説明

硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法、硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子、並びに、熱硬化性樹脂組成物

【課題】硬化剤及び/又は硬化促進剤の放出性に優れ、硬化性樹脂組成物に配合された場合に優れた速硬化性を発揮することができ、貯蔵安定性にも優れた硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法を提供する。また、該硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法により得られる硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子、並びに、該硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子を含有する熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】シェルを構成する化合物を含有する液滴が水性媒体に分散している乳化液を調製する工程と、前記シェルを構成する化合物を含有する液滴に、硬化剤及び/又は硬化促進剤を含浸させる工程と、前記硬化剤及び/又は硬化促進剤を内包するシェルを形成する工程とを有する硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化剤及び/又は硬化促進剤の放出性に優れ、硬化性樹脂組成物に配合された場合に優れた速硬化性を発揮することができ、貯蔵安定性にも優れた硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法に関する。また、本発明は、該硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法により得られる硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子、並びに、該硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子を含有する熱硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、接着剤、シール剤、コーティング剤等の様々な用途に用いられている。一般に、エポキシ樹脂には、硬化反応を進行させるための成分として硬化剤が、また、硬化性を向上させるための成分として硬化促進剤が添加される。特に、硬化剤又は硬化促進剤とエポキシ樹脂とを安定な一液にするために、潜在性をもたせた硬化剤又は硬化促進剤が多用されている。
【0003】
エポキシ樹脂に用いられる硬化剤又は硬化促進剤として、例えば、特許文献1には、メジアン径が0.3μmを超えて12μm以下であり、アミンアダクトを主成分としており、メジアン径の0.5倍以下で定義される小粒径のエポキシ樹脂用硬化剤含有比率が15%を超えて40%以下であるエポキシ樹脂用硬化剤が開示されている。また、特許文献1には、エポキシ樹脂の中でエポキシ樹脂用硬化剤の被覆反応を行い、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得ることが好ましい旨が記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載のように硬化剤をエポキシ樹脂により被覆した場合には、反応性の比較的低い硬化剤をコア材として用いなければならないという制限があった。また、コア材を熱硬化性樹脂で被覆することから、コア材が膨張しても熱硬化性樹脂からなるシェルが破壊されにくく、硬化反応が遅いという問題もあった。
【0004】
また、特許文献2には、シェルが硬化エポキシ樹脂からなる中空微粒子の中空部分に、エポキシ樹脂の硬化剤が内包された硬化剤内包微粒子が開示されている。特許文献2には、硬化剤内包微粒子の製造方法として、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂に対して余剰の硬化剤とを含有する混合物を懸濁させた懸濁液を作製し、懸濁液を重付加反応させる旨が記載されている。
しかしながら、特許文献2に記載の硬化剤内包微粒子は、特許文献1の場合と同様にコア材が膨張しても熱硬化性樹脂からなるシェルが破壊されにくく、硬化反応が遅いという問題があった。また、コア材を溶解させるために添加している補助溶媒が微粒子内部に残っていることから、半導体接合材等の用途に用いる場合にはボイドの原因になるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−204669号公報
【特許文献2】特開2006−225521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、硬化剤及び/又は硬化促進剤の放出性に優れ、硬化性樹脂組成物に配合された場合に優れた速硬化性を発揮することができ、貯蔵安定性にも優れた硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、該硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法により得られる硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子、並びに、該硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子を含有する熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シェルを構成する化合物を含有する液滴が水性媒体に分散している乳化液を調製する工程と、前記シェルを構成する化合物を含有する液滴に、硬化剤及び/又は硬化促進剤を含浸させる工程と、前記硬化剤及び/又は硬化促進剤を内包するシェルを形成する工程とを有する硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法である。
以下、本発明を詳述する。
【0008】
本発明者は、シェルを構成する化合物と硬化剤及び/又は硬化促進剤とを油性溶媒に溶解した混合溶液を作製し、この混合溶液からなる液滴を水性媒体中に分散させて乳化液とし、続いて、液滴から油性溶媒を除去する等によりシェルを形成し、硬化剤及び/又は硬化促進剤を内包する複合粒子を得ることを検討した。このような方法によれば、熱により容易に崩壊する熱可塑性樹脂をシェルとすることができ、低温での貯蔵安定性と高温での速硬化性との両立が期待される。
