説明

硝酸態窒素を除去する調理器類

【課題】 本発明は田畑の土壌改良を行うのではなく、硝酸態窒素が含まれる野菜や米を調理する際、調理器によって硝酸態窒素を除去することを目的とする。
【解決手段】 表面に珪素を70%以上含有する鉱物を数%含む釉薬が塗布された土鍋と、この土鍋を加熱する加熱手段とを備える調理器具であって、上記土鍋は、硝酸態窒素を含む米又は野菜の煮炊きに使用する。また、表面に珪素を70%以上含有する鉱物を数%含むフッ素樹脂が塗布された金属鍋と、この金属鍋を加熱する加熱手段とを備える調理器具であって、上記金属鍋は、硝酸態窒素を含む米又は野菜の煮炊きに使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜や米等に含まれる硝酸態窒素を分解除去する調理器及び類似器具に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、田畑等の耕作地で米や野菜を栽培する場合、肥料に有機物が採用される場合が多く、この有機物から米や野菜は硝酸態窒素を吸収して成長するが、余剰の硝酸態窒素が残った場合、この野菜等を食べることによって、体内に硝酸態窒素が取り込まれる。この硝酸態窒素は体内で還元され、亜硝酸態窒素として体内たんぱく質と反応して発がん性のニトロソアミンとなり、細胞を傷つける。
【0003】
現状の市販野菜、特に葉物野菜は数千ppmの残留硝酸態窒素を含む常態である。また、水中では、主としてたんぱく質などの分解によって生じたアンモニア性窒素が、更に生物化学的に酸化される。
【0004】
特許文献1は、畑などの土壌中に含まれるアンモニア態窒素や硝酸態窒素が農作物に吸収されることを防止するため、カルシウムとマグネシウムとの水酸化物に、鉄、マンガン、銅、亜鉛、ホウ素、及びモリブデンを原子状態で包含させ、複合水酸化物の粒体に形成した植物育成用ミネラル材を使用して土壌改良を行い、農作物に硝酸態窒素等が吸収されることを防止する発明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−306683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に係る発明は、土壌改良を行い硝酸態窒素等を除くものであるが、野菜や米を生産するための田畑の面積は膨大であり、全ての田畑の土壌改良を行うことはできない。また、その費用も膨大となる。
【0007】
そこで、本発明は田畑の土壌改良を行うのではなく、硝酸態窒素が含まれる野菜や米を調理する際、調理器によって硝酸態窒素を除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は第1の発明によれば、表面に珪素を少なくとも70%以上含有する鉱物を数%含む釉薬が塗布された土鍋と、該土鍋を加熱する加熱手段とを備える調理器具を提供することによって達成できる。
【0009】
また、上記課題は第2の発明によれば、表面に珪素を少なくとも70%含有する鉱物を数%含むフッ素樹脂が塗布された金属鍋と、該金属鍋を加熱する加熱手段とを備える調理器具を提供することによって達成できる。
【0010】
また、上記課題は第3の発明によれば、前記土鍋、又は金属鍋は、硝酸態窒素を含む米又は野菜の煮炊きに使用する調理器具であることを特徴とする。
【0011】
さらに、上記課題は第4の発明によれば、前記鉱物は、窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)、水素(H)、炭素(C)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、イオウ(S)を含み、更に少量の銅(Cu)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、及びホウ素(B)を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、硝酸態窒素や亜硝酸態窒素を含む野菜やお米を煮炊きすることによって、容易に野菜やお米に含まれる亜硝酸態窒素等を分解、除去することができる調理器具を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態で使用する電磁誘導加熱調理器の構成を示す断面図である。
【図2】土鍋の構造を説明する図である。
【図3】土鍋の断面構成を示す図である。
【図4】本実施形態の硝酸態窒素の除去効果を示す測定結果の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態で使用する電磁誘導加熱調理器の構成を示す断面図である。尚、本例は、電磁誘導加熱調理器として電磁誘導加熱炊飯器の例を使用して説明する。
電磁誘導加熱炊飯器1は、本体2と蓋部3で構成され、本体2内には土鍋4が設けられている。また、この土鍋4の下面には電磁誘導加熱用の加熱コイル5が配設されている。
【0015】
加熱コイル5は、スパイラル状に旋回され直列に高周波電源に接続されており、加熱コイル5に高周波電流が供給される構成であり、不図示の制御部により駆動制御される。また、加熱コイル5に近接する土鍋4の位置には磁性体6が配設されている。この磁性体6としては、磁性を有する鉄系の材料、例えばステンレス(SUS430)等の材料が使用される。加熱コイル5に電流を流すと磁性体6に渦電流が発生し、発熱して土鍋4を加熱する。
【0016】
また、図1において、磁性体6を帯状に示しているが、図1の紙面に対して垂直方向にも伸びた構成であり、磁性体6は土鍋4の底面に広く配設され、土鍋4を加熱する。
【0017】
一方、図2は上記構成の電磁誘導加熱炊飯器1に使用される土鍋4の構成を示す図である。土鍋4は粘土材を成形した本体7で構成され、底壁7aと底壁7aの周囲に形成された周壁7bで構成されている。具体的には、粘土を本体7の型に成型し、底壁7aの外面(下面)に矩形の凹部8a、8b、8cを形成する。また、この凹部8a、8b、8cに嵌合する形状であって、凹部8a、8b、8cの深さと略同じ長さの厚みを備えた磁性体6を底壁7aの凹部8a、8b、8cに嵌合固着する。
