説明

硬化性相変化インク組成物

【課題】堅牢性、外見、転写性等における従来の課題を解決する優れた特性と印刷品質を与える一方で、ピエゾインクジェット印刷方法の必要条件に合致する硬化性相変化インク組成物を提供する。
【解決手段】1つまたはそれ以上の放射線硬化性油溶性成分および1つまたはそれ以上の熱溶剤を含んでいるインク組成物、ならびにこのようなインク組成物の調製方法、およびこのようなインク組成物の使用方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷方法に関し、特に室温で固体であり、高温で液体であるインクを使用するインクジェット印刷方法と、それに用いるインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
室温で固体であり、高温で液体であるインクを使用するインクジェット印刷方法は知られている。例えば特許文献1は、例えば紙などの基体上に印刷するための固体インクを必要量だけ出す装置を開示している。インクビヒクルは、装置中で融解されるインクが、非印刷期間の間に蒸発または流出に付されないように、室温以上の融点を有するように選択される。選択されたビヒクルは、熱インクジェットプリンターにおける固体インクの使用を可能にするために、低い臨界温度を有する。これらの相変化インクを使用する、熱、または「ホットメルト」インクジェット印刷方法において、固体インクは、印刷装置中のヒーターによって融解され、従来の圧電または熱インクジェット印刷のものと同様に、液体として用いられる。印刷基体と接触した時、融解インクは迅速に固化し、染料が、毛管作用によって紙の中に運ばれる代わりに、表面上に残留することを可能にし、これによって液体インクを用いて一般に得られるよりも高い印刷密度を可能にする。相変化インクが基体へ加えられた後、基体上での凝結が、インクを再固化する。
【0003】
一般に、相変化、または「ホットメルト」インク組成物は、周囲温度で固相にあるが、インクジェット印刷装置の高い操作温度において液相として存在する。ジェット操作温度において、液体インクの小滴が印刷装置から排出され、直接、または中間加熱トランスファーベルトまたはドラムを介して、インク小滴が記録基体の表面と接触する時、これらは迅速に固化し、固化されたインク滴の予め決定されたパターンを形成する。相変化インクはまた、次のようなほかの印刷技術においても用いられてきた。例えば特許文献2および特許文献3および特許文献4に開示されているようなグラビア印刷である。相変化インクはまた、例えば郵便の消印、および工業用マーキングおよびラベリングなどの用途にも用いられてきた。
【0004】
相変化インクは、インクジェットプリンタ用に望ましい。その理由は、これらが、出荷、長期保存などの間、室温において固相に留まるからである。さらには、液体インクジェットインクでのインク蒸発の結果としてのノズル閉塞にともなう問題が大幅に排除され、これによって、インクジェット印刷の信頼性が改良される。さらには、インク小滴が最終記録基体(例えば、紙、透明材料など)上に直接加えられる、相変化インクジェットプリンターにおいて、小滴は、基体と接触した時に即座に固化し、したがって印刷媒体に沿うインクのマイグレーションが妨げられ、ドット品質が改良される。
【0005】
特許文献5および特許文献6は、熱での可逆性ゲル化性を示す高分子量ポリマー、またはゾル−ゲル転移を受けるある種のアミンオキサイド界面活性剤のどちらかを使用することによって、インクジェットインクを用いたカラーブリード(印刷媒体の表面上での1つの色彩から別の色彩中への侵入)の制御を開示している。
【0006】
特許文献7は、水分散性スルホン化ポリエステル光沢剤、および熱転移点またはそれ以上の温度において、または高濃度においてゲル化を引起こす高熱ゲル化成分を含有する、水性相変化インク組成物を開示している。
【特許文献1】米国特許4,490,731号公報
【特許文献2】米国特許5,496,879号公報
【特許文献3】独国特許DE4205636AL号公報
【特許文献4】独国特許DE4205713AL号公報
【特許文献5】米国特許5,531,817号公報
【特許文献6】米国特許5,476,540号公報
【特許文献7】米国特許5,554,212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ホットメルトインク組成物は首尾よく用いられているが、ホットメルトインクジェット印刷方法、例えば圧電インクジェット印刷方法などに適した相変化インク組成物へのニーズは依然として存在する。より低い温度で、かつより低いエネルギー消費で処理することができるインク組成物へのニーズ、および堅牢性および印刷ラチチュードが改良されたインクへのニーズが依然として存在する。同様に、硬化性の水性および非水性インクの噴射および移注(transfuse)の両方の必要条件を満たすことに関して、噴射信頼性およびラチチュードが改良されたインク組成物へのニーズも存在する。