説明

硬化型組成物

【課題】硬化性及び硬化物の硬度に優れる硬化型組成物の提供。
【解決手段】(A)環状イミド基を4個以上有するポリ(メタ)アクリレート及び(B)環状イミド基を2個有するジ(メタ)アクリレートを含有してなる硬化型組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、2種の環状イミド基を有する(メタ)アクリレートを含有する硬化型組成物、好ましくは活性エネルギー線硬化型組成物に関するものである。本発明の硬化型組成物は、コーティング剤、接着剤、レジスト剤、電子材料、成形材料等に利用することができ、特にレンズ及びプリズム等の光学材料や3Dモデリングシステム用材料として有用なものであり、これら技術分野で賞用され得るものである。
【0002】
【従来の技術】紫外線硬化型樹脂は、その速硬化性により従来の溶剤乾燥型樹脂と比較し、乾燥に要するエネルギーと時間を大幅に減らすだけでなく、乾燥時の省スペース化、さらに溶剤を少量もしくは全く使用しないでも済むという地球環境にやさしいコーティング剤として年々使用量が増えてきている。近年では、その製造の速さを利用し、少量多品種の製品にも対応するべく、さらにライン速度を高速化させることが多くなってきている。しかし、紫外線硬化型樹脂には皮膚刺激性を有するものや臭気を有するものが存在し、ライン速度を上げて、硬化が不十分になると皮膚刺激性、臭気が問題になることがあり、さらに硬化性、塗膜硬度を向上させることが望まれてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】硬化性に優れる活性エネルギー線硬化型組成物としては、分子内に環状イミド基を2個有するジ(メタ)アクリレート〔以下ジイミドジ(メタ)アクリレートという〕からなる活性エネルギー線硬化型組成物が知られている(特開平3−271272号公報、同7−300459号公報)。しかしながら、当該組成物は、硬化性が不充分な場合があったり、その硬化物の硬度が不充分なものであった。本発明者らは、硬化性及び硬化物の硬度に優れる硬化型組成物を見出すため鋭意検討を行なったのである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、このような状況に鑑み鋭意検討を重ねた結果、(A)環状イミド基を4個以上有するポリ(メタ)アクリレート及び(B)環状イミド基を2個有するジ(メタ)アクリレートからなる硬化型組成物、あるいは(A)環状イミド基を4個以上有するジ(メタ)アクリレート、(B)環状イミド基を2個有するジ(メタ)アクリレート及び(C)環状イミド基を1個有するモノ(メタ)アクリレートからなる硬化型組成物が、速硬化性でその硬化物が硬度に優れることを見出し、本発明を完成した。尚、本明細書においては、アクリレート及び/又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表す。
【0005】
【発明の実施の形態】1.硬化型組成物1-1.(A)成分(A)成分は、環状イミド基を4個以上有するポリ(メタ)アクリレートであり、好ましい例としては、下記一般式(1)で示されるジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0006】
【化4】


【0007】〔但し、式(1)において、R1はテトラカルボン酸無水物の残基であり、R2はジアミンの残基であり、R3はアルキレン基であり、R4は水素又はメチル基である。l及びmは1〜6の整数である。〕
【0008】R1の好ましい例としては、下記式(4)〜(9)で表される基等が挙げられる。
【0009】
【化5】


【0010】〔但し、式(4)において、R7及びR8は、水素原子又は炭素数9以下の直鎖状又は分岐状アルキル基であり、Xは−O−、−SO2−、−C(=O)−、−C(CH32−又は−C(CF32−等である。〕
【0011】
【化6】


【0012】〔但し、式(5)において、R9は、水素原子又は炭素数9以下の直鎖状又は分岐状アルキル基である。〕
【0013】
【化7】


【0014】〔但し、式(6)において、R10及びR11は、水素原子又は炭素数9以下の直鎖状又は分岐状アルキル基である。〕
【0015】
【化8】


【0016】
【化9】


【0017】
【化10】


【0018】R1としては、これらの中でも式(4)においてXが−O−又は−SO2−である基、式(7)及び(8)で表される基が好ましい。
【0019】R2のジアミン残基としては、アルキレン基、2価の環状アルキル基及び2価のアリール基等が挙げられる。アルキレン基としては、炭素数6以下のアルキレン基が好ましく、より好ましくはエチレン基及びプロピレン基である。2価の環状アルキル基としては、シクロヘキシル基及びイソホロン基等が挙げられる。2価のアリール基の例としては、フェニレン基、ジフェニルメタン基等が挙げられる。
【0020】R3のアルキレン基としては、炭素数6以下のアルキレン基が好ましく、より好ましくはエチレン基及びプロピレン基である。
【0021】1-2.(B)成分(B)成分は、環状イミド基を2個有するジ(メタ)アクリレートであり、好ましい例としては、下記一般式(2)で表されるジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
【化11】


