説明

硬化性樹脂組成物、硬化性樹脂フィルム及びそれを用いためっき方法

【課題】めっき処理時には優れた接着性を有し、めっき処理後は、簡便に剥離することができる保護膜の形成を可能とする硬化性樹脂組成物及び硬化性樹脂フィルムを提供すること。
【解決手段】
(A)ウレタン樹脂と、(B)分子内に1つ以上のエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤とを含む硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、硬化性樹脂フィルム及びそれを用いためっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子部品の高性能化、小型化、軽量化、また高集積化に伴い、一つの基板に搭載される半導体素子の数量が増加し、半導体素子自体も高密度化してきている。半導体素子は、片面に電極(以下、表面電極という)が形成された6〜12インチのウェハー(例えば、シリコンウェハー)を切削して作製されるのが一般的である。また、近年、貫通電極を形成する目的で、表面電極が形成された面とは反対面に、金、銀、ニッケル等の電極(以下、裏面電極という)が形成された半導体素子が製造されている。裏面電極が形成された半導体素子の製造工程において、表面電極にバンプを形成するために金めっき等のめっき処理をする工程が含まれるが、めっき処理を施さない裏面電極は、保護膜を用いてめっきされないように保護する必要がある。このような保護膜には、めっき処理時は優れた接着性を有し、且つめっき処理後は容易に剥離できることが望まれる。しかし、一般的な熱硬化性接着剤を保護膜として用いた場合、接着性には優れるものの、硬化後に剥離することは難しい。
【0003】
一方、剥離可能な接着剤として、例えば、特許文献1では加熱により接着性が低下する加熱剥離型粘着シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3766304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の加熱剥離型粘着シートは、部品を仮固定するために使用されるものであり、固定と剥離とを繰り返すことができるものの、加熱時の接着性が十分ではなく、高い接着性が求められるシリコンウェハー等の保護膜用途に使用することは難しい。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、めっき処理時には優れた接着性を有し、めっき処理後は簡便に剥離することができる保護膜の形成を可能とする硬化性樹脂組成物及び硬化性樹脂フィルムを提供することを目的とする。また、本発明は、上記硬化性樹脂組成物を用いためっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ウレタン樹脂、分子内に1つ以上のエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物及び光重合開始剤を含む硬化性樹脂組成物が、ウェハー等の基板(被着体)に対して十分に高い接着性を発現し、紫外線等の活性光線を照射した時には硬化性樹脂組成物の硬化により接着性が低下して容易に剥離できるという、優れた接着性と剥離性を兼ね備えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)ウレタン樹脂と、(B)分子内に1つ以上のエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、を含む、硬化性樹脂組成物を提供する。
【0009】
かかる樹脂組成物によれば、上記構成を有することにより、ウェハー等の基板(被着体)への優れた接着性を示しつつ、接着後に紫外線等の活性光線を照射すると、光硬化が進行して接着性が低下するため、容易に基板から剥離することが可能である。
【0010】
本発明の硬化性樹脂組成物において、上記(A)ウレタン樹脂は、活性光線照射前の接着性と活性光線照射後の剥離性とを両立できる観点から、ポリブタジエン骨格及び/又はポリイソプレン骨格を有することが好ましい。また、ポリカーボネート骨格を有するウレタン樹脂も、活性光線照射前の接着性と活性光線照射後の剥離性とを両立することができる。活性光線照射前の接着性をより向上できる観点からは、ポリブタジエン骨格及び/又はポリイソプレン骨格を有するウレタン樹脂がより好ましい。活性光線照射前の高い接着性を維持しつつ、有機溶剤への溶解性、活性光線照射後の剥離性、耐薬品性及び耐水性を更に向上できる観点からは、ポリブタジエン骨格及び/又はポリイソプレン骨格に加え、ポリカーボネート骨格を更に有することが特に好ましい。
【0011】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物において、上記(B)分子内に1つ以上のエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、分子内に3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を含有することが好ましい。これにより、活性光線照射後の剥離性をより向上することができる。さらに、上記(B)分子内に1つ以上のエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物として、ポリカーボネート骨格を有するウレタン化合物を含有することにより、活性光線照射前の接着性をより向上でき、かつ耐薬品性及び耐水性をより向上することができる。
【0012】
本発明はまた、支持フィルムと、該支持フィルム上に形成された本発明の硬化性樹脂組成物からなる樹脂組成物層とを備える硬化性樹脂フィルムを提供する。上記硬化性樹脂組成物をフィルム状に形成することで取り扱いが容易となり、めっき処理時には優れた接着性を有し、めっき処理後は、活性光線の照射により簡便に剥離することができる。
【0013】
本発明はさらに、被着体の片面に本発明の硬化性樹脂組成物からなる保護層を形成する保護層形成工程と、被着体の保護層形成面とは反対側の面に、めっき被膜を形成するめっき工程と、めっき工程後、保護層に活性光線を照射して光硬化させ、被着体から光硬化後の保護層を剥離する剥離工程とを有するめっき方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、めっき処理時には優れた接着性を有し、めっき処理後は簡便に剥離することができる保護膜の形成を可能とする硬化性樹脂組成物及び硬化性樹脂フィルムを提供することができる。また、本発明によれば、上記硬化性樹脂組成物を用いためっき方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)〜(d)は本発明のめっき方法の一例を模式的に示す一連の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書における「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。同様に「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」及びそれに対応する「メタクリロイル」を意味する。
【0017】
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)ウレタン樹脂(以下、場合により「(A)成分」という)と、(B)分子内に1つ以上のエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物(以下、場合により「(B)成分」という)と、(C)光重合開始剤(以下、場合により「(C)成分」という)を含むものである。以下、各成分について詳細に説明する。
【0018】
<(A)成分:ウレタン樹脂>
(A)ウレタン樹脂は、例えば、ジオール化合物と、イソシアネート基を有する化合物とを反応させることで得られる。ジオール化合物としては、ポリブタジエンジオール又はポリイソプレンジオールのような、分子内に二重結合を有するジオール化合物を用いることが好ましい。ポリブタジエンジオール又はポリイソプレンジオールを用いて調整されるウレタン樹脂は、活性光線照射前は被着体(ウェハー等)との接着性が十分に高く、且つ、活性光線を照射した時に、後述する(B)成分との架橋密度が向上して、接着性を低下させることができる。
【0019】
ポリブタジエンジオール及びポリイソプレンジオールには、「1,4−繰り返し単位」又は「1,2−繰り返し単位」を有する化合物がある。
【0020】
ここで、ポリブタジエンにおける、「1,4−繰り返し単位」とは、下記化学式(1t)又は(1c)で表されるような繰り返し単位であり、「1,2−繰り返し単位」とは、下記化学式(1d)で表されるような繰り返し単位である。
【化1】