さらには、噴射温度において望ましい低い粘度値を示す相変化インク組成物へのニーズが存在する。さらには、改良された外見および感触特性を有する画像を発生させる相変化インク組成物へのニーズが依然として存在する。それに加えて、改良された硬度および強靭性特性を有する画像を発生させる相変化インク組成物へのニーズが存在する。高速印刷に適し、これによって商取引用および生産用印刷への使用を可能にする、相変化インク組成物へのニーズも依然として存在する。さらには、亀裂をともなわずに基体に転写され、かつ硬化した時に固化されうる安定画像を生成する圧電インクジェット印刷用の硬化性インク組成物へのニーズが依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
様々な上記のニーズ、およびその他のニーズは、次の硬化性インク組成物例および方法例によって対処される。
【0009】
圧電インクジェット印刷に適したインク組成物例および方法例であって、安定画像が、亀裂をともなわずに基体へ転写され、かつ画像を形成するインク組成物の硬化の時に固化されうるものが提供される。いくつかのインク組成物例は、優れた印刷品質を与えつつ、移注印刷方法の必要条件に合致する。
【0010】
約4ナノメートル〜約500ナノメートルの範囲内の波長を有する放射線によって硬化可能な1つまたはそれ以上の油溶性成分、および1つまたはそれ以上の熱溶剤を含んでいる硬化性インク組成物例が、別個に提供される。
【0011】
硬化性インク組成物の調製方法例であって、約4ナノメートル〜約500ナノメートルの範囲内の波長を有する放射線によって硬化可能な1つまたはそれ以上の油溶性成分中に、1つまたはそれ以上の開始剤を溶解して、溶液を形成する工程;必要により、1つまたはそれ以上の着色剤を添加する工程;溶液を攪拌し、この溶液に1つまたはそれ以上の熱溶剤を添加する工程;溶液を加熱して、熱溶剤を融解および溶解する工程;必要により、加熱された溶液を均質化して混合物を形成する工程;および必要により、この混合物を濾過する工程を含む方法も、別個に提供される。
【0012】
ジェット印刷方法例であって、約4ナノメートル〜約500ナノメートルの範囲内の波長を有する放射線によって硬化可能な1つまたはそれ以上の油溶性成分、および1つまたはそれ以上の熱溶剤を含むインク組成物を、中間基体上に噴射して、中間画像を形成する工程、中間画像を基体上に転写して、転写された画像を形成する工程、および転写された画像を、約4ナノメートル〜約500ナノメートルの範囲内の波長を有する放射線へ暴露する工程を含む方法が、別個に提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のインク組成物例は、従来の課題を解決する優れた特性と印刷品質を与える一方で、ピエゾインクジェット印刷方法の必要条件に合致する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
特に、インク組成物例は、1つまたはそれ以上の放射線硬化性油溶性成分、および1つまたはそれ以上の熱溶剤を含んでいる。このようなインク組成物の調製方法例、およびこのようなインク組成物の使用方法例も記載されている。
【0015】
油溶性成分例は、約4ナノメートル〜約500ナノメートルの範囲内の波長を有する放射線へ暴露することによって硬化可能であるが、ほかは特に制限されていない。しかしながらラジカル硬化性モノマーの選択は、例えば特に油溶性成分の揮発性に対する安全性、ならびにその皮膚刺激性、臭気、およびほかの毒性問題などの考慮事項によって決定されるべきである。それに加えた考慮事項には、高い硬化率、および粘度が含まれる。
【0016】
多様なUV硬化性材料を、インク組成物例の油溶性成分として用いることができる。例えば油溶性成分は、ポリエーテルアクリレート、ポリエーテルメタクリレート、エポキシド、脂環式エポキシド、ビニルエーテル、およびこれらの混合物の1つまたはそれ以上を含んでいてもよい。多官能性ビニルエーテルも用いることができる。油溶性成分は、カチオン的放射線硬化性のモノマー、例えば脂環式エポキシド、多官能性脂環式エポキシド、ビニルエーテル、およびこれらの混合物であってもよい。
【0017】
インク組成物例はまた、キャリヤー組成物、例えばヒート溶剤、または「熱溶剤」を含んでいてもよい。適切な熱溶剤には、次のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。すなわち、蝋質ジオール;パラフィン;マイクロクリスタリンワックス;ポリエチレンワックス;エステルワックス;脂肪酸およびほかの蝋質材料;脂肪アミド含有材料;スルホンアミド材料;イソシアネート−由来樹脂およびワックス、例えばウレタンイソシアネート−由来材料、ウレアイソシアネート−由来材料、ウレタン/ウレアイソシアネート−由来材料、これらの混合物など;様々な天然源からできている樹脂性材料、例えばトール油ロジンおよびロジンエステル;およびこれらの混合物である。このような材料を開示している文献のいくつかの代表例には、米国特許第3,653,932号、第4,390,369号、第4,484,948号、第4,684,956号、第4,851,045号、第4,889,560号、第5,006,170号、第5,151,120号、第5,372,852号、および第5,496,879号、欧州特許公報第0187352号、欧州特許公報第0206286号、ドイツ特許公報第DE4205636AL号、ドイツ特許公報第DE4205713AL号、およびPCT特許出願第WO94/04619号が含まれる。
