説明

硬化性フルオロエラストマー組成物

【課題】この発明は、改善された封止性、すなわち改善されたOリング上圧縮永久歪、破断点応力と破断点伸びとの改善された組み合わせとして表される、改善された力学的性質を持つ硬化フルオロエラストマー組成物を得ることを課題とする。
【解決手段】 a) 末端基の総量に対して、3モル%より低い量の極性末端基を含むフッ化ビニリデン(VDF)系フルオロエラストマー100重量部、
b) 反応促進剤0.05 phrから5 phr、
c) 硬化剤0.5 phrから15 phr、
d) 無機酸受容体として、ひとつ以上の2価金属酸化物1 phrから40 phr、
e) 塩基性化合物として、ひとつ以上の2価金属又は弱酸金属塩の水酸化物0phrから2.5 phr、特に0 phrから1.5 phr、
f)強化充填剤0 phrから80 phr
より成る、イオンルートによって硬化可能なフッ化ビニリデン(VDF)系フルオロエラストマー組成物により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、改善された封止性、すなわち改善されたOリング上圧縮永久歪、破断点応力と破断点伸びとの改善された組み合わせとして表される、改善された力学的性質を持つ硬化フルオロエラストマー組成物を得ることができる、硬化性フルオロエラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
さらに詳しく述べると、本発明の硬化性フルオロエラストマー組成物はイオンルートにより硬化される。本発明の硬化フルオロエラストマー組成物はOリング、ガスケット、シャフト封止、燃料ホース等の作成に使用される。本発明の硬化性組成物から得たOリングは、改善された圧縮永久歪値が改善され及び、破断点応力と破断点伸びが共に改善されている。シャフト封止は、破断点応力と破断点伸びが共に改善されている。また、本発明の硬化性フルオロエラストマー組成物は短時間で架橋する。
【0003】
フルオロエラストマーの最も重要な用途のひとつはOリングの作成に関連していることは周知の事実である。Oリングは、フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、任意でテトラフルオロエチレン(TFE)に由来するユニットに基づくフルオロエラストマーコポリマーから得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの用途において使用されるフルオロエラストマーは、低温と、高温で高い弾性を持たなければならず、自動サイクルで簡単に射出成形できるよう良好な加工性を示さなければならない。
上記製造物を作成するために、前記特性の最適の組み合わせを持つ硬化性VDF系フルオロエラストマー組成物を利用可能にする必要性が感じられた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、
a) 極性末端基が実質的にないフッ化ビニリデン(VDF)系フルオロエラストマー100重量部、
b) 反応促進剤0.05から5 phr、
c) 硬化剤0.5から15 phr、
d) ひとつ以上の無機酸受容体で、特に2価金属酸化物1から40 phr、
e) ひとつ以上の塩基性化合物で、特に2価金属又は弱酸金属塩の水酸化物0から2.5 phr、特に0から1.5 phr、
f) 強化充填剤0から80 phr
から成るイオンルートによって硬化可能なフッ化ビニリデン(VDF)系フルオロエラストマー組成物が提供される。フルオロエラストマー組成物の成分a)は、少なくとももうひとつのエチレン型の不飽和フッ化コモノマーを含むVDFコポリマーから成る。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、改善された封止性、すなわち改善されたOリング上圧縮永久歪、破断点応力と破断点伸びとの改善された組み合わせとして表される、改善された力学的性質を持つ硬化フルオロエラストマー組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
このコモノマーは、例えば以下から選択される:
− ヘキサフルオロプロペン(HEP)、テトラフルオロエチレン(TFE)などのC2-C8パーフルオロオレフィン、
− トリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロペン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ブロモトリフルオロエチレンなどの水素及び/又は塩素及び/又は臭素及び/又はフッ素を含むC2-C8フルオロオレフィン、
− 以下から選択されるのが好ましいフルオロビニルエーテル(VE):
− (パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)CF2=CFORf(式中、Rfは、例えばトリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、パーフルオロプロピル、ペンタフルオロプロピルなどのC1-C6(パー)フルオロアルキルである);
− パーフルオロ-オキシアルキルビニルエーテル CF2=CFOXf(式中、Xは、例えばパーフルオロ-2-プロポキシ-プロピルなど、ひとつ以上のエーテルを持つ、C1-C12パーフルオロ-オキシアルキルである);
− CF2=CFOCF2OCF2CF3(A-III)及びCF2=CFOCF2OCF2CF2OCF3(A-IV)。
【0008】
本発明の目的のフルオロエラストマー組成物は、非フッ化エチレン型不飽和モノマー、特にエチレンやプロピレンなどの非フッ化C2-C8オレフィン(Ol)由来のユニットを含んでもよい。
ポリマーの中には、フッ化ビス-オレフィンに由来するユニットが0.01モル%-5モル%の少量で存在してもよい。引用によりここに組み込まれる、欧州特許第661,304号に記載のビスオレフィンが例えば使用されてもよい。
【0009】
フルオロエラストマー組成物の成分a)の好ましい組成は以下のとおりである(モル%):
− VDF 45-85%、HFP 15-45%、TFE 0-30%、
− VDF 20-30%、HFP 15-40%、TFE 0-30%、Ol 5-30%、PAVE 0-35%、または
− VDF 60-75%、HFP 10-25%、VE 0-15%、TFE 0-20%。
