破断限界取得システム及び方法、破断予測システム及び方法、並びにこれら方法のプログラム及び記録媒体
【課題】ユーザ端末に入力された当該薄板に関する所期のデータに基づいて、破断限界線を容易且つ効率的に求め、高い予測精度をもって破断限界を判定し、当該判定結果をユーザ端末に提供する、極めて利便性の高い破断限界取得システムを実現する。
【解決手段】破断限界取得装置は、比例負荷経路で得られた歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する変換部1と、変換部1により得られた応力空間の破断限界線を応力FLDとして表示する表示部2とを備えて構成される。
【解決手段】破断限界取得装置は、比例負荷経路で得られた歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する変換部1と、変換部1により得られた応力空間の破断限界線を応力FLDとして表示する表示部2とを備えて構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料からなる薄板の破断限界取得システム及び方法、破断予測システム及び方法、並びにこれら方法のプログラム及び記録媒体に関し、特にプレス成形を受けた自動車部材の衝突過程での材料破断の破断判定基準として好適である。
【背景技術】
【0002】
破断に対する余裕度は、一般に、板厚減少率や成形限界線図(FLD)を用いて判断される。FLDは、破断限界を与える最大主歪みを最小主歪み毎に示した図であり、衝突解析で用いることもできる。実験によるFLDの測定方法は、一般に、あらかじめ金属板の表面にエッチングなどによりサークル状あるいは格子状の模様を描いておき、液圧成形や剛体工具での張出し成形で破断させた後に、サークルの変形量から破断限界歪みを測定する。破断限界線は、様々な面内歪み比について金属板を比例負荷し、それぞれの歪み比での破断限界歪みを主歪み軸上にプロットして線で結ぶことで得られる。
【0003】
図1に実験により測定した破断限界線を示す。
FLD予測手法としては、Hillの局部くびれモデルとSwiftの拡散くびれモデルの併用、Marciniak-Kuczynski法、
などがあり、Keelerの経験則で板厚の影響を補正することで得られる。従来の破断評価方法は、これら破断限界線と塑性変形過程の有限要素法によるシミュレーションの結果から得られる各部位の歪み状態との位置関係を比較することで評価し、変形過程の歪みがこの限界歪みに達したときに破断、もしくは、その危険性が高いと判断する。
【0004】
【非特許文献1】1993、 Hosford、 Metal Forming、 319
【非特許文献2】2004、 塑性と加工 45、 123
【非特許文献3】2004、 CAMP-ISIJ 17、 1063
【非特許文献4】1988、 機論A、57、 1617
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図2の破断限界線に示されるように、破断限界線は歪み経路に依存して大きく変化することが知られている。例えば、(1)変形経路の変化がなく線形の経路変化で負荷したときの破断限界線に比べ、(2)単軸引張り予歪み後に等2軸引張り変形を施す経路変化の場合、破断限界線は大きく増加し、(3)等2軸引張り予歪み後に単軸引張りを施す経路変化や、(4)等2軸引張り予歪み後に平面歪み引張り変形を施す経路変化の場合、破断限界線は減少することが多くの実験や数値解析から明らかになっている。
【0006】
プレス成形あるいはプレス成形での予変形を受けた自動車車体部品の衝突変形過程では変形経路が大きく変化することが多く、実験から得られる破断限界線を用いて破断を評価する場合、変形経路に応じて無数の限界線を準備せざるを得ない。従って、実用上、破断の評価は比例負荷経路に対する破断限界線を用いることとなり、高い予測精度は期待できない。
【0007】
更には、金属材料からなる薄板について、高い予測精度をもって判定された破断限界結果、及び高い予測精度をもって予測された破断発生の有無の結果を、ユーザが端末に当該薄板に関する所期のデータを入力するだけで適宜取得することを可能とする自動提供システムの実現は、ユーザが最も望むところである。しかしながら、上記のようにそもそも高い予測精度で破断限界を判定する技術や高い予測精度で破断発生の有無を予測する技術が確立されていないことから、当該自動提供システムの実現は暗中模索の現況にある。
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題を解決することを技術課題としており、1つ以上の変形経路変化を含む過程における薄板の破断限界を判定するに際して、ユーザ端末に入力された当該薄板に関する所期のデータに基づいて、破断限界線を容易且つ効率的に求め、高い予測精度をもって破断限界を判定し、当該判定結果をユーザ端末に提供する、極めて利便性の高い破断限界取得システム及び方法、並びにプログラム及び記録媒体を提供することを目的とする。
【0009】
更に、1つ以上の変形経路変化を含む過程における薄板の破断発生の有無を予測するに際して、ユーザ端末に入力された当該薄板に関する所期のデータに基づいて、破断限界線を容易且つ効率的に求め、高い予測精度をもって破断発生の有無を予測して、当該予測結果をユーザ端末に提供することを可能とする、極めて利便性の高い破断予測システム及び方法、並びにプログラム及び記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の破断限界取得システムは、ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されてなり、金属材料からなる薄板の破断限界を判定するために用いる破断限界線を取得する破断限界取得システムであって、1つ以上の変形経路変化を含む過程における前記薄板の破断限界を判定するに際して、前記サーバは、前記ユーザ端末から入力された材料データに応じて、比例負荷経路で得られた歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する変換手段を含み、前記ユーザ端末は、前記サーバに前記材料データを提供し、前記サーバから前記応力空間の破断限界線のデータを取得する。
【0011】
本発明の破断限界取得方法は、ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されており、金属材料からなる薄板の破断限界を判定するために用いる破断限界線を取得する破断限界取得方法であって、1つ以上の変形経路変化を含む過程における前記薄板の破断限界を判定するに際して、前記ユーザ端末により、前記サーバに前記材料データを提供するステップと、前記サーバにより、前記ユーザ端末から入力された材料データに応じて、比例負荷経路で得られた歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換するステップと、前記サーバにより、前記ユーザ端末に前記応力空間の破断限界線のデータを提供するステップとを含む。
【0012】
本発明のプログラムは、ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されてなり、金属材料からなる薄板について、1つ以上の変形経路変化を含む過程における前記薄板の破断限界を判定するシステムを利用して、前記サーバにおいて、前記ユーザ端末から入力された材料データに応じて、比例負荷経路で得られた歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換するステップと、前記ユーザ端末に前記応力空間の破断限界線のデータを提供するステップとをコンピュータに実行させるためのものである。
【0013】
本発明の破断予測システムは、ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されてなり、金属材料からなる薄板の破断限界を評価する破断予測システムであって、1つ以上の変形経路変化に応じた塑性変形過程における前記薄板の破断発生を予測するにするに際して、前記サーバは、前記ユーザ端末から入力された材料データに応じて、歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する変換手段と、得られた前記応力空間の破断限界線を用いて前記破断発生の有無を予測する予測手段とを含み、前記ユーザ端末は、前記サーバに前記材料データを提供し、前記サーバから前記破断発生の有無に関する予測データを取得する。
【0014】
本発明の破断予測方法は、ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されており、金属材料からなる薄板の破断限界を評価する破断予測方法であって、1つ以上の変形経路変化に応じた塑性変形過程における前記薄板の破断発生を予測するにするに際して、前記ユーザ端末により、前記サーバに前記材料データを提供するステップと、前記サーバにより、前記ユーザ端末から入力された材料データに応じて、歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換するステップと、前記サーバにより、得られた前記応力空間の破断限界線を用いて前記破断発生の有無を予測するステップと、前記ユーザ端末により、前記サーバから前記破断発生の有無に関する予測データを取得するステップとを含む。
【0015】
本発明のプログラムは、ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されてなり、金属材料からなる薄板について、1つ以上の変形経路変化に応じた塑性変形過程における前記薄板の破断発生を予測するシステムを利用して、前記サーバにおいて、前記ユーザ端末から入力された材料データに応じて、歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換するステップと、前記サーバにより、得られた前記応力空間の破断限界線を用いて前記破断発生の有無を予測するステップと、前記ユーザ端末により、前記サーバから前記破断発生の有無に関する予測データを取得するステップとをコンピュータに実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1つ以上の変形経路変化を含む過程における薄板の破断限界を判定するに際して、ユーザ端末に入力された当該薄板に関する所期の材料データに基づいて、破断限界線を容易且つ効率的に求め、高い予測精度をもって破断限界を判定し、当該判定結果をユーザ端末に提供する。この構成により、極めて高い利便性をもって破断限界情報を取得することができる。
【0017】
また、本発明によれば、1つ以上の変形経路変化を含む過程における薄板の破断発生の有無を予測するに際して、ユーザ端末に入力された当該薄板に関する所期の材料データに基づいて、破断限界線を容易且つ効率的に求め、高い予測精度をもって破断発生の有無を予測して、当該予測結果をユーザ端末に提供することを可能とする。この構成により、極めて高い利便性をもって破断予測情報を取得することができる。
【0018】
上記の構成により、プレス成形や衝突時の破断の危険性を定量的に評価することができ、材料・工法・構造を同時に考慮した自動車車体の効率的・高精度な開発が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第1の実施形態]
本実施形態では、本発明を金属材料からなる薄板の破断限界の取得に適用した具体例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
従来、破断に対する余裕度は、板厚減少率で評価されることが多かったが、数値シミュレーションの普及とポスト処理ソフトの高機能化により成形限界線図(FLD)を用いた材料の破断評価方法が多用され始めている。FLDは中島法などの実験により得られるが、その方法は煩雑であり、多種の鋼板メニューと板厚に対してデータベースを構築することは困難であるため、いくつかの予測手法が提案されている。
【0021】
例えば、汎用ソフトウェアのポスト処理機能には、Hillの局部くびれモデルとSwiftの拡散くびれモデルにKeelerの板厚補正経験則を加えた方法(非特許文献1を参照)が組み込まれている。しかしながら、これら理論により得られる予測値は、アルミや軟鋼板に関しては比較的高い精度で予測できるが、引張強さにして440MPa級以上の鋼板では単軸引張側で過大評価し、等2軸引張側で過小評価するため、現在のように高強度鋼板を多用した自動車車体の開発には適さない。
【0022】
また、FLDは変形経路に依存し大きく変化することが知られており、プレス成形やプレス成形での予変形を受けた自動車車体部品の衝突のように、変形経路が大きく変化するような塑性変形過程の破断評価方法としては高い予測精度が期待できない。しかしながら、最近、桑原ら(非特許文献2,3を参照)は、アルミ押し出し材や軟鋼板を対象に、応力空間内で表記した破断限界線を用いると変形の経路によらず、破断限界をほぼ一義的に表現できることを実験と解析で検証している。これら知見は、アルミや軟鋼板に関するものであり、引張強さにして440MPa級以上の鋼板では明らかにされていない。
【0023】
そこで本発明者らは、440MPa以上の引張強さの高強度鋼板について詳細な実験を行い、以下の事項に初めて想到した。
(1)比例負荷経路で得られる歪み空間のFLDは、単軸引張試験から得られる応力―歪み曲線と素材の板厚、もしくは応力―歪み曲線と素材の板厚および応力増分依存性を規定するパラメータKCを用いて高い精度で予測することができ、これにより多種の鋼板メニューと板厚に対して歪み空間でのFLDデータベースを簡便かつ効率的に構築することができること。
(2)この比例負荷経路で得られる歪み空間でのFLDを応力空間に変換し、応力空間で破断を判定することにより1つ以上の変形経路変化を含む過程における破断判定が可能なこと。
【0024】
−第1の実施形態の概括的構成−
以下、本実施形態の概括的構成について説明する。
【0025】
(歪み空間の破断限界線の取得方法)
先ず、実験的に歪み空間の破断限界線を測定する手法について説明する。
以下の表1に示す機械的特性値と材料パラメータを持つ金属材料からなる鋼板を対象として、比例負荷実験により破断限界歪みを測定した。ここで、tは薄板の厚み、YPは降伏強さ、TSは引張り強さ、U.Elは均一伸び、Elは全伸び、rmは平均r値(ランクフォード値を示し、圧延方向のr値をr0,圧延方向に対し45゜方向のr値をr45,圧延方向に対し90゜方向のr値をr90とした場合、rm=(r0+2r45+r90)/4で表される。)、K,ε0,nは単軸引張試験から得られる応力−ひずみ曲線を
【数1】
の関数式にフィッティングしたときに得られる材料パラメータを表す。比例負荷実験における破断限界歪みは、スクライブドサークル径を6mmとし、単軸引張、中島法(テフロン(登録商標)シートを用いた球頭張出し)、液圧バルジ試験での破断歪みを測定した。
図3に、上記の実験により測定した歪み空間の破断限界線を含むFLDを示す。
【0026】
【表1】
【0027】
次に、材料の機械的特性値から理論的に歪み空間の破断限界線を推定する手法について説明する。
FLD推定方法としては、Hillの局部くびれモデルとSwiftの拡散くびれモデルの併用、シュテーレン−ライスモデル(1975、J.Mech.Phys.Solids、23、421)などがあり、Keelerの経験則で板厚の影響を補正することで得られる。以下に、具体的な計算方法を説明する。まず、
【数2】
を求めるためのデータを採取するが、試験方法としては単軸引張試験が簡便であり好ましい。単軸引張試験から得られる応力―歪み曲線から、
【数3】
として適当な材料パラメータを含む関数式にフィッティングして材料パラメータを決定すればよい。近似の精度が高く、薄鋼板の数値シミュレーションでよく用いられるn乗硬化則を用いれば
【数4】
で表現できる。
【0028】
破断限界歪みは、n乗硬化則と降伏曲面にMisesの降伏関数
【数5】
を用いると、Hillの局部くびれは
【数6】
Swiftの拡散くびれは
【数7】
で与えられる。ただし、Hillの理論は2軸引張では局部くびれが得られないため
【数8】
の範囲で用い、ρ>0の範囲ではSwiftの拡散くびれを適用する。図3では、理論的に計算した局部くびれ限界を、板厚をt0(mm)として、Keelerの経験則
【数9】
を用いて板厚の影響を補正したFLDを示す。
【0029】
Swiftの拡散くびれは、等2軸引張近傍で破断限界を小さく見積もる傾向があり改善が必要である。従って、分岐理論をベースにHillの局部くびれモデルを拡張したシュテーレン−ライスモデルを用いる方が好ましい。シュテーレン−ライスモデルは、n乗硬化則と降伏曲面にMisesの降伏曲面に対する全歪み理論の増分表示を用いる場合に、ρ≧0の範囲で破断限界歪みは
【数10】
で与えられる。
【0030】
図4に、シュテーレン−ライスモデルを用いて計算した歪み空間の破断限界線を含むFLDを示す。
Swiftの拡散くびれモデルより予測精度に大幅な改善が見られるものの、十分な精度を確保することは困難である。伊藤ら(非特許文献4を参照)は、Misesの2次降伏関数を塑性ポテンシャルとする垂直則では応力増分テンソルと塑性歪み増分テンソルが1対1に対応せず、応力方向の急激な変化に対して塑性歪み増分方向が追従しないという欠点を克服するため、塑性歪み増分テンソルの方向が応力増分テンソルに依存する構成式を提案している。この構成式では、塑性歪み増分の応力増分依存性を規定するパラメータKCが必要であるが、KCの物理的背景は不明瞭であり、パラメータの導出方法についても提案されていない。
【0031】
そこで、本発明者らは以下の表2に示す440MPa〜980MPa級の高強度鋼板について実験を行い調べた結果、以下の事項に初めて想到した。
(1)等2軸引張変形での破断限界最大主歪みε1と破断限界最小主歪みε2の測定値に基づいて材料パラメータKCを同定すれば高い精度でFLDを予測できること。
(2)KCは板厚に依存しないため材料の引張り強さや鋼板の強化機構ごとに必要最低限のKCを求めておけばよいこと。
【0032】
図5に、表2に示す590MPa級の析出強化型鋼板に関して、前述した方法でKCを求め、シュテーレン−ライスモデルをベースに応力増分依存則を用いて計算したFLDを示す。
なお、当然のことながら、Keelerの板厚補正則の代わりに実験により測定した平面歪みでの破断限界歪みε1*を用いて補正する方がより高い予測精度を確保することができる。しかしながら、素材の単軸引張試験による応力―歪み曲線のみで多種の鋼板メニューと板厚に対するFLDデータベースを構築できるという観点からは、Keelerの板厚補正則を用いた方が効率的である。
【0033】
【表2】
【0034】
(歪み空間の破断限界線から応力空間の破断限界線に変換する方法)
表1に示す鋼板を対象に、比例負荷経路での破断限界線は上記した方法で予測し、変形経路変化下での破断限界線は、1次変形として圧延方向に10%の引張を施した後、1次引張方向より90゜の方向が最大主応力となるよう単軸引張、中島法(テフロン(登録商標)シートを用いた球頭張出し)、液圧バルジ試験により破断歪みを測定した。
【0035】
歪み空間から応力空間への変換は、(1)体積一定則、(2)Misesの降伏関数、(3)加工硬化則による等方硬化、(4)垂直則、(5)平面応力、を仮定することで換算することができる。
【0036】
以下に、歪み空間の破断限界線を応力空間に変換する具体的な方法について説明する。歪み空間のFLDは破断限界を与える最大主歪みε11を最小主歪みε22毎に示した図であり、板厚歪みε33は、これらと体積一定則
【数11】
より求めることができる。通常、成形解析や衝突解析で用いられている構成則では、変形の経路によらず相当塑性応力σeqは相当塑性歪みεeqの一義的関数と仮定する等方硬化則を用いており、Swiftの加工硬化則を用いれば
【数12】
で表現できる。加工硬化の関数としては例えば、相当塑性歪みの高次多項式やその他の形式を用いてもよいが、近似の精度が高く、薄鋼板の数値シミュレーションでよく用いられるSwiftの式を用いるのが好ましい。相当塑性歪みεeqは、例えば降伏曲面にMisesの降伏関数を用いれば
【数13】
として表すことができる。
【0037】
なお、必要に応じて高度な異方性降伏関数を用いても良いが、パラメータが多く、処理の際に板面内の方向まで考慮する必要が生じるため、煩雑な割には精度の向上代が十分ではなく、実用上は面内等方性を仮定した降伏関数で十分である。
【0038】
次に、偏差応力成分σij'は、図6に示す降伏曲面に対する塑性歪み増分の垂直則
【数14】
により得られる。最後に平面応力(σ33=0)を仮定することで応力成分σijは
【数15】
より得られる。
【0039】
図7は、上述した方法で予測したFLDと実験とにより測定した変形経路変化下での破断限界歪みを、それぞれ応力空間に変換した結果を示す。歪み空間のFLDは変形経路に依存して破断限界は大きく変化するが、応力空間に表記した破断限界線は、変形経路によらず単一の破断限界線で表現できる。従って、複数の塑性変形経路を経る材料の破断限界線は、比例負荷経路で得られる歪み空間のFLDを応力空間に変換すればよい。実用上、多種の鋼板メニューと板厚に関する破断限界線のデータベースは、単軸引張試験から得られる応力―歪み曲線と素材の板厚から歪み空間の成形限界線図(FLD)を求め、これを応力空間に変換することで破断限界線を求めることができる。
【0040】
更に本発明者らは、表2に示す440MPa〜980MPa級の高強度鋼板について実験を行い調べた結果、材料の引張強さや強化機構によらず、幅広い範囲で単一の破断限界線となることを明らかにした。この応力空間に表記した破断限界線を用いることで、プレス成形やプレス成形での予変形を受けた自動車車体部品の衝突のように、変形経路が大きく変化するような塑性変形過程の破断評価を高い精度で予測することができる。
【0041】
−具体的な緒実施例−
以下、上述した本実施形態の概括的構成を踏まえ、具体的な緒実施例について図面を参照しながら説明する。
【0042】
(実施例1)
図8は、本実施形態のネットワークシステムの全体構成を示す模式図である。図中、100はインターネットやイントラネット等のネットワークである。
【0043】
101はユーザ端末であり、後述するサーバコンピュータ102を利用して所望の材料データを選択し、その材料データファイルを得るために使用される。なお、図8にはユーザ端末101を1つしか示さないが、ネットワーク100上に複数存在するものである。
