説明

硫酸エステル塩の製造方法

【課題】オキシプロピレン基を含む硫酸エステル塩について、色相及び/又は匂いが大幅に改善された反応生成物を低コストで得ることができる硫酸エステル塩の製造方法を提供する。
【解決手段】オキシプロピレン基を含む特定の原料化合物を、温度制御流体を流通させることが可能な2つ以上の温度制御できるジャケット内に配置された反応管の内壁を流下させながら供給して該反応管の内壁に原料化合物の薄膜を形成させるとともに、該反応管内にSO3ガスを供給して原料化合物とSO3ガスとを反応させて硫酸化物を得る工程と、当該で得られた硫酸化物を中和する工程とを有する、特定の硫酸エステル塩の製造方法であって、前記2つ以上のジャケットが、原料化合物の流下方向の上流に配置された上流ジャケットと下流に配置された下流のジャケットを含み、これらを特定の条件で用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色相及び/又は匂いが大幅に改善された界面活性剤として有用な、オキシアルキレン基を有する硫酸エステル塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、界面活性剤として用いられるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩は、原料化合物であるアルコキシレート化合物にSO3ガスを反応させて硫酸化し、得られた硫酸化物を中和して得られている。
【0003】
SO3ガスによる原料化合物であるアルコキシレート化合物の硫酸化は高度な発熱を伴う反応である。また、生成した硫酸化物の安定性から、反応温度に制約があるため反応生成物は粘稠性で、流動性に欠けるため、SO3と過度に反応し易く、しばしば反応物の着色、オーバーリアクションによる分解、炭化物や環化物等由来する匂いを与える物質の生成などという欠点がある。特に種々の商業的目的に対し、色相及び/又は匂いの悪い製品は、商品価値が低下する場合があるため、従来、これらの色相や匂い悪化に対して、多くの方法が提案されている。
【0004】
特許文献1においては、薄膜硫酸化装置において反応液薄膜流とSO3ガスとの間に空気又は不活性ガスを冷却ガスとして、SO3ガスの約2〜5倍量、かつ実質的にSO3ガス流と同速度で導入して反応温度を一定に保ち、硫酸化反応を行うことにより、着色及び副生成物の少ない硫酸化物を製造する方法が開示されている。しかしながら、該製造方法では、冷却を目的として不活性ガスを流すため、多量の不活性ガスが必要であり、上記公報の出願人が後に出願している特許文献2に見られるような排ガスの循環利用等の措置をとる必要があり、設備上の負荷が大きいという欠点がある。また、かかる硫酸化反応方法を用いて得られた硫酸化物の色相の改善効果は低く、より一層の改良が必要であった。
【0005】
特許文献3には、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル硫酸塩を所定濃度で含有する水性スラリーに、特定条件で水蒸気を吹き込むことで、効率の良い脱臭が可能となることが開示されている。更に、特許文献4には、SO3ガスと共に不活性ガスを特定の範囲で供給することで、低コストで色相が大幅に改善された硫酸化物の製造方法が開示されている。特許文献5には、硫酸化物の製造装置として、原料化合物のオーバーフローによる反応管内壁への供給を可能とするオーバーフロー機構を有する原料化合物供給部を含む、硫酸化物の製造装置が開示されている。
【0006】
更に、特許文献6、7には、特定の温度で反応及び処理、反応管内の滞留時間の設定することで、応物中の副生物である1,4−ジオキサンの生成を抑制したポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の製造方法が開示されている。
【特許文献1】特公昭49−48409号公報
【特許文献2】特公昭53−41130号公報
【特許文献3】特開平7−157464号公報
【特許文献4】特開2000−38374号公報
【特許文献5】特開平11−315061号公報
【特許文献6】特開2001−151746号公報
【特許文献7】特開2001−187776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば、特許文献3で言及されているように、オキシプロピレン基を含む硫酸エステル塩は、オキシエチレン基のみを含む硫酸エステル塩のような対処方法では、臭気の問題を十分に解決することができない。他の方法についても、制御が複雑であった。従って、オキシプロピレン基を含む硫酸エステル塩の臭気の改善については、更なる検討が必要となる。また、オキシプロピレン基を含む硫酸エステル塩についての色相についても従来の知見とは別の観点からの検討が必要となる。
【0008】