【0021】
1,4−繰り返し単位を主に有するポリブタジエンジオールとしては、例えば、Poly bd R−45HT、Poly bd R−15HT(出光興産社製、商品名)が挙げられる。1,2−繰り返し単位を主に有するポリブタジエンジオールとしては、下記一般式(1)で表される化合物が例示され、具体的には、G−1000、G−2000,G−3000(日本曹達社製、商品名)が挙げられる。また、1,2−繰り返し単位を主に有するポリイソプレンジオールとしては、例えば、Poly IP(出光興産社製、商品名)が挙げられる。
【化2】


[式(1)中、n1は1〜60の整数を示す。]
【0022】
特に生成した(A)ウレタン樹脂の有機溶剤への溶解性を考慮すると、分岐骨格を有するジオール化合物が好ましく、このようなジオール化合物としては、1,2−繰り返し単位を主に有するポリブタジエンジオール又はポリイソプレンジオールが好ましい。
【0023】
また、活性光線照射前の高い接着性を維持しつつ、生成した(A)ウレタン樹脂の有機溶剤への更なる溶解性、活性光線照射後の剥離性、耐薬品性及び耐水性をより向上できる観点から、(A)成分が更にポリカーボネート骨格を有することが好ましい。このようなウレタン樹脂は、ポリブタジエンジオール及び/又はポリイソプレンジオール並びにポリカーボネートジオールを、イソシアネート基を有する化合物と反応させることで得られる。
【0024】
ポリカーボネートジオールとしては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【化3】


[式(2)中、Rは炭素数1〜18のアルキレン基を示し、mは1〜30の整数を示す。]
【0025】
一般式(2)で表されるポリカーボネートジオールとしては、例えば、α,ω−ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、α,ω−ポリ(3−メチル−ペンタメチレンカーボネート)ジオールが挙げられ、市販されているものとしては、ダイセル化学社製のPLACCEL CD−205,205PL,205HL,210,210PL,210HL,220,220PL,220HL(商品名)、旭化成ケミカルズ社製のPCDL T−5651,T−5652,T−6001,T−6002(商品名)、宇部興産社製のUM−CARB90(1/1)(商品名)等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
ポリカーボネートジオールを用いる場合、その含有量は、活性光線照射前の接着性及び活性光線照射後の剥離性の観点から、ポリブタジエンジオール及び/又はポリイソプレンジオール1モルに対して、0.1〜10モルであることが好ましく、0.5〜5モルであることがより好ましく、1〜4モルであることが特に好ましい。
【0027】
また、本発明において、ポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオール及びポリカーボネートジオール以外のジオール化合物を併用することもできる。このようなジオール化合物としては、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール、シリコーンジオール及びカルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0028】
上記カルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
【化4】


