説明

硬化性シリコーン剥離剤組成物

【課題】粘着剤へのシリコーン成分の移行が無く、かつ低速、高速の剥離で剥離力が非常に低いシリコーン剥離剤組成物を提供する。
【解決手段】下記(A)、(B)及び(C)の成分を含有する無溶剤型硬化性シリコーン剥離剤組成物。
(A)次式で示されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン
(R1SiO1/2a(RSiO1/2b(RSiO)c(RSiO3/2d (1)
(Rは脂肪族不飽和結合を有しない一価の炭化水素基、Rはアルケニル基、a〜dは3≦a≦10、1≦b≦30、10≦c≦500、2≦d≦38の数である。)
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(A)成分のアルケニル基に対するケイ素原子に結合した水素原子のモル比が1.0〜5.0の範囲となる量
(C)白金族金属系触媒

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜塗工性、製造時のろ過性に優れ、さらに塗工したものを加熱硬化させたセパレーターに粘着剤と上紙を貼りあわせた剥離試験において粘着剤の付いた上紙を引き剥がす速度が低速においても高速においても剥離抵抗の小さく、シリコーンの移行がない剥離性シリコーン硬化皮膜を与える付加反応型無溶剤タイプのシリコーン剥離剤組成物及びこの組成物の硬化皮膜が形成された剥離紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙やプラスチックなどのシート状基材と粘着材料との接着、固着を防止するために基材表面にシリコーン組成物の硬化皮膜を形成して剥離特性を付与している。上述の基材面にシリコーン硬化皮膜を形成する方法として次の方法が知られている。
【0003】
(1)白金系化合物を触媒としてアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを付加反応させて剥離性皮膜を形成する方法(特許文献1:特開昭47-32072)。
(2)有機金属塩を触媒として、水酸基やアルコキシ基といった官能基を有するオルガノポリシロキサンを縮合反応させて剥離性皮膜を形成する方法(特許文献2:特公昭35−13709)。
(3)紫外線や電子線を用いてアクリル基を含有するオルガノポリシロキサンと光反応開始剤とをラジカル重合させて剥離性皮膜を形成する方法(特許文献3:特開昭54−162787)が知られている。
【0004】
上記の(1)、(2)、(3)の中で硬化性に優れ、低速剥離から高速剥離でのさまざまな剥離特性の要求に対して対応可能な(1)の付加反応による剥離性皮膜形成方法が広く用いられている。
【0005】
この(1)の付加反応による剥離性皮膜形成方法には、シリコーン組成物を有機溶剤に溶解させたタイプ、乳化剤を用いて水に分散させてエマルジョンにしたタイプ、シリコーンのみからなる無溶剤タイプがあるが、溶剤タイプは人体や環境に対して有害であるという欠点を有するため、安全性の面から溶剤タイプから無溶剤タイプへの切り替えが進んでいる。また、エマルジョンタイプは水を除去するのに高いエネルギーを必要とする上、多量の乳化剤が残存するため剥離力を小さくすることが難しい。
【0006】
粘着力の強い粘着材料に対しては、剥離力の小さな無溶剤タイプのシリコーン組成物が必要とされるが、これまでフェニルシリコーンオイルやジメチルシリコーンオイルを表面にブリードさせて低い剥離力を実現していた。しかし、ブリード成分は強粘着材料表面に付着するため、粘着力の低下を招き、残留接着率が低くなってしまう。一方ブリード成分を使わない無溶剤タイプのシリコーン組成物では、強粘着材料に十分対応できる剥離力の低いものは開発されていない。
ブリード成分を用いるタイプ以外で低剥離力を発揮する組成物としては、これまで次に挙げる報告がなされている。
【0007】
(4)下記(A)、(B)及び(C)成分からなる離型紙用組成物(特許文献4:特開平2−166163):
(A)1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個と、ケイ素原子に結合したオルガノシロキサン炭化水素基とを有するオルガノポリシロキサン、
(B)オルガノハイドロジェンシロキサン、
(C)白金系触媒。
【0008】
この特許文献で使用される、(A)成分は片末端ハイドロジェンシロキサンにアルケニル基含有シロキサンに付加して製造されるもので、原料としての合成に手間がかかる上に製造費用が高くなるため実用性に欠ける。また、(A)成分の合成時に白金触媒を用いるため、保存及び使用は2液以上に分けて行わなければならない。実施例として記載の例はいずれも1分子中のビニル基量が3モル以下でかつトリメチルシリル末端を有する分岐も3モル以下であり、移行成分が存在する組成となっている。
【0009】
(5)下記(A)、(B)、(C)成分を含有する、有機溶剤を含有しない剥離剤組成物(特許文献5:特許第3198926号)
(A)式:(RSiO1/2a(RSiO1/2(RSiO)(RSiO3/2)(式中、Rはビニル基、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同一又は異種の一価炭化水素基であり、a及びbは1.5≦a<3.0、0<b≦1.5、a+b=3を満足する数、xは50≦x≦400となる数)で示される、分子鎖末端にケイ素原子に結合したビニル基を有する分岐状のオルガノポリシロキサン 100重量部