【0018】
熱溶剤例は、二官能性脂肪族アルコールから選択することができる。これには次のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。すなわち、表1に示されているもの;1モルあたり約20,000グラム未満の分子量を有するポリオール;化合物、例えばウレア、エチルウレア、メチルスルホンアミド、およびエチレンカーボネート;テトラヒドロ−チオフェン−1,1−ジオキシド;メチルアニセート;約35℃〜約50℃の軟化温度を有するポリカプロラクトン、約30℃〜約33℃の融点を有するポリカプロラクトン−ブロック−ポリテトラヒドロフラン−ブロック−ポリカプロラクトン、例えばデュポン社のテラサン(TERATHANE);ピリジン−N−オキシド;アセトアミド;アクリルアミド;スルファミド;メリミド;ピラゾール;イミジゾール;およびこれらの混合物である。熱溶剤は、個々に、または組合せて用いられてもよい。
【0019】
【表1】

【0020】
熱溶剤は、インク組成物例中に、あらゆる所望の量または効果的な量で存在してもよい。インク組成物例は、熱溶剤を、約0重量%〜約50重量%の量で含んでいてもよく、特定の実施形態において、約0重量%〜約30重量%の量で含んでいてもよい。
【0021】
インク組成物例は、油溶性成分と熱溶剤、ならびにあらゆる任意添加剤との均質化された混合物であってもよい。
【0022】
実施態様において用いることができる任意添加剤には、次のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。すなわち、開始剤、着色剤、分散剤および/または界面活性剤、導電性向上剤、粘着付与剤、接着剤、可塑剤、非ポリマー性有機ゲル化添加剤、粘度調節剤、清澄剤、消泡剤、泡止め剤、レベリング剤、ロール解放および潤滑性のための添加剤など、およびこれらの混合物である。
【0023】
1つまたはそれ以上の開始剤が、これらの公知の効果のために、インク組成物例中に含まれていてもよい。用いることができる開始剤には、次のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。すなわち、ベンゾフェノン;ベンゾインエーテル;ベンジケタール;α−ヒドロキシアルキルフェノン;α−アミノアルキルフェノン;アシルホスフィン光開始剤、例えばチバ(Ciba)からのイルガキュア(IRGACURE)およびダロキュア(DAROCUR)の商品名で販売されているもの;共開始剤およびアミン共力剤、例えばイソプロピルチオキサントン、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−エチルヘキシルジメチルアミノベンゾエートなど;およびカチオン性光開始剤、例えばスルホニウム、スルホキソニウム、およびヨードニウム塩である。
【0024】
開始剤、例えば光開始剤は、使用される操作温度において熱安定であるべきである。例えば圧電印刷ヘッドの操作温度は一般に、約70℃〜約80℃の範囲内にあり、このようなヘッドで印刷されたインク組成物中に含まれる開始剤は、このような温度において熱安定であるべきである。したがって、組成物例において、いわゆるノリッシュ(Norrish)I型開始系、例えば2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−(4−モルホルリニル)フェニル)−1−ブタノン、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−(4−モルホルリニル)−1−プロパノン、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル−ジメチルケタール、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルエステル、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンが好ましいことがある。ノリッシュII型開始系、例えばイソプロピルチオキサントン、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、カンファーキノン、および必要によりアミン共力剤も用いることができ、例えばエチル−4−ジメチルアミノベンゾエートおよび2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエートも同様に用いることができる。