説明

硬化性樹脂組成物の製造方法、硬化性樹脂組成物、カラムスペーサ、及び、液晶表示素子

【課題】液晶表示素子の製造に使用するカラムスペーサ用途に用いた場合、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できるとともに、液晶中への不純物の溶出による電圧保持率の低下や液晶配向不良の発生を効果的に抑制でき、長期信頼性に優れた液晶表示素子を得ることができる硬化性樹脂組成物の製造方法を提供する。また、該硬化性樹脂組成物の製造方法により製造される硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ、及び、液晶表示素子を提供する。
【解決手段】分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物及び/又はアルカリ可溶性高分子化合物、並びに、光反応開始剤を含有する硬化性樹脂組成物を製造する方法であって、前記各成分を混合した混合物とイオン交換性固体及び/若しくはイオン吸着性固体とを接触させる、又は、前記各成分の少なくとも1種とイオン交換性固体及び/若しくはイオン吸着性固体とを接触させた後混合する工程1を有する硬化性樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子の製造に使用するカラムスペーサ用途に用いた場合、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できるとともに、液晶中への不純物の溶出による電圧保持率の低下や液晶配向不良の発生を効果的に抑制でき、長期信頼性に優れた液晶表示素子を得ることができる硬化性樹脂組成物の製造方法に関する。また、該硬化性樹脂組成物の製造方法により製造される硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ、及び、液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示素子は、2枚のガラス基板の間隙を一定に維持するためのスペーサを具備し、これらの他に透明電極や偏光板及び液晶物質を配向させる配向層等から構成されている。現在スペーサとしては、主に粒子径が数μm程度の微粒子スペーサが用いられている。しかし、従来の液晶表示素子の製造方法では、ガラス基板上に微粒子スペーサをランダムに散布していたことから、画素部内に微粒子スペーサが配置されてしまうことがあった。画素部内に微粒子スペーサがあると、スペーサ周辺の液晶配向の乱れから光が漏れて画像のコントラストが低下したりする等、画像品質を低下させることがあるという問題がある。これに対して、微粒子スペーサが画素部に配置されないような微粒子スペーサの配置方法が種々検討されているが、いずれも操作が煩雑であり実用性に乏しいものであった。
【0003】
近年、液晶表示素子の生産性を上げるために、ワンドロップフィル法(One Drop Fill Technology:ODF法)が提案されている。この方法は、ガラス基板の液晶封入面上に、所定量の液晶を滴下し、もう一方の液晶パネル用基板を真空下で所定のセルギャップを維持できる状態で対峙させ、貼り合わせることにより液晶表示素子を製造する方法である。この方法によれば、従来の方法に比べて液晶表示素子が大面積化し、セルギャップが狭小化しても、液晶の封入が容易であることから、今後はODF法が液晶表示素子の製造方法の主流になると考えられる。
しかし、ODF法において微粒子スペーサを用いると、液晶の滴下時や対向基板の貼り合わせ時に、散布した微粒子スペーサが液晶の流動とともに流されて、基板上における微粒子スペーサの分布が不均一となる。微粒子スペーサの分布が不均一になると、液晶セルのセルギャップにバラツキが生じ、液晶表示に色ムラが発生してしまうという問題があった。
【0004】
これに対して、従来の微粒子スペーサに代わって、液晶基板上にフォトリソグラフの手法によってセルギャップを均一保持するための凸型パターンを形成したカラムスペーサが提案され、実用化されるようになってきている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
このようなカラムスペーサを用いれば、画素部内にスペーサが配置されてしまう問題や、ODF法においてスペーサムラが生じてしまう問題を解決することができる。
【0005】
また、従来のカラムスペーサ用樹脂組成物からなるカラムスペーサを用いてODF法により製造した大型液晶表示素子においては、表示装置の使用中に液晶セル内の液晶が下方へ流動することにより、表示パネルの上半面と下半面において色ムラが生じる「重力不良」と呼ばれる欠陥が発生することがあり、大きな問題となっていた。この「重力不良」の現象は、バックライトより発生する熱によって液晶セル内の液晶が膨張してセルギャップを押し広げ、その際にカラムスペーサから基板が浮き上がってしまい、このスペーサによって保持されなくなった体積分の液晶が重力によって下方への流動することにより生じると考えられる。
このような「重力不良」を解消するためには、バックライトより発生する熱によって液晶セル内の液晶が膨張してセルギャップを押し広げる際に、いったん圧縮されていたカラムスペーサを圧縮変形からの弾性回復によりセルギャップの変化に追随できるようにし、基板とカラムスペーサとの間に隙間が生じないようにすれば解決可能であると考えられる。
【0006】
しかし、従来の方法では、カラムスペーサに高い変形回復力を持たせるためには、カラムスペーサを形成する樹脂を高度に架橋し圧縮時に塑性変形を起こりにくくする必要があるところ、このような高度な架橋構造を有する樹脂は一般的に圧縮弾性率が高く、硬くなってしまう傾向にある。このような硬い樹脂によりカラムスペーサを形成した場合には、カラムスペーサを圧縮変形させる課程において、大きな圧力が必要であり、得られた液晶表示素子においては、圧縮されたカラムスペーサによる液晶セルを押し広げようとする大きな力を内包することになる。このようなカラムスペーサが液晶セルを押し広げようとする力が大きい場合、低温時に液晶セル内の液晶の体積収縮が起こると液晶セル内の内圧が急激に低下して気泡が発生する「低温発泡」という現象を生じてしまうという問題があった。
【0007】
このような問題に対して、特許文献3には、カラムスペーサの弾性率を一定の範囲に規定することにより、重力不良による色ムラや低温発泡等が発生することがなく、耐久性に優れた液晶表示素子とすることができる柔軟なカラムスペーサが開示されている。
しかし、このような柔軟なカラムスペーサでは、電圧保持率の低下や液晶配向の不良が生じやすいという問題があった。
【特許文献1】特開2001−91954号公報
【特許文献2】特開2002−251007号公報
【特許文献3】特開2005−258422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記現状に鑑み、液晶表示素子の製造に使用するカラムスペーサ用途に用いた場合、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できるとともに、液晶中への不純物の溶出による電圧保持率の低下や液晶配向不良の発生を効果的に抑制でき、長期信頼性に優れた液晶表示素子を得ることができる硬化性樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。また、該硬化性樹脂組成物の製造方法により製造される硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ、及び、液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物及び/又はアルカリ可溶性高分子化合物、並びに、光反応開始剤を含有する硬化性樹脂組成物を製造する方法であって、上記各成分を混合した混合物とイオン交換性固体及び/若しくはイオン吸着性固体とを接触させる、又は、上記各成分の少なくとも1種とイオン交換性固体及び/若しくはイオン吸着性固体とを接触させた後混合する工程1を有する硬化性樹脂組成物の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明者らは、柔軟なカラムスペーサにおいて電圧保持率の低下や液晶配向の不良が生じる原因は、柔軟なカラムスペーサは高弾性のカラムスペーサに比べ、架橋密度が低く分子鎖の自由度が大きいために、内在するイオン性成分等の不純物が溶出しやすく、液晶表示素子として使用した際に液晶汚染を生じるためであるということを突き止めた。
そこで本発明者らは、更に鋭意検討の結果、分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物及び/又はアルカリ可溶性高分子化合物、並びに、光反応開始剤を含有する硬化性樹脂組成物を製造するにあたり、上記各成分を混合した混合物とイオン交換性固体及び/若しくはイオン吸着性固体とを接触させる、又は、上記各成分の少なくとも1種とイオン交換性固体及び/若しくはイオン吸着性固体とを接触させた後混合することにより、上記硬化性樹脂組成物中の不純物を著しく低減させることができ、これにより、液晶中への不純物の溶出による電圧保持率の低下や液晶配向不良の発生を効果的に抑制でき、長期信頼性に優れた液晶表示素子を得ることができる硬化性樹脂組成物を製造することができるということを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物及び/又はアルカリ可溶性高分子化合物、並びに、光反応開始剤を含有する本発明の硬化性樹脂組成物の製造方法(以下、単に本発明の製造方法ともいう)においては、上記各成分を混合した混合物とイオン交換性固体及び/若しくはイオン吸着性固体とを接触させる、又は、上記各成分の少なくとも1種とイオン交換性固体及び/若しくはイオン吸着性固体とを接触させた後混合する工程1を有する。
上記各成分は、これらの化合物の合成時に原料又は触媒として使用される酸性又は塩基性成分等に由来する、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等の金属イオンや、アンモニウムイオン、硝酸イオン、リン酸イオン、スルホニルイオン等の有機イオン、フッ素イオン、臭素イオン、塩素イオン等のハロゲンイオン等のイオン性成分を不純物として含有している場合がある。このようなイオン性の不純物を含有する各成分を含有する硬化性樹脂組成物を用いてなる液晶表示素子は、液晶中への不純物の溶出により電圧保持率の低下や液晶配向不良が発生し、長期信頼性に劣るものとなる。
本発明の製造方法においては、このような工程1を行うことにより、硬化性樹脂組成物中に含有されるイオン性の不純物を著しく低減させることができる。これにより、液晶中への不純物の溶出による電圧保持率の低下や液晶配向不良の発生を効果的に抑制でき、長期信頼性に優れた液晶表示素子を得ることができる硬化性樹脂組成物を製造することができる。