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.5〜10重量部
(C)触媒量の白金触媒。
【0010】
この組成物の(A)成分は1分子中の分子鎖末端のビニル基が3.0未満の設定であるため、(A)成分のオルガノポリシロキサン中にはビニル基が無いものやビニル基が1個のものが含有されることは避けがたく、それらは移行成分となってしまう。実施例を見ても残留接着率は90〜95%と低い値となっている。剥離力については0.3m/分の剥離で剥離に要する力(剥離力)が15〜20g/5cm、即ち、0.147〜0.196N/5cmとそこそこに低い値が得られているが、これは移行成分が多いことによる影響と考えられる。さらにケイ素原子に、脂肪族不飽和結合を有しない1価の炭化水素基だけが結合した分子鎖末端の数が1分子中0〜1.5であり、特に1以下の場合は十分な低剥離力は発揮できない構造である。
【0011】
(6)下記のa)及びb)の層からなる剥離ラミネート(特許文献6:特許第3905228号)。
a)MViaで表される分岐したアルケニル基を2から5までの範囲の値で有し、トリメチルシリル基を分子鎖末端に有する、分岐を0から0.5までの範囲の値で有するオルガノポリシロキサンを含むシリコーン組成物からなる第一のラミネート層、
b)第一のラミネート層と接触しているシリコーン系感圧接着剤からなる第二のラミネート層。
【0012】
この組成物のa)層に用いられるオルガノポリシロキサンのアルケニル基数が3〜5の場合はシリコーンの移行の問題はほとんどないと考えられるが、トリメチルシリル基を分子鎖末端に有する分岐の数が0〜0.5と少なすぎるため、剥離力を低くすることは難しい。また、b)層のシリコーン系感圧接着剤に対する剥離層のため、フルオロアルキル基を含んでいるがフルオロアルキル基はシリコーン以外のアクリル系などの粘着剤に対しては剥離力が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭47-32072号公報
【特許文献2】特公昭35−13709号公報
【特許文献3】特開昭54−162787号公報
【特許文献4】特開平2−166163号公報
【特許文献5】特許第3198926号公報
【特許文献6】特許第3905228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、硬化被膜としたときに粘着剤へのシリコーン成分の移行が無く、かつ低速の剥離でも高速の剥離でも剥離力が非常に低い付加反応タイプのシリコーン剥離剤組成物を提供することを目的とする。
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、分子鎖末端のケイ素原子にアルケニル基と脂肪族不飽和結合を含有しない炭化水素基が結合した構造を3個以上と、分子鎖末端のケイ素原子に脂肪族不飽和結合を含有しない炭化水素基だけが結合した構造を1個以上とを合わせ持つオルガノポリシロキサンを付加硬化型シリコーン組成物のベースポリマーとして採用することにより上記目的を達成することができることを見出した。
【0016】
即ち、本発明は、上記課題を解決する手段として、
下記(A)、(B)及び(C)の成分を含有する、無溶剤型硬化性シリコーン剥離剤組成物を提供するものである。
(A)一般式(1)で示されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン
(R1SiO1/2a(RSiO1/2b(RSiO)c(RSiO3/2d (1)
(ここで、Rは同種又は異種の脂肪族不飽和結合を含有しない一価の炭化水素基、Rはアルケニル基であり、a〜dはそれぞれ3≦a≦10、1≦b≦30、10≦c≦500、2≦d≦38の数である。)
(B)25℃における粘度が2〜500mm/sであり1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(A)のアルケニル基1.0モルに対するケイ素原子に結合した水素原子のモル数が1.0〜5.0の範囲となる量
(C)有効量の白金族金属系触媒。
【0017】
また、本発明は、シート状基材と、該基材の片面に形成された上記の組成物の硬化被膜と、を有する剥離シートを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の組成物は、硬化被膜としたときに粘着剤へのシリコーン成分の移行が起こり難く、かつ低速における剥離力がブリード成分を添加したタイプと同等以上に低く、高速における剥離力も非常に低い。従来、このように、シリコーン成分の移行性が著しく低く、かつ剥離力が著しく低い剥離剤組成物は知られていない。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
[(A):アルケニル基含有オルガノポリシロキサン]
(A)成分は、本発明の組成物の主成分であり、分子鎖末端のケイ素原子にアルケニル基と脂肪族不飽和結合を含有しない炭化水素基が結合した構造、及び、分子鎖末端のケイ素原子に脂肪族不飽和結合を含有しない炭化水素基だけが結合した構造を合わせ持つオルガノポリシロキサンである。その平均組成式は下記(1)に表されるものである。