[式(3)中、Rは、炭素数1〜5のアルキル基を示す。]
【0029】
上記一般式(3)で表される化合物として、具体的には、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等を挙げることができる。
【0030】
一般式(3)で表される化合物を用いて得られるウレタン樹脂は、側鎖にカルボキシル基を有するため、カルボキシル基の一部又は全てを変性することで、光硬化性を有するエチレン性不飽和基を導入することができる。これにより、紫外線等の活性光線を照射した時には光硬化性成分として機能することができ、活性光線の照射により、保護膜(以下、場合により保護層という場合もある)の接着性を低下させて、剥離性をより一層向上することができる。上記エチレン性不飽和基は、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等を反応させることで導入することができる。また、一般式(3)で表される化合物を用いて調整されたカルボキシル基を有するウレタン樹脂は、エポキシ化合物等の硬化剤と加熱により反応することから、熱硬化性樹脂としても機能し、熱硬化により保護層の剥離性をより向上することができる。
【0031】
(A)成分を合成する際に用いられるイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、下記一般式(4)で表されるジイソシアネート類が挙げられる。
OCN−X−NCO (4)
[式(4)中、Xは2価の有機基を示す。]
【0032】
上記一般式(4)中のXで示される2価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキレン基、未置換若しくはメチル基等の炭素数1〜5の低級アルキル基で置換されているフェニレン基及びナフチレン基等のアリーレン基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、より好ましくは1〜18である。また、上記Xで示される2価の有機基としては、フェニレン基、キシリレン基、ナフチレン基、ジフェニルメタン−4,4’−ジイル基、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイル基等の芳香環を有する基が好ましいものとして挙げられる。また、水添ジフェニルメタン−4,4’−ジイル基も好ましいものとして挙げられる。
【0033】
また、上記一般式(4)で表されるジイソシアネート類としては、例えば、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3,2’−、3,3’−、4,2’−、4,3’−、5,2’−、5,3’−、6,2’−又は6,3’−ジメチルジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3,2’−、3,3’−、4,2’−、4,3’−、5,2’−、5,3’−、6,2’−又は6,3’−ジエチルジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3,2’−、3,3’−、4,2’−、4,3’−、5,2’−、5,3’−、6,2’−又は6,3’−ジメトキシジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−3,3’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−3,4’−ジイソシアネート等のジフェニルメタンジイソシアネート化合物及びこれらの水添物;ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート;ベンゾフェノン−4,4’−ジイソシアネート;ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート;トリレン−2,4−ジイソシアネート;トリレン−2,6−ジイソシアネート;m−キシリレンジイソシアネート;p−キシリレンジイソシアネート;1,5−ナフタレンジイソシアネート;4,4’−〔2,2ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネートが挙げられる。これらのジイソシアネート類のように、式(4)中のXが芳香環を有する基である芳香族ポリイソシアネートを使用することが好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
また、一般式(4)で表されるジイソシアネート類としては、本発明の目的の範囲内で、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添m−キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式イソシアネートを使用することができる。なお、イソシアネート基を有する化合物として、一般式(4)で表されるジイソシアネート類と共に、三官能以上のポリイソシアネートを用いてもよい。
【0035】
また、上記一般式(4)で表されるジイソシアネート類は、経日変化を避けるために必要なブロック剤で安定化したものを使用してもよい。ブロック剤としては、ヒドロキシアクリレート、メタノールを代表とするアルコール、フェノール、オキシム等が挙げられるが、特に制限はない。
【0036】
本発明において、(A)成分として使用されるウレタン樹脂の製造方法におけるジオール化合物と、上記一般式(4)で表されるジイソシアネート類、及び種々の骨格を導入するための化合物との反応は、有機溶媒、好ましくは非含窒素系極性溶媒の存在下に、加熱縮合させることにより行うことができる。
【0037】
上記非含窒素系極性溶媒としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン等の含硫黄系溶媒;γ−ブチロラクトン、酢酸セロソルブ等のエステル系溶媒;シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0038】
上記溶媒の中でも、生成する樹脂を溶解可能な溶媒を選択して使用するのが好ましい。また、合成後、そのまま硬化性樹脂組成物の溶媒として好適なものを使用することが好ましい。上記溶媒の中でも、高揮発性であり、かつ効率良く均一系で反応を行うためには、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒が特に好ましい。
【0039】
また、溶媒の使用量は、(A)成分であるウレタン樹脂を合成する原材料の総量に対して、0.8〜5.0倍(質量比)とすることが好ましい。この使用量が0.8倍未満では、合成時の粘度が高くなりすぎて、攪拌不能により合成が困難となる傾向があり、5.0倍を超えると、反応速度が低下する傾向がある。
【0040】
反応温度は、70〜210℃とすることが好ましく、75〜190℃とすることがより好ましく、80〜180℃とすることが特に好ましい。この温度が70℃未満では反応時間が長くなり過ぎる傾向があり、210℃を超えると反応中ゲル化が起こり易くなる傾向がある。反応時間は、反応容器の容量、採用される反応条件により適宜選択することができる。
【0041】
また、必要に応じて、三級アミン類、アルカリ金属、アルカリ土類金属、スズ、亜鉛、チタニウム、コバルト等の金属又は半金属化合物等の触媒存在下に反応を行ってもよい。
【0042】
上記ジオール化合物と、上記一般式(4)で表されるジイソシアネート類とを反応させる際の配合割合は、生成するウレタン樹脂の数平均分子量、及び生成するウレタン樹脂の末端を水酸基にするかイソシアネート基にするかで適宜調整される。
【0043】
ウレタン樹脂の末端を水酸基にする場合、水酸基数とイソシアネート基数との比率(水酸基数/イソシアネート基数)が、1.01以上になるように配合割合を調整することが好ましく、数平均分子量を大きくする観点からは1.5以下に調整することが好ましい。ウレタン樹脂の末端が水酸基である場合、酢酸、(メタ)アクリル酸等のモノカルボン酸類、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等のモノイソシアネート化合物又は酸無水物類等の水酸基と反応可能な化合物と、末端の水酸基とを反応させることで、ウレタン樹脂の末端を変性してもよい。
【0044】
なお、ウレタン樹脂の高機能化のために種々の骨格を導入し易くできる観点から、ウレタン樹脂の末端をイソシアネート基にすることが好ましい。ウレタン樹脂の末端をイソシアネート基にする場合、イソシアネート基数と水酸基数との比率(イソシアネート基数/水酸基数)が、1.01以上になるように調整することが好ましく、数平均分子量を大きくする観点からは1.5以下に調整することが好ましい。このような比率にすることにより、末端がイソシアネート基であるウレタン樹脂となり、種々の骨格を導入し易くすることができる。種々の骨格を導入するための化合物としては、例えば、モノヒドロキシ化合物、ラクタム類、オキシム類、モノカルボン酸類及び2価の酸無水物類等のイソシアネート基と反応可能な化合物が挙げられる。
【0045】
上記モノヒドロキシ化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、上記各(メタ)アクリレートのカプロラクトン又は酸化アルキレン付加物、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリルレート、アリルアルコール、2−アリロキシエタノール等のエチレン性不飽和基を有するモノヒドロキシ化合物、グリコール酸、ヒドロキシピバリン酸等のカルボン酸を有するモノヒドロキシ化合物が挙げられる。これらのモノヒドロキシ化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。活性光線照射後の保護層の剥離性をより向上できる観点から、エチレン性不飽和基を有するモノヒドロキシ化合物を用いることが好ましい。
【0046】
このようにして得られる(A)成分であるウレタン樹脂の数平均分子量は、7,000〜65,000であることが好ましく、1,0000〜60,000であることがより好ましく、15,000〜50,000であることが特に好ましい。数平均分子量が7,000未満であると、活性光線照射後の保護層を剥離した際に、被着体表面上の付着物若しくは残渣が生じやすく、また耐薬品性が低下する傾向があり、数平均分子量が65,000を超えると、非含窒素系極性溶媒に溶解し難くなり、合成中に不溶化しやすい傾向があり、また、活性光線照射前の接着性が低下する傾向がある。
【0047】
なお、本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算した値とする。また、数平均分子量、重量平均分子量及び分散度は、以下のように定義される。
【0048】
(a)数平均分子量(Mn)
Mn=Σ(N)/ΣNi=ΣX
(X=分子量Mの分子のモル分率=N/ΣN
(b)重量平均分子量(Mw)
Mw=Σ(N)/ΣN=ΣW
(W=分子量Mの分子の重量分率=N/ΣN
(c)分子量分布(分散度)
分散度=Mw/Mn
【0049】
次に、上述の末端がイソシアネート基であるウレタン樹脂(以下、場合により化合物(a−1)という)と、イソシアネート基と反応可能な化合物とを用いて、種々の骨格を導入したウレタン樹脂を(A)成分として用いる際の他の具体例について説明する。
【0050】
まず、上述のジオール化合物と、上記一般式(4)で表されるジイソシアネート類とを、末端がイソシアネート基となる条件で反応させてウレタン樹脂を合成する。ここで合成するウレタン樹脂の数平均分子量は、500〜30,000であることが好ましく、1,000〜25,000であることがより好ましく、1,500〜20,000であることが特に好ましい。
【0051】
このようにして得られた末端がイソシアネート基であるウレタン樹脂と、ジカルボン酸、酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸及びその誘導体、又は酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸とを反応させて、アミド結合、及び/又はイミド結合を導入することができる。アミド結合、及び/又はイミド結合を導入したウレタン樹脂は、耐熱性等をより向上することができる。
【0052】
上記ジカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン−4,4’−ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸を挙げることができる。
【0053】
酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸及びその誘導体としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(5)又は(6)で表される化合物を挙げることができる。
【化5】


【化6】


[式(5)及び(6)中、R’は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を示し、Yは、−CH−、−CO−、−SO−、又は−O−を示す。]
【0054】
酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸としては、コスト面等から、トリメリット酸無水物が特に好ましい。
【0055】
また、上記酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸についても特に限定されないが、例えば、下記一般式(7)で表されるテトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【化7】