【0012】
工程1において、上記各成分を混合した混合物又は上記各成分の少なくとも1種と、イオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体とを接触させる方法としては特に限定されず、例えば、上記分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物及び/又は上記アルカリ可溶性高分子化合物、並びに、上記光反応開始剤を含有する混合物と、上記イオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体とを振とう機、攪拌装置、遊星式攪拌装置、プライマリーミキサー等を用いて混合してもよいし、上記イオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体を充填したカラムに対して上記混合物を通過させてもよい。
【0013】
工程1において、上記混合物と、上記イオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体とを接触させる際の温度は特に限定されず、常温(25℃前後)で行うことができるが、必要に応じて加熱してもよい。加熱により不純物の除去効率が向上する場合がある。
加熱する場合、好ましい上限は100℃である。加熱温度が100℃を超えると、重合反応等の副反応が起きる可能性がある。加熱温度のより好ましい上限は80℃である。
【0014】
上記イオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体は、各成分中に存在するイオン性の不純物を低減させることが可能であるものであれば特に限定されない。
上記イオン交換性固体は特に限定されず、例えば、イオン交換樹脂、無機イオン交換体等が挙げられる。
上記イオン交換性樹脂は特に限定されず、例えば、カルボキシル基やスルホン酸基等の酸性官能基が結合した陽イオン交換樹脂、ジメチルアミノ基や4級アンモニウム基等の塩基性官能基が結合した陰イオン交換樹脂、及び、これらの混合物である両イオン交換樹脂等が挙げられる。また、市販のイオン交換性樹脂は特に限定されず、例えば、アンバーライト、アンバーリスト、デュオライト(以上、ローム・アンド・ハース社製)、ダイヤイオン(三菱化学社製)、スミキレート(住友化学社製)等が挙げられる。
上記無機イオン交換体は特に限定されず、例えば、ビスマス系無機イオン交換体、ジルコニウム系無機イオン交換体、アンチモン系無機イオン交換体、マグネシウム系無機イオン交換体、アルミニウム系無機イオン交換体等が挙げられる。市販の無機イオン交換体は特に限定されず、例えば、IXE(東亞合成社製)等が挙げられる。
また、イオン吸着性固体は特に限定されず、例えば、シリカゲル、活性アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム等の金属酸化物や、ハイドロタルサイト、ゼオライト、珪酸マグネシウム等の金属複合酸化物、活性炭、活性白土等が挙げられる。
これらのイオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0015】
本発明の製造方法において、上記イオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体は、各成分中に含まれるイオン性の不純物に応じて選択されるが、少なくとも陰イオン交換性固体及び/又は陰イオン吸着性固体を含有することが好ましい。
【0016】
上記分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物は、カプロラクトン変性、エチレンオキサイド変性、及び、プロピレンオキサオド変性からなる群より選択される少なくとも1種の変性がされた多官能(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。このような化合物を用いることにより、特に本発明の製造方法により得られる硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサが優れた柔軟性と高い圧縮回復特性とを有するものとなる。また、このようなカラムスペーサを用いて製造した液晶表示素子は、加熱時の液晶膨張による「重力不良」と、低温時の液晶の収縮による「低温発泡」とを同時に抑制することが可能である。
なお、本明細書において、カプロラクトン変性とは、上記(メタ)アクリレート化合物のアルコール由来部位と(メタ)アクリロイル基との間に、カプロラクトンの開環体又は開環重合体が導入されることを意味する。また、エチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性とは、上記(メタ)アクリレート化合物のアルコール由来部位と(メタ)アクリロイル基との間に、エチレンオキサイドセグメント及び/又はプロピレンオキサイドセグメントが導入されることを意味する。
【0017】
上記カプロラクトン変性された多官能(メタ)アクリレート化合物は、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート化合物をカプロラクトン変性した化合物や、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレート化合物をカプロラクトン変性した化合物等が挙げられる。なかでも、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物をカプロラクトン変性させた化合物は、重合反応の進行が速く、露光感度を向上させやすいことから特に好適である。
これら多官能(メタ)アクリレートは、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0018】
上記カプロラクトン変性された多官能(メタ)アクリレート化合物のカプロラクトン変性の変性度は、ベースとなる多官能(メタ)アクリレート化合物の官能基数をnとした場合、分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物1モルに対して好ましい下限は0.5nモル、好ましい上限は5nモルである。上記カプロラクトン変性された多官能(メタ)アクリレート化合物のカプロラクトン変性の変性度が0.5nモル未満であると、製造するカラムスペーサの柔軟性が不充分となることがある。上記カプロラクトン変性された多官能(メタ)アクリレート化合物のカプロラクトン変性の変性度が5nモルを超えると、カラムスペーサを製造する際の露光時の反応性が低下し、製造するカラムスペーサのパターニングが困難となることがある。上記カプロラクトン変性された多官能(メタ)アクリレート化合物のカプロラクトン変性の変性度のより好ましい下限は1nモル、より好ましい上限は3nモルである。
【0019】
上記多官能(メタ)アクリレート化合物をカプロラクトン変性する具体的な方法は特に限定されず、例えば、多価アルコールとカプロラクトンとを反応させ、カプロラクトン変性アルコールを合成した後、(メタ)アクリル酸とエステル化反応させる方法、(メタ)アクリル酸とカプロラクトンとを反応させ、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸を合成した後、アルコールとエステル化反応させる方法、(メタ)アクリル酸、カプロラクトン、並びに、多価アルコールを一括反応させる方法等が挙げられる。このとき、反応収率や反応時間短縮という点から、触媒として、硫酸、塩酸、リン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等を好適に用いることができる。
【0020】
また、上記分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物が、エチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレート化合物である場合、該多官能(メタ)アクリレート化合物としては特に限定されず、例えば、上述した3官能以上の(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。なかでも、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、又は、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートにカルボキシル基を付加させた化合物を、エチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性したものであることが好ましい。
【0021】
上記エチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレート化合物のエチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性の変性度としては、ベースとなる多官能(メタ)アクリレート化合物の官能基数をnとした場合、多官能(メタ)アクリレート化合物1モルに対して好ましい下限は0.5nモル、好ましい上限は15nモルである。変性度が0.5nモル未満であると、製造するカラムスペーサの柔軟性が不充分となることがある。変性度が、15nモルを超えると、アルカリ現像液への親和性が高くなり、膨潤による解像性の低下が起こりやすくなる。変性度のより好ましい下限は3nモル、より好ましい上限は10nモルである。
【0022】
上記多官能(メタ)アクリレート化合物をエチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性する具体的な方法は特に限定されず、例えば、多価アルコールとエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドとを反応させ、エチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性アルコールを合成した後、このエチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性アルコールと(メタ)アクリル酸とをエステル化反応させる方法、(メタ)アクリル酸とエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドとを反応させ、エチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリル酸を合成した後、アルコールとエステル化反応させる方法、(メタ)アクリル酸、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド、並びに、多価アルコールを一括反応させる方法等が挙げられる。この場合、反応収率や反応時間短縮という点から、触媒として、硫酸、塩酸、リン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等を好適に用いることができる。
