x軸)における実験期間であった。馴化週のデータは除外される。プロットされたデータは開始週または選択週と呼ばれる第2週に開始する。この週に、すべての支配および服従ラットの行動は有意に異なる。処置が効果を有する場合はこの有意差が失われ、あるいは処置が効果をもたない場合は安定のままである。
【0130】
図2およびから、抗鬱剤で処置された服従ラットの競争性増加、または抗躁病薬で処置された支配ラットの競争性減少として認められるように、薬剤は、大部分、処置動物に影響を与えることに注目しなければならない。方法の項(3.3)に記載のような変換データが図3およびに提示されている。開始週の支配レベルは処置週の前の、週0に対して100%と記録される。処置週、1〜5週(x軸)後の支配レベルの値は、前記に考察された式(方法の項、3.3)に従って変換されたデータとして提示される。データはペアからの服従ラットの処置に対しては図3に提示され、そしてペアからの支配ラットの処置については図5に提示される。この比較は、未処理データに認められる効果を確証し、処置効果の比較を容易にする。
【0131】

服従ラットに対する化合物#7の効果
3mg/kgの化合物#7はビヒクル処置服従ラットと同様に服従ラットの行動に何の効果をも与えなかった(図2Aおよび2D)。しかし、より大量(30mg/kg)においては、化合物#7は、対応する週のレベルに対するビヒクル処置服従ラット(図2Dおよび)に比較して、服従ラットの競争性を有意に増加した(図2Bおよび)。これはフルオキセチン処置服従ラットと同様であった。化合物#7(図2Cおよび)。
【0132】
従って、化合物#7はフルオキセチンと同様な効果をもつが、この効果の開始はより早かった。化合物#7(30mg/kg)は処置1週後に服従ラットの競争性を増加し、他方フルオキセチンの効果は処置の3週後にのみ有意であった。
【0133】