【0044】
102はサーバコンピュータであり、詳細は後述するが、ユーザ端末101からの金属材料からなる薄板に関する所定の材料データの入力に応じて、当該薄板の破断限界を判定するために用いる破断限界線のデータを作成し、ユーザ端末101に提供する。本実施形態においては、このサーバコンピュータ102により、破断限界取得装置の機能が実現される。
【0045】
図9は、サーバコンピュータ102のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
201はCPUであり、データの送受信、結合等を行うため、バス206を介して各種構成要素を制御する。このバス206を介して、各種構成要素間相互のアドレス信号、制御信号、各種データ等の転送が行われる。
【0046】
202はROMであり、CPU201の制御手順(コンピュータプログラム)を記憶する。CPU201がこの制御手順を実行することにより、データの転送、結合等の処理を実行することが可能となる。203はRAMであり、データの送受信、結合等のためのワークメモリ、各種構成要素を制御するための一時記憶機能として用いられる。
204はハードディスク記憶装置等の記憶装置であり、205はインターネット等のネットワーク100に接続するためのネットワークインターフェースである。
【0047】
図10は、ユーザ端末101のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
同図において、301はCPUであり、データの送受信、結合等を行うため、バス308を介して各種構成要素を制御する。このバス308を介して、各種構成要素間相互のアドレス信号、制御信号、各種データ等の転送が行われる。
【0048】
302はROMであり、CPU301の制御手順(コンピュータプログラム)を記憶する。CPU301がこの制御手順を実行することにより、データの転送、結合等の処理を実行することが可能となる。303はRAMであり、データの送受信、結合等のためのワークメモリ、各種構成要素を制御するための一時記憶機能として用いられる。
【0049】
304は保存用記憶装置である。305はインターネット等のネットワーク100に接続するためのネットワークインターフェースである。306はキーボードやマウス等の入力装置であり、電子文書等を入力するのに用いられる。307はディスプレイ等の表示装置であり、各種画面を表示するのに用いられる。
【0050】
図11は、実施例1による破断限界取得装置の機能を有するサーバコンピュータ102の主要構成を示すブロック図である。
この破断限界取得装置は、金属材料からなる薄板について、1つ以上の変形経路変化を含む過程における薄板の破断限界を判定するものであり、比例負荷経路で得られた歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する変換部1と、変換部1により得られた応力空間の破断限界線を応力FLDとして表示する表示部2とを備えて構成されている。
【0051】
本例では、歪み空間の破断限界線は実験的に測定される。具体的には、歪み空間の破断限界線は、薄板について複数の面内歪み比を比例負荷実験により求めた後、それぞれの歪み比における破断限界最大主歪みε1及び破断限界最小主歪みε2の測定値を用いて得られるものである。
【0052】
変換部1は、歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する際に、塑性歪み増分方向が降伏曲面に対して垂直方向に規定される塑性歪み増分の垂直則を用いて上記の変換を行う。具体的には、上述したように、相当塑性歪みεeqと各歪み成分εijとの関係式であるMisesの降伏関数
【数16】
を用いる。
【0053】
図12は、実施例1による破断限界取得方法の各ステップを示すフロー図である。本例では、上記のように、歪み空間の破断限界線は実験的に測定される。
先ず、ユーザによりユーザ端末101に入力された材料データ、例えば薄板の材料と連動して、変換部1は、例えばMisesの降伏関数を用いて、実験的に測定された歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する(ステップS1)。
【0054】
続いて、ステップS1で得られた応力空間の破断限界線は、表示部2に応力FLDとして表示されるとともに、そのデータがユーザ端末101へ送信される(ステップS2)。
【0055】
以上説明したように、本例によれば、1つ以上の変形経路変化を含む過程における薄板の破断限界を判定するに際して、ユーザ端末101に入力された当該薄板に関する所期の材料データに基づいて、サーバコンピュータ102により破断限界線を容易且つ効率的に求め、高い予測精度をもって破断限界を判定し、当該判定結果をユーザ端末101に提供する。この構成により、極めて高い利便性をもって破断限界情報を取得することができる。本例により、プレス成形や衝突時の破断の危険性を定量的に評価することができ、材料・工法・構造を同時に考慮した自動車車体の効率的・高精度な開発が可能となる。
【0056】
(実施例2)
図13は、実施例2による破断限界取得装置の機能を有するサーバコンピュータ102の主要構成を示すブロック図である。なお、実施例1の図11と同一の構成部材については同符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0057】
この破断限界取得装置は、金属材料からなる薄板について、1つ以上の変形経路変化を含む過程における薄板の破断限界を判定するものであり、比例負荷経路で歪み空間の破断限界線を推定する第1の推定部11と、得られた歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する変換部1と、変換部1により得られた応力空間の破断限界線を応力FLDとして表示する表示部2とを備えて構成されている。
【0058】
第1の推定部11は、単軸引張試験から得られる応力−歪み曲線の近似式
【数17】
と、局部くびれモデル
【数18】
と、拡散くびれモデル
【数19】
とを併用して歪み空間のくびれ発生限界を求め、上述したように、比例負荷経路で歪み空間の破断限界線を推定する。
【0059】
図14は、実施例2による破断限界取得方法の各ステップを示すフロー図である。
先ず、ユーザにより、ユーザ端末101に材料データ、例えば薄板の材料及び機械的特性値(t,YP,TS,El,U.El,r値、n乗硬化則/Swift硬化則)が入力される。
【0060】
第1の推定部11は、ユーザ端末101に入力された薄板の材料及び機械的特性値に基づき、比例負荷経路で歪み空間の破断限界線を推定する(ステップS11)。
【0061】
続いて、変換部1は、機械的特性値として入力されたn乗硬化則/Swift硬化則、及び例えばMisesの降伏関数等を用いて、第1の推定部11により推定された歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する(ステップS12)。
【0062】
続いて、ステップS12で得られた応力空間の破断限界線は、表示部2に応力FLDとして表示されるとともに、そのデータがユーザ端末101へ送信される(ステップS13)。
【0063】
以上説明したように、本例によれば、1つ以上の変形経路変化を含む過程における薄板の破断限界を判定するに際して、ユーザ端末101に入力された当該薄板に関する所期の材料データに基づいて、サーバコンピュータ102により破断限界線を容易且つ効率的に求め、高い予測精度をもって破断限界を判定し、当該判定結果をユーザ端末101に提供する。この構成により、極めて高い利便性をもって破断限界情報を取得することができる。本例により、プレス成形や衝突時の破断の危険性を定量的に評価することができ、材料・工法・構造を同時に考慮した自動車車体の効率的・高精度な開発が可能となる。
【0064】
(変形例)
ここで、実施例2の変形例について説明する。この変形例では、図15に示すように、実施例2の破断限界取得装置において、第1の推定部11の代わりに第2の推定部12が設けられている。
【0065】
第2の推定部12は、第1の推定部11と同様に、比例負荷経路で歪み空間の破断限界線を推定するものであるが、上述したように、
【数20】
と、塑性歪み増分則として塑性歪み増分テンソルの方向が応力増分テンソルに依存する構成式と、塑性歪み増分テンソルの方向を規定する材料パラメータKCと、シュテーレン−ライスの局所くびれモデルとを用いて歪み空間のくびれ発生限界を求め、比例負荷経路で歪み空間の破断限界線を推定する。ここで、第2の推定部12は、上述したように、1つ以上の破断限界最大主歪みε1及び破断限界最小主歪みε2の測定値に基づいて、前記材料パラメータKCを同定する。
【0066】
以上説明したように、本例によれば、実施例2の奏する諸効果に加え、実施例2に比較して、破断予測についてより優れた十分な精度を確保することができ、破断限界線を更に容易且つ効率的に求め、高い予測精度をもって破断限界を判定することが可能となる。
【0067】
(実施例3)
本例では、図8に示したネットワークシステムの全体構成、及び図10に示したユーザ端末101のハードウェア構成については、上述の実施例1,2(及び変形例)と同様であるが、サーバコンピュータ102の構成が若干異なる。
【0068】
本例におけるサーバコンピュータ102は、図16に示すように、図9に示したサーバコンピュータ102のハードウェア構成に加え、記憶装置204において、当該薄板に関する出荷試験値のデータベース204aが構築されている。このデータベース204aには、当該薄い板に関する各種の特性データ、例えばt,YP,TS,El,U.El,r値、応力−歪み多直線データが格納されている。通常、応力−ひずみ曲線は多数の点に離散化されたデータとして引張試験から得ることができる。このデータが応力−ひずみの多点データであり、これら多点データを直線で結んだものを多直線データと呼ぶ。図17に、応力−歪み多直線データの一例を示す。図17では、横軸を歪み量、縦軸を応力とする。
【0069】
図18は、実施例3による破断限界取得装置の機能を有するサーバコンピュータ102の主要構成を示すブロック図である。なお、実施例1の図11と同一の構成部材については同符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0070】
この破断限界取得装置は、金属材料からなる薄板について、1つ以上の変形経路変化を含む過程における薄板の破断限界を判定するものであり、ユーザ端末101から入力された材料データ、例えば当該薄膜の材料、規格値である強度及び厚みに基づき、上記の特性データを記憶するデータベース204aを用いて、歪み空間の破断限界線を推定する第3の推定部13と、各特性データの所定規格内における品質ばらつき分布の上限値、下限値及び平均値をそれぞれ算出する算出部14と、算出された各特性データの上限値、下限値及び平均値に基づき、歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する変換部1と、変換部1により得られた応力空間の破断限界線を応力FLDとして表示する表示部2とを備えて構成されている。
【0071】
図19は、実施例3による破断限界取得方法の各ステップを示すフロー図である。
先ず、ユーザにより、ユーザ端末101に材料データ、例えば薄板の材料、規格値である強度及び厚みが入力される。
【0072】
第3の推定部13は、ユーザ端末101に入力された薄板の材料、規格値である強度及び厚みに基づき、データベース204aにより各種の特性データを用いて、比例負荷経路で歪み空間の破断限界線を推定する(ステップS21)。
【0073】
続いて、算出部14は、各特性データの所定規格内における品質ばらつき分布の上限値、下限値及び平均値をそれぞれ算出する(ステップS22)。
【0074】
続いて、変換部1は、算出された各特性データの上限値、下限値及び平均値に基づき、歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する(ステップS23)。
【0075】
続いて、ステップS23で得られた応力空間の破断限界線は、表示部2に応力FLDとして表示されるとともに、そのデータがユーザ端末101へ送信される(ステップS24)。
【0076】
以上説明したように、本例によれば、1つ以上の変形経路変化を含む過程における薄板の破断限界を判定するに際して、ユーザ端末101に入力された当該薄板に関する所期の材料データに基づいて、サーバコンピュータ102によりデータベース204aを用いて、破断限界線を容易且つ効率的に求め、高い予測精度をもって破断限界を判定し、当該判定結果をユーザ端末101に提供する。この構成により、極めて高い利便性をもって破断限界情報を取得することができる。本例により、プレス成形や衝突時の破断の危険性を定量的に評価することができ、材料・工法・構造を同時に考慮した自動車車体の効率的・高精度な開発が可能となる。
【0077】
[第2の実施形態]
本実施形態では、本発明を金属材料からなる薄板の破断予測に適用した具体例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0078】
成形性評価時の破断に対する余裕度は、一般に、板厚減少率やFLDを用いて判断され、これは衝突解析での破断予測にも用いることができる。このうち、FLDは変形経路に依存し大きく変化することが知られており、プレス成形やプレス成形での予変形を受けた自動車車体部品の衝突のように、変形経路が大きく変化するような塑性変形過程の破断評価方法としては高い予測精度が期待できない。
【0079】
しかしながら、最近、桑原ら(非特許文献2,3を参照)は、アルミ押し出し材や軟鋼板を対象に、応力空間内で表記した破断限界線を用いると変形の経路によらず、破断限界をほぼ一義的に表現できることを実験と解析で検証している。これら知見は、アルミや軟鋼板に関するものであり、引張強さにして440MPa級以上の鋼板では明らかにされておらず、現在のように高強度鋼板を多用した自動車車体の開発には用いることはできない。
【0080】
そこで本発明者らは、以下の事項に初めて想到した。
(1) 440MPa以上の引張強さの高強度鋼板について詳細な実験を行い、応力空間内で表記した破断限界線を用いると変形の経路によらず、単一の破断限界線で表現できること。
(2) 応力空間に表記した破断限界線を用いることで、プレス成形やプレス成形での予変形を受けた自動車車体部品の衝突のように、変形経路が大きく変化するような塑性変形過程の破断評価を高い精度で予測できること。
【0081】
−本実施形態の概括的構成−
以下、本実施形態の概括的構成について説明する。
【0082】
(応力空間の破断限界線の取得方法)
第1の実施形態と同様に、表1に示す鋼板を対象に、(1)比例負荷経路での破断限界歪み、(2)変形経路変化下での破断限界歪みを測定した。ここで、tは薄板の厚み、YPは降伏強さ、TSは引張り強さ、U.Elは均一伸び、Elは全伸び、rmは平均r値(ランクフォード値を示し、圧延方向のr値をr0,圧延方向に対し45゜方向のr値をr45,圧延方向に対し90゜方向のr値をr90とした場合、rm=(r0+2r45+r90)/4で表される。)、K,ε0,nは単軸引張試験から得られる応力−ひずみ曲線を
【数21】
の関数式にフィッティングしたときに得られる材料パラメータを表す。
【0083】
比例負荷経路での破断限界歪みは、スクライブドサークル径を6mmとし、単軸引張、中島法(テフロン(登録商標)シートを用いた球頭張出し)、液圧バルジ試験での破断歪みを測定した。一方、変形経路変化下での破断限界線は、1次変形として圧延方向に10%の引張を施した後、1次引張方向より90゜の方向が最大主応力となるよう単軸引張、中島法により破断歪みを測定した。
【0084】
歪みから応力へは、(1)体積一定則、(2)Misesの降伏関数、(3)加工硬化則による等方硬化、(4)垂直則、(5)平面応力を仮定することで換算することができる。以下に、歪み空間の破断限界線を応力空間に変換する具体的な方法について説明する。
【0085】
歪み空間のFLDは破断限界を与える最大主歪みε11を最小主歪みε22ごとに示した図であり、板厚歪みε33はこれらと体積一定則
【数22】
より求めることができる。通常、成形解析や衝突解析で用いられている構成則では、変形の経路によらず相当塑性応力σeqは相当塑性歪みεeqの一義的関数と仮定する等方硬化則を用いており、Swiftの加工硬化則を用いれば
【数23】
で表現できる。加工硬化の関数としては例えば、相当塑性歪みの高次多項式やその他の形式を用いてもよいが、近似の精度が高く、薄鋼板の数値シミュレーションでよく用いられるSwiftの式を用いるのが好ましい。
【0086】
相当塑性歪みεeqは、例えば降伏曲面にMisesの降伏関数を用いれば
【数24】
として表すことができ、また面内等方性を仮定したHillの2次降伏関数を用いれば
【数25】
により得られる。Hillの2次降伏関数を用いる場合には塑性異方性パラメータr値が必要であり、具体的には圧延方向から0゜、45゜、90゜の方向のr値(r0,r45,r90)から、r=(r0+2r45+r90)/4により得られる。
【0087】
なお、必要に応じて高度な異方性降伏関数を用いても良いが、パラメータが多く、処理の際に板面内の方向まで考慮する必要が生じるため、煩雑な割には精度の向上代が十分ではなく、実用上は面内等方性を仮定した降伏関数で十分である。いずれの降伏関数でも、相当塑性歪み増分dεeqを歪み経路で積分した相当塑性歪みεeqと加工硬化則を用いることで、変形経路変化を考慮した相当塑性応力σeqを求めることができる。
【0088】
次に、偏差応力成分σij'は、図6に示した降伏曲面の等方硬化と垂直則
【数26】
により得られる。最後に平面応力(σ33=0)を仮定することで応力成分σijは
【数27】
より得られる。
【0089】
なお、図20に示すように、歪みの主軸と圧延方向が一致しない場合は下記に示す座標変換操作が必要である。図中、xiは材料座標系の座標軸であるx1軸//RD、x2軸//TD、x3軸//NDを表し、Xiはn次変形での歪みの主軸を表す。
座標変換テンソルをRとすると、(1)実験座標系で計測した歪み成分εijは座標変換則により材料座標系を基準座標とした歪み成分
【数28】
へ変換できる。次に、(2)材料座標系を基準座標系としてモデル化されている降伏関数と垂直則から
を求め、最後に、(3)座標変換則を用いて実験座標系を基準座標とした応力成分
【数29】
を求めることができる。
【0090】
図7に、実験により測定したFLDと、これを前記した方法で最大主応力と最小主応力の応力空間に変換した破断限界線を示す。
歪み空間のFLDは変形経路に依存し破断限界線は大きく変化するが、応力空間に表記した破断限界線は単一の破断限界線となる。
【0091】
更に本発明者らは、以下の表3に示す440MPa〜980MPa級の高強度鋼板について実験を行い調べた結果、材料の引張強さや強化機構によらず、幅広い範囲で単一の破断限界線となることを明らかにした。この応力空間に表記した破断限界線を用いることで、プレス成形やプレス成形での予変形を受けた自動車車体部品の衝突のように、変形経路が大きく変化するような塑性変形過程の破断評価を高い精度で予測することができる。
【0092】
なお、当然のことながら、中島法以外の実験方法で測定したFLDを応力空間に変換した破断限界線を用いても良いし、Hillの局部くびれモデルやSwiftの拡散くびれモデル、Marciniak-Kuczynski法、シュテーレン−ライスモデルなどの理論FLDを応力空間に変換した破断限界線を破断予測に用いても良い。
【0093】
【表3】
【0094】
(破断限界の評価方法)
有限要素法(FEM)による数値シミュレーションで材料の破断を予測するには、以下に示す技術的な課題がある。
(1)実験により測定したFLDは、評点間距離や摩擦状態の影響を強く受けるため、これを破断判定基準として用いる場合、数値シミュレーションの解析条件に合わせ補正が必要である。
(2)数値シミュレーションでは、均一変形までの歪みの増加は正確にシミュレーションできるが、板厚程度の領域に生じる局部くびれや、さらに狭い領域内に歪みが局所化したせん断帯をシミュレーションするためには有限要素を十分細分化しなければならず、現状の計算機能力では予測が困難である。
(3)汎用ソフトウェアで標準的に採用されている材料構成則では歪みの局所化が遅れるため、実測したFLDを破断判定基準とした場合、危険側での評価を与える。
【0095】
本発明者らは、これら課題に対し鋭意研究した結果、数値シミュレーションに適した破断判定基準を明らかにした。表1に示す鋼板を対象に、球頭張出し成形のFEM数値シミュレーションを行い、要素サイズや材料構成式が歪みの局所化過程におよぼす影響を調査した。
【0096】
図21に、ポンチストロークとプレス成形により導入された最大主歪みの関係を示す。
成形初期からポンチストローク25mm程度までは要素サイズ、材料構成式の影響がほとんど現れないが、歪みの局所化が始まる25mm以降では、これらの影響が顕著となる。
【0097】
図22に、種々の解析条件で数値シミュレーションを行い、実験から得られたFLDと局部くびれ発生限界を破断判定基準として用いたときの予測精度の比較を示す。
破断判定基準に実測したFLDを用いた場合、歪みの局所化過程を正確にシミュレーションできないため、破断の予測精度は高くない。一方、局部くびれ発生限界を破断限界に用いた場合、要素サイズや用いる材料構成式によらず比較的高い精度で予測可能であり、かつ安全側の評価を得ることができる。これは、薄鋼板の延性破壊は局部くびれにより変形が局所化した位置で発生し、局部くびれが発生すると極めて短時間で破断に至るため、実用上は局部くびれ発生限界を破断判定基準に用いればよいことを示唆している。
【0098】
局部くびれ発生限界は塑性不安定性の枠組みで取り扱うことができ、Hillの局部くびれモデルやSwiftの拡散くびれモデル、Marciniak-Kuczynski法、シュテーレン−ライスモデルなどの理論FLDで予測できる。
【0099】
この事例で示すように、本発明者らは鋭意研究をした結果、有限要素法を用いた数値解析シミュレーションで破断を評価する場合、歪み空間でのくびれ開始線を応力空間に変換した破断限界線を破断判定基準に用いることで高い予測精度が確保できることに想到した。
【0100】
(破断限界の評価方法の事例)