本発明は、オキシプロピレン基を含む硫酸エステル塩について、色相及び/又は匂いが大幅に改善された反応生成物を低コストで得ることができる硫酸エステル塩の製造方法を提供することを目的とする。尚、本発明でいう「硫酸化」とは、いわゆる硫酸エステル化を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記一般式(1)で表される化合物(以下、原料化合物という)を、温度制御流体を流通させることが可能な2つ以上の温度制御できるジャケット内に配置された反応管の内壁を流下させながら供給して該反応管の内壁に原料化合物の薄膜を形成させるとともに、該反応管内にSO3ガスを供給して原料化合物とSO3ガスとを反応させて硫酸化物を得る工程(以下、硫酸化工程という)と、当該工程で得られた硫酸化物を中和する工程(以下、中和工程という)とを有する、下記一般式(2)で表される硫酸エステル塩の製造方法であって、
前記2つ以上のジャケットは、原料化合物の流下方向の上流に配置された上流ジャケットと下流に配置された下流ジャケットとを含み、
前記上流ジャケットに流通する温度制御流体の出口温度が35℃以上70℃以下であり、前記下流ジャケットに流通する温度制御流体の出口温度が10℃以上30℃以下であり、
前記上流ジャケットの長さが前記反応管の全長に対して25〜70%であり、前記下流ジャケットの長さが前記反応管の全長に対して75〜30%である、
硫酸エステル塩の製造方法に関する。
R−O−(CH2CH2O)p−(Cn2nO)m−(CH2CH2O)k−H ……(1)
(式中、Rは炭素数8から22の炭化水素基、pとkの総和平均は0以上、40以下、nは3〜4、mは平均で0より大きく5以下の数である。)
R−O−(CH2CH2O)p−(Cn2nO)m−(CH2CH2O)k−SO3M ……(2)
(式中、Rは炭素数8から22の炭化水素基、pとkの総和平均は0以上、40以下、nは3〜4、mは平均で0より大きく5以下の数、Mはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン又は、炭素数2〜3のアルカノール基を有するモノ、ジもしくはトリアルカノールアンモニウムイオンである。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、オキシプロピレン基を含む硫酸エステル塩について、色相及び/又は匂いが大幅に改善された反応生成物を低コストで得ることができる硫酸エステル塩の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に用いられる原料化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
R−O−(CH2CH2O)p−(Cn2nO)m−(CH2CH2O)k−H ……(1)
(式中、Rは炭素数8から22の炭化水素基、pとkの総和平均は0以上、40以下、nは3〜4、mは平均で0より大きく5以下の数である。)
【0012】
一般式(1)の化合物は、特に限定されるものではないが、脂肪族アルコールやアルキルフェノールのプロピレンオキシド(以下、POと略記する)又はブチレンオキシドとエチレンオキシド(以下、EOと略記する)のブロック付加物、脂肪族アルコールやアルキルフェノールのPO付加物等が挙げられる。
【0013】
一般式(1)中、Rはアルキル基が好ましい。また、Rの炭素数は10〜18が好ましく、12〜14が特に好ましい。pとkはそれぞれ0以上の数であり、pとkの総和平均は、p=0の場合には、0より大きいことが好ましく、0.7以上がより好ましく、1.2以上が特に好ましく、一方、15以下がより好ましく、5以下がより好ましく、3以下が特に好ましい。また、pとkの総和平均は、p≠0の場合には、5以上25以下が好ましく、8以上20以下がより好ましく、この場合、k=0でもk≠0でもいずれでもよい。mは、p+k=0の場合には、0.5以上3以下が好ましく、p≧0且つk≠0の場合には、0.2以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.4以上が特に好ましく、一方、2.5以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、0.8以下がより好ましく、0.6以下が特に好ましい。nは3が好ましい。また、p+kとkの比率は(p+k)/k≦3.5(但し、k≠0の場合)が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がより好ましく、1以下が特に好ましい。更にp+kとmの比率は、p+k≠0の場合には、(p+k)/mは、1以上20以下が好ましく、1以上5以下がより好ましく、1以上4以下が特に好ましい。kが0のとき、pは、0より大きく22以下が好ましく、10以上20以下がより好ましい。
【0014】
<硫酸化工程>
本発明では、原料化合物を、温度制御流体を流通させることが可能な2つ以上の温度制御できるジャケットを含むジャケット内に配置された反応管の内壁を流下させながら供給して該反応管の内壁に原料化合物の薄膜を形成させるとともに、該反応管内にSO3ガスを供給して原料化合物とSO3ガスとを反応させて硫酸化物を得る。2つ以上のジャケットは、少なくとも上流ジャケットと下流ジャケットとを含む。一般式(2)の化合物は、原料として用いた一般式(1)の化合物の構造に対応する硫酸化物である。
【0015】