[式(7)中、Yは、下記式(8):
【化8】


で示される複数の基から選ばれる一種を示す。]
【0056】
上記ジカルボン酸、酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸及びその誘導体、又は酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸は、併用して用いることもできる。
【0057】
ジカルボン酸、酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸及びその誘導体、又は、酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸を反応させる場合、イソシアネート化合物として、上記化合物(a−1)以外の化合物(以下、「化合物(a−2)」という)を使用することもできる。化合物(a−2)としては、化合物(a−1)以外のイソシアネート化合物であれば、特に限定されず、例えば、上記一般式(3)で表されるジイソシアネート類、3価以上のポリイソシアネート類が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
また、本実施形態においては、上記イソシアネート化合物と共にアミン化合物を併用することもできる。アミン化合物としては、上記イソシアネート化合物におけるイソシアネート基をアミノ基に転換した化合物が挙げられる。イソシアネート基のアミノ基への転換は、公知の方法により行うことができる。アミン化合物の数平均分子量の好ましい範囲は、上記の化合物(a−1)と同様である。
【0059】
化合物(a−2)としては、その総量の50〜100質量%が芳香族ポリイソシアネートであることが好ましく、溶解性、機械特性、コスト面等のバランスを考慮すれば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが特に好ましい。
【0060】
化合物(a−1)と化合物(a−2)とを併用する場合、化合物(a−1)/化合物(a−2)の当量比は、0.1/0.9〜0.9/0.1とすることが好ましく、0.2/0.8〜0.8/0.2とすることがより好ましく、0.3/0.7〜0.7/0.3とすることが特に好ましい。当量比がこの範囲にあると、良好な被着体との密着性を得ることができる。
【0061】
また、ジカルボン酸、酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸又はその誘導体、及び/又は、酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸の配合割合は、イソシアネート化合物中のイソシアネート基の総数に対する、カルボキシル基と酸無水物基の総数の比(カルボキシル基と酸無水物基の総数/イソシアネート基の総数)が、0.6〜1.4となるようにすることが好ましく、0.7〜1.3となるようにすることがより好ましく、0.8〜1.2となるようにすることが特に好ましい。この比が0.6未満又は1.4を超えると、アミド結合、及び/又はイミド結合を含むウレタン樹脂の数平均分子量を高くすることが困難となる傾向がある。
【0062】
このようにして得られたアミド結合及び/又はイミド結合を導入したウレタン樹脂を(A)成分として用いることができる。アミド結合及び/又はイミド結合を導入したウレタン樹脂の数平均分子量は、7,000〜65,000であることが好ましく、10,000〜60,000であることがより好ましく、15,000〜50,000であることが特に好ましい。数平均分子量が7,000未満であると、活性光線照射後の保護層を剥離した際に、被着体表面上の付着物又は残渣が生じやすく、また、耐薬品性が低下する傾向があり、数平均分子量が65,000を超えると、非含窒素系極性溶媒に溶解し難くなり、合成中に不溶化しやすい傾向があり、また、活性光線照射前の接着性が低下する傾向がある。
【0063】
本発明の硬化性樹脂組成物で用いる(A)成分のウレタン樹脂として、構造の異なる2種以上のウレタン樹脂を併用して用いることもできる。また、同一構造であって、数平均分子量が異なる2種以上のウレタン樹脂を混合して用いてもよい。このとき、混合する2種以上のウレタン樹脂は全て、GPC法で測定した数平均分子量が上記の範囲内であることが好ましい。ウレタン樹脂を2種以上混合する際の混合比は特に制限されない。また、樹脂溶液の濃度も制限なく選択できる。
【0064】
<(B)成分:分子内に1つ以上のエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物>
(B)分子内に1つ以上のエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物としては、例えば、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物;多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー又はウレタンオリゴマーが挙げられる。これら以外にも、ノニルフェノキシポリオキシエチレンアクリレート;γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β’−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、EO変性ノニルフェニル(メタ)アクリレートが例示可能である。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンが挙げられる。
【0066】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパンが挙げられる。このうち、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(新中村化学工業製、商品名)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(新中村化学工業製、商品名)として商業的に入手可能である。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカプロポキシ)フェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカプロポキシ)フェニル)プロパンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜20であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートプロピレン基の数が2〜20であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜20でありプロピレン基の数が2〜20であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO・PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
なお、「EO」とは「エチレンオキシド」のことをいい、「PO」とは「プロピレンオキシド」のことをいう。また、「EO変性」とはエチレンオキシドユニット(−CHCHO−)のブロック構造を有することを意味し、「PO変性」とはプロピレンオキシドユニット(−CHCH(CH)O−)のブロック構造を有することを意味する。
【0071】
グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)フェニル;ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂とα,β−不飽和カルボン酸とを反応させて得られるエポキシアクリレート化合物が挙げられる。上記のα,β−不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
ウレタンモノマー又はウレタンオリゴマーとしては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーと、イソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物;トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート;EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート;EO又はPO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート;カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート;β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーと、ジイソシアネート化合物と、ポリエーテルジオール類、ポリエステルジオール類、ポリカプロラクトンジオール類、シリコーンジオール類等のジオール化合物との付加反応物;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物と、ヘキサメチレンジイソシアネート等のポリメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のアリーレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のシクロアルキレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物が挙げられる。活性光線照射前の接着性(ピール強度)をより向上できる観点からは、エチレン性不飽和基と、ポリカーボネート骨格、ポリエーテル骨格、ポリエステル骨格、ポリカプロラクトンジオール骨格及びシリコーン骨格の少なくとも1つの骨格とを有する化合物が好ましい。このような化合物としては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーとジイソシアネート化合物とポリカーボネートジオール類、ポリエーテルジオール類、ポリエステルジオール類、ポリカプロラクトンジオール類、シリコーンジオール類との付加反応により得ることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
(B)成分としては、活性光線照射後の保護層の剥離性をより向上できる観点から、分子内に3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を含有することが好ましく、分子内に5つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を含有することがより好ましく、分子内に6つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を含有することが特に好ましい。また、保存安定性の観点からは、分子内のエチレン性不飽和基は、20以下であることが好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
分子内に3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO・PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物と、ヘキサメチレンジイソシアネート等のポリメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のアリーレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のシクロアルキレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるエポキシアクリレート化合物などが挙げられる。
【0075】
さらに、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステルが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
また、活性光線照射前の保護層の接着性をより向上できること、及び保護層の常温における表面タック性(被着体への接着面とは反対面の表面のベタつき)を低減でき、かつ、耐薬品性及び耐水性もより向上できる観点からは、(B)成分として、ポリカーボネート骨格を有する化合物が好ましい。ポリカーボネート骨格を有する化合物が上記効果を奏する理由は、常温において高い結晶性を有し、高温においては結晶性が崩れ非晶質となるため、常温においては表面タック性が低く、高温にして圧着させた時(熱圧着)に被着体と高い接着性を示すものと本発明者らは考えている。また、ポリカーボネート骨格を有する化合物は、(A)成分であるウレタン樹脂との相溶性に優れることも被着体と高い接着性を可能にしている要因と考えている。(B)成分としてのポリカーボネート骨格を有する化合物としては、例えば、下記一般式(10)で表される化合物が挙げられる。
【化9】


[式(10)中、Rは、炭素数1〜18のアルキレン基を示し、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Xは、2価の有機基を示し、Zは、2〜6価の有機基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1〜30の整数を示し、p及びqはそれぞれ独立に1〜5の整数を示す。なお、複数存在するR、R、X及びYはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、nが2以上の場合、複数存在するmはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0077】
上記一般式(10)で表される化合物は、下記一般式(9)で表されるジイソシアネート化合物と、2−ヒドロキエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基及びヒドロキシル基を有する化合物とを反応させることで得ることができる。
【0078】
【化10】


