説明

硬化性樹脂組成物およびそれを用いた目地シーリング材組成物

【課題】目地シーリング材等に好適に用いられる硬化性樹脂組成物であって、水性アクリル系材料を用いた耐水性に優れる硬化性樹脂組成物の提供。
【解決手段】アクリル系ポリマーディスパージョンと、前記アクリル系ポリマーディスパージョンの固形分100質量部に対して1〜50質量部の下記式(1)で表されるセバシン酸ポリエステルとを含有する硬化性樹脂組成物。
HO−R−(OCO−(CH28−COOR)n−OH (1)
(式中、nは3〜40の整数を表す。複数個のRは、それぞれ独立に、炭素原子数6〜12の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物およびそれを用いた目地シーリング材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石材や窯業材の間に充填され目地部を封止するシーリング材として、水性アクリル系材料の利用が検討されている。水性アクリル系シーリング材は、成分の表面へのブリードが少ないこと、有機溶剤の飛散が少ないこと、有機金属触媒を含有しないこと等の種々の利点を有する。
しかしながら、水性アクリル系シーリング材は、硬化後に吸湿して膨潤しやすいため、長期の水への浸せき等により目地部の膨れが生じたり、ひいてははく離が生じたりすることがあるという問題があった。そのため、そのような問題が生じないような部分に限定して施工されたり、そのような問題を防止するためシーリング材の上に更に塗装をして用いられたりしていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、目地シーリング材等に好適に用いられる硬化性樹脂組成物であって、水性アクリル系材料を用いた耐水性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、アクリル系ポリマーディスパージョンを用いた硬化性樹脂組成物に、特定のセバシン酸ポリエステルを含有させると、硬化後の耐水性が優れたものになることを見出し、本発明を完成させた。
【0005】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(13)を提供する。
(1)アクリル系ポリマーディスパージョンと、前記アクリル系ポリマーディスパージョンの固形分100質量部に対して1〜50質量部の下記式(1)で表されるセバシン酸ポリエステルとを含有する硬化性樹脂組成物。
HO−R−(OCO−(CH28−COOR)n−OH (1)
(式中、nは3〜40の整数を表す。複数個のRは、それぞれ独立に、炭素原子数6〜12の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す。)
(2)前記セバシン酸ポリエステルの数平均分子量が、1,000〜10,000である上記(1)に記載の硬化性樹脂組成物。
(3)前記アクリル系ポリマーディスパージョンが、アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸アルキルエステル共重合体およびスチレン−アクリロニトリル−メタクリル酸アルキルエステル−アクリル酸アルキルエステル共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含有する上記(1)または(2)に記載の硬化性樹脂組成物。
【0006】
(4)更に、粒径20μm以下のハイドロタルサイト様化合物を、前記アクリル系ポリマーディスパージョンの固形分100質量部に対して、1〜40質量部含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
(5)前記ハイドロタルサイト様化合物の粒径が8μm以下である上記(4)に記載の硬化性樹脂組成物。
(6)前記ハイドロタルサイト様化合物において、マグネシウムの含有量が、MgO/(MgO+Al23)換算で、30質量%以上である上記(4)または(5)に記載の硬化性樹脂組成物。
(7)前記ハイドロタルサイト様化合物において、マグネシウムの含有量が、MgO/(MgO+Al23)換算で、60質量%以上である上記(4)または(5)に記載の硬化性樹脂組成物。
【0007】
(8)更に、45μmふるい残分が5質量%以上の炭酸カルシウムを、前記アクリル系ポリマーディスパージョンの固形分100質量部に対して、50〜800質量部含有する上記(1)〜(7)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
(9)更に、無機系つや消し材を含有する上記(1)〜(8)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