【0010】
前記のフルオロエラストマー成分a)には極性末端基が実質的にない。末端基は、重合体主鎖もしくは任意に存在する側鎖の末端に位置するすべての基を意味している。極性基は、カルボン酸塩基-COO-や硫酸塩基-OSO3-などのイオン型と、アルコール基-CH2OH、アシルフルオライド基-COF、アミド基-CONH2やその他などの非イオン型の両方を意味している。「極性基が実質的にない」については、極性末端基の量が、ポリマー中に存在する末端基の総量に対して、3モル%より低い、好ましくは1モル%よりも低い、さらに好ましくは0であることを意味する。存在する各種類の極性末端基の量が、実施例中に報告される方法による検出可能限度、すなわちポリマー1kgにつき1mmoleより低い時、極性基の量は0を意味する。
【0011】
使用できる反応促進剤成分b)は、オニウム有機誘導体により形成される。発明に使用され得るオニウム有機誘導体は一般的に、少なくともひとつのヘテロ原子、例えば有機基もしくは無機基に結合したN、P、S、Oを含む。発明に使用されるに適したオニウム有機化合物は例えば、米国特許第3,655,727号、米国特許第3,712,877号、米国特許第3,857,807号、米国特許第3,686,143号、米国特許第3,933,732号、米国特許第3,876,654号、米国特許第4,233,421号、米国特許第4,259,463号、米国特許第4,882,390号、米国特許第4,912,171号、米国特許第5,591,804号、欧州特許第 182,299号、欧州特許第120,462号、West and Holcomb, "Fluorinated Elastomers", Kirk-Othmer、Encyclopedia of Chemical Technology, vol. 8, 3rd Ed. John Wiley & Sons, Inc., pp. 500-515(1979)に記載されている。
【0012】
使用できるオニウム有機化合物は、例えば以下の群に属する:
A)一般式:
【化1】

【0013】
[式中、Qは以下:窒素、リン、砒素、アンチモン、硫黄を意味する;
XIは、例えばハライド、サルフェート、アセテート、フォスフェート、ホスホネート、ヒドロキシド、アルコキシド、フェネート、ビスフェネートなどの有機アニオン又は無機アニオン;
nはX1イオンの原子価;
R2、R3、R4、R5は、互いに独立して以下を意味する:
− C1-C20アルキル、C6-C20アリール又はアリールアルキル、C1-C20アルケニル、又はその組み合わせ;
− 塩素、フッ素、臭素から選択されるハロゲン;
− 又は、シアノ、-ORB及びCOORB(RBが上記の意味を持つアルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルケニルである);
R2、R3、R4、R5のうち2つの基は、ヘテロ原子Qと共に、環状構造を形成することができる;
Qが硫黄原子の時、R2、R3、R4、R5基のひとつは存在しない)]
を有する化合物;
【0014】
B)以下の一般式:
mI[P(NR6R7)nIR84-nI]+YmI- (II)
R9[P(NR6R7)rR83-r]2+pYmI- (III)
[式中、R6、R7、R8は同一又は異なって以下の意味を持つ:
− C1-C18、好ましくはC1-C12アルキル、C4-C7シクロアルキル、
C6-C18、好ましくはC6-C12アリール又はアリールアルキル;
− オキシアルキル又はポリ(オキシアルキル)(式中、アルキルは上記のもので、ポリオキシアルキルは遊離又はエーテル化された末端OH官能基を持つ);
− R6、R7、R8は任意にハロゲン、CN、OH、カルバルコキシを含むことができる(式中、R6、R7は、上記窒素原子と共に、複素環を形成することができる);
− R9はC1-C6 2価アルキレン、オキシアルキレン又はC6-C12アリーレンである;
【0015】
− nIは1から4の整数;
− rは1から3の整数;
− mIは1から2の整数で、Yイオンの原子価に相当する;
− pはmI x p=2のような係数;
− Yは、原子価mを持つアニオンで、有機又は無機のどちらであってもよい;例えばYは、ハロゲン化物、パークロレート、ニトロレート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロフェスフェート、オキサレート、アセテート、ステアレート、ハロアセテート、パラトルエンスルホンネート、フェネート、ビスフェネート、水酸化物より選択できる。また、Yは、例えばZnCl42-、CdCl42-、NiBr42-、HgI3-のような複合アニオンであってもよい]
で表されるアミノホスホニウム誘導体;
【0016】
C)以下の式:
【化2】

【0017】
[式中、Arはフェニル、置換フェニル(例えばメトキシフェニル、クロロフェニル、トリルなど)、ナフチル;
R10は水素、メチル、エチル、プロピル、カルバルコキシ;
R11はカルバルコキシ、C1-C8アルキル、シアノ、アミド;
あるいは、R10は、R11およびP=C結合の炭素原子と共に、例えばシクロペンタジエンなどの環状基を形成する]
で表されるホスホラン、特にトリアリールホスホラン;
D)以下の式:
[N(R12)2]C+XCC- (V)
[式中、R12は、P、S、OあるいはN等のヘテロ原子で終端化された
1価有機基であり、この有機基は、前記へテロ原子を介して窒素と共有結合している;
cはXcアニオンの原子価である;
Xcは、例えばハライド、ヒドロキシド、サルフェート、チオサルフェート、ナイトレート、ホルメート(formiate)、アセテート、シアネート、チオシアネート、テトラフェニルボレート、ホスフェート、ホスホネート、アルコキシド、フェネート、ビスフェネート、又はパークロレートなどの有機又は無機アニオンである]
で表されるイミニウム塩。
【0018】
群A)のオニウム有機誘導体の例は以下のとおりである:
塩化トリフェニルベンジルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、重硫酸テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、塩化トリブチルアリルホスホニウム、塩化トリブチルベンジルホスホニウム、塩化ジブチルジフェニルホスホニウム、塩化テトラブチルホスホウム、塩化トリアリルサルフォニウム。