(R1SiO1/2a(RSiO1/2b(RSiO)c(RSiO3/2d (1)
(ここで、Rは同種又は異種の脂肪族不飽和結合を含有しない一価の炭化水素基、Rはアルケニル基であり、a〜dはそれぞれ3≦a≦10、1≦b≦30、10≦c≦500、2≦d≦38の数である。)
【0020】
分子鎖末端のケイ素原子にアルケニル基と脂肪族不飽和結合を含有しない炭化水素基が結合した構造としては、通常は、アルケニル基1個とメチル基2個が結合した構造がよく用いられており、その数{式(1)におけるaの数}は3個以上10個以下、好ましくは3個以上5個以下の範囲である。分子鎖末端のケイ素原子にアルケニル基と脂肪族不飽和結合を含有しない炭化水素基が結合した構造が3個より少ない場合では未架橋の移行成分が増えて効果被膜表面にブリードしてきて、該硬化被膜に貼り付けた粘着剤層に移行しやすいため粘着剤層の粘着力の低下をまねく。また逆に10個より多い場合では剥離力が高くなる。これは架橋密度が緻密になり過ぎ、ケイ素原子に脂肪族不飽和結合を含有しない炭化水素基だけが結合した分子鎖末端が表面に出ることを妨げるためと考えられる。
【0021】
ここで述べるアルケニル基は炭素原子数2〜10のアルケニル基であり、具体的にはビニル基、アリル基、ブテニル基、プロペニル基、5−ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基等が挙げられ、中でもビニル基が好ましい。
【0022】
Rで示される同種又は異種の脂肪族不飽和結合を含有しない一価の炭化水素基としては、炭素原子数1〜16のもの特に炭素原子数1〜8のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などが挙げられ、またこれらの水素原子の1部または全部をハロゲン原子などで置換したクロロプロピル基、トリフルオロプロピル基等のハロアルキル基が挙げられるが、硬化性、剥離力が低い点から80モル%以上がメチル基であることが好ましい。
【0023】
分子鎖末端のケイ素原子に脂肪族不飽和結合を含有しない炭化水素基だけが結合した構造の数{式(1)におけるbの数}は1個以上30個以下、好ましくは2個以上20個以下、さらに好ましくは5個以上20個以下である。分子鎖末端のケイ素原子に脂肪族不飽和結合を含有しない炭化水素基だけが結合した構造が1個より少ない場合では剥離力を低くすることが十分にできない場合がある。これは分子鎖末端のケイ素原子に脂肪族不飽和結合を含有しない炭化水素基だけが結合した分岐構造がシロキサンの架橋構造に取り込まれ、表面に出ることが出来ないためと考えられる。また30個より多い場合は、組成物の硬化が不十分になる場合がある。これはアルケニル基とケイ素原子に結合した水素原子との付加反応を立体阻害するためと考えられる。
【0024】
SiO構造単位の数、すなわち式(1)におけるcの数は、10以上500以下で、好ましくは50以上350以下、さらに好ましくは100以上300以下である。RSiO構造単位の数が10より少ない場合、架橋密度が緻密になりすぎて硬化皮膜の硬度が高くなり、低速で剥離試験をした場合の剥離力が高くなる。また該RSiO構造単位は通常2個以上繰り返して直鎖状構造を形成し、その直鎖状構造に隣接する形で末端構造が結合するのであるが、該RSiO構造単位の数が10より小さいと、該ポリオルガノシロキサン中にRSiO構造単位の2以上の繰り返しからなる構造が生じにくくなる結果、RSiO1/2構造単位が硬化皮膜表面に出難くなり、十分な剥離力を発揮できない場合がある。
【0025】
逆にRSiO構造単位の数が500より多くなると、該ポリオルガノシロキサンの、ひいては本組成物の粘度が高くなりすぎ、塗工性が低下する。特に、高速塗工の場合には、高粘度の組成物が回転ロールに当たるとせん断を受け微細化され、空気中に粒子状に漂いミストが発生することがあるという問題が生じることがある。
【0026】
RSiO3/2構造単位の数、すなわち式(1)におけるdは、合成反応に問題が無ければd=a+b−2となるためdは2以上38以下であり、好ましくは3以上23以下、さらに好ましくは6以上23以下である。
【0027】
さらに(A)成分の25℃における粘度は、硬化性シリコーン組成物の25℃における粘度が50mm/s以上500mm/s未満となることを満たすものである。本発明の硬化性シリコーン組成物の粘度が50mm/sより低いと基材への浸み込みが過大になり易いという不具合が生じ、500mm/s以上の場合は基材への塗工性が低下し、高速塗工においてはミスト発生が起こる場合がある。
【0028】
[(B):オルガノハイドロジェンポリシロキサン]
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子にケイ素原子に結合した水素原子(以下、「SiH基」ともいう)を少なくとも3個以上有し、このSiH基と(A)成分中のアルケニル基とが付加反応して硬化皮膜が形成されるものである。かかる(B)成分としては例えば下記平均組成式(3)で示されるものが挙げられる。
【0029】
SiO(4−f−g)/2 (3)

(ここでRは上記した通り、脂肪族不飽和結合を含有しない炭化水素基であり、fは 0 〜2.7の数であり、gは0.3〜3.0の数であり、但しf+g≦3を満たす。)