【0023】
また、本発明の製造方法において、上記分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物は、分子内に1以上のカルボキシル基を有することが好ましい。このような化合物を含有することで、本発明の製造方法により得られる硬化性樹脂組成物は、フォトリソグラフの手法によるパターン形成時の露光感度を得るために必要な速やかな重合反応性と、現像時の解像性を得るために必要なアルカリ現像液との親和性に優れたものとなる。
【0024】
上記分子内に1以上のカルボキシル基及び2以上の重合性不飽和結合を有する化合物を得る方法は特に限定されず、例えば、I)水酸基を有する3官能以上の(メタ)アクリレート化合物の水酸基に、無水コハク酸やテトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物を付加する方法、II)3官能以上の(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリル基に、チオサリチル酸等のチオール基とカルボキシル基とを有する化合物を、エン−チオール反応により付加する方法等が挙げられる。
【0025】
また、上記分子内に1以上のカルボキシル基及び2以上の重合性不飽和結合を有する化合物は、分子内のカルボキシル基の好ましい上限は2である。3以上であると、現像液への溶解性及び膨潤性が高くなり、例えば、本発明の製造方法により得られる硬化性樹脂組成物をカラムスペーサ用途に用いた際に現像パターンの剥離や、膨潤性による解像度の低下が起こりやすくなる。
【0026】
本発明の製造方法において、上記分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物の配合量は特に限定されないが、本発明の製造方法により得られる硬化性樹脂組成物の固形分に対し、好ましい下限は10重量%、好ましい上限は70重量%である。10重量%未満であると、圧縮変形からの回復性が低下する場合がある。70重量%を超えると、本発明の製造方法により得られる硬化性樹脂組成物をカラムスペーサ用途に用いた場合、機械強度が不充分となり、ラビング工程でパターン削れが発生することがある。より好ましい下限は20重量%、より好ましい上限は60重量%である。
【0027】
また、本発明の製造方法においては、上記分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物に加えて、反応性、現像性等を調整するために、カプロラクトン変性、エチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性された部位を有さない重合性不飽和結合を有する化合物(以下、重合性不飽和結合を有する化合物ともいう)を、例えば、本発明の製造方法により得られる硬化性樹脂組成物をカラムスペーサ用途に用いた際に、製造するカラムスペーサの柔軟性や現像性を損なわない範囲で併用してもよい。
【0028】
上記重合性不飽和結合を有する化合物は特に限定されず、例えば、2官能のものとしては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとしては特に限定されず、例えば、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては特に限定されず、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
また、3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。また、多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物も好適に用いることができる。
【0030】
本発明の製造方法において、上記重合性不飽和結合を有する化合物を用いる場合、その配合量としては特に限定されないが、上記分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物との合計量の40重量%未満であることが好ましい。上記重合性不飽和結合を有する化合物の配合量が40重量%を超えると、本発明の製造方法により得られる硬化性樹脂組成物をカラムスペーサ用途に用いた場合、得られるカラムスペーサの柔軟性が損なわれ、重力不良及び低温発泡の抑制効果が低下することがある。より好ましくは30重量%未満である。
【0031】
本発明の製造方法において、上記アルカリ可溶性高分子化合物は、レジスト現像として一般的な、アルカリ現像においてアルカリ現像液に溶解性を有するものを用いることができる。上記アルカリ可溶性高分子化合物としては特に限定されないが、分子鎖中にカルボン酸、ジカルボン酸無水物、又は、カルボン酸塩を含有することで、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等の水溶液への溶解性を有する高分子化合物が好ましい。
このようなアルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、カルボキシル基含有単官能不飽和化合物と不飽和二重結合を有する単官能化合物とを共重合した共重合体等のアルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物が挙げられる。
【0032】
上記カルボキシル基含有単官能不飽和化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
上記不飽和二重結合を有する単官能化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体が挙げられる。
【0033】
また、上記アルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物は、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル化合物、不飽和ジカルボン酸無水物、芳香族置換マレイミド、アルキル置換マレイミド等からなる成分を含有してもよい。
上記芳香族ビニル系単量体としては特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等が挙げられる。
上記シアン化ビニル化合物としては特に限定されず、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
上記不飽和ジカルボン酸無水物としては特に限定されず、例えば、無水マレイン酸等が挙げられる。
上記芳香族置換マレイミドとしては特に限定されず、例えば、フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミド、o−クロロフェニルマレイミド等が挙げられる。
上記アルキル置換マレイミドとしては特に限定されず、例えば、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、イソプロピルマレイミド等が挙げられる。
【0034】
更に、上記アルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物は、現像時の溶解性を制御する等の目的で水酸基を有する単官能不飽和化合物を含有してもよい。水酸基を有する単官能不飽和化合物としては特に限定されず、例えば、分子内に水酸基を1つ有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。
【0035】
上記アルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物において、カルボキシル基含有単官能不飽和化合物に起因する成分の比の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は40重量%である。カルボキシル基含有単官能不飽和化合物に起因する成分の比が10重量%未満であると、アルカリ可溶性を付与することが困難である。カルボキシル基含有単官能不飽和化合物に起因する成分の比が40重量%を超えると、現像時の膨潤が著しくパターンの形成が困難となることがある。カルボキシル基含有単官能不飽和化合物に起因する成分の比のより好ましい下限は15重量%、より好ましい上限は30重量%である。
【0036】
上記カルボキシル基含有単官能不飽和化合物と不飽和二重結合を有する単官能化合物とを共重合する方法としては特に限定されず、例えば、ラジカル重合開始剤及び必要に応じて分子量調節剤を用いて、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、乳化重合等の従来公知の方法により重合する方法が挙げられる。なかでも、溶液重合が好適である。
【0037】
溶液重合法により上記アルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物を製造する場合の溶媒としては、例えば、脂肪族アルコール類、セロソルブ類、カルビトール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、極性を有する有機溶剤等が挙げられる。
上記脂肪族アルコール類としては特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、グリコール等が挙げられる。
上記セロソルブ類としては特に限定されず、例えば、セロソルブ、ブチルセロソルブ等が挙げられる。
上記カルビトール類としては特に限定されず、例えば、カルビトール、ブチルカルビトール等が挙げられる。
上記エステル類としては特に限定されず、例えば、酢酸セロソルブ、酢酸カルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
上記エーテル類としては特に限定されず、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテルや、テトラヒドロフラン等の環状エーテル等が挙げられる。
上記ケトン類としては特に限定されず、例えば、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
上記極性を有する有機溶剤としては特に限定されず、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
また、懸濁重合、分散重合、乳化重合等の非水系の分散重合により上記共重合体を製造する場合の媒体としては、例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等の液状の炭化水素や、その他の非極性の有機溶剤等を用いることができる。