【0019】
群B)のアミノホスホニウム誘導体の例は、ベンジルジフェニル(ジエチルアミノ)ホスホニウム塩及びベンジルトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム塩である。
群D)の化合物の例は塩化8-ベンジル-1、8-ジアゾビシクロ[5、4、0]-7-ウンデセンである。
好ましくは四級アンモニウム塩又はホスホニウム塩(例えば欧州特許第335,705号及び米国特許第3,876,654号参照)、アミノホスホニウム塩(例えば米国特許第4,259,463号参照)、ホスホラン(例えば米国特許第3,752,787号参照)が使用される。
また、オニウム有機誘導体は混合物として使用してもよい。
【0020】
硬化剤成分C)としては、例えば、欧州特許第335,705号及び米国特許第4,233,427号に記載されているように、芳香族、又は脂肪族のポリヒドロキシル化化合物又はその誘導体が使用できる。例えば、下記の式:
【化3】

【0021】
[式中、Z'は以下の意味の内ひとつを持つ:
− 任意にすくなくともひとつの塩素原子あるいはフッ素原子で置換された、2価のC1-C13直鎖又は分岐脂肪族基、C4-C13脂環式基、C6-C13芳香族又はアリールアルキレン基;
− チオ、オキシ、カルボニル、スルフィニル又はスルホルニル;
− xは0又は1;
− uは1又は2;
− 式(VI)の化合物の芳香環は任意に、塩素、フッ素又は臭素;-CHO、C1-C8アルコキシ、-COOR10(R10はH又はC1-C8アルキル、C6-C14アリール、C4-C12シクロアルキルである)から選択される他の置換基を有することができる]
のジ-、トリ-、テトラーヒドロキシベンゼン、ナフタレン、アントラセン及びビスフェノールが挙げられる。
【0022】
式(VI)のZ'がアルキレンの時、アルキレンは例えば、メチレン、エチレン、クロロエチレン、フルオロエチレン、ジフルオロエチレン、1,3-プロピレン、テトラメチレン、クロロテトラメチレン、フルオロテトラメチレン、トリフルオロテトラメチレン、2-メチル-1,3-プロピレン、2-メチル-1,2-プロピレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレンでもよい。Z'がアルキリデンの時、アルキリデンは例えば、エチリデン、ジクロロエチリデン、ジフルオロエチリデン、プロピリデン、イソプロピリデン、トリフルオロイソプロピリデン、ヘキサフルオロイソプロピリデン、ブチリデン、ヘプタクロロブチリデン、ヘプタフルオロブチリデン、ペンチリデン、ヘキシリデン、1,1-シクロヘキシリデンであってもよい。
【0023】
Z'がシクロアルキレンの時、シクロアルキレンは例えば、1,4-シクロヘキシレン、2-クロロ-1,4-シクロヘキシレン、2-フルオロ-1,4-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレン、シクロペンチレン、クロロシクロペンチレン、フルオロシクロペンチレン、シクロヘプチレンであってもよい。また、Z'はm-フェニレン、p-フェニレン、2-クロロ-1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、o-フェニレン、メチルフェニレン、ジメチルフェニレン、トリメチルフェニレン、テトラメチルフェニレン、1,4-ナフチレン、3-フルオロ-1,4-ナフチレン、5-クロロ-1,4-ナフチレン、1,5-ナフチレン、2,6-ナフチレンなどのアリーレンでもよい。
【0024】
リデン ビス(4-ヒドロキシベンゼン)、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン及びビスフェノールAとして知られるイソプロピリデン ビス(4-ヒドロキシベンゼン)が好まれる。
硬化剤として使用できる別のポリヒドロキシル化合物は例えば、カテコール、レゾルシノール、2-メチルレゾルシノ−ル、5-メチルレゾルシノール、ヒドロキノン、2-メチルヒドロキノン、2,5-ジメチルヒドロキノン、2-t-ブチルヒドロキノン、1,5-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシベニゼンである。
【0025】
ポリオール系の他の硬化剤は、例えばビスフェノールAFのジカリウム塩及びビスフェノールAFのナトリウムとカリウムの塩などの、アルカリ金属のカチオンと、ビスフェノールのアニオンによって形成される塩である。
硬化剤として、オニウムビスフェネート、すなわち、ひとつ又は両方のヒドロキシルがオニウム塩の形の、ビスフェノールの塩も使用できる。ビスフェネートの対イオンとして、上記オニウム有機誘導体反応促進剤成分b)に対応するすべてのカチオンが使用できる。
他の硬化剤は、例えば欧州特許第335,705号、及び米国特許第4,233,427号に記載されている。
【0026】
硬化性フルオロエラストマー組成物において、成分b)やc)の代わりに、成分b)と成分c)の付加物が使用される。特に、硬化剤と反応促進剤とのモル比が好ましくは1:1から5:1、より好ましくは2:1から5:1の、ビスフェノールとオニウム塩により形成された付加物が使用される。
前記付加物は、指示モル比の反応促進剤と硬化剤との反応生成物の融解、もしくは指示分量の硬化剤を加えた1:1の付加物の融解によって得られる。
【0027】
付加物が使用される時、任意に付加物に含まれる反応促進剤に加えて、ある量の遊離反応促進剤が存在してもよい。
付加物が使用される時、任意に付加物に含まれる硬化剤に加えて、ある量の遊離硬化剤が存在するのが好ましい。
付加物の製造には、以下のカチオンが特に好まれる:
1,1-ジフェニル-1-ベンジル-N-ジエチルホスホランアミン、テトラブチルホスホニウム、テトラブチルアンモニウム;アニオンのなかで特に好まれるのは、3から7の炭素原子を持つパーフルオロアルキレン基より選択されたアルキレン基で2つの芳香環が繋がれ、芳香環内のOHがパラ位置にあるビスフェノール化合物である。
【0028】
付加物の製造は、出願人の名義で出願された欧州特許出願EP684,277号及びEP684,276号に記載されている。これらは引用によって本願に組み込まれる。
硬化剤として使用可能な他の化合物は以下のとおりである:
− 以下より選択された二官能性フルオロエーテル及びフルオロポリエーテル