支配ラットに対する化合物#7の効果
3mg/kgの化合物#7は支配ラットの行動を減少させた(図4Aおよび)。この効果は処置3週後に有意であった。効果の程度および開始はリチウムの効果より有意には異ならなかった(図4Cおよび)。大量投与(30mg/kg)においては、化合物#7は、水処置支配ラットに比較して(図4Dおよび)、支配ラットの競争性を有意に増加した(図4B)。この効果は3mg/kg用量レベルのリチウムの効果および化合物#7の効果と反対であった。この効果の開始は処置の2週後に起った。
【0134】
本研究の主要な所見は、化合物#7が支配および服従ラット双方の競争的行動に影響を与えることである。服従ラットの支配行動を減少させ、競争性を増加させる化合物#7の効果は異なる用量で起った。支配行動は3−mg/kg用量で減少したが、服従行動の減少は30mg/kg用量でもっとも著明であった。30mg/kg用量は支配ラットおよび服従ラット双方の競争性を増加した。しかし、服従ラットに対する化合物#7の効果はより強度で、より早い開始を見た。この効果は処置第1週後に服従ラットで有意であったが、支配ラットに対しては、処置の第4週後にのみ有意であった。競争ラットの支配行動は躁病をモデルにするために示され、そして服従行動は鬱病をモデルにするために示されたので(Malatynska E,Goldenberg R,Shuck L,Haque A,Zamecki P,Crites G,Schindler N,Knapp RJ.Reduction of submissive behavior in rats:a test for antidepressant drug activity(ラットにおける服従行動の減少:抗鬱薬の作用の試験).Pharmacology 2002;64:8;Malatynska E,Rapp R,Crites G.Dominant behavior measured in a competition test as a model of mania(躁病のモデルとしての競争試験で測定された支配行動).In:International Behavioral Neuroscience Society Meeting,ed.IBNSCapri,Italy,2002,p26を参照されたい)、化合物#7が双極性障害、鬱病および躁病の双方のフェーズに気分安定作用をもつことができる可能性がある。
【0135】
動物間の支配−服従行動はヒトの気分障害のモデルにすることができる。服従行動は、服従行動が抗鬱薬により減少されるRSBMと呼ばれる行動模範にラットまたはマウスを使用してモデルにすることができるヒトの鬱病の特徴を有する。RDBMと呼ばれる同様なアプローチは躁病を処置するために使用される薬剤に感受性である。RDBMまたはRSBMのどちらのモデルも、双極性障害の完全なモデルではないが、それらは双極性症状の個々の極をモデルにするために一緒に使用することができる。今回、RSBMはRDBMより、良好に確立されている。RDBMモデルの正当性を確証する研究を拡大しなければならない。本研究は、異なる行動傾向をもつラットが同様な抗鬱剤に異なる反応を示すことを明確に示している。処置に対する広範な反応が診療所でも起るために、これは重要な所見である。躁病または鬱病患者の約40〜70%のみが、投与される抗躁病剤または抗鬱剤に反応し、この制約の理由は未知である。このモデルによる更なる研究が、処置に対する抵抗の機序に光を当てることができると考えられる。
【0136】
我々は、化合物#7の投与が付随的に、服従ラットの競争性を増加し、従って抗鬱剤として働く可能性があると結論する。少量の化合物#7は支配ラットの行動を減少させる。従って、この薬剤は、少量で、急性躁病において気分安定性を示す可能性がある。
【0137】
参考文献
1.Malatynska E,Goldenberg R,Shuck L,Haque A,Zamecki P,Crites G,Schindler N,Knapp
RJ.Reduction of submissive behavior in
rats:a test for antidepressant drug activity(ラットの服従行動の減少:抗鬱剤の活性試験).Pharmacology 2002;64:8.
2.Malatynska E,Rapp R,Crites G.Dominant behavior measured in a competition test as a model of mania(躁病のモデルとしての競争試験で測定された支配行動).In:International Behavioral Neuroscience Society Meeting,ed.IBNSCapri,Italy,2002,p26.
3.Gardner R Jr.Mechanisms in manic−depressive disorder:an evolutionary model(躁病−鬱病障害の機序:進化モデル).Arch Gen Psychiatry 1982;39:1436.
4.Ernst CL,Goldberg JF.Antidepressant properties of anticonvulsant drugs for bipolar disorder(双極性障害のための抗痙攣剤の抗鬱特性).J Clin
Psychopharmacol 2003;23:182
5.Carpenter LL,Leon Z,Yasmin S,Price LH.Do obese depressed patients respond to topiramate? A retrospective chart review(肥満の鬱病患者はトピラメートに反応するか?遡及的表の見直し).J Affect Disord 2002;69:251.
6.McElroy SL,Zarate CA,Cookson J,Suppes T,Huffman RF,Greene P,Ascher J.A 52−week,open−label continuation study of lamotrigine in the treatment of bipolar depression(双極性鬱病の処置におけるラモトリギンの52週の、非盲検継続研究).J Clin Psychiatry 2004;65:204.
7.Bonnet U.Moclobemide:therapeutic use and clinical studies(モクロベミド:治療的使用および臨床研究).CNS Drug Rev 2003;9:97.