しかしながら、このような方法によると、内包される硬化剤及び/又は硬化促進剤の体積比率が低くなり、シェルが厚く、硬化反応に長時間を要する複合粒子となるという問題が生じた。内包体積比率が小さいと、例えば、硬化性樹脂組成物に配合される場合には多量に配合されなければならず、硬化性樹脂組成物の粘度上昇にもつながる。
【0009】
内包体積比率を高めるためには、例えば、シェルを構成する化合物に対する硬化剤及び/又は硬化促進剤の配合比率を高めることが考えられる。しかしながら、硬化剤及び/又は硬化促進剤は極性の高いものが多いため、シェルを構成する化合物と混合しにくく、配合比率を高めることは困難である。また、硬化剤及び/又は硬化促進剤を過剰に添加した場合には、乳化が困難となる。
このような問題に対し、本発明者は、シェルを構成する化合物を含有する液滴が水性媒体に分散している乳化液を調製し、続いて、液滴に硬化剤及び/又は硬化促進剤を含浸させることで、極性の高い硬化剤及び/又は硬化促進剤であっても内包体積比率が高く、シェルが薄い硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子を製造できることを見出した。本発明者は、このような硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子は、硬化剤及び/又は硬化促進剤の放出性に優れ、硬化性樹脂組成物に配合された場合に優れた速硬化性を発揮することができ、貯蔵安定性にも優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法では、まず、シェルを構成する化合物を含有する液滴が水性媒体に分散している乳化液を調製する工程を行う。
上記シェルを構成する化合物は、シェルを構成するポリマーであってもよく、シェルを構成する化合物の原料となるモノマーであってもよい。
【0011】
上記シェルを構成するポリマーは特に限定されないが、硬化剤及び/又は硬化促進剤の放出性を高めるためには熱可塑性樹脂を含有することが好ましく、親水性基と疎水性基とを有する熱可塑性ポリマー、水酸基を有するポリビニルアセタール樹脂、アクリロニトリルに由来するセグメントを有する共重合体等を含有することがより好ましい。
上記親水性基と疎水性基とを有する熱可塑性ポリマーにおける親水性基として、例えば、グリシジル基、水酸基、カルボキシル基、スルホン基等が挙げられる。なかでも、グリシジル基が好ましい。また、上記親水性基と疎水性基とを有する熱可塑性ポリマーにおける疎水性基として、例えば、フェニル基、メチル基、エチル基、プロピル基、メタクリル基等が挙げられる。なかでも、フェニル基が好ましい。
【0012】
上記親水性基と疎水性基とを有する熱可塑性ポリマーとして、具体的には、例えば、ポリスチレン誘導体、ポリメタクリル酸誘導体等が挙げられる。なかでも、ポリスチレン誘導体が好ましい。
上記ポリスチレン誘導体は、上記親水性基と上記疎水性基とを有するポリスチレン誘導体であれば特に限定されないが、例えば、上記親水性基としてグリシジル基を有し、上記疎水性基としてポリスチレン骨格に由来するフェニル基を有するポリスチレン誘導体が好ましい。
【0013】
上記親水性基と疎水性基とを有する熱可塑性ポリマーの重量平均分子量は特に限定されないが、好ましい下限が5000、好ましい上限が10万である。上記重量平均分子量が5000未満であると、得られる硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の耐熱性又は耐溶剤性が低下することがある。上記重量平均分子量が10万を超えると、製造時に上記シェルを構成するポリマーの析出速度が速くなりすぎて、得られる硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子がモノコア構造とならなかったりアスペクト比が大きくなったりすることがある。
【0014】
上記水酸基を有するポリビニルアセタール樹脂は特に限定されないが、通常、ポリ酢酸ビニルのけん化反応により得られたポリビニルアルコールを、アルデヒドでアセタール化することにより得られる。上記アセタール化に使用するアルデヒドとして、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等が挙げられる。なかでも、ブチルアルデヒドが好ましい。
上記シェルを構成するポリマーとして上記水酸基を有するポリビニルアセタール樹脂を用いる場合には、上記水酸基を有するポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有量、アセタール化度、原料であるポリ酢酸ビニルのアセチル基に由来するアセチル基の含有量、重量平均分子量等を調整することにより、目的に合わせてシェルの物性を調整することができる。
【0015】
上記水酸基を有するポリビニルアセタール樹脂の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましい下限が5000、好ましい上限が50万である。上記重量平均分子量が5000未満であると、得られる硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の耐熱性又は耐溶剤性が低下することがある。上記重量平均分子量が50万を超えると、製造時に上記シェルを構成するポリマーの析出速度が速くなりすぎて、得られる硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子がモノコア構造とならなかったりアスペクト比が大きくなったりすることがある。
上記水酸基を有するポリビニルアセタール樹脂の重量平均分子量は、より好ましい下限が3万、より好ましい上限が30万である。
【0016】
上記水酸基を有するポリビニルアセタール樹脂の市販品として、例えば、BL−10(積水化学工業社製)、BL−2H(積水化学工業社製)、BM−S(積水化学工業社製)、BH−3(積水化学工業社製)、♯−3000K(電気化学工業社製)、MOWITAL B60T(クラレ社製)等が挙げられる。
【0017】
上記シェルを構成するポリマーとして上記アクリロニトリルに由来するセグメントを有する共重合体を用いる場合には、シェルのガスバリア性及び耐薬品性を向上させることができる。
【0018】
上記アクリロニトリルに由来するセグメントを有する共重合体において、上記アクリロニトリルに由来するセグメント以外の他のモノマーに由来するセグメントは、特に限定されない。