[式(9)中、Rは炭素数1〜18のアルキレン基を示し、Xは2価の有機基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1〜30の整数を示す。なお、複数存在するR及びXはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、nが2以上の場合、複数存在するmはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0079】
これら(B)成分の中でも特に、活性光線照射前の接着性及び活性光線照射後の剥離性を共に向上できる観点からは、分子内に3つ以上のエチレン性不飽和基及びポリカーボネート骨格を有する化合物を用いることが好ましい。また、分子内に3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物と、分子内に1つ以上2つ以下のエチレン性不飽和基及びポリカーボネート骨格を有する化合物を併用することも好ましい。分子内に1つ以上2つ以下のエチレン性不飽和基及びポリカーボネート骨格を有する化合物としては、上記一般式(10)で表される化合物において、p及びqが1である下記一般式(11)で表される化合物が挙げられる。
【化11】


[式(11)中、Rは、炭素数1〜18のアルキレン基を示し、Rは、水素原子又はメチル基を示し、X及びZは、それぞれ独立に2価の有機基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1〜30の整数を示す。なお、複数存在するR、R、X及びYはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、nが2以上の場合、複数存在するmはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0080】
分子内に3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物と、分子内に1つ以上2つ以下のエチレン性不飽和基及びポリカーボネート骨格を有する化合物とを併用する場合、分子内に3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物の含有量は、(A)成分100質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましく、10〜25質量部であることが特に好ましい。
【0081】
また、分子内に1つ以上2つ以下のエチレン性不飽和基及びポリカーボネート骨格を有する化合物の含有量は、(A)成分100質量部に対して、5〜100質量部であることが好ましく、10〜70質量部であることがより好ましく、30〜55質量部であることが特に好ましい。
【0082】
(B)成分である光重合性化合物は、数平均分子量が500〜6,000であることが好ましく、1,000〜5,000であることがより好ましく、1,500〜5,000であることが特に好ましい。数平均分子量が500未満であると、光硬化した膜を剥離した後、ウェハー上に付着物が残る傾向があり、6,000を超えると活性光線照射前の接着性が低下し、また光硬化が十分に進行せず、剥離性も低下する傾向がある。
【0083】
本発明の硬化性樹脂組成物における(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、10〜200質量部であることが好ましく、20〜100質量部であることがより好ましく、40〜80質量部であることが特に好ましい。この含有量が5質量部未満であると、光硬化性が不十分となり、剥離性が低下する傾向があり、200質量部を超えると、活性光線照射前の接着性が低下する又は成膜性が劣り硬化膜の剥離が困難になる傾向がある。
【0084】
<(C)成分:光重合開始剤>
光重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−モルホリノフェノン)−ブタノン−1、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、アルキルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
本発明の硬化性樹脂組成物における(C)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分の総量100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることが特に好ましい。この含有量が0.1質量部未満であると、光硬化が不十分で保護層が剥離し難い傾向があり、30質量部を超えると、被着体表面を汚染しやすい傾向がある。
【0086】
<その他の成分>
本発明の硬化性樹脂組成物は、(D)成分としてエポキシ樹脂を含むことができる。エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビフェニル型、脂肪族アルキル型、ノボラック型等のエポキシ樹脂を用いることできる。上記エポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製の商品名エピコート828等)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成(株)製の商品名YDF−170等)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)性の商品名エピコート152、154;日本化薬(株)製の商品名EPPN−201;ダウケミカル社製の商品名DEN−438等)、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製の商品名EOCN−125S、103S、104S等)、多官能エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製の商品名Epon1031S;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の商品名アラルダイト0163;ナガセ化成(株)製の商品名デナコールEX−611、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−421、EX−411、EX−321等)、アミン型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製の商品名エピコート604;東都化成(株)製の商品名YH434;三菱ガス化学(株)製の商品名TETRAD−X、TERRAD−C;日本化薬(株)製の商品名GAN;住友化学(株)製の商品名ELM−120等)、複素環含有エポキシ樹脂(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の商品名アラルダイトPT810等)、脂環式エポキシ樹脂(UCC社製のERL4234、4299、4221、4206等)、ポリブタジエンを部分的にエポキシ化したエポキシ化ポリブダジエン((ダイセル化学社製の商品PB−3600、日本曹達社製の商品名BF−1000等)、ビフェニル骨格を有するノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族アルキル型エポキシ樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、有機溶媒に可溶であるものが、硬化性樹脂組成物の透明性の保持の点から好ましく、ポリブタジエンを部分的にエポキシ化したエポキシ化ポリブタジエンがより好ましい。
【0087】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、(E)成分としてエポキシ樹脂硬化剤を含むことができる。エポキシ樹脂硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミドや、これらの硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したもの挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、硬化性樹脂組成物を塗布した際の乾燥工程の加温によるエポキシ樹脂熱重合の抑制、また熱圧着工程のエポキシ樹脂熱硬化時の光重合性化合物の熱重合を抑制するため、反応開始温度としては80℃〜150℃であるものが好ましく、110〜130℃であるものがより好ましい。このようなエポキシ樹脂硬化剤としては、マイクロカプセル型、加熱溶解型等の潜在性硬化剤が挙げられ、マイクロカプセル型の代表的な製品として、ノバキュアシリーズ(旭化成ケミカルズ社製)が、過熱溶解型の代表的な製品として、アミキュアシリーズ(味の素ファインテクノ社製)が挙げられる。
【0088】
マイクロカプセル型硬化剤は、加熱して所定の温度になると該硬化剤を覆っている周囲の樹脂が溶解し、硬化剤が樹脂中に拡散され、エポキシ樹脂との反応を開始する。また、加熱溶解型硬化剤は、室温では固体であるが、加熱により所定の温度になると溶解し、エポキシ樹脂と反応を開始する。
【0089】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて(F)フィラーを含有させることができる。フィラーとしては、特に制限はなく、例えば、銀粉、金粉、銅粉、ニッケル粉等の金属フィラー;アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機フィラー;、カーボン、ゴム系フィラー等の有機フィラーが挙げられる。フィラーの形状は、特に制限されるものではない。
【0090】
上記フィラーは、所望する機能に応じて使い分けることができる。例えば、金属フィラーは、硬化性樹脂組成物に導電性、熱伝導性、チキソ性等を付与する目的で添加され;非金属無機フィラーは、硬化性樹脂組成物に熱伝導性、低熱膨張性、低吸湿性等を付与する目的で添加され;有機フィラーは硬化性樹脂組成物に靭性等を付与する目的で添加される。これらのフィラーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0091】
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、p−トルエンスルホン酸アミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、カップリング剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、熱架橋剤等を含有させることができる。
【0092】
次に、本発明の硬化性樹脂組成物を用いた接着方法及び剥離方法について、以下に説明する。
【0093】
(接着方法)
上記硬化性樹脂組成物の溶液は、被着体上に所望の厚さに塗布又は滴下することで、保護層として使用することができる。また、硬化性樹脂組成物をフィルム状に成形して被着体に貼り付けることにより、フィルム状の保護層として使用することもできる。これらの塗布、滴下、貼り付けの方法や条件は特に限定されない。被着体としては、例えば、回路形成されたウェハー、ガラス基板、セラミック基板、アルミニウム基板、有機材料基板が挙げられるが、本発明の硬化性樹脂組成物は、ウェハーに対して特に好ましい。
【0094】
また、支持フィルムと、支持フィルム上に形成された本発明の硬化性樹脂組成物からなる硬化性樹脂組成物層とを備える硬化性樹脂フィルムを作製し、このフィルムの硬化性樹脂組成物層を被着体に貼り付けてもよい。支持フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の重合体フィルムが挙げられる。
【0095】
硬化性樹脂組成物の溶液を直接用いる場合には、塗布、滴下後、60〜120℃で溶媒を乾燥させて使用することが好ましく、80〜100℃での乾燥させることがより好ましい。120℃を超えると、熱硬化してしまい接着性が低下し、60℃以下の場合は溶媒が乾燥しきらずに、接着性が低下してしまう可能性がある。
【0096】
フィルム状の保護層を作製する場合にも、同様の理由から、上記の温度条件下で処理することが好ましい。
【0097】
熱圧着は80〜150℃で行うことが好ましく、100〜130℃がより好ましい。150℃を超えると光硬化性成分の熱重合が開始し、接着性が低下する恐れがあり、また80℃未満では、硬化性樹脂組成物の濡れ性が悪く、接着性が低下する可能性がある。
【0098】
熱圧着時の圧力及び時間は、硬化性樹脂組成物を構成する成分の種類を変更することで任意に調整が可能である。圧着温度は、(B)成分の熱硬化を抑制可能な温度とする必要がある。
【0099】
(剥離方法)
次に、上記熱圧着後の保護層に紫外線等の活性光線照射を行い、光硬化により保護層の接着性を低下させることで基板から光硬化後の保護層を剥離する。
【0100】
ここで、活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線を有効に放射するものが用いられる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものも用いることができる。
【0101】
また、本発明の硬化性樹脂組成物によれば、被着体上に優れた接着性を有する保護層を形成できる。そして、この保護層は、活性光線の照射により容易に除去できる。このような保護膜を形成できる本発明の硬化性樹脂組成物は、ウェハー等の基板上の被めっき面にめっき被膜を形成する際に、めっきを施さない部分を保護するのに好適である。
【0102】
(めっき方法)
本発明のめっき方法は、被着体の片面に上記本発明の硬化性樹脂組成物からなる保護層を形成する保護層形成工程と、被着体の保護層形成面とは反対側の面に、めっき被膜を形成するめっき工程と、めっき工程後、保護層に活性光線を照射して光硬化させ、被着体から光硬化後の保護層を剥離する剥離工程とを有する方法である。
【0103】
ここで、図1(a)〜(d)は本発明のめっき方法の一例を示す一連の工程図である。図1(a)に示すように、まずウェハー1の裏面側に上記本発明の硬化性樹脂組成物からなる保護層2を形成する(保護層形成工程)。
【0104】
保護層形成工程において、保護層2は、上記本発明の硬化性樹脂組成物を、ウェハー1上に所望の厚さに塗布、滴下または貼り付けることにより形成可能である。これらの塗布、滴下、貼り付けの方法や条件は特に限定されない。
【0105】
塗布又は滴下により保護層2を形成する場合、例えば、上述した硬化性樹脂組成物に溶媒を加えて液状とし、それをウェハー1の裏面上に塗布又は滴下し、乾燥して溶媒を除去することで保護層2を形成することができる。
【0106】
上記溶媒としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン等の含硫黄系溶媒;γ−ブチロラクトン、酢酸セロソルブ等のエステル系溶媒;シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0107】
また、貼り付けにより保護層2を形成する場合には、上記硬化性樹脂フィルムの樹脂組成物層のように、予め上記本発明の硬化性樹脂組成物をフィルム状に形成したフィルム状接着剤を、フィルムマウンター等を用いてウェハー1に貼り付けることができる。
【0108】
保護層2の厚さは、密着性や反り防止の観点から、5〜200μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましく、15〜80μmであることが特に好ましい。
