説明

硬化性樹脂組成物

【課題】質感に優れ、モルタルに似た意匠性を有し、耐候性にも良好な硬化性樹脂組成物の提供。
【解決手段】アクリル系ポリマーディスパージョンと、45μmふるい残分が5%以上の炭酸カルシウムとを含有する硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、石材や窯業材間に充填され、目地部を封止する材料としては一般的にモルタルが使用されてきているが、モルタルは、風合いがよくタイルの高級感と調和するが、伸び性がないため、部材間の線膨張係数の相違や外力による変形によってひびが入ったり、剥落が発生するという問題があった。
【0003】
そこで、構造により変位、変形しやすい個所には、モルタルのような無機質系のものに代えて、シリコーン系もしくは変成シリコーン系シーリング材が目地材として用いられてきている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、このような有機系のシーリング材は弾性を有することから伸びに追随することは可能であるが、シリコーン系シーリング材には、平板的であり、また周辺を汚すという問題があり、変成シリコーン系シーリング材には、シラスバルーンや樹脂バルーンを入れて凹凸感を表したものもあるが質感的に不十分であり、耐候性に劣る場合があるという問題があった。
【0004】
また、他のタイル目地材として、セメントと樹脂材料(例えば、樹脂エマルジョン等)を混合させたものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
具体的には、特許文献2には、「ポルトランドセメント、粒径0.3mm〜1.0mmのゴムチップ、および合成ゴムエマルジョン、エチレン酢酸ビニル系エマルジョン、または、アクリル酸エステルエマルジョンのいずれかから1つを選択した樹脂エマルジョンからなる目地材」が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−7861号公報
【特許文献2】特開2001−20399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に記載の目地材を用いた場合は、硬化後の表面の凹凸感(立体感)が不十分であり、モルタルに似た意匠性を有しないという問題があることが分かった。
そこで、本発明は、質感に優れ、モルタルに似た意匠性を有し、耐候性にも良好な硬化性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、アクリル系ポリマーディスパージョンと、特定の炭酸カルシウムとを含有する硬化性樹脂組成物が、乾燥硬化後に質感に優れ、モルタルに似た意匠性を有し、耐候性にも良好な硬化性樹脂組成物となることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(6)に示す硬化性樹脂組成物を提供する。
【0008】
(1)アクリル系ポリマーディスパージョンと、45μmふるい残分が5%以上、好ましくは20%以上の炭酸カルシウムとを含有する硬化性樹脂組成物。
【0009】
(2)さらに、パーライト、珪藻土およびフライアッシュからなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含有する上記(1)に記載の硬化性樹脂組成物。
【0010】
(3)上記アクリル系ポリマーディスパージョンが、アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリロニトリル・アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸・メタクリル酸・アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリロニトリル・アクリル酸・アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン・メタクリル酸アルキルエステル・アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン・アクリロニトリル・アクリル酸アルキルエステル共重合体およびスチレン・アクリロニトリル・メタクリル酸アルキルエステル・アクリル酸アルキルエステル共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含有する上記(1)または(2)に記載の硬化性樹脂組成物。
【0011】
(4)上記アクリル系ポリマーディスパージョンの固形分100質量部に対し、上記炭酸カルシウムを50〜800質量部含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【0012】
(5)水を含む揮発成分の含有量が、5〜25質量%である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【0013】
(6)硬化後のアスカーC硬度が、95以下である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、モルタルに代わる目地材に好適に用いることができる硬化性樹脂組成物として、質感に優れ、モルタルに似た意匠性を有し、耐候性や耐汚れ性にも良好な硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、適当な弾性を有するため部材間の線膨張係数の相違や外力(例えば、地震)による目地の変形に追随することができ、亀裂や剥落の発生を防ぐことができるため非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物は、アクリル系ポリマーディスパージョンと、45μmふるい残分が5%以上、好ましくは20%以上の炭酸カルシウムとを含有する硬化性樹脂組成物であり、さらにパーライト、珪藻土およびフライアッシュからなる群より選択される少なくとも1種の添加剤とを含有する硬化性樹脂組成物であるのが好ましい。
