説明

硬化光機器

光硬化可能な合成物を硬化させることのできる波長のバンド内の光を発するように動作可能な少なくとも1つの発光素子と;発光素子の動作を制御するための制御回路と;を有し、前記制御回路は、定常状態の光出力を発するように素子を駆動するために発光素子に定常状態パワーレベルでパワー信号を供給するように動作可能であり、前記制御回路は、さらに、定常状態パワーレベルでパワー信号を持続する間において、定常状態パワーレベルに戻る前に定常状態パワーレベルよりも高く増加させた発光素子に対するパワーレベルを一時的に供給するように、パワー信号において一時的なマイクロパルスを供給するように動作可能であることを特徴とする光硬化可能な合成物を硬化させるための機器と方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科の用途で利用されるような、光硬化可能な合成物を硬化させるための光発生機器に関わる。特に本発明は、エネルギー効率のよい硬化光機器に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤、および接合や充填合成物のような光硬化可能合成物は、表面に物体を付けるため、または間隙やその他の開口部を充填するために広く使われている。このような合成物は、歯科材料の接合や、または歯の空洞(キャビティ)などの間隙の充填のような歯科医術において特定の用途を持っている。このような硬化可能な合成物は、一般に、半固体状態で利用可能であり、要求に応じて作業台上または間隙中に扱われて置かれ、永続的に一層硬い状態に固められ、硬化する。一般に、硬化または固化は、様々な硬化条件および要因により促進させられ駆動される化学的重合である。例えば、半固体合成物またはその成分は、空気、もしくは熱や光エネルギーなどのエネルギーに露出することによって硬化することができる。
【0003】
今日、多くの粘着および充填用の合成物が光エネルギー、特に可視光線エネルギーへの露出によって硬化する。光硬化プロセスは、合成物を硬化させる半固体の光硬化可能な合成物の上に特定の波長または波長のバンドの光のビームを導くことを含む。この合成物は、その中に光に敏感で化学的な成分を含み、それは、特定の波長の光に露出される時に、接着し、充填するべき、または表面を覆うべきワーク表面にその合成物を固化するように重合する。
【0004】
上記のように、このような光硬化可能な合成物は、歯科的手順において広く使われる。歯科医は、ベース、ライナー、コーティング、表面シール、虫歯および空洞のための充填物を含んだ様々な用途における歯修復のために、あるいは安全歯冠、または歯の表面への類似の歯科構造物のために光硬化可能な合成物を使う。一般に、光スペクトルの青色範囲のような、やや狭い波長バンドにある可視光線は、通常使われる大抵の歯科用合成物を硬化させるのに十分である。歯科用複合物は、一旦硬化すると、例えばさらなる虫歯を減らすよう、歯科的構造物を接合するように、および/または、歯に構造的な追加の保持を与えるように、機能する。
【0005】
一般に、硬化させることは、可視光線、特に青色光のビームを発生し、そして光硬化可能な合成物を含んだ歯の表面にその光を導くことのできる種々の器具または装置によって達成される。青色光は、硬化を完了するべき歯の表面上の複合物層に侵入する。複合物層を適切に硬化させるための青色光への露出の持続期間は、光硬化可能な合成物そのもの、複合物層の厚さ、および硬化光機器から発した青色光のパワー(電力または強度またはエネルギー)と特性に依存する。例えば、薄い歯の表面被覆または化粧仕上げを供給するために合成物を硬化させることは、より少ない光エネルギーとより短い硬化時間が必要となる反面、虫歯および空洞のような間隔のためのより分厚く深い充填物を供給するための合成物を硬化させることは、より大量の光エネルギーとより長い硬化時間を必要とすることになる。
【0006】
現在、歯に青色光を供給するために利用される種々の従来技術による歯科的硬化光デバイスは、種々の欠点を示す。例えば、歯に向けられた光は、必然的に、人間の組織にとって望ましくないと知られている光のある特定波長で周囲の口内組織を露光する。それ故、硬化光デバイスは、適切な硬化のための特定波長に敏感である光硬化可能な合成物を硬化させるような適切な波長での光を発するように、そして出力放射を適切な波長バンド内に限定するように、変えなければならない。
【0007】