【0030】
平均組成式(3)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの例としては、RHSiO単位、HSiO3/2単位、及びRHSiO1/2単位の少なくとも1種を有し、場合によりさらにRSiO単位、RSiO3/2単位、及びRSiO1/2単位の少なくとも1種を含んでなるポリマーまたはコポリマーが例示されるが、RHSiO単位またはRHSiO1/2単位を合計して1分子中に少なくとも3個、好ましくは10〜100個有するものである。これは直鎖状、環状のいずれであってもよい。
【0031】
(B)成分の配合量は、(A)成分のアルケニル基1.0モルに対する本(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子のモル数が1.0〜5.0、好ましくは1.3〜2.5の範囲となる量である。モル比が1.0より小さいと硬化性が低下する上、基材との密着が悪くなり、5.0よりも大きいと剥離力が大きくなり、実用的な剥離特性が得難い。
【0032】
さらに、このとき、(B)成分の配合量は、適度の架橋密度が得られる点で、(A)成分100質量部に対して0.5〜15.0質量部であることが好ましく、0.5〜10.0質量部であることがより好ましい。
ここでRとしては上述した通りであるが、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基などが好ましく、付加反応速度向上の観点からメチル基であることが好ましい。
【0033】
[(C):白金族金属系触媒]
(C)成分の白金族金属系触媒は(A)成分と(B)成分との付加反応を促進するための触媒であり、所謂ヒドロシリル化反応を促進するものとして当業者に公知のものはいずれも使用することができる。このような白金族金属系触媒としては、例えば白金系、パラジウム系、ロジウム系などの触媒が挙げられ、これらの中で特に白金系触媒が反応性が高い点で好ましい。
【0034】
(C)成分の配合量は触媒としての所謂有効量でよい。具体的には、良好な硬化皮膜を得ると共に経済的な見地から(A)成分に対して白金族金属として1〜1,000ppmの範囲とすることが好ましい。
[任意成分]
本発明のシリコーン組成物は、上記成分(A)〜(C)の所定量を配合することによって得られるが、その他の成分を必要に応じて本発明の目的、効果を損なわない範囲で添加することができる。シリコーン系剥離剤組成物に通常使用されるものとして公知のものを通常の配合量で添加することができる。しかし、本発明の組成物は環境に対する安全性を考え無溶剤で使われるものであるが、有機溶剤に希釈した場合もその特性は低下するものではない。
【0035】
任意的添加成分としては、例えば、白金族金属系触媒の触媒活性を抑制する目的で、各種有機窒素化合物、有機リン化合物、アセチレン系化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物などの制御剤として公知のものが使用できる。例えば、3−メチル−1−ブチン−3オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、フェニルブチノール等のアセチレン系アルコール、3−メチル−3−1−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−イン等のアセチレン系化合物、これらのアセチレン系化合物とアルコキシシランまたはシロキサンあるいはハイドロジェンシランとの反応物、テトラメチルビニルシロキサン環状体等のビニルシロキサン、ベンゾトリアゾール等の有機窒素化合物及びその他の有機リン化合物、オキシム化合物、有機クロム化合物等が挙げられる。この制御剤としての化合物の配合量は、良好な処理浴安定性が得られる量であればよく、一般に(A)、(B)及び(C)の成分の合計100質量部に対して0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部使用される。
【0036】
また、剥離力を制御する目的でシリコーンレジン、シリカ、ケイ素原子に結合した水素原子もアルケニル基も有さないオルガノポリシロキサンなどを、必要に応じて添加することができる。なお任意成分の添加量は本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0037】
[低分子シロキサンの総量]
本発明のシリコーン組成物は、含有するケイ素数3〜10の低分子シロキサンの総量が10,000ppm以下、好ましくは8,000ppm以下、さらに好ましくは2,000ppm以下のものである。該低分子シロキサンは環状体及び非環状体を含み、これら低分子シロキサンの総量が10,000ppmを超えると、剥離層として硬化被膜を形成し、粘着剤層を貼り合わせて剥離した場合にシリコーン成分の粘着剤層への移行量が増える。そのため、粘着剤の粘着力が低下し、また、後述のシリコーン移行性試験においてシリコーン移行が起こり易く、塗布した油性インキのハジキが起こることがある。
【0038】
[調製]