上記他のモノマーとして、例えば、ビニル基を有する化合物等のラジカル重合性モノマーが挙げられる。上記ビニル基を有する化合物は特に限定されず、例えば、グリシジルメタクリレート(GMA)、メチルメタクリレート(MMA)等のメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレン、ジビニルベンゼン、塩化ビニリデン、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、エチレングリコールジメタクリレート、ブタジエン等が挙げられる。なかでも、スチレン、グリシジルメタクリレート(GMA)、メチルメタクリレート(MMA)が好ましい。
【0019】
上記アクリロニトリルに由来するセグメントを有する共重合体の重量平均分子量は、好ましい下限が5000、好ましい上限が10万である。上記重量平均分子量が5000未満であると、得られる硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の耐熱性又は耐溶剤性が低下することがある。上記重量平均分子量が10万を超えると、得られる硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子は、硬化性樹脂組成物に配合された場合、加熱してもシェルが溶融又は分解せず硬化剤及び/又は硬化促進剤が放出されないために硬化が充分に進行しないことがある。
上記アクリロニトリルに由来するセグメントを有する共重合体の重量平均分子量は、より好ましい下限が8000、より好ましい上限が5万であり、更に好ましい下限が1万、更に好ましい上限が3万である。
【0020】
上記シェルを構成するポリマーは、更に、無機ポリマーを含有してもよい。
上記シェルを構成するポリマーが上記無機ポリマーを含有することで、硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の耐溶剤性が向上し、溶剤と混合する場合であっても硬化剤及び/又は硬化促進剤として好適に用いられる。
【0021】
上記無機ポリマーは特に限定されないが、分子中に2個以上の炭素数1〜6のアルコキシ基を有し、かつ、Si、Al、Zr及びTiからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含有する有機金属化合物の重合体が好ましい。このような有機金属化合物の重合体として、例えば、シリコーン樹脂、ポリボロシロキサン樹脂、ポリカルボシラン樹脂、ポリシラスチレン樹脂、ポリシラザン樹脂、ポリチタノカルボシラン樹脂等が挙げられる。なかでも、シリコーン樹脂が好ましく、グリシジル基を有するシリコーン樹脂がより好ましい。
【0022】
上記シェルを構成する化合物の原料となるモノマーは特に限定されないが、硬化剤及び/又は硬化促進剤の放出性を高めるためには熱可塑性樹脂の原料となるモノマーが好ましく、例えば、ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物等のビニル基を有する化合物等のラジカル重合性モノマーが挙げられる。上記ビニル基を有する化合物として、例えば、スチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリロニトリル、エチレングリコールジメタクリレート等の共役モノマー、又は、酢酸ビニル、塩化ビニル等の非共役モノマー等が挙げられる。これらのシェルを構成する化合物の原料となるモノマーは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記水性媒体は特に限定されず、例えば、水に、乳化剤、分散安定剤等を添加した水性媒体が用いられる。
上記乳化剤は特に限定されず、例えば、アルキル硫酸スルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。上記分散安定剤は特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0024】
上記シェルを構成する化合物を含有する液滴が水性媒体に分散している乳化液を調製する方法として、例えば、上記シェルを構成するポリマーを溶媒に溶かした溶液を、上記水性媒体に分散させて乳化させる方法、上記シェルを構成する化合物の原料となるモノマーを、上記水性媒体に分散させて乳化させる方法等が挙げられる。
本発明の硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法では、上記シェルを構成する化合物と硬化剤及び/又は硬化促進剤とを混合する必要がないことから、上記シェルを構成する化合物が上記シェルを構成する化合物の原料となるモノマーである場合には、混合のためにアルコール等の補助溶媒を用いる必要がない。従って、上記シェルを構成する化合物を含有する液滴の液滴径を、補助溶媒の種類及び添加量に影響されることなく、乳化の際の機械的なせん断力を調整することで容易に制御することができる。また、得られた硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子を半導体接合材に配合する場合には、残存する補助溶媒がボイドの原因となることを防ぐこともできる。
【0025】
なお、上記シェルを構成するポリマーを溶媒に溶かした溶液等に上記水性媒体を添加してもよく、上記水性媒体に上記シェルを構成するポリマーを溶媒に溶かした溶液等を添加してもよい。
上記乳化させる方法として、例えば、ホモジナイザーを用いて攪拌する方法、超音波照射により乳化する方法、マイクロチャネル又はSPG膜を通過させて乳化する方法、スプレーで噴霧する方法、転相乳化法等が挙げられる。
【0026】
上記溶媒は特に限定されず、例えば、ベンゼン、イソプレン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ギ酸イソブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エタノール、アリルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、t−ブチルアルコール、アセトン、エチルメチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
本発明の硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法では、次いで、上記シェルを構成する化合物を含有する液滴に、硬化剤及び/又は硬化促進剤を含浸させる工程を行う。
【0028】
