説明

破裂性ペレット

本発明において、そのコアに低水溶性である低効力の活性物質の高い用量を含む破裂性ペレットの新規医薬配合物が記述されている。そのコアからの該活性物質の放出は数分以内に起きる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬技術の分野に属し、非常に速い崩壊を有する医薬配合物に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、水に低溶解性の活性物質の高用量をそのコアに含む破裂性ペレットの医薬配合物に関する。そのコアからの活性物質の放出は数分以内に起こる。
【背景技術】
【0003】
活性成分の速い放出および治療作用の迅速な発現を有する、安全で便利に投与可能な医薬配合物を常に必要とする。
【0004】
従来の配合物は、通常、費用効率が高く、製造が比較的容易で、有効用量が胃腸管(GIT)内で容易に可溶化され得る薬物に特によく適している。この配合設計手法に適する化合物は、その用量が十分に少なく、GIT内で速く、完全な可溶化を可能にする高溶解性薬物または高効力および低溶解性薬物を含む。
【0005】
臨床上の有効性を達成するために全身的曝露の高いレベルを必要とする低水溶性の化合物の場合に問題が生じる。
【0006】
押出し/球形化によって製造される水不溶性ペクチン誘導体からの崩壊性ペレットは、リボフラビン等の低水溶性薬物の高用量に対して、特により速い放出に関して、微結晶セルロース(MCC)よりも優れていることが示された(ThoI.et al., Eur.J.Pharm. Biopharm.,56(2003)371−80)。その中で不溶性ポリマーが膨潤し、ペレットは連続的に崩壊する。
【0007】
この分野からの特許および科学文献に、高用量のおよび同時に低水溶性の活性物質の迅速な放出を可能にする医薬配合物(特にペレットの形状で)を提供する問題を解決する為の、参考資料は見いだされ得なかった。
【0008】
従って、本発明は、高用量の、低水溶性の活性物質を数分間以内に放出するための有効な配合物を調製することを目的とする。
【0009】
(発明の概要)
第一の態様において、本発明は、それから水に低溶解性である活性物質の高い用量が速く放出され得るペレットコアを含む医薬配合物に関する。
【0010】
もう1つの態様において、本発明は、低水溶性および低効力の少なくとも1つの医薬成分および溶解媒体への曝露後直ちに崩壊する他の医薬賦形剤を含む複数の破裂性ペレットを含む医薬配合物に関する。
【0011】
もう1つの態様において、本発明は、生理学的液体、水または他の溶解媒体への曝露後5分以内、好適には2分以内、更に好適には1分以内に崩壊して懸濁液を形成する、医薬配合物に関する。
【0012】
もう1つの態様において、本発明は、0.5m/gを超す、好適には1.0m/gを超す、より好適には1.5m/gを超すペレットの比表面積を有する医薬配合物に関する。
【0013】
もう1つの態様において、本発明は、ゲル化ポリマーの群、充填剤の群および界面活性剤の群のそれぞれからの少なくとも1つの賦形剤を含むペレットコアを含む医薬配合物に関する。
【0014】
もう1つの態様において、本発明は、ペレットコアのための成分の混合物の調製、脱塩水を用いる造粒、押出しおよび球形化、乾燥およびカプセルまたは小袋への充填段階を含む、このような医薬配合物の調整のための方法に関する。
【0015】
もう1つの態様において、本発明は、COX−2阻害剤(特にセレコキシブ)または薬学的に許容できるその塩とのこのような医薬配合物を、変形性関節症、関節リウマチまたはCOX−2阻害剤を用いて治療可能な他の疾患または障害の治療のために、単独での、または他の活性成分と組み合わせでの使用に関する。
【0016】
(発明の詳細な説明)
低効力の低溶解性薬物(従って高用量で投与されなければならない)は、速放性配合物の設計上大きな問題である。何故ならば、このような薬物のGIT内での速く完全な可溶化は悪化しているからである。低水溶性および遅い溶解速度はしばしば低く、不安定な吸収をもたらし、これは特に狭い治療指数を有する化合物について不測の毒性または治療の失敗の結果を招く。
【0017】
Biopharmaceutics Classification System(BCS)に従って、最高含量(用量)が1.0から7.5のpHの範囲で水性媒体の250ml以下に溶解する場合、薬物は高溶解性と考えられる。そうでなけれ