表1に示す鋼板を対象に、1次変形として圧延方向に10%の引張を施した後、球頭張出し成形により平面歪み変形を施すような非線形経路での破断予測事例を示す。
図23に数値シミュレーションにより得られた成形過程の応力履歴と歪み空間でのくびれ開始線を応力空間に変換した破断限界線の関係を示す。
【0101】
数値シミュレーションに動的陽解法を用いる場合、得られる応力は時間ステップ内での繰り返し計算を行わず、微小時間刻みで応力波の伝播を解いていくため大きく振動しながら増加する。この応力と破断限界応力の位置関係を比較し破断を評価する方法では高い予測精度を確保することが困難である。
【0102】
本発明者らは鋭意研究をした結果、数値シミュレーションに動的陽解法を用いる場合、塑性歪みをポスト処理で応力へ変換することで応力の振動を回避でき、精度良く破断を判定する方法に想到した。
【0103】
図24に本発明方法により破断を予測した結果を示す。
従来のFLDによる破断予測方法では、変形経路に依存し破断限界線が大きく変化するため高い精度で予測することは困難であるが、本発明を適用することで変形経路が変化する場合でも良好な精度で破断を予測できることが判る。なお、本発明は、有限要素法を用いた数値シミュレーションの代わりに、実験の歪み測定結果を応力に変換した値と破断限界線の位置関係を比較することでも破断を評価することが可能である。
【0104】
(破断予測方法を衝突解析に適用した例)
表1に示す鋼板を対象に、図25に示すハット断面で長さ900mmの部材の3点曲げ衝突解析において本発明の破断予測方法を適用した。
【0105】
先ず、動的陽解法の数値シミュレーションを用いてハット形状の絞り曲げ成形の解析を行った。図26に成形シミュレーションの結果を示す。次に、フランジ部で平板と30mm間隔の点溶接処理(2接点間の相対変位を固定)を施した衝突解析用有限要素モデルを作成した。
【0106】
更に、この衝突解析用有限要素モデルに、得られた成形解析結果を反映させ、衝突解析を動的陽解法による数値シミュレーションにて行った。プレス成形後の衝突過程での材料の破断を評価する場合、プレス成形の数値シミュレーションにより得られる板厚と相当塑性歪み、あるいは板厚と相当塑性歪み、応力テンソル、歪みテンソルを衝突解析の初期条件へ引き継ぐことで成形時の変形履歴を考慮することができる。
【0107】
なお、当然のことながら、数値シミュレーションの代わりに実験によりプレス成形品の板厚、相当塑性歪みを測定し、これらの何れかを衝突解析の初期条件へ引き継ぐことで成形時の変形履歴を考慮することができる。
【0108】
これまでの事例では、プレス成形のような準静的な塑性変形過程を取り扱っていたが、衝突解析では材料の高速変形挙動を考慮する必要がある。鉄鋼材料には歪み速度依存性があり、変形速度が速いと変形抵抗が上昇することが知られている。自動車の衝突時、変形が集中する稜線部では歪み速度が1000/sまで達することがあり、衝突解析の予測精度を確保するためには正確な高速変形挙動を考慮する必要がある。
【0109】
一般に、有限要素法による数値シミュレーションで衝突解析を行う場合、歪み速度に応じた応力の増加を表現する材料モデルとしてCowper-Symonds式を用いる。
図27に相当塑性歪みと歪み速度に応じた相当応力の関係を、図28に応力空間での動的な破断応力限界線と衝突シミュレーションから得られる動的な応力の位置関係をそれぞれ示す。
【0110】
衝突シミュレーションから得られる動的応力を用いて破断を評価する場合、歪み速度に応じて無数の動的な破断応力限界線が必要であり、実用上、破断を予測することは困難である。
【0111】
本発明者らは、この課題を解決すべく鋭意研究をした結果、衝突シミュレーションから得られる塑性歪みを変換して得た基準歪み速度での応力を用い、破断判定に用いるクライテリアは単一の基準歪み速度での破断応力限界線のみを利用すればよいことに想到した。検討の結果、基準歪み速度は準静的な歪み速度として良いことが判った。準静的な歪み速度の範囲は材料により異なるが実用上0.001/s〜1/sの範囲内で計測した破断限界線を用いて良い。
【0112】
図29に本発明の方法により破断を予測した結果を示す。
従来のFLDによる破断予測方法ではプレス成形での予変形を受けた後の衝突現象のように変形経路が大きく変化するような塑性変形過程は高い精度で予測することが困難であったが、本発明を適用することでプレス成形後の衝突プロセスでも良好な精度で破断を予測できることが判る。
【0113】
以上の例に示したように、本発明によれば、薄鋼板のプレス成形、衝突プロセスを有限要素法によりシミュレーションし、得られたデータから破断の危険性を定量的に評価できる。ここでは、変形応力の歪み速度依存性としてCowper-Symonds式を代表例として用いたが、歪み速度依存性を考慮できる任意の構成式、例えばm乗硬化式、Johnson-Cook式等を用いても本発明の有効性は変わらない。
【0114】
−具体的な実施例−
以下、上述した本発明の概括的構成を踏まえ、具体的な実施例について図面を参照しながら説明する。
本例では、図8に示したネットワークシステムの全体構成、図9に示したサーバコンピュータ102のハードウェア構成、及び図10に示したユーザ端末101のハードウェア構成については、第1の実施形態による実施例1,2(及び変形例)と同様であるが、サーバコンピュータ102の機能が異なる。
【0115】
図30は、実施例2による破断予測装置の機能を有するサーバコンピュータ102の主要構成を示すブロック図である。
この破断予測装置は、金属材料からなる薄板について、1つ以上の変形経路変化を含む過程における薄板の破断発生の有無を予測するものであり、比例負荷経路で歪み空間の破断限界線を推定する推定部21と、比例負荷経路で得られた歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する変換部22と、応力空間の破断限界線により破断発生の有無を判断する破断判定部23と、破断判定部23による判定結果等を表示する表示部24とを備えて構成されている。
【0116】
推定部21は、例えば単軸引張試験から得られる応力−歪み曲線の近似式
【数30】
と、局部くびれモデル
【数31】
と、拡散くびれモデル
【数32】
とを併用して歪み空間のくびれ発生限界を求め、比例負荷経路で歪み空間の破断限界線を推定する。
【0117】
推定部21は、単軸引張試験から得られる応力−歪み曲線の近似式
【数33】
と、塑性歪み増分則として塑性歪み増分テンソルの方向が応力増分テンソルに依存する構成式と、塑性歪み増分テンソルの方向を規定する材料パラメータKCと、シュテーレン−ライスの局所くびれモデルとを用いて歪み空間のくびれ発生限界を求め、比例負荷経路で歪み空間の破断限界線を推定するようにしても良い。ここで、推定部1は、1つ以上の最大破断限界歪みε1及び最小破断限界歪みε2の測定値に基づいて、材料パラメータKCを同定する。
【0118】
なお、本例では、歪み空間の破断限界線を推定部1を用いて理論的に推定する場合について例示したが、歪み空間の破断限界線を推定部1を用いずに実験的に測定しても良い。具体的には、歪み空間の破断限界線は、薄板について複数の面内歪み比を比例負荷実験により求めた後、それぞれの歪み比における最大破断限界歪みε1及び最小破断限界歪みε2の測定値を用いて得られる。
【0119】
変換部22は、歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する際に、塑性歪みの増分則として降伏曲面の垂直則を用いて上記の変換を行う。具体的には、上述したように、相当塑性歪みεeqと各歪み成分εijとの関係式であるMisesの降伏関数
【数34】
を用いる。
【0120】
破断判定部23は、変換部1により変換された応力空間の破断限界線と、塑性変形過程の有限要素法によるシミュレーションの結果から得られる各部位の歪み状態との位置関係を比較することで評価し、変形過程の歪みがこの限界歪みに達したときに破断、もしくは、その危険性が高いと判断する。ここで、数値解析の手法として有限要素法の1つである動的陽解法を用いる。この場合、動的陽解法により得られる塑性歪みを応力に変換し、応力空間の破断限界線と比較する。
【0121】
なお、破断判定部23は、上記のシミュレーションを行う代わりに、実験により評価された薄板の変形状態から得られた歪みを応力に換算し、応力空間の破断限界線を用いて破断発生の有無を定量的に評価するようにしても良い。
【0122】
ここで、自動車部材の衝突解析のように、薄板に高速変形が生じる場合には、破断判定部23は、薄板の変形応力の速度依存性を考慮して数値解析を実行し、当該数値解析から得られた塑性歪みを変換して基準歪み速度における応力を算出し、基準歪み速度に対応した応力空間の破断限界線と比較する。
【0123】
図31は、本実施例による破断予測方法により、金属材料からなる薄板の成形過程において破断予測を行う場合の各ステップを示すフロー図である。
先ず、ユーザによりユーザ端末101に入力された材料データ、例えば薄板の材料及び機械的特性値(t,YP,TS,El,U.El,r値、n乗硬化則/Swift硬化則)に基づき、推定部21は、比例負荷経路で歪み空間の破断限界線を推定する(ステップS31)。
【0124】
続いて、変換部22は、例えばMisesの降伏関数を用いて、実験的に測定された歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換し、応力FLDを作成するとともに、そのデータをユーザ端末101へ送信する(ステップS32)。
【0125】
続いて、破断判定部23は、変換部21により変換された応力空間の破断限界線と、塑性変形過程の有限要素法(ここでは動的陽解法)によるシミュレーションの結果から得られる各部位の歪み状態との位置関係を比較することで評価し、破断或いはその危険性を判断する(ステップS33)。
【0126】
ステップS33において、限界歪みに達し、薄板に破断が生じる、或いはその危険性が高いと判定された場合には、破断判定部3は、以下の緒処理を実行する(ステップS34)。
要素ID、薄板の板厚、歪み、応力情報をログファイルに出力する。更に、クライテリアに達した要素を消去し、破断後の解析を継続する。
【0127】
続いて、表示部24に以下の各種表示が行われるとともに、そのデータがユーザ端末101へ送信される(ステップS35)。
薄板に破断が生じる危険性がスカラー量でコンター表示される。また、応力空間で破断危険部位の応力履歴及びクライテリアが表示される。併せて、薄板におけるシワ発生の危険性もコンター表示される。ここで、出荷試験値の規格内におけるばらつき(平均値、下限値)に対して、破断の危険性を表示するようにしても良い。
【0128】
一方、ステップS33において、破断が生じる可能性がない、或いはその危険性が低いと判定された場合には、ステップS36においてその旨が表示部23に表示されるとともに、ユーザ端末101へその旨が送信される。
【0129】
図32は、本実施例による破断予測方法により、図31の成形過程における破断予測に引き続き、衝突過程における破断予測を行う場合の各ステップを示すフロー図である。
【0130】
この場合、図31のステップS32で作成された応力FLDを引き継いで用いる。
そして、破断判定部23は、薄板の変形応力の速度依存性を考慮して数値解析を実行し、当該数値解析から得られた塑性歪みを変換して基準歪み速度における応力を算出し、基準歪み速度に対応した応力空間の破断限界線と比較し、破断、もしくは、その危険性を判断する(ステップS41)。
【0131】
このステップS41において、破断判定部23は、図31の成形過程において数値解析により評価された薄板の変形状態を、衝突過程における数値解析の初期条件として引き継ぐ。この変形状態は、薄板の板厚及び相当塑性歪み、或いは板厚、相当塑性歪み、応力テンソル及び歪みテンソルである。
【0132】
ステップS41において、薄板に破断が生じる、或いはその危険性が高いと判定された場合には、破断判定部23は、以下の緒処理を実行する(ステップS42)。
要素ID、薄板の板厚、歪み、応力情報をログファイルに出力する。更に、クライテリアに達した要素を消去し、破断後の解析を継続する。
【0133】
続いて、表示部24に以下の各種表示が行われるとともに、そのデータがユーザ端末101へ送信される(ステップS43)。
薄板に破断が生じる危険性がスカラー量でコンター表示される。また、応力空間で破断危険部位の応力履歴及びクライテリアが表示される。併せて、薄板におけるシワ発生の危険性もコンター表示される。ここで、出荷試験値の規格内におけるばらつき(平均値、下限値)に対して、破断の危険性を表示するようにしても良い。
【0134】
一方、ステップS41において、薄板に破断が生じる可能性がない、或いはその危険性が低いと判定された場合には、ステップS44においてその旨が表示部24に表示されるとともに、そのデータがユーザ端末101へ送信される。
【0135】
以上説明したように、本実施例によれば、1つ以上の変形経路変化を含む過程における薄板の破断発生の有無を予測するに際して、ユーザ端末101に入力された当該薄板に関する所期の材料データに基づいて、サーバコンピュータ102により破断限界線を容易且つ効率的に求め、高い予測精度をもって破断発生の有無を予測して、当該予測結果をユーザ端末101に提供することを可能とする。この構成により、極めて高い利便性をもって破断予測情報を取得することができる。これにより、プレス成形や衝突時の破断の危険性を定量的に評価することができ、材料・工法・構造を同時に考慮した自動車車体の効率的・高精度な開発が実現する。
【0136】
なお、本実施形態において、第1の実施形態で説明した破断限界取得方法の各ステップを実行した後、サーバコンピュータ102により、取得された応力空間の破断限界線のデータを用いて、破断発生の有無を予測するように構成しても良い。即ち、図12のステップS1を実行した後、図31のステップS33〜S36を実行する構成や、図14のステップS11(実施例2の変形例における第2の推定部12を用いる)〜S12を実行した後、図31のステップS33〜S36を実行する構成、図19のステップS21〜S23を実行した後、図31のステップS33〜S36を実行する構成等が考えられる。
【0137】
(本発明を適用した他の実施形態)
上述した第1の実施形態における実施例1,2(及び変形例)、実施例3等による破断限界取得装置を構成する各構成要素(表示部2を除く)の機能、及び第2の実施形態における実施例等による破断予測装置を構成する各構成要素(表示部24を除く)の機能は、コンピュータのRAMやROMなどに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。同様に、第1の実施形態における破断限界取得方法の各ステップ(図12のステップS1〜S2,図14のステップS11〜S13、図19のステップS21〜S24等)、及び第2の実施形態における破断予測方法の各ステップ(図31のステップS31〜S36,図32のステップS41〜S44等)は、コンピュータのRAMやROMなどに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。このプログラム及び当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は本発明に含まれる。
【0138】
具体的に、前記プログラムは、例えばCD−ROMのような記録媒体に記録し、或いは各種伝送媒体を介し、コンピュータに提供される。前記プログラムを記録する記録媒体としては、CD−ROM以外に、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、光磁気ディスク、不揮発性メモリカード等を用いることができる。他方、前記プログラムの伝送媒体としては、プログラム情報を搬送波として伝搬させて供給するためのコンピュータネットワークシステムにおける通信媒体を用いることができる。ここで、コンピュータネットワークとは、LAN、インターネットの等のWAN、無線通信ネットワーク等であり、通信媒体とは、光ファイバ等の有線回線や無線回線等である。
【0139】
また、本発明に含まれるプログラムとしては、供給されたプログラムをコンピュータが実行することにより上述の実施形態の機能が実現されるようなもののみではない。例えば、そのプログラムがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)或いは他のアプリケーションソフト等と共同して上述の実施形態の機能が実現される場合にも、かかるプログラムは本発明に含まれる。また、供給されたプログラムの処理の全て或いは一部がコンピュータの機能拡張ボードや機能拡張ユニットにより行われて上述の実施形態の機能が実現される場合にも、かかるプログラムは本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】従来技術の説明に用いた成形限界線図(FLD)である。
【図2】本発明が解決しようとする課題の説明に用いた成形限界線図(FLD)である。
【図3】本発明の実施例の説明に用いた図であり、実験により測定した成形限界線図(FLD)である。
【図4】本発明の実施例の説明に用いた図であり、Hill-Swift理論とシュテーレン−ライスモデルにより予測した塑性不安定限界線に対して、Keelerの板厚補正則を用いて板厚の影響を考慮した成形限界線図(FLD)である。
【図5】本発明の実施例の説明に用いた図であり、シュテーレン−ライスモデルをベースに応力増分依存則を用いて予測した成形限界線図(FLD)である。
【図6】本発明の実施例の説明に用いた図であり、歪みから応力への変換を説明した図である。
【図7】本発明の実施例の説明に用いた図であり、歪み空間のFLDは変形経路に依存して破断限界が大きく変化するのに対し、応力空間の破断限界線は単一の曲線で表現できることを示した図である。
【図8】第1の実施形態におけるネットワークシステムの全体構成を示す模式図である。
【図9】第1の実施形態におけるサーバコンピュータのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図10】第1の実施形態におけるユーザ端末のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図11】第1の実施形態における実施例1による破断限界取得装置の主要構成を示すブロック図である。
【図12】第1の実施形態における実施例1による破断限界取得方法の各ステップを示すフロー図である。
【図13】第1の実施形態における実施例2による破断限界取得装置の主要構成を示すブロック図である。
【図14】第1の実施形態における実施例2による破断限界取得方法の各ステップを示すフロー図である。
【図15】第1の実施形態における実施例2の変形例による破断限界取得装置の主要構成を示すブロック図である。
【図16】第1の実施形態における実施例3のサーバコンピュータのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図17】応力−歪み多直線データの一例を示す特性図である。
【図18】第1の実施形態における実施例3による破断限界取得装置の主要構成を示すブロック図である。
【図19】第1の実施形態における実施例3による破断限界取得方法の各ステップを示すフロー図である。
【図20】座標変換則を説明するための図である。
【図21】成形高さと最大主歪みの関係を示す図である。
【図22】種々の解析条件で数値シミュレーションを行い、実験から得られたFLDと局部くびれ発生限界を破断判定基準として用いたときの予測精度の比較を示す図である。
【図23】数値シミュレーションにより得られた成形過程の応力履歴と破断限界線の位置関係を示す図である。
【図24】本発明方法の予測精度を示す図である。
【図25】衝突解析の予測精度の検証対象であるハット断面形状の部品と3点曲げ落重試験概要を示す図である。
【図26】数値シミュレーションによるハット形状の絞り曲げ成形の解析結果を示す図である。
【図27】相当塑性歪みと歪み速度に応じた相当応力の関係を示す図である。
【図28】応力空間での動的な破断応力限界線と衝突シミュレーションから得られる動的な応力の位置関係を示す図である。
【図29】数値シミュレーションにより得られた成形過程の応力履歴と破断限界線の位置関係と、本発明方法の予測精度とを示す図である。
【図30】第2の実施形態における実施例による破断限界取得装置の主要構成を示すブロック図である。
【図31】第2の実施形態における実施例による破断予測方法により、金属材料からなる薄板の成形過程において破断予測を行う場合の各ステップを示すフロー図である。
【図32】第2の実施形態における実施例による破断予測方法により、図30の成形過程における破断予測に引き続き、衝突過程における破断予測を行う場合の各ステップを示すフロー図である。
【符号の説明】
【0141】
1,22 変換部
2,24 表示部
11 第1の推定部
12 第2の推定部
13 第3の推定部
14 算出部
21 推定部
23 破断判定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料からなる薄板の破断限界取得システム及び方法、破断予測システム及び方法、並びにこれら方法のプログラム及び記録媒体に関し、特にプレス成形を受けた自動車部材の衝突過程での材料破断の破断判定基準として好適である。
【背景技術】
【0002】
破断に対する余裕度は、一般に、板厚減少率や成形限界線図(FLD)を用いて判断される。FLDは、破断限界を与える最大主歪みを最小主歪み毎に示した図であり、衝突解析で用いることもできる。実験によるFLDの測定方法は、一般に、あらかじめ金属板の表面にエッチングなどによりサークル状あるいは格子状の模様を描いておき、液圧成形や剛体工具での張出し成形で破断させた後に、サークルの変形量から破断限界歪みを測定する。破断限界線は、様々な面内歪み比について金属板を比例負荷し、それぞれの歪み比での破断限界歪みを主歪み軸上にプロットして線で結ぶことで得られる。
【0003】
図1に実験により測定した破断限界線を示す。
FLD予測手法としては、Hillの局部くびれモデルとSwiftの拡散くびれモデルの併用、Marciniak-Kuczynski法、
などがあり、Keelerの経験則で板厚の影響を補正することで得られる。従来の破断評価方法は、これら破断限界線と塑性変形過程の有限要素法によるシミュレーションの結果から得られる各部位の歪み状態との位置関係を比較することで評価し、変形過程の歪みがこの限界歪みに達したときに破断、もしくは、その危険性が高いと判断する。