本発明の硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法では、上記シェルを構成する化合物を含有する液滴に上記硬化剤及び/又は硬化促進剤を含浸させることで、極性の高い硬化剤及び/又は硬化促進剤であっても内包体積比率が高く、シェルが薄い硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子を製造することができる。これは、上記硬化剤及び/又は硬化促進剤は、上記水性媒体よりも上記シェルを構成する化合物を含有する液滴への親和性が比較的高く、乳化液を調製した後に上記硬化剤及び/又は硬化促進剤を添加することにより、物質移動によって上記シェルを構成する化合物を含有する液滴により多く取り込まれるためであると推測される。このようなシェルが薄い硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子を硬化性樹脂組成物に配合する場合には、多量に配合する必要がなく、硬化性樹脂組成物の粘度上昇を抑制することができる。
また、乳化液を調製した後に上記硬化剤及び/又は硬化促進剤を添加することにより、例えば、固体状の硬化剤及び/又は硬化促進剤が溶けきれずに容器内を浮遊する等の問題を抑制することができる。従って、本発明の硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法は、大型の製造ラインに適用しやすい製造方法であるといえる。
【0029】
上記硬化剤及び/又は硬化促進剤は特に限定されないが、融点が100℃未満であることが好ましく、例えば、三級アミン化合物、リン系触媒、イミダゾール化合物等が挙げられる。なかでも、硬化性に優れることから、イミダゾール化合物が好ましい。
上記イミダゾール化合物は特に限定されず、例えば、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、及び、これらの付加体等が挙げられる。
【0030】
また、上記イミダゾール化合物として、疎水性イミダゾール化合物を用いることが好ましい。なお、本明細書中、疎水性イミダゾール化合物とは、水に最大限溶解させたときの濃度が5重量%未満であるイミダゾール化合物を意味する。
上記疎水性イミダゾール化合物は特に限定されないが、炭素数11以上の炭化水素基を有するイミダゾール化合物が好ましい。上記炭素数11以上の炭化水素基を有するイミダゾール化合物として、例えば、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1−シアノエチルイミダゾール等が挙げられる。なかでも、2−ウンデシルイミダゾールが好ましい。
【0031】
上記シェルを構成する化合物を含有する液滴に上記硬化剤及び/又は硬化促進剤を含浸させる方法として、例えば、上記乳化液に固体状の硬化剤及び/又は硬化促進剤を添加し、上記固体状の硬化剤及び/又は硬化促進剤の融点以上に上記乳化液を加熱して、上記固体状の硬化剤及び/又は硬化促進剤を液体状とする方法等が挙げられる。なかでも、上記固体状の硬化剤及び/又は硬化促進剤の融点以上かつ100℃未満に上記乳化液を加熱して、上記水性媒体を蒸発させることなく上記硬化剤及び/又は硬化促進剤を含浸させることが好ましい。
また、上記シェルを構成する化合物を含有する液滴に上記硬化剤及び/又は硬化促進剤を含浸させる方法として、例えば、上記乳化液に液体状の硬化剤及び/又は硬化促進剤を添加し、上記乳化液を攪拌する方法等も挙げられる。
【0032】
上記シェルを構成する化合物と上記硬化剤及び/又は硬化促進剤との配合比率は特に限定されないが、上記シェルを構成する化合物7重量部に対する上記硬化剤及び/又は硬化促進剤の配合量の好ましい下限は3重量部、好ましい上限は16重量部である。上記硬化剤及び/又は硬化促進剤の配合量が3重量部未満であると、得られる硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子は内包体積比率が低くなり、硬化反応が充分に進行しないことがある。上記硬化剤及び/又は硬化促進剤の配合量が16重量部を超えると、内包されない硬化剤及び/又は硬化促進剤が生じて凝集を招いたり、得られる硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の貯蔵安定性が低下したりすることがある。
上記シェルを構成する化合物7重量部に対する上記硬化剤及び/又は硬化促進剤の配合量のより好ましい下限は4重量部、より好ましい上限は7重量部である。
【0033】
本発明の硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法では、次いで、上記硬化剤及び/又は硬化促進剤を内包するシェルを形成する工程を行う。
上記硬化剤及び/又は硬化促進剤を内包するシェルを形成する方法として、上記シェルを構成する化合物が上記シェルを構成するポリマーである場合には、加熱を行い上記シェルを構成するポリマーを溶かした溶媒を除去する方法が好ましい。上記シェルを構成するポリマーを溶かした溶媒を除去することにより、上記シェルを構成するポリマーを含有する相と上記硬化剤及び/又は硬化促進剤を含有する相とを相分離させながら溶媒を除去し、上記硬化剤及び/又は硬化促進剤を内包するシェルを形成することができる。
【0034】
上記加熱の条件は特に限定されないが、30〜70℃に加熱することが好ましい。また、加熱に加えて減圧を行うことが好ましい。上記減圧の条件は特に限定されないが、0.095〜0.080MPaの圧力となるよう設定することが好ましい。
【0035】
また、上記硬化剤及び/又は硬化促進剤を内包するシェルを形成する方法として、上記シェルを構成する化合物を含有する液滴が上記シェルを構成する化合物の原料となるモノマーを含有し、かつ、上記硬化剤及び/又は硬化促進剤が固体状である場合には、上記乳化液に、上記固体状の硬化剤及び/又は硬化促進剤の融点以下の温度領域に10時間半減期温度を有する重合開始剤を添加し、上記シェルを構成する化合物の原料となるモノマーを重合させる方法が好ましい。また、上記シェルを構成する化合物を含有する液滴が上記シェルを構成する化合物の原料となるモノマーを含有し、かつ、上記硬化剤及び/又は硬化促進剤が固体状である場合には、予め上記シェルを構成する化合物を含有する液滴に上記固体状の硬化剤及び/又は硬化促進剤の融点以上の温度領域に10時間半減期温度を有する重合開始剤を添加しておき、上記硬化剤及び/又は硬化促進剤を内包するシェルを形成する工程において上記シェルを構成する化合物の原料となるモノマーを重合させる方法が好ましい。