本発明に用いられる反応管としては、特に限定されるものではないが、その内壁上に一般式(1)で表される原料化合物を流下させ、原料化合物の薄膜を形成させることができ、またSO3ガス及び不活性ガスを、不活性ガスが原料化合物の薄膜とSO3ガス流との間に流れるように供給することができる流下フィルム形の連続反応器が好ましい。例えば、Chemithon、Ballestra 及び他の、Kirk Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,3rd Ed.,Wiley,1983,Vol.22,pp 28-45、“Sulfonation and Sulfation”と題する記事、W.H.De Groot,“sulphonation Technology in the Detergent Industry”,Kluwer Academic Publishers,Boston,1991; ISBN 0-7923-1202-3、“Detergent Manufacturing Including Zeolite Builders and Other New Materials”,Chemical Technology Review No.128,Noyes Data Corp.,Park Ridge,New Jersey,1979,pp.273-310、米国特許第3931273号明細書(1976年)又は特開2001−181215号などに記載されている様な反応器があげられるが、製作上及び器材の入手のしやすさから反応管は、パイプ形状が好ましい。但し、反応に使用する反応管の数については特に限定されるものではない。
【0016】
反応管、特にパイプ形状の反応管の内径寸法は、圧力損失を防ぎ、エネルギーロスを抑える観点から、8mm以上、好ましくは12mm以上であることが望ましく、反応を終了するのに必要な管長を短くし、装置コストを抑える観点から、80mm以下、好ましくは40mm以下、より好ましくは30mm以下が望ましい。よって、反応管の内径寸法は8〜80mm、更に8〜40mmとすることができる。また、反応管、特にパイプ形状の反応管の長さは、反応を完結させ、未反応原料を低減させたり、反応熱の除熱を効率的に行う観点から、1m以上、好ましくは2m以上、より好ましくは3m以上であることが望ましく、圧力損失の軽減により、装置コストを抑える観点から、20m以下、好ましくは10m以下であることが望ましい。更に好ましくは、反応管の長さは1〜15m、更に2〜10mとすることができる。
【0017】
反応管の材質としては、特に限定はないが、例えばステンレス鋼、ガラス、フッ素樹脂、チタン、その他の合金材等が挙げられるがその限りではない。
【0018】
また、反応管は、該反応管内壁に原料化合物を流下できるように設置されていればよく、配置に制限はないが、例えば、水平面に対して垂直に立てられていることが好ましい。
【0019】
原料化合物の流量としては、一般式(1)で表される原料化合物の分子量によっても異なるが、均一な液膜形成の観点から、浸辺長流量50kg/mHr以上、好ましくは100kg/mHr以上であることが望ましく、液膜内の混合不良による過剰反応を防ぐ観点から、浸辺長流量800kg/mHr以下、好ましくは600kg/mHr以下であること(例えば、50〜800kg/mHr、好ましくは100〜600kg/mHrであること)が望ましい。例えば、14mmのように20mm以下の内径寸法を有する反応管を用いた場合、原料化合物の流量としては、2.2kg/Hr以上、好ましくは4.4kg/Hr以上であることが望ましく、35kg/Hr以下、好ましくは26kg/Hr以下、より好ましくは17kg/Hr以下、特に好ましくは8kg/Hr以下であること(例えば、2.2〜35kg/Hr、好ましくは4.4〜26kg/Hrであること)が望ましい。また、28mmのように20mmを超える内径寸法を有する反応管を用いた場合、4.4kg/Hr以上、好ましくは8.8kg/Hr以上であることが望ましく、70kg/Hr以下、好ましくは53kg/Hr以下、より好ましくは36kg/Hr以下、特に好ましくは18kg/Hr以下であること(例えば、4.4〜70kg/Hr、好ましくは8.8〜53kg/Hrであること)が望ましい。なお、浸辺長流量は以下の式によって求めることができる。
【0020】
【数1】

【0021】
ただし、反応器に供給する一般式(1)であらわされる原料化合物の温度については、融点或いは濁り点以上の温度であればよく、一般的な手段により一定温度に調整して供給するほうがよく、好ましくは供給する温度が35℃以上70℃以下がよい。
【0022】
本発明において、反応管へ導入するSO3ガスについては、空気、窒素又はその他の不活性ガスで希釈されて好適な濃度で使用される。この場合、SO3濃度は、一般的には、1.0体積%以上、10体積%以下(体積/体積)の濃度を使用することが好ましく、2.5体積%以上、6.5体積%以下(体積/体積)の濃度を使用すること好ましい。
【0023】
SO3ガスのみの流量としては、反応管の内径寸法によっても異なるが、例えば、14mmのように20mm以下の内径寸法を有する反応管を用いた場合には、良好な反応を行う観点から、例えば、1.8×10-3Nm3/s以上、好ましくは2.7×10-3Nm3/s以上であることが望ましく、圧力損失の軽減により、装置コストを抑える観点から、9.5×10-3Nm3/s以下、好ましくは8.0×10-3Nm3/s以下であること(例えば、1.8×10-3〜9.5×10-3Nm3/s、好ましくは2.7×10-3〜8.0×10-3Nm3/sであること)が望ましい。また、28mmのように20mmを超える内径寸法を有する反応管を用いた場合には、11×10-3Nm3/s以上、好ましくは15×10-3Nm3/s以上であることが望ましく、57×10-3Nm3/s以下、好ましくは48×10-3Nm3/s以下であること(例えば、11×10-3〜57×10-3Nm3/s、好ましくは15×10-3〜48×10-3Nm3/sであること)が望ましい。