次に、本発明の硬化性樹脂組成物に用いる上記アクリル系ポリマーディスパージョン、上記炭酸カルシウムおよび上記添加剤について詳述する。
【0016】
<アクリル系ポリマーディスパージョン>
本発明の硬化性樹脂組成物に用いるアクリル系ポリマーディスパージョンとは、水性溶媒中にアクリル系ポリマーの微粒子が分散した分散液のことをいう。
ここで、アクリル系ポリマーは、アクリロイル基(メタアクリロイル基を含む。以下同じ。)を1個有するアクリル酸エステル単量体(メタアクリル酸エステル単量体を含む。以下同じ。)と、アクリロイル基を少なくとも2個有するアクリル酸エステル単量体とが共重合したものであれば特に限定されないが、その具体例としては、アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリロニトリル・アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸・メタクリル酸・アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリロニトリル・アクリル酸・アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン・メタクリル酸アルキルエステル・アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン・アクリロニトリル・アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン・アクリロニトリル・メタクリル酸アルキルエステル・アクリル酸アルキルエステル共重合体等が好適に挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのうち、アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリロニトリル・アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸・メタクリル酸・アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリロニトリル・アクリル酸・アクリル酸アルキルエステル共重合体であるのが、得られる本発明の硬化性樹脂組成物の硬化後の耐候性がより優れる理由から好ましい。
【0017】
また、本発明の硬化性樹脂組成物に用いるアクリル系ポリマーディスパージョンにおける固形分(ポリマー分)の含有割合は、特に限定されないが、本発明の硬化性樹脂組成物における水を含む揮発成分の含有量が5〜25質量%であるのが好ましいという観点から、40質量%以上であることが好ましく、特に取り扱い性の観点から45〜65質量%であることがより好ましい。
【0018】
このようなアクリル系ポリマーディスパージョンとしては、市販品としてBASFジャパン社製のアクロナールA378ap(アクリロニトリル・アクリル酸・アクリル酸アルキルエステル共重合体)、アクロナールYJ2741D(スチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体)等を用いることもできる。
【0019】
<炭酸カルシウム>
本発明の硬化性樹脂組成物に用いる炭酸カルシウムは、45μmふるい残分が5%以上のものであれば特に限定されないが、その具体例としては、石灰石、貝殻、白亜などCaCO3を主成分とする天然原料を機械的に粉砕分級した重質炭酸カルシウム;沈降炭酸カルシウム(コロイダル炭酸カルシウム);胡粉;チョーク;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのうち、重質炭酸カルシウムを用いるのが、得られる本発明の硬化性樹脂組成物の硬化後の破断伸びが優れる理由から好ましい。
ここで、「45μmふるい残分」とは、呼び寸法45μmの標準ふるいを使用してJIS K5101に準じて測定した残分のことをいう。
【0020】
また、本発明の硬化性樹脂組成物に用いる炭酸カルシウムの45μmふるい残分は、上述したように、5%以上であり、20%以上であるのが好ましい。
上記炭酸カルシウムの45μmふるい残分がこの範囲であれば、得られる本発明の硬化性樹脂組成物が硬化後において、立体感や質感に優れ、モルタルに似た意匠性を有することになり、また硬化後の目地凹みも軽減できる。
このような炭酸カルシウムとしては、市販品として備北粉化工業社製の重質炭酸カルシウム(商品名:BF−400、45μmふるい残分:30%以上)が好適に用いられる。
【0021】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物に用いる炭酸カルシウムは、上記アクリル系ポリマーディスパージョンの固形分100質量部に対し、50〜800質量部含有しているのが好ましく、70〜700質量部含有しているのがより好ましく、80〜500質量部含有しているのがさらに好ましい。