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10.Kostowski W,Malatynska E,Plaznik A,Dyr W,Danysz W.Comparative studies on antidepressant action of alprazolam in different animal models(異なる動物モデルにおけるアルプラゾラムの抗鬱作用の比較研究).Pol J Pharmacol Pharm 1986;38,
471.
11.Malatynska E,De Leon I,Allen D,Yamamura HI.Effects of amitriptyline on GABA−stimulated 36CI uptake in relation to a behavioral model of depression(鬱病の行動モデルに関連したGABA−刺激36CI取り込みに対するアミトリプチリンの効果).Brain Res Bull 1995;37:53.
12.Malatynska E,Kostowski W.The effect of antidepressant drugs on dominance behavior in rats competing for food(食餌競争ラットにおける支配行動に対する抗鬱剤の効果).Pol J Pharmacol Pharm
1984;36:531.
13.Malatynska E,Kostowski W.Desipramine antagonizes clonidine−induced suppression of dominance in rats:possible involvement of amygdaloid nuclei(デシプラミンがラットにおける支配のクロニジン誘発抑制に拮抗する:扁桃体核の可能な関与).Pol J Pharmacol Pharm 1988;40:357
【実施例2】
【0138】
隔離誘発攻撃モデルにおける化合物#7の効果
本報告に使用された試験化合物は実施例1に使用され、本特許出願書の明細に式#7として示された、化合物#7とその中で呼ばれたものと同一である。以下に詳細に考察されるように、実験からのデータは、40−mg/kg p.o.の用量で投与された試験化合物が、投与1時間後に試験されたマウスのペアにおいて隔離誘発攻撃行動を抑制したことを示した。試験化合物の攻撃抑制効果は鎮静には関連しなかった。
【0139】
この動物モデルにおける隔離誘発攻撃性を抑制する、試験化合物により示された薬理学的効果は、本化合物がヒトにおける攻撃性に有益な効果をもつと考えられ、そして衝動抑制を改善することができ、従って、ヒトの破壊的行動障害(DBD)の処置として有用であるかも知れないことを示唆している。
【0140】
Crl:CD−1(ICR)BRアルビノマウスの攻撃性行動に対する試験化合物の効果を隔離誘発攻撃性の模型を使用して評価した。
【0141】
40−mg/kg p.o.の試験化合物は、投与1時間後に試験されたマウスのペアにおいて、隔離誘発攻撃性行動を統計的に有意に抑制した(p<0.05)。20−mg/kg p.o.の試験化合物もまた、投与の4時間後に、対応するビヒクル処置群に比較して、処置群における争い開始(onset of initiation of fighting)を有意に短縮した。一般行動に対する試験化合物の効果は、行動のチェックリストを使用して視覚的観察により評価した。100mg/kg p.o.までの用量の試験化合物を投与されたマウスには行動的または身体的徴候は認められなかったが、300mg/kg p.o.で投与された試験化合物は、鎮静をもたらした。結果は、40mg/kg p.o.の試験化合物の攻撃性抑制作用は鎮静に関係しないことを示唆している。
【0142】
1晩、絶食された雄のCrl:CD−1(ICR)BRアルビノマウスをウッドチップのベッド上、プラスチックのケージ中に5週間個別に収容した。次に他の個別に収容したマウス(住人)の住人用ケージ中に個々に収容されたマウス(侵入者)を入れることにより、数日間、1日1分間だけ彼らをペアにした。侵入者と住人マウスの1分間のペア形成
は攻撃性行動を誘発する。数日間、1分間のペア形成時に定常的に攻撃性の行動を示すマウスのペアを薬剤試験の被検体として選択した。
【0143】
試験化合物(10〜40mg/kg p.o.)またはビヒクル(メトセル;0.5%w/v,ヒドロキシプロピル・メチルセルロース水溶液)を住人および侵入者マウスに投与した(10mL/kg)。投与の1時間後および4時間後に、マウスをペアにして、争いの開始を記録した。1分間以内に争わなかったマウスのペアを分離した。1分間の試験期間中の争いの期間を記録した。試験化合物の代謝および排泄を許すために、数日〜1週間後にマウスをこの方法に再使用した。試験時、マウスは32〜49g体重であり、投薬の前1晩絶食された。マウスは病気になるかまたは傷害された場合は、COで安楽死させた。
【0144】
結果は、ビヒクルおよび薬剤処置群における争いの平均開始および争いの平均期間として表された。投与の1時間および4時間後の、試験化合物またはそのビヒクル投与されたマウスのペアにおける争いの平均開始の増加または争いの平均期間の減少の統計的有意差を、非パラメトリックWilcoxon試験を使用して決定した(p<0.05,1−両側)。
【0145】
40−mg/kg p.o.の試験化合物は、対応するビヒクル処置群における値と比較して、争いの平均期間の統計的に有意な減少(p<0.05;Wilcoxonランク合計,1−両側)に示されるように、投与1時間後に試験されたマウスのペアにおける隔離誘発攻撃性行動を抑制した(表1Aを参照されたい)。投与の4時間後に試験を反復すると、20mg/kg p.o.の試験化合物を投与された群における争いの開始のための時間(onset)は、対応するビヒクル処置群における時間よりも統計的に有意に短かった(表1B参照)。
【0146】
対応するビヒクル処置群に比較された、争いの平均期間は、試験化合物を投与され、投与の4時間後に試験されたあらゆる群において影響を受けなかったので、争いの開始におけるこの減少の生物学的有意性は不明である(下記の表1Aおよび1Bを参照されたい)。
【0147】
結論として、300−mg/kg p.o.の試験化合物は使用された試験条件下でマウスにCNS−関連効果をもたらしたが(表2参照)、40または100−mg/kg p.o.の試験化合物の投与の4時間後までの他のマウスではCNS−関連効果は認められなかったので、40−mg/kg p.o.の試験化合物の攻撃性抑制作用は、鎮静には関係なかった。
【0148】
【表2】