1つのポピュラーな従来技術による硬化光においては、大きな波長バンドを発する電球は、要求される狭いバンドの光を与えるためにフィルターされなくてはならない。例えば、ハロゲン電球は光強度の源(ソース)、生の可視光として使用される。可視光線の望ましくない波長のフィルタリングは、複雑なフィルタリングデバイスまたは特別なフィルターの使用によって達成され、そしてそれは、ランプ素子からの広範囲のスペクトル光を受け取り、望ましい青色波長の光だけを通過させて光硬化可能な合成物上に反射させることを可能にする。望ましくない波長は機器のハウジング中に偏向させて返される。ハロゲン電球の高い熱に加えて、このようなフィルタリングは機器の動作の間に熱の蓄積をも増加する。この熱は、適切なデバイス動作のために消散させなければならず、そのため、大きなヒートシンク、ファン、およびその他のデバイスを、発生した熱を除去するか、またはその方向を変えるために必要とする。さらに、その熱は電球の動作を低下させ、その有効寿命を短くする。
【0008】
このような電球ベースの硬化光の欠点に対応するために、この技術におけるいくつかの試みがなされてきた。そして、LEDのような固体状態の発光素子を利用するいくつかの製品が存在し、光硬化可能な合成物を硬化させるのに相応しい狭いスペクトルの青色光を発生する。このようなデバイスはフィルターを必要とせず、一般的にはハロゲン電球よりも低温で動作する。それは依然として熱の検討材料の下にある。例えば、それは、長い硬化時間使われる場合に過熱する傾向がありうる。しかしながら、LEDチップまたはチップ群に対するパワーが一層高出力を供給するように増加されて、それにより硬化時間が短縮すれば、LEDチップへの損傷に関する大きな心配が存在する。
【0009】
例えば、LED部品またはチップの光出力が大きくなればなるほど、その内部の温度は高くなる。従って、LEDベースの硬化光の製造業者は、LED素子の内部の熱発生に対処しなくてはならない。内部の熱が制御されなければ、LED素子、その内層および内部の電気配線に対する不可逆な損傷をもたらすことになり、そのため永久に機能しない硬化デバイスとなる。一般に、LEDチップ製造業者は、内部の熱発生量を最小にするための推薦される電力制限を与えている。しかしながら、短縮させた硬化時間に対してなおも高い出力レベルを供給するために、硬化光製造業者は推薦されるレベルを越えてLED素子を「駆動させる」ことが必要となりうる。これは、硬化デバイスにおいて非常に専門的で、高価で、効率のよい方法が利用されなければ、「溶融」の可能性をさらに増やす。
【0010】
このように、現在では、硬化時間を減らし光出力を引き上げようとする一方で、LED光源の熱発生局面を管理することには、トレードオフ(二律背反)が存在する。上記のように、一層大きくて複雑な熱消散システムは望ましくなく、特にそれは、デバイスが電球ベースの硬化デバイスと比較してとにかくより小さく、よりコンパクトとなる傾向があるようなLED硬化デバイスとしては、適切でない可能性がある。
【0011】
内部の素子熱発生とより高い光出力への関心に加えて、歯科で扱う組織の温度も心配である。従って、硬化光デバイスは、より少ない時間に最大の合成物変化を供給しなければならない一方で、上昇する歯温度の可能性と、その医原性結果物の可能性を最小にしなければならない。
【0012】
このように、従来技術による種々の硬化光機器は、電球およびフィルタデバイスを持っていようが持っていまいが、合成物の硬化と熱消散が可能な発光のために非能率的である。その結果、これらの機器は光源からのさらなるパワー出力、増加させた発光、および/またはより長い硬化時間を必要とする。従って、このような機器は、全体的なコストと大きさを増すような、より大きく、一層効率のよい熱消散部品をも必要とする。
【特許文献1】米国特許第6,200,134号明細書
【特許文献2】米国特許第6,692,251号明細書
【特許文献3】米国特許出願第10/215,210号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ゆえに、高速で、効率良く、効果的な方法で合成物を硬化させ、一方で便利さを改善し、大きさと全体的なコストを減らすような硬化光機器を供給する必要がある。
【0014】
従って、光硬化可能な合成物上に導かれた光の量を最大化することによって、短縮した時間で効率的かつ効果的に光硬化可能な合成物を硬化させ、その一方で、光源で内部的に発生され消散されねばならない熱の量を制御する硬化光機器を供給することが、さらに望まれる。