【0004】
【非特許文献1】1993、 Hosford、 Metal Forming、 319
【非特許文献2】2004、 塑性と加工 45、 123
【非特許文献3】2004、 CAMP-ISIJ 17、 1063
【非特許文献4】1988、 機論A、57、 1617
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図2の破断限界線に示されるように、破断限界線は歪み経路に依存して大きく変化することが知られている。例えば、(1)変形経路の変化がなく線形の経路変化で負荷したときの破断限界線に比べ、(2)単軸引張り予歪み後に等2軸引張り変形を施す経路変化の場合、破断限界線は大きく増加し、(3)等2軸引張り予歪み後に単軸引張りを施す経路変化や、(4)等2軸引張り予歪み後に平面歪み引張り変形を施す経路変化の場合、破断限界線は減少することが多くの実験や数値解析から明らかになっている。
【0006】
プレス成形あるいはプレス成形での予変形を受けた自動車車体部品の衝突変形過程では変形経路が大きく変化することが多く、実験から得られる破断限界線を用いて破断を評価する場合、変形経路に応じて無数の限界線を準備せざるを得ない。従って、実用上、破断の評価は比例負荷経路に対する破断限界線を用いることとなり、高い予測精度は期待できない。
【0007】
更には、金属材料からなる薄板について、高い予測精度をもって判定された破断限界結果、及び高い予測精度をもって予測された破断発生の有無の結果を、ユーザが端末に当該薄板に関する所期のデータを入力するだけで適宜取得することを可能とする自動提供システムの実現は、ユーザが最も望むところである。しかしながら、上記のようにそもそも高い予測精度で破断限界を判定する技術や高い予測精度で破断発生の有無を予測する技術が確立されていないことから、当該自動提供システムの実現は暗中模索の現況にある。
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題を解決することを技術課題としており、1つ以上の変形経路変化を含む過程における薄板の破断限界を判定するに際して、ユーザ端末に入力された当該薄板に関する所期のデータに基づいて、破断限界線を容易且つ効率的に求め、高い予測精度をもって破断限界を判定し、当該判定結果をユーザ端末に提供する、極めて利便性の高い破断限界取得システム及び方法、並びにプログラム及び記録媒体を提供することを目的とする。
【0009】
更に、1つ以上の変形経路変化を含む過程における薄板の破断発生の有無を予測するに際して、ユーザ端末に入力された当該薄板に関する所期のデータに基づいて、破断限界線を容易且つ効率的に求め、高い予測精度をもって破断発生の有無を予測して、当該予測結果をユーザ端末に提供することを可能とする、極めて利便性の高い破断予測システム及び方法、並びにプログラム及び記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の破断限界取得システムは、ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されてなり、金属材料からなる薄板の破断限界を判定するために用いる破断限界線を取得する破断限界取得システムであって、1つ以上の変形経路変化を含む過程における前記薄板の破断限界を判定するに際して、前記サーバは、前記ユーザ端末から入力された材料データに応じて、比例負荷経路で得られた歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する変換手段を含み、前記ユーザ端末は、前記サーバに前記材料データを提供し、前記サーバから前記応力空間の破断限界線のデータを取得する。
【0011】
本発明の破断限界取得方法は、ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されており、金属材料からなる薄板の破断限界を判定するために用いる破断限界線を取得する破断限界取得方法であって、1つ以上の変形経路変化を含む過程における前記薄板の破断限界を判定するに際して、前記ユーザ端末により、前記サーバに前記材料データを提供するステップと、前記サーバにより、前記ユーザ端末から入力された材料データに応じて、比例負荷経路で得られた歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換するステップと、前記サーバにより、前記ユーザ端末に前記応力空間の破断限界線のデータを提供するステップとを含む。
【0012】
本発明のプログラムは、ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されてなり、金属材料からなる薄板について、1つ以上の変形経路変化を含む過程における前記薄板の破断限界を判定するシステムを利用して、前記サーバにおいて、前記ユーザ端末から入力された材料データに応じて、比例負荷経路で得られた歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換するステップと、前記ユーザ端末に前記応力空間の破断限界線のデータを提供するステップとをコンピュータに実行させるためのものである。
【0013】
本発明の破断予測システムは、ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されてなり、金属材料からなる薄板の破断限界を評価する破断予測システムであって、1つ以上の変形経路変化に応じた塑性変形過程における前記薄板の破断発生を予測するにするに際して、前記サーバは、前記ユーザ端末から入力された材料データに応じて、歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する変換手段と、得られた前記応力空間の破断限界線を用いて前記破断発生の有無を予測する予測手段とを含み、前記ユーザ端末は、前記サーバに前記材料データを提供し、前記サーバから前記破断発生の有無に関する予測データを取得する。
【0014】
本発明の破断予測方法は、ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されており、金属材料からなる薄板の破断限界を評価する破断予測方法であって、1つ以上の変形経路変化に応じた塑性変形過程における前記薄板の破断発生を予測するにするに際して、前記ユーザ端末により、前記サーバに前記材料データを提供するステップと、前記サーバにより、前記ユーザ端末から入力された材料データに応じて、歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換するステップと、前記サーバにより、得られた前記応力空間の破断限界線を用いて前記破断発生の有無を予測するステップと、前記ユーザ端末により、前記サーバから前記破断発生の有無に関する予測データを取得するステップとを含む。
【0015】
本発明のプログラムは、ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されてなり、金属材料からなる薄板について、1つ以上の変形経路変化に応じた塑性変形過程における前記薄板の破断発生を予測するシステムを利用して、前記サーバにおいて、前記ユーザ端末から入力された材料データに応じて、歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換するステップと、前記サーバにより、得られた前記応力空間の破断限界線を用いて前記破断発生の有無を予測するステップと、前記ユーザ端末により、前記サーバから前記破断発生の有無に関する予測データを取得するステップとをコンピュータに実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1つ以上の変形経路変化を含む過程における薄板の破断限界を判定するに際して、ユーザ端末に入力された当該薄板に関する所期の材料データに基づいて、破断限界線を容易且つ効率的に求め、高い予測精度をもって破断限界を判定し、当該判定結果をユーザ端末に提供する。この構成により、極めて高い利便性をもって破断限界情報を取得することができる。
【0017】
また、本発明によれば、1つ以上の変形経路変化を含む過程における薄板の破断発生の有無を予測するに際して、ユーザ端末に入力された当該薄板に関する所期の材料データに基づいて、破断限界線を容易且つ効率的に求め、高い予測精度をもって破断発生の有無を予測して、当該予測結果をユーザ端末に提供することを可能とする。この構成により、極めて高い利便性をもって破断予測情報を取得することができる。
【0018】
上記の構成により、プレス成形や衝突時の破断の危険性を定量的に評価することができ、材料・工法・構造を同時に考慮した自動車車体の効率的・高精度な開発が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第1の実施形態]
本実施形態では、本発明を金属材料からなる薄板の破断限界の取得に適用した具体例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
従来、破断に対する余裕度は、板厚減少率で評価されることが多かったが、数値シミュレーションの普及とポスト処理ソフトの高機能化により成形限界線図(FLD)を用いた材料の破断評価方法が多用され始めている。FLDは中島法などの実験により得られるが、その方法は煩雑であり、多種の鋼板メニューと板厚に対してデータベースを構築することは困難であるため、いくつかの予測手法が提案されている。
【0021】
例えば、汎用ソフトウェアのポスト処理機能には、Hillの局部くびれモデルとSwiftの拡散くびれモデルにKeelerの板厚補正経験則を加えた方法(非特許文献1を参照)が組み込まれている。しかしながら、これら理論により得られる予測値は、アルミや軟鋼板に関しては比較的高い精度で予測できるが、引張強さにして440MPa級以上の鋼板では単軸引張側で過大評価し、等2軸引張側で過小評価するため、現在のように高強度鋼板を多用した自動車車体の開発には適さない。
【0022】
また、FLDは変形経路に依存し大きく変化することが知られており、プレス成形やプレス成形での予変形を受けた自動車車体部品の衝突のように、変形経路が大きく変化するような塑性変形過程の破断評価方法としては高い予測精度が期待できない。しかしながら、最近、桑原ら(非特許文献2,3を参照)は、アルミ押し出し材や軟鋼板を対象に、応力空間内で表記した破断限界線を用いると変形の経路によらず、破断限界をほぼ一義的に表現できることを実験と解析で検証している。これら知見は、アルミや軟鋼板に関するものであり、引張強さにして440MPa級以上の鋼板では明らかにされていない。
【0023】
そこで本発明者らは、440MPa以上の引張強さの高強度鋼板について詳細な実験を行い、以下の事項に初めて想到した。
(1)比例負荷経路で得られる歪み空間のFLDは、単軸引張試験から得られる応力―歪み曲線と素材の板厚、もしくは応力―歪み曲線と素材の板厚および応力増分依存性を規定するパラメータKCを用いて高い精度で予測することができ、これにより多種の鋼板メニューと板厚に対して歪み空間でのFLDデータベースを簡便かつ効率的に構築することができること。
(2)この比例負荷経路で得られる歪み空間でのFLDを応力空間に変換し、応力空間で破断を判定することにより1つ以上の変形経路変化を含む過程における破断判定が可能なこと。
【0024】
−第1の実施形態の概括的構成−
以下、本実施形態の概括的構成について説明する。
【0025】
(歪み空間の破断限界線の取得方法)
先ず、実験的に歪み空間の破断限界線を測定する手法について説明する。
以下の表1に示す機械的特性値と材料パラメータを持つ金属材料からなる鋼板を対象として、比例負荷実験により破断限界歪みを測定した。ここで、tは薄板の厚み、YPは降伏強さ、TSは引張り強さ、U.Elは均一伸び、Elは全伸び、rmは平均r値(ランクフォード値を示し、圧延方向のr値をr0,圧延方向に対し45゜方向のr値をr45,圧延方向に対し90゜方向のr値をr90とした場合、rm=(r0+2r45+r90)/4で表される。)、K,ε0,nは単軸引張試験から得られる応力−ひずみ曲線を
【数1】
の関数式にフィッティングしたときに得られる材料パラメータを表す。比例負荷実験における破断限界歪みは、スクライブドサークル径を6mmとし、単軸引張、中島法(テフロン(登録商標)シートを用いた球頭張出し)、液圧バルジ試験での破断歪みを測定した。
図3に、上記の実験により測定した歪み空間の破断限界線を含むFLDを示す。
【0026】
【表1】
【0027】
次に、材料の機械的特性値から理論的に歪み空間の破断限界線を推定する手法について説明する。
FLD推定方法としては、Hillの局部くびれモデルとSwiftの拡散くびれモデルの併用、シュテーレン−ライスモデル(1975、J.Mech.Phys.Solids、23、421)などがあり、Keelerの経験則で板厚の影響を補正することで得られる。以下に、具体的な計算方法を説明する。まず、
【数2】
を求めるためのデータを採取するが、試験方法としては単軸引張試験が簡便であり好ましい。単軸引張試験から得られる応力―歪み曲線から、
【数3】
として適当な材料パラメータを含む関数式にフィッティングして材料パラメータを決定すればよい。近似の精度が高く、薄鋼板の数値シミュレーションでよく用いられるn乗硬化則を用いれば
【数4】
で表現できる。
【0028】
破断限界歪みは、n乗硬化則と降伏曲面にMisesの降伏関数
【数5】
を用いると、Hillの局部くびれは
【数6】
Swiftの拡散くびれは
【数7】
で与えられる。ただし、Hillの理論は2軸引張では局部くびれが得られないため
【数8】
の範囲で用い、ρ>0の範囲ではSwiftの拡散くびれを適用する。図3では、理論的に計算した局部くびれ限界を、板厚をt0(mm)として、Keelerの経験則
【数9】
を用いて板厚の影響を補正したFLDを示す。
【0029】
Swiftの拡散くびれは、等2軸引張近傍で破断限界を小さく見積もる傾向があり改善が必要である。従って、分岐理論をベースにHillの局部くびれモデルを拡張したシュテーレン−ライスモデルを用いる方が好ましい。シュテーレン−ライスモデルは、n乗硬化則と降伏曲面にMisesの降伏曲面に対する全歪み理論の増分表示を用いる場合に、ρ≧0の範囲で破断限界歪みは
【数10】
で与えられる。
【0030】
図4に、シュテーレン−ライスモデルを用いて計算した歪み空間の破断限界線を含むFLDを示す。
Swiftの拡散くびれモデルより予測精度に大幅な改善が見られるものの、十分な精度を確保することは困難である。伊藤ら(非特許文献4を参照)は、Misesの2次降伏関数を塑性ポテンシャルとする垂直則では応力増分テンソルと塑性歪み増分テンソルが1対1に対応せず、応力方向の急激な変化に対して塑性歪み増分方向が追従しないという欠点を克服するため、塑性歪み増分テンソルの方向が応力増分テンソルに依存する構成式を提案している。この構成式では、塑性歪み増分の応力増分依存性を規定するパラメータKCが必要であるが、KCの物理的背景は不明瞭であり、パラメータの導出方法についても提案されていない。
【0031】
そこで、本発明者らは以下の表2に示す440MPa〜980MPa級の高強度鋼板について実験を行い調べた結果、以下の事項に初めて想到した。
(1)等2軸引張変形での破断限界最大主歪みε1と破断限界最小主歪みε2の測定値に基づいて材料パラメータKCを同定すれば高い精度でFLDを予測できること。
(2)KCは板厚に依存しないため材料の引張り強さや鋼板の強化機構ごとに必要最低限のKCを求めておけばよいこと。
【0032】
図5に、表2に示す590MPa級の析出強化型鋼板に関して、前述した方法でKCを求め、シュテーレン−ライスモデルをベースに応力増分依存則を用いて計算したFLDを示す。
なお、当然のことながら、Keelerの板厚補正則の代わりに実験により測定した平面歪みでの破断限界歪みε1*を用いて補正する方がより高い予測精度を確保することができる。しかしながら、素材の単軸引張試験による応力―歪み曲線のみで多種の鋼板メニューと板厚に対するFLDデータベースを構築できるという観点からは、Keelerの板厚補正則を用いた方が効率的である。
【0033】
【表2】
【0034】
(歪み空間の破断限界線から応力空間の破断限界線に変換する方法)
表1に示す鋼板を対象に、比例負荷経路での破断限界線は上記した方法で予測し、変形経路変化下での破断限界線は、1次変形として圧延方向に10%の引張を施した後、1次引張方向より90゜の方向が最大主応力となるよう単軸引張、中島法(テフロン(登録商標)シートを用いた球頭張出し)、液圧バルジ試験により破断歪みを測定した。
【0035】
歪み空間から応力空間への変換は、(1)体積一定則、(2)Misesの降伏関数、(3)加工硬化則による等方硬化、(4)垂直則、(5)平面応力、を仮定することで換算することができる。
【0036】
以下に、歪み空間の破断限界線を応力空間に変換する具体的な方法について説明する。歪み空間のFLDは破断限界を与える最大主歪みε11を最小主歪みε22毎に示した図であり、板厚歪みε33は、これらと体積一定則
【数11】
より求めることができる。通常、成形解析や衝突解析で用いられている構成則では、変形の経路によらず相当塑性応力σeqは相当塑性歪みεeqの一義的関数と仮定する等方硬化則を用いており、Swiftの加工硬化則を用いれば
【数12】
で表現できる。加工硬化の関数としては例えば、相当塑性歪みの高次多項式やその他の形式を用いてもよいが、近似の精度が高く、薄鋼板の数値シミュレーションでよく用いられるSwiftの式を用いるのが好ましい。相当塑性歪みεeqは、例えば降伏曲面にMisesの降伏関数を用いれば
【数13】
として表すことができる。
【0037】
なお、必要に応じて高度な異方性降伏関数を用いても良いが、パラメータが多く、処理の際に板面内の方向まで考慮する必要が生じるため、煩雑な割には精度の向上代が十分ではなく、実用上は面内等方性を仮定した降伏関数で十分である。
【0038】
次に、偏差応力成分σij'は、図6に示す降伏曲面に対する塑性歪み増分の垂直則
【数14】
により得られる。最後に平面応力(σ33=0)を仮定することで応力成分σijは
【数15】
より得られる。
【0039】
図7は、上述した方法で予測したFLDと実験とにより測定した変形経路変化下での破断限界歪みを、それぞれ応力空間に変換した結果を示す。歪み空間のFLDは変形経路に依存して破断限界は大きく変化するが、応力空間に表記した破断限界線は、変形経路によらず単一の破断限界線で表現できる。従って、複数の塑性変形経路を経る材料の破断限界線は、比例負荷経路で得られる歪み空間のFLDを応力空間に変換すればよい。実用上、多種の鋼板メニューと板厚に関する破断限界線のデータベースは、単軸引張試験から得られる応力―歪み曲線と素材の板厚から歪み空間の成形限界線図(FLD)を求め、これを応力空間に変換することで破断限界線を求めることができる。
【0040】
更に本発明者らは、表2に示す440MPa〜980MPa級の高強度鋼板について実験を行い調べた結果、材料の引張強さや強化機構によらず、幅広い範囲で単一の破断限界線となることを明らかにした。この応力空間に表記した破断限界線を用いることで、プレス成形やプレス成形での予変形を受けた自動車車体部品の衝突のように、変形経路が大きく変化するような塑性変形過程の破断評価を高い精度で予測することができる。
【0041】
−具体的な緒実施例−
以下、上述した本実施形態の概括的構成を踏まえ、具体的な緒実施例について図面を参照しながら説明する。
【0042】
(実施例1)
図8は、本実施形態のネットワークシステムの全体構成を示す模式図である。図中、100はインターネットやイントラネット等のネットワークである。
【0043】
101はユーザ端末であり、後述するサーバコンピュータ102を利用して所望の材料データを選択し、その材料データファイルを得るために使用される。なお、図8にはユーザ端末101を1つしか示さないが、ネットワーク100上に複数存在するものである。
【0044】
102はサーバコンピュータであり、詳細は後述するが、ユーザ端末101からの金属材料からなる薄板に関する所定の材料データの入力に応じて、当該薄板の破断限界を判定するために用いる破断限界線のデータを作成し、ユーザ端末101に提供する。本実施形態においては、このサーバコンピュータ102により、破断限界取得装置の機能が実現される。
【0045】
図9は、サーバコンピュータ102のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
201はCPUであり、データの送受信、結合等を行うため、バス206を介して各種構成要素を制御する。このバス206を介して、各種構成要素間相互のアドレス信号、制御信号、各種データ等の転送が行われる。
【0046】
202はROMであり、CPU201の制御手順(コンピュータプログラム)を記憶する。CPU201がこの制御手順を実行することにより、データの転送、結合等の処理を実行することが可能となる。203はRAMであり、データの送受信、結合等のためのワークメモリ、各種構成要素を制御するための一時記憶機能として用いられる。
204はハードディスク記憶装置等の記憶装置であり、205はインターネット等のネットワーク100に接続するためのネットワークインターフェースである。
【0047】
図10は、ユーザ端末101のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
同図において、301はCPUであり、データの送受信、結合等を行うため、バス308を介して各種構成要素を制御する。このバス308を介して、各種構成要素間相互のアドレス信号、制御信号、各種データ等の転送が行われる。
【0048】
302はROMであり、CPU301の制御手順(コンピュータプログラム)を記憶する。CPU301がこの制御手順を実行することにより、データの転送、結合等の処理を実行することが可能となる。303はRAMであり、データの送受信、結合等のためのワークメモリ、各種構成要素を制御するための一時記憶機能として用いられる。
【0049】
304は保存用記憶装置である。305はインターネット等のネットワーク100に接続するためのネットワークインターフェースである。306はキーボードやマウス等の入力装置であり、電子文書等を入力するのに用いられる。307はディスプレイ等の表示装置であり、各種画面を表示するのに用いられる。