上記炭酸カルシウムの含有量がこの範囲であれば、得られる本発明の硬化性樹脂組成物が硬化後において、適度な破断伸び(破断伸び:150〜500%)を保持し、適度な弾性(アスカーC硬度:30〜95程度)を有するため、熱や基材の吸収による収縮や伸張または外力による目地の変形に追随し、亀裂や剥落の発生を容易に防ぐことができる。
【0022】
<添加剤>
本発明の硬化性樹脂組成物は、パーライト、珪藻土およびフライアッシュからなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含有しているのが好ましく、さらに所望により分散剤、充填剤、可塑剤、消泡剤、着色剤、着色雲母、造膜助剤、防カビ剤、防腐剤、防藻剤、バルーン等の添加剤を含有していてもよい。
添加剤としてパーライト、珪藻土およびフライアッシュからなる群より選択される少なくとも1種を用いれば、得られる本発明の硬化性樹脂組成物の硬化後におけるてかり(つや)をなくし、モルタルと同様、自然で落ち着きのある風合いを呈することができる理由から好ましい。このような効果を奏する理由は明らかではないが、本発明者は、これらの微粒子が光を乱反射し、マット感が得られるためであると考えられる。
【0023】
ここで、パーライトとしては、真珠岩焼成品、黒曜石焼成品、松脂岩焼成品として従来公知のものを用いることができ、市販品として東興パーライト工業社製のトプコパーライト、三井金属パーライト社製の三井パーライト、宇部興産社製のグリーンサム、芙蓉パーライト社製のビーナスライト等を用いることができる。これらのうち、東興パーライト工業社製のトプコパーライトが好適に用いられる。
また、珪藻土は、植物プランクトンである珪藻の外殻化石(珪藻殻)を多く含んだ土であれば特に限定されないが、精製度を上げるためにロータリーキルンを用いた焼成処理を行ったものであるのが好ましい。焼成処理を行った珪藻土としては、昭和化学工業社製のラヂオライトなどのケイソウ殻焼成品として従来公知のものを用いることができる。
また、フライアッシュは、燃焼ガス中に混入する石炭の灰(具体的には、石炭火力発電所等のボイラーより発生する高温の燃焼ガス中に含まれる球形微細粒子を電気しゅうじん器によって捕集された物)であって、北電興産社製、東北発電工業社製、東電環境エンジニアリング社製等で市販されているものを用いることができる。
パーライト、珪藻土およびフライアッシュからなる群より選択される少なくとも1種を用いる場合、その添加量は、上記アクリル系ポリマーディスパージョンの固形分100質量部に対し、1〜50質量部含有しているのが好ましく、2〜20質量部含有しているのがより好ましく、3〜15質量部含有しているのがさらに好ましい。
【0024】
分散剤としては、例えば、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ポリカルボン酸ナトリウム塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリリン酸アミノアルコール中和物、脂肪族アルコールサルフェート等が挙げられる。
【0025】
充填剤としては、例えば、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;ケイ砂、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;カーボンブラック等の有機または無機充填剤;これらの脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル処理物、脂肪酸エステルウレタン化合物処理物が挙げられる。
【0026】
可塑剤としては、例えば、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル;アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジペンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル;ポリプロピレングリコール、変性ポリプロピレングリコール(例えば、ポリプロピレングリコールアルキルフェニルエーテル);等が挙げられる。
これらのうち、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、変性ポリプロピレングリコールを用いるのが好ましい。特に、上記アクリル系ポリマーディスパージョンとしてアクリロニトリル・アクリル酸・アクリル酸アルキルエステル共重合体(BASFジャパン社製、アクロナールA378ap)を用いた場合は、ポリプロピレングリコールアルキルフェニルエーテルを用いるのが、相溶性が高く、固形分調整の自由度が高くなり、さらに破断伸びも良好となる理由からより好ましい。
【0027】
消泡剤としては、例えば、シリカシリコーン系、金属石鹸、アマイド系、変成シリコーン系、ポリエーテル系等が挙げられる。
【0028】
着色剤としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料;アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料が挙げられる。
【0029】
着色雲母としては、例えば、山口雲母工業社製のカラーマイカ等が挙げられる。
造膜助剤としては、例えば、テキサノール、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、ベンジルアルコール、イソプロピルアルコール、新日本石油社製のミネラルターペン、シェルケミカルズジャパン社製のシェルゾールS、花王社製のスマックMD−40、MD−70等が挙げられる。