【0023】〔但し、式(2)において、R1はテトラカルボン酸無水物の残基であり、R3はアルキレン基であり、R4は水素又はメチル基である。mは1〜6の整数である。〕R1の好ましい例としては、前記式(4)〜(9)で表される基等が挙げられる。R3のアルキレン基としては、炭素数6以下のアルキレン基が好ましく、より好ましくはエチレン基及びプロピレン基である。
【0024】1-3.(C)成分本発明においては、(C)成分の環状イミド基を1個有するモノ(メタ)アクリレートを含有するものが好ましい。(C)成分の好ましい例としては、下記一般式(3)で表されるモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
【化12】


【0026】〔但し、式(3)において、R3はアルキレン基であり、R4は水素又はメチル基である。R5及びR6は、それぞれ独立した炭素数4以下のアルキル基であるか、又はR5及びR6は一つとなって炭素環を形成する基である。nは1〜6の整数である。又、イミド5員環における点線は、一重結合又は二重結合を意味する。〕
【0027】R5及びR6が一つとなって炭素環を形成する基の例としては、−CH2CH2CH2−、基−CH=CHCH2−、基−CH2CH2CH2CH2−、基−CH2CH=CHCH2−又は基−CH=CHCH=CH−等が挙げられる。
【0028】R5及びR6としては、少なくとも一方がアルキル基であるか、又は一つとなって炭素環を形成する基が、得られる硬化膜の耐水性に優れる点で好ましい。
【0029】R3のアルキレン基としては、炭素数6以下のアルキレン基が好ましく、より好ましくはエチレン基及びプロピレン基である。
【0030】(A)成分及び(B)成分の割合としては、(A)及び(B)成分の合計量に対して、それぞれ5〜85質量%及び95〜15質量%が好ましい。(A)成分の割合が5質量%より少ないと、硬化性や硬化物の硬度が不充分となる場合があり、他方85質量%より多いと、組成物の粘度が高くなりすぎ取り扱いづらい場合がある。(C)成分を配合する場合の割合としては、(A)、(B)および(C)成分の合計量に対して、後記するその他の単量体を配合する場合は、これらの合計量に対して、15〜90質量%が好ましい。(C)成分の割合が15質量%より少ないと、組成物の粘度が高くなりすぎ取り扱い難くなったり、又は硬化物の柔軟性が低下する場合があり、他方90質量%より多いと、硬化性や硬化物の硬度が不充分となる場合がある。
【0031】1-4.その他の成分本発明の組成物においては、上記必須成分の(メタ)アクリレートに加え、種々の目的で、これら以外のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(以下その他単量体という)を配合することができる。その他単量体としては、ビニル系単量体、並びにウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレート等のオルゴマー等が挙げられる。
【0032】ビニル系単量体の例としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム及び(メタ)アクリロイルモルホリン等のアミド化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシ−3−フェニルプロピルアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のフェノールのアルキレンオキシド付加物のアクリレート及びそのハロゲン核置換体;エチレングリコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート等の、グリコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオール及びそのアルキレンオキサイドの(メタ)アクリレート;並びにイソシアヌール酸エチレンオキサイド変成ジ又はトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリオールと有機ポリイソシアネート反応物に対して、さらにヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを反応させた反応物等が挙げられる。ここで、ポリオールとしては、低分子量ポリオール、ポリエチレングリコール及びポリエステルポリオール等があり、低分子量ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオール等が挙げられ、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等が挙げられ、ポリエステルポリオールとしては、これら低分子量ポリオール又は/及びポリエーテルポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等の二塩基酸又はその無水物等の酸成分との反応物が挙げられる。有機ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール及びトリメチロールプロパン等の低分子量ポリオール、並びにこれらのアルキレンオキシド付加物等のポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等の二塩基酸又はその無水物等の酸成分とからの反応物等が挙げられる。