本発明のシリコーン組成物の調製は(A)成分、(B)成分及び任意成分を予め均一に混合した後、(C)成分を添加することが好ましい。各成分は単一種類で使用しても2種以上を併用してもよい。但し、組成物全体として25℃における動粘度が通常50〜500mm/sの範囲内が好ましい。該動粘度が500mm/sを超えると塗工時における塗工ロール間から発生するミストのため高速塗工出来ず生産性が低下するため実用上の使用は難しい場合がある。
【0039】
[用途・使用方法]
このようにして調製された本発明のシリコーン組成物は、例えば紙、プラスチックフィルムなどのシート状基材に塗布した後、常法によって加熱硬化される。こうしてシート状基材の片面に本発明の組成物の硬化皮膜が形成されたものは、剥離シートなどとして好適に使用される。プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックのフィルムが挙げられる。
【0040】
本発明のシリコーン組成物は前記成分を均一に混合し、例えば紙、プラスチックフィルムといった基材表面に均一に塗工後、加熱硬化により使用する。塗布量は基材表面に硬化皮膜を形成するのに十分な量であればよく、例えば0.1〜5.0g/m程度である。多すぎる量の塗布は逆に剥離性能の低下を招く。加熱硬化時の温度は基材の種類や塗工量によって異なるが、100℃で60秒から200℃で2秒程度の範囲で適宜使用すればよい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記に挙げる粘度はいずれも25℃においてオストワルド型粘度計を用いて測定した値である。
また、シリコーン組成物の剥離力、残留接着率、シリコーン移行性は下記の方法により測定した。いずれのシリコーン組成物も硬化性は問題ない状態であった。
【0042】
〔低分子シロキサン量〕
シリコーン組成物1gをn-テトラデカン(20μg/ml)含有アセトン10ml中に16時間浸漬させ抽出された低分子シロキサン量をキャピラリーガスクロマトグラフィ(使用装置:Agilent Technologies Agilent 7890A)にて測定した。
【0043】
〔剥離力〕
・低速剥離試験:
シリコーン組成物をポリエチレンラミネート紙(坪量100g/m)の表面に0.9〜1.0g/m塗布し、120℃の熱風式乾燥機中で60秒間加熱して硬化皮膜を形成した。この状態で、50℃で3日間セパレーターエージング後、この硬化皮膜表面にアクリル系溶剤型粘着剤オリバインBPS−5127(商品名、東洋インキ製造(株)製)を乾燥前塗膜の厚さで120μm塗布後100℃で3分間加熱処理した。次に、この処理面に坪量64g/mの上質紙を貼り合せて試料を作製した。該試料を50mm幅のテープ状に切断し、25℃で20時間エージングさせた後、該テープの一端で上質紙を剥がし、該端部を、基材であるポリエチレンラミネート紙に対して180度の角度の方向に剥離速度0.3m/分で引張り、その際に剥離するのに要する力(即ち、「剥離力」)(N/50mm)を、引張試験機(株式会社島津製作所AGS−50G型)を用いて測定した。このとき、粘着剤層と硬化皮膜との間で剥離が起こり、粘着剤層は上質紙と一体となって剥離された。
【0044】
・高速剥離試験:
高速の剥離速度60m/分で貼り合せた上質紙を引張り、剥離するのに要する力(剥離力)を、引張試験機(テスター産業株式会社製高速剥離試験機)を用いて測定した。このとき、粘着剤層と硬化皮膜との間で剥離が起こり、粘着剤層は上質紙と一体となって剥離された。
【0045】
〔残留接着率〕
剥離力測定の場合と同様にしてポリエチレンラミネート紙の表面にシリコーン組成物の硬化皮膜を形成した。この硬化皮膜の表面に、ポリエステルテープ上に粘着剤を塗布してなるポリエステル粘着テープ(商品名:NO.31Bテープ、日東電工株式会社製)の粘着剤面を貼り付け、得られた積層体に1.96kPaの荷重を加えたまま70℃で20時間エージングした後、ポリエステル粘着テープを硬化皮膜から剥がしてステンレス板に貼り付けた。次に、このポリエステル粘着テープの一端を剥がしその端部をステンレス板に対して180度の角度の方向に引っ張り、剥離速度0.3m/分で剥がした。その際に剥離するのに要する力:剥離力A(N/25mm)を測定した。
【0046】
またブランクとして、ポリエステル粘着テープを、上記の硬化皮膜にではなく、幅12cm×長さ25cm×厚さ3mmのテフロン(登録商標:デュポン社製商品名)の板に貼り付けた以外は、まったく同様に処理し、ポリエステル粘着テープをステンレス板から剥離するのに要する力:剥離力B(N/25mm)を測定した。
そして、残留接着率(%)を、(A/B)×100で求めた。
【0047】
〔シリコーン移行性〕
剥離力測定の場合と同様にしてポリエチレンラミネート紙表面に形成されたシリコーン組成物の硬化皮膜の表面に、厚さ36μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを重ね、室温で0.98MPaの加圧下で20時間圧着した後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを硬化皮膜から外した。該ポリエチレンテレフタレートフィルムのシリコーン硬化皮膜と接していた表面に油性のインキ(商品名:マジックインキ、寺西化学工業株式会社製)を塗り、そのハジキ具合により、シリコーン移行性を次に基準で評価した。
・インキのハジキなし:シリコーン移行性なし又はかなり低い(表1に○で示す)
インキのハジキあり:シリコーンの移行性高い(表1に×で示す)