上記重合開始剤は特に限定されないが、水に難溶性(23℃における水への溶解度が20重量%以下)であることが好ましく、具体的には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
上記重合開始剤の配合量は特に限定されず、上記シェルを構成する化合物の原料となるモノマー100重量部に対する好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が20重量部である。上記重合開始剤の配合量が0.01重量部未満であると、硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子が形成されないことがある。上記重合開始剤の配合量が20重量部を超えて配合してもほとんど反応には寄与せず、ブリードアウト等の原因となることがある。
上記重合開始剤の配合量は、上記シェルを構成する化合物の原料となるモノマー100重量部に対するより好ましい下限が0.1重量部、より好ましい上限が10重量部である。
【0037】
上記シェルを構成する化合物の原料となるモノマーを重合させる方法は特に限定されず、上記重合開始剤の種類等に従って、光を照射したり加熱したりすることにより重合を開始させることができる。
本発明の硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法では、得られた硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子を、純水を用いて繰り返して洗浄した後、真空乾燥等により乾燥してもよい。
【0038】
本発明の硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法では、極性の高い硬化剤及び/又は硬化促進剤であっても内包体積比率が高く、シェルが薄い硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子を製造することができる。このようなシェルが薄い硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子を硬化性樹脂組成物に配合する場合には、多量に配合する必要がなく、硬化性樹脂組成物の粘度上昇を抑制することができる。
また、本発明の硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法では、上記シェルを構成する化合物が上記シェルを構成する化合物の原料となるモノマーである場合には、上記シェルを構成する化合物を含有する液滴の液滴径を、乳化の際の機械的なせん断力を調整することで容易に制御することができる。
【0039】
本発明の硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法により得られる硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子であって、熱可塑性樹脂を含有し、厚みが0.05〜0.8μmであるシェルを有し、30〜70体積%の内包体積比率で硬化剤及び/又は硬化促進剤を内包し、かつ、平均粒子径が0.5〜10μmである硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子もまた、本発明の1つである。
【0040】
本発明の硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子のシェル厚みは、下限が0.05μm、上限が0.8μmである。上記シェル厚みが0.05μm未満であると、硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の貯蔵安定性が低下してしまう。上記シェル厚みが0.8μmを超えると、硬化剤及び/又は硬化促進剤の放出性が低下し、硬化反応に長時間を要する。上記シェル厚みのより好ましい下限は0.08μm、より好ましい上限は0.5μmである。
本明細書中、硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子のシェル厚みとは、下記式(1)により算出される、複合粒子の体積と後述する内包体積比率から算出したシェルの体積を、複合粒子の表面積で割ることで求められる値を意味する。
シェル厚み={複合粒子の体積−(複合粒子の体積×内包体積比率)}/複合粒子の表面積 (1)
【0041】
本発明の硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の内包体積比率は、下限が30体積%、上限が70体積%である。上記内包体積比率が30体積%未満であると、硬化剤及び/又は硬化促進剤の放出性が低下し、硬化反応に長時間を要したり硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子を多量に配合する必要が生じたりする。上記内包体積比率が70体積%を超えると、硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子のシェルが薄くなりすぎ、貯蔵安定性が低下してしまう。上記内包体積比率のより好ましい下限は40体積%、より好ましい上限は60体積%である。
本明細書中、硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の内包体積比率は、後述する平均粒子径を用いて算出した複合粒子の体積とガスクロマトグラフィーを用いて測定したコア材の含有量から、下記式(2)により算出される値を意味する。なお、コア材とは硬化剤及び/又は硬化促進剤を意味する。
内包体積比率(%)=(コア材の含有量(重量%)×コア材の比重(g/cm))/複合粒子の体積(cm) (2)
【0042】
本発明の硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の平均粒子径は、下限が0.5μm、上限が10μmである。上記平均粒子径が0.5μm未満であると、上記範囲の内包体積比率を維持しようとすると、硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の貯蔵安定性が低下してしまう。上記平均粒子径が10μmを超えると、硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子を硬化性樹脂組成物に配合した場合に、加熱により上記硬化剤及び/又は硬化促進剤が放出された後、大きなボイドが生じて硬化物の信頼性が低下することがある。
上記平均粒子径のより好ましい上限は3.0μmである。