HOCH2-CF2OCF2CF2OCF2-CH2OH
HOCH2-CF2O(CF2CF2OCF2CF2OCF2O)ZCF2-CH2OH
HOCH2-CF2CF2OCF2CF2-CH2OH
H2NCH2-CF2O(CF2CF2OCF2CF2OCF2O)ZCF2-CH2NH2
(式中、Zは1から15の整数である。)
前記化合物は米国特許第4,810,760号、及び第4,894,418号に記載されている。
【0029】
より簡単にフルオロエラストマーに組み込まれる利点を示めす、上記二官能性フルオロポリエーテルの塩を使用することも可能である。前記塩では、2つの末端基の少なくともひとつが、メタルアルコレート、好ましくは2価金属のメタルアルコレートであるか、もしくは当初の末端基がアミンの時は、アンモニウム塩である。
第一の型の末端基の例は、-CH2OMgOH、-CH2OCaOH、-CH2OZnOHであり、第二の型の末端基は、例えば-CH2NH3+Cl-である。
【0030】
− ひとつ以上のヒドロキシル基が、エステル、又は炭酸エステルとしてブロックされたポリオール。
この群の化合物は、ポリヒドロキシル化化合物、特に、ヒドロキシル基の少なくともひとつがエステル基、又は炭酸エステル基により置換された、上記ポリフェノール及び二官能性フルオロポリエーテルを含む。前記化合物は米国特許第5,728,773号及び第5,929,169号に記載されている。
【0031】
− ひとつ以上のヒドロキシル基が、シリルエーテルの形でブロックあるいは保護されたポリオール。
この群の化合物は、ポリヒドロキシル化化合物、特に、ヒドロキシルの少なくともひとつが、-OSiRk3により置換された上記ポリフェノール及び二官能性フルオロポリエーテルを含む(Rkは水素及び/又はフッ素を含むC1-C20直鎖又は分岐脂肪族構造、C3-C20脂環式構造又はC6-C20芳香性構造)。4,4'-ヘキサフルオロイソプロピリデン-ビス-(トリメチルシリルジフェノール)が好まれる。この化合物の群は、欧州特許第879,851号に記載されている。
【0032】
成分d)は、フッ化ビニリデン コポリマーのイオン硬化に使用される成分から選択される。これらには、ZnO、MgO、PbOが挙げられる。
成分e)は、フッ化ビニリデン コポリマーのイオン硬化で知られるものから選択される。これには、例えば水酸化物が挙げられる。これら水酸化物は、例えばCa(OH)2、Sr(OH)2、Ba(OH)2から選択されることが好ましい。成分e)の他の例は、例えば、Ca、Sr、Ba、Na、Kの炭酸塩、安息香酸塩、蓚酸塩、亜リン酸塩などの弱酸の金属塩である。前記水酸化物と上記金属塩との混合物も同じく使用できる。
【0033】
成分f)は、以下より選択されることが好ましい:
カーボンブラック、硫酸バリウム、シリカ、ケイ酸塩、半結晶フルオロポリマー。半結晶フルオロポリマーは、5nmから90nm、好ましくは10nmから60nmの大きさを持つ。半結晶フルオロポリマーとは、ガラス転移温度Tgの他に、少なくともひとつの溶解温度を示す、フルオロポリマーを意味する。半結晶フルオロポリマーの例は、変性PEFEを基にした半結晶フルオロポリマー、すなわち水素化型、又はフッ素化型両方のエチレン不飽和のうち、少なくともひとつを含むコモノマーを、少なくともひとつ含む半結晶フルオロポリマーである。これらの中には、水素化エチレン、プロピレン、アクリルモノマー、例えばメタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸、アクリル酸ブチル、ヒドロキシエチルヘキシルアクリレート、スチレンモノマーなどが、例として挙げられる。
【0034】
フッ素化コモノマーの中で挙げられるのは:
− ヘキサフルオロプロペン(HFP)、ヘキサフルオロイソブテンなどのC3-C8パーフルオロオレフィン;
− フッ化ビニル、(VF)、フッ化ビニリデン(VDF)、トリフルオロエチレン、パーフルオロアルキルエチレンCH2=CH-Rf(RfはC1-C6パーフルオロアルキル)などのC2-C8水素化フルオロオレフィン;
− クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などのC2-C8クロロフルオロオレフィン;
【0035】
− (パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)CF2=CFORf(Rfは例えば、CF3、C2F5、C3F7などのC1-C6(パー)フルオロアルキル);
− ひとつ以上のエーテル基を持つ(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテルCF2=CFOX[Xは、C1-C12アルキルまたはC1-C12オキシアルキル又はC1-C12(パー)フルオロオキシアルキル、例えば、パーフルオロ-2-プロポキシ-プロピル、フルオロジオキソル、好ましくはパーフルオロジオキソル];
【0036】
− 一般式CFXAI=CXAIOCF2O-RAI (A-I)のフルオロビニルエーテル(式中、RAIはC2-C6、直鎖、分岐又はC5-C6、環状(パー)フルオロアルキル、又は1から3個の酸素原子を含む、C2-C6、直鎖、分岐(パー)フルオロオキシアルキルである。RAIが上記の定義の、フルオロアルキル又はフルオロオキシアルキルの時、RAIは、以下から選択された1から2の等しい、又は異なる原子を含んでもよい:H、Cl、Br、I;XAI=F、H;一般式の化合物:CFXAI=CXAIOCF2OCF2CF2YAI (A-II)(式中、YAI=F、OCF3; XAIは上記と同じ)が好まれる;特に、CF2=CFOCF2OCF2CF3 (A-III)及びCF2=CFOCF2OCF2CF2OCF3 (A-IV)が好まれる。
【0037】
PAVE、特にパーフルオロメチル-、エチル-、プロピルビニルエーテルが、コモノマーとして好まれる。
増粘剤、顔料、酸化防止剤、安定剤、加工助剤などのその他の従来の添加物を、硬化性ブレンドに加えることができる。加工助剤として脂肪酸のエステル又はアミド、長鎖脂肪族アルコール、低い分子量を持つポリエチレン、ステアリン酸とその無機塩を、硬化性ブレンドに加えることができる。助剤の量は、通常10 phr、好ましくは5 phrより低い。
【0038】