【0048】
−合成例1:オルガノポリシロキサン(1)の合成
オクタメチルシクロテトラシロキサン38.75mol、メチルトリ(トリメチルシロキシ)シラン0.6mol、メチルトリ(ジメチルビニルシロキシ)シラン1molに水酸化カリウムを150ppmを加え窒素雰囲気下で150℃/6時間平衡反応させた後、エチレンクロロヒドリンをカリウムに対して2倍mol量添加し150℃/2時間中和した。その後150℃、1300Pa(10mmHg)の減圧度で窒素バブリングを行いながら3時間加熱処理を行い揮発分を除去してオルガノポリシロキサン(1)を得た。オルガノポリシロキサン(1)は粘度160mm/s、その構造はSi29−NMRより{(CH)(CH=CH)SiO1/2{(CHSiO1/21.8{(CH3SiO2/2147{(CH3)SiO3/22.8であった。
【0049】
−実施例1−
(A)成分としてオルガノポリシロキサン(1)100質量部、(B)成分として分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されSiH基含有量が1.32mol/100gで粘度が35mm/sであるメチルハイドロジェンポリシロキサン(8)3.18質量部(このとき、SiH/SiCH=CHのモル比1.8)、更に任意成分として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.3質量部を加え、均一となるまで攪拌した後、(C)成分として白金とビニルシロキサンとの錯体を上記(A)と(B)の合計に対して白金換算で100ppmになるように添加し、粘度が155mm/sであるシリコーン組成物を調製した。
【0050】
−合成例2 オルガノポリシロキサン(2)の合成−
ヘキサメチルジシロキサン1mol、オクタメチルシクロテトラシロキサン50mol、メチル(トリメチルシロキシ)ポリシロキサン:〔CH{(CHSiO}SiO〕q(qは正の数)を、メチル(トリメチルシロキシ)シロキサン単位CH{(CHSiO}SiOとして5mol、メチル(ジメチルビニルシロキシ)ポリシロキサン〔CH{(CH(CH=CH)SiO}SiO〕q(qは正の数)をメチル(ジメチルビニルシロキシ)シロキサン単位:CH{(CH(CH=CH)SiO}SiOとして3molに水酸化カリウムが150ppmになるよう加え窒素雰囲気下で150℃/6時間平衡反応させた後、エチレンクロロヒドリンをカリウムに対して2倍mol量添加し150℃/2時間中和した。その後150℃、1300Pa(10mmHg)の減圧度で窒素バブリングを行いながら3時間加熱処理を行い揮発分を除去してオルガノポリシロキサン(2)を得た。オルガノポリシロキサン(2)は粘度360mm/s、その構造はSi29−NMRより{(CH(CH=CH)SiO1/2{(CHSiO1/2{(CH3SiO)194{(CH3)SiO3/2であった。
【0051】
−実施例2−
(A)成分としてオルガノポリシロキサン(2)100質量部、(B)成分として分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されSiH基含有量が1.32mol/100gで粘度が35mm/sであるメチルハイドロジェンポリシロキサン(8)2.34質量部(このとき、SiH/SiCH=CHのモル比1.8)、更に任意成分として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.3質量部を加え均一となるまで攪拌した後、(C)成分として白金とビニルシロキサンとの錯体を上記(A)と(B)の合計に対して白金換算で100ppmになるように添加し、粘度が350mm/sであるシリコーン組成物を調製した。
【0052】
−合成例3 オルガノポリシロキサン(3)の合成−
ヘキサメチルジシロキサン1mol、オクタメチルシクロテトラシロキサン50mol、メチル(トリメチルシロキシ)ポリシロキサンをメチル(トリメチルシロキシ)シロキサン単位として11mol、メチル(ジメチルビニルシロキシ)ポリシロキサンをメチル(ジメチルビニルシロキシ)シロキサン単位として3molに水酸化カリウムが150ppmになるよう加え窒素雰囲気下で150℃/6時間平衡反応させた後、エチレンクロロヒドリンをカリウムに対して2倍mol量添加し150℃/2時間中和した。その後150℃、1300Pa(10mmHg)の減圧度で窒素バブリングを行いながら3時間加熱処理を行い揮発分を除去してオルガノポリシロキサン(3)を得た。オルガノポリシロキサン(3)は粘度180mm/s、その構造はSi29−NMRより{(CH(CH=CH)SiO1/23{(CH3SiO1/213{(CH3SiO)195{(CH3)SiO3/212であった。
【0053】
−実施例3−
(A)成分としてオルガノポリシロキサン(3)100質量部、(B)成分として分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されSiH基含有量が1.32mol/100gで粘度が35mm/sであるメチルハイドロジェンポリシロキサン(8)2.45質量部(このとき、SiH/SiCH=CHのモル比1.8)、更に任意成分として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.3質量部を加え、均一となるまで攪拌した後、(C)成分として白金とビニルシロキサンとの錯体を上記(A)と(B)の合計に対して白金換算で100ppmになるように添加し、粘度175mm/sであるシリコーン組成物を調製した。