カチオン性重合において、次のスルホニウム開始剤、例えばビス[4−(ジフェニルスルホニオ)−フェニル]スルフィドビス−ヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−ジ(4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ−フェニル]スルフィドビス−ヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−ジ(4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ−フェニル]スルフィドビス−ヘキサフルオロアンチモネート、ダウ・ケミカルからのシラキュア(CYRACURE)UVI−6990、キテック・ケミカル社(Chitec Chemical Co.)からのR−GEN(登録商標)BF−1172も用いることができる。ヨードニウムカチオン性開始剤、4−メチルフェニル−(4−(2−メチルプロピル)フェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートも同様に用いることができる;しかしながらこれらの系は、おそらくはこれらの比較的低い酸化電位の結果として、あまり熱安定性でないことが証明されている。
【0025】
インク組成物例はまた、1つまたはそれ以上の着色剤を含んでいてもよい。熱溶剤中に溶解または分散させることができる、染料、顔料、これらの混合物などを包含する、あらゆる所望の、または効果的なUV安定性着色剤を、任意着色剤として用いることができる。着色剤は、所望の色彩および色相を得るために、あらゆる所望の量または効果的な量でインク組成物中に存在してもよい。任意着色剤は、このインク組成物の約0.5重量%〜約15重量%の範囲内;特定の実施形態においては、このインク組成物の約1重量%〜約10重量%の範囲内;さらにはこのインク組成物の約2.5重量%〜約5重量%の範囲内の量で存在してもよい。
【0026】
適切な顔料の例には、次のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。すなわち、バイオレットパリオゲン(PALIOGEN)バイオレット5100(BASF);パリオゲンバイオレット5890(BASF);ヘリオゲン(HELIOGEN)グリーンL8730(BASF);リトール(LITHOL)スカーレットD3700(BASF);サンファスト(SUNFAST)(登録商標)ブルー15:4(サンケミカル(Sun Chemical)249−0592);ホスタパーム(HOSTAPERM)ブルーB2G−D(クラリアント(Clariant));パーマネントレッドP−F7RK;ホスタパームバイオレットBL(Clariant);リトールスカーレット4440(BASF);ボンレッド(Bon Red)C(ドミニオン・カラー社(Dominion Color Company));オラセット(ORACET)ピンクRF(チバ);パリオゲンレッド3871K(BASF);サンファスト(登録商標)ブルー15:3(サンケミカル249−1284);パリオゲンレッド3340(BASF);サンファスト(登録商標)カルバゾールバイオレット23(サンケミカル246−1670);リトールファストスカーレットL4300(BASF);サンブライト(SUNBRITE)イエロー17(サンケミカル275−0023);ヘリオゲンブルーL6900、L7020(BASF);サンブライトイエロー74(サンケミカル272−0558);スペクトラパック(SPECTRA PAC)(登録商標)Cオレンジ16(サンケミカル276−3016);ヘリオゲンブルーK6902、K6910(BASF);サンファスト(登録商標)マゼンタ122(サンケミカル228−0013);ヘリオゲンブルーD6840、D7080(BASF);スーダン(Sudan)ブルーOS(BASF);ネオペン(NEOPEN)ブルーFF4012(BASF);PVファストブルーB2G01(クラリアント);イルガライト(IRGALITE)ブルーBCA(チバ);パリオゲンブルー6470(BASF);スーダンオレンジG(アルドリッチ(Aldrich))、スーダンオレンジ220(BASF);パリオゲンオレンジ3040(BASF);パリオゲンイエロー152、1560(BASF);リトールファストイエロー0991K(BASF);パリオトール(PALIOTOL)イエロー1840(BASF);ノボパーム(NOVOPERM)イエローFGL(クラリアント);ルモゲン(Lumogen)イエローD0790(BASF);スコ(Suco)−イエローL1250(BASF);スコ−イエローD1355(BASF);スコファストイエローD1355、D1351(BASF);ホスタパーム(HOSTAPERM)ピンクE02(クラリアント);ハンザ(HANSA)ブリリアントイエロー5GX03(クラリアント);パーマネントイエローGRL02(クラリアント);パーマネントルービン(Rubine)L6B05(クラリアント);ファナル(FANAL)ピンクD4830(BASF);シンクアジア(CINQUASIA)マゼンタ(デュポン(Du Pont))、パリオゲンブラックL0084(BASF);ピグメントブラックK801(BASF);およびカーボンブラック、例えばリーガル(REGAL)330.RTM.(キャボット(Cabot))、カーボンブラック5250、カーボンブラック5750(コロンビア・ケミカル(Columbia Chemical))、これらの混合物などである。
