説明

硬化性組成物、および光情報媒体

【課題】紫外線等によって硬化させた直後の、400nm程度の光に対する透過率が高い硬化性組成を提供。
【解決手段】エポキシ(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートから選ばれる(メタ)アクリレート(A)、(A)以外の(メタ)アクリレート(B)、光重合開始剤(C)、並びに式(I)で表される化合物(D)を含有する硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報記録媒体の分野では高密度化に関して様々な研究が進められている。光ディスクの分野においても、動画が記録できる0.6mm厚の基板を貼り合わせた構造のDVDが普及期を迎えている。
【0003】
しかしながら、今後、デジタルハイビジョン放送が広まるにつれ、更なる大容量の光ディスクが必要になると予想される。そこで、支持基体の表面に情報記録層及び光透過層が順次形成された光情報記録媒体の光透過層の厚みを0.1mmとし、レンズ開口数NAが0.85程度で、記録及び再生のレーザー光の波長を400nm程度とした高密度光ディスクシステムが提案され、実用化されている。
【0004】
この0.1mm厚の光透過層の形成方法としては、例えば、液状の紫外線硬化型樹脂をスピンコート法により塗布した後、活性エネルギー線の照射により硬化させて光透過層を形成する方法が開発されている(特許文献1)。
【0005】
また、例えば光透過層を通してレーザー光により記録又は再生を行う光ディスクとして、光ディスクの反りを極力抑え、耐久性、耐光性、信号特性維持性に優れた光ディスク及び光ディスクの光透過層として有用な紫外線硬化性組成物が開発されている(特許文献2及び3)。
【0006】
しかしながら、特許文献2及び3に記載の硬化性組成物を光透過層に使用して高密度光ディスクを製造した場合、没食子酸を含有しているため、例えば光源として高圧水銀ランプを用いた場合、硬化直後の光透過層の、400nm程度の光に対する透過率が低く、徐々に透過率が向上する場合があるため、光ディスクの品質を見極めるのが困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−85836号公報
【特許文献2】特開2008−4255号公報
【特許文献3】特開2009−32302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、記録及び再生のレーザー光の波長を400nm程度とした高密度光ディスクの製造時において、紫外線等で硬化させた直後の、400nm程度のレーザー光の透過率が高い光透過層を有する光情報媒体を得ることができる光透過層用の硬化性組成物及び硬化性組成物の硬化物を光透過層に使用した光情報媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エポキシ(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートから選ばれる(メタ)アクリレート(A)、(A)以外の(メタ)アクリレート(B)、光重合開始剤(C)、並びに式(I)で表される化合物(D)を含有する硬化性組成物である。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1から8のアルコキシル基、またはカルボキシル基を表す。)
また本発明は支持基体上に情報記録層を有し、この情報記録層上に光透過層を有し、この光透過層を通して記録光及び再生光の少なくとも一方が入射するように使用される光情報記録媒体であって、該光透過層が前記の光透過層用硬化性組成物の硬化物層である光情報媒体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明における硬化性組成物は、紫外線等によって硬化させた直後の、400nm程度の光に対する透過率が高く、品質面で信頼性の高い光情報媒体を提供できることから、再生専用光ディスク、記録型光ディスク等の光情報記録媒体として適している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(A)成分
(A)成分は本発明の硬化性組成物の硬化時に低収縮性を付与し、光透過層に強靭性や可とう性を付与するための成分である。(A)成分は、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートから選ばれる(メタ)アクリレートである。
エポキシ(メタ)アクリレート
エポキシ(メタ)アクリレートの具体例としては、ビスフェノール型エポキシジ(メタ)アクリレートおよびノボラック型エポキシジ(メタ)アクリレートが挙げられる。中でも、ビスフェノール型エポキシジ(メタ)アクリレートは、耐久性能に優れるため好ましい。ビスフェノール型エポキシジ(メタ)アクリレートの具体例としては、油化シェルエポキシ社製エピコート802、1001、1004等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びエピコート4001P、4002P、4003P等のビスフェノールF型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応によって得られる化合物がある。
ウレタン(メタ)アクリレート
ウレタン(メタ)アクリレートは、後述の(a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分を原料とし、これらを反応させて得られるものが好ましい。
【0014】
(a1)成分
(a1)成分としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ビス(4−イソシアナトフェニル)メタン、ビス(3−クロロ−4−イソシアナトフェニル)メタン、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、トリス(4−イソシアナトフェニル)メタン、1,2−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,2−水添キシリレンジイソシアネート、1,4−水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水添テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等のジイソシアネート類が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0015】