【0015】
そのような硬化の一方で、歯における組織温度を低下させるようなものを供給することも望ましい。
【0016】
小さく、ポータブルで、光硬化可能な合成物を硬化させるための使用に都合が良い硬化光機器を供給することも望ましい。
【0017】
メンテナンスの要求が少なく、長い寿命を持ったエネルギー効率の良い発光素子から光を放射する光機器を供給することも望ましい。
【0018】
これらの目的および他の目的は本発明によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は光硬化可能な合成物を硬化させるための機器を提供する。その機器は、光硬化可能な合成物を硬化させることのできる波長のバンド内の光を発散するように動作可能な少なくとも1つの発光素子を含む。一実施の態様では、配列をなすこのような発光素子は470nm付近の範囲の青色波長で光を発するのに利用される。制御回路は、発光素子を駆動するパワーサプライを制御することなどによって発光素子の動作を制御する。その制御回路は、定常状態の中途の光出力に前記素子または素子群を駆動するために、定常状態パワーレベルにおいて上記発光素子にパワー信号を供給するように動作可能である。さらに制御回路は、定常状態パワーレベルでパワー信号を持続する間において、定常状態パワーレベルよりも高い一時的なマイクロパルスを供給し、増加させたパワーレベルを発光素子に一時的に供給するように、動作可能である。この定常状態パワーレベルとマイクロパルスレベルとの間の機器サイクルは、それによって機器の光出力を増やす一方で、熱発生を制御する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、光硬化可能な合成物を硬化させることのできる波長のバンドにおける光を発するための半導体接合(例えばLED)を利用した固相発光素子のような発光素子を利用して、光硬化可能な合成物を硬化させるための機器を対象とする。例えば、波長のバンドは、典型的な歯科用合成物のような硬化合成物に対して、通常使われる約470nmのバンドにおける適切な青色光を含むことができる。しかしながら本発明は、このようなバンドまたは波長範囲に限定されない。制御回路は、発光素子についての、あるいは他の実施形態では配列をなす発光素子についての動作を制御する。制御回路は、定常状態光出力を発するよう素子を駆動するために発光素子に最初の定常状態レベルでパワー信号を供給するように動作可能である。加えて、制御回路は、定常状態パワーレベルでパワー信号を持続する間において、定常状態パワーレベルよりも高く増加させた発光素子に対するパワーレベルを周期的に供給するように、パワー信号において周期的なマイクロパルスを供給するようにさらに動作可能である。各マイクロパルスの間において、パワー信号は定常状態パワーレベルに戻る。このようにして、発光素子からの光出力または他の光源は増加される一方で、そのような発光素子によって発生された熱が制御される。本発明において、制御回路およびパワー信号制御の仕組みは、光硬化可能な合成物を硬化させるための適切な何らかの機器を用いて利用できる。それは増加させた望ましい光出力を供給するが、その一方で素子によって発生した熱、特に素子の層およびLEDのような部品の内部の熱を制御する。図1はそのようにできる硬化機器の1つの概略図を示すが、本発明によって組み入れることができ、また改善できる硬化機器に関して、それを制限することを意図していない。
【0021】
特に、図1を参照すると、光硬化可能な合成物を硬化させるための機器10が示されている。このような機器は、バッテリ13またはパワーを供給するACコンセントに接続するための適切な回路15などの、パワー源12を含むことができる。パワー源12は、機器10の電気構成部品のそれぞれに必要なパワーを与えるパワーサプライ14に接続される。本発明の一局面によれば、制御回路16はパワー源12とパワーを供給するためのパワーサプライ14との間に接続される。そして制御回路16は、パワーサプライと、究極的には他の機器10の電気部品、特に光源18の1以上の発光素子を制御するためのものである。図1は、接続部17によって制御回路16に接続されたパワー源12、および接続部19によってパワーサプライ14に接続された制御回路を示すが、他の接続も適している。光源は適切なヒートシンク20または他の熱消散素子に接続することができる。ヒートシンクは、加工されたアルミニウムブロック、熱パイプ、または例えば対流によって消散できるように光源18から熱を取り出して伝導するためのその他の適切な熱消散素子のような、何らかの適切な形態をとることができる。このために、任意選択的なファン部材22を、より大量の熱消散を容易にするために利用することができる。ファン22はパワーサプライ14に適切に接続することができる。