防カビ剤、防腐剤および防藻剤は、アクリル系ディスパージョンに溶解もしくは分散され得る、市販品として一般に入手できるものであれば特に限定されないが、防カビ剤としては、例えば、日本曹達社製のバイオカットシリーズ(BM30等)、日本エンバイロケミカルズ社製のコートサイド、サンノプコ社製のSNサイド707等が挙げられ、防腐剤としては、例えば、日本曹達社製のベストサイドシリーズ、日本エンバイロケミカルズ社製のスラオフシリーズ(スラオフ39等)、サンノプコ社製のノプコサイドSN−215等が挙げられ、防藻剤としては、例えば、日本曹達社製のバイオカットシリーズ(AF40等)、日本エンバイロケミカルズ社製のモニサイト、ナガセケムテックス社製のDenistat CNX等が挙げられる。
バルーンとしては、例えば、シラスバルーンやガラスバルーンなどの無機製バルーン、樹脂バルーンなどの有機製バルーン等が挙げられる。
【0030】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述したアクリル系ポリマーディスパージョンと、炭酸カルシウムと、所望により添加してもよい各種添加剤とを、水を含む揮発成分の含有量が5〜25質量%、好ましくは8〜20質量%となるように含有するのが好ましい。水を含む揮発成分の含有量がこの範囲であれば、乾燥による容積の減少(減容)に伴う「やせ」が目立たず、かつ、減容によって表面の立体感がより強調されたものとなる。
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化後のアスカーC硬度が95以下であるのが好ましく、90以下であるのがより好ましい。硬化後のアスカーC硬度がこの範囲であれば、地震等の外力が加わっても石材や窯業材を破損することなく、また、目地自体の亀裂や剥落の発生を容易に防ぐことができる。
【0031】
本発明の硬化性樹脂組成物を製造する方法は、特に限定されないが、上記炭酸カルシウムおよび所望により添加してもよい各種添加剤を、上記アクリル系ポリマーディスパージョン中で、ロール、ニーダー、押出し機、万能攪拌機等により混合する方法が挙げられる。
【0032】
このようにして得られる本発明の硬化性樹脂組成物は、カートリッジやフィルムパック等に充填された後、押し出し具によって施工箇所に充填されたり、目地こて等を用いてタイル等の目地部に充填された後、揮発成分を揮発、乾燥させることで硬化する。
なお、このような本発明の硬化性樹脂組成物は、キッチン、トイレ、浴室、玄関、居間等の壁面、天井、床のタイル目地や、床暖房設備を有する床面の施工に好適に用いることができるが、特にこれらの用途に限定されない。
【実施例】
【0033】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜4、比較例1および2)
下記表1に示す各成分を、表1に示す組成(質量部)で、かくはん機を用いて混合し分散させ、実施例1〜4、比較例1および2の各硬化性樹脂組成物を得た。なお、比較例2は、アクリル系ポリマーディスパージョンを用いずにモルタルを用いた例である。
得られた各硬化性樹脂組成物について、以下のようにして、立体感、目地凹み、つやの有無、破断伸び、破断強度、アスカーC硬度を調べた。その結果を下記表1に示す。
【0034】
<立体感>
23℃、50%RH(相対湿度)下で7日間、さらに50℃下で7日間放置することで硬化させた硬化物の表面凹凸を目視により確認し、骨材の凹凸が表面に出ている状態であれば「○」と評価し、出ていない状態であれば「×」と評価した。
【0035】
<目地凹み>
東陶機器社製の陶器質施ゆう内装ユニットタイル(商品名:ハイドロテクトタイル ベーシック100、サイズ:縦97.8mm×横97.8mm×高さ5.0mm)2枚を2mmの間隔をあけて並べ、その間隔(幅2.0mm×長さ97.8mm×深さ5.0mm)に、得られた各硬化性樹脂組成物を充填し、23℃、50%RH下で7日間、さらに50℃下で7日間放置することで硬化させた。硬化物の目地凹みを目視により確認し、タイル間隔の長さ方向に沿ってV字状の凹みが生じていたら「×」と評価し、光線の方向によって認識することができる僅かなV字状の凹みが生じていたら「△」と評価し、凹みが生じていなかったら「○」と評価した。
【0036】
<つやの有無>
23℃、50%RH下で7日間、さらに50℃下で7日間放置することで硬化させた硬化物の表面を目視によりつやの有無を確認した。
【0037】
<破断伸び、破断強度>
得られた各硬化性樹脂組成物から厚さ2mmのダンベル状3号形試験片を切り出し、各ダンベル状3号形試験片について、JIS K6251-1993に準じた引張試験(引張速度:200mm/分)を行い、破断伸び(EB)[%]および破断強度(TB)[MPa]を室温(25℃)にて測定した。
【0038】
<アスカーC硬度>
日本ゴム協会標準規格(SRIS)0101に準じてアスカーC硬度を測定した。
【0039】
【表1】

【0040】
上記第1表に示される各成分は、以下のとおりである。
・ポリマーディスパージョン1:アクロナールA378ap(水:約38質量%、アクリロニトリル・アクリル酸・アクリル酸アルキルエステル共重合体:約62質量%)、BASFジャパン社製
・ポリマーディスパージョン2:アクロナールYJ2741D(水:約44.5質量%、スチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体:約55.5質量%)、BASFジャパン社製
・アクリル系ポリマー:アクロナールS430P(アクリル酸・ブチル−スチレン共重合体の再分散性樹脂粉末)