(10)前記無機系つや消し材が、パーライト、ケイソウ土およびフライアッシュからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記(9)に記載の硬化性樹脂組成物。
(11)更に、変性ポリプロピレングリコールを含有する上記(1)〜(10)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
(12)前記変性ポリプロピレングリコールが、ポリプロピレングリコールアルキルフェニルエーテルである上記(11)に記載の硬化性樹脂組成物。
(13)上記(1)〜(12)に記載の硬化性樹脂組成物を用いた目地シーリング材組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の硬化性樹脂組成物は、水性アクリル系材料を用いているにもかかわらず、耐水性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物は、アクリル系ポリマーディスパージョンと、下記式(1)で表されるセバシン酸ポリエステルとを含有する。
【0010】
HO−R−(OCO−(CH28−COOR)n−OH (1)
【0011】
(式中、nは3〜40の整数を表す。複数個のRは、それぞれ独立に、炭素原子数6〜12の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す。)
【0012】
本発明に用いられるアクリル系ポリマーディスパージョンは、水性溶媒中にアクリル系ポリマーの微粒子が分散した分散液のことをいう。
アクリル系ポリマーは、アクリロイル基(メタクリロイル基を含む。以下同じ。)を有するアクリル酸エステル単量体(メタクリル酸エステル単量体を含む。以下同じ。)をモノマー成分とする単独重合体(ホモポリマー)または共重合体(コポリマー)である。例えば、1種のアクリル酸エステル単量体の単独重合体、2種以上のアクリル酸エステル単量体の共重合体、1種以上のアクリル酸エステル単量体と1種以上のアクリル酸エステル単量体以外の単量体との共重合体が挙げられる。
アクリル酸エステル単量体を用いると、柔軟性および粘着性が高くなり、脆化点が低くなるという傾向がある。また、メタクリル酸エステル単量体を用いると、ガラス状となり、硬くなるという傾向がある。
【0013】
具体的には、アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸アルキルエステル共重合体およびスチレン−アクリロニトリル−メタクリル酸アルキルエステル−アクリル酸アルキルエステル共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。
中でも、アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体およびアクリロニトリル−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種が、得られる本発明の硬化性樹脂組成物の硬化後の耐候性が優れたものとなる点で好ましい。
【0014】
アクリル系ポリマーディスパージョンにおける固形分(ポリマー分)の含有割合は、特に限定されないが、40質量%以上であるのが好ましい。上記範囲であると、本発明の硬化性樹脂組成物における水等の揮発成分の含有量を後述する好適範囲としやすい。
特に、取り扱い性の点で、45〜65質量%であるのがより好ましい。
【0015】
アクリル系ポリマーディスパージョンとしては、従来公知のものを用いることができる。例えば、市販品としてBASFジャパン社製のアクロナールA378ap(アクリロニトリル−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体)およびアクロナールYJ2741D(スチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体)を用いることができる。
【0016】
本発明に用いられるセバシン酸ポリエステルは、下記式(1)で表されるポリエステルである。
【0017】
HO−R−(OCO−(CH28−COOR)n−OH (1)
【0018】
式中、nは3〜40、好ましくは10〜36の整数を表す。
複数個のRは、それぞれ独立に、炭素原子数6〜12の直鎖状または分岐状のアルキレン基(即ち、炭素原子数6〜12の直鎖状または分岐状のアルカンの異なる炭素原子から2個の水素を除いて得られる2価の基)を表す。アルキレン基としては、例えば、直鎖状または分岐状の−C612−、直鎖状または分岐状の−C918−が挙げられる。
複数個のRがすべて直鎖状の−C612−または複数個のRがすべて直鎖状の−C918−であるのが好ましい。
【0019】