【0050】
図11は、実施例1による破断限界取得装置の機能を有するサーバコンピュータ102の主要構成を示すブロック図である。
この破断限界取得装置は、金属材料からなる薄板について、1つ以上の変形経路変化を含む過程における薄板の破断限界を判定するものであり、比例負荷経路で得られた歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する変換部1と、変換部1により得られた応力空間の破断限界線を応力FLDとして表示する表示部2とを備えて構成されている。
【0051】
本例では、歪み空間の破断限界線は実験的に測定される。具体的には、歪み空間の破断限界線は、薄板について複数の面内歪み比を比例負荷実験により求めた後、それぞれの歪み比における破断限界最大主歪みε1及び破断限界最小主歪みε2の測定値を用いて得られるものである。
【0052】
変換部1は、歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する際に、塑性歪み増分方向が降伏曲面に対して垂直方向に規定される塑性歪み増分の垂直則を用いて上記の変換を行う。具体的には、上述したように、相当塑性歪みεeqと各歪み成分εijとの関係式であるMisesの降伏関数
【数16】
を用いる。
【0053】
図12は、実施例1による破断限界取得方法の各ステップを示すフロー図である。本例では、上記のように、歪み空間の破断限界線は実験的に測定される。
先ず、ユーザによりユーザ端末101に入力された材料データ、例えば薄板の材料と連動して、変換部1は、例えばMisesの降伏関数を用いて、実験的に測定された歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する(ステップS1)。
【0054】
続いて、ステップS1で得られた応力空間の破断限界線は、表示部2に応力FLDとして表示されるとともに、そのデータがユーザ端末101へ送信される(ステップS2)。
【0055】
以上説明したように、本例によれば、1つ以上の変形経路変化を含む過程における薄板の破断限界を判定するに際して、ユーザ端末101に入力された当該薄板に関する所期の材料データに基づいて、サーバコンピュータ102により破断限界線を容易且つ効率的に求め、高い予測精度をもって破断限界を判定し、当該判定結果をユーザ端末101に提供する。この構成により、極めて高い利便性をもって破断限界情報を取得することができる。本例により、プレス成形や衝突時の破断の危険性を定量的に評価することができ、材料・工法・構造を同時に考慮した自動車車体の効率的・高精度な開発が可能となる。
【0056】
(実施例2)
図13は、実施例2による破断限界取得装置の機能を有するサーバコンピュータ102の主要構成を示すブロック図である。なお、実施例1の図11と同一の構成部材については同符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0057】
この破断限界取得装置は、金属材料からなる薄板について、1つ以上の変形経路変化を含む過程における薄板の破断限界を判定するものであり、比例負荷経路で歪み空間の破断限界線を推定する第1の推定部11と、得られた歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する変換部1と、変換部1により得られた応力空間の破断限界線を応力FLDとして表示する表示部2とを備えて構成されている。
【0058】
第1の推定部11は、単軸引張試験から得られる応力−歪み曲線の近似式
【数17】
と、局部くびれモデル
【数18】
と、拡散くびれモデル
【数19】
とを併用して歪み空間のくびれ発生限界を求め、上述したように、比例負荷経路で歪み空間の破断限界線を推定する。
【0059】
図14は、実施例2による破断限界取得方法の各ステップを示すフロー図である。
先ず、ユーザにより、ユーザ端末101に材料データ、例えば薄板の材料及び機械的特性値(t,YP,TS,El,U.El,r値、n乗硬化則/Swift硬化則)が入力される。
【0060】
第1の推定部11は、ユーザ端末101に入力された薄板の材料及び機械的特性値に基づき、比例負荷経路で歪み空間の破断限界線を推定する(ステップS11)。
【0061】
続いて、変換部1は、機械的特性値として入力されたn乗硬化則/Swift硬化則、及び例えばMisesの降伏関数等を用いて、第1の推定部11により推定された歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する(ステップS12)。
【0062】
続いて、ステップS12で得られた応力空間の破断限界線は、表示部2に応力FLDとして表示されるとともに、そのデータがユーザ端末101へ送信される(ステップS13)。
【0063】
以上説明したように、本例によれば、1つ以上の変形経路変化を含む過程における薄板の破断限界を判定するに際して、ユーザ端末101に入力された当該薄板に関する所期の材料データに基づいて、サーバコンピュータ102により破断限界線を容易且つ効率的に求め、高い予測精度をもって破断限界を判定し、当該判定結果をユーザ端末101に提供する。この構成により、極めて高い利便性をもって破断限界情報を取得することができる。本例により、プレス成形や衝突時の破断の危険性を定量的に評価することができ、材料・工法・構造を同時に考慮した自動車車体の効率的・高精度な開発が可能となる。
【0064】
(変形例)
ここで、実施例2の変形例について説明する。この変形例では、図15に示すように、実施例2の破断限界取得装置において、第1の推定部11の代わりに第2の推定部12が設けられている。
【0065】
第2の推定部12は、第1の推定部11と同様に、比例負荷経路で歪み空間の破断限界線を推定するものであるが、上述したように、
【数20】
と、塑性歪み増分則として塑性歪み増分テンソルの方向が応力増分テンソルに依存する構成式と、塑性歪み増分テンソルの方向を規定する材料パラメータKCと、シュテーレン−ライスの局所くびれモデルとを用いて歪み空間のくびれ発生限界を求め、比例負荷経路で歪み空間の破断限界線を推定する。ここで、第2の推定部12は、上述したように、1つ以上の破断限界最大主歪みε1及び破断限界最小主歪みε2の測定値に基づいて、前記材料パラメータKCを同定する。
【0066】
以上説明したように、本例によれば、実施例2の奏する諸効果に加え、実施例2に比較して、破断予測についてより優れた十分な精度を確保することができ、破断限界線を更に容易且つ効率的に求め、高い予測精度をもって破断限界を判定することが可能となる。
【0067】
(実施例3)
本例では、図8に示したネットワークシステムの全体構成、及び図10に示したユーザ端末101のハードウェア構成については、上述の実施例1,2(及び変形例)と同様であるが、サーバコンピュータ102の構成が若干異なる。
【0068】
本例におけるサーバコンピュータ102は、図16に示すように、図9に示したサーバコンピュータ102のハードウェア構成に加え、記憶装置204において、当該薄板に関する出荷試験値のデータベース204aが構築されている。このデータベース204aには、当該薄い板に関する各種の特性データ、例えばt,YP,TS,El,U.El,r値、応力−歪み多直線データが格納されている。通常、応力−ひずみ曲線は多数の点に離散化されたデータとして引張試験から得ることができる。このデータが応力−ひずみの多点データであり、これら多点データを直線で結んだものを多直線データと呼ぶ。図17に、応力−歪み多直線データの一例を示す。図17では、横軸を歪み量、縦軸を応力とする。
【0069】
図18は、実施例3による破断限界取得装置の機能を有するサーバコンピュータ102の主要構成を示すブロック図である。なお、実施例1の図11と同一の構成部材については同符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0070】
この破断限界取得装置は、金属材料からなる薄板について、1つ以上の変形経路変化を含む過程における薄板の破断限界を判定するものであり、ユーザ端末101から入力された材料データ、例えば当該薄膜の材料、規格値である強度及び厚みに基づき、上記の特性データを記憶するデータベース204aを用いて、歪み空間の破断限界線を推定する第3の推定部13と、各特性データの所定規格内における品質ばらつき分布の上限値、下限値及び平均値をそれぞれ算出する算出部14と、算出された各特性データの上限値、下限値及び平均値に基づき、歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する変換部1と、変換部1により得られた応力空間の破断限界線を応力FLDとして表示する表示部2とを備えて構成されている。
【0071】
図19は、実施例3による破断限界取得方法の各ステップを示すフロー図である。
先ず、ユーザにより、ユーザ端末101に材料データ、例えば薄板の材料、規格値である強度及び厚みが入力される。
【0072】
第3の推定部13は、ユーザ端末101に入力された薄板の材料、規格値である強度及び厚みに基づき、データベース204aにより各種の特性データを用いて、比例負荷経路で歪み空間の破断限界線を推定する(ステップS21)。
【0073】
続いて、算出部14は、各特性データの所定規格内における品質ばらつき分布の上限値、下限値及び平均値をそれぞれ算出する(ステップS22)。
【0074】
続いて、変換部1は、算出された各特性データの上限値、下限値及び平均値に基づき、歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する(ステップS23)。
【0075】
続いて、ステップS23で得られた応力空間の破断限界線は、表示部2に応力FLDとして表示されるとともに、そのデータがユーザ端末101へ送信される(ステップS24)。
【0076】
以上説明したように、本例によれば、1つ以上の変形経路変化を含む過程における薄板の破断限界を判定するに際して、ユーザ端末101に入力された当該薄板に関する所期の材料データに基づいて、サーバコンピュータ102によりデータベース204aを用いて、破断限界線を容易且つ効率的に求め、高い予測精度をもって破断限界を判定し、当該判定結果をユーザ端末101に提供する。この構成により、極めて高い利便性をもって破断限界情報を取得することができる。本例により、プレス成形や衝突時の破断の危険性を定量的に評価することができ、材料・工法・構造を同時に考慮した自動車車体の効率的・高精度な開発が可能となる。
【0077】
[第2の実施形態]
本実施形態では、本発明を金属材料からなる薄板の破断予測に適用した具体例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0078】
成形性評価時の破断に対する余裕度は、一般に、板厚減少率やFLDを用いて判断され、これは衝突解析での破断予測にも用いることができる。このうち、FLDは変形経路に依存し大きく変化することが知られており、プレス成形やプレス成形での予変形を受けた自動車車体部品の衝突のように、変形経路が大きく変化するような塑性変形過程の破断評価方法としては高い予測精度が期待できない。
【0079】
しかしながら、最近、桑原ら(非特許文献2,3を参照)は、アルミ押し出し材や軟鋼板を対象に、応力空間内で表記した破断限界線を用いると変形の経路によらず、破断限界をほぼ一義的に表現できることを実験と解析で検証している。これら知見は、アルミや軟鋼板に関するものであり、引張強さにして440MPa級以上の鋼板では明らかにされておらず、現在のように高強度鋼板を多用した自動車車体の開発には用いることはできない。
【0080】
そこで本発明者らは、以下の事項に初めて想到した。
(1) 440MPa以上の引張強さの高強度鋼板について詳細な実験を行い、応力空間内で表記した破断限界線を用いると変形の経路によらず、単一の破断限界線で表現できること。
(2) 応力空間に表記した破断限界線を用いることで、プレス成形やプレス成形での予変形を受けた自動車車体部品の衝突のように、変形経路が大きく変化するような塑性変形過程の破断評価を高い精度で予測できること。
【0081】
−本実施形態の概括的構成−
以下、本実施形態の概括的構成について説明する。
【0082】
(応力空間の破断限界線の取得方法)
第1の実施形態と同様に、表1に示す鋼板を対象に、(1)比例負荷経路での破断限界歪み、(2)変形経路変化下での破断限界歪みを測定した。ここで、tは薄板の厚み、YPは降伏強さ、TSは引張り強さ、U.Elは均一伸び、Elは全伸び、rmは平均r値(ランクフォード値を示し、圧延方向のr値をr0,圧延方向に対し45゜方向のr値をr45,圧延方向に対し90゜方向のr値をr90とした場合、rm=(r0+2r45+r90)/4で表される。)、K,ε0,nは単軸引張試験から得られる応力−ひずみ曲線を
【数21】
の関数式にフィッティングしたときに得られる材料パラメータを表す。
【0083】
比例負荷経路での破断限界歪みは、スクライブドサークル径を6mmとし、単軸引張、中島法(テフロン(登録商標)シートを用いた球頭張出し)、液圧バルジ試験での破断歪みを測定した。一方、変形経路変化下での破断限界線は、1次変形として圧延方向に10%の引張を施した後、1次引張方向より90゜の方向が最大主応力となるよう単軸引張、中島法により破断歪みを測定した。
【0084】
歪みから応力へは、(1)体積一定則、(2)Misesの降伏関数、(3)加工硬化則による等方硬化、(4)垂直則、(5)平面応力を仮定することで換算することができる。以下に、歪み空間の破断限界線を応力空間に変換する具体的な方法について説明する。
【0085】
歪み空間のFLDは破断限界を与える最大主歪みε11を最小主歪みε22ごとに示した図であり、板厚歪みε33はこれらと体積一定則
【数22】
より求めることができる。通常、成形解析や衝突解析で用いられている構成則では、変形の経路によらず相当塑性応力σeqは相当塑性歪みεeqの一義的関数と仮定する等方硬化則を用いており、Swiftの加工硬化則を用いれば
【数23】
で表現できる。加工硬化の関数としては例えば、相当塑性歪みの高次多項式やその他の形式を用いてもよいが、近似の精度が高く、薄鋼板の数値シミュレーションでよく用いられるSwiftの式を用いるのが好ましい。
【0086】
相当塑性歪みεeqは、例えば降伏曲面にMisesの降伏関数を用いれば
【数24】
として表すことができ、また面内等方性を仮定したHillの2次降伏関数を用いれば
【数25】
により得られる。Hillの2次降伏関数を用いる場合には塑性異方性パラメータr値が必要であり、具体的には圧延方向から0゜、45゜、90゜の方向のr値(r0,r45,r90)から、r=(r0+2r45+r90)/4により得られる。
【0087】
なお、必要に応じて高度な異方性降伏関数を用いても良いが、パラメータが多く、処理の際に板面内の方向まで考慮する必要が生じるため、煩雑な割には精度の向上代が十分ではなく、実用上は面内等方性を仮定した降伏関数で十分である。いずれの降伏関数でも、相当塑性歪み増分dεeqを歪み経路で積分した相当塑性歪みεeqと加工硬化則を用いることで、変形経路変化を考慮した相当塑性応力σeqを求めることができる。
【0088】
次に、偏差応力成分σij'は、図6に示した降伏曲面の等方硬化と垂直則
【数26】
により得られる。最後に平面応力(σ33=0)を仮定することで応力成分σijは
【数27】
より得られる。
【0089】
なお、図20に示すように、歪みの主軸と圧延方向が一致しない場合は下記に示す座標変換操作が必要である。図中、xiは材料座標系の座標軸であるx1軸//RD、x2軸//TD、x3軸//NDを表し、Xiはn次変形での歪みの主軸を表す。
座標変換テンソルをRとすると、(1)実験座標系で計測した歪み成分εijは座標変換則により材料座標系を基準座標とした歪み成分
【数28】
へ変換できる。次に、(2)材料座標系を基準座標系としてモデル化されている降伏関数と垂直則から
を求め、最後に、(3)座標変換則を用いて実験座標系を基準座標とした応力成分
【数29】
を求めることができる。
【0090】
図7に、実験により測定したFLDと、これを前記した方法で最大主応力と最小主応力の応力空間に変換した破断限界線を示す。
歪み空間のFLDは変形経路に依存し破断限界線は大きく変化するが、応力空間に表記した破断限界線は単一の破断限界線となる。
【0091】
更に本発明者らは、以下の表3に示す440MPa〜980MPa級の高強度鋼板について実験を行い調べた結果、材料の引張強さや強化機構によらず、幅広い範囲で単一の破断限界線となることを明らかにした。この応力空間に表記した破断限界線を用いることで、プレス成形やプレス成形での予変形を受けた自動車車体部品の衝突のように、変形経路が大きく変化するような塑性変形過程の破断評価を高い精度で予測することができる。
【0092】
なお、当然のことながら、中島法以外の実験方法で測定したFLDを応力空間に変換した破断限界線を用いても良いし、Hillの局部くびれモデルやSwiftの拡散くびれモデル、Marciniak-Kuczynski法、シュテーレン−ライスモデルなどの理論FLDを応力空間に変換した破断限界線を破断予測に用いても良い。
【0093】
【表3】
【0094】
(破断限界の評価方法)
有限要素法(FEM)による数値シミュレーションで材料の破断を予測するには、以下に示す技術的な課題がある。
(1)実験により測定したFLDは、評点間距離や摩擦状態の影響を強く受けるため、これを破断判定基準として用いる場合、数値シミュレーションの解析条件に合わせ補正が必要である。
(2)数値シミュレーションでは、均一変形までの歪みの増加は正確にシミュレーションできるが、板厚程度の領域に生じる局部くびれや、さらに狭い領域内に歪みが局所化したせん断帯をシミュレーションするためには有限要素を十分細分化しなければならず、現状の計算機能力では予測が困難である。
(3)汎用ソフトウェアで標準的に採用されている材料構成則では歪みの局所化が遅れるため、実測したFLDを破断判定基準とした場合、危険側での評価を与える。
【0095】
本発明者らは、これら課題に対し鋭意研究した結果、数値シミュレーションに適した破断判定基準を明らかにした。表1に示す鋼板を対象に、球頭張出し成形のFEM数値シミュレーションを行い、要素サイズや材料構成式が歪みの局所化過程におよぼす影響を調査した。
【0096】
図21に、ポンチストロークとプレス成形により導入された最大主歪みの関係を示す。
成形初期からポンチストローク25mm程度までは要素サイズ、材料構成式の影響がほとんど現れないが、歪みの局所化が始まる25mm以降では、これらの影響が顕著となる。
【0097】
図22に、種々の解析条件で数値シミュレーションを行い、実験から得られたFLDと局部くびれ発生限界を破断判定基準として用いたときの予測精度の比較を示す。
破断判定基準に実測したFLDを用いた場合、歪みの局所化過程を正確にシミュレーションできないため、破断の予測精度は高くない。一方、局部くびれ発生限界を破断限界に用いた場合、要素サイズや用いる材料構成式によらず比較的高い精度で予測可能であり、かつ安全側の評価を得ることができる。これは、薄鋼板の延性破壊は局部くびれにより変形が局所化した位置で発生し、局部くびれが発生すると極めて短時間で破断に至るため、実用上は局部くびれ発生限界を破断判定基準に用いればよいことを示唆している。
【0098】
局部くびれ発生限界は塑性不安定性の枠組みで取り扱うことができ、Hillの局部くびれモデルやSwiftの拡散くびれモデル、Marciniak-Kuczynski法、シュテーレン−ライスモデルなどの理論FLDで予測できる。
【0099】
この事例で示すように、本発明者らは鋭意研究をした結果、有限要素法を用いた数値解析シミュレーションで破断を評価する場合、歪み空間でのくびれ開始線を応力空間に変換した破断限界線を破断判定基準に用いることで高い予測精度が確保できることに想到した。
【0100】
(破断限界の評価方法の事例)
表1に示す鋼板を対象に、1次変形として圧延方向に10%の引張を施した後、球頭張出し成形により平面歪み変形を施すような非線形経路での破断予測事例を示す。
図23に数値シミュレーションにより得られた成形過程の応力履歴と歪み空間でのくびれ開始線を応力空間に変換した破断限界線の関係を示す。
【0101】
数値シミュレーションに動的陽解法を用いる場合、得られる応力は時間ステップ内での繰り返し計算を行わず、微小時間刻みで応力波の伝播を解いていくため大きく振動しながら増加する。この応力と破断限界応力の位置関係を比較し破断を評価する方法では高い予測精度を確保することが困難である。
【0102】
本発明者らは鋭意研究をした結果、数値シミュレーションに動的陽解法を用いる場合、塑性歪みをポスト処理で応力へ変換することで応力の振動を回避でき、精度良く破断を判定する方法に想到した。
【0103】
図24に本発明方法により破断を予測した結果を示す。
従来のFLDによる破断予測方法では、変形経路に依存し破断限界線が大きく変化するため高い精度で予測することは困難であるが、本発明を適用することで変形経路が変化する場合でも良好な精度で破断を予測できることが判る。なお、本発明は、有限要素法を用いた数値シミュレーションの代わりに、実験の歪み測定結果を応力に変換した値と破断限界線の位置関係を比較することでも破断を評価することが可能である。
【0104】
(破断予測方法を衝突解析に適用した例)
表1に示す鋼板を対象に、図25に示すハット断面で長さ900mmの部材の3点曲げ衝突解析において本発明の破断予測方法を適用した。
【0105】
先ず、動的陽解法の数値シミュレーションを用いてハット形状の絞り曲げ成形の解析を行った。図26に成形シミュレーションの結果を示す。次に、フランジ部で平板と30mm間隔の点溶接処理(2接点間の相対変位を固定)を施した衝突解析用有限要素モデルを作成した。
【0106】
更に、この衝突解析用有限要素モデルに、得られた成形解析結果を反映させ、衝突解析を動的陽解法による数値シミュレーションにて行った。プレス成形後の衝突過程での材料の破断を評価する場合、プレス成形の数値シミュレーションにより得られる板厚と相当塑性歪み、あるいは板厚と相当塑性歪み、応力テンソル、歪みテンソルを衝突解析の初期条件へ引き継ぐことで成形時の変形履歴を考慮することができる。
【0107】
なお、当然のことながら、数値シミュレーションの代わりに実験によりプレス成形品の板厚、相当塑性歪みを測定し、これらの何れかを衝突解析の初期条件へ引き継ぐことで成形時の変形履歴を考慮することができる。