本明細書中、硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の平均粒子径とは、走査型電子顕微鏡を用いて1視野に約100個の複合粒子が観察できる倍率で観察し、任意に選択した50個の複合粒子の最長径をノギスで測定した平均値を意味する。
【0043】
本発明の硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子と、熱硬化性化合物とを含有する熱硬化性樹脂組成物もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、硬化剤及び/又は硬化促進剤の放出性に優れ、硬化性樹脂組成物に配合された場合に優れた速硬化性を発揮することができ、貯蔵安定性にも優れた硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、該硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法により得られる硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子、並びに、該硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子を含有する熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0046】
(実施例1)
重合反応容器に、水1510重量部と、分散安定剤として5重量%のポリビニルアルコール水溶液(KH−20、日本合成化学社製)380重量部とを投入し、水性媒体を調製した。次いで、ジビニルベンゼン18.3重量部と、トリメチロールプロパントリアクリレート43.3重量部と、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(サイラエースS710、チッソ社製)18.3重量部とからなる混合液を、水性媒体に添加し、乳化液を調製した。得られた乳化液をホモジナイザーを用いて10000rpmで攪拌混合し、重合器内へ投入した。乳化液を80℃に加熱後、2−ウンデシルイミダゾール(C11Z、四国化成工業社製、固体状、融点69〜74℃)20重量部を添加し2時間攪拌し、その後、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(V−601、和光純薬工業社製、10時間半減期温度66℃)0.615重量部を添加し9時間反応させることにより、反応生成物を得た。得られた反応生成物を遠心分離後、乾燥することにより、硬化促進剤複合粒子を得た。
【0047】
(実施例2)
重合反応容器に、水1510重量部と、分散安定剤として5重量%のポリビニルアルコール水溶液(KH−20、日本合成化学社製)380重量部とを投入し、水性媒体を調製した。次いで、ジビニルベンゼン16重量部と、トリメチロールプロパントリアクリレート38重量部と、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(サイラエースS710、チッソ社製)16重量部とからなる混合液を、水性媒体に添加し、乳化液を調製した。得られた乳化液をホモジナイザーを用いて10000rpmで攪拌混合し、重合器内へ投入した。乳化液を80℃に加熱後、2−ウンデシルイミダゾール(C11Z、四国化成工業社製、固体状、融点69〜74℃)30重量部を添加し2時間攪拌し、その後、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(V−601、和光純薬工業社製、10時間半減期温度66℃)0.615重量部を添加し9時間反応させることにより、反応生成物を得た。得られた反応生成物を遠心分離後、乾燥することにより、硬化促進剤複合粒子を得た。
【0048】
(実施例3)
重合反応容器に、水1510重量部と、分散安定剤として5重量%のポリビニルアルコール水溶液(KH−20、日本合成化学社製)380重量部とを投入し、水性媒体を調製した。次いで、ジビニルベンゼン11.5重量部と、トリメチロールプロパントリアクリレート27重量部と、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(サイラエースS710、チッソ社製)11.5重量部とからなる混合液を、水性媒体に添加し、乳化液を調製した。得られた乳化液をホモジナイザーを用いて10000rpmで攪拌混合し、重合器内へ投入した。乳化液を80℃に加熱後、2−ウンデシルイミダゾール(C11Z、四国化成工業社製、固体状、融点69〜74℃)50重量部を添加し2時間攪拌し、その後、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(V−601、和光純薬工業社製、10時間半減期温度66℃)0.44重量部を添加し9時間反応させることにより、反応生成物を得た。得られた反応生成物を遠心分離後、乾燥することにより、硬化促進剤複合粒子を得た。
【0049】
(実施例4)
重合反応容器に、水1510重量部と、分散安定剤として5重量%のポリビニルアルコール水溶液(KH−20、日本合成化学社製)380重量部とを投入し、水性媒体を調製した。次いで、ジビニルベンゼン6.85重量部と、トリメチロールプロパントリアクリレート16.25重量部と、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(サイラエースS710、チッソ社製)6.85重量部とからなる混合液を、水性媒体に添加し、乳化液を調製した。得られた乳化液をホモジナイザーを用いて10000rpmで攪拌混合し、重合器内へ投入した。乳化液を80℃に加熱後、2−ウンデシルイミダゾール(C11Z、四国化成工業社製、固体状、融点69〜74℃)70重量部を添加し2時間攪拌し、その後、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(V−601、和光純薬工業社製、10時間半減期温度66℃)0.265重量部を添加し9時間反応させることにより、反応生成物を得た。得られた反応生成物を遠心分離後、乾燥することにより、硬化促進剤複合粒子を得た。
【0050】
(実施例5)
乳化液をホモジナイザーを用いて10000rpmで攪拌混合した代わりに、ホモジナイザーを用いて1000rpmで攪拌混合したこと以外は実施例3と同様にして、硬化促進剤複合粒子を得た。
【0051】
(実施例6)
乳化液をホモジナイザーを用いて10000rpmで攪拌混合した代わりに、ホモジナイザーを用いて5000rpmで攪拌混合したこと以外は実施例3と同様にして、硬化促進剤複合粒子を得た。