本発明においては、2種以上のセバシン酸ポリエステルを併用することができる。例えば、nの値のみ異なる複数のセバシン酸ポリエステルの混合物を用いることができる。この場合、数平均分子量が、1,000〜10,000であるのが好ましい。上記範囲であると、アクリル系ポリマーとの相溶性がより良好になり、かつ、硬化後のブリード性が低いという利点がある。
【0020】
セバシン酸ポリエステルとしては、、従来公知のものを用いることができる。例えば、市販品としてCP Hall社製のParaplex G−25(数平均分子量8,000)を用いることができる。
セバシン酸ポリエステルは、従来公知のポリエステルの製造方法を用いて製造することができる。
【0021】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるセバシン酸ポリエステルの含有量は、アクリル系ポリマーディスパージョンの固形分100質量部に対して1〜50質量部であり、5〜40質量部であるのが好ましい。上記範囲であると、後述する耐水性向上の効果が十分となり、また、硬化後にセバシン酸ポリエステルが表面にブリードすることがない。
【0022】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述したアクリル系ポリマーディスパージョンとともに、上述したセバシン酸ポリエステルを含有することにより、硬化後の耐水性に優れる。この理由は明らかではないが、セバシン酸ポリエステルが、アクリル系ポリマーの鎖の間に入り込むことにより凝集力が強くなり、それにより結晶性が向上し、その結果、水が浸透しにくくなるという機構が考えられる。また、別の機構として、セバシン酸ポリエステルが一種の造膜助剤として機能し、アクリル系ポリマーの粒子同士の界面を相溶化させることにより(即ち、アクリル系ポリマーの粒子同士が界面で密着することにより)、硬化後に、水がその界面に浸透しにくくなるということが考えられる。
また、セバシン酸ポリエステルを含有させても、本発明の硬化性樹脂組成物の粘度は高くなりすぎないという利点を有する。これにより、本発明の硬化性樹脂組成物に、炭酸カルシウム等の充填剤を多量に含有させることが可能となる。
【0023】
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、粒径20μm以下のハイドロタルサイト様化合物を含有するのが、チクソ性(揺変性)が良好になる点で好ましい。
ハイドロタルサイト様化合物は、下記組成式で表される層状複水酸化物である。
【0024】
[Mg2+1-xAl3+x(OH)2x+[(An-x/n・mH2O]x-
【0025】
(式中、An-は、n価のアニオンを表す。)
【0026】
ハイドロタルサイトは天然にも算出されるが、メタルアルコレート法により得られる合成ハイドロタルサイト様化合物がより好ましい。
ハイドロタルサイト様化合物は、粒径が8μm以下であるのが好ましい。上記範囲であると、目地シーリング材として好適な作業性を与えるチクソ性を発揮することができる。
ハイドロタルサイト様化合物は、マグネシウムの含有量が、MgO/(MgO+Al23)換算で、30質量%以上であるのが好ましく、60質量%以上であるのがより好ましい。上記範囲であると、本発明の硬化性樹脂組成物を長期間保存した場合であっても、粘度が高くなりにくい。
ハイドロタルサイト様化合物のMgO/(MgO+Al23)の値は、蛍光X線分析装置を用いて、MgおよびAlの含有量を測定し、それぞれMgOおよびAl23の量に換算した後、MgOの量をMgOおよびAl23の合計量で除して求められる。
【0027】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるハイドロタルサイト様化合物の含有量は、アクリル系ポリマーディスパージョンの固形分100質量部に対して、1〜40質量部であるのが好ましく、3〜20質量部であるのがより好ましい。上記範囲であると、チクソ性向上効果が十分になり、また、粘度が適度になる。
【0028】
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、45μmふるい残分が5質量%以上の炭酸カルシウムを含有するのが、得られる本発明の硬化性樹脂組成物が硬化後において、立体感や質感に優れ、モルタルに似た意匠性を有するようになり、また、硬化後の目地凹みが軽減される点で、好ましい。
本発明において、「45μmふるい残分」とは、呼び寸法45μmの標準ふるいを使用してJIS K5101に準じて測定した残分のことをいう。
炭酸カルシウムの種類は、特に限定されず、例えば、石灰石、貝殻、白亜等のCaCO3を主成分とする天然原料を機械的に粉砕分級した重質炭酸カルシウム;沈降炭酸カルシウム(コロイダル炭酸カルシウム);胡粉;チョークが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、重質炭酸カルシウムが、得られる本発明の硬化性樹脂組成物の硬化後の破断伸びが優れたものになる点で好ましい。