【0038】
上記アルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物を製造する場合に用いるラジカル重合開始剤としては特に限定されず、例えば、過酸化物、アゾ開始剤等の従来公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。また、上記分子量調節剤としては、例えば、α−メチルスチレンダイマー、メルカプタン系の連鎖移動剤等を用いることができる。
【0039】
また、上記アルカリ可溶性高分子化合物としては、特に、側鎖に(メタ)アクリル基とカルボキシル基とを有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体が好適である。
このようなアルカリ可溶性高分子化合物は、レジスト現像として一般的な、アルカリ現像においてアルカリ現像液に溶解性を有するものである。上記アルカリ可溶性高分子化合物としては特に限定されないが、分子鎖中にカルボン酸、ジカルボン酸無水物、又は、カルボン酸塩を含有することで、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等の水溶液への溶解性を有する高分子化合物が好ましい。
このようなアルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、カルボキシル基含有単官能不飽和化合物と不飽和二重結合を有する単官能化合物とを共重合した共重合体等のアルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物が挙げられる。
【0040】
上記カルボキシル基含有単官能不飽和化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
上記不飽和二重結合を有する単官能化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体が挙げられる。
【0041】
また、上記アルカリ可溶性高分子化合物としては、特に、側鎖に(メタ)アクリル基とカルボキシル基とを有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体(A1)が好適である。
側鎖に(メタ)アクリル基とカルボキシル基とを有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体(A1)としては、例えば、少なくとも酸性官能基を有する構成単位と水酸基を有する構成単位とからなる主鎖を有し、ラジカル重合性基含有イソシアネート化合物が該イソシアネート化合物のイソシアネート基を介して上記酸性官能基の少なくとも一部にアミド結合している及び/又は上記水酸基の少なくとも一部にウレタン結合している重合体(A1−1)が好適である。
【0042】
上記重合体(A1−1)は、ラジカル重合性基含有イソシアネート化合物の仕込み量を当量比(NCO/OH)が1.0以上となるように調節することによって、ラジカル重合性基の側鎖を上記アルカリ可溶性高分子化合物中に高い比率で導入することが可能となり、上記アルカリ可溶性高分子化合物の感度を向上させることができる。また、酸性官能基を有する構成単位の含有量を適宜の割合に調節できるので、アルカリ可溶性(現像性)を自由に調節できる。
【0043】
上記重合体(A1−1)において、イソシアネート基の当量比(NCO/OH)を1.0以上に調節するとともに、水酸基を有する構成単位の含有割合を、仕込み量で14モル%以上とすることが好ましい。イソシアネート基の上記当量比(NCO/OH)を1.0以上に調節することによりイソシアネート基の導入率を高められ、同時に、水酸基を有する構成単位の仕込み量を14モル%以上とすることにより、イソシアネート基が反応する部分が増えるので、上記アルカリ可溶性高分子化合物にラジカル重合性基の側鎖を非常に多量に導入することが可能となり、特に高い感度が得られる。
【0044】
上記ラジカル重合性基含有イソシアネート化合物の仕込み量の好ましい上限は、イソシアネート基の当量比(NCO/OH)が2.0である。上記当量比(NCO/OH)が2.0を超えると、上記アルカリ可溶性高分子化合物中に未反応のラジカル重合性基含有イソシアネート化合物が多量に残ってしまい、上記アルカリ可溶性高分子化合物の物性を低下させる。
【0045】
上記酸性官能基を有する構成単位は、アルカリ現像性に寄与する成分であり、その含有割合としては特に限定されず、上記アルカリ可溶性高分子化合物に要求されるアルカリ可溶性の程度により適宜調整される。上記酸性官能基を有する構成単位を重合体の主鎖へと導入するために使用される単量体としては、二重結合含有基と酸性官能基とを有する化合物が挙げられる。
上記酸性官能基としては特に限定されず、通常はカルボキシル基であるが、アルカリ現像性に寄与できる成分であればカルボキシル基以外であってもよい。
【0046】
なかでも、上記酸性官能基を有する構成単位としては、下記一般式(1)で表される構成単位が好ましい。
【0047】
【化1】

【0048】
上記一般式(1)及び後述する他の式中に含まれるRは、水素又はメチル基である。
【0049】
上記一般式(1)の構成単位を導入するために使用される単量体としては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0050】
上記水酸基を有する構成単位としては特に限定されないが、下記一般式(2)で表される構成単位が好ましい。
【0051】
【化2】

【0052】
上記一般式(2)中、Rは上記一般式(1)のRと同じであり、Rは、炭素数2〜4のアルキレン基を示す。上記Rとしては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
【0053】
また、上記一般式(2)の構成単位を導入するために使用される単量体としては特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。
【0054】
上記重合体(A1−1)の主鎖は、酸性官能基を有する一般式(1)等の構成単位と、水酸基を有する一般式(2)等の構成単位とを必須の共重合成分として含有するが、他の共重合成分を含んでいてもよい。例えば、上記重合体の主鎖には、芳香族炭素環を有する構成単位及び/又はエステル基を有する構成単位が含有されていてもよい。
【0055】
上記芳香族炭素環を有する構成単位としては特に限定されず、例えば、下記一般式(3)で表される構成単位が好ましい。
【0056】
【化3】

【0057】
上記一般式(3)中、Rは、上記一般式(1)のRと同じであり、Rは芳香族炭素環を示す。このようなRとしては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0058】
上記一般式(3)の構成単位を導入するために使用される単量体としては特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられ、また、その芳香族環は、塩素、臭素等のハロゲン原子、メチル基、エチル基等のアルキル基、アミノ基、ジアルキルアミノ基等のアミノ基、シアノ基、カルボキシル基、スルフォン酸基、燐酸基等で置換されていてもよい。
【0059】
上記エステル基を有する構成単位を重合体の主鎖へと導入するために使用される単量体としては特に限定されず、例えば、二重結合含有基とエステル基とを有する化合物が挙げられ、下記一般式(4)で表される構成単位が好ましい。
【0060】
【化4】

【0061】
上記一般式(4)中、Rは、上記一般式(1)のRと同じであり、Rはアルキル基又はアラルキル基を示す。このようなRとしては、例えば、炭素数1〜12のアルキル基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基が挙げられる。
【0062】
上記一般式(4)の構成単位を導入するために使用される単量体としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニルエチル等の(メタ)アクリル酸のエステル類が挙げられる。
【0063】
上記の各構成単位から構成される主鎖には、ラジカル重合性基含有イソシアネート化合物が該イソシアネート化合物のイソシアネート基を介して上記酸性官能基の少なくとも一部にアミド結合している及び/又は上記水酸基の少なくとも一部にウレタン結合しており、ラジカル重合性基の側鎖が形成されている。
【0064】
上記ラジカル重合性基含有イソシアネート化合物としては特に限定されず、例えば、下記一般式(5)に示す(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネートが好適である。
【0065】
【化5】

【0066】
上記一般式(5)中、Rはアルキレン基、Rは水素又はメチルを示す。また、一般式(5)の(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネートのなかでも、(メタ)アクリロイル基が炭素数2〜6のアルキレン基を介してイソシアネート基(−NCO)と結合したものが好ましい。具体的には、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルエチルイソシアネート等が挙げられる。また、上記2−メタクリロイルエチルイソシアネートの市販品としては、例えば、昭和電工社製「カレンズMOI」等が挙げられる。
【0067】
このような構成単位からなる上記重合体は、少なくとも酸性官能基を有する一般式(1)等の構成単位と、水酸基を有する一般式(2)等の構成単位からなり、更に必要に応じて、芳香族炭素環を有する一般式(3)等の構成単位、エステル基を有する一般式(4)等の構成単位、又は、その他の構成単位を含有する主鎖を有する重合体(原料重合体)を製造し、次いでラジカル重合性基含有イソシアネート化合物を反応させることで得ることができる。
【0068】
上記原料重合体を製造するために用いられる重合用溶媒としては、水酸基、アミノ基等の活性水素を有しない溶媒が好ましく、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のグリコールエーテル類、メチルセロソルブアセテート等のセロソルブエステル類やプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸−3−メトキシブチル等が挙げられ、芳香族炭化水素類、ケトン類、エステル類等も用いることができる。
【0069】
上記原料重合体を製造するために用いられる重合開始剤としては特に限定されず、従来公知のラジカル重合開始剤を用いることができ、例えば、ニトリル系アゾ化合物(ニトリル系アゾ系重合開始剤)、非ニトリル系アゾ化合物(非ニトリル系アゾ系重合開始剤)、有機過酸化物(パーオキサイド系重合開始剤)、過酸化水素等が挙げられる。
