説明

硬化型裏込滑材

【課題】 滑材として作用する期間は水分を地山に浸透させ難くしてテールボイドを支持し、その後硬化すると地山に相当する強度を発現して裏込材の作用を示す硬化型裏込滑材を提供する。
【解決手段】 水100重量%に対して珪酸ソーダを20〜60重量%混合したA材と、フライアッシュ100重量%に対してセメント4〜130重量%とベントナイト6〜10重量%と水140〜500重量%を混合したB材とを混合する。必要に応じて、無水石膏をB材のフライアッシュ100重量%に対して6〜10重量%混合して硬化速度を任意に調整できるようにしてもよく、さらに植物繊維をB材のフライアッシュ100重量%に対して1〜2重量%混合して止水性を高めてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進工法において推進時は滑材として作用し、推進後は裏込材として作用する硬化型裏込滑材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、推進工法では、推進時に掘進機が余掘りしたテールボイドへ滑材を注入し、地山との摩擦抵抗を低減させて推進管を円滑に推進できるようにしている。推進終了後はテールボイドに裏込材を注入して硬化させ、地山を安定させて陥没を防止できるようにしている。
【0003】
しかし、従来の方法では滑材と裏込材を別々に用意して注入する2工程が必要であるから、作業に手間を要して高コストであった。また、滑材が既に注入されているテールボイドに裏込材を注入して滑材と置換させることは難しく、注入不良の箇所などは陥没することがあった。
【0004】
これに対し、推進時は滑材として作用し、推進後は裏込材として作用する一液の硬化型裏込滑材も提案されている(例えば特許文献1参照)。この技術は、ベントナイト100重量%に対してセメントを20〜45重量%と界面活性剤を4〜7重量%と水を約500重量%混合したことを特徴としている。しかし、硬化するまでは液状であるから水分が地山に徐々に浸透してその間のテールボイドを支える保持力が弱くなっていき、特に大口径の推進工事では陥没の原因となる可能性があった。
【特許文献1】特開平10−237435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、滑材として作用する期間は水分を地山に浸透させ難くしてテールボイドを支持し、その後硬化すると地山に相当する強度を発現して裏込材の作用を示す硬化型裏込滑材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 水100重量%に対して珪酸ソーダを20〜60重量%混合したA材と、フライアッシュ100重量%に対してセメント4〜130重量%とベントナイト6〜10重量%と水140〜500重量%を混合したB材とを混合した、硬化型裏込滑材
2) 無水石膏をB材のフライアッシュ100重量%に対して6〜10重量%混合した、前記1)記載の硬化型裏込滑材
3) 植物繊維をB材のフライアッシュ100重量%に対して1〜2重量%混合した、前記1)又は2)記載の硬化型裏込滑材
にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、珪酸ソーダでゲル状となることにより水分が地山に浸透し難くなってテールボイドを支持し、フライアッシュによる滑性とベントナイトによる粘性で推進工事中の地山の陥没を防止しながら推進抵抗を低減させて円滑に掘進させる。その後所定期間を経て硬化が始まり、地山に相当する強度を発現して硬化後の陥没も確実に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明はベアリング効果を示すフライアッシュを主成分とする。セメントは硬化材として混合されるもので普通ポルトランドセメントが用いられ、混合量はフライアッシュ100重量%に対して4〜65重量%の範囲が望ましい。ベントナイトは粘性を付与するために混合するもので、混合量はフライアッシュ100重量%に対して6〜10重量%の範囲が望ましい。
【0009】
また、無水石膏をフライアッシュ100重量%に対して6〜10重量%混合すると、硬化遅延材として作用し、推進工事の進捗や掘進距離に応じて硬化速度を任意に調整できる。さらに、植物繊維をフライアッシュ100重量%に対して1〜2重量%混合すると、止水材として作用し、地山への浸透をより低減して陥没を確実に防止できる。植物繊維の大きさは1〜2cmほどのものが用いられる。以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は実施例の硬化型裏込滑材の注入を示す説明図、図2は実施例の硬化型裏込滑材の一軸圧縮強度を示すグラフである。図中、1は推進管、2は注入口、3は混合器、Cは硬化型裏込滑材、Gは地山である。以下の表1に本実施例(C10〜C150)のA材とB材の混合比率を示す。A材は一定とし、B材のフライアッシュとセメントの量を異ならせている。ベントナイトはスーパークレイ(商品名)を用い、植物繊維はウラゴメール(商品名)を用いた。
【0011】
【表1】

【0012】
図1に示すように、本実施例のA材とB材を別々に作液し、図示しないポンプでA材とB材を別々に圧送して混合器3で混合し、直ちに注入口2からテールボイドへ注入する。硬化型裏込滑材Cは5分以内でゲル状となり、水分が地山Gに浸透し難くなってテールボイドを支持し、フライアッシュによる滑性とベントナイトによる粘性で推進工事中の地山Gの陥没を防止しながら推進抵抗を低減させて円滑に掘進させる。
【0013】
【表2】

【0014】
表2と図2に示すように、一軸圧縮強度は1週間後においてC100とC150が1〜2N/mmとなっており、他と比較して滑材としての高い強度も有している。その後、工事終了後は硬化型裏込滑材Cの硬化が始まり、地山Gに相当する強度を発現して硬化後の陥没も確実に防止する。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明の硬化型裏込滑材は、推進工法に好ましく利用される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例の硬化型裏込滑材の注入を示す説明図である。
【図2】実施例の硬化型裏込滑材の一軸圧縮強度を示すグラフである。
【符号の説明】
【0017】
1 推進管
2 注入口
3 混合器
C 硬化型裏込滑材
G 地山

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水100重量%に対して珪酸ソーダを20〜60重量%混合したA材と、フライアッシュ100重量%に対してセメント4〜130重量%とベントナイト6〜10重量%と水140〜500重量%を混合したB材とを混合した、硬化型裏込滑材。
【請求項2】
無水石膏をB材のフライアッシュ100重量%に対して6〜10重量%混合した、請求項1記載の硬化型裏込滑材。
【請求項3】
植物繊維をB材のフライアッシュ100重量%に対して1〜2重量%混合した、請求項1又は2記載の硬化型裏込滑材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−227799(P2009−227799A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74137(P2008−74137)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(306025455)三協マテリアル株式会社 (3)
【出願人】(306025444)
【Fターム(参考)】