【0022】
光源18は、光硬化可能な合成物を硬化させることのできる波長のバンドなどにおける光を発生または発するための適切な何らかの光源とすることができる。例えば光源18は、多くの歯科用合成物を硬化させるのに適した青色光範囲であるところの438nmから485nmの範囲の光を発生するように動作可能である。本発明の1つの特定の実施形態において、光源は、固体状態のLEDのような少なくとも1つの発光素子を含む。他の実施形態においては、配列をなす複数の発光素子が光源から光を発するのに利用される。
【0023】
本発明の1つの特定の実施形態において、光源は、波長の特定バンド中において光を発生できる半導体接合を有する複数の固体状態の発光素子を含む。通常、このような素子は、しばしばLEDと言われる。例えば、発光素子は、発光ダイオード(LED)、または活性化されあるいはオン状態の際に光を発するその他の適切な固相かつ半導体素子とすることができる。前述のように、発光素子が波長の狭いバンド中に、歯科用合成物のような光硬化可能な合成物を硬化させる目的のための波長を持った光を発することは、望ましい。本発明の原理による、適切な光源および適切な硬化機器のいくつかの例は、共同出願された特許文献1及び2、さらに「硬化光機器(Curing Light Instrument)」という発明の名称で2002年8月8日に出願された特許文献(特許出願)3(以上の特許文献および特許出願はその全体が参照としてここに組み入れられる)に示されている。しかしながらこれらの文献が示す機器は、本発明への組み入れと使用の観点のみに限定することを意図していない。
【0024】
機器10は、反射素子、光導体、レンズ、保護カバー、または、焦点合わせをしたり、ガイドしたり、そうでなければ光源18から発生した光を操作したり、あるいは光源の発光素子を保護するための他の素子のような、適切な光学素子24を利用することもできる。
【0025】
再び、図1と、図2をも参照すると、光源に与えられるパワー信号30が示されている。その信号は、定常状態パワーレベル32と、定常状態パワーレベル32よりも高く増加させたパワーレベルを供給する一連のマイクロパルス34を含む。このようなパワー信号は制御回路16によって供給され、そして特に実際のパワー信号30を発生するパワーサプライ14またはデバイスの制御を介して制御回路によって供給される。図2は、本発明によって供給されるパワー信号30のさらに詳細な例を示す。
【0026】
制御回路16は、参照符号36で示すように光源18が電力を供給されない時、機器10にオフ状態を与える。制御回路16は、光硬化可能な合成物を硬化させる光を発する光源18を駆動するために、参照符号38で示すようにパワーサプライ14の適切な制御を通じてオン状態をも与える。オン状態では、制御回路16は、定常状態パワーレベル32で発光素子にパワー信号を供給するように動作可能であり、これも同じく図2においてレベルAとして示す。さらに具体的には、制御回路は、図1に示すような適切な電気接続または結合40を通じて光源18に対するパワー信号を発生するためにパワーサプライ14を制御する。図1では、制御回路は、パワー源12とパワーサプライ14との間に電気的に結合された別々の回路として示している。適切な他の電気接続および結合も利用できる。例えば、制御回路は、接続部またはライン40上での出力であるパワー信号30を制御するような、実際のパワーサプライの一部とすることができる。
【0027】