【0024】
また、SO3ガスの流速としては、反応において環状流を形成し、均一な液膜を得る観点から、例えば30Nm/s以上、好ましくは40Nm/s以上であることが望ましく、反応において液膜の乱れ防止及びミストの発生防止の観点から、150Nm/s以下、好ましくは125Nm/s以下であることが望ましい。
【0025】
なお、SO3ガスの流速は、特許3002779号公報の段落0036〜0047に記載の算出方法に従って算出することができる。
【0026】
本発明では、原料化合物とSO3ガスとの反応の反応モル比が、SO3/原料化合物で0.90〜1.09、更に0.94〜1.05、更には0.97〜1.02となるように上記の流速を調整することが好ましい。このモル比が0.90以上であれば反応率が良好で且つ副生物が生成しにくく、1.09以下であれば反応率が良好な水準に維持される。
【0027】
本発明においては、原料化合物の薄膜とSO3ガスとの間に流れるように、不活性ガスを供給することが好ましい。原料化合物とSO3ガスとの間に供給される不活性ガスとしては、特に制限はなく、例えば、空気、除湿を行った乾燥空気、窒素等のSO3ガスと原料化合物の両方に化学反応しないガスを用いることができ、コストの面から空気が好ましく、芒硝等の副反応物低減の目的から、除湿した乾燥空気が更に好ましい。また、SO3ガスの希釈に用いる不活性ガスの一部を用いてもなんら差し支えない。SO3含有ガスは、脱湿した空気又は窒素などの不活性ガスでSO3濃度が1〜30容量%、好ましくは1〜20容量%になるように希釈したものが好適である。1容量%未満の場合はガス容積が大きくなり、30容量%を越えると反応が過剰になる場合がある。
【0028】
また、その際の流量としては、反応管の内径寸法によっても異なるが、例えば、14mmのように20mm以下の内径寸法を有する1本の反応管を用いた場合には、色相改善効果を十分に得るという観点から、例えば、9.0×10-5Nm3/s以上、好ましくは1.4×10-4Nm3/s以上であることが望ましく、反応を促進させ、未反応原料を十分に低減させる観点から、6.3×10-3Nm3/s以下、好ましくは5.4×10-3Nm3/s以下であること(例えば、9.0×10-5〜6.3×10-3Nm3/s、好ましくは1.4×10-4〜5.4×10-3Nm3/sであること)が望ましい。また、28mmのように20mmを超える内径寸法を有する1本の反応管を用いた場合には、1.1×10-3Nm3/s以上、好ましくは1.5×10-3Nm3/s以上であることが望ましく、5.7×10-2Nm3/s以下、好ましくは4.8×10-2Nm3/s以下であること(例えば、1.1×10-3〜5.7×10-2Nm3/s、好ましくは1.5×10-3〜4.8×10-2Nm3/sであること)が望ましい。
【0029】
反応管内壁を流下する原料化合物上を流れる不活性ガスの流速としては、管中心を流れるSO3ガスの流速にもよるが、環状流を形成し、均一な液膜を得る観点から、例えば14mmのように20mm以下の内径寸法を有する1本の反応管を用いた場合には、9Nm/s以上、好ましくは12Nm/s以上であることが望ましく、液膜の乱れ防止及びミストの発生防止の観点から、180Nm/s以下、好ましくは150Nm/s以下であること(例えば、9〜180Nm/s、好ましくは12〜150Nm/sであること)が望ましい。また、28mmのように20mmを超える内径寸法を有する1本の反応管を用いた場合には、3Nm/s以上、好ましくは4Nm/s以上であることが望ましく、120Nm/s以下、好ましくは100Nm/s以下であること(例えば、3〜120Nm/s、好ましくは4〜100Nm/sであること)が望ましい。
【0030】
なお、不活性ガスの流速は、SO3ガスの流速同様、特許3002779号公報の段落0036〜0047に記載の算出方法に従って算出することができる。
【0031】
SO3ガスに対する不活性ガスの流量比は、SO3ガスと不活性ガスの流路面積によって一概に規定することができないが、不活性ガスの流路面積の増大は、不活性ガス流量の増加を引き起こすため、反応熱の発生が過度に抑制されて反応が進みにくくなり、反応管内で反応が完結しにくくなるので、極端に流路面積を増大することは好ましくない。逆に、著しい流路面積の減少は、流路内での圧力損失を増大し、不活性ガス流路内での液膜厚と反応開始後の液膜厚に大きな差が生じることから液膜の乱れを誘発し、反応物を効率よく得られなくなり、好ましくない。これらの見地から、流量比(不活性ガス/SO3ガス、体積比)は、反応管の内径寸法によっても異なるが、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.015以上、更に好ましくは0.02以上である。また、好ましくは1.8以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.4以下である。中でも、0.015〜0.5が好ましく、0.02〜0.4がより好ましい。