・重質炭酸カルシウム1:BF−400(45μmふるい残分:39.4%)、備北粉化工業社製
・重質炭酸カルシウム2:スーパーS(45μmふるい残分:0.0%)、丸尾カルシウム社製
・パーライト:トプコパーライト♯54、東興パーライト工業社製
・珪藻土:ラヂオライトF、昭和化学工業社製
・分散剤:トリポリリン酸ナトリウム(関東化学社製)の10%水溶液
・ニ酸化チタン:R−820、石原産業社製
・可塑剤:PLASTILIT3060(ポリプロピレングリコールアルキルフェニルエーテル)、BASFジャパン社製
・カーボンブラック:アサヒサーマル、旭カーボン社製
・造膜樹脂:ミネラルターペン、新日本石油社製
・ケイ砂6号:ケイ砂(0.07〜0.6mm)、宇部サンド工業社製
【0041】
表1に示す結果より、実施例1〜4に示す硬化性樹脂組成物の硬化物は、比較例1に比べ、立体感および目地凹みに優れ、つやもないことが分かり、比較例2のモルタルに比べても、破断伸びと破断強度とのバランスに優れることが分かった。
【0042】
また、実施例3、比較例2で得られた各硬化性樹脂組成物について、以下のようにして耐汚れ性を調べた。
<耐汚れ性>
23℃、50%RH(相対湿度)下で7日間、さらに50℃下で7日間放置することで硬化させた硬化物の表面に、汚染材料(A:コーヒー、B:食用色素赤色102号、C:事務用インキブルーブラック、D:しょう油、E:オリーブ油)を滴下し、24時間放置後、家庭用中性洗剤(ママレモン(登録商標)、ライオン社製)およびクレンザー(ニューホーミングクレンザー、花王社製)で洗浄した。洗浄後の硬化物表面を目視により確認し、着色の痕跡を調べた。その結果を下記表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
表2に示す結果より、実施例3で得られた各硬化性樹脂組成物の硬化物は、比較例2で得られた各硬化性樹脂組成物の硬化物(モルタル)に比べて、いずれの汚染材料に対しても良好な耐汚れ性を示すことが分かった。
【0045】
さらに、実施例3で得られた硬化性樹脂組成物の硬化物について、以下のようにして耐候性を調べた。
<耐候性>
実施例3で得られた硬化性樹脂組成物を30mm×10mm×8mmのサイズの容器に充填し、固化させた後、23℃、50%RH下にて7日間、さらに50℃下で7日間養生した。
その後、メタルハライドウェザーメータ(条件:ブラックパネル温度63℃、50%RH、光エネルギー75mW/cm2、結露120秒/2時間後)を用いて1000時間の照射を行い、硬化物表面を目視により観察した。
その結果、1000時間照射後においても色調の変化は殆ど見られず、また表面にクラックが入ることもなく、チョーキングも生じず、耐候性に非常に優れることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマーディスパージョンと、45μmふるい残分が5%以上の炭酸カルシウムとを含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記炭酸カルシウムの45μmふるい残分が、20%以上である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、パーライト、珪藻土およびフライアッシュからなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含有する請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記アクリル系ポリマーディスパージョンが、アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリロニトリル・アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸・メタクリル酸・アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリロニトリル・アクリル酸・アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン・メタクリル酸アルキルエステル・アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン・アクリロニトリル・アクリル酸アルキルエステル共重合体およびスチレン・アクリロニトリル・メタクリル酸アルキルエステル・アクリル酸アルキルエステル共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記アクリル系ポリマーディスパージョンの固形分100質量部に対し、前記炭酸カルシウムを50〜800質量部含有する請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
水を含む揮発成分の含有量が、5〜25質量%である請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
硬化後のアスカーC硬度が、95以下である請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−37039(P2006−37039A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223053(P2004−223053)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】