上記ニトリル系アゾ化合物としては特に限定されず、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
上記非ニトリル系アゾ化合物としては特に限定されず、例えば、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が挙げられる。
上記有機過酸化物としては特に限定されず、例えば、t−ヘキシルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ステアロイルペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、サクシニックペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、4−メチルベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、1,1’−ビス−(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等が挙げられる。上記ラジカル重合開始剤として過酸化物を使用する場合には、これと還元剤とを組み合わせてレドックス型重合開始剤として使用してもよい。
【0070】
上記原料重合体の製造においては、重量平均分子量を調節するために分子量調節剤を使用することができる。
上記分子量調節剤としては特に限定されず、例えば、ハロゲン化炭化水素類分子量調節剤、メルカプタン類分子量調節剤、キサントゲン類分子量調節剤、ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
上記ハロゲン化炭化水素類分子量調節剤としては特に限定されず、例えば、クロロホルム、四臭化炭素等が挙げられる。
上記メルカプタン類分子量調節剤としては特に限定されず、例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸等が挙げられる。
上記キサントゲン類分子量調節剤としては特に限定されず、例えば、ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等が挙げられる。
【0071】
上記原料重合体は、ランダム共重合体及びブロック共重合体のいずれであってよい。
ランダム共重合体を製造する場合には、例えば、上記一般式(1)〜(4)に示した各単量体、及び、触媒からなる配合組成物を、溶剤を入れた重合槽中に80〜110℃の温度条件で2〜5時間かけて滴下し、熟成させることにより重合させることができる。
【0072】
上記一般式(1)〜(4)の構成単位を有する原料重合体のポリスチレン換算重量平均分子量(以下、単に「重量平均分子量」又は「Mw」という。)の好ましい下限は5000、好ましい上限は5万であり、酸価の好ましい下限は5mgKOH/g、好ましい上限は100mgKOH/gであり、水酸基価の好ましい下限は5mgKOH/g、好ましい上限は100mgKOH/gである。
【0073】
上記原料重合休とラジカル重合性基含有イソシアネート化合物との反応は、ラジカル重合性基含有イソシアネート化合物を少量の触媒の存在下、原料重合体の溶液中に、全量を一度に投入してから一定時間反応を続けるか、又は、少しずつ滴下することにより行うことができる。
上記触媒としては特に限定されず、例えば、ラウリン酸ジブチル錫等が挙げられ、また、p−メトキシフェノール、ヒドロキノン、ナフチルアミン、tert−ブチルカテコール、2,3−ジ−tert−ブチルp−クレゾール等の重合禁止剤が必要に応じて使用される。
【0074】
上記ラジカル重合性基含有イソシアネート化合物は、上記原料重合体における酸性官能基に対してイソシアネートを介してアミド結合する。例えば、上記一般式(1)の構成単位とは、下記一般式(6)で表されるような構成単位を形成する。
一方、上記ラジカル重合性基含有イソシアネート化合物は、原料重合体における水酸基に対しては、イソシアネートを介してウレタン結合する。例えば、上記一般式(2)の構成単位とは、付加反応してウレタン結合により結合し、下記一般式(7)の構成単位で表されるような構成単位を形成する。
【0075】
【化6】

【0076】
【化7】

【0077】
このようにして得られる重合体は、酸性官能基を有する一般式(1)等の構成単位と、水酸基を有する一般式(2)等の構成単位と、酸性官能基を有する構成単位にラジカル重合性基が導入された一般式(6)等の構成単位と、水酸基を有する一般式(2)の構成単位にラジカル重合性基が導入された一般式(7)等の構成単位とが、任意の順序に連結した分子構造を有している。
【0078】
本発明の製造方法において、上記光反応開始剤は特に限定されず、例えば、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンジル、チオキサントン及びこれらの誘導体等、従来公知の光反応開始剤が挙げられる。具体的には、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ミヒラーケトン、(4−(メチルフェニルチオ)フェニル)フェイルメタノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1(4−メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。これらの光反応開始剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0079】
本発明の製造方法において、上記光反応開始剤の配合量としては特に限定されないが、本発明の製造方法により得られる硬化性樹脂組成物全量に対して好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は15重量%である。0.1重量%未満であると、本発明の製造方法により得られる硬化性樹脂組成物が光硬化しないことがあり、15重量%を超えると、フォトリソグラフィーにおいてアルカリ現像できないことがある。より好ましい下限は0.3重量%、より好ましい上限は10重量%である。
【0080】
本発明の製造方法においては、酸素による反応障害を軽減するために反応助剤を添加してもよい。このような反応助剤と水素引き抜き型の光反応開始剤とを併用することにより光照射したときの硬化速度を向上させることができる。
【0081】
上記反応助剤としては特に限定されず、例えば、アミン系反応助剤、ホスフィン系反応助剤、スルホン酸系反応助剤等が挙げられる。
上記アミン系反応助剤としては特に限定されず、例えば、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンテトラミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等が挙げられる。
上記ホスフィン系反応助剤としては特に限定されず、例えば、トリ−n−ブチルホスフィン等が挙げられる。
上記スルホン酸系反応助剤としては特に限定されず、例えば、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルフィネート等が挙げられる。
これらの反応助剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0082】
本発明の製造方法においては、更に、形成したカラムスペーサ表面のラビング耐性を向上するために多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物を配合してもよい。
このような多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、特に限定されないが、分子内にカルボキシル基を有する6官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有する化合物が好ましい、好ましい上限は20官能である。
このような分子内にカルボキシル基を有する6官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物は、重量平均分子量としては特に限定されないが、好ましい下限は500、好ましい上限は10万のものが好ましい。
また、酸価としては特に限定されないが、好ましい下限は5mgKOH/g、好ましい上限は150mgKOH/gである。
【0083】
上記分子内にカルボキシル基を有する6官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物としては特に限定されず、例えば、下記一般式(8)、下記一般式(9)又は下記一般式(10)で表される骨格を有する分子内にカルボキシル基を有する6官能以上の多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物や、下記一般式(11)で表される分子内にカルボキシル基を有する6官能以上の多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0084】
【化8】

【0085】
【化9】

【0086】
【化10】

【0087】
はアルキレンジオール化合物、ポリオキシアルキレンジオール化合物、又は、ポリカプロラクトンジオール化合物から2個のヒドロキシル基を取り去った残基を示し、Xはジイソシアネート化合物から2個のイソシアネート基を取り去った残基を示し、Aはカルボキシル基含有ジオール化合物から2個のヒドロキシル基と1個のカルボキシル基とを取り去った残基を示し、Bはエポキシ基含有不飽和化合物からエポキシ基を取り去った残基を示し、R’は水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物からヒドロキシル基を取り去った残基を示し、mは1〜50の自然数である。
【0088】
【化11】

【0089】
は3官能以上かつ水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物から水酸基を取り去った残基を示し、B’はジイソシアネート化合物から2個のイソシアネート基を取り去った残基を示し、Xは分子内にカルボキシル基を含む若しくは分子内にカルボキシル基を含まない、アルキレンジオール化合物、ポリオキシアルキレンジオール化合物、又は、ポリカプロラクトンジオール化合物から2個のヒドロキシル基を取り去った残基を示し(ただし、分子内にカルボキシル基を含む、アルキレンジオール化合物、ポリオキシアルキレンジオール化合物、又は、ポリカプロラクトンジオール化合物から2個のヒドロキシル基を取り去った残基を1つ以上含む)、nは自然数である。
【0090】