【0054】
−実施例4−
(A)成分としてオルガノポリシロキサン(3)80質量部、両末端ビニル基含有オルガノポリシロキサン(7):{(CH(CH=CH)SiO1/2{(CHSiO)22320質量部、(B)成分として分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されSiH基含有量が1.32mol/100gで粘度が35mm/sであるメチルハイドロジェンポリシロキサン(8)3.46質量部(このとき、SiH/SiCH=CHのモル比1.8)、更に任意成分として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.3質量部を加え、均一となるまで攪拌した後、(C)成分として白金とビニルシロキサンとの錯体を上記(A)と(B)の合計に対して白金換算で100ppmになるように添加し、粘度300mm/sであるシリコーン組成物を調製した。
【0055】
−合成例4:オルガノポリシロキサン(4)の合成−
オクタメチルシクロテトラシロキサン38.75mol、メチルトリ(トリメチルシロキシ)シランCH{(CH3SiO}Si 0.2mol、メチルトリ(ジメチルビニルシロキシ)シランCH{CH=CH(CHSiO}Si 1molに、水酸化カリウムが150ppm量になるよう加え窒素雰囲気下で150℃/6時間平衡反応させた後、エチレンクロロヒドリンをカリウムに対して2倍mol量添加し150℃/2時間中和した。その後150℃、1300Pa(10mmHg)の減圧度で窒素バブリングを行いながら3時間加熱処理を行い揮発分を除去してオルガノポリシロキサン(4)を得た。オルガノポリシロキサン(4)は粘度200mm/s、その構造はSi29−NMRより{(CH(CH=CH)SiO1/2{(CH3SiO1/20.6{(CH3SiO)155{(CH3)SiO3/21.6であった。
【0056】
−比較例1−
(A)成分としてオルガノポリシロキサン(4)100質量部、(B)成分として分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されSiH基含有量が1.32mol/100gで粘度が35mm/sであるメチルハイドロジェンポリシロキサン(8)3.43質量部(このとき、SiH/SiCH=CHのモル比1.8)、更に任意成分として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.3質量部を加え、均一となるまで攪拌した後、(C)成分として白金とビニルシロキサンとの錯体を上記(A)と(B)の合計に対して白金換算で100ppmになるように添加し、粘度が195mm/sであるシリコーン組成物を調製した。
【0057】
−合成例5:オルガノポリシロキサン(5)の合成−
オクタメチルシクロテトラシロキサン40mol、メチルトリ(ジメチルビニルシロキシ)シランを1molに水酸化カリウムのシリコネートを水酸化カリウム量として150ppm量になるよう加え窒素雰囲気下で150℃/6時間平衡反応させた後、エチレンクロロヒドリンをカリウムに対して2倍mol量添加し150℃/2時間中和した。その後150℃、1300Pa(10mmHg)の減圧度で窒素バブリングを行いながら3時間加熱処理を行い揮発分を除去してオルガノポリシロキサン(5)を得た。オルガノポリシロキサン(5)は粘度250mm/s、その構造はSi29−NMRより{(CH(CH=CH)SiO1/23{(CH3SiO2/2155{(CH3)SiO3/2であった。
【0058】
−比較例2−
(A)成分としての条件を満たさないオルガノポリシロキサン(5)100質量部、(B)成分として分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されSiH基含有量が1.32mol/100gで粘度が35mm/sであるメチルハイドロジェンポリシロキサン(8)3.46質量部(このとき、SiH/SiCH=CHのモル比1.8)、更に任意成分として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.3質量部を加え、均一となるまで攪拌した後、(C)成分として白金とビニルシロキサンとの錯体を上記(A)と(B)の合計に対して白金換算で100ppmになるように添加し、粘度が240mm/sであるシリコーン組成物を調製した。
【0059】
−比較例3−
(A)成分としての条件を満たさないオルガノポリシロキサン(5)100質量部、(B)成分として分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されSiH基含有量が1.32mol/100gで粘度が35mm/sであるメチルハイドロジェンポリシロキサン(8)3.46質量部(このとき、SiH/SiCH=CHのモル比1.8)、更に任意成分として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.3質量部及びメチルフェニルポリシロキサン(9)(25℃における粘度3100mm/s、屈折率1.43)を1.0質量部を加え、均一となるまで攪拌した後、(C)成分として白金とビニルシロキサンとの錯体を上記(A)と(B)の合計に対して白金換算で100ppmになるように添加し、粘度が250mm/sであるシリコーン組成物を調製した。