【0018】
このようにして成型した粘土を焼いて素焼きを行う。この素焼きを行った土鍋4の本体7の内面9をサンドブラト等で粗面化し、内面9に釉薬10を塗布する。ここで、この釉薬10には、珪素(Si)を、例えば90%以上含有する鉱物11が混入しており、この鉱物11の粉末が釉薬10に含有されている。また、釉薬10に対する鉱物11の含有率は、例えば5%である。
【0019】
したがって、素焼きを行った土鍋4(本体7)の内面には上記Siを含有する釉薬10が塗布され、この状態で土鍋4を再度焼成する。
図3は、図2に示す土鍋4(7)のA−A’断面図である。同図に示すように、土鍋4(本体7)の表面12はサンドブラストで粗化され、その上に珪素(Si)を含有する釉薬10が塗布されている。
【0020】
このように処理することにより、その上面に珪素(Si)を含有する土鍋4を使用した電磁誘導加熱炊飯器1を提供することができる。したがって、例えばこの電磁誘導加熱炊飯器1を使用してお米を炊くことによって、例えば硝酸態窒素を含んでいるお米であっても、その量を元の1/3〜1/5程度まで減少させることができる。
【0021】
また、上記実施形態の説明では、電磁誘導加熱炊飯器1について説明したが、電磁誘導加熱炊飯器1に限らず電磁誘導加熱方式を採用する調理器全てに適応できるものである。したがって、本例の土鍋4を使用した調理器を使用して野菜を調理する場合でも、上記と同様、硝酸態窒素を含んでいる野菜であっても、その量を元の1/3〜1/5程度まで減少させることができる。
【0022】
したがって、本例によれば、例え硝酸態窒素を含む野菜や米であっても、上記土鍋4を使用する調理器を使用して野菜や米を煮炊きするだけで容易に安全な食品に変えることができる。
【0023】
また、野菜や米を生産するための土壌改良を行う場合に比べ、極めて容易に硝酸態窒素や亜硝酸態窒素の問題を解決することができ、費用の面でも格段有利である。
【0024】
また、土鍋4に限らず、例えば金属鍋であっても、同様に硝酸態窒素を除く調理器具を実現することができる。この場合、例えばアルミの基材にフッ素コーティングを行う際、珪素(Si)を、例えば70%以上含有する鉱物を、フッ素樹脂に混入させてコーティングを行うことによって、金属鍋においても同様の効果を得ることができる。
【0025】
また、上記実施形態の説明では、土鍋4(本体7)の内面にSiを含有する鉱物11を含む釉薬10を塗布したが、土鍋4の本体7を粘土で作成する際、Siを含有する鉱物11を練り込み、素焼きする構成としてもよい。このように構成した土鍋4を使用し、野菜や米を煮炊きするだけで容易に安全な食品に変えることができる。
【0026】
また、土鍋4の本体7を粘土で作成する際、更に多くの凹部を形成し、当該凹部に上記鉱物11を嵌合固着し、土鍋4を作成してもよい。このように構成した土鍋4を使用しても、野菜や米を煮炊きするだけで容易に安全な食品に変えることができる。
【0027】
また、フッ素樹脂に代えて、シリカを使用する場合には、上記鉱物を1〜10%程度含むようにすればよく、セラミックの場合には、鉱物を1%程度含むようにすればよい。
【0028】
さらに、上記鉱物11は、前述のように珪素(Si)を70%以上含有するものであるが、他の成分としては、例えば窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)、水素(H)、炭素(C)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、イオウ(S)を含み、更に少量の銅(Cu)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、及びホウ素(B)等、十数種類の元素を含む構成である。
【0029】
最後に、本例の調理器を使用し、例えば小松菜を試験材料とした場合の本例の硝酸態窒素の除去試験の結果を図4に示す。同図に示すように、試験開始時6,700ppmであった硝酸態窒素は、30分後には4,500ppmに減少し、1時間後に3,500ppmには減少し、更に2時間後には2,900ppmに減少した。したがって、本例の土鍋4を使用した調理器の硝酸態窒素の除去効果が顕著に測定できた。
尚、小松菜に含まれる硝酸態窒素の測定は、それぞれの時間において、一定量の小松菜を調理器から取り出し、磨り潰して測定器で測定したものである。
【符号の説明】
【0030】
1・・・電磁誘導加熱炊飯器
2・・・本体
3・・・蓋部
4・・・土鍋
5・・・加熱コイル
6・・・磁性体
7・・・本体
7a・・底壁
7b・・周壁
8a、8b、8c・・凹部
9・・・内面
10・・釉薬
11・・鉱物
12・・表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に珪素を少なくとも70%以上含有する鉱物を数%含む釉薬が塗布された土鍋と、
該土鍋を加熱する加熱手段と、
を備える調理器具
【請求項2】
表面に珪素を少なくとも70%以上含有する鉱物を数%含むフッ素樹脂が塗布された金属鍋と、
該金属鍋を加熱する加熱手段と、
を備えることを特徴とする調理器具。
【請求項3】
前記土鍋は、硝酸態窒素を含む米又は野菜の煮炊きに使用することを特徴とする請求項1に記載の調理器具。
【請求項4】
前記金属鍋は、硝酸態窒素を含む米又は野菜の煮炊きに使用することを特徴とする請求項2に記載の調理器具。
【請求項5】
前記鉱物は、窒素、リン、カリウム、水素、炭素、カルシウム、マグネシウム、イオウを含み、更に少量の銅、亜鉛、マンガン、鉄、及びホウ素を含むことを特徴とする請求項1、2、3、又は4に記載した調理器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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