定常状態パワーレベル32でのパワー信号は、合成物を硬化させるために発光素子から発する適切な光出力を供給するための適切ないくらかのレベルとすることができる。このパワー信号は、発光素子、またはLED配列のような配列をなす発光素子群のいずれかに印加される電流か電圧のいずれかの形態とすることができる。一実施形態において、定常状態パワーレベルは1.0アンペア(Amp)駆動電流としうる。定常状態パワーレベルと同時に、あるいは定常状態パワーレベルでパワー信号を供給し続けている間に、制御回路16は、発光素子に増加したパワーレベルを周期的に供給するパワー信号の周期的マイクロパルス34を供給し、またはむしろパワーサプライ14に発生させ、それによって光出力を増やすように、さらに動作可能である。マイクロパルスは定常状態パワーレベル32より高いパワーレベルを供給する。このようなレベルを図2でレベルBとして示す。それぞれのマイクロパルスは、図2に示すように、前の定常状態パワーレベルの持続期間T1に対して持続期間T2を持つ。このマイクロパルスとその関連するパワーレベルは、定常状態パワーレベルよりかなり短い時間の間に供給される。すなわち、T2はT1よりかなり小さい。例えば、いくつかの実施形態においては、マイクロパルスは、定常状態パワーレベルが供給される間に約0.5から2.0秒毎に起こすことができる。各マイクロパルス間の間隔はマイクロパルスの持続期間にも依存しうる。例えば、一層短いマイクロパルスによって、熱発生の心配を起こすことなく一層頻繁にパルスを発生させることを可能にできる。上記の程度に加えて、他のマイクロパルス間隔も使うことができる。しかし一般的には、マイクロパルスは定常状態レベルに介在する時間に比較すると短い。このように、光源18からの光出力が、より大きなパワーレベルを供給するために簡単に増やされ、それにより硬化時間を減らす一方で、依然として光源の素子で内部的に発生した熱を制御する。例えば、さらに高いレベルBにおいて絶えずLED配列のような光源を駆動することは、望ましくない熱特性を招来し、過熱や、場合によっては配列および配列素子群の破損の原因となる。本発明は、機器の増加させた光出力を供給することによるこのような欠点に対処し、一方で、発光素子中で発生した熱を制御する。
【0028】
本発明の一実施形態においては、マイクロパルスは約0.75秒毎に(T1=0.75秒)発生し、そして約0.25秒続く(T2=0.25秒)。すなわち、マイクロパルスは約1秒毎に発生しては完了する(T1+T2=1秒)。すなわち、マイクロパルスは光硬化可能な合成物の露光の各1秒に対して0.25秒続く。勿論、マイクロパルスはそれより短い持続期間または長い持続期間とすることができる。いくつかの実施形態においては、マイクロパルスは約0.1から0.5秒の持続期間を持つことができる。勿論、他の持続期間も本発明の動作に基づいて利用することができる。
【0029】
本発明の他の局面によれば、増加させたマイクロパルスのパワーレベルは、電流信号であるか電圧信号であるかにかかわらず、定常状態パワーレベルよりも約30から50パーセント高くできる。例えば、レベルBが上記の範囲のパーセンテージだけレベルAを上回るようになる。本発明の一実施形態においては、マイクロパルスの増加させたパワーレベルは1.5アンペアとすることができ、それにより1.0アンペアの定常状態レベルを約50パーセントだけ上回ることができる。
【0030】
図2の参照符号38で示した硬化時間は、適切な硬化を与えるのに適切な幾らかの望ましい時間とすることができる。一実施形態において機器10は、5秒、10秒、などの選択可能な硬化サイクルを持つことができる。上述のようなT1=0.75秒およびT2=0.25秒の例では、一般に約1秒毎の硬化時間についてマイクロパルスが存在する。10秒間の硬化時間に対しては約10個のマイクロパルスが存在でき、以下同様である。本発明は、定常状態パワーレベルと、1秒から30秒の範囲の硬化時間、または、光硬化可能な合成物の適切な硬化、あるいはそのような合成物の特定の用途のために必要な、より長い、またはより短い硬化時間、に対するマイクロパルスとを供給することができる。
【0031】
本発明の1つの重要な局面においては、適切な硬化を与える光源18からの一貫した十分な光出力を供給するために、少なくとも定常状態パワーが常に光源に供給される。すなわち、それぞれのマイクロパルス持続時間の終わりには、パワー信号は定常状態パワーレベルに戻る。機器の有効な光出力を増やすことによるマイクロパルスは、パワー信号が単に定常状態パワーレベルでのみ持続される場合に必要となりうる硬化時間を著しく減らす。本発明によって提供される定常状態レベルより高いマイクロパルス信号は、周期的なレベル移動(レベルシフティング)と呼ぶこともできる。例えば、本発明を利用する場合、マイクロパルスを利用するが、上記のように本発明による定常状態レベルと同時に供給した組み合わせを利用して、単に定常的な入力信号だけで7秒〜10秒かかるような硬化用途を、ここでは5秒の硬化に短縮し得る。例えば、カリフォルニア州サンノゼ(San Jose, California)のルミレッズ・ライトニング社(Lumileds Lighting, LLC)から入手可能なルクセオンV(Luxeon V)のような適切な光源を利用すれば、光出力を1200mW/cmの定常状態光出力レベルから約1600mW/cmに上昇させることができる。勿論、光源、および光源で利用される素子数に依存して、他の光出力に達するようにできる。例えば、光出力を、本発明によって600mW/cmから2500mW/cmの範囲で与えることができる。