【0109】
また、本発明のめっき方法が適用可能なウェハーとしては特には限定されないが、例えば、シリコンウェハー、GaAsウェハーなどの半導体基板が挙げられる。また、ウェハーの厚さについても特には限定されないが、例えば、100μm〜1000μmのものが用いられる。さらに、ウェハーの表面にはバンプが形成されていてもよいし、形成されていなくてもよい。バンプが形成されている場合、その高さについては特に限定されないが、例えば、10〜200μmである。
【0110】
上記保護層形成工程によりウェハー1の裏面上に保護層2を形成した後、図1(b)に示すように、ウェハー1の裏面とは反対側の面にめっき被膜3を形成する(めっき工程)。めっき処理は、公知の方法により行うことができる。なお、両面に導体パターンを有するウェハーの場合、めっきを必要としない面の導体パターンを上記保護層で覆うことで、めっきを必要とする面の導体パターンのみにめっき被膜を形成することができる。以下、めっき処理の方法について具体的に説明する。
【0111】
まず、めっき処理の前処理として脱脂を行う。脱脂とは、導体パターン表面の油脂汚れ等を除去する工程である。脱脂は、溶剤、アルカリ性水溶液又は酸性水溶液を用いることができるが、アルカリ性水溶液がより好ましい。脱脂後、水洗して、導体パターンの表面を均一化するために、通常は、硫酸過酸化水素水溶液等のエッチング液で該表面をマイルドエッチングする。更に水洗後、希硫酸水溶液等を用いて該導体パターンの表面を洗浄してもよい。次に水洗後、例えば、置換タイプの亜鉛触媒液(ジンケート)等で導体パターン上にのみ触媒を形成させる。そして水洗後、ウェハーを無電解ニッケルめっき液に浸漬し、該導体パターン領域に無電解ニッケルめっき皮膜を形成させる。
【0112】
次いで、置換金めっき工程を行う。置換金めっき工程は、上述の無電解ニッケルめっきを施されたウェハーを水洗した後、置換金めっき液に浸漬することにより行われる。置換金めっき液は、めっき皮膜として形成されたニッケルと該金めっき液中の金イオンとの置換反応(Ni→Ni2++2e,2Au+2e→2Au)により、ニッケルめっき皮膜上に金めっき皮膜を形成するために従来用いられていたものであれば特に限定されない。このような置換金めっき液としては、例えば、シアン化金ナトリウム若しくはシアン化金カリウム等のシアン化金塩(シアン系金イオン源)、亜硫酸金塩、チオ硫酸金塩若しくは塩化金酸塩等の非シアン系金塩(非シアン系金イオン源)、並びに、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、チオリンゴ酸塩若しくはカルボン酸塩等の錯化剤が挙げられる。更に置換金めっき液に通常用いるその他の各種添加剤を適量含むこともできる。
【0113】
上述のようにしてめっき被膜3を形成した保護層2付きウェハー1に対し、図1(c)に示すように保護層2に紫外線(UV)等の活性光線の照射を行い、光硬化により保護層22の接着性を低下させる。その後、図1(d)に示すようにウェハー1から光硬化後の保護層22を剥離する(剥離工程)。
【0114】
ここで、活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線を有効に放射するものが用いられる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものも用いることができる。
【0115】
ウェハー1から光硬化後の保護層22を剥離する方法としては特に制限されないが、好ましくは、保護層22に粘着テープを貼り付け、ウェハー1から保護層22を粘着テープとともに剥離する方法を用いる。これにより、保護層22を効率的に且つ確実に剥離することができる。また、粘着テープが活性光線を透過するものであれば、粘着テープを保護層2に貼り付けてから活性光線の照射を行ってもよい。さらに、本実施形態においては、支持フィルム/樹脂組成物層/粘着テープをこの順に備える本発明に係る硬化性樹脂フィルムを用いることができる。
【0116】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、ウェハーのダイシング方法において、ウェハーの回路形成面側に本発明の硬化性樹脂組成物からなる保護層を形成する保護層形成工程と、ウェハーの回路形成面とは反対側の面にダイシングシートを貼り付けるダイシングシート貼り付け工程と、ウェハーの前記回路形成面側から保護層ごとウェハーをダイシングするダイシング工程と、切断された上記保護層に活性光線を照射して光硬化させ、ウェハーから光硬化後の上記保護層を剥離する剥離工程とを有するダイシング方法に用いることもできる。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、配線板用のソルダーレジストとして適用することもできる。
【0117】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに制限されるものではない。
【実施例】
【0118】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0119】
(合成例)
<(A−1)成分の作製>
攪拌機、油分分離機付冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた3Lの四つ口フラスコに、ポリブタジエンジオール(日本曹達社製、商品名「G−1000」、数平均分子量:1,250〜1,650)260g、1,5−ナフタレンジイソシアネート40g、シクロヘキサノン300gを仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃〜90℃に加熱して、9時間反応させた。次いで、アクリル酸2−ヒドロキシエチル3.8gを加え、赤外分光分析でイソシアネートの吸収が消失するまで反応を行い、数平均分子量18,000のウレタン樹脂を得た。得られた樹脂をシクロヘキサノンで希釈し、不揮発分50質量%のウレタン樹脂溶液を得た。
【0120】
<(A−2)成分の作製>
攪拌機、油分分離機付冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた3Lの四つ口フラスコに、ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「PCDL T−5651」、数平均分子量(Mn):約1,000、上記一般式(2)中、Rが炭素数5又は6のアルキレン基である化合物に相当。)108.3g、ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「PCDL T−5652」、数平均分子量:約2,000)129.0g、1,5−ナフタレンジイソシアネート40g、シクロヘキサノン300gを仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃〜90℃に加熱して、9時間反応させた。次いで、アクリル酸2−ヒドロキシエチル3.8gを加え、赤外分光分析でイソシアネートの吸収が消失するまで反応を行い、数平均分子量17,000のウレタン樹脂を得た。得られた樹脂をシクロヘキサノンで希釈し、不揮発分50質量%のウレタン樹脂溶液を得た。
【0121】
<(A−3)成分の作製>
攪拌機、油分分離機付冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた3Lの四つ口フラスコに、ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「PCDL T−5651」)108.26g、ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「PCDL T−5652」)129.01g、ポリブタジエンジオール(日本曹達社製、商品名「G−1000」)70.49g、1,5−ナフタレンジイソシアネート50.8g、シクロヘキサノン300gを仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃〜90℃に加熱して、9時間反応させた。次いで、アクリル酸2−ヒドロキシエチル5.1gを加え、赤外分光分析でイソシアネートの吸収が消失するまで反応を行い、数平均分子量20,000のウレタン樹脂を得た。得られた樹脂をシクロヘキサノンで希釈し、不揮発分50質量%のウレタン樹脂溶液を得た。
【0122】
<代替(A)成分:(A−4)成分の作製>
攪拌機、温度計、窒素導入管及びディーンスタークトラップを備えた300mLの4つ口セパラブルフラスコに、デカメチレンビストリメリテート二無水物(黒金化成社製、商品名「DBTA−KU」)7.3g(0.014mol)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)18.05g(0.056mol)、[3,4−ビス(1−アミノヘプチル)−6−ヘキシル−5−(1−オクテニル)]シクロヘキセン(コグニスジャパン社製、商品名「バーサミン551」)38.86g(0.07mol)及びシクロヘキサノン164gを加えて40℃で15分攪拌した。次いで、150℃まで昇温し、3時間加熱還流を行った後、脱溶した。脱溶後、40℃で攪拌しながら固形分を30%に調整し、数平均分子量20,000のポリイミド樹脂のシクロヘキサノン溶液を得た。
【0123】
<(B−1)成分の作製>
ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「PCDL T−6001」、数平均分子量:約1,000、上記一般式(2)中、Rが炭素数6のアルキレン基である化合物に相当。)を100g、m−キシリレンジイソシアネート38.6g、シクロヘキサノン70.0gを反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら90℃〜100℃に加熱して、1時間反応させた。次いで、アクリル酸2−ヒドロキシエチル23.8gを加え、赤外分光分析でイソシアネートの吸収が消失するまで反応を行い、数平均分子量2,000のポリウレタンアクリレート溶液を得た。
【0124】
<(B−2)成分の作製>
ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「PCDL T−6001」)を100g、1,5−ナフタレンジイソシアネート43.2g、シクロヘキサノン72.0gを反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら90℃〜100℃に加熱して、1時間反応させた。次いで、アクリル酸2−ヒドロキシエチル24.3gを加え、赤外分光分析でイソシアネートの吸収が消失するまで反応を行い、数平均分子量2,000のポリウレタンアクリレート溶液を得た。
【0125】
<(B−3)成分の準備>
1分子当たりのエチレン性不飽和基の平均数が10であるウレタンアクリレート「UN−904」(根上工業社製、商品名、重量平均分子量4,900、数平均分子量2,000)を準備した。
【0126】
<(B−4)成分の準備>
1分子当たりのエチレン性不飽和基の平均数が6であるアクリレート「ライトアクリレートDPE−6A」(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、共栄社化学社製、商品名)を準備した。
【0127】
なお、合成したウレタン樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した。GPCの測定条件を以下に示す。
(GPC条件)
ポンプ:日立 L−6000型[(株)日立製作所製]
検出器:日立 L−3300 RI[(株)日立製作所製]
カラム:Gelpack GL−R420+Gelpack GL−R430+Gelpack GL−R430(計3本)(日立化成工業(株)製、商品名)
溶離液:THF
試料濃度:250mg/5mL
注入量:50μL
圧力:441Pa(45kgf/cm
流量:1.75mL/分
【0128】
<硬化性樹脂組成物の作製>
(実施例1)
上記(A−1)ウレタン樹脂溶液12.6g(固形分:6.3g)及び上記(B−1)ポリウレタンアクリレート溶液3.9g(固形分:2.7g)に、(B−3)「UN−904」1.0g、(C)成分として2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「I−907」)及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフェリノフェニル)−ブタノン−1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「I−369」)をそれぞれ0.1gずつ加え、全体の固形分が50質量%になるように酢酸エチルを加えて40℃で1時間撹拌し、硬化性樹脂組成物溶液を得た。
【0129】
(実施例2)
(A)成分である(A−1)に代えて、(A−2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、硬化性樹脂組成物溶液を得た。
【0130】
(実施例3)
(A)成分である(A−1)に代えて、(A−3)を使用し、(B)成分である(B−1)に代えて、(B−2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、硬化性樹脂組成物溶液を得た。
【0131】
(実施例4)
(A)成分である(A−1)に代えて、(A−3)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、硬化性樹脂組成物溶液を得た。
【0132】
(実施例5)
(B)成分である(B−3)に代えて、(B−4)を使用した以外は、実施例4と同様の操作を行い、硬化性樹脂組成物溶液を得た。
【0133】
(実施例6)
(B)成分である(B−3)を使用せずに、(B−1)5.35g(固形分:3.7g)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、硬化性樹脂組成物溶液を得た。
【0134】
(実施例7)
(B)成分である(B−1)を使用せずに、(B−3)3.7gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、硬化性樹脂組成物溶液を得た。
【0135】
(比較例1)
(A)成分を使用せずに、(B−1)9.0gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、硬化性樹脂組成物溶液を得た。
【0136】
(比較例2)
(B)成分を使用せずに、(A−1)10gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、硬化性樹脂組成物溶液を得た。
【0137】
(比較例3)
(A)成分である(A−1)に代えて、代替(A)成分である(A−4)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、硬化性樹脂組成物溶液を得た。
【0138】
(比較例4)
高耐熱絶縁接着フィルム(シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂、日立化成工業社製、商品名「KS−7003」)を、フィルム状接着剤として準備した。
【0139】
実施例1〜7及び比較例1〜3で得られた硬化性樹脂組成物溶液の各成分の配合比を、まとめて表1に示す。
【0140】
【表1】