【0029】
炭酸カルシウムの45μmふるい残分は、20質量%以上であるのが好ましい。例えば、市販品として備北粉化工業社製の重質炭酸カルシウム(BF−400、45μmふるい残分30質量%)が好適に用いられる。
【0030】
本発明の硬化性樹脂組成物における炭酸カルシウムの含有量は、アクリル系ポリマーディスパージョンの固形分100質量部に対して、50〜800質量部であるのが好ましく、70〜700質量部であるのがより好ましく、80〜600質量部であるのが更に好ましい。
上記範囲であると、得られる本発明の硬化性樹脂組成物が、硬化後において、適度な破断伸び(100〜500%程度)を保持し、適度な弾性(アスカーC硬度30〜95程度)を有するようになりやすい。そのため、熱や基材の吸水による収縮または伸張や、外力による変形に追随し、ひびが入ったり、はく落が発生したりするのを防止することができる。
【0031】
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、無機系つや消し材を含有するのが、硬化後におけるてかり(つや)をなくし、モルタルと同様の自然で落ち着きのある風合いを呈することができる点で好ましい。
無機系つや消し材は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができるが、パーライト、ケイソウ土およびフライアッシュからなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。これらは、微粒子が光を乱反射するためにマット感が得られると考えられる。
【0032】
パーライトとしては、真珠岩焼成品、黒曜石焼成品、松脂岩焼成品等として従来公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、市販品として東興パーライト工業社製のトプコパーライト、三井金属パーライト社製の三井パーライト、宇部興産社製のグリーンサム、芙蓉パーライト社製のビーナスライトを用いることができる。中でも、東興パーライト工業社製のトプコパーライトが好適に用いられる。
【0033】
ケイソウ土は、植物プランクトンであるケイソウの外殻化石(ケイソウ殻)を多く含んだ土である。ケイソウ土は、精製度を上げるためにロータリーキルンを用いて焼成処理を施されたものであるのが好ましい。焼成処理を施されたケイソウ土としては、昭和化学工業社製のラヂオライト等のケイソウ殻焼成品として従来公知のものを用いることができる。
【0034】
フライアッシュは、燃焼ガス中に混入する石炭の灰である。具体的には、石炭火力発電所等のボイラーより発生する高温の燃焼ガス中に含まれる球形微細粒子を電気集塵器によって捕集した物である。フライアッシュとしては、例えば、北電興産社製、東北発電工業社製、東電環境エンジニアリング社製等の市販品を用いることができる。
【0035】
本発明の硬化性樹脂組成物における無機系つや消し材の含有量は、アクリル系ポリマーディスパージョンの固形分100質量部に対して、1〜200質量部であるのが好ましく、2〜150質量部であるのがより好ましく、10〜100質量部であるのが更に好ましい。
【0036】
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、変性ポリプロピレングリコールを含有するのが好ましい。変性ポリプロピレングリコールは、可塑剤として機能する。変性ポリプロピレングリコールは、アクリル系ポリマーとの相溶性が良好であるためにブリードしない可塑剤であるという点で好ましい。
変性ポリプロピレングリコールは、ポリプロピレングリコールの主鎖に、エーテル化、エステル化等の変性を行い、アルキル基等を導入した化合物である。
変性ポリプロピレングリコールとしては、例えば、ポリプロピレングリコールアルキルフェニルエーテル(例えば、BASFジャパン社製のプラスティリット3060)が挙げられる。
中でも、アクリル系ポリマーディスパージョンのアクリル系ポリマーとしてアクリロニトリル−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体(例えば、BASFジャパン社製のアクロナールA378ap)を用いた場合は、ポリプロピレングリコールアルキルフェニルエーテルを用いるのが、アクリル系ポリマーとの相溶性が高いため、固形分調整の自由度が高くなり、また、破断伸びも向上する点で好ましい。
【0037】
本発明の硬化性樹脂組成物における変性ポリプロピレングリコールの含有量は、アクリル系ポリマーディスパージョンの固形分100質量部に対して、5〜100質量部であるのが好ましく、10〜50質量部であるのがより好ましい。上記範囲であると、硬化性樹脂組成物の粘度が適度になり、また、硬化後の良好な伸びと適度な弾性が得られる。
【0038】