ば、該薬物物質は低溶解性と考えられる。
【0018】
速放性薬物製品は、(i)酵素を含まないGastric Fluid(SGF)USP(ii)pH4.5の緩衝液および(iii)pH6.8の緩衝液または酵素を含まないSimulated IntestinalFluid(SIF)USPの900mLの容量に、USP装置I(Basket Apparatus)を用いて100rpmでまたはUSP装置II(Paddle Apparatus)を用いて50rpmで、その薬物物質のラベル量の85%以上が30分以内に溶解する場合、速溶解製品として特長づけられる。そうでなければ、その薬物製品は遅い溶解製品であると考えられる。
【0019】
活性薬物物質が、高い比率で最終剤型組成物に寄与する場合、従来の溶解性増強手法の実施は制限される。
【0020】
これらの技術の中で最も適切な技術は、粒径低減であることが知られている。この技術は表面積/容量比を有効に増加し、それによってGIT内での溶解速度を増加し、吸収を促進する。粒径低減に用いられる各種の技術は、ミクロン化、ナノ化および超臨界流体技術を含む。最も一般的に用いられる方法であるミクロン化は、2つの主な欠点即ち、粒径低減につながる溶解の向上をしばしば無効にする凝集、および直接打錠またはカプセル充填中の問題を増強する粉砕された粒子の低流動性である。従って、大きな比表面積のような粉砕の積極的な効果を維持し、同時にミクロン化に由来する潜在的な困難を克服する、ミクロン化された活性物質からなる配合物は、上に挙げた問題の理想的な解決法であろう。
【0021】
驚くべきことに、われわれは、ペレットが適した賦形剤混合物を用いて構成された場合、ペレットは低水溶性および低効力の薬物の速い放出のための完全な剤型であり得ることを見出した。これらの極端に短い崩壊時間のために、このようなペレットは破裂ペレットと名付けられた。
【0022】
破裂性ペレットは、生理学的液体、水または他の溶解媒体への曝露5分以内、好適には2分以内、より好適には1分以内に崩壊して懸濁液を形成し得る特別な組成物を有する。
【0023】
接触面積の殆ど即時の増加により、活性成分の速い溶解および従って治療効果の迅速な発現が可能になる。そのペレットはほぼ球状であり、0.5から1mmのような比較的大きな直径であるので、優れた流動性を有し、硬ゼラチンカプセル等のカプセル中に容易に充填され得る。
【0024】
このような配合物(ペレット)は、その形状(例えば、針状結晶)またはその粒子表面の物理的性質(形態、凝集性、静電学等)のいずれかにより低い流動性を示す粒子の場合に特に有益である。
【0025】
現在利用可能な他の配合物に対する破裂ペレットのもう1つの利点は、それらの多孔性表面であり、この表面はペレットへの溶解媒体の速い浸透を可能にし、引き続いてペレットの極端に短い崩壊時間を可能にする。
【0026】
更に、驚くべきことに、われわれは、破裂ペレットが、その中に含まれているミクロン化された活性成分の比表面積に比肩し得る大きな比表面積を有することを見出した。ペレットの比表面積は、その表面およびペレットの内部の微細孔両方の比表面積の合計を意味する。ペレットの大きな比表面積は、それが0.5m/gを超す、好適には1.0m/gを超す、より好適には1.5m/gを超すことを意味する。
【0027】
ペレットの大きな比表面積のために、該ペレットに浸透する溶解媒体は、利用可能な活性物質との大きな接触表面積を有し、直ちにそれを溶解し始める。従って、ペレット中の活性成分の溶解は、該ペレットが崩壊する前にさえ始まる。この事実により、該活性成分の溶解は、より小さい比表面積のペレットを使用した場合よりもさらに速く、従って治療効果の迅速な発現が加速される。
【0028】
先行技術に報告された不溶性の成分の代わりに、可溶性賦形剤、即ちゲル化ポリマーが用いられる。この違いにより、次の効果が達成される:その水媒体との接触後、そのポリマーの溶解が開始され、それによって、該ペレットの構造が破壊され、該ペレットの更なる崩壊の加速が達成される。
【0029】