【0027】
インク組成物例は、1つまたはそれ以上の分散剤および/または1つまたはそれ以上の界面活性剤を、これらの公知の特性、例えばインク組成物の湿潤特性の制御、および着色剤の安定化のために含んでいてもよい。実施形態において用いることができる適切な添加剤の例には、次のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。すなわち、BYK−UV3500、BYK−UV3510(BYK−ヘミー(Chemie));ダウコーニング18、27、57、67添加剤;ゾニル(ZONYL)FSO100(デュポン);モダフロー(MODAFLOW)2100(ソルティア(Solutia));フォームブラスト(Foam Blast)20F、30、550(ルブリゾール(Lubrizol));EFKA−1101、−4046、−4047、−2025、−2035、−2040、−2021、−3600、−3232;ゾルスパース(SOLSPERSE)19200、20000、34750、36000、39000、41000、54000であり、個々の分散剤または組み合わせが、必要により共力剤とともに用いられてもよく、共力剤には、ゾルスパース5000、12000、22000(ルブリゾール(Lubrizol));ディスパービック(DISPERBYK)−108、−163、−167、182(BYK−ヘミー);K−スパース132、XD−A503、XD−A505(キング・インダストリーズ(King Industries))が含まれる。
【0028】
インク組成物例はまた場合により、1つまたはそれ以上の酸化防止剤を、酸化防止剤の公知の特性、例えば画像の酸化からの保護、およびインク調製の加熱部分および使用プロセスの間の、インク組成物の成分の酸化からの保護などのために含有してもよい。用いることができる適切な酸化防止剤には、次のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。すなわち、2,6−ジ−第三ブチル−4−メトキシフェノール、2,4−ジ−第三ブチル−6−(4−メトキシベンジル)フェノール、4−ブロモ−2,6−ジメチルフェノール、4−ブロモ−3,5−ジメチルフェノール、4−ブロモ−2−ニトロフェノール、4−(ジエチルアミノメチル)−2,5−ジメチルフェノール、3−ジメチルアミノフェノール、2−アミノ−4−第三アミルフェノール、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾール、2,2’−メチレンジフェノール、5−ジエチルアミノ−2−ニトロソフェノール、アンチモン−ジアルキルホスホロジチオエート、モリブデン−オキシスルフィドジチオカルバメート、(ニッケル−ビス(o−エチル(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、4,4’−メチレン−ビス(ジブチルジチオカルバメート)、四ナトリウム−N−(1,2−ジカルボキシエチル)−N−オクタデシルスルホスクシナメート、イルガスタブ(IRGASTAB)UV10(チバ)、2,6−ジ−第三ブチル−アルファ−ジメチルアミノ−4−クレゾール、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−第三ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−第三ブチル−4−エチルフェノール)、N−イソプロピル−N’−フェニル−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−フェニレンジアミン、N,N’−ジ(2−オクチル)−4−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−4−フェニレン−ジアミン、2,4,6−トリス−(N−1,4−ジメチルペンチル−4−フェニレンジアミノ)−1,3,5−トリアジン、D−ラフィノース−ペンタ水和物、2,2’−メチレンビス(6−第三ブチル−4−メチル−フェノール)、2,6−ジ−第三ブチル−4−(ジメチルアミノメチル)フェノール、4−ドデシルレソルシノールなど、ならびにこれらの混合物である。任意酸化防止剤は、存在する場合、あらゆる所望の量または効果的な量で存在してもよい。任意酸化防止剤は、このインク組成物の約0.001重量%〜約0.5重量%の範囲内、このインク組成物の約0.01重量%〜約0.25重量%の範囲内の量で存在してもよい。