【0060】
−合成例6 オルガノポリシロキサン(6)の合成−
オクタメチルシクロテトラシロキサン40mol、メチルトリ(トリメチルシロキシ)シラン:CH{(CH3SiO}Si 0.67mol、メチルトリ(ジメチルビニルシロキシ)シラン:CH{(CH(CH=CH)SiO}Si 0.33molに水酸化カリウムが150ppmになるよう加え窒素雰囲気下で150℃/6時間平衡反応させた後、エチレンクロロヒドリンをカリウムに対して2倍mol量添加し150℃/2時間中和した。その後150℃、1300Pa(10mmHg)の減圧度で窒素バブリングを行いながら3時間加熱処理を行い揮発分をカットしてオルガノポリシロキサン(6)を得た。オルガノポリシロキサン(6)は粘度490mm/s、その構造はSi29−NMRより{(CH(CH=CH)SiO1/2{(CH3SiO1/2{(CH3SiO)161{(CH3)SiO3/2であった。
【0061】
−比較例4−
(A)成分としての条件を満たさないオルガノポリシロキサン(6)100質量部、(B)成分として分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されSiH基含有量が1.32mol/100gで粘度が35mm/sであるメチルハイドロジェンポリシロキサン(8)1.12質量部(このとき、SiH/SiCH=CHのモル比1.8)、更に任意成分として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.3質量部を加え、均一となるまで攪拌した後、(C)成分として白金とビニルシロキサンとの錯体を上記(A)と(B)の合計に対して白金換算で100ppmになるように添加し、粘度が480mm/sであるシリコーン組成物を調製した。
【0062】
上記の実施例及び比較例の組成物について前述の特性評価を行った結果を表1及び表2に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
本発明のシリコーン組成物は移行がなく、低速及び高速のいずれの剥離速度において従来よりも10%〜60%も低い剥離力が得られることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の硬化性シリコーン剥離剤組成物は、剥離紙等の粘着剤に対して剥離性を示すシリコーン硬化皮膜の形成に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)、(B)及び(C)の成分を含有する無溶剤型硬化性シリコーン剥離剤組成物。
(A)一般式(1)で示されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン
(R1SiO1/2a(RSiO1/2b(RSiO)c(RSiO3/2d (1)
(ここで、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない一価の炭化水素基、Rはアルケニル基であり、a〜dはそれぞれ3≦a≦10、1≦b≦30、10≦c≦500、2≦d≦38の数である。)
(B)25℃における粘度が2〜500mm2/sであり、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(A)成分のアルケニル基1.0モルに対するケイ素原子に結合した水素原子のモル数が1.0〜5.0の範囲となる量
(C)有効量の白金族金属系触媒
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、(A)成分のアルケニル基1.0モルに対する(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子のモル数が1.3〜2.5である硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の組成物であって、(A)成分の25℃における粘度が50mm/s以上500mm/s未満の範囲にある硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物であって、(A)成分100質量部当たり、(B)成分の量が0.5〜15.0質量部である硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物であって、含有するケイ素原子数3〜10の低分子シロキサンの総量が10,000ppm以下である硬化性シリコーン組成物。
【請求項6】
シート状基材と、該基材の片面に形成された請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物の硬化被膜と、を有する剥離シート。

【公開番号】特開2012−224780(P2012−224780A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94823(P2011−94823)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】