本発明の硬化性組成物に加えることのできる他の化合物は、0.01 phrから5 phrの量の、例えばスルホンやスルホランなどのジ有機基で置換された硫黄酸化物である。前記化合物は、ブレンド硬化率を上げることができる。前記化合物は例えば、米国特許第4,287,320号に記載されている。ジ有機基で置換された硫黄酸化物は、少なくともひとつのS原子、このS原子のみに結合したひとつ又は2つの酸素原子、炭素-硫黄結合によりこのS原子に結合した2つの有機基R'とR"を含み一般式:
(R')(R")S(O)xA (VI)
(式中、xAは1又は2;
R'及びR"は、同一又は異なって1から20以上、最大でも30、好ましくは1から8の炭素原子を持つ有機基;
R'及びR"は、単一のアルキレン基を共に形成し、硫黄原子と共にヘテロ環を形成してもよい;
R'及びR"が、炭素原子の脂肪族直鎖、分岐、環状鎖、又は芳香族鎖により形成される時、R'及びR"は、例えば酸素などのヘテロ原子及び/又は、ハライド、アルコキシ、スルフィニル、スルフォニル、カルバルコキシ、オキシ、ヒドロキシル、ニトロ、シアノ、アルキル、アリールなどの置換基を任意で含んでもよい)
を持つことが好ましい。
【0039】
ジ有機基で置換された硫黄酸化物には、ジオルガノスルフォキシド及びジオルガノスルホンを含み、例えば、"Organic Syntheses" Vol.I, pp. 718-725, Vol. II, pp. 1709-1715, Reinhold Publishing Co., N.Y., N.Y., 1957に記載されている。特に、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、及びビス(4-クロロフェニル)スルホンが好まれる。0.01 phrから5 phrの量のテトラメチレンスルホンを使用することが好ましい。
【0040】
フルオロエラストマー成分a)は、ラジカル重合によって得られる。例えば、以下から特に選択される:
I) ジ-ter-ブチルパーオキシド(DTBP)のような、アルキルが、1から12の炭素原子を持つジアルキルパーオキシド;
II) ジイソプロピルパーオキシジカルボネート(IPP)、ジ-sec-ブチルパーオキシジカルボネート、ジ-sec-ヘキシルパーオキシジカルボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカルボネート、及びジ-n-ブチルパーオキシジカルボネートのようなアルキルが、1から12の炭素原子を持つジアルキルパーオキシジカルボネート;
III) ter-ブチルパーオキシイソブチレート及びter-ブチルパーオキシピバレートのような、3から20の炭素原子を持つパーオキシエステル;
IV) ジアセチルパーオキシド及びジプロピオニルパーオキシドのような、アシルが2から12の炭素原子を持つジアシルパーオキシド;
ジ(パーフルオロプロピオニル)パーオキシド及びジ(トリ-クロロ-オクタ-フルオロヘキサ-ノイル)パーオキシドのような、ジ(パーフルオロアシル)パーオキシド、ジ(クロロ-フルオロアシル)パーオキシド;
ラジカル重合開始剤、好ましくは有機過酸化物が使用できる。
【0041】
I)及びII)群のパーオキシドの使用が好まれ、それぞれ、DTBP及びIPPの使用がより好まれる。
本発明のフルオロエラストマーの製造方法は、例えば、ラジカル重合開始剤、好ましくは上記の有機パーオキシドの存在下、水性乳濁液中で対応するモノマーを共重合させることにより実施することができる。乳濁液中の重合は、例えば、Kirk Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology, vol. 8, pp. 500以降のページ, 1979などに記載されているような公知の方法に従って実施することができる。工程温度は100℃-150℃、好ましくは105℃-130℃の間である。圧力は10と100バール、好ましくは20と50バールの間で実施することができる。公知のとおり、乳濁液中での重合には、界面活性剤の存在が欠かせない。下記の一般式に相当する、少なくとも部分的にフッ素化された界面活性剤が特に好まれる:
Rf-XB-M+
(式中、RfはC5-C16(パー)フルオロアルキル鎖、又は(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖;
XB-は-COO-、又は-SO3-
M+はH+、NH4+、アルカリ金属イオンから選択される)。
【0042】
最も一般的に使用されているものとして:
パーフルオロオクタン酸アンモニウム、任意でナトリウム、アンモニウムにより塩化され、ひとつ以上のカルボキシル基で終端化された(パー)フルオロポリオキシアルキレン、一般的なアルカリ金属、好ましくはナトリウム、部分的にフッ素化されたアルキルスルホン酸塩が思い出される。例として、米国特許第4,524,197号を参照。反応混合物に、フルオロエラストマー合成に通常使用されるものから選択された、連鎖移動剤(chain transfer agent)を加えてもよい。水素;例えばメタン、エタン、メチルシクロペンタンなどの1から12の炭素原子を持つ炭化水素;例えばクロロホルム、トリクロロフルオロメタンなどの任意に水素を含む1から10の炭素原子を持つクロロ(フルオロ)カーボン;例えばエチルアセテート、マロン酸ジエチル、ジエチルエーテル、イソプロパノール等の1から12の炭素原子を持つエステル、アルコール、エーテルなどが挙げられる。その他の連鎖移動剤は、例えば以下のとおりである:
【0043】
− 例えば、一般式Rfb(I)xB(Br)yの化合物などのヨウ化、及び/又は臭素化連鎖移動剤(式中、Rfb=1から8の炭素原子を含むパーフッ化炭化水素基、xB,Y= 0から2の整数、少なくともxB又はy=1及びxB+y≦2);
− 欧州特許出願第407,937号によるアルカリ又はアルカリ土類金属のヨウ化物及び/又は臭化物。
【0044】
乳濁液中の重合が完了すると、フルオロエラストマーは、電解質の添加又は冷却による凝固という公知の方法により、ポリマーラテックスから単離される。
本発明のフルオロエラストマーの製造は、米国特許第4,864,006号に従って、パーフルオロポリオキシアルキレンのマイクロエマルジョンの存在下、また、欧州特許第625,526号に従って、水素化末端基、及び/又は水素化反復単位を持つフルオロポリオキシアルキレンのマイクロエマルジョンの存在下、水性乳濁液中で有利に実施される。
後者の方法がより好まれる(実施例参照)。
【0045】