本発明に用いられ得る低溶解性の薬物の例は、ジプラシドン(ziprasidone)、ラロキシフェン(raloxifen)、フェノバルビタール(Phenobarbital)、ダナゾール(danazole)、ケトコナゾール(ketoconazole)、セルトラリン(sertraline)、クラリスロマイシン(clarithromycin)等を含むがこれらに限定されない。上述の配合物はまた、ニメスリド(nimesulide)、エトリコキシブ(etoricoxib)および特にコレコキシブ(celecoxib)等のCOX−2阻害剤にも適している。
【0030】
該医薬組成物における該薬物の量は、50から90%、好適には60から85%、より好適には70から80%であり得る。
【0031】
従って、このような医薬組成物における該活性医薬成分の用量は、500mg程度である。
【0032】
該活性物質に加えて、該ペレットのコアは、次の賦形剤を含み得る:充填剤、ゲル化ポリマー(これらのいずれかは押出し/球状化補助剤の機能も有し得る)、界面活性剤および場合により結合剤。
【0033】
最も一般的に、微結晶セルロースが押出し/球状化補助剤として用いられ得る。微結晶セルロースは、ケイ化微結晶セルロース等のみならず、商業的に販売されているいずれの形であってよい。押出し/球状化補助剤の量は、少なくとも5%、好適には6から10%および最も好適には8から15%であり得る。
【0034】
充填剤は、粉末化セルロース、ソルビトール、マニトール、各種ラクトース、リン酸塩等の中から選ばれ得る。好適にはラクトースの一水和物が使用され得る。充填剤の量は、少なくとも2%、好適には4から12%および最も好適には6から8%であり得る。
【0035】
界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンキャスターオイル誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルビタン80)およびソルビタンモノエステルのような非イオン性であってよく、またはドキュセートナトリウム、ドキュセート塩、ラウリル硫酸ナトリウム等のイオン性であってよい。好適にはラウリル硫酸ナトリウムが使用され得る。界面活性剤の量は、1から10%、好適には3から7%およびより好適には4から6%である。
【0036】
該配合物の破裂効果は、ゲル化ポリマーによる。次の少なくとも1つが実施され得る:カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド等。好適にはカラギーナンが用いられ得る。ゲル化ポリマーの合計量は1から20%、好適には1から10%およびより好適には1から5%であり得る。
【0037】
結合剤は、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ポリビニルピロリドン−ビニルアセテートコポリマー、アルギン酸、グアガム、ヒドロキシプロピルデンプン、プレゼラチン化デンプン、マルトデキストリン等中から選ばれ得る。結合剤の割合は、5%未満、好適には3%未満およびより好適には1%未満であり得る。
【0038】
ペレットのコアは医薬技術における従来法によって調製され得る。例えば、活性医薬成分(例えばコレコキシブ)、微結晶セルロース、ラクトース、カラギーナンおよびラウリル硫酸ナトリウムが組み合わされ混合され得る。篩分けされた粉末の混合物が脱塩水を用いて造粒され得る。均一な混合物から、ペレットコアが、押出しおよび球状化の方法を用いて作られ得る。乾燥したペレットは、適した大きさのカプセル、特に硬ゼラチンカプセルまたはHPMCカプセルの中または小袋の中に充填され得る。
【0039】
場合により、上述のペレットは、更に被覆され得る。被覆は、酸性の胃液からのペレットコアの完全な保護を提供し得るので、特に酸に不安定な薬物の場合に有益である。被覆されたペレットが小腸に運ばれた後に、被覆が溶解し、ペレットの破裂作用が起きる。被覆はまた、吸収部位への送達を可能にし、ついでpHが引き金になる被覆の溶解および活性物質の放出を可能にするので、狭い吸収域の薬物の場合にも有益である。
【0040】
COX−2阻害剤またはその薬学的に許容できる塩を含む本発明による医薬配合物は、変形性関節症、関節リウマチまたはCOX−2阻害剤を用いて治療可能な他の疾患または障害の治療に単独でまたは他の活性成分と組み合わせて用いられ得る。
【実施例】
【0041】
本発明を以下の実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例によって決して制限されない。
【0042】