【0032】
図3を参照すると、このグラフは、定常状態パワーレベルからのマイクロパルスを包含する本発明を利用して、5秒の硬化時間に対する光源の出力パワー密度を示す。Y軸に示すように、1200mW/cm2付近の定常状態レベルから1600mW/cm2付近にパワー密度が増加できる。しかしながら、本発明によれば、光出力がかなり増加し、それによって硬化時間は短縮されるが、発光素子によって発生する内部の熱は光源の過熱および損傷を防止するために制御される。本発明は、発光素子の内部のチップまたは回路の温度を損傷限界レベルにまで上げることなく、増加したLED出力を供給する。このように、発光素子に対する修復不可能な損傷を起こす恐れなしに、より高いパワーとより効率的なLED光出力を供給することができる。調整パワーソースを使用するデバイスでは通常的であるように、露光の際には決してパワーレベルは0に下がらない。むしろ、非常に高いレベルの出力密度(マイクロパルスにより増加した基準ライン)が見られ、その状況で、発光素子は、パルス法におけるよりも少し超えた最大出力値を達成するように駆動することができる。
【0033】
本発明のさらなる利益は低下させた歯髄内部温度レベルであって、これにより硬化場所の周りの組織に供給される熱レベルを一層望ましい程度に維持する。さらに本発明は、一層高い光出力を発生する個々のLEDの形態で必要となるような一層高いパワーのLED技術を必要とせずに、LEDのような発光素子を効率的に駆動する性能を与える。本発明の一局面によれば、定常状態パワーレベルより高いマイクロパルスは、硬化機器の光出力を、定常状態光出力より約30パーセント高いレベルに増やすことができ、従って上記のように望ましい結果を達成することができるが、その一方で、機器の過熱と損傷を防止する。
【0034】
本発明の上述の実施形態は、マイクロパルス間を一様に同じ持続期間によって分離したほぼ等しい持続時間の反復マイクロパルスを利用するが、その一方で、本発明の他の実施形態は、一連のマイクロパルスが異なった持続期間のものであるようなマイクロパルス、あるいは定常状態レベルでの異なった持続期間によって分離されたものであるようなマイクロパルス、もしくはそれら両方を利用することができる。例えば、一連のマイクロパルスの間の定常状態パワーレベルで約0.5から2.0秒の範囲の持続時間がどこかに存在し、そして、その持続期間が一連のマイクロパルスの或るものから次のものへと変化するようにできる。一連のマイクロパルスは、それぞれ例えば約0.1から0.5秒の範囲の持続期間をどこかに持ち、一連のマイクロパルスの或るものが次のものと異なるようにもできる。
【0035】
本発明を、その実施形態を説明することによって示し、その実施形態をかなり詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲の請求項の範囲をそのような詳細事項に何らかの方法で制限し、または限定することは、出願人の意図ではない。さらなる利点と変更は当技術分野の当業者にとって容易に明らかとなるであろう。それゆえ、本発明の、より広範囲な局面は、提示され説明された特定の詳細事項、代表的な機器、方法、例示に限定されるものではない。従って、出願人の全般的な新規の思想における精神または範囲から逸脱することなく、上記のような詳細事項からの離脱をなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の原理による、硬化機器の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態における、硬化機器の制御回路によって供給されるパワー信号の図式的なダイアグラムである。
【図3】本発明による、時間に伴なう光出力のさらなる図式的なダイアグラムである。
【符号の説明】
【0037】
10 機器
12 パワー源
13 バッテリ
14 パワーサプライ
16 制御回路
18 光源
20 ヒートシンク
22 ファン部材
24 光学素子
30 パワー信号