重合は、米国特許第4,789,717号に従ってマイクロエマルジョンの代わりに、パーフルオロポリオキシアルキレンと水の乳濁液又は分散液を使用しても、有利に実施することができる。
この目的に、例えば欧州特許出願第196,904号、第280,312号、及び第360,292号に記載されたパーフルオロオキシアルキレンと水との乳濁液及び分散液が使用できる。
本発明のフルオロエラストマーの製造に用いることができる他の方法の例として、米国特許第6,277,937号に記載された懸濁液中での重合がある。
本発明の目的となる組成物は、先行技術で公知のとおり、イオンルートにより硬化される。
【0046】
前記のとおり、本発明の硬化フルオロエラストマー組成物は、Oリング、ガスケット、シャフト封止、ホース、形材などとしても使用できる。本発明のフルオロエラストマーは、自動車産業及び化学産業における用途として通常大型製造物に使用されている、金属挿入物を備えるガスケットにも適している。
一般的に170℃から230℃の高温度のプレスでの硬化、そして一般的にほぼ1−2時間という短い後処理の時間の後でさえ、本発明のフルオロエラストマーは、すでに安定した最終的な力学的特性値及び圧縮永久歪の特性値を示している。前記特性値は、250℃でほぼ24時間という従来の後処理に関しても、実質的に変わらないままである。
【0047】
驚くべきことに、本発明の硬化フルオロエラストマー組成物は、製造物に欠点を示さないため、先行技術の硬化フルオロエラストマーと比べて、製造過程での製造物の廃棄分を減らすことを可能にすることが発見された。
本発明は、これ以降、以下に続く実施例により説明されるが、これらの実施例は例示するだけであり、発明自体の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0048】
極性末端基の測定
FT−IR、1H−NMR(300MHz)および19F−NMR(188MHz)分析で測定を行う。方法は、M. Pianca、J. Fluorine Chem. 95(1999)71〜84に記載されている。
極性末端基は、例えば、以下の−CH2OH、カルボキシル、−COF、−CONH2、−OSO3-である。
方法の検出限界は、0.1mmole/Kg。検出限界に満たない場合、イオン末端基は存在しないと考えられる。
【0049】
本発明のフルオロエラストマー組成物の特性表示方法
粘度
121℃でのムーニー粘度ML(1+10)および135℃でのムーニースコーチMSを、ASTM D 1646によって測定した。
スコーチ時間
スコーチ時間t15は表に示すが、ムーニー粘度に達する所要時間に相当し、最小粘度MV+15ムーニーポイントに等しい。 架橋過程の性質は、MDR(Moving Die Rheometer)2000E Alpha Tecnologies Ltd.を用いるASTM D 5289の方法によって測定された。 以下の試験条件を用いた:− 振動周波数:1.66MHz、
− 振動振幅:+/−0.5度、
− 温度:177℃、
− 試験片の重量:7〜8g、
− 試験期間:プラトーに達する十分な時間。
【0050】
以下のパラメーターを記録した:
− ML:lbf.inの単位で表される最小トルクレベル
− MHF:lbf.inの単位で、プラトーでの最大トルクレベル
− ts2:ML+2lbf.inに等しいトルクに達するために必要な時間
− t'x:x=50、90、95を有するML+x(MHF−ML)/100に等しいトルクに達するために必要な時間。
【0051】
機械的および封止的性質の測定
縦13mm、横13mm、高さ2mmのプラックおよびOリング214を、177℃でMDRのカーブのt'95に等しい時間加圧硬化し、次いで、空気循環炉中250℃で、実施例で特定された時間で後処理した。
【0052】
ASTM D 412の方法、方法Cによって、引張特性をプラックから型抜きした試験片で測定した。ショアーA硬度(3'')を、ASTM D 2240の方法によって積み重ねられた3片のプラックで測定した。
圧縮永久歪を、ASTM D 1414の方法によって、Oリング214で測定した。
【0053】
マイクロエマルジョンの製造
攪拌器を備えたガラス反応器に、軽い攪拌下で、1kgのマイクロエマルジョンを製造するための以下の成分を以下のように供給する。対応容量は、782mlに等しい。
【0054】
1) 600の数平均分子量と以下の式:
【化4】

[式中、n/m=10]
を有する170mlの酸を反応器に供給し、
2) 30容量%の水酸化アンモニウムの水性乳濁液170mlを添加し、
3) 340mlの脱ミネラル水を添加し、
4) 以下の式:
CF3O(CF2−CF(CF3)O)n(CF2O)mCF2COOH
[式中、n/m=20]および450の数平均分子量を有する登録商標Galden D02 102mlを添加する。
【0055】
実施例1
本発明のVDF/HFPコポリマーの製造および成分e)を含有しない各配合物の製造 50rpmで稼動する攪拌器を備える21Lの水平な反応器に、15Lの水および記載された手順によって生成された150gのマイクロエマルジョンを、導入する。 反応器を122℃に加熱し、次いで、以下の組成:VDF=53モル%、HFP=47モル%の気相を得るるまでモノマーを供給して、35相対バールの圧力にする。
【0056】
12gの過酸化ジ−t−ブチル(DTBP)の供給により、反応は開始し、VDF=78.5モル%、
HFP=21.5モル%
で生成された混合物を供給して、圧力は重合期間中、一定に保たれる。
【0057】
4500gに相当する所定量のモノマー混合物が反応した後、反応を止める。全体の重合時間は、265分に等しい。
次いで、1Lのラテックスにつき271gの濃度を有するラテックスを、電解物質(硫酸アルミニウム)を用いて凝固し、洗浄して80℃で24時間乾燥させる。
得られたポリマーのムーニー粘度ML(121℃で1+10)は44に等しい。
【0058】
19F NMR分析は、以下の組成:79.3モル%のHFP、20.7モル%のVDFを示す。
FT−IT、1H−NMR、19F−NMRで行われる末端基の分析によって、末端基CF2HおよびCH3が存在すること、CH2OH、カルボニルおよびカルボキシル基のような極性末端基が全く存在しない(<0.1mmol/Kg)ことがわかった。
【0059】