上記多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物の配合量としては特に限定されないが、本発明の製造方法により得られる硬化性樹脂組成物に対して好ましい下限は3重量%、好ましい上限は80重量%である。
【0091】
本発明の製造方法においては、更に、2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を添加してもよい。上記2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物は、熱架橋剤として働き、このような2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有することで、本発明の製造方法により得られる硬化性樹脂組成物に熱硬化性を付与することができる。
【0092】
上記2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物としては特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及び、これらのオリゴマーからなる多官能イソシアネートを、活性メチレン系、オキシム系、ラクタム系、アルコ−ル系等のブロック剤化合物によりブロック化することにより得られるもの等が挙げられる。これらの2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0093】
また、このような2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物のうち市販されているものとしては、例えば、デュラネート17B−60PX、デュラネートE−402−B80T(以上、旭化成ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0094】
本発明の製造方法において、上記2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物の配合量は特に限定されないが、本発明の製造方法により得られる硬化性樹脂組成物に対して好ましい下限が0.01重量%、好ましい上限が50重量%である。上記2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物の配合量が0.01重量%未満であると、本発明の製造方法により得られる硬化性樹脂組成物が充分に熱硬化しないことがある。上記2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物の配合量が50重量%を超えると、本発明の製造方法により得られる硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物の架橋度が高くなりすぎて後述する弾性特性を満たさないことがある。上記2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物の配合量のより好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は20重量部である。
【0095】
本発明の製造方法においては、粘度を調整するために希釈剤を用いてもよい。
上記希釈剤としては、本発明の製造方法により得られる硬化性樹脂組成物との相溶性、塗工方法、乾燥時の膜均一性、乾燥効率等を考慮して選択すればよく特に限定されないが、本発明の製造方法により得られる硬化性樹脂組成物をスピンコーター、スリットコーターを用いて塗工する場合には、例えば、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、エチルセルソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、イソプロピルアルコール等の有機溶媒が好適である。これらの希釈剤は、単独で用いてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0096】
特に、本発明の製造方法における工程1が、上記各成分の少なくとも1種とイオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体とを接触させるものである場合、上記各成分は、作業性や不純物の除去効率という点から、上記希釈剤で希釈された状態で用いることが好ましい。また、工程1(及び後述する工程2)を実施した後、希釈液のまま配合して硬化性樹脂組成物を調製してもよいし、一旦減圧乾燥等により有機溶剤を除去し、配合して硬化性樹脂組成物を調製してもよい。
【0097】
本発明の製造方法においては、必要に応じて、基板との密着性を向上するためのシランカップリング剤等、従来公知の添加剤を用いてもよい。
【0098】
工程1を行った後、上記イオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体を除去することなく硬化性樹脂組成物の一部として残存させてもよいが、工程1に続いて、各成分を混合した混合物又は各成分の少なくとも1種と、イオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体とを分離する工程2を行うことが好ましい。
【0099】
工程2において、上記イオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体を分離する方法は特に限定されず、例えば、濾過、カラム通過、遠心分離法等が挙げられる。
【0100】
上記イオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体を硬化性樹脂組成物の一部として残存させる場合(工程2を行わない場合)、上記イオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体の粒径は特に限定されないが、好ましい上限は1μmである。上記イオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体の粒径が1μmを超えると、得られる液晶表示素子において上記イオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体が表示不良の原因となったり、良好なパターン形状が得られなかったりすることがある。より好ましい上限は0.5μmである。
また、工程2により上記イオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体を分離する場合、分離の容易さという点から、イオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体の粒径は1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。
【0101】
上記工程1が上記各成分を混合した混合物と、上記イオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体とを接触させる工程である場合、上記イオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体の使用量は特に限定されないが、上記混合物100重量部に対して好ましい下限が0.5重量部、好ましい上限が15重量部である。0.5重量部未満であると、イオン性の不純物の除去効果が不充分である場合があり、15重量部を越えると、イオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体が過剰となり、工程2において分離に時間がかかる場合があり、工程2を行わない場合も、パターニング性が低下する場合がある。より好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は10重量部である。
【0102】
また、上記工程1が上記各成分の少なくとも1種と、イオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体とを接触させる工程である場合、上記イオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体の使用量は、上記各成分100重量部に対して好ましい下限が1重量部、好ましい上限が25重量部である。1重量部未満であると、イオン性の不純物の除去効果が不充分である場合があり、25重量部を越えると、イオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体が過剰となり、工程2において分離に時間がかかる場合があり、工程2を行わない場合も、パターニング性が低下する場合がある。より好ましい下限は2重量部、より好ましい上限は20重量部である。
【0103】
本発明の製造方法により得られる硬化性樹脂組成物は、特に上述した工程1を有することにより、不純物の含有量が極めて少ない硬化性樹脂組成物となる。
本発明の製造方法により製造される硬化性樹脂組成物もまた、本発明の1つである。
【0104】
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の製造方法により得られることにより、硬化前の抽出水イオン濃度が20ppm未満となる。なお、抽出水イオン濃度が20ppm以上であると、本発明の硬化性樹脂組成物を用いてなる液晶表示素子の電圧保持率の低下や表示ムラなど信頼性低下を招くことがある。
なお、硬化前の硬化性樹脂組成物とは、溶剤を揮発させた状態の未硬化のものを意味する。またイオン抽出は、この硬化前の硬化性樹脂組成物が全体の5重量部となるよう純水を加え、100℃で1時間加熱することにより、行うことができる。またイオン濃度は、イオンクロマトグラフ法により測定することができる。
【0105】
本発明の硬化性樹脂組成物は、少なくとも、50mJ/cmの紫外線を照射し、更に、加熱する場合は、200〜250℃の温度で20分程度熱処理を加えることによりほぼ完全に硬化させることができる。
本明細書においては、光照射(及び加熱)により本発明の硬化性樹脂組成物をほぼ完全に硬化させたものを硬化物ともいう。
【0106】
本発明の硬化性樹脂組成物を用いれば、光硬化(及び熱硬化)させることにより圧縮変形からの高い回復性と、柔軟で低弾性率であることとを両立したカラムスペーサを製造することができ、また、パターン形成時に現像残滓を生じることがなくシャープな解像性を得ることができる。また、このようなカラムスペーサを用いれば、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制した液晶表示素子を得ることができる。
【0107】