【0032】
特に、反応管の内径寸法が20mm以下の場合、更に好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、特に好ましくは0.15以上である。また、好ましくは1.8以下、より好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.4以下である。中でも、0.05〜1.8が好ましく、0.1〜0.5がより好ましく、0.15〜0.4が特に好ましい。
【0033】
特に、反応管の内径寸法が20mmを超える場合、更に好ましくは0.01以上、より好ましくは0.015以上、特に好ましくは0.02以上である。また、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.15以下、特に好ましくは0.1以下である。中でも、0.01〜0.2が好ましく、0.015〜0.15がより好ましく、0.02〜0.1が特に好ましい。
【0034】
また、SO3ガスに対する不活性ガスの流速比は、反応管の内径寸法によっても異なるが、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.2以上である。また、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.0以下、更に好ましくは0.9以下である。中でも、0.15〜1.0が好ましく、0.2〜0.9がより好ましい。
【0035】
特に、反応管の内径寸法が20mm以下の場合、更に好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上、特に好ましくは0.5以上である。また、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.0以下、特に好ましくは0.9以下である。中でも、0.3〜1.2が好ましく、0.4〜1.0がより好ましく、0.5〜0.9が特に好ましい。
【0036】
特に、反応管の内径寸法が20mmを超える場合、更に好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、特に好ましくは0.2以上である。また、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下、特に好ましくは0.48以下である。中でも、0.1〜0.8が好ましく、0.15〜0.6がより好ましく、0.2〜0.48が特に好ましい。
【0037】
これらの流速比の範囲では、得られる硫酸化物、更に硫酸エステル塩の色相改善効果がより良好となる。これらの流速比の範囲においては、SO3ガスと不活性ガスとの境界におけるSO3ガス分子の不活性ガス中への混合が抑制され、SO3分子の原料化合物の液膜表面への到達速度が低下することにより、反応器上部での急激な反応が緩和され、局所的な発熱及び、反応物温度の急激な上昇が抑制されていると考えられる。しかも、これらの流速比に調整することにより、使用する不活性ガスの量はSO3ガスの量に対して従来技術よりも少量でよく、更に設備上に負荷を強いることもなく、より優れた色相改善効果を得ることができる。
【0038】
本発明の製造方法は、原料化合物を、温度制御流体を流通させることが可能な2つ以上の温度制御できるジャケット(2つ以上のジャケットは、少なくとも原料化合物の流下方向の上流に配置された上流ジャケットと下流に配置された下流ジャケットとを含む。)内に配置された反応管の内壁を流下させながら供給して該反応管の内壁に原料化合物の薄膜を形成させるとともに、該反応管内にSO3ガスを供給して原料化合物とSO3ガスとを反応させて硫酸化物を得る硫酸化工程を有する。
【0039】
この硫酸化工程には、公知の薄膜式硫酸化反応装置を用いることができるが、本発明では、原料化合物の流下方向の上流に配置された上流ジャケットと下流に配置された下流ジャケットを含む、温度制御流体を流通させることが可能な2つ以上の温度制御できるジャケットを有する装置が用いられる。当該上流ジャケットに流通する温度制御流体の出口温度は、硫酸エステル塩の色相の観点から、35℃以上70℃以下、好ましくは40℃以上55℃以下であり、当該下流ジャケットに流通する温度制御流体の出口温度は、硫酸エステル塩の臭気の観点から、10℃以上30℃以下、好ましくは10℃以上25℃以下である。また、上流のジャケットの長さは、発熱を緩和させて反応性を制御する観点から、反応管の全長に対して25〜70%であり、下流のジャケットの長さは、過反応を抑えて匂い及び色相改善の観点から、反応管の全長に対して75〜30%である。それ以外の構成は、公知の装置に準ずることができる。なお、本発明におけるジャケットの数については、最低2つ(すなわち、上流、下流のジャケットのみ)が必要である。なお、ジャケットの数が2つである場合、すなわち上流、下流のジャケットのみである場合、上流ジャケットの長さと下流ジャケットの長さの合計が、反応管の全長の80〜100%、更に90〜100%であることが好ましい。
【0040】