フルオロエラストマーは、表1に記載のように調合された。Tecnoflon FOR XA51(付加物b)+c))は、5/1の比率の付加物、ビィスフェノールAF/1,1,−ジフェニル−1−ベンジル−N−ジエチルホスホラミンである。
【0060】
配合物中、1.1mmhrの成分b)および6.5mmhrの成分c)が存在する(反応促進剤/硬化剤モル比0.17)。付加物b)+c)のphr量および成分c)のphr量は、上記に示されるように、1.1mmhrの反応促進剤および6.5mmhrの硬化剤に相当した。これらの量は、比較例2〜6で変化しない。
レオメトリックおよび機械的な性質データを同じ表に示す。
【0061】
実施例2
1phrの成分e)が用いられる実施例1のコポリマー配合物の製造
フルオロエラストマーは、表1に示すように調合された。レオメトリックおよび機械的な性質データを同じ表に示す。
【0062】
実施例3(比較例)
6phrの成分e)が用いられる実施例1のコポリマー配合物の製造
フルオロエラストマーは、表1に示すように調合された。レオメトリックおよび機械的な性質データを同じ表に示す。
認識できるように、破断点応力および圧縮永久歪の値は、本発明の実施例の対応値よりも劣っている。
【0063】
実施例4(比較例)
3phrの成分e)が用いられる実施例1のコポリマー配合物の製造
フルオロエラストマーは、表1に記載のように調合された。レオメトリックおよび機械的な性質データを同じ表に示す。
認識できるように、破断点応力および圧縮永久歪の値は、本発明の実施例の対応値よりも劣っている。
【0064】
実施例5(比較例)
成分e)が使用されないイオン末端基を有するVDF/HFPコポリマー配合物の製造
使用されたポリマーは、実施例1のコポリマーと同じモノマー組成物および48に等しいムーニー粘度ML(121℃で1+10)を有するAusimontの商品(登録商標Tecnoflon N535)である。
【0065】
等しい量で極性末端基CH2OHの存在することを示したが、これは存在する全末端基に対して15モル%に相当する。存在する非極性末端基は、CF2HおよびCH3である。
レオメトリックデータを同じ表に示す。
この場合、t'90として表される架橋速度は非常に遅くなり、製品の自動成形に合わない。
【0066】
実施例6(比較例)
6phrの成分e)が用いられるイオン末端基を有するVDF/HFPコポリマー配合物の製造
使用されたポリマーは、実施例5と同じである。
フルオロエラストマーは、表1に記載のように調合された。レオメトリックおよび機械的な性質データを同じ表に示す。
認識できるように、破断点応力および圧縮永久歪の値は、本発明の実施例の対応値よりも劣っている。
【0067】
実施例7
成分e)を含有しない実施例1のコポリマーの別の配合物の製造
フルオロエラストマーは、9phrの成分d)を用いて、表2に示すように調合された。表2に示される付加物b)+c)およびビスフェノールAFの量は、6.1mmhrの成分c)および1.0mmhrの成分b)(反応促進剤/硬化剤モル比0.12)に相当する。
レオメトリックおよび機械的な性質を同じ表に示す。
【0068】
実施例8(比較例)
2.5phrより多い量の塩基性化合物Ca(OH)2を含有する実施例1に記載のコポリマー配合物の製造
実施例1のフルオロエラストマーは、表2に示すように6phrの成分e)および3phrの成分d)で調合された。配合物は、6.7mmhrの成分c)および0.8mmhrの成分b)を含有する。
レオメトリックおよび機械的な性質を同じ表に示す。その結果、組成物は、本発明の実施例7と類似するトルクおよびt'90として表される架橋時間を有するが、圧縮永久歪ならびに破断点応力および破断点伸びの組み合わせは劣っている。
【0069】
実施例9(比較例)
成分e)を含有しない実施例5に記載されるコポリマー配合物の製造
実施例5のイオン末端基を有するフルオロエラストマーは、6phrの成分e)および3phrの成分d)で、表2に示すように製造された。配合物は、6.5mmhrの成分c)および1.3mmhrの成分b)を含有する。
レオメトリックおよび機械的な性質を同じ表に示す。
【0070】
たとえ前記組成物が、本発明の実施例1および7の反応促進剤/硬化剤モル比(それぞれ0.17および0.12に対し0.20)より高い場合も、硬化速度はより低く、その上、短時間のポストキュアーに対する圧縮永久歪の値は劣っている。この実施例は、ポリマー極性末端基の含有量が、硬化速度に逆効果をもたらすことを示す。
【0071】
実施例10
実施例1の量に対し成分b)およびc)の量が異なる実施例1のコポリマー配合物の製造
フルオロエラストマーは、7phrの成分d)を用いて、表3に示すように調合された。配合物は、4.8mmhrの成分c)および0.8mmhrの成分b)を含有する。
上記の量は、比較例11〜13で変化しない。
流動学的、レオメトリックおよび機械的な性質を同じ表に示す。
【0072】
実施例11(比較例)
実施例5のイオン末端基を有するコポリマー配合物の製造
実施例5のイオン末端基を有するフルオロエラストマーは、表3に示すように6phrの成分e)および3phrの成分d)で調合された。
レオメトリックおよび機械的な性質を同じ表に示す。
その結果組成物は、本発明の実施例10に匹敵する、t'90として表される架橋時間を有するが、圧縮永久歪ならびに破断点応力および破断点伸びの組み合わせは劣っている。
【0073】
実施例12(比較例)
成分e)が使用されない実施例5のコポリマー配合物の製造
フルオロエラストマーは、表3に示すように、実施例10のフルオロエラストマーと同じ方法で製造された。
t'90として表される硬化時間は、本発明の実施例10の組成物の硬化時間よりも非常に長く、製品の自動成形に合わないことが認められる。
【0074】
実施例13(比較例)
成分e)が存在せず、多量の成分d)が使用される実施例5のコポリマー配合物の製造
フルオロエラストマーは、表3に示すように、14phrに等しい多量の成分d)で調合された。流動学的およびレオメトリック性質を同じ表に示す。
本発明の実施例10の組成物に対し、比較例13の組成物は:
− より高いムーニー粘度
− ムーニースコーチt15およびts2MDRとして表されるより低いスコーチ時間
を示すことが認められる。
さらに組成物は、本発明の実施例10の組成物に対し、非常にゆっくり硬化する(t'90がより高い)。前述の性質は、組成物を自動成形に不適切にする。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0078】