【0052】
(実施例7)
乳化液をホモジナイザーを用いて10000rpmで攪拌混合した代わりに、ホモジナイザーを用いて20000rpmで攪拌混合したこと以外は実施例3と同様にして、硬化促進剤複合粒子を得た。
【0053】
(実施例8)
乳化液をホモジナイザーを用いて10000rpmで攪拌混合した代わりに、超音波ホモジナイザーを用いて攪拌混合したこと以外は実施例2と同様にして、硬化促進剤複合粒子を得た。
【0054】
(実施例9)
重合反応容器に、水1510重量部と、分散安定剤として5重量%のポリビニルアルコール水溶液(KH−20、日本合成化学社製)380重量部とを投入し、水性媒体を調製した。次いで、ジビニルベンゼン11.5重量部と、トリメチロールプロパントリアクリレート27重量部と、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(サイラエースS710、チッソ社製)11.5重量部と、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニロリル)(V−40、和光純薬工業社製、10時間半減期温度88℃)0.44重量部とからなる混合液を、水性媒体に添加し、乳化液を調製した。得られた乳化液をホモジナイザーを用いて10000rpmで攪拌混合し、重合器内へ投入した。乳化液を80℃に加熱後、2−ウンデシルイミダゾール(C11Z、四国化成工業社製、固体状、融点69〜74℃)50重量部を添加し2時間攪拌し、更に95℃に加熱後、9時間反応させることにより、反応生成物を得た。得られた反応生成物を遠心分離後、乾燥することにより、硬化促進剤複合粒子を得た。
【0055】
(実施例10)
親水性基と疎水性基とを有する熱可塑性ポリマーとしてマープルーフ(G−1010S、ポリスチレン一部エポキシ置換、日油社製)3重量部と、無機ポリマーとしてシリコーン樹脂(X−41−1053、アルコキシオリゴマー一部エポキシ置換、信越化学工業社製)3重量部とを、酢酸エチルとイソプロピルアルコール(IPA)との混合溶媒(酢酸エチル:イソプロピルアルコール(IPA)=6:4)170重量部に溶解させて、混合溶液を得た。この混合溶液に、乳化剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル2重量%を含有する水1000重量部を滴下して、ホモジナイザーを用いて3000rpmで攪拌して乳化分散させた。その後、得られた乳化液を減圧装置付反応器で60℃に加熱したのち、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール(1B2MZ、四国化成工業社製、固体状、融点50℃)6重量部を加え、2時間攪拌した。その後、60℃で減圧し、混合溶媒を除去することにより、反応生成物を得た。得られた反応生成物を純水を用いて繰り返して洗浄した後、真空乾燥することにより、硬化促進剤複合粒子を得た。
【0056】
(比較例1)
重合反応容器に、水1510重量部と、分散安定剤として5重量%のポリビニルアルコール水溶液(KH−20、日本合成化学社製)380重量部とを投入し、水性媒体を調製した。次いで、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(V−601、和光純薬工業社製、10時間半減期温度66℃)0.83重量部と、2−ウンデシルイミダゾール(C11Z、四国化成工業社製、固体状、融点69〜74℃)5重量部と、ジビニルベンゼン21.75重量部と、トリメチロールプロパントリアクリレート51.5重量部と、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(サイラエースS710、チッソ社製)21.75重量部とからなる混合液を、水性媒体に添加し、乳化液を調製した。得られた乳化液をホモジナイザーを用いて10000rpmで攪拌混合し、重合器内へ投入した。乳化液を80℃に加熱後、9時間反応させることにより、反応生成物を得た。得られた反応生成物を遠心分離後、乾燥することにより、硬化促進剤複合粒子を得た。
【0057】
(比較例2)
重合反応容器に、水1465重量部と、分散安定剤として5重量%のポリビニルアルコール水溶液(KH−20、日本合成化学社製)380重量部とを投入し、水性媒体を調製した。次いで、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(V−601、和光純薬工業社製、10時間半減期温度66℃)0.615重量部と、2−ウンデシルイミダゾール(C11Z、四国化成工業社製、固体状、融点69〜74℃)30重量部と、ジビニルベンゼン16重量部と、トリメチロールプロパントリアクリレート38重量部と、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(サイラエースS710、チッソ社製)16重量部と、エタノール5重量部とからなる混合液を、水性媒体に添加し、乳化液を調製した。得られた乳化液をホモジナイザーを用いて10000rpmで攪拌混合し、重合器内へ投入した。乳化液を80℃に加熱後、9時間反応させることにより、反応生成物を得た。得られた反応生成物を遠心分離後、乾燥することにより、硬化促進剤複合粒子を得た。
【0058】
(比較例3)
親水性基と疎水性基とを有する熱可塑性ポリマーとしてマープルーフ(G−1010S、ポリスチレン一部エポキシ置換、日油社製)3重量部と、無機ポリマーとしてシリコーン樹脂(X−41−1053、アルコキシオリゴマー一部エポキシ置換、信越化学工業社製)3重量部と、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール(1B2MZ、四国化成工業社製、固体状、融点50℃)6重量部とを、酢酸エチルとイソプロピルアルコール(IPA)との混合溶媒(酢酸エチル:イソプロピルアルコール(IPA)=6:4)170重量部に溶解させて、混合溶液を得た。この混合溶液に、乳化剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル2重量%を含有する水1000重量部を滴下して、ホモジナイザーを用いて3000rpmで攪拌して乳化分散させた。その後、得られた乳化液を減圧装置付反応器を用いて60℃で減圧し、混合溶媒を除去することにより、反応生成物を得た。得られた反応生成物を純水を用いて繰り返して洗浄した後、真空乾燥することにより、硬化促進剤複合粒子を得た。
【0059】
<評価>
実施例及び比較例で得られた硬化促進剤複合粒子について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0060】