これらの中で、光透過層に優れた靭性と難黄変性を付与できる点で、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,2−水添キシリレンジイソシアネート、1,4−水添キシリレンジイソシアネート、水添テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族骨格のジイソシアネート化合物が好ましい。
【0016】
(a2)成分
(a2)成分としては、例えば、市販されている各種の多価アルコール類が使用可能である。その具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1−メチルブチレングリコール等のポリエーテルポリオール類;ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、3−メチルペンタンジオール、2,4−ジエチルペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類と、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトラヒドロフタル酸等の多塩基酸類またはこれら多塩基酸の酸無水物類との反応によって得られるポリエステルポリオール類;これら多価アルコール類と、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類との反応によって得られるポリカプロラクトンポリオール類等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0017】
これらの中でも、ポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトンポリオール類は、組成物の硬化性が良好となり、得られた硬化物の強伸度バランスに優れることから、硬化物を光情報媒体の光透過層として使用した際の光情報媒体の寸法安定性に優れる。また、得られる光透過層の強伸度バランスを向上させる目的で、成分a2の他に例えば環状ヒドロキシカルボン酸エステルとアンモニア、又は1個の第一級又は第二級アミノ窒素を含む化合物との反応によって得られるアミドポリオール類、具体的にはN−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシブタナミド等を用いてもよい。
【0018】
(a3)成分
(a3)成分としては、具体的には、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基、および分子内に少なくとも1個のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルであればよく、特に限定されない。その具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類や、これらのカプロラクトンの付加物等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。なかでも、低粘度であることから、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0019】
ウレタン(メタ)アクリレートの合成手法は、特に限定されず、従来から知られるウレタン(メタ)アクリレート合成手法を使用できる。具体的には、例えば、フラスコ内に、2モルのジイソシアネートを仕込み、更にジブチル錫ジラウレート等の公知の触媒を総仕込量に対して50〜300ppmを混合し、フラスコ内温度を40〜60℃に保ちながら、滴下ロートを用いて1モルのジオール化合物を2〜4時間かけて滴下して、ウレタンプレポリマーを得る。その後、得られたウレタンプレポリマー末端に残存するイソシアネート基に、当量のヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルを滴下し、フラスコ内温60〜75℃で付加反応させればよい。
【0020】
本発明において、(A)成分の使用割合は、硬化性組成物の低収縮性の観点から、(A)成分、(B)成分の合計100質量%を基準として20質量%以上が好ましく、硬化性組成物を低粘度化して塗布作業性を良好にするためには80質量%以下が好ましい。さらに下限については30質量%以上が特に好ましく、上限については70質量%以下が特に好ましい。
【0021】
(A)成分の含有量の下限値が20質量%以上の場合には、組成物の硬化収縮率の低減効果が十分に発現し、かつ得られる硬化物の可撓性が良好となる傾向にある。また、その上限値が80質量%以下の場合には、得られる組成物の液粘度が低くなり、基材への塗工作業性が良好となる傾向にある。
(A)成分は1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0022】
(B)成分
(B)成分は、硬化性組成物の粘度を調整し、その硬化物に強靭性、可とう性、低収縮性を付与するための成分である。
【0023】
(B)成分としては、例えば、(A)成分以外の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、モノ(メタ)アクリレート、及びポリエステルポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0024】
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリスエトキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートおよびカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0025】