この発明によれば、改善された封止性、すなわち改善されたOリング上圧縮永久歪、破断点応力と破断点伸びとの改善された組み合わせとして表される、改善された力学的性質を持つ硬化フルオロエラストマー組成物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 末端基の総量に対して、3モル%より低い量の極性末端基を含むフッ化ビニリデン(VDF)系フルオロエラストマー100重量部、
b) 反応促進剤0.05 phrから5 phr、
c) 硬化剤0.5 phrから15 phr、
d) 無機酸受容体として、一つ以上の2価金属酸化物1 phrから40 phr、
e)塩基性化合物として、一つ以上の2価金属又は弱酸金属塩の水酸化物0phrから2.5 phr、特に0 phrから1.5 phr、
f)強化充填剤0 phrから80 phr
より成る、イオンルートによって硬化可能なフッ化ビニリデン(VDF)系フルオロエラストマー組成物。
【請求項2】
フルオロエラストマー成分a)が、
以下の:
C2-C8パーフルオロオレフィン;
水素及び/又は塩素及び/又は臭素及び/又はヨウ素を含むC2-C8フルオロオレフィン;
(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)CF2=CFORf(Rfは、C1-C6(パー)フルオロアルキル);
パーフルオロ-オキシアルキルビニルエーテルCF2=CFOX(Xは、一つ以上のエーテル基を持つ、C1-C12パーフルオロオキシアルキル);
CF2=CFOCF2OCF2CF3 (A−III)および CF2=CFOCF2OCF2-CF2OCF3 (A−IV)
からなる群から選択される、少なくとも別のエチレン型の不飽和フッ化コモノマーを含むVDFコポリマーから成る請求項1に記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項3】
成分a)が、さらに非フッ化C2-C8オレフィン(Ol)を含む請求項1または2に記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項4】
成分a)が、0.01モル%から5モル%の量のフッ化ビスオレフィン由来のユニットを含む請求項1〜3のいずれか一つに記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項5】
成分b)が、オニウム有機誘導体である請求項1〜4のいずれか一つに記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項6】
オニウム有機化合物が、有機基、又は無機基に結合したN、P、S、Oから選択されたヘテロ原子を含む請求項5に記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項7】
成分b)が、四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、又はアミノ-ホスホニウム塩から選択される請求項5または6に記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項8】
成分b)が、以下:
塩化トリフェニルベンジルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、重硫酸テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、塩化トリブチルアリルホスホニウム、塩化トリブチルベンジルホスホニウム、塩化ジブチルジフェニルホスホニウム、塩化テトラブチルホスホニウム、塩化トリアリールスルホスホニウム、ベンジルジフェニル(ジエチルアミノ)ホスホニウムの塩、及びベンジルトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムの塩から選択される請求項7に記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項9】
成分c)が、ポリヒドロキシ化された、芳香族化合物もしくは脂肪族化合物またはその誘導体から選択される請求項1〜8のいずれか一つに記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項10】
成分c)が、ビスフェノールから選択される請求項9に記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項11】
成分c)が、ビスフェノール AF、ヘキサフルオロ イソプロピリデン ビス(4-ヒドロキシベンゼン)である請求項10に記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項12】
無機酸受容体成分d)が、フッ化ビニリデンコポリマーのイオン硬化で使用される受容体、特にZnO、MgO、PbOから選択される請求項1〜11のいずれか一つに記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項13】
塩基性化合物成分e)が、フッ化ビニリデンコポリマーのイオン硬化で使用される塩基性化合物、特にCa(OH)2、Sr(OH)2、Ba(OH)2、又は弱酸の金属塩、特にCa、Sr、Ba、Na、及びKのカーボネート、ベンゾエート、オキサレート、及びホスファイトから選択される請求項1〜12のいずれか一つに記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。

【公開番号】特開2010−150563(P2010−150563A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87005(P2010−87005)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【分割の表示】特願2002−205890(P2002−205890)の分割
【原出願日】平成14年7月15日(2002.7.15)
【出願人】(392001645)
【氏名又は名称原語表記】AUSIMONT SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】