このような本発明の硬化性樹脂組成物は、光照射(及び加熱)により硬化させたときの硬化物の25℃における15%圧縮時の弾性係数の好ましい下限が0.2GPa、好ましい上限が1.0GPaである。0.2GPa未満であると、軟らかすぎて、本発明の硬化性樹脂組成物をカラムスペーサ用途に用いた場合、セルギャップの保持が困難となることがあり、1.0GPaを超えると、硬すぎて、本発明の硬化性樹脂組成物をカラムスペーサ用途に用いた場合、基板貼り合わせ時にカラーフィルター層に突入してしまったり、回復に必要な充分な弾性変形が得られなかったりすることがある。より好ましい下限は0.3GPa、より好ましい上限は0.9GPaであり、更に好ましい下限は0.5GPa、更に好ましい上限は0.7GPaである。
【0108】
なお、本明細書において硬化物とは、光照射(及び加熱)により本発明の硬化性樹脂組成物をほぼ完全に硬化させたときの硬化物を意味する。ほぼ完全に硬化させる条件は、少なくとも、50mJ/cmの紫外線を照射し、更に、加熱する場合は、200〜250℃の温度で20分程度熱処理を加えることによりほぼ完全に硬化させることができる。
また、本明細書において15%圧縮とは、カラムスペーサの高さの変形率が15%となるように圧縮することを意味する。更に、弾性係数及び回復率は、以下の方法により測定したものである。
すなわち、まず、基板上に形成したカラムスペーサを10mN/sの荷重印加速度で圧縮し、初期高さHの85%に相当する高さになるまで圧縮する。ここで1mNの荷重を印加した際のカラムスペーサ高さをH、Hの85%に相当するカラムスペーサ高さをH、Hに達した時点での荷重をFとする。次いで、この荷重Fを5秒間保持し、定荷重での変形を与えた後、10mN/秒の荷重印加速度で負荷を取り除き弾性回復によるカラムスペーサ高さの回復変形を測定する。この間の圧縮変形が最大となった時点のカラムスペーサ高さをHとし、カラムスペーサの変形を回復する過程における1mNの荷重印可時のカラムスペーサ高さをHとする。弾性計数及び回復率は、下記式(1)及び下記式(2)により算出することができる。
【0109】
弾性係数E=F/(D×S) (1)
回復率R=(H−H)/(H−H)×100 (2)
【0110】
式(1)中、Fは荷重(N)を表し、Dはカラムスペーサの高さの変形率を表し、Sはカラムスペーサの断面積(m)を表す。
【0111】
次に、本発明の硬化性樹脂組成物を用いてカラムスペーサを製造する方法を説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物を用いてカラムスペーサを製造する場合には、まず、本発明の硬化性樹脂組成物を所定の厚さになるように基板上に塗工して被膜を形成する。
上記塗工の方法としては特に限定されず、例えば、スピンコート、スリットコート、スプレーコート、ディップコート、バーコート等の従来公知の塗工法を用いることができる。
【0112】
次いで、形成した被膜上に、所定のパターンが形成されたマスクを介して、紫外線等の活性光線を照射する。これにより、光照射部においては、本発明の硬化性樹脂組成物中に含まれる分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物と光反応開始剤とが反応して光硬化する。
上記活性光線の照射量としては特に限定されないが、紫外線の場合で100mJ/cm以上であることが好ましい。100mJ/cm未満であると、光硬化が不充分で続くアルカリ処理を行ったときに露光部まで溶解しパターンが形成されないことがある。
【0113】
次いで、光硬化後の光硬化物をアルカリ現像して基板上に本発明の硬化性樹脂組成物の光硬化物からなる所定のパターンのカラムスペーサを形成する。
【0114】
本発明の硬化性樹脂組成物が2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有する場合には、更に、現像処理後のパターン化された光硬化物を加熱することにより、含有されるアルカリ可溶性高分子化合物と2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物とが反応する。
上記加熱の条件としては、上記パターンの大きさや厚さ等を考慮して適宜決定すればよいが、少なくとも、200℃、20分間以上であることが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサもまた、本発明の1つである。
【0115】
本発明のカラムスペーサは、25℃における15%圧縮時の弾性係数の好ましい下限が0.2GPa、好ましい上限が1.0GPaである。0.2GPa未満であると、軟らかすぎてセルギャップの保持が困難となることがあり、1.0GPaを超えると、硬すぎて基板貼り合わせ時にカラーフィルター層に突入してしまったり、回復に必要な充分な弾性変形が得られなかったりすることがある。より好ましい下限は0.3GPa、より好ましい上限は0.9GPaであり、更に好ましい下限は0.5GPa、更に好ましい上限は0.7GPaである。
【0116】
本発明のカラムスペーサは、その高さをセルギャップより若干高くなるように設計して、ODF法等の従来公知の方法により製造することにより、低温発泡を生ずることなく重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制することができる液晶表示素子を得ることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物、又は、本発明のカラムスペーサを用いてなる液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0117】
本発明によれば、液晶表示素子の製造に使用するカラムスペーサ用途に用いた場合、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できるとともに、液晶中への不純物の溶出による電圧保持率の低下や液晶配向不良の発生を効果的に抑制でき、長期信頼性に優れた液晶表示素子を得ることができる硬化性樹脂組成物の製造方法を提供することができる。また、該硬化性樹脂組成物の製造方法により製造される硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ、及び、液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0118】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0119】
(1)分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物の合成
攪拌装置、コンデンサー、温度計、ガス導入管を備えたフラスコに、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリアクリレート(ペンタエリスリトール1モルに、アクリル酸1モルにカプロラクトン2モルを反応させてなる化合物3モルを、パラトルエンスルホン酸を触媒とするエステル化反応により付加した化合物)50g(48.3mmol)、酸無水物として無水コハク酸3.2g(48.3mmol)、重合禁止剤としてヒドロキノン0.1gをフラスコに仕込み、窒素フローしながら加熱を行った。無水コハク酸が完全に溶けたところで、触媒としてトリエチルアミン0.2gを添加し、窒素雰囲気下、120℃油浴で6時間反応させた後、室温まで放冷し、カルボキシル基を有するカプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリアクリレートを得た。
【0120】
(2)アルカリ可溶性高分子化合物の合成
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計、ガス導入管を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGM−AC)145gを取り、窒素置換しながら攪拌し120℃に昇温した。
次に、ベンジルメタクリレート30g(0.185モル)、メタクリル酸23.3g(0.271モル)、イソデシルメタクリレート35g(0.161モル)及びトリシクロデカン骨格を有するモノメタクリレート(日立化成社製、FA−513M)1.7g(0.008モル)からなるモノマー混合物に、t−ブチルヒドロパーオキサイド(日本油脂社製、パーブチルO)を7.6g(モノマー混合物100部に対し4.5部)を添加した。これを滴下ロートから2時間かけてフラスコに滴下し、更に120℃で2時間攪拌し続けエージングを行った。
次に、フラスコ内を空気置換に替え、グリシジルメタクリレート15.6g(0.110モル、カルボキシル基の41%)にトリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP−30)0.9g及びハイドロキノン0.145gを、エージングした中に投入し、120℃で6時間反応を続けたところで反応を終了し、アルカリ可溶性高分子化合物を得た。得られたアルカリ可溶性高分子化合物をサンプリングし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分子量を測定したところ、重量平均分子量は14000、固形分酸価90であった。
【0121】
(3)混合物の調製
分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物として(1)で得られたカプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリアクリレート100重量部に対し、(2)で得られたアルカリ可溶性高分子化合物溶液125重量部、光反応開始剤としてイルガキュアー907(チバスペシャルティケミカルズ社製)12重量部、シランカップリング剤としてKBM−403(信越化学工業社製)6重量部、溶剤としてジエチレングリコールメチルエチルエーテル180重量部を混合して混合物を調製した。
【0122】
(実施例1)
(3)で調製した混合物100重量部に対し、アンバーリストMSPS2−1・DRY(イオン交換樹脂、ローム・アンド・ハース社製)5重量部加え、室温で3時間攪拌装置にて攪拌したのち濾過を行い、硬化性樹脂組成物を得た。
【0123】
(カラムスペーサの作製)
150mm×150mmITOガラス基板上に、得られた硬化性樹脂組成物をスピンコートにより塗布し、80℃、2分間乾燥して塗膜を得た。得られた塗膜に、6μm角のドットパターンマスクを介して150mJ/cmの紫外線を照射した後、0.11%TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)溶液により80秒間現像し、純水にて30秒間洗浄してカラムスペーサのパターンを形成した。その後、230℃、30分のベーキング処理を行い、カラムスペーサを作製した。得られたカラムスペーサは、底面積が100μm、高さ3μmであった。
【0124】
(液晶表示素子Aの製造)
得られた10μm角のカラムスペーサが形成されたガラス基板上に、液晶配向剤(日産化学製、SE7492)をフレキソ印刷機にて塗布し、80℃で2分間乾燥した後、220℃で1時間焼成した。