注)表1中の値は、各成分の固形分の含有量(g)を示す。また、表1中の記号「−」は、該当する成分を含有していないことを示す。
【0141】
(評価用試験片の作製)
実施例1〜7及び比較例1〜3の硬化性樹脂組成物を、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに厚み約30μmになるように塗布し、100℃/15分間乾燥し、10cm長さ×2cm幅に裁断し、硬化性樹脂組成物付きPETフィルム試験片を得た。
【0142】
得られた硬化性樹脂組成物付きPETフィルム試験片の硬化性樹脂組成物側を、80℃に熱したホットプレート上で、シリコン(Si)ミラーウェハー(厚み525μm)上にウレタン性ゴムローラーで接着させ、120℃/10分間追加熱(熱圧着工程)したものをそれぞれ評価用試験片とした。
【0143】
比較例4では、PEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムを10cm長さ×2cm幅に裁断し、150℃に熱したホットプレート上で、シリコンミラーウェハー(厚み525μm)とPENフィルムとの間に上記比較例4の高耐熱絶縁接着フィルムを挟んだ状態で、ウレタン性ゴムローラーで接着し、180℃/30分追加熱(熱圧着工程)したものを評価用試験片とした。
【0144】
(接着性及び剥離性評価)
接着性は、オートグラフ(島津製作所製、商品名「AGS−H 100N」)を用いて、上記試験片の常温での180°ピール強度を紫外線(UV)照射前に測定することで評価した。耐薬品性及び耐水性の観点からは、UV照射前のピール強度は5N/20mm以上であることが好ましく、6.5N/20mm以上であることがより好ましく、7.5N/20mm以上であることが特に好ましい。また、剥離性は、作製した試験片に、PETフィルム又はPENフィルム上から1000mJ/cm(波長365nm)の照射量でUVを照射した後のピール強度を測定することで評価した。シリコンミラーウェハーへの負荷低減の観点からは、UV照射後のピール強度は2.5N/20mm以下であることが好ましく、0.5N/20mm以下であることがより好ましく、0.3N/20mm以下であることが特に好ましい。
【0145】
さらに、剥離性評価後シリコンミラーウェハー表面上の付着物又は残渣の有無(剥離後のSi表面付着物)について目視で観察した。シリコンミラーウェハー表面上に、硬化性樹脂組成物由来の付着物又は残渣が無いものをA、硬化性樹脂組成物由来の付着物又は残渣が有るものをBとした。
【0146】
(耐薬品性)
上記試験片の1つを、90℃の塩酸水溶液(濃度1.0mol/L)と、別の試験片を75℃の水酸化ナトリウム水溶液(濃度1.0mol/L)に、それぞれ1時間浸漬した。この時、樹脂組成物層の溶解又は外観異常がなかったものをA、溶解又は外観異常があったものをBとした。
【0147】
【表2】