ジ(メタ)アクリレートの具体例としては、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッドシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッドシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロイルポリエトキシレーテッドビスフェノールA、ジ(メタ)アクリロイルポリプロポキシレーテッドビスフェノールA、ジ(メタ)アクリロイル水添ビスフェノールA、ジ(メタ)アクリロイルポリエトキシレーテッド水添ビスフェノールA、ジ(メタ)アクリロイルポリプロポキシレーテッド水添ビスフェノールA、ビスフェノキシフルオレンエタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物(付加数;2〜5)のジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,11−ウンデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,13−トリデカンジオールジ(メタ)アクリレートおよび1,14−テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0026】
モノ(メタ)アクリレートの具体例としては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−エチル−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチル(メタ)アクリレート、2−イソブチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチル(メタ)アクリレートシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性リン酸(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、2−エチル−ヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルオキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性クレゾール(メタ)アクリレート、ノニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アダマンチルオキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリブチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジブチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリブチレングリコール(メタ)アクリレートおよびブトキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0027】
ポリエステルポリ(メタ)アクリレートの具体例としては、フタル酸、コハク酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テレフタル酸、アゼライン酸、アジピン酸などの多塩基酸と、エチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの多価アルコールと、(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応で得られる化合物が挙げられる。
【0028】
上記(B)成分の中で、硬化物の機械物性向上の点で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロイルポリエトキシレーテッドビスフェノールA、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性リン酸(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートなどが好ましい。
【0029】
本発明において、(B)成分の使用割合は、硬化性組成物を低粘度化して塗布作業性を良好にするために(A)成分、(B)成分の合計100質量%を基準として20質量%以上が好ましく、硬化性組成物を低収縮性の観点から、80質量%以下が好ましい。さらに下限については30質量%以上が特に好ましく、上限については70質量%以下が特に好ましい。
【0030】
(B)成分の含有量の下限値が20質量%以上の場合には、得られる組成物の液粘度が低くなり、基材への塗工作業性が優れる。また、その上限値が80質量%以下の場合には、組成物の硬化収縮率の低減効果が優れて発現し、かつ得られる硬化物の可とう性が優れる。
(B)成分は1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0031】
(C)成分
(C)成分は本発明の硬化性組成物を活性エネルギー照射により効率よく硬化させるための成分である。
【0032】
(C)成分としては、例えば、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン及びメチルベンゾイルホルメートが挙げられる。
【0033】
これらの中で、硬化性組成物の硬化性及び光透過層の難黄変性の点で、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン及び1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトンが好ましい。
(C)成分は1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0034】
本発明において、(C)成分の使用割合は本発明における(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましい。(C)成分が0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上で、硬化性組成物の空気雰囲気中での硬化性が良好である。また、(C)成分が10質量部以下、好ましくは8質量部以下で、硬化性組成物の深部硬化性並びに光透過層の難黄変性及び膜厚安定性が良好である。
(D)成分
(D)成分は、得られる硬化性組成物を、例えば紫外線によって硬化させた直後の硬化物の、400nm程度の光に対する透過率を一時的に落とさないための成分である。
【0035】
(D)成分としては、例えばピロガロール、カテコールが挙げられる。中でもピロガロールが汎用性、組成物に対する溶解性の観点で好ましい。(D)成分は、1種を単独で、又は2種を併用して用いることができる。
【0036】