【0108】
これまでの事例では、プレス成形のような準静的な塑性変形過程を取り扱っていたが、衝突解析では材料の高速変形挙動を考慮する必要がある。鉄鋼材料には歪み速度依存性があり、変形速度が速いと変形抵抗が上昇することが知られている。自動車の衝突時、変形が集中する稜線部では歪み速度が1000/sまで達することがあり、衝突解析の予測精度を確保するためには正確な高速変形挙動を考慮する必要がある。
【0109】
一般に、有限要素法による数値シミュレーションで衝突解析を行う場合、歪み速度に応じた応力の増加を表現する材料モデルとしてCowper-Symonds式を用いる。
図27に相当塑性歪みと歪み速度に応じた相当応力の関係を、図28に応力空間での動的な破断応力限界線と衝突シミュレーションから得られる動的な応力の位置関係をそれぞれ示す。
【0110】
衝突シミュレーションから得られる動的応力を用いて破断を評価する場合、歪み速度に応じて無数の動的な破断応力限界線が必要であり、実用上、破断を予測することは困難である。
【0111】
本発明者らは、この課題を解決すべく鋭意研究をした結果、衝突シミュレーションから得られる塑性歪みを変換して得た基準歪み速度での応力を用い、破断判定に用いるクライテリアは単一の基準歪み速度での破断応力限界線のみを利用すればよいことに想到した。検討の結果、基準歪み速度は準静的な歪み速度として良いことが判った。準静的な歪み速度の範囲は材料により異なるが実用上0.001/s〜1/sの範囲内で計測した破断限界線を用いて良い。
【0112】
図29に本発明の方法により破断を予測した結果を示す。
従来のFLDによる破断予測方法ではプレス成形での予変形を受けた後の衝突現象のように変形経路が大きく変化するような塑性変形過程は高い精度で予測することが困難であったが、本発明を適用することでプレス成形後の衝突プロセスでも良好な精度で破断を予測できることが判る。
【0113】
以上の例に示したように、本発明によれば、薄鋼板のプレス成形、衝突プロセスを有限要素法によりシミュレーションし、得られたデータから破断の危険性を定量的に評価できる。ここでは、変形応力の歪み速度依存性としてCowper-Symonds式を代表例として用いたが、歪み速度依存性を考慮できる任意の構成式、例えばm乗硬化式、Johnson-Cook式等を用いても本発明の有効性は変わらない。
【0114】
−具体的な実施例−
以下、上述した本発明の概括的構成を踏まえ、具体的な実施例について図面を参照しながら説明する。
本例では、図8に示したネットワークシステムの全体構成、図9に示したサーバコンピュータ102のハードウェア構成、及び図10に示したユーザ端末101のハードウェア構成については、第1の実施形態による実施例1,2(及び変形例)と同様であるが、サーバコンピュータ102の機能が異なる。
【0115】
図30は、実施例2による破断予測装置の機能を有するサーバコンピュータ102の主要構成を示すブロック図である。
この破断予測装置は、金属材料からなる薄板について、1つ以上の変形経路変化を含む過程における薄板の破断発生の有無を予測するものであり、比例負荷経路で歪み空間の破断限界線を推定する推定部21と、比例負荷経路で得られた歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する変換部22と、応力空間の破断限界線により破断発生の有無を判断する破断判定部23と、破断判定部23による判定結果等を表示する表示部24とを備えて構成されている。
【0116】
推定部21は、例えば単軸引張試験から得られる応力−歪み曲線の近似式
【数30】
と、局部くびれモデル
【数31】
と、拡散くびれモデル
【数32】
とを併用して歪み空間のくびれ発生限界を求め、比例負荷経路で歪み空間の破断限界線を推定する。
【0117】
推定部21は、単軸引張試験から得られる応力−歪み曲線の近似式
【数33】
と、塑性歪み増分則として塑性歪み増分テンソルの方向が応力増分テンソルに依存する構成式と、塑性歪み増分テンソルの方向を規定する材料パラメータKCと、シュテーレン−ライスの局所くびれモデルとを用いて歪み空間のくびれ発生限界を求め、比例負荷経路で歪み空間の破断限界線を推定するようにしても良い。ここで、推定部1は、1つ以上の最大破断限界歪みε1及び最小破断限界歪みε2の測定値に基づいて、材料パラメータKCを同定する。
【0118】
なお、本例では、歪み空間の破断限界線を推定部1を用いて理論的に推定する場合について例示したが、歪み空間の破断限界線を推定部1を用いずに実験的に測定しても良い。具体的には、歪み空間の破断限界線は、薄板について複数の面内歪み比を比例負荷実験により求めた後、それぞれの歪み比における最大破断限界歪みε1及び最小破断限界歪みε2の測定値を用いて得られる。
【0119】
変換部22は、歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する際に、塑性歪みの増分則として降伏曲面の垂直則を用いて上記の変換を行う。具体的には、上述したように、相当塑性歪みεeqと各歪み成分εijとの関係式であるMisesの降伏関数
【数34】
を用いる。
【0120】
破断判定部23は、変換部1により変換された応力空間の破断限界線と、塑性変形過程の有限要素法によるシミュレーションの結果から得られる各部位の歪み状態との位置関係を比較することで評価し、変形過程の歪みがこの限界歪みに達したときに破断、もしくは、その危険性が高いと判断する。ここで、数値解析の手法として有限要素法の1つである動的陽解法を用いる。この場合、動的陽解法により得られる塑性歪みを応力に変換し、応力空間の破断限界線と比較する。
【0121】
なお、破断判定部23は、上記のシミュレーションを行う代わりに、実験により評価された薄板の変形状態から得られた歪みを応力に換算し、応力空間の破断限界線を用いて破断発生の有無を定量的に評価するようにしても良い。
【0122】
ここで、自動車部材の衝突解析のように、薄板に高速変形が生じる場合には、破断判定部23は、薄板の変形応力の速度依存性を考慮して数値解析を実行し、当該数値解析から得られた塑性歪みを変換して基準歪み速度における応力を算出し、基準歪み速度に対応した応力空間の破断限界線と比較する。
【0123】
図31は、本実施例による破断予測方法により、金属材料からなる薄板の成形過程において破断予測を行う場合の各ステップを示すフロー図である。
先ず、ユーザによりユーザ端末101に入力された材料データ、例えば薄板の材料及び機械的特性値(t,YP,TS,El,U.El,r値、n乗硬化則/Swift硬化則)に基づき、推定部21は、比例負荷経路で歪み空間の破断限界線を推定する(ステップS31)。
【0124】
続いて、変換部22は、例えばMisesの降伏関数を用いて、実験的に測定された歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換し、応力FLDを作成するとともに、そのデータをユーザ端末101へ送信する(ステップS32)。
【0125】
続いて、破断判定部23は、変換部21により変換された応力空間の破断限界線と、塑性変形過程の有限要素法(ここでは動的陽解法)によるシミュレーションの結果から得られる各部位の歪み状態との位置関係を比較することで評価し、破断或いはその危険性を判断する(ステップS33)。
【0126】
ステップS33において、限界歪みに達し、薄板に破断が生じる、或いはその危険性が高いと判定された場合には、破断判定部3は、以下の緒処理を実行する(ステップS34)。
要素ID、薄板の板厚、歪み、応力情報をログファイルに出力する。更に、クライテリアに達した要素を消去し、破断後の解析を継続する。
【0127】
続いて、表示部24に以下の各種表示が行われるとともに、そのデータがユーザ端末101へ送信される(ステップS35)。
薄板に破断が生じる危険性がスカラー量でコンター表示される。また、応力空間で破断危険部位の応力履歴及びクライテリアが表示される。併せて、薄板におけるシワ発生の危険性もコンター表示される。ここで、出荷試験値の規格内におけるばらつき(平均値、下限値)に対して、破断の危険性を表示するようにしても良い。
【0128】
一方、ステップS33において、破断が生じる可能性がない、或いはその危険性が低いと判定された場合には、ステップS36においてその旨が表示部23に表示されるとともに、ユーザ端末101へその旨が送信される。
【0129】
図32は、本実施例による破断予測方法により、図31の成形過程における破断予測に引き続き、衝突過程における破断予測を行う場合の各ステップを示すフロー図である。
【0130】
この場合、図31のステップS32で作成された応力FLDを引き継いで用いる。
そして、破断判定部23は、薄板の変形応力の速度依存性を考慮して数値解析を実行し、当該数値解析から得られた塑性歪みを変換して基準歪み速度における応力を算出し、基準歪み速度に対応した応力空間の破断限界線と比較し、破断、もしくは、その危険性を判断する(ステップS41)。
【0131】
このステップS41において、破断判定部23は、図31の成形過程において数値解析により評価された薄板の変形状態を、衝突過程における数値解析の初期条件として引き継ぐ。この変形状態は、薄板の板厚及び相当塑性歪み、或いは板厚、相当塑性歪み、応力テンソル及び歪みテンソルである。
【0132】
ステップS41において、薄板に破断が生じる、或いはその危険性が高いと判定された場合には、破断判定部23は、以下の緒処理を実行する(ステップS42)。
要素ID、薄板の板厚、歪み、応力情報をログファイルに出力する。更に、クライテリアに達した要素を消去し、破断後の解析を継続する。
【0133】
続いて、表示部24に以下の各種表示が行われるとともに、そのデータがユーザ端末101へ送信される(ステップS43)。
薄板に破断が生じる危険性がスカラー量でコンター表示される。また、応力空間で破断危険部位の応力履歴及びクライテリアが表示される。併せて、薄板におけるシワ発生の危険性もコンター表示される。ここで、出荷試験値の規格内におけるばらつき(平均値、下限値)に対して、破断の危険性を表示するようにしても良い。
【0134】
一方、ステップS41において、薄板に破断が生じる可能性がない、或いはその危険性が低いと判定された場合には、ステップS44においてその旨が表示部24に表示されるとともに、そのデータがユーザ端末101へ送信される。
【0135】
以上説明したように、本実施例によれば、1つ以上の変形経路変化を含む過程における薄板の破断発生の有無を予測するに際して、ユーザ端末101に入力された当該薄板に関する所期の材料データに基づいて、サーバコンピュータ102により破断限界線を容易且つ効率的に求め、高い予測精度をもって破断発生の有無を予測して、当該予測結果をユーザ端末101に提供することを可能とする。この構成により、極めて高い利便性をもって破断予測情報を取得することができる。これにより、プレス成形や衝突時の破断の危険性を定量的に評価することができ、材料・工法・構造を同時に考慮した自動車車体の効率的・高精度な開発が実現する。
【0136】
なお、本実施形態において、第1の実施形態で説明した破断限界取得方法の各ステップを実行した後、サーバコンピュータ102により、取得された応力空間の破断限界線のデータを用いて、破断発生の有無を予測するように構成しても良い。即ち、図12のステップS1を実行した後、図31のステップS33〜S36を実行する構成や、図14のステップS11(実施例2の変形例における第2の推定部12を用いる)〜S12を実行した後、図31のステップS33〜S36を実行する構成、図19のステップS21〜S23を実行した後、図31のステップS33〜S36を実行する構成等が考えられる。
【0137】
(本発明を適用した他の実施形態)
上述した第1の実施形態における実施例1,2(及び変形例)、実施例3等による破断限界取得装置を構成する各構成要素(表示部2を除く)の機能、及び第2の実施形態における実施例等による破断予測装置を構成する各構成要素(表示部24を除く)の機能は、コンピュータのRAMやROMなどに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。同様に、第1の実施形態における破断限界取得方法の各ステップ(図12のステップS1〜S2,図14のステップS11〜S13、図19のステップS21〜S24等)、及び第2の実施形態における破断予測方法の各ステップ(図31のステップS31〜S36,図32のステップS41〜S44等)は、コンピュータのRAMやROMなどに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。このプログラム及び当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は本発明に含まれる。
【0138】
具体的に、前記プログラムは、例えばCD−ROMのような記録媒体に記録し、或いは各種伝送媒体を介し、コンピュータに提供される。前記プログラムを記録する記録媒体としては、CD−ROM以外に、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、光磁気ディスク、不揮発性メモリカード等を用いることができる。他方、前記プログラムの伝送媒体としては、プログラム情報を搬送波として伝搬させて供給するためのコンピュータネットワークシステムにおける通信媒体を用いることができる。ここで、コンピュータネットワークとは、LAN、インターネットの等のWAN、無線通信ネットワーク等であり、通信媒体とは、光ファイバ等の有線回線や無線回線等である。
【0139】
また、本発明に含まれるプログラムとしては、供給されたプログラムをコンピュータが実行することにより上述の実施形態の機能が実現されるようなもののみではない。例えば、そのプログラムがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)或いは他のアプリケーションソフト等と共同して上述の実施形態の機能が実現される場合にも、かかるプログラムは本発明に含まれる。また、供給されたプログラムの処理の全て或いは一部がコンピュータの機能拡張ボードや機能拡張ユニットにより行われて上述の実施形態の機能が実現される場合にも、かかるプログラムは本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】従来技術の説明に用いた成形限界線図(FLD)である。
【図2】本発明が解決しようとする課題の説明に用いた成形限界線図(FLD)である。
【図3】本発明の実施例の説明に用いた図であり、実験により測定した成形限界線図(FLD)である。
【図4】本発明の実施例の説明に用いた図であり、Hill-Swift理論とシュテーレン−ライスモデルにより予測した塑性不安定限界線に対して、Keelerの板厚補正則を用いて板厚の影響を考慮した成形限界線図(FLD)である。
【図5】本発明の実施例の説明に用いた図であり、シュテーレン−ライスモデルをベースに応力増分依存則を用いて予測した成形限界線図(FLD)である。
【図6】本発明の実施例の説明に用いた図であり、歪みから応力への変換を説明した図である。
【図7】本発明の実施例の説明に用いた図であり、歪み空間のFLDは変形経路に依存して破断限界が大きく変化するのに対し、応力空間の破断限界線は単一の曲線で表現できることを示した図である。
【図8】第1の実施形態におけるネットワークシステムの全体構成を示す模式図である。
【図9】第1の実施形態におけるサーバコンピュータのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図10】第1の実施形態におけるユーザ端末のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図11】第1の実施形態における実施例1による破断限界取得装置の主要構成を示すブロック図である。
【図12】第1の実施形態における実施例1による破断限界取得方法の各ステップを示すフロー図である。
【図13】第1の実施形態における実施例2による破断限界取得装置の主要構成を示すブロック図である。
【図14】第1の実施形態における実施例2による破断限界取得方法の各ステップを示すフロー図である。
【図15】第1の実施形態における実施例2の変形例による破断限界取得装置の主要構成を示すブロック図である。
【図16】第1の実施形態における実施例3のサーバコンピュータのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図17】応力−歪み多直線データの一例を示す特性図である。
【図18】第1の実施形態における実施例3による破断限界取得装置の主要構成を示すブロック図である。
【図19】第1の実施形態における実施例3による破断限界取得方法の各ステップを示すフロー図である。
【図20】座標変換則を説明するための図である。
【図21】成形高さと最大主歪みの関係を示す図である。
【図22】種々の解析条件で数値シミュレーションを行い、実験から得られたFLDと局部くびれ発生限界を破断判定基準として用いたときの予測精度の比較を示す図である。
【図23】数値シミュレーションにより得られた成形過程の応力履歴と破断限界線の位置関係を示す図である。
【図24】本発明方法の予測精度を示す図である。
【図25】衝突解析の予測精度の検証対象であるハット断面形状の部品と3点曲げ落重試験概要を示す図である。
【図26】数値シミュレーションによるハット形状の絞り曲げ成形の解析結果を示す図である。
【図27】相当塑性歪みと歪み速度に応じた相当応力の関係を示す図である。
【図28】応力空間での動的な破断応力限界線と衝突シミュレーションから得られる動的な応力の位置関係を示す図である。
【図29】数値シミュレーションにより得られた成形過程の応力履歴と破断限界線の位置関係と、本発明方法の予測精度とを示す図である。
【図30】第2の実施形態における実施例による破断限界取得装置の主要構成を示すブロック図である。
【図31】第2の実施形態における実施例による破断予測方法により、金属材料からなる薄板の成形過程において破断予測を行う場合の各ステップを示すフロー図である。
【図32】第2の実施形態における実施例による破断予測方法により、図30の成形過程における破断予測に引き続き、衝突過程における破断予測を行う場合の各ステップを示すフロー図である。
【符号の説明】
【0141】
1,22 変換部
2,24 表示部
11 第1の推定部
12 第2の推定部
13 第3の推定部
14 算出部
21 推定部
23 破断判定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されてなり、金属材料からなる薄板の破断限界を判定するために用いる破断限界線を取得する破断限界取得システムであって、
1つ以上の変形経路変化を含む過程における前記薄板の破断限界を判定するに際して、
前記サーバは、前記ユーザ端末から入力された材料データに応じて、比例負荷経路で得られた歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する変換手段を含み、
前記ユーザ端末は、前記サーバに前記材料データを提供し、前記サーバから前記応力空間の破断限界線のデータを取得することを特徴とする破断限界取得システム。
【請求項2】
前記変換手段は、前記歪み空間の破断限界線を前記応力空間の破断限界線に変換する際に、塑性歪み増分方向が降伏曲面に対して垂直方向に規定される塑性歪み増分の垂直則を用いることを特徴とする請求項1に記載の破断限界取得システム。
【請求項3】
前記変換手段は、前記塑性歪み増分の垂直則を用いるに際して、相当塑性歪みεeqと各歪み成分εijとの関係式
【数1】
を用いることを特徴とする請求項1に記載の破断限界取得システム。
【請求項4】
前記歪み空間の破断限界線は、前記薄板について複数の面内歪み比を比例負荷実験により求めた後、それぞれの歪み比における破断限界最大主歪みε1及び破断限界最小主歪みε2の測定値を用いて得られるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の破断限界取得システム。
【請求項5】
前記サーバは、
【数2】
を併用して歪み空間のくびれ発生限界を求め、前記比例負荷経路で前記歪み空間の破断限界線を推定する第1の推定手段を更に含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の破断限界取得システム。
【請求項6】
前記サーバは、
【数3】
塑性歪み増分則として塑性歪み増分テンソルの方向が応力増分テンソルに依存する構成式と、
塑性歪み増分テンソルの方向を規定する材料パラメータKCと、
シュテーレン−ライスの局所くびれモデルと
を用いて前記歪み空間のくびれ発生限界を求め、前記比例負荷経路で前記歪み空間の破断限界線を推定する第2の推定手段を更に含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の破断限界取得システム。
【請求項7】
前記第2の推定手段は、1つ以上の破断限界最大主歪みε1及び破断限界最小主歪みε2の測定値に基づいて、前記材料パラメータKCを同定することを特徴とする請求項6に記載の破断限界取得システム。
【請求項8】
前記第1の推定手段は、前記くびれ発生限界を基準として、
前記薄板の板厚t0(mm)と、
単軸引張試験から得られる応力−歪み曲線と、
【数4】
を用いて前記歪み空間の破断限界歪みを求めることを特徴とする請求項5に記載の破断限界取得システム。
【請求項9】
前記第2の推定手段は、前記くびれ発生限界を基準として、
前記薄板の板厚t0(mm)と、
単軸引張試験から得られる応力−歪み曲線と、
【数5】
を用いて前記歪み空間の破断限界歪みを求めることを特徴とする請求項6に記載の破断限界取得システム。
【請求項10】
前記サーバは、
前記ユーザ端末から入力された前記材料データに基づき、各種の特性データを記憶するデータベースを用いて、前記歪み空間の破断限界線を推定する第3の推定手段と、
前記各特性データの所定規格内における品質ばらつき分布の上限値、下限値及び平均値をそれぞれ算出する算出手段と
を更に含み、
前記変換手段は、算出された前記各特性データの前記上限値、下限値及び平均値に基づき、前記歪み空間の破断限界線を前記応力空間の破断限界線に変換することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の破断限界取得システム。