【0149】
【表3】

【0150】
【表4】

【0151】
具体化の目的のために提供された実施例を伴う、以上の明細は本発明の原理を教示するが、本発明の実施は、以下の請求項およびそれらの同等物の範囲内に入るようなすべての通常の変更物、翻案物および/または修飾物を含むことが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療的に有効量の、式1または式2:
【化1】

式中、
、R、RおよびRは独立して水素またはC−Cアルキルであり、ここで
1−アルキルはフェニルで置換されていてもまたは置換されていなくてもよく、そしてここで
フェニルはハロゲン、C1−アルキル、C1−アルコキシ、ニトロ、シアノおよびアミノから独立して選択される5個までの置換基で置換されていてもまたは置換されていなくてもよく、ここで
アミノは場合により、C1−アルキルでモノまたはジ置換されていてもよく、そしてX、X、X、XおよびXは独立して水素、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素である、
の化合物またはその製薬学的に許容されうる塩またはエステル形態を、投与を要する被検体に投与する方法を含んでなる、破壊的行動障害または(DBD)を処置する方法。
【請求項2】
Xがフェニル環のオルソ位で置換された塩素であり、そしてR、R、R、R、RおよびRが水素から選択される、請求項1の方法。
【請求項3】
治療的有効量の、式(I)および式(II):
【化2】

式中、
フェニルはフッ素、塩素、臭素およびヨウ素よりなる群から選択される1〜5個のハロゲン原子でXにおいて置換されており、そして
、R、R、R、RおよびRは独立して、水素およびC−Cアルキルよりなる群から選択され、ここで
−Cアルキルは場合によりフェニル(ここで、フェニルは場合により、ハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、アミノ、ニトロおよびシアノよりなる群から独立して選択される置換基で置換されていてもよい)で置換されていてもよい、
よりなる群から選択されるエナンチオマー、またはその製薬学的に許容されうる塩またはエステル、あるいは、そこで式(I)および式(II)よりなる群から選択される一方のエナンチオマーが優位を占めるエナンチオマー混合物を、投与を要する患者に投与する方法を含んでなる、破壊的行動障害を処置する方法。
【請求項4】
Xがフェニル環のオルソ位で置換された塩素であり、そしてR、R、R、R、RおよびRが水素から選択される、請求項3の方法。
【請求項5】
式(I)および式(II)よりなる群から選択される一方のエナンチオマーが約90%以上の程度まで優位を占める、請求項3の方法。
【請求項6】
式(I)および式(II)よりなる群から選択される一方のエナンチオマーが約98%以上の程度まで優位を占める、請求項3の方法。
【請求項7】
式(I)および式(II)よりなる群から選択されるエナンチオマーが、式(Ia)および式(IIa):
【化3】

式中、
フェニルはフッ素、塩素、臭素およびヨウ素よりなる群から選択される1〜5個のハロ
ゲン原子でXにおいて置換されており、そして
、R、R、R、RおよびRは独立して水素およびC−Cアルキルよりなる群から選択され、ここで、C−Cアルキルは場合によりフェニルで置換されていてもよく、ここでフェニルは場合により、ハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、アミノ、ニトロおよびシアノよりなる群から独立して選択される置換基で置換されていてもよい、
よりなる群から選択されるエナンチオマーである、請求項3の方法。
【請求項8】
Xがフェニル環のオルソ位で置換された塩素であり、そしてR、R、R、R、RおよびRが水素から選択される、請求項7の方法。
【請求項9】
式(Ia)および式(IIa)よりなる群から選択される一方のエナンチオマーが約90%以上の程度まで優位を占める、請求項7の方法。
【請求項10】
式(Ia)および式(IIa)よりなる群から選択される一方のエナンチオマーが約98%以上の程度まで優位を占める、請求項7の方法。
【請求項11】
式(I)および式(II)よりなる群から選択されるエナンチオマーが、式(Ib)および式(IIb):
【化4】