3つ以上のジャケットを設ける場合、上流、下流のジャケット以外のジャケット(その他のジャケット)は、上流、下流のジャケットの間に配置されることが好ましいが、上流、下流のジャケットと重るような設定をしない限り、設置位置の指定はない。また、その他のジャケットに流通する温度制御流体の出口温度は、上流、下流のジャケットに相当する流通する温度制御流体の出口温度の範囲内である。
【0041】
また、本発明では、2つ以上のジャケットは、原料化合物の流下方向の最も上流に配置された最上段のジャケットが前記上流ジャケットであり、流下方向の最も下流に配置された最下段のジャケットが前記下流ジャケットであってもよい。
【0042】
本発明に用いられる薄膜式硫酸化反応装置としては、原料化合物の薄膜流とSO3ガス流を並流接触させて反応させる反応管と、原料化合物を反応管内壁へ供給する原料化合物供給部と、反応管内にSO3ガスを供給するSO3ガス供給部と、必要に応じて該薄膜流と該SO3ガス流の間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部と、を備えた薄膜式硫酸化反応装置であって、前記反応管は、温度制御流体を流通させることが可能な2つのジャケット内に配置されている装置が挙げられる。このような薄膜式硫酸化反応装置の一例を、図1〜2に示した。
【0043】
図1は、本発明の好適な薄膜式硫酸化反応装置の一例の概略説明図を示す。硫酸化反応装置1は、原料化合物供給口2、不活性ガス供給口3及び、SO3ガス供給口4がそれぞれ具備された反応管5が配設されている。反応管5の周囲には図中、上下2つのジャケット6、6’が配置されている。この装置は本発明の上流、下流のジャケットにそれぞれ相当する第1、第2のジャケットからなる、2つのジャケットを有する装置である。
【0044】
原料化合物、不活性ガス及びSO3ガスは、反応管5の上部において、それぞれの供給口から反応管5内に供給される。原料化合物は、反応管5の内壁を流下しながら、SO3ガスと反応する。また、反応管5はジャケット6、6’により外部から冷却できる構造となっており、ジャケット6、6’には冷却水が供給される。反応管5の末端には反応終了物を受けるポット7が設けられている。反応終了物は、気液分離器(サイクロン)により硫酸化物と排ガスに分離される。
【0045】
図2は、図1で示された硫酸化反応装置1における原料化合物、不活性ガス、SO3ガスの各供給口の構造を示す概略説明図である。
【0046】
また、本発明を工業的規模で行うにあたっては、複数本の反応管を組み合わせた多管型反応装置を用いることが好ましい。この場合に用いられる反応管としては、上述した反応管の内径寸法、長さ等を用いることができ、各反応管は、内径寸法、長さ等を揃えることが好ましい。
【0047】
2つのジャケットのうち、原料化合物の流下方向の上流に配置された第1のジャケット6には、35℃以上70℃以下、好ましくは40℃以上55℃以下の温度制御流体が流通される。また、原料化合物の流下方向の下流に配置された第2のジャケット6’には、10℃以上30℃以下、好ましくは10℃以上20℃以下の温度制御流体が流通される。
【0048】
また、第1のジャケット6の長さは、反応管5の全長に対して25〜70%、更に40〜60%であることが好ましい。また、第2のジャケット6’の長さは、反応管5の全長に対して75〜30%、更に60〜40%であることが好ましい。
【0049】
更に、第1のジャケット6の長さと第2のジャケット6’の長さの合計に対して、第1のジャケット6の長さは、25〜70%、更に20〜55%であることが好ましく、また、第2のジャケット6’の長さは、75〜30%、更に80〜45%であることが好ましい。
【0050】
<中和工程>
硫酸化反応で製造されたアルキル硫酸又はアルキルアルコキシル化硫酸の中和工程は、好ましくは硫酸化反応の直後に行なう。中和工程に関する代表的な条件は、中和温度が20℃〜60℃、好ましくは25℃〜50℃で行う。
【0051】
また、中和は塩基性中和剤を用いて行われる。塩基性中和剤としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アンモニア、炭素数2〜3のアルカノール基を有するモノ、ジもしくはトリアルカノールアミンである。特に、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア、モノエタノールアミン、及びトリエタノールアミンから選ばれる塩基性中和剤を好適にを使用することができる。また、中和工程から得られる最終的なアルキル硫酸エステル塩は、通常、有効分濃度20質量%以上のペースト状組成物であり、有効分濃度は適宜調整できる。
【0052】