【0035】エポキシアクリレートは、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸を付加反応させたもので、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ(メタ)アクリレート、フェノールあるいはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテルのジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加反応体等が挙げられる。
【0036】その他単量体の好ましい割合としては、(A)及び(B)成分の合計量又は(A)、(B)及び(C)成分の合計量100質量部に対して、300質量部以下である。
【0037】本発明の組成物は、紫外線及び電子線等の活性エネルギー線の照射又は加熱により容易に硬化するものであり、好ましくは活性エネルギー線により硬化するものである。
【0038】本発明の組成物を紫外線により硬化させる場合には、光重合開始剤を配合する。光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン等のアセトフェノン;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン及び2−アミルアントラキノン等のアントラキノン;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン及び2,4−ジイソピルチオキサントン等のチオキサントン;アセトフェノンジメチルケタール及びベンジルジメチルケタール等のケタール;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等のモノアシルホスフィンオキシド又はビスアシルホスフィンオキシド;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;並びにキサントン類等が挙げられる。これら光重合開始剤は単独で使用することも、安息香酸系、アミン系等の光重合開始促進剤と組み合わせて使用することもできる。光重合開始剤の好ましい配合割合は、組成物100質量部に対して0.1〜10質量部で、より好ましくは1〜8質量部である。
【0039】本発明の組成物を加熱により硬化させる場合には、組成物に熱重合開始剤を配合する。熱重合開始剤としては、アゾビスイソブリチロニトリル等のアゾ系熱重合開始剤及びベンゾイルパーオキサイド等のパーオキサイド系熱重合開始剤等が挙げられる。熱重合開始剤の好ましい配合割合は、組成物100質量部に対して0.01〜5質量部である。
【0040】2.組成物の製造方法本発明の組成物は、(A)成分及び(B)成分、又は必要に応じて(C)成分を常法に従い製造し、それらを混合して得ることができる。しかしながら、従来の製造方法で(A)成分又は(B)成分を製造した場合、(A)成分又は(B)成分の収率、純度及び臭気の問題を有するものであった。又、(A)成分を他の化合物と配合して組成物とする場合、(A)成分又は(B)成分が他の化合物に溶解し難いという問題を有するものであった。
【0041】これら問題を解決できる好ましい組成物の製造方法は、テトラカルボン酸無水物、ジカルボン酸無水物、ポリアミン及びモノアミノアルコールを加熱して、環状イミド基を4個以上有するポリオール(以下ポリイミドポリオールという)、環状イミド基を2個有するジオール(以下ジイミドジオールという)及び環状イミド基を1個有するモノオール(以下イミドモノオールという)の混合物を得た後、これら化合物に(メタ)アクリロイル基を導入する方法である。本製造方法によれば、(A)及び(B)成分を収率良く製造することができる上、(A)、(B)及び(C)成分を同時に製造することができ、得られる組成物は溶液又はスラリーとして得ることができるため取り扱い易いものである。以下、本製造方法について説明する。
【0042】2-1.ポリアミン及びモノアミノアルコールの付加・閉環反応本製造方法においては、まずテトラカルボン酸無水物とポリアミン及びモノアミノアルコールの付加反応を行なうとともに、ジカルボン酸無水物とモノアミノアルコールの付加反応をさせるために、攪拌下に加熱して、その後の脱水閉環させて、ポリイミドポリオール、ジイミドジオール及びイミドモノオールの混合物を製造する。テトラカルボン酸無水物としては、下記一般式(10)で表されるテトラカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0043】
【化13】


【0044】〔但し、式(10)において、R1は前記一般式(1)と同様の意味を示す。〕テトラカルボン酸無水物におけるR1好ましい例としては、前記式(4)〜式(9)で表される基等が挙げられる。ジカルボン酸無水物の好ましい例としては、下記一般式(11)で表される化合物が挙げられる。
【0045】
【化14】