本発明において、(D)成分の使用割合は本発明における(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.001〜3質量部であることが好ましい。(D)成分が0.001質量%以上、好ましくは0.01質量部以上で、本硬化性組成物を紫外線で硬化した直後の400nm程度の光に対する透過性が良好となる。また、(D)成分が3質量%以下、好ましくは1質量%以下で、(D)成分の硬化性組成物への溶解性が良好とある。
硬化性組成物
本発明の硬化性組成物は前述の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含有する。
【0037】
本発明においては、本発明の特性が損なわれない範囲で、硬化性組成物中に、例えば、熱重合開始剤、(D)成分以外の酸化防止剤、光安定剤、光増感剤、熱可塑性樹脂、スリップ剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、無機フィラー、有機フィラー及び表面有機化処理した無機フィラー等の公知の添加剤を適宜配合することができる。
【0038】
前記の酸化防止剤や光安定剤を配合する場合の配合量は特に限定されないが、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.001〜5質量部が好ましく、0.01〜3質量部がより好ましい。
硬化物
本発明の硬化性組成物の硬化方法としては、例えば、活性エネルギー線が挙げられる。
【0039】
活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、X線、紫外線及び可視光線が挙げられる。
【0040】
本発明においては、高温高湿条件下においても本硬化物の膜厚変化を小さくするために、硬化物を得る際に、硬化性組成物を90%以上の反応率となるよう硬化させることが好ましい。反応率が90%以上、より好ましくは93%以上、更に好ましくは95%以上で、光透過層中に残存する未反応の単量体や光重合開始剤が経時的に揮発することを抑制でき、光透過層の膜厚の減少を抑制できる傾向にある。
【0041】
硬化性組成物を硬化させる際の反応率を90%以上とするための活性エネルギー線の照射条件としては、例えば、活性エネルギー線として紫外線を使用した場合、積算光量を500mJ/cm以上、好ましくは1,000mJ/cm以上、より好ましくは2,000mJ/cm以上とすることができる。
【0042】
硬化性組成物の反応率を測定する方法としては、例えば、赤外分光法により(メタ)アクリロイル基の残存量を測定する方法、光透過層の弾性率、Tg等の物理特性の飽和度から測定する方法及びゲル分率により架橋度合いを測定する方法が挙げられる。
【0043】
上記方法の中で、硬化物中に残存する膜厚減少の原因となる残渣を定量しやすい点で、ゲル分率を測定する方法が好ましい。ゲル分率の測定方法としては、例えば、硬化物を粉砕し、溶剤で未硬化成分を抽出後、乾燥させて、その質量変化によりゲル分率を測定する方法が挙げられる。
【0044】
硬化物の形成方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ブラシコート法等の公知の塗工方法で本硬化性組成物を基材に塗工し、硬化性組成物の塗膜を形成する。
【0045】
上記で得られた塗膜は、上記活性エネルギー線により硬化される。
【0046】
上記の塗膜に活性エネルギー線を照射する雰囲気としては、空気中又は窒素、アルゴン等の不活性ガス中のいずれでもよいが、製造コストの点で空気中が好ましい。
光情報記録媒体
本発明の硬化性組成物の硬化物は、支持基体上に情報記録層を有し、この情報記録層上に光透過層を有し、この光透過層を通して記録光及び再生光の少なくとも一方が入射するように使用される光情報記録媒体の光透過層に用いることができる。
【0047】
本発明に使用される支持基体としては、例えば、金属、ガラス、セラミックス、紙、木材、熱可塑性樹脂及びこれらの複合材料が挙げられる。これらの中で、従来の光ディスク製造プロセスを利用できる点で、メチルメタクリレート系樹脂、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン等の熱可塑性樹脂が好ましい。
【0048】
本発明においては、支持基体の片面に情報記録層が積層されている。
【0049】
情報記録層の材料としては特に限定されず、読み取り専用型媒体、相変化型記録媒体、ピット形成タイプ記録媒体、光磁気記録媒体等に適用可能な材料を目的に応じて選択することができる。
【0050】
情報記録層の材料としては、例えば、Au、Ag、Ag・Pd・Cu合金、Ag・In・Te・Sb合金、Ag・In・Te・Sb・Ge合金、Al、Al・TI合金、Ge・Sb・Te合金、Ge・Sn・Sb・Te合金、Sb・Te合金、Tb・Fe・Co合金及び色素が挙げられる。
【0051】
本発明においては、必要に応じて情報記録層の少なくとも一方の側に、情報記録層の保護やレーザー光の反射率を変化させるといった光学的効果を目的として、SIN、ZnS、SIO等の誘電体層を設けることができる。
【0052】
支持基体上に情報記録層を形成する方法としては、スパッタリング法等の公知の方法が挙げられる。
【0053】
本発明においては情報記録層の上に光透過層が積層されている。
【0054】
本発明に使用される光透過層の厚みは0.5μm〜0.3mmが好ましく、1μm〜0.2mmがより好ましく、1.5μm〜0.15mmが更に好ましい。光透過層の厚みが0.5μm以上で光情報記録媒体の表面を十分に保護できる傾向にあり、0.3mm以下で光情報記録媒体の反りを抑制しやすい傾向にある。
【0055】
また、情報記録層上への記録及び再生のために400nm程度のレーザー光に対する透明性を有していることが好ましい。
【0056】
本発明における硬化性組成物を上記の光情報媒体の光透過層に用いる場合、ダストやゲル物等の異物を除去するために、5μm以上好ましくは1μm以上の異物を除去できるろ過フィルターを用いてろ過することが好ましい。
【0057】
ろ過フィルターの素材としては、例えば、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン及びナイロンが挙げられる。
【0058】
本発明における硬化性組成物を上記の光情報媒体の光透過層に用いる場合、光透過層に気泡が存在しても読み取り又は書き込みエラーの原因となるため、本硬化性組成物は予め真空、超音波振動若しくは遠心回転条件下、又はその組み合わせの条件下において、脱気を行うことが好ましい。
【0059】
本発明における硬化性組成物を上記の光情報媒体の光透過層に用いる場合、本硬化性組成物の25℃における粘度としては、厚み0.1mmの光透過層を形成する