32 定常状態パワーレベル
34 マイクロパルス
34 周期的マイクロパルス
36 オフ状態
38 オン状態
40 電気接続(ライン、結合)
T1 定常状態の持続期間
T2 マイクロパルスの持続期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化可能な合成物を硬化させることのできる波長のバンド内の光を発散するように動作可能な少なくとも1つの発光素子と;
前記発光素子の動作を制御するための制御回路であって、定常状態の光出力を発散するよう前記素子を駆動するために前記発光素子に定常状態パワーレベルでパワー信号を供給するように動作可能である制御回路と;
を有し、
前記制御回路は、さらに、定常状態パワーレベルでパワー信号を持続する間において、定常状態パワーレベルに戻る前に定常状態パワーレベルよりも高く増加させた発光素子に対するパワーレベルを一時的に供給するように、パワー信号において一時的なマイクロパルスを供給するように動作可能であり、
それによって機器の光出力を増やす一方で、それによって発生した熱を制御する
ことを特徴とする光硬化可能な合成物を硬化させるための機器。
【請求項2】
前記マイクロパルスは定常状態パワーレベルの間に周期的に供給されることを特徴とする請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記マイクロパルスは定常状態パワーレベルの間に約0.5から2.0秒毎に起こることを特徴とする請求項2に記載の機器。
【請求項4】
前記マイクロパルスは定常状態パワーレベルの間に約1秒毎に起こることを特徴とする請求項2に記載の機器。
【請求項5】
前記マイクロパルスは約0.1から0.5秒の持続期間を持つことを特徴とする請求項1に記載の機器。
【請求項6】
前記マイクロパルスは約0.25秒の持続期間を持つことを特徴とする請求項1に記載の機器。
【請求項7】
前記マイクロパルスは、定常状態パワーレベルよりも約30から50パーセント高いパワー信号の増加させたパワーレベルを供給することを特徴とする請求項1に記載の機器。
【請求項8】
配列をなす複数の発光素子をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の機器。
【請求項9】
前記発光素子は固体状態の発光素子であることを特徴とする請求項1に記載の機器。
【請求項10】
前記制御回路は、1から30秒の範囲において定常状態パワーレベルと硬化時間のためのマイクロパルスとを供給することを特徴とする請求項1に記載の機器。
【請求項11】
前記制御回路は、パワー信号を発生するパワーサプライを制御することによってパワー信号を供給することを特徴とする請求項1に記載の機器。
【請求項12】
供給される光出力は600W/cmから2500W/cmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の機器。
【請求項13】
前記マイクロパルスは、定常状態パワーレベルよりも約30から50パーセント高いレベルに光出力を増加させることを特徴とする請求項1に記載の機器。
【請求項14】
一連のマイクロパルスの間の定常状態パワーレベルにおいて約0.5から2.0秒の範囲の持続期間が存在することを特徴とする請求項1に記載の機器。
【請求項15】
光硬化可能な合成物を硬化させることのできる波長のバンド内の光を発散するように動作可能な少なくとも1つの発光素子と;
前記発光素子の動作を制御するための制御回路であって、定常状態の光出力を発散するよう前記素子を駆動するために前記発光素子に定常状態パワー信号においてある信号を供給し、同時に、定常状態パワーレベルよりも高く増加させたパワーレベルを供給するように、パワー信号において一時的なマイクロパルスを供給するように動作可能である制御回路と;
それによって機器の光出力を増やす一方で、それによって発生した熱を制御する
ことを特徴とする光硬化可能な合成物を硬化させるための機器。
【請求項16】
前記マイクロパルスは定常状態パワーレベルの間に周期的に供給されることを特徴とする請求項1に記載の機器。
【請求項17】
前記マイクロパルスは定常状態パワーレベルの間に約0.5から2.0秒毎に起こることを特徴とする請求項16に記載の機器。
【請求項18】
前記マイクロパルスは約0.1から0.5秒の持続期間を持つことを特徴とする請求項15に記載の機器。
【請求項19】