【0046】〔但し、式(11)において、R5及びR6は前記一般式(3)と同様の意味を示す。〕ジカルボン酸無水物の好ましい具体例としては、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸及びコハク酸等の酸無水物及びそのアルキル基置換体等が挙げられる。モノアミノアルコールの好ましい例としては、エタノールアミン、プロパノールアミン、エトキシエタノールアミン及びプロポキシプロパノールアミン等が挙げられる。ポリアミンの好ましい例としては、1級アミンを複数個有するエチレンジアミン、プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等のジアミンが挙げられる。
【0047】付加反応及び脱水閉環反応は、テトラカルボン酸無水物、ジカルボン酸無水物、ポリアミン、モノアミノアルコールを加熱攪拌して行われる。この場合、反応は無触媒で行っても良いし、必要に応じて触媒を使用しても良い。触媒を使用する場合の触媒としては、硫酸、メタンスルホン酸及びパラトルエンスルホン酸等の酸触媒が挙げられる。反応温度は、使用する化合物及び目的に応じて適宜設定すれば良いが、好ましくは70℃〜140℃である。反応温度が70℃に満たない場合は反応が遅くなり、一方反応温度が140℃を超える場合は、反応系が不安定になり、不純物が生成したりする場合がある。
【0048】反応は、有機溶媒中で行うことが好ましい。脱水閉環反応においては、水との溶解度が低い有機溶媒を使用し、水を共沸させながら脱水反応を促進させることが好ましいため、有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素、並びにメチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン等が好ましい。
【0049】当該付加反応及び脱水閉環反応により、ポリイミドポリオール、ジイミドジオール及びイミドモノオールの混合物が得られる。ポリイミドポリオール、ジイミドジオール及びイミドモノオールの好ましい例としては、下記式(12)、式(13)及び式(14)に示す化合物等が挙げられる。
【0050】
【化15】