本発明の硬化性樹脂組成物は、所望により、上述した各成分以外に、分散剤、充填剤、可塑剤、消泡剤、着色剤、着色雲母、造膜助剤、防カビ剤、防腐剤、防藻剤、バルーン等の添加剤を含有することができる。
【0039】
分散剤としては、例えば、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ポリカルボン酸ナトリウム塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリリン酸アミノアルコール中和物、脂肪族アルコールサルフェートが挙げられる。
【0040】
充填剤としては、例えば、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;ケイ砂、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;カーボンブラック等の有機または無機充填剤;これらの脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル処理物、脂肪酸エステルウレタン化合物処理物が挙げられる。
【0041】
可塑剤としては、例えば、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル;アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジペンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル;ポリプロピレングリコール;アルキルスルホン酸フェニルエステル(例えば、Bayer社製のメザモール)が挙げられる。
【0042】
消泡剤としては、例えば、シリカシリコーン系消泡剤、金属石鹸、アマイド系消泡剤、変成シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤が挙げられる。
【0043】
着色剤としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料;アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料が挙げられる。
【0044】
着色雲母としては、例えば、山口雲母工業社製のカラーマイカが挙げられる。
【0045】
造膜助剤としては、例えば、テキサノール、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、ベンジルアルコール、イソプロピルアルコール、新日本石油社製のミネラルターペン、シェルケミカルズジャパン社製のシェルゾールS、花王社製のスマックMD−40およびMD−70が挙げられる。
【0046】
防カビ剤、防腐剤および防藻剤は、アクリル系ディスパージョンに溶解しもしくは分散するものであれば特に限定されない。防カビ剤としては、例えば、日本曹達社製のバイオカットシリーズ(例えば、BM30)、日本エンバイロケミカルズ社製のコートサイド、サンノプコ社製のSNサイド707が挙げられる。防腐剤としては、例えば、日本曹達社製のベストサイドシリーズ、日本エンバイロケミカルズ社製のスラオフシリーズ(例えば、スラオフ39)、サンノプコ社製のノプコサイドSN−215が挙げられる。防藻剤としては、例えば、日本曹達社製のバイオカットシリーズ(例えば、AF40)、日本エンバイロケミカルズ社製のモニサイドAK、ナガセケムテックス社製のDenistat CNXが挙げられる。
【0047】
バルーンとしては、例えば、シラスバルーン、ガラスバルーン等の無機バルーン、樹脂バルーン等の有機バルーンが挙げられる。
【0048】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述した各種成分を、水等の揮発成分の含有量が好ましくは5〜25質量%、より好ましくは8〜20質量%となるような割合で含有する。上記範囲であると、乾燥による容積の減少(減容)に伴う「やせ」が目立たず、かつ、減容によって表面の立体感が強調される。
【0049】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化後のアスカーC硬度が95以下であるのが好ましく、90以下であるのがより好ましい。上記範囲であると、地震等の外力が加わっても石材や窯業材を破損することがなく、また、目地自体の亀裂やはく落の発生を防止することができる。
【0050】
本発明の硬化性樹脂組成物は、その製造方法を特に限定されない。例えば、上述したセバシン酸ポリエステルおよび所望により用いられる各種成分を、上述したアクリル系ポリマーディスパージョンに添加し、ロール、ニーダー、押出し機、万能かくはん機等により混合する方法が挙げられる。
【0051】