(1)貯蔵安定性(ゲル分率の測定)
エポキシ樹脂(YL980、jER社製)0.58重量部及び酸無水物硬化剤(YH309、jER社製)0.29重量部中に、硬化促進剤複合粒子を0.13重量部添加して、公転自転撹拌機で撹拌した後、得られたエポキシ樹脂組成物を50μmの厚さに塗布して樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムを40℃で3日間放置した後、酢酸エチル中で24時間以上浸漬、振とうさせた。浸漬後の樹脂フィルムを取り出し、酢酸エチル浸漬前後の樹脂フィルムの重量を測定することで、ゲル分率測定を行った。
なお、本明細書中、ゲル分率とは、酢酸エチル浸漬後に乾燥させた樹脂フィルム重量を酢酸エチル浸漬前の樹脂フィルム重量で割ることにより得られる値を意味する。
【0061】
(2)速硬化性(硬化時間の測定)
エポキシ樹脂(YL980、jER社製)0.58重量部及び酸無水物硬化剤(YH309、jER社製)0.29重量部中に、硬化促進剤複合粒子を0.13量部添加して、公転自転撹拌機で撹拌した後、得られたエポキシ樹脂組成物を180℃に熱したホットプレート上に置いたスライドガラスの上に滴下して、エポキシ樹脂組成物が硬化するまでの時間を測定した。
【0062】
(3)塗液粘度
エポキシ樹脂(YL980、jER社製)0.58重量部及び酸無水物硬化剤(YH309、jER社製)0.29重量部中に、硬化促進剤複合粒子をコア材の有効成分が0.13重量部になるよう添加して、公転自転撹拌機で撹拌した後、E型粘度計(VISCOMETER TV−22、東海産業社製、φ15mmローターを使用)を用いて、25℃、10rpmの条件で粘度(Pa・sec)を測定した。
【0063】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、硬化剤及び/又は硬化促進剤の放出性に優れ、硬化性樹脂組成物に配合された場合に優れた速硬化性を発揮することができ、貯蔵安定性にも優れた硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、該硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法により得られる硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子、並びに、該硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子を含有する熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェルを構成する化合物を含有する液滴が水性媒体に分散している乳化液を調製する工程と、
前記シェルを構成する化合物を含有する液滴に、硬化剤及び/又は硬化促進剤を含浸させる工程と、
前記硬化剤及び/又は硬化促進剤を内包するシェルを形成する工程とを有する
ことを特徴とする硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法。
【請求項2】
シェルを構成する化合物を含有する液滴に、硬化剤及び/又は硬化促進剤を含浸させる工程において、乳化液に固体状の硬化剤及び/又は硬化促進剤を添加し、前記固体状の硬化剤及び/又は硬化促進剤の融点以上かつ100℃未満に前記乳化液を加熱して、前記固体状の硬化剤及び/又は硬化促進剤を液体状とすることを特徴とする請求項1記載の硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法。
【請求項3】
シェルを構成する化合物を含有する液滴に、硬化剤及び/又は硬化促進剤を含浸させる工程において、乳化液に液体状の硬化剤及び/又は硬化促進剤を添加し、前記乳化液を攪拌することを特徴とする請求項1記載の硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法。
【請求項4】
シェルを構成する化合物は、シェルを構成するポリマーであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法。
【請求項5】
シェルを構成する化合物は、シェルを構成する化合物の原料となるモノマーであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法。
【請求項6】
シェルを構成する化合物を含有する液滴は、シェルを構成する化合物の原料となるモノマーを含有し、
硬化剤及び/又は硬化促進剤を内包するシェルを形成する工程において、乳化液に、固体状の硬化剤及び/又は硬化促進剤の融点以下の温度領域に10時間半減期温度を有する重合開始剤を添加し、前記シェルを構成する化合物の原料となるモノマーを重合させる
ことを特徴とする請求項2記載の硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法。
【請求項7】
シェルを構成する化合物を含有する液滴は、シェルを構成する化合物の原料となるモノマーと、固体状の硬化剤及び/又は硬化促進剤の融点以上の温度領域に10時間半減期温度を有する重合開始剤とを含有し、
硬化剤及び/又は硬化促進剤を内包するシェルを形成する工程において、前記シェルを構成する化合物の原料となるモノマーを重合させる
ことを特徴とする請求項2記載の硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子の製造方法により得られる硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子であって、
熱可塑性樹脂を含有し、厚みが0.05〜0.8μmであるシェルを有し、
30〜70体積%の内包体積比率で硬化剤及び/又は硬化促進剤を内包し、かつ、
平均粒子径が0.5〜10μmである
ことを特徴とする硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子。
【請求項9】
請求項8記載の硬化剤及び/又は硬化促進剤複合粒子と、熱硬化性化合物とを含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−219146(P2012−219146A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84717(P2011−84717)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】