【0029】
インク組成物例は一般に、約50℃およびそれ以下の温度で固体であり、特別な実施形態では、約60℃およびそれ以下の温度で固体である。
【0030】
本明細書において、インク組成物例に関する「融点」という用語は、インク組成物が固体状態からゲル状態に転移する温度または温度範囲を意味する。インク組成物例は、これらの融点以下の温度で固体状態にあってもよい。インク組成物例は、約60℃〜約160℃の範囲内;約70℃〜約140℃の範囲内;および約70℃〜約110℃の範囲内の融点を有する。インク組成物例は、約50℃およびそれ以下の温度で固体であってもよく、および/または約60℃およびそれ以下の温度で固体であってもよい。
【0031】
さらには、実施形態の未硬化インク組成物は、約60℃またはそれ以下の温度で、約103.5センチポアズ〜約109センチポアズの範囲内の粘度を有してもよい。インク組成物例は、約70℃またはそれ以上の温度で、約5センチポアズ〜約15センチポアズの範囲内の粘度を有してもよい。
【0032】
どんな特定の理論にも限定されるわけではないが、インク組成物例は、移注サブシステムを用いる印刷方法において、および融解および/または後融解プロセスを用いる印刷方法において有利であり、かつ可能にされるレオロジーおよび機械的性質を示すと考えられる。インク組成物例は、室温または室温近くで強靭な固体であり、これによって優れた画像堅牢性を可能にすると考えられる。インク組成物例は、ピエゾジェット温度において液体であると考えられる。インク組成物例は、噴射温度よりも低い温度で基体上に噴射された時に、安定画像を形成すると考えられる。インク組成物例は、亀裂をともなわずにその他の基体上に転写可能であると考えられる。インク組成物は、室温に冷却された時に強靭な固体になると考えられる。インク組成物例は、約4ナノメートル〜約400ナノメートルの範囲内の波長を有する放射線での硬化の時に、不可逆的に固化されると考えられる。
【0033】
インク組成物例は、あらゆる所望の方法または適切な方法によって調製することができる。しかしながらインク組成物の調製方法は、約4ナノメートル〜約500ナノメートルの範囲内の波長を有する放射線によって硬化可能な1つまたはそれ以上の油溶性成分中に、1つまたはそれ以上の任意開始剤を溶解する工程;必要により、1つまたはそれ以上の添加剤、例えば着色剤を添加する工程;溶液を静かに攪拌する工程;1つまたはそれ以上の熱溶剤を添加する工程;加熱して熱溶剤を融解および溶解する工程;必要により融解された混合物を均質化する工程;必要によりこの混合物を濾過する工程;および混合物を冷却して、固体インク組成物を生じる工程を含んでいてもよい。
【0034】
方法例は、1つのインク組成物例をインクジェット印刷装置中に組み込む工程、このインク組成物を中間基体上に噴射して、中間画像を形成する工程、必要により中間画像を、約4ナノメートル〜約500ナノメートルの範囲内の波長を有する放射線へ暴露する工程、中間画像を基体上に転写して、転写された画像を形成する工程、およびこの転写された画像を、約4ナノメートル〜約500ナノメートルの範囲内の波長を有する放射線へ暴露する工程を含んでいてもよく、この場合、このインク組成物は、約4ナノメートル〜約500ナノメートルの範囲内の波長を有する放射線によって硬化可能な1つまたはそれ以上の油溶性成分、および1つまたはそれ以上の熱溶剤を含んでいる。印刷装置は、インクの小滴が、圧電振動要素の振動によって画像的パターンに排出させられる圧電印刷方法を使用してもよい。印刷装置はまた、音響インクジェット方法であって、インクの小滴が、音響ビームによって画像的パターンに排出させられる方法を使用してもよい。
【0035】
融解されたインクの小滴を、中間転写部材上に排出させ、ついで中間転写部材から記録シートへ画像を転写させてもよい。中間転写部材は、最終記録シートの温度以上であって、印刷装置中の融解されたインクの温度以下の温度に加熱されてもよい。インク組成物例はまた、ほかのホットメルト印刷方法、例えばホットメルト熱インクジェット印刷、ホットメルト連続ストリーム、または偏向インクジェット印刷などにも用いることができる。
【0036】
あらゆる適切な基体または記録シートを用いることができ、これには次のものが含まれる。すなわち、普通紙、例えばゼロックス(登録商標)4024紙、ゼロックス(登録商標)イメージシリーズ紙、コートランド(Courtland)4024DP紙、罫線入りノートブック紙、ボンド紙、シリカコーテッド紙、例えばシャープ社のシリカコーテッド紙、十条(JuJo)紙など、透明材料、織物、テキスタイル製品、プラスチック、ポリマーフィルム、無機基体、例えば金属、および木材などである。方法例は、多孔質またはインク吸収性基体、例えば普通紙上への印刷を必然的にともなう。
【0037】
米国特許第4,538,156号は、実施形態にしたがって用いることができる平滑表面トランスファードラムを利用したインクジェットプリンターを開示している。