本発明の硬化性樹脂組成物の用途は、特に限定されず、アクリル系ポリマーディスパージョンが用いられている用途に用いることができる。例えば、目地材、塗料、接着剤、塗り壁剤、瓦補修剤、セメント混和剤、サイディング用プライマー、屋根用コート材、ステッカー・ラベル用粘着剤、繊維・不織布用バインダーが挙げられる。
本発明の硬化性樹脂組成物がハイドロタルサイト様化合物を含有する場合は、チクソ性が高くなるので、これらの用途のうち、目地材、塗り壁剤、瓦補修剤、屋根用コート材に好適に用いられる。
本発明の硬化性樹脂組成物が45μmふるい残分が5質量%以上の炭酸カルシウムを含有する場合は、目地材に用いると、高充填化が可能となり、目地やせを抑制することができるので好適である。同様の理由で、塗り壁剤、瓦補修剤、屋根用コート材にも好適に用いられる。
【0052】
中でも、目地材に用いるのが好ましい。即ち、本発明の硬化性樹脂組成物を用いた目地シーリング材組成物は、本発明の好適な態様の一つである。
目地材としては、例えば、キッチン、トイレ、浴室、玄関、居間等の壁面、天井、床等のタイル目地;床暖房設備を有する床面の施工等に好適に用いられる。
その場合、本発明の硬化性樹脂組成物は、カートリッジやフィルムパック等に充填された後、押し出し具によって施工箇所に充填されたり、目地こて等を用いてタイル等の目地部に充填されたりして施工される。その後、揮発成分が揮発し、乾燥することにより硬化する。
【実施例】
【0053】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限られるものではない。
1.硬化性樹脂組成物の調製
(実施例1〜4ならびに比較例1および2)
下記第1表に示す各成分を、第1表に示す組成(質量部)で、かくはん機を用いて混合し分散させ、実施例1〜4ならびに比較例1および2の各硬化性樹脂組成物を得た。
【0054】
2.硬化性樹脂組成物の評価
得られた各硬化性樹脂組成物について、以下のようにして、チクソ性、耐水性、アスカーC硬度およびダンベル物性の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0055】
(1)チクソ性
BS型粘度計を用い、ロータ#7で、23℃、50%RHの条件下で、2rpmおよび10rpmのときの硬化性樹脂組成物の調製直後の粘度を測定した。2rpmで測定された粘度の値を10rpmで測定された粘度の値で除して、チクソインデックスを算出し、チクソ性を評価した。
【0056】
(2)耐水性
120mm×200mm×5mmの型枠内に硬化性樹脂組成物を充填し、へらで平らになるように仕上げ、23℃、50%RHの条件下で3日間、ついで、50℃で4日間乾燥させ、硬化物を得た。硬化物の厚さは、いずれも約3mmであった。ついで、硬化物を直径30mmの円盤状に打ち抜き、試験用サンプルとした。
あらかじめ質量を測定した試験用サンプルを60℃の温水に14日間浸せきさせた後、温水から取り出し、速やかに表面の水分をタオルペーパーで拭き取り、質量を測定した。
その結果から、下記式により吸水質量変化率を算出し、耐水性を評価した。
【0057】
吸水質量変化率=(浸せき後の質量−浸せき前の質量)/浸せき前の質量×100(%)
【0058】
(3)アスカーC硬度
日本ゴム協会標準規格(SRIS)0101に準じてアスカーC硬度を測定した。
【0059】
(4)ダンベル物性
JIS K6251−1993に準じて、硬化性樹脂組成物を23℃、50%RHの条件下に7日間放置した後、厚さ2mmのダンベル状試験片(ダンベル状3号形)に切り出し、引張速度200mm/minで、最大応力(Tmax)および破断時の伸び(EB)を室温で測定した。
【0060】
【表1】

【0061】
第1表中の各成分は、以下のとおりである。
・ポリマーディスパージョン1:アクリロニトリル−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体の水分散物(固形分濃度約62質量%)、アクロナールA378ap、BASFジャパン社製
・ポリマー微粉末:アクリル酸ブチル−スチレン共重合体の再分散性樹脂微粉末、アクロナールS430P、BASFジャパン社製、粒径10〜100μm
・ポリマーディスパージョン2:アクリルエマルジョンとポリエチレンエマルジョンとの混合物(アクリルポリマー10〜30質量%、ポリエチレンポリマー10〜30質量%、水40〜70質量%)、コンフォート(WAXタイプ)、ジェー・エス・ピー社製
・ポリマーディスパージョン3:アクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキル共重合体、アクロナールYJ−6180DM(固形分濃度約36質量%)、BASFジャパン社製
・セバシン酸ポリエステル:Paraplex G−25、CP Hall社製、数平均分子量8,000、粘度160,000mPa・s
・ポリプロピレングリコール(PPG)アルキルフェニルエーテル:プラスティリット3060、BASFジャパン社製