上記一般式(1)で表される原料化合物については、炭素数8から22の炭素数を有するアルコールに、触媒の存在下でEO及びPOを公知の技術で付加して製造される。該アルコールは天然物由来又は合成由来であってもよい。また、天然又は合成アルコールは、分留により単一の炭素数や炭素数の異なる混合物であっても良い。たとえば、商品名ドバノール(三菱化学社製)、商品名ダイヤドール(三菱化学社製)、商品名オキソコール(協和発酵社製)、商品名ネオドール(シェル化学社製)などの合成一級アルコールや前記記載のヤシ油、パーム油、パーム核油、大豆油、ひまわり油、菜種油又は牛脂などから誘導された天然アルコールなどが挙げられ、本発明で好適に用いることができる。該アルコールにEO及びPOを付加反応する場合、不活性ガスを併用してもよい。不活性ガスとしては、付加反応を妨げないガスであれば、特に限定されるものではない。付加反応は、例えば、100〜200℃であり、好ましくは120〜190℃の範囲である。また、前記付加反応の圧力は、0.1〜4MPaであり、好ましくは、0.2〜1.5MPaの範囲である。本発明方法において、触媒の存在下、当該アルコールにEO及びPOを付加させ、目的とする一般式(1)で表される原料化合物を得る。触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。また、触媒量としては、該アルコールに対して、0.1mol%〜2mol%である。
【0053】
得られ原料化合物をそのまま硫酸化反応を行っても、更に濾過により触媒を除去した原料化合物を用いてもよい。濾過により触媒を除去する処理において、濾過処理する手段としては、濾過用フィルターなどを用いて行うことができる。濾過処理に使用するフィルターとしては、例えば、濾紙、濾布、セルロースとポリエステルの二層フィルター、焼結金属フィルター、金属メッシュ型フィルターなど公知のフィルターを用いることができる。更に、遠心分離、例えば、デカンター型遠心分離機若しくは遠心清澄機などを用いても良い。また、濾過処理に先立ち、反応で得られた原料化合物を濾過助剤に接触、又は、前記記載の遠心分離した後に濾過助剤と接触させてもよい。濾過助剤としては、例えば、SiO2を80〜95%含有する非結晶質ケイ酸のケイソウ土、SiO2を約70%含有するケイ酸アルミニウム、セルロース系濾過助剤、活性炭、活性アルミナ、合成ゼオライト、粘土若しくは粘土鉱物などが挙げられる。これらの濾過助剤は、単独で用いてもよく、2種類以上併用しても良い。濾過助剤の使用量は、特に限定されるものではないが、通常、一般式(1)で示される原料化合物に対して、0.01〜5質量%の範囲が好ましい。より好ましくは、0.02〜3質量%の範囲である。
【0054】
原料化合物の製造例の一例を以下に示すが、これに限定されるものではない。
(原料化合物の製造例)
攪拌装置、温度制御装置、自動導入装置を備えたオートクレーブにドデシルアルコール186g(1.0モル)、触媒として48%水酸化カリウム0.6g(0.005モル)を投入し、混合系内を窒素で置換した後、減圧下(1.3kPa)、110℃にて0.5時間脱水を行った。ついでPO23.2g(0.4モル)を145℃にて圧力0.1〜0.4MPaとなるように導入しながら反応を行った。PO導入後145℃で1時間反応させた。ついでEO66.1g(1.5モル)を155℃にて圧力0.1〜0.4MPaとなるように導入しながら反応を行った。EO導入後155℃で1時間反応させた。EO付加反応の終了後、未反応のEOを減圧下で除去した。その後、80℃に冷却し、90%乳酸0.5g(0.005モル)を添加し、ドデシルアルコールのPO平均0.4モル、EO1.5モル付加物を得た。
【実施例】
【0055】
<実施例1>
〔1〕硫酸エステル塩の製造
図1に示したような構成を有する製造装置を用いた。製造装置には、冷却装置である第1、第2のジャケット6、6’を具備した反応管5(内径寸法14mmφ、長さ4m)、反応終了物を受けるポット7が設けられている。かかる硫酸化物の製造装置に、供給口2から原料化合物(ドデシルアルコールのPO平均0.4モル、EO1.5モル付加物、流量:5.3kg/Hr)を、また、供給口4から4.2体積%のSO3ガス(流量:200リットル/分)を乾燥空気(希釈用エア、流量:70リットル/分)で希釈したものを、また、供給口3から不活性ガス(乾燥空気:流量:91リットル/分)を、それぞれ供給した。なお、硫酸化物の製造装置の排出口のガス流量が一定になるように希釈用の乾燥空気の量と不活性ガス量を設定した。また、反応管5の各部分については、それぞれ以下のように設定した。上段の第1のジャケット6(反応管の0m(上部フランジ部)〜2mに渡る位置に設置)には入口から50℃の水を流した。出口での水の温度も50℃であった。下段の第2のジャケット6’(反応管の2〜4mに渡る位置に設置)には入口から16℃の水を流した。出口での水の温度は17℃であった。なお、出口での水の温度は定常時の温度である(以下同様)。硫酸化物の製造装置を出た硫酸化物と排ガスは気液分離器で分離し、硫酸化物を1.21%の水酸化ナトリウム水溶液に撹拌しながら添加し、有効分が10質量%、pHが11〜13となるように調整し、硫酸エステル塩を含む水溶液を得た。この装置では、上流のジャケットの長さが反応管の全長に対して50%であり、下流のジャケットの長さが反応管の全長に対して50%である。
【0056】
〔2〕評価
得られた水溶液について、未反応原料化合物、芒硝(Na2SO4)の含量を分析し、下記の方法で色相(クレット)、臭気を調べてその品質を評価した。結果を表1に示す。なお、表1中、反応率は、原料化合物に対する反応率であり、未反応原料化合物、芒硝(Na2SO4)の含量は、水溶液中の含量である(以下同様)。
【0057】
・色相(クレット)
硫酸化物ナトリウム塩水溶液(有効分10質量%)について、10mmセル、波長420nmにて測定を行った。
【0058】
・臭気