注)表2中の記載「>25」は、Si基材が破壊したため、数値は最大値を示した。また、比較例1の硬化性樹脂組成物は、フィルム形成性に劣るため、ピール強度を測定することはできなかった。また、表2中の記号「−」は、UV照射前のピール強度を測定することができなかったので、評価を行わなかったことを示す。
【0148】
実施例1〜7の硬化性樹脂組成物を用いた場合、UV照射前は十分に高いピール強度を有するものの、UV照射後はピール強度が低下し剥離性に優れることが確認された。中でも、実施例3、4及び5で作製した硬化性樹脂組成物は、UV照射前のピール強度が大きく、UV照射後ピール強度がより小さいことから、本発明の硬化性樹脂組成物をウェハーの保護膜用途に用いる場合、特に好適である。
【符号の説明】
【0149】
1…ウェハー、2…保護層、3…めっき被膜、22…活性光線照射後の保護層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ウレタン樹脂と、
(B)分子内に1つ以上のエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、
(C)光重合開始剤と、
を含む硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ウレタン樹脂が、ポリブタジエン骨格及び/又はポリイソプレン骨格を有する、請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ウレタン樹脂が、ポリカーボネート骨格を更に有する、請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記光重合性化合物が、分子内に3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記光重合性化合物が、ポリカーボネート骨格を有するウレタン化合物を含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
支持フィルムと、該支持フィルム上に形成された請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物からなる樹脂組成物層と、を備える硬化性樹脂フィルム。
【請求項7】
被着体の片面に請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物からなる保護層を形成する保護層形成工程と、
前記被着体の前記保護層形成面とは反対側の面に、めっき被膜を形成するめっき工程と、
前記めっき工程後、前記保護層に活性光線を照射して光硬化させ、前記被着体から光硬化後の前記保護層を剥離する剥離工程と、
を有するめっき方法。


【図1】
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【公開番号】特開2010−163594(P2010−163594A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159597(P2009−159597)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】