またはそれらの製薬学的に許容されうる塩またはエステル形態よりなる群から選択されるエナンチオマーである、請求項3の方法。
【請求項12】
式(Ib)および式(IIb)よりなる群から選択される一方のエナンチオマーが約90%以上の程度まで優位を占める、請求項11の方法。
【請求項13】
式(Ib)および式(IIb)よりなる群から選択される一方のエナンチオマーが約98%以上の程度まで優位を占める、請求項11の方法。
【請求項14】
エナンチオマーが式(lb)であり、そして98%以上の程度まで優位を占める、請求項11の方法。
【請求項15】
エナンチオマーが式(llb)であり、そして98%以上の程度まで優位を占める、請求項11の方法。
【請求項16】
破壊的行動障害が行為障害である、請求項1の方法。
【請求項17】
破壊的行動障害が反抗性挑戦性障害である、請求項1の方法。
【請求項18】
破壊的行動障害が他に特定されない破壊的行動障害である、請求項1の方法。
【請求項19】
治療的有効量の、約98%以上の程度まで優位を占める式(Ib):
【化5】

のエナンチオマーを、投与を要する被検体に投与する方法を含んでなる、破壊的行動障害を処置する方法。
【請求項20】
破壊的行動障害が行為障害である、請求項19の方法。
【請求項21】
破壊的行動障害が反抗性挑戦性障害である、請求項19の方法。
【請求項22】
治療的有効量の、少なくとも1種の更なる向精神薬および、式(Ib)および式(IIb)またはそれらの製薬学的に許容されうる塩またはエステル形態:
【化6】

よりなる群から選択されるエナンチオマーを、併用治療を要する被検体に投与する方法を含んでなる、破壊的行動障害の処置法。
【請求項23】
化合物が、約98%以上の程度まで優位を占めるエナンチオマーの式Ib
【化7】

である、請求項22の方法。
【請求項24】
更なる向精神薬が、メチルフェニデート、アンフェタミンおよびモダフィニルを含む刺激剤、モリンドン、ハロペリドールおよびクロルプロマジンのような主要トランキライザ
ー、ベンゾジアゼピンを含む弱いトランキライザー、限定はしないがイミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン、ノルトリプチリン、ドキセピン、プロトリプチリン、トリミプラミン、クロミプラミン、アモキサピン、等のような三環系化合物を含む抗鬱剤、マプロチリン等のような四環系化合物;ノミフェンシン等のような非環系化合物;トラゾドン等のようなトリアゾロピリジン;フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、シタロプラム、フルボキサミン、等のようなセロトニン再取り込みインヒビター;ネファゾドン、等のようなセロトニン受容体アンタゴニスト;ベンラファキシン、ミルナシプラン等のような組み合わせたセロトニン−ノルアドレナリン作動性再取り込みインヒビター;ミルタザピン等のようなノルアドレナリンおよび特異的セロトニン作動性剤;レボキセチン等のようなノルアドレナリン再取り込みインヒビター;ブプロピオン、等のような非定型抗鬱剤;カバカバ、セントジョンズ草、等のような天然産物;s−アデノシルメチオニン、等のような栄養補助食品、フェネルジン、トラニルシプロミン、モクロベミドのようなモノアミンオキシダーゼインヒビター、よりなる群から選択される、請求項22の方法。
【請求項25】
更なる向精神薬がメチルフェニデート、アンフェタミンおよびモダフィニル、モリンドン、ハロペリドールおよびクロルプロマジン、フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、シタロプラム、フルボキサミン、ネファゾドン、ベンラファキシン、ミルナシプラン、ミルタザピン、ブプロピオンよりなる群から選択される、請求項22の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−508279(P2010−508279A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534756(P2009−534756)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/081048
【国際公開番号】WO2008/070277
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】