硫酸化物ナトリウム塩水溶液(有効分10質量%)の臭気を5人の専門パネラーが判定し、表1〜表9中の参考例のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の臭気を基準とし同等と判定した人数が4人以上の場合を「○」、2人又は3人の場合を「△」1人以下の場合を「×」とした。
【0059】
<実施例2〜9及び比較例1〜9>
原料化合物の種類、反応条件を表2〜9のように変更して、実施例1と同様に硫酸化物ナトリウム塩水溶液(有効分10質量%)を製造し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1〜9に示す。
【0060】
ただし、実施例8及び比較例8(表8)では、内径寸法28mm、長さ7mの反応管を用い、上流の第1のジャケットは反応管の0m(上部フランジ部)〜3mに渡る位置に設置し、下流の第2のジャケットは反応管の3〜7mに渡る位置に設置した。この装置では、上流のジャケットの長さが反応管の全長に対して43%であり、下流のジャケットの長さが反応管の全長に対して57%である。
【0061】
また、実施例9及び比較例9(表9)では、色相、反応率、未反応原料含量、芒硝含量に代えて、2−MP(2−メチル−2−ペンテナール)のガスクロマトグラフィー(GC)による分析を行った。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
【表4】

【0066】
【表5a】

【0067】
【表5b】

【0068】
【表5c】

【0069】
【表6】

【0070】
【表7】

【0071】
【表8】

【0072】
【表9】

【0073】
表中、原料化合物のRにおいて、「Cn」(C12等)は、炭素数nのアルキル基であることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、本発明に用いられる硫酸化反応装置の一実施態様を示す概略説明図である。
【図2】図2は、図1に示す硫酸化反応装置における原料化合物、不活性ガス、SO3ガスの各供給口の構造の一実施態様を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0075】
1 硫酸化反応装置
2 原料化合物供給口
3 不活性ガス供給口
4 SO3ガス供給口
5 反応管
6 上流(第1)のジャケット(冷却装置)
6’ 下流(第2)のジャケット(冷却装置)
7 ポット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物(以下、原料化合物という)を、温度制御流体を流通させることが可能な2つ以上の温度制御できるジャケット内に配置された反応管の内壁を流下させながら供給して該反応管の内壁に原料化合物の薄膜を形成させるとともに、該反応管内にSO3ガスを供給して原料化合物とSO3ガスとを反応させて硫酸化物を得る工程と、当該工程で得られた硫酸化物を中和する工程とを有する、下記一般式(2)で表される硫酸エステル塩の製造方法であって、
前記2つ以上のジャケットは、原料化合物の流下方向の上流に配置された上流ジャケットと下流に配置された下流ジャケットとを含み、
前記上流ジャケットに流通する温度制御流体の出口温度が35℃以上70℃以下であり、前記下流ジャケットに流通する温度制御流体の出口温度が10℃以上30℃以下であり、
前記上流ジャケットの長さが前記反応管の全長に対して25〜70%であり、前記下流ジャケットの長さが前記反応管の全長に対して75〜30%である、
硫酸エステル塩の製造方法。
R−O−(CH2CH2O)p−(Cn2nO)m−(CH2CH2O)k−H ……(1)
(式中、Rは炭素数8から22の炭化水素基、pとkの総和平均は0以上、40以下、nは3〜4、mは平均で0より大きく5以下の数である。)
R−O−(CH2CH2O)p−(Cn2nO)m−(CH2CH2O)k−SO3M ……(2)
(式中、Rは炭素数8から22の炭化水素基、pとkの総和平均は0以上、40以下、nは3〜4、mは平均で0より大きく5以下の数、Mはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン又は、炭素数2〜3のアルカノール基を有するモノ、ジもしくはトリアルカノールアンモニウムイオンである。)
【請求項2】
原料化合物とSO3ガスとの反応の反応モル比が、SO3/原料化合物で0.90〜1.09である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
不活性ガスを、前記原料化合物の薄膜とSO3ガスとの間に流れるように供給する、請求項1又は2記載の硫酸エステル塩の製造方法。
【請求項4】
前記反応管の内径寸法が8〜80mmである、請求項1〜3の何れか1項記載の硫酸エステル塩の製造方法。
【請求項5】
前記反応管の長さが1〜20mである、請求項1〜4の何れか1項記載の硫酸エステル塩の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−100588(P2010−100588A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275163(P2008−275163)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】