【0051】〔但し、式(12)において、R1、R2、R3、l及びmは、前記一般式(1)と同様の意味を示す。〕
【0052】
【化16】


【0053】〔但し、式(13)において、R1、R3及びmは、前記一般式(2)と同様の意味を示す。〕
【0054】
【化17】


【0055】〔但し、式(14)において、R3、R5、R6及びnは前記一般式(3)と同様の意味を示す。〕
【0056】2-2.(メタ)アクリロイル基の導入上記で得られたポリイミドポリオール、ジイミドジオール及びイミドモノオールに(メタ)アクリロイル基を導入する方法としては、ポリイミドポリオール、ジイミドジオール及びイミドモノオールと(メタ)アクリル酸を反応させる脱水エステル化反応、及びポリイミドポリオール、ジイミドジオール及びイミドモノオールとアルキル(メタ)アクリレートと反応させるエステル交換反応等が挙げられる。
【0057】脱水エステル化反応を採用した場合の製造例としては、ジイミドジオール及びイミドモノオールを含む前記反応液に、(メタ)アクリル酸を加え、酸触媒の存在下に、加熱・攪拌する方法等が挙げられる。酸触媒としては、硫酸、メタンスルホン酸及びパラトルエンスルホン酸等の酸触媒が挙げられる。又、反応温度は、使用する化合物及び目的に応じて適宜設定すれば良いが、好ましくは70℃〜140℃である。反応温度が70℃に満たない場合は反応が遅くなり、一方反応温度が140℃を超える場合は、反応系が不安定になり、不純物が生成したり、ゲル化する場合がある。
【0058】当該反応に際しては、エステル化反応で生成する水との溶解度が低い有機溶媒を使用し、水を共沸させながら脱水を促進することが好ましく、好ましい有機溶媒としては、上記と同様のものが挙げられる。又、有機溶媒は、反応後に減圧で留去してもよく、臭気の問題がない溶媒を使用した場合には、組成物の粘度調整のために留去することなくそのまま使用しても良い。
【0059】エステル交換反応を採用した場合の製造例としては、ポリイミドポリオール、ジイミドジオール及びイミドモノオールを含む前記反応液に、アルキル(メタ)アクリレートを加え、触媒の存在下に、加熱・攪拌する方法が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートの好ましい例としては、メチル(メタ)アクリレート及びエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。触媒としては、エステル交換反応で通常使用されるものを採用すれば良く、テトラブチルチタネート等が挙げられる。反応温度及び反応時間は、使用する原料及び目的に応じて適宜設定すれば良い。
【0060】反応中に(メタ)アクリロイル基がラジカル重合することを抑制するために、反応液に、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル及びフェノチアジン等の重合防止剤を添加しても良い。
【0061】テトラカルボン酸無水物とポリアミン及びアミノアルコールの反応に、ジカルボン酸無水物、イミドモノオールの前駆体であるアミック酸あるいはイミドモノオールを共存させる本製造方法によれば、テトラカルボン酸無水物とポリアミン及びモノアミノアルコールの付加体であるポリイミドポリオールとジイミドジオールが有機溶媒に溶解し易くなり、反応がスムーズに進行するようになる。これは、ジカルボン酸無水物とアミノアルコールの付加体であるイミドモノオールの前駆体であるアミック酸あるいはイミドモノオールが、ポリイミドポリオール及びジイミドジオールと有機溶媒の中間の極性を持ち、相溶化剤として働くため、ポリイミドポリオールとジイミドジオールの有機溶媒への溶解性が向上するものと推測される。
【0062】又、本製造方法によれば、(A)、(B)及び(C)成分を同時に製造することができ、さらに得られる組成物は、液状、スラリー状又は柔らかいワックス状となるため、非常に取り扱い易く、組成物にさらにその他の(メタ)アクリレート等を配合する場合も、その他成分の溶解性が向上する。これも、前記と同様の理由で、(C)成分が相溶化剤として働くためと推測される。
【0063】3.使用方法及び用途本発明の組成物の使用方法としては、例えば適用される基材に対して、通常の塗装法により塗布した後、紫外線及び電子線等の活性エネルギー線を照射して硬化させたり、加熱により硬化させる等の一般的な方法を採用することができる。又、本発明の組成物の用途としては、コーティング剤、接着剤、レジスト剤、電子材料及び成形材料等を挙げることができる。又、特に本発明の組成物の硬化物は、屈折率に優れているため、レンズ及びプリズム等の光学材料に好適に使用することができる。レンズとしては、フネレルレンズ等のレンズシート製造用の組成物として好ましく使用できる。又、本発明の組成物の硬化物は、耐熱性及び耐薬品性にも優れるため、3Dモデリングシステム用組成物として好ましく使用できる。
【0064】
【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。尚、下記において「%」とは、質量%を意味する。
○製造例1攪拌器、冷却管及びディーンスタークトラップ(水分離器)を備えたフラスコに、ヘキサヒドロフタル酸無水物76.7g(0.5モル)、キシレン280gを仕込み、50℃に加温して溶解し、エタノールアミン30.4g(0.5モル)を30分かけて滴下し、次に液温を140〜145℃に保ち3時間還流したところ、8.6gの水が水分離器に留出した。反応液を冷却後、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物〔新日本理化(株)製リカシッドTDA−100〕83.8g(0.28モル)を仕込み、70℃に加温して、エタノールアミン24.8g(0.41モル)を30分かけて滴下し、次にエチレンジアミン4.6g(0.076モル)を10分かけて滴下し、液温を140〜145℃に保ち6時間還流したところ、9.0gの水が水分離器に留出した。反応液を冷却後、これにアクリル酸78.1g(1.09モル)、ハイドロキノン0.14g及び硫酸11.2gを加え、液温を140〜145℃に保ち7.0時間還流したところ、17.5gの水が水分離器に留出した。反応液を冷却後、分液ロートに移し、水80gで一回、20%NaOH水溶液200gで一回抽出した。その有機層を減圧で溶剤留去し、淡黄色高粘度液体の生成物を収率53%で得た。GPCとNMR分析結果により、下記化合物(15)(以下A-1という)、下記化合物(16)(以下B-1という)及び下記化合物(17)(以下C-1という)の混合物が、重量比1:1:2で得られているのを確認した。得られた化合物の混合物は全く臭気が無かった。
【0065】
【化18】


【0066】
【化19】


【0067】
【化20】


【0068】○製造例2製造例1の3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物を5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物〔大日本インキ化学工業(株)製、エピクロンB−4400〕73.6(0.28モル)に変更した以外は、製造例1と同様の条件で反応を行った。その結果、淡黄色高粘度液体の生成物を収率60%で得た。GPCとNMR分析結果により、下記化合物(18)(以下A-2という)、下記化合物(19)(以下B-2という)及びC-1の混合物が重量比1:1:2で得られているのを確認した。得られた化合物の混合物は全く臭気が無かった。
【0069】
【化21】