次に、もう一枚の透明電極付きガラス基板上に、同様にして配向膜を形成した。
このようにして得た2枚の基板に、貼り合わせ後に直交するような方向にラビング処理を施し、うち1枚にシール剤(積水化学工業社製)を長方形の枠を描く様にディスペンサーで塗布した。
続いて、液晶(チッソ社製、JC−5004LA)の微小滴をガラス基板の枠内全面に滴下塗布し、すぐに他方のガラス基板を貼り合わせてシール部に高圧水銀ランプを用い紫外線を50mW/cmで60秒照射した。
その後、液晶アニールを120℃にて1時間行い熱硬化した。
得られた液晶パネルの両面に、偏光板を偏光軸が直交するように貼り付け、液晶表示素子Aを作製した。
【0125】
(液晶表示素子Bの製造)
得られた硬化性樹脂組成物について、紫外線照射の際、ドットパターンマスクを介さず露光を行った以外は、上述したカラムスペーサの作製と同様にして、厚み3μmの硬化塗膜を得た。また、得られた硬化塗膜を使用した以外は、上述した液晶表示素子Aの製造と同様にして、液晶表示素子Bを作製した。
【0126】
(実施例2)
(3)で調製した混合物100重量部に対し、アンバーリストB20−HG・DRY(イオン交換樹脂、ローム・アンド・ハース社製)5重量部加え、室温で3時間攪拌装置にて攪拌したのち濾過を行い、硬化性樹脂組成物を得た。
以下、実施例1と同様にして、カラムスペーサ、液晶表示素子A及び液晶表示素子Bを作製した。
【0127】
(実施例3)
(3)で調製した混合物100重量部に対し、キョーワード500(ハイドロタルサイト、協和化学社製)5重量部加え、室温で3時間攪拌装置にて攪拌したのち濾過を行い、硬化性樹脂組成物を得た。
以下、実施例1と同様にして、カラムスペーサ、液晶表示素子A及び液晶表示素子Bを作製した。
【0128】
(実施例4)
(3)で調製した混合物100重量部に対し、キョーワード2000(ハイドロタルサイト、協和化学社製)5重量部加え、室温で3時間攪拌装置にて攪拌したのち濾過を行い、硬化性樹脂組成物を得た。
以下、実施例1と同様にして、カラムスペーサ、液晶表示素子A及び液晶表示素子Bを作製した。
【0129】
(実施例5)
アンバーリストMSPS2−1・DRY(イオン交換樹脂、ローム・アンド・ハース社製)10重量部を充填したカラムに対し、(3)で調製した混合物100重量部を通過させ、硬化性樹脂組成物を得た。
以下、実施例1と同様にして、カラムスペーサ、液晶表示素子A及び液晶表示素子Bを作製した。
【0130】
(実施例6)
(3)で調製した混合物100重量部に対し、アンバーリストMSPS2−1・DRYを0.1μm以下の微粒子状に粉砕したものを3重量部加え、攪拌し、硬化性樹脂組成物を得た。
以下、実施例1と同様にして、カラムスペーサ、液晶表示素子A及び液晶表示素子Bを作製した。
【0131】
(実施例7)
(1)で合成した重合性不飽和結合含有化合物50重量部に対し、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル50重量部、アンバーリストMSPS2−1・DRY5重量部加え、室温で3時間攪拌装置にて攪拌したのち濾過を行った。このようにして得られた溶液100重量部に対し、(2)で得られたアルカリ可溶性高分子化合物溶液125重量部、光反応開始剤としてイルガキュアー907(チバスペシャルティケミカルズ社製)12重量部、シランカップリング剤としてKBM−403(信越化学工業社製)6重量部、溶剤としてジエチレングリコールメチルエチルエーテル180重量部を混合して硬化性樹脂組成物を調製した。
以下、実施例1と同様にして、カラムスペーサ、液晶表示素子A及び液晶表示素子Bを作製した。
【0132】
(比較例1)
(3)で調製した混合物100重量部を、室温で3時間攪拌装置にて攪拌し、硬化性樹脂組成物とした。
以下、実施例1と同様にして、カラムスペーサ、液晶表示素子A及び液晶表示素子Bを作製した。
【0133】
<評価>
実施例1〜7及び比較例1で得られた硬化性樹脂組成物、カラムスペーサ及び液晶表示素子について、以下の方法により評価を行った。結果を表1に示した。
【0134】
(硬化性樹脂組成物の評価(抽出水イオン濃度の測定))
得られた硬化性樹脂組成物を、ガラス基板上にスピンコートにより塗布し、80℃、2分間乾燥して塗膜を得た。得られた塗膜を回収し、塗膜重量が全量の5重量部となるよう純水を加え、オーブン中100℃、60分加熱した。このようにして得られた抽出水について、イオンクロマト装置ICS−1000(日本ダイオネクス社製)により、イオン成分濃度の測定を行った。
【0135】
(カラムスペーサの評価(パターニング性))
光学顕微鏡により、カラムスペーサパターンの表面荒れ( パターン形成状態)を観察し、以下の基準により評価した。
○:パターン表面が平滑な状態
△:パターン表面がやや荒れた状態
×:パターン表面が荒れた状態
【0136】
(圧縮特性の評価)
温度25℃に調整した室内において、10μm角のカラムスペーサを10mN/秒の荷重印加速度で圧縮し、初期高さHの85%に相当する高さになるまで圧縮した。ここで1mNの荷重を印加した際のカラムスペーサ高さをH、Hの85%に相当するカラムスペーサ高さをH、Hに達した時点での荷重をFとした。
次いで、この荷重Fを5秒間保持し、定荷重での変形を与えた後、10mN/秒の荷重印加速度で負荷を取り除き弾性回復によるカラムスペーサ高さの回復変形を測定した。この間の圧縮変形が最大となった時点のカラムスペーサ高さをHとし、カラムスペーサの変形を回復する過程における1mNの荷重印可時のカラムスペーサ高さをHとした。得られた各値を用いて、下記式(1)及び下記式(2)により15%圧縮時の圧縮弾性係数E及び15%圧縮変形したときの回復率Rを算出した。なお、式(1)中、Eは圧縮弾性係数(Pa)を表し、Fは、荷重(N)を表し、Dは、カラムスペーサの高さ変形率=(H−H)/Hを表し、Sは、カラムスペーサの断面積(m)を表す。
E=F/(D×S) (1)
R=(H−H)/(H−H)×100 (2)
【0137】
(液晶表示素子の評価(セルギャップの評価))
得られた液晶表示素子Aを点灯表示し、セルギャップの均一性を表示画面を目視にて観察して、以下の基準により評価した。
〇:均一
△:やや色ムラあり
×:色ムラあり
【0138】
(重力不良の評価)
得られた液晶表示素子Aを垂直に立てた状態で、60℃の条件下にて2日間放置した。放置後、目視により表示画像を観察し、重力不良の発生について以下の基準により評価した。
〇:均一
△:やや色ムラあり
×:色ムラあり
【0139】
(低温発泡の評価)
得られた液晶表示素子Aを−20℃の条件下にて24時間放置した後、クロスニコル間に液晶表示素子を設置し、目視により観察し、低温発泡の発生について以下の基準により評価した。
〇:発泡なし
△:繰り返し試験により、発泡がある場合とない場合がある
×:発泡あり
【0140】
(電圧保持率)
得られた液晶表示素子Bに60Hz、5Vの電圧を印加した後、回路をオープンし、16.7ミリ秒後の保持電圧を測定し、電圧保持率の評価を行った。
【0141】
(長期信頼性評価)
得られた液晶表示素子Bを、高温(60℃)、高湿度(80%RH)の環境下で1500時間連続点灯させたのち、以下の基準により評価した。
○:表示ムラなし
×:表示ムラあり
【0142】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明によれば、液晶表示素子の製造に使用するカラムスペーサ用途に用いた場合、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できるとともに、液晶中への不純物の溶出による電圧保持率の低下や液晶配向不良の発生を効果的に抑制でき、長期信頼性に優れた液晶表示素子を得ることができる硬化性樹脂組成物の製造方法を提供することができる。また、該硬化性樹脂組成物の製造方法により製造される硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ、及び、液晶表示素子を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物及び/又はアルカリ可溶性高分子化合物、並びに、光反応開始剤を含有する硬化性樹脂組成物を製造する方法であって、
前記各成分を混合した混合物とイオン交換性固体及び/若しくはイオン吸着性固体とを接触させる、又は、前記各成分の少なくとも1種とイオン交換性固体及び/若しくはイオン吸着性固体とを接触させた後混合する工程1を有する
ことを特徴とする硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
更に、各成分を混合した混合物又は各成分の少なくとも1種と、イオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体とを分離する工程2を有することを特徴とする請求項1記載の硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
イオン交換性固体及び/又はイオン吸着性固体は、陰イオン交換性固体及び/又は陰イオン吸着性固体を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物は、カプロラクトン変性、エチレンオキサイド変性、及び、プロピレンオキサオド変性からなる群より選択される少なくとも1種の変性がされた多官能(メタ)アクリレート化合物であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物は、分子内に1以上のカルボキシル基を有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載の硬化性樹脂組成物の製造方法によって製造されることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
硬化前の抽出水イオン濃度が20ppm以下であることを特徴とする請求項6記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項6又は7記載の硬化性樹脂組成物を用いてなることを特徴とするカラムスペーサ。
【請求項9】
25℃における15%圧縮時の弾性係数が0.2〜1.0GPaであることを特徴とする請求項8記載のカラムスペーサ。
【請求項10】
請求項6若しくは7記載の硬化性樹脂組成物、又は、請求項8若しくは9記載のカラムスペーサを用いてなることを特徴とする液晶表示素子。


【公開番号】特開2009−263532(P2009−263532A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115797(P2008−115797)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】