【請求項11】
前記薄板は、引張り強さが440MPa級以上の高強度材料からなるものであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の破断限界取得システム。
【請求項12】
ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されており、金属材料からなる薄板の破断限界を判定するために用いる破断限界線を取得する破断限界取得方法であって、
1つ以上の変形経路変化を含む過程における前記薄板の破断限界を判定するに際して、
前記ユーザ端末により、前記サーバに前記材料データを提供するステップと、
前記サーバにより、前記ユーザ端末から入力された材料データに応じて、比例負荷経路で得られた歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換するステップと、
前記サーバにより、前記ユーザ端末に前記応力空間の破断限界線のデータを提供するステップと
を含むことを特徴とする破断限界取得方法。
【請求項13】
前記歪み空間の破断限界線を前記応力空間の破断限界線に変換するステップにおいて、塑性歪み増分方向が降伏曲面に対して垂直方向に規定される塑性ひずみ増分の垂直則を用いることを特徴とする請求項12に記載の破断限界取得方法。
【請求項14】
前記塑性歪み増分の垂直則を用いるに際して、相当塑性歪みεeqと各歪み成分εijとの関係式
【数6】
を用いることを特徴とする請求項13に記載の破断限界取得方法。
【請求項15】
前記比例負荷経路で前記歪み空間の破断限界線を得る際に、前記薄板について複数の面内歪み比を比例負荷実験により求めた後、それぞれの歪み比における破断限界最大主歪みε1及び破断限界最小主歪みε2の測定値を用いることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の破断限界取得方法。
【請求項16】
前記比例負荷経路で前記歪み空間の破断限界線を得る際に、
【数7】
を併用して歪み空間のくびれ発生限界を求めることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の破断限界取得方法。
【請求項17】
前記比例負荷経路で前記歪み空間の破断限界線を得る際に、
【数8】
塑性歪み増分則として塑性歪み増分テンソルの方向が応力増分テンソルに依存する構成式と、
塑性歪み増分テンソルの方向を規定する材料パラメータKCと、
シュテーレン−ライスの局所くびれモデルと
を用いて前記歪み空間のくびれ発生限界を求めることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の破断限界取得方法。
【請求項18】
1つ以上の破断限界最大主歪みε1及び破断限界最小主歪みε2の測定値に基づいて、前記材料パラメータKCを同定することを特徴とする請求項17に記載の破断限界取得方法。
【請求項19】
前記くびれ発生限界を基準として、
前記薄板の板厚t0(mm)と、
単軸引張試験から得られる応力−歪み曲線と、
【数9】
を用いて前記歪み空間の破断限界歪みを求めることを特徴とする請求項16又は17に記載の破断限界取得方法。
【請求項20】
前記比例負荷経路で前記歪み空間の破断限界線を得る際に、
前記ユーザ端末から入力された前記材料データに基づき、各種の特性データを記憶するデータベースを用いて、前記歪み空間の破断限界線を推定し、
前記各特性データの所定規格内における品質ばらつき分布の上限値、下限値及び平均値をそれぞれ算出し、
前記歪み空間の破断限界線を前記応力空間の破断限界線に変換するステップにおいて、算出された前記各特性データの前記上限値、下限値及び平均値に基づき、前記歪み空間の破断限界線を前記応力空間の破断限界線に変換することを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の破断限界取得方法。
【請求項21】
前記薄板は、引張り強さが440MPa級以上の高強度材料からなるものであることを特徴とする請求項12〜20のいずれか1項に記載の破断限界取得方法。
【請求項22】
ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されてなり、金属材料からなる薄板について、1つ以上の変形経路変化を含む過程における前記薄板の破断限界を判定するシステムを利用して、
前記サーバにおいて、
前記ユーザ端末から入力された材料データに応じて、比例負荷経路で得られた歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換するステップと、
前記ユーザ端末に前記応力空間の破断限界線のデータを提供するステップと
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項23】
前記歪み空間の破断限界線を前記応力空間の破断限界線に変換するステップにおいて、塑性歪み増分方向が降伏曲面に対して垂直方向に規定される塑性ひずみ増分の垂直則を用いることを特徴とする請求項22に記載のプログラム。
【請求項24】
前記塑性歪み増分の垂直則を用いるに際して、相当塑性歪みεeqと各歪み成分εijとの関係式
【数10】
を用いることを特徴とする請求項23に記載のプログラム。
【請求項25】
前記比例負荷経路で前記歪み空間の破断限界線を得る際に、前記薄板について複数の面内歪み比を比例負荷実験により求めた後、それぞれの歪み比における破断限界最大主歪みε1及び破断限界最小主歪みε2の測定値を用いることを特徴とする請求項22〜24のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項26】
前記比例負荷経路で前記歪み空間の破断限界線を得る際に、
【数11】
を併用して歪み空間のくびれ発生限界を求めることを特徴とする請求項23又は24に記載のプログラム。
【請求項27】
前記比例負荷経路で前記歪み空間の破断限界線を得る際に、
【数12】
塑性歪み増分則として塑性歪み増分テンソルの方向が応力増分テンソルに依存する構成式と、
塑性歪み増分テンソルの方向を規定する材料パラメータKCと、
シュテーレン−ライスの局所くびれモデルと
を用いて前記歪み空間のくびれ発生限界を求めることを特徴とする請求項23又は24に記載のプログラム。
【請求項28】
1つ以上の破断限界最大主歪みε1及び破断限界最小主歪みε2の測定値に基づいて、前記材料パラメータKCを同定することを特徴とする請求項27に記載のプログラム。
【請求項29】
前記くびれ発生限界を基準として、
前記薄板の板厚t0(mm)と、
単軸引張試験から得られる応力−歪み曲線と、
【数13】
を用いて前記歪み空間の破断限界歪みを求めることを特徴とする請求項26又は27に記載のプログラム。
【請求項30】
前記比例負荷経路で前記歪み空間の破断限界線を得る際に、
前記ユーザ端末から入力された前記材料データに基づき、各種の特性データを記憶するデータベースを用いて、前記歪み空間の破断限界線を推定し、
前記各特性データの所定規格内における品質ばらつき分布の上限値、下限値及び平均値をそれぞれ算出し、
前記歪み空間の破断限界線を前記応力空間の破断限界線に変換するステップにおいて、算出された前記各特性データの前記上限値、下限値及び平均値に基づき、前記歪み空間の破断限界線を前記応力空間の破断限界線に変換することを特徴とする請求項22〜24のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項31】
前記薄板は、引張り強さが440MPa級以上の高強度材料からなるものであることを特徴とする請求項22〜30のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項32】
請求項22〜31のいずれか1項に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項33】
ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されてなり、金属材料からなる薄板の破断限界を評価する破断予測システムであって、
1つ以上の変形経路変化に応じた塑性変形過程における前記薄板の破断発生を予測するにするに際して、
前記サーバは、
前記ユーザ端末から入力された材料データに応じて、歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する変換手段と、
得られた前記応力空間の破断限界線を用いて前記破断発生の有無を予測する予測手段と
を含み、
前記ユーザ端末は、前記サーバに前記材料データを提供し、前記サーバから前記破断発生の有無に関する予測データを取得することを特徴とする破断予測システム。
【請求項34】
前記予測手段は、前記薄板の変形状態を数値解析により評価し、得られた歪みを応力に換算し、前記応力空間の破断限界線を用いて前記破断発生の有無を定量的に評価することを特徴とする請求項33に記載の破断予測システム。
【請求項35】
複数の前記塑性変形過程の各々に対応して前記薄板の破断発生を予測するに際して、
前段階の前記塑性変形過程において前記数値解析により評価された前記薄板の変形状態を、後段階の前記塑性変形過程における前記数値解析の初期条件として引き継ぐことを特徴とする請求項34に記載の破断予測システム。
【請求項36】
前記薄板の変形状態は、前記薄板の板厚及び相当塑性歪み、或いは前記板厚、相当塑性歪み、応力テンソル及び歪みテンソルであることを特徴とする請求項35に記載の破断予測システム。
【請求項37】
前記前段階の前記塑性変形過程は前記薄板の成形過程であり、前記後段階の前記塑性変形過程は前記薄板の衝突過程であることを特徴とする請求項35又は36に記載の破断予測システム。
【請求項38】
前記歪み空間の破断限界線は、実験から得られるものであることを特徴とする請求項33〜37のいずれか1項に記載の破断予測システム。
【請求項39】
前記サーバは、前記歪み空間の破断限界線を、機械的特性値から理論的に推定する推定手段を更に含むことを特徴とする請求項33〜37のいずれか1項に記載の破断予測システム。
【請求項40】
前記変換手段は、前記歪み空間におけるくびれ開始線を前記応力空間に変換し、前記応力空間の破断限界線を取得することを特徴とする請求項39に記載の破断予測システム。
【請求項41】
前記予測手段は、実験により評価された前記薄板の変形状態から得られた歪みを応力に換算し、前記応力空間の破断限界線を用いて前記破断発生の有無を定量的に評価することを特徴とする請求項33に記載の破断予測システム。
【請求項42】
前記数値解析の手法として有限要素法を用いることを特徴とする請求項34〜40のいずれか1項に記載の破断予測システム。
【請求項43】
前記数値解析の手法として前記有限要素法の1つである動的陽解法を用いる場合に、前記動的陽解法により得られる塑性歪みを応力に変換し、前記応力空間の破断限界線と比較することを特徴とする請求項42に記載の破断予測システム。
【請求項44】
前記予測手段は、前記薄板の変形応力の速度依存性を考慮して前記数値解析を実行し、当該数値解析から得られた塑性歪みを変換して基準歪み速度における応力を算出し、前記基準歪み速度に対応した前記応力空間の破断限界線と比較することを特徴とする請求項33〜40,42,43のいずれか1項に記載の破断予測システム。
【請求項45】
前記薄板は、引張り強さが440MPa級以上の高強度材料からなるものであることを特徴とする請求項33〜44のいずれか1項に記載の破断予測システム。
【請求項46】
ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されており、金属材料からなる薄板の破断限界を評価する破断予測方法であって、
1つ以上の変形経路変化に応じた塑性変形過程における前記薄板の破断発生を予測するにするに際して、
前記ユーザ端末により、前記サーバに前記材料データを提供するステップと、
前記サーバにより、前記ユーザ端末から入力された材料データに応じて、歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換するステップと、
前記サーバにより、得られた前記応力空間の破断限界線を用いて前記破断発生の有無を予測するステップと、
前記ユーザ端末により、前記サーバから前記破断発生の有無に関する予測データを取得するステップと
を含むことを特徴とする破断予測方法。
【請求項47】
前記破断発生の有無を予測するステップにおいて、
前記薄板の変形状態を数値解析により評価し、得られた歪みを応力に換算し、前記応力空間の破断限界線を用いて前記破断発生の有無を定量的に評価することを特徴とする請求項46に記載の破断予測方法。
【請求項48】
複数の前記塑性変形過程の各々に対応して前記薄板の破断発生を予測するに際して、
前段階の前記塑性変形過程において前記数値解析により評価された前記薄板の変形状態を、後段階の前記塑性変形過程における前記数値解析の初期条件として引き継がせることを特徴とする請求項47に記載の破断予測方法。
【請求項49】
前記薄板の変形状態は、前記薄板の板厚及び相当塑性歪み、或いは前記板厚、相当塑性歪み、応力テンソル及び歪みテンソルであることを特徴とする請求項48に記載の破断予測方法。
【請求項50】
前記前段階の前記塑性変形過程は前記薄板の成形過程であり、前記後段階の前記塑性変形過程は前記薄板の衝突過程であることを特徴とする請求項48又は49に記載の破断予測方法。
【請求項51】
前記歪み空間の破断限界線を前記応力空間の破断限界線に変換するステップにおいて、
前記歪み空間の破断限界線は、実験から得られるものであることを特徴とする請求項46〜50のいずれか1項に記載の破断予測方法。
【請求項52】
前記歪み空間の破断限界線を前記応力空間の破断限界線に変換するステップにおいて、
前記歪み空間の破断限界線を、機械的特性値から理論的に推定することを特徴とする請求項46〜50のいずれか1項に記載の破断予測方法。
【請求項53】
前記歪み空間におけるくびれ開始線を前記応力空間に変換し、前記応力空間の破断限界線を取得することを特徴とする請求項52に記載の破断予測方法。
【請求項54】
前記破断発生を予測するステップにおいて、
実験により評価された前記薄板の変形状態から得られた歪みを応力に換算し、前記応力空間の破断限界線を用いて前記破断発生の有無を定量的に評価することを特徴とする請求項46に記載の破断予測方法。
【請求項55】
前記数値解析の手法として有限要素法を用いることを特徴とする請求項47〜53のいずれか1項に記載の破断予測方法。
【請求項56】
前記数値解析の手法として前記有限要素法の1つである動的陽解法を用いる場合に、前記動的陽解法により得られる塑性歪みを応力に変換し、前記応力空間の破断限界線と比較することを特徴とする請求項55に記載の破断予測方法。
【請求項57】
前記破断発生を予測するステップにおいて、
前記薄板の変形応力の速度依存性を考慮して前記数値解析を実行し、当該数値解析から得られた塑性歪みを変換して基準歪み速度における応力を算出し、前記基準歪み速度に対応した前記応力空間の破断限界線と比較することを特徴とする請求項46〜53,55,56のいずれか1項に記載の破断予測方法。
【請求項58】
前記薄板は、引張り強さが440MPa級以上の高強度材料からなるものであることを特徴とする請求項46〜57のいずれか1項に記載の破断予測方法。
【請求項59】
ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されてなり、金属材料からなる薄板について、1つ以上の変形経路変化に応じた塑性変形過程における前記薄板の破断発生を予測するシステムを利用して、
前記サーバにおいて、
前記ユーザ端末から入力された材料データに応じて、歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換するステップと、
前記サーバにより、得られた前記応力空間の破断限界線を用いて前記破断発生の有無を予測するステップと、
前記ユーザ端末により、前記サーバから前記破断発生の有無に関する予測データを取得するステップと
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項60】
前記破断発生の有無を予測するステップにおいて、
前記薄板の変形状態を数値解析により評価し、得られた歪みを応力に換算し、前記応力空間の破断限界線を用いて前記破断発生の有無を定量的に評価することを特徴とする請求項59に記載のプログラム。
【請求項61】
複数の前記塑性変形過程の各々に対応して前記薄板の破断発生を予測するに際して、
前段階の前記塑性変形過程において前記数値解析により評価された前記薄板の変形状態を、後段階の前記塑性変形過程における前記数値解析の初期条件として引き継がせることを特徴とする請求項60に記載のプログラム。
【請求項62】
前記薄板の変形状態は、前記薄板の板厚及び相当塑性歪み、或いは前記板厚、相当塑性歪み、応力テンソル及び歪みテンソルであることを特徴とする請求項61に記載のプログラム。
【請求項63】
前記前段階の前記塑性変形過程は前記薄板の成形過程であり、前記後段階の前記塑性変形過程は前記薄板の衝突過程であることを特徴とする請求項61又は62に記載のプログラム。
【請求項64】
前記歪み空間の破断限界線を前記応力空間の破断限界線に変換するステップにおいて、
前記歪み空間の破断限界線は、実験から得られるものであることを特徴とする請求項59〜63のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項65】
前記歪み空間の破断限界線を前記応力空間の破断限界線に変換するステップにおいて、
前記歪み空間の破断限界線を、機械的特性値から理論的に推定することを特徴とする請求項59〜63のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項66】
前記歪み空間におけるくびれ開始線を前記応力空間に変換し、前記応力空間の破断限界線を取得することを特徴とする請求項65に記載のプログラム。
【請求項67】
前記破断発生を予測するステップにおいて、
実験により評価された前記薄板の変形状態から得られた歪みを応力に換算し、前記応力空間の破断限界線を用いて前記破断発生の有無を定量的に評価することを特徴とする請求項59に記載のプログラム。
【請求項68】
前記数値解析の手法として有限要素法を用いることを特徴とする請求項60〜66のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項69】
前記数値解析の手法として前記有限要素法の1つである動的陽解法を用いる場合に、前記動的陽解法により得られる塑性歪みを応力に変換し、前記応力空間の破断限界線と比較することを特徴とする請求項68に記載のプログラム。
【請求項70】
前記破断発生を予測するステップにおいて、
前記薄板の変形応力の速度依存性を考慮して前記数値解析を実行し、当該数値解析から得られた塑性歪みを変換して基準歪み速度における応力を算出し、前記基準歪み速度に対応した前記応力空間の破断限界線と比較することを特徴とする請求項59〜66,68,69のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項71】
前記薄板は、引張り強さが440MPa級以上の高強度材料からなるものであることを特徴とする請求項59〜70のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項72】
請求項59〜71のいずれか1項に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項73】
ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されてなり、金属材料からなる薄板の破断限界を評価する破断予測方法であって、
1つ以上の変形経路変化に応じた塑性変形過程における前記薄板の破断発生を予測するにするに際して、
請求項12〜21のいずれか1項に記載の破断限界取得方法の各ステップを実行した後、前記サーバにより、取得された前記応力空間の破断限界線のデータを用いて、前記破断発生の有無を予測することを特徴とする破断予測方法。
【請求項1】
ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されてなり、金属材料からなる薄板の破断限界を判定するために用いる破断限界線を取得する破断限界取得システムであって、
1つ以上の変形経路変化を含む過程における前記薄板の破断限界を判定するに際して、
前記サーバは、前記ユーザ端末から入力された材料データに応じて、比例負荷経路で得られた歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する変換手段を含み、
前記ユーザ端末は、前記サーバに前記材料データを提供し、前記サーバから前記応力空間の破断限界線のデータを取得することを特徴とする破断限界取得システム。
【請求項2】
前記変換手段は、前記歪み空間の破断限界線を前記応力空間の破断限界線に変換する際に、塑性歪み増分方向が降伏曲面に対して垂直方向に規定される塑性歪み増分の垂直則を用いることを特徴とする請求項1に記載の破断限界取得システム。
【請求項3】
前記変換手段は、前記塑性歪み増分の垂直則を用いるに際して、相当塑性歪みεeqと各歪み成分εijとの関係式
【数1】
を用いることを特徴とする請求項1に記載の破断限界取得システム。
【請求項4】
前記歪み空間の破断限界線は、前記薄板について複数の面内歪み比を比例負荷実験により求めた後、それぞれの歪み比における破断限界最大主歪みε1及び破断限界最小主歪みε2の測定値を用いて得られるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の破断限界取得システム。
【請求項5】
前記サーバは、
【数2】
を併用して歪み空間のくびれ発生限界を求め、前記比例負荷経路で前記歪み空間の破断限界線を推定する第1の推定手段を更に含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の破断限界取得システム。
【請求項6】
前記サーバは、
【数3】
塑性歪み増分則として塑性歪み増分テンソルの方向が応力増分テンソルに依存する構成式と、
塑性歪み増分テンソルの方向を規定する材料パラメータKCと、
シュテーレン−ライスの局所くびれモデルと