前記マイクロパルスは、定常状態パワーレベルよりも約30から50パーセント高い、増加させたパワーレベルを供給することを特徴とする請求項15に記載の機器。
【請求項20】
配列をなす複数の発光素子をさらに有することを特徴とする請求項15に記載の機器。
【請求項21】
前記発光素子は固体状態の発光素子であることを特徴とする請求項15に記載の機器。
【請求項22】
前記制御回路は、1から30秒の範囲において定常状態パワーレベルと硬化時間のためのマイクロパルスとを供給することを特徴とする請求項15に記載の機器。
【請求項23】
前記制御回路は、パワー信号を発生するパワーサプライを制御することによってパワー信号を供給することを特徴とする請求項15に記載の機器。
【請求項24】
供給された光出力は600mW/cmから2500mW/cmの範囲にあることを特徴とする請求項15に記載の機器。
【請求項25】
前記マイクロパルスは、定常状態パワーレベルよりも約30から50パーセント高いレベルに光出力を増加させることを特徴とする請求項15に記載の機器。
【請求項26】
一連のマイクロパルスの間の定常状態パワーレベルにおいて約0.5から2.0秒の範囲の持続期間が存在することを特徴とする請求項1に記載の機器。
【請求項27】
ある量の光硬化可能な合成物を硬化場所に置く段階と;
光硬化可能な合成物を硬化させることのできる波長のバンド内の定常状態光出力で光を発するための定常状態パワー信号によって、少なくとも1つの発光素子に電力を供給する段階と;
定常状態パワーレベで発光を持続する間において、定常状態パワーレベルよりも高く増加させたパワーレベルで光を一時的に発するように、パワー信号において一時的なマイクロパルスをさらに供給する段階と;
を有し、
それによって機器の光出力を増やす一方で、それによって発生した熱を制御する
ことを特徴とする光硬化可能な合成物を硬化させるための方法。
【請求項28】
前記マイクロパルスは定常状態パワーレベルの間に周期的に供給されることを特徴とする請求項27に記載の機器。
【請求項29】
定常状態パワーレベルの間に約0.5から2.0秒毎にマイクロパルスを供給する段階を、さらに有することを特徴とする請求項28に記載の機器。
【請求項30】
定常状態パワーレベルの間に約1秒毎にマイクロパルスを供給する段階を、さらに有することを特徴とする請求項28に記載の機器。
【請求項31】
約0.1から0.5秒の持続期間を持つマイクロパルスを供給する段階を、さらに有することを特徴とする請求項27に記載の機器。
【請求項32】
約0.25秒の持続期間を持つマイクロパルスを供給する段階を、さらに有することを特徴とする請求項27に記載の機器。
【請求項33】
前記マイクロパルスは、定常状態パワーレベルよりも約30から50パーセント高い、増加させたパワーレベルを供給することを特徴とする請求項27に記載の機器。
【請求項34】
配列をなす複数の発光素子をさらに有することを特徴とする請求項27に記載の機器。
【請求項35】
前記発光素子は固体状態の発光素子であることを特徴とする請求項27に記載の機器。
【請求項36】
1から30秒の範囲において定常状態パワーレベルと硬化時間のためのマイクロパルスとを供給する段階を、さらに有することを特徴とする請求項27に記載の機器。
【請求項37】
定常状態パワーレベルよりも約30から50パーセント高いレベルに光出力を増加させる段階を、さらに有することを特徴とする請求項27に記載の機器。
【請求項38】
600mW/cmから2500mW/cmの範囲にある光出力を供給する段階を、さらに有することを特徴とする請求項27に記載の機器。
【請求項39】
一連のマイクロパルスの間の定常状態パワーレベルにおいて約0.5から2.0秒の範囲の持続期間が存在することを特徴とする請求項27に記載の機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−526580(P2008−526580A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551494(P2007−551494)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/020523
【国際公開番号】WO2006/130495
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(598036436)ケール コーポレーション (9)
【Fターム(参考)】