(実施例1)
成分 量(%)
セレコキシブ 74.0
微結晶セルロース 10.0
ラクトース 5.5
カラギーナン 5.0
ラウリル硫酸ナトリウム 5.5
【0043】
セレコキシブ、微結晶セルロース、ラクトース、カラギーナンおよびラウリル酸ナトリウムを組み合わせ、混合する。篩分けした粉末を脱塩水を用いて造粒する。均一な混合物から押出しおよび球状化の方法を用いてペレットコアを作る。乾燥されたペレットを硬ゼラチンカプセル、HPMCカプセルまたは小袋に充填する。
【0044】
(実施例2)
成分 量(%)
セレコキシブ 74.0
微結晶セルロース 5.0
ラクトース 8.0
カラギーナン 10.0
ラウリル硫酸ナトリウム 3.0
調製の方法は実施例1と同じであってよい。
【0045】
(実施例3)
成分 量(%)
セレコキシブ 70.0
微結晶セルロース 10.0
ソルビトール 10.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 6.0
ポリソルベート80 4.0
調製の方法は実施例1と同じであってよい。
【0046】
(実施例4)
成分 量(%)
セレコキシブ 80.0
ケイ化微結晶セルロース 8.0
リン酸カルシウム 5.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 5.0
ドキュセートナトリウム 2.0
調製の方法は実施例1と類似してよい。
【0047】
(実施例5)
成分 量(%)
セレコキシブ 70.0
ケイ化微結晶セルロース 10.0
ソルビトール 8.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 6.0
ポリソルベート80 4.0
ポビドン 2.0
調製の方法は実施例1と類似してよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解媒体への曝露後に崩壊する複数の破裂性ペレットを含み、低水溶性および低効力の少なくとも1つの活性医薬成分および他の医薬賦形剤を含むことを特徴とする医薬配合物。
【請求項2】
生理学的液体、水または他の溶解媒体への曝露5分以内に崩壊して懸濁液を形成する、請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
生理学的液体、水または他の溶解媒体への曝露2分以内に崩壊して懸濁液を形成する、請求項2に記載の配合物。
【請求項4】
生理学的液体、水または他の溶解媒体への曝露1分以内に崩壊して懸濁液を形成する、請求項3に記載の配合物。
【請求項5】
0.5m/gを超す、好適には1.0m/gを超す、より好適には1.5m/gを超すペレットの比表面積を有する、請求項1から4のいずれかに記載の配合物。
【請求項6】
前記賦形剤(複数)が、ゲル化ポリマーの群、充填剤の群および界面活性剤の群のそれぞれからの少なくとも1つの化合物を含む、請求項1から5のいずれかに記載の配合物。
【請求項7】
前記活性医薬成分が、COX-2阻害剤の群から選ばれる、請求項1から6のいずれかに記載の配合物。
【請求項8】
COX-2阻害剤の群からの前記活性医薬成分がコレコキシブである、請求項7に記載の配合物。
【請求項9】
以下の段階:
ペレットコアのための成分の混合物の調製段階;
脱塩水を用いる造粒段階;
押出しおよび球形化段階;
乾燥およびカプセルまたは小袋への充填段階;
を含むことを特徴とする、請求項1から8に記載の医薬配合物の調製のための方法。
【請求項10】
変形性関節症、関節リウマチまたはCOX−2阻害剤を用いて治療可能な他の疾患または障害の治療用の薬剤の調製のための、請求項7から8に記載の医薬配合物の使用。

【公表番号】特表2009−520732(P2009−520732A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546265(P2008−546265)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/012392
【国際公開番号】WO2007/071420
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(504359293)レツク・フアーマシユーテイカルズ・デー・デー (60)
【Fターム(参考)】