を用いて前記歪み空間のくびれ発生限界を求め、前記比例負荷経路で前記歪み空間の破断限界線を推定する第2の推定手段を更に含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の破断限界取得システム。
【請求項7】
前記第2の推定手段は、1つ以上の破断限界最大主歪みε1及び破断限界最小主歪みε2の測定値に基づいて、前記材料パラメータKCを同定することを特徴とする請求項6に記載の破断限界取得システム。
【請求項8】
前記第1の推定手段は、前記くびれ発生限界を基準として、
前記薄板の板厚t0(mm)と、
単軸引張試験から得られる応力−歪み曲線と、
【数4】
を用いて前記歪み空間の破断限界歪みを求めることを特徴とする請求項5に記載の破断限界取得システム。
【請求項9】
前記第2の推定手段は、前記くびれ発生限界を基準として、
前記薄板の板厚t0(mm)と、
単軸引張試験から得られる応力−歪み曲線と、
【数5】
を用いて前記歪み空間の破断限界歪みを求めることを特徴とする請求項6に記載の破断限界取得システム。
【請求項10】
前記サーバは、
前記ユーザ端末から入力された前記材料データに基づき、各種の特性データを記憶するデータベースを用いて、前記歪み空間の破断限界線を推定する第3の推定手段と、
前記各特性データの所定規格内における品質ばらつき分布の上限値、下限値及び平均値をそれぞれ算出する算出手段と
を更に含み、
前記変換手段は、算出された前記各特性データの前記上限値、下限値及び平均値に基づき、前記歪み空間の破断限界線を前記応力空間の破断限界線に変換することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の破断限界取得システム。
【請求項11】
前記薄板は、引張り強さが440MPa級以上の高強度材料からなるものであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の破断限界取得システム。
【請求項12】
ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されており、金属材料からなる薄板の破断限界を判定するために用いる破断限界線を取得する破断限界取得方法であって、
1つ以上の変形経路変化を含む過程における前記薄板の破断限界を判定するに際して、
前記ユーザ端末により、前記サーバに前記材料データを提供するステップと、
前記サーバにより、前記ユーザ端末から入力された材料データに応じて、比例負荷経路で得られた歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換するステップと、
前記サーバにより、前記ユーザ端末に前記応力空間の破断限界線のデータを提供するステップと
を含むことを特徴とする破断限界取得方法。
【請求項13】
前記歪み空間の破断限界線を前記応力空間の破断限界線に変換するステップにおいて、塑性歪み増分方向が降伏曲面に対して垂直方向に規定される塑性ひずみ増分の垂直則を用いることを特徴とする請求項12に記載の破断限界取得方法。
【請求項14】
前記塑性歪み増分の垂直則を用いるに際して、相当塑性歪みεeqと各歪み成分εijとの関係式
【数6】
を用いることを特徴とする請求項13に記載の破断限界取得方法。
【請求項15】
前記比例負荷経路で前記歪み空間の破断限界線を得る際に、前記薄板について複数の面内歪み比を比例負荷実験により求めた後、それぞれの歪み比における破断限界最大主歪みε1及び破断限界最小主歪みε2の測定値を用いることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の破断限界取得方法。
【請求項16】
前記比例負荷経路で前記歪み空間の破断限界線を得る際に、
【数7】
を併用して歪み空間のくびれ発生限界を求めることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の破断限界取得方法。
【請求項17】
前記比例負荷経路で前記歪み空間の破断限界線を得る際に、
【数8】
塑性歪み増分則として塑性歪み増分テンソルの方向が応力増分テンソルに依存する構成式と、
塑性歪み増分テンソルの方向を規定する材料パラメータKCと、
シュテーレン−ライスの局所くびれモデルと
を用いて前記歪み空間のくびれ発生限界を求めることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の破断限界取得方法。
【請求項18】
1つ以上の破断限界最大主歪みε1及び破断限界最小主歪みε2の測定値に基づいて、前記材料パラメータKCを同定することを特徴とする請求項17に記載の破断限界取得方法。
【請求項19】
前記くびれ発生限界を基準として、
前記薄板の板厚t0(mm)と、
単軸引張試験から得られる応力−歪み曲線と、
【数9】
を用いて前記歪み空間の破断限界歪みを求めることを特徴とする請求項16又は17に記載の破断限界取得方法。
【請求項20】
前記比例負荷経路で前記歪み空間の破断限界線を得る際に、
前記ユーザ端末から入力された前記材料データに基づき、各種の特性データを記憶するデータベースを用いて、前記歪み空間の破断限界線を推定し、
前記各特性データの所定規格内における品質ばらつき分布の上限値、下限値及び平均値をそれぞれ算出し、
前記歪み空間の破断限界線を前記応力空間の破断限界線に変換するステップにおいて、算出された前記各特性データの前記上限値、下限値及び平均値に基づき、前記歪み空間の破断限界線を前記応力空間の破断限界線に変換することを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の破断限界取得方法。
【請求項21】
前記薄板は、引張り強さが440MPa級以上の高強度材料からなるものであることを特徴とする請求項12〜20のいずれか1項に記載の破断限界取得方法。
【請求項22】
ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されてなり、金属材料からなる薄板について、1つ以上の変形経路変化を含む過程における前記薄板の破断限界を判定するシステムを利用して、
前記サーバにおいて、
前記ユーザ端末から入力された材料データに応じて、比例負荷経路で得られた歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換するステップと、
前記ユーザ端末に前記応力空間の破断限界線のデータを提供するステップと
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項23】
前記歪み空間の破断限界線を前記応力空間の破断限界線に変換するステップにおいて、塑性歪み増分方向が降伏曲面に対して垂直方向に規定される塑性ひずみ増分の垂直則を用いることを特徴とする請求項22に記載のプログラム。
【請求項24】
前記塑性歪み増分の垂直則を用いるに際して、相当塑性歪みεeqと各歪み成分εijとの関係式
【数10】
を用いることを特徴とする請求項23に記載のプログラム。
【請求項25】
前記比例負荷経路で前記歪み空間の破断限界線を得る際に、前記薄板について複数の面内歪み比を比例負荷実験により求めた後、それぞれの歪み比における破断限界最大主歪みε1及び破断限界最小主歪みε2の測定値を用いることを特徴とする請求項22〜24のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項26】
前記比例負荷経路で前記歪み空間の破断限界線を得る際に、
【数11】
を併用して歪み空間のくびれ発生限界を求めることを特徴とする請求項23又は24に記載のプログラム。
【請求項27】
前記比例負荷経路で前記歪み空間の破断限界線を得る際に、
【数12】
塑性歪み増分則として塑性歪み増分テンソルの方向が応力増分テンソルに依存する構成式と、
塑性歪み増分テンソルの方向を規定する材料パラメータKCと、
シュテーレン−ライスの局所くびれモデルと
を用いて前記歪み空間のくびれ発生限界を求めることを特徴とする請求項23又は24に記載のプログラム。
【請求項28】
1つ以上の破断限界最大主歪みε1及び破断限界最小主歪みε2の測定値に基づいて、前記材料パラメータKCを同定することを特徴とする請求項27に記載のプログラム。
【請求項29】
前記くびれ発生限界を基準として、
前記薄板の板厚t0(mm)と、
単軸引張試験から得られる応力−歪み曲線と、
【数13】
を用いて前記歪み空間の破断限界歪みを求めることを特徴とする請求項26又は27に記載のプログラム。
【請求項30】
前記比例負荷経路で前記歪み空間の破断限界線を得る際に、
前記ユーザ端末から入力された前記材料データに基づき、各種の特性データを記憶するデータベースを用いて、前記歪み空間の破断限界線を推定し、
前記各特性データの所定規格内における品質ばらつき分布の上限値、下限値及び平均値をそれぞれ算出し、
前記歪み空間の破断限界線を前記応力空間の破断限界線に変換するステップにおいて、算出された前記各特性データの前記上限値、下限値及び平均値に基づき、前記歪み空間の破断限界線を前記応力空間の破断限界線に変換することを特徴とする請求項22〜24のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項31】
前記薄板は、引張り強さが440MPa級以上の高強度材料からなるものであることを特徴とする請求項22〜30のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項32】
請求項22〜31のいずれか1項に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項33】
ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されてなり、金属材料からなる薄板の破断限界を評価する破断予測システムであって、
1つ以上の変形経路変化に応じた塑性変形過程における前記薄板の破断発生を予測するにするに際して、
前記サーバは、
前記ユーザ端末から入力された材料データに応じて、歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換する変換手段と、
得られた前記応力空間の破断限界線を用いて前記破断発生の有無を予測する予測手段と
を含み、
前記ユーザ端末は、前記サーバに前記材料データを提供し、前記サーバから前記破断発生の有無に関する予測データを取得することを特徴とする破断予測システム。
【請求項34】
前記予測手段は、前記薄板の変形状態を数値解析により評価し、得られた歪みを応力に換算し、前記応力空間の破断限界線を用いて前記破断発生の有無を定量的に評価することを特徴とする請求項33に記載の破断予測システム。
【請求項35】
複数の前記塑性変形過程の各々に対応して前記薄板の破断発生を予測するに際して、
前段階の前記塑性変形過程において前記数値解析により評価された前記薄板の変形状態を、後段階の前記塑性変形過程における前記数値解析の初期条件として引き継ぐことを特徴とする請求項34に記載の破断予測システム。
【請求項36】
前記薄板の変形状態は、前記薄板の板厚及び相当塑性歪み、或いは前記板厚、相当塑性歪み、応力テンソル及び歪みテンソルであることを特徴とする請求項35に記載の破断予測システム。
【請求項37】
前記前段階の前記塑性変形過程は前記薄板の成形過程であり、前記後段階の前記塑性変形過程は前記薄板の衝突過程であることを特徴とする請求項35又は36に記載の破断予測システム。
【請求項38】
前記歪み空間の破断限界線は、実験から得られるものであることを特徴とする請求項33〜37のいずれか1項に記載の破断予測システム。
【請求項39】
前記サーバは、前記歪み空間の破断限界線を、機械的特性値から理論的に推定する推定手段を更に含むことを特徴とする請求項33〜37のいずれか1項に記載の破断予測システム。
【請求項40】
前記変換手段は、前記歪み空間におけるくびれ開始線を前記応力空間に変換し、前記応力空間の破断限界線を取得することを特徴とする請求項39に記載の破断予測システム。
【請求項41】
前記予測手段は、実験により評価された前記薄板の変形状態から得られた歪みを応力に換算し、前記応力空間の破断限界線を用いて前記破断発生の有無を定量的に評価することを特徴とする請求項33に記載の破断予測システム。
【請求項42】
前記数値解析の手法として有限要素法を用いることを特徴とする請求項34〜40のいずれか1項に記載の破断予測システム。
【請求項43】
前記数値解析の手法として前記有限要素法の1つである動的陽解法を用いる場合に、前記動的陽解法により得られる塑性歪みを応力に変換し、前記応力空間の破断限界線と比較することを特徴とする請求項42に記載の破断予測システム。
【請求項44】
前記予測手段は、前記薄板の変形応力の速度依存性を考慮して前記数値解析を実行し、当該数値解析から得られた塑性歪みを変換して基準歪み速度における応力を算出し、前記基準歪み速度に対応した前記応力空間の破断限界線と比較することを特徴とする請求項33〜40,42,43のいずれか1項に記載の破断予測システム。
【請求項45】
前記薄板は、引張り強さが440MPa級以上の高強度材料からなるものであることを特徴とする請求項33〜44のいずれか1項に記載の破断予測システム。
【請求項46】
ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されており、金属材料からなる薄板の破断限界を評価する破断予測方法であって、
1つ以上の変形経路変化に応じた塑性変形過程における前記薄板の破断発生を予測するにするに際して、
前記ユーザ端末により、前記サーバに前記材料データを提供するステップと、
前記サーバにより、前記ユーザ端末から入力された材料データに応じて、歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換するステップと、
前記サーバにより、得られた前記応力空間の破断限界線を用いて前記破断発生の有無を予測するステップと、
前記ユーザ端末により、前記サーバから前記破断発生の有無に関する予測データを取得するステップと
を含むことを特徴とする破断予測方法。
【請求項47】
前記破断発生の有無を予測するステップにおいて、
前記薄板の変形状態を数値解析により評価し、得られた歪みを応力に換算し、前記応力空間の破断限界線を用いて前記破断発生の有無を定量的に評価することを特徴とする請求項46に記載の破断予測方法。
【請求項48】
複数の前記塑性変形過程の各々に対応して前記薄板の破断発生を予測するに際して、
前段階の前記塑性変形過程において前記数値解析により評価された前記薄板の変形状態を、後段階の前記塑性変形過程における前記数値解析の初期条件として引き継がせることを特徴とする請求項47に記載の破断予測方法。
【請求項49】
前記薄板の変形状態は、前記薄板の板厚及び相当塑性歪み、或いは前記板厚、相当塑性歪み、応力テンソル及び歪みテンソルであることを特徴とする請求項48に記載の破断予測方法。
【請求項50】
前記前段階の前記塑性変形過程は前記薄板の成形過程であり、前記後段階の前記塑性変形過程は前記薄板の衝突過程であることを特徴とする請求項48又は49に記載の破断予測方法。
【請求項51】
前記歪み空間の破断限界線を前記応力空間の破断限界線に変換するステップにおいて、
前記歪み空間の破断限界線は、実験から得られるものであることを特徴とする請求項46〜50のいずれか1項に記載の破断予測方法。
【請求項52】
前記歪み空間の破断限界線を前記応力空間の破断限界線に変換するステップにおいて、
前記歪み空間の破断限界線を、機械的特性値から理論的に推定することを特徴とする請求項46〜50のいずれか1項に記載の破断予測方法。
【請求項53】
前記歪み空間におけるくびれ開始線を前記応力空間に変換し、前記応力空間の破断限界線を取得することを特徴とする請求項52に記載の破断予測方法。
【請求項54】
前記破断発生を予測するステップにおいて、
実験により評価された前記薄板の変形状態から得られた歪みを応力に換算し、前記応力空間の破断限界線を用いて前記破断発生の有無を定量的に評価することを特徴とする請求項46に記載の破断予測方法。
【請求項55】
前記数値解析の手法として有限要素法を用いることを特徴とする請求項47〜53のいずれか1項に記載の破断予測方法。
【請求項56】
前記数値解析の手法として前記有限要素法の1つである動的陽解法を用いる場合に、前記動的陽解法により得られる塑性歪みを応力に変換し、前記応力空間の破断限界線と比較することを特徴とする請求項55に記載の破断予測方法。
【請求項57】
前記破断発生を予測するステップにおいて、
前記薄板の変形応力の速度依存性を考慮して前記数値解析を実行し、当該数値解析から得られた塑性歪みを変換して基準歪み速度における応力を算出し、前記基準歪み速度に対応した前記応力空間の破断限界線と比較することを特徴とする請求項46〜53,55,56のいずれか1項に記載の破断予測方法。
【請求項58】
前記薄板は、引張り強さが440MPa級以上の高強度材料からなるものであることを特徴とする請求項46〜57のいずれか1項に記載の破断予測方法。
【請求項59】
ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されてなり、金属材料からなる薄板について、1つ以上の変形経路変化に応じた塑性変形過程における前記薄板の破断発生を予測するシステムを利用して、
前記サーバにおいて、
前記ユーザ端末から入力された材料データに応じて、歪み空間の破断限界線を応力空間の破断限界線に変換するステップと、
前記サーバにより、得られた前記応力空間の破断限界線を用いて前記破断発生の有無を予測するステップと、
前記ユーザ端末により、前記サーバから前記破断発生の有無に関する予測データを取得するステップと
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項60】
前記破断発生の有無を予測するステップにおいて、
前記薄板の変形状態を数値解析により評価し、得られた歪みを応力に換算し、前記応力空間の破断限界線を用いて前記破断発生の有無を定量的に評価することを特徴とする請求項59に記載のプログラム。
【請求項61】
複数の前記塑性変形過程の各々に対応して前記薄板の破断発生を予測するに際して、
前段階の前記塑性変形過程において前記数値解析により評価された前記薄板の変形状態を、後段階の前記塑性変形過程における前記数値解析の初期条件として引き継がせることを特徴とする請求項60に記載のプログラム。
【請求項62】
前記薄板の変形状態は、前記薄板の板厚及び相当塑性歪み、或いは前記板厚、相当塑性歪み、応力テンソル及び歪みテンソルであることを特徴とする請求項61に記載のプログラム。
【請求項63】
前記前段階の前記塑性変形過程は前記薄板の成形過程であり、前記後段階の前記塑性変形過程は前記薄板の衝突過程であることを特徴とする請求項61又は62に記載のプログラム。
【請求項64】
前記歪み空間の破断限界線を前記応力空間の破断限界線に変換するステップにおいて、
前記歪み空間の破断限界線は、実験から得られるものであることを特徴とする請求項59〜63のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項65】
前記歪み空間の破断限界線を前記応力空間の破断限界線に変換するステップにおいて、
前記歪み空間の破断限界線を、機械的特性値から理論的に推定することを特徴とする請求項59〜63のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項66】
前記歪み空間におけるくびれ開始線を前記応力空間に変換し、前記応力空間の破断限界線を取得することを特徴とする請求項65に記載のプログラム。
【請求項67】
前記破断発生を予測するステップにおいて、
実験により評価された前記薄板の変形状態から得られた歪みを応力に換算し、前記応力空間の破断限界線を用いて前記破断発生の有無を定量的に評価することを特徴とする請求項59に記載のプログラム。
【請求項68】
前記数値解析の手法として有限要素法を用いることを特徴とする請求項60〜66のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項69】
前記数値解析の手法として前記有限要素法の1つである動的陽解法を用いる場合に、前記動的陽解法により得られる塑性歪みを応力に変換し、前記応力空間の破断限界線と比較することを特徴とする請求項68に記載のプログラム。
【請求項70】
前記破断発生を予測するステップにおいて、
前記薄板の変形応力の速度依存性を考慮して前記数値解析を実行し、当該数値解析から得られた塑性歪みを変換して基準歪み速度における応力を算出し、前記基準歪み速度に対応した前記応力空間の破断限界線と比較することを特徴とする請求項59〜66,68,69のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項71】
前記薄板は、引張り強さが440MPa級以上の高強度材料からなるものであることを特徴とする請求項59〜70のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項72】
請求項59〜71のいずれか1項に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項73】
ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じて所期のデータを当該ユーザ端末に提供するサーバとがネットワークを介して接続されてなり、金属材料からなる薄板の破断限界を評価する破断予測方法であって、
1つ以上の変形経路変化に応じた塑性変形過程における前記薄板の破断発生を予測するにするに際して、
請求項12〜21のいずれか1項に記載の破断限界取得方法の各ステップを実行した後、前記サーバにより、取得された前記応力空間の破断限界線のデータを用いて、前記破断発生の有無を予測することを特徴とする破断予測方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2007−285832(P2007−285832A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112714(P2006−112714)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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