【0070】
【化22】


【0071】○実施例1製造例1で得られた組成物に、さらにアクリロイルモルホリン〔(株)興人製〕及び光重合開始剤のベンジルジメチルケタール〔チバスペシャリティーケミカルズ(株)製、イルガキュア651〕を加え攪拌混合し、活性エネルギー線硬化型組成物を製造した。以下に示す方法に従い、得られた組成物の硬化性及び鉛筆硬度を評価した。それらの結果を表1に示す。
【0072】・硬化性基材としてボンデライト鋼板〔日本テストパネル(株)製PB−144〕を使用し、これに得られた組成物を膜厚10ミクロンで塗工し、80W/cm集光型高圧水銀灯(1灯)下を10m/minのコンベアスピードで通過させ、手で触れて表面のタックが無くなるまでのパス回数で評価した。
【0073】・鉛筆硬度JISK−5400の試験法に従って、手かき法で行った。
【0074】
【表1】


【0075】○実施例1及び同2使用する成分を表1に示す通りに変更する以外は、実施例1と同様の方法で活性エネルギー線硬化型組成物を製造した。得られた組成物を実施例1と同様の方法で評価した。それらの結果を表1に示す。
【0076】○比較例1〜同3使用する成分を表2に示す通りに変更する以外は、実施例1と同様の方法で活性エネルギー線硬化型組成物を製造した。得られた組成物を実施例1と同様の方法で評価した。それらの結果を表2に示
【0077】
【表2】


【0078】
【発明の効果】本発明の組成物は、速硬化性であり、その硬化物は硬度に優れているため、コーティング、塗料、印刷インキ、接着剤、充填剤、成形材料及びレジスト等に有用なものである。又、本発明の組成物の製造方法によれば、(A)、(B)及び(C)成分を同時に高純度及び高集率で製造することができ、さらに得られる組成物は、硬化性に優れ、臭気の問題がなく、液状、スラリー状又は柔らかいワックス状のものとなるため、非常に取扱い易いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】(A)環状イミド基を4個以上有するポリ(メタ)アクリレート及び(B)環状イミド基を2個有するジ(メタ)アクリレートを含有してなる硬化型組成物。
【請求項2】(C)環状イミド基を1個有するモノ(メタ)アクリレートをさらに含有してなる請求項1記載の硬化型組成物。
【請求項3】(A)成分が下記一般式(1)で表されるジ(メタ)アクリレートである請求項1又は請求項2記載の硬化型組成物。
【化1】


〔但し、式(1)において、R1はテトラカルボン酸無水物の残基であり、R2はジアミンの残基であり、R3はアルキレン基であり、R4は水素又はメチル基である。l及びmは1〜6の整数である。〕
【請求項4】(B)成分が下記一般式(2)で表されるジ(メタ)アクリレートである請求項2〜請求項3のいずれかに記載の硬化型組成物。
【化2】


〔但し、式(1)において、R1はテトラカルボン酸無水物の残基であり、R3はアルキレン基であり、R4は水素又はメチル基である。mは1〜6の整数である。〕
【請求項5】(C)成分が下記一般式(3)で表されるモノ(メタ)アクリレートである請求項2〜請求項4のいずれかに記載の硬化型組成物。
【化3】


〔但し、式(3)において、R3はアルキレン基であり、R4は水素又はメチル基である。R5及びR6は、それぞれ独立した炭素数4以下のアルキル基であるか、又はR5及びR6は一つとなって炭素環を形成する基である。nは1〜6の整数である。又、イミド5員環における点線は、一重結合又は二重結合を意味する。〕
【請求項6】テトラカルボン酸無水物、ジカルボン酸無水物、ポリアミン及びアミノアルコールを加熱して、環状イミド基を4個以上の有するポリオール、環状イミド基を2個有するジオール及び環状イミド基を1個有するモノオールの混合物を得た後、これら化合物に(メタ)アクリロイル基を導入する請求項2〜請求項5のいずれかに記載の組成物の製造方法。

【公開番号】特開2002−179742(P2002−179742A)
【公開日】平成14年6月26日(2002.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−378670(P2000−378670)
【出願日】平成12年12月13日(2000.12.13)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】