【0038】
インク組成物の特定例を、ここで詳細に記載する。これらの実施例は、例証的なものであり、限定的なものではない。すべての部およびパーセンテージは、ほかの指摘がなければ重量である。
【実施例】
【0039】
次の実施例は、開始剤を油溶性成分中に攪拌して溶解することによって調製する。完全溶解後、任意着色剤が添加されている間、攪拌を続行する。最後に、混合物の温度を、熱溶剤の融点よりも約10℃高い温度に上昇させ、熱溶剤を、連続攪拌を行なって添加する。
[実施例1]
実施例1のインク組成物の個々の成分は、表2に示されているとおりである。
【0040】
【表2】

【0041】
[実施例2]
実施例2のインク組成物の個々の成分は、表3に示されているとおりである。
【0042】
【表3】

【0043】
[実施例3]
実施例3のインク組成物の個々の成分は、表4に示されているとおりである。
【0044】
【表4】

【0045】
[実施例4]
実施例4のインク組成物の個々の成分は、表5に示されているとおりである。
【0046】
【表5】

【0047】
実施例4のインク組成物は、カチオン的に硬化可能な油溶性成分を含んでいる。このインク組成物が、波長200〜320nmの放射線へ暴露される時、油溶性成分が硬化され、熱溶剤のジオールも反応しうる。
[実施例5]
実施例5のインク組成物の個々の成分は、表6に示されているとおりである。
【0048】
【表6】

【0049】
上記実施例を、50℃〜80℃の温度で、粘度テストに付す。この範囲内の温度における実施例1、2、4、および5の粘度を表7に示す。実施例1、4、および5の粘度データを図1に示すが、これは明らかに、これらの実施形態例について、60〜70℃の温度範囲において、粘度の明確な上昇を示している。
【0050】
【表7】

【0051】
実施例1のインク組成物は、ニュートン挙動を示すことが観察され、これをさらに、温度設定点を低下させた修正ゼロックス・フェイザー(PHASER)850インクジェットプリンターを用いて、印刷テストに付す。実施例1の組成物を、75℃で噴射し、鮮明な画像を紙に移注する。このインク組成物の移注は、200〜500psi移注ロール圧で示す。3〜6mg/ページの標準的オイリング速度および20インチ/秒の標準的移注速度を有する標準的フェイザー860ドラムを、実施例1のインク組成物の印刷テストに用いる。ドラム温度は、テスト全体において32℃に制御する。実施例1の噴射されたインク組成物をUV融解Dバルブを用いて硬化した時に、非常に堅牢な画像が得られる。実施例1のインク組成物のサンプルを、UVプロセスサプライズ(UV Process Supplies)の415nmLEDアレーからの照明下、ガラススライド上で硬化する。
【0052】
図2および4は、実施例1のインク組成物によって形成された紙上の画像の顕微鏡写真であり、図3および5は、標準的相変化インク組成物によって形成された紙上の画像の顕微鏡写真である。それぞれ図2および3の比較、実施例1のインク組成物および標準的相変化インク組成物によって形成された画像のラインエッジの顕微鏡写真、およびそれぞれ、図4および5の比較、実施例1のインク組成物および標準的相変化インク組成物によって形成されたドット画像の顕微鏡写真は、この発明のインク組成物の紙上の画像が、標準的相変化インク組成物と同様であることを示している。さらには、L&Wマイクロメーター51によって測定された場合、実施例1のインク組成物によって形成された画像は、1〜2ミクロンのパイル高さを示し、これは、標準的相変化インク組成物によって形成された画像の約10ミクロンのパイル高さよりもはるかに低い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の硬化性インク組成物についての温度と粘度との間の関係のグラフである。
【図2】本発明のインク組成物によって形成された紙上の画像のラインエッジの顕微鏡写真である。
【図3】標準的相変化インク組成物によって形成された紙上の画像のラインエッジの顕微鏡写真である。
【図4】本発明のインク組成物によって形成された紙上のドット画像の顕微鏡写真である。
【図5】標準的相変化インク組成物によって形成された紙上のドット画像の顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたはそれ以上の油溶性成分、および
1つまたはそれ以上の熱溶剤、
を含み、前記油溶性成分が、4ナノメートル〜500ナノメートルの範囲内の波長を有する放射線によって硬化可能である、硬化性インク組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−176782(P2006−176782A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−370033(P2005−370033)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】