・アルキルスルホン酸フェニルエステル:メザモール、Bayer社製
・二酸化チタン:R−820、石原産業社製
・重質炭酸カルシウム:BF−400(45μmふるい残分:39.4質量%)、備北粉化工業社製
・ケイソウ土:ラヂオライトF、昭和化学工業社製
・ハイドロタルサイト様化合物:PURAL MG 63HT、Sasol社製、平均粒径6μm、MgO/(MgO+Al23)63質量%
【0062】
第1表から明らかなように、本発明の硬化性樹脂組成物(実施例1〜4)は、セバシン酸ポリエステルを含有しない場合(比較例1および2)に比べて、耐水性に優れる。中でも、変性ポリプロピレングリコールであるPPGアルキルフェニルエーテルを用いた場合(実施例1〜3)は、特に耐水性に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマーディスパージョンと、前記アクリル系ポリマーディスパージョンの固形分100質量部に対して1〜50質量部の下記式(1)で表されるセバシン酸ポリエステルとを含有する硬化性樹脂組成物。
HO−R−(OCO−(CH28−COOR)n−OH (1)
(式中、nは3〜40の整数を表す。複数個のRは、それぞれ独立に、炭素原子数6〜12の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す。)
【請求項2】
前記セバシン酸ポリエステルの数平均分子量が、1,000〜10,000である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記アクリル系ポリマーディスパージョンが、アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸アルキルエステル共重合体およびスチレン−アクリロニトリル−メタクリル酸アルキルエステル−アクリル酸アルキルエステル共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含有する請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
更に、粒径20μm以下のハイドロタルサイト様化合物を、前記アクリル系ポリマーディスパージョンの固形分100質量部に対して、1〜40質量部含有する請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ハイドロタルサイト様化合物の粒径が8μm以下である請求項4に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ハイドロタルサイト様化合物において、マグネシウムの含有量が、MgO/(MgO+Al23)換算で、30質量%以上である請求項4または5に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記ハイドロタルサイト様化合物において、マグネシウムの含有量が、MgO/(MgO+Al23)換算で、60質量%以上である請求項4または5に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
更に、45μmふるい残分が5質量%以上の炭酸カルシウムを、前記アクリル系ポリマーディスパージョンの固形分100質量部に対して、50〜800質量部含有する請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
更に、無機系つや消し材を含有する請求項1〜8のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
前記無機系つや消し材が、パーライト、ケイソウ土およびフライアッシュからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項9に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
更に、変性ポリプロピレングリコールを含有する請求項1〜10のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
前記変性ポリプロピレングリコールが、ポリプロピレングリコールアルキルフェニルエーテルである請求項11に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を用いた目地シーリング材組成物。

【公開番号】特開2006−257328(P2006−257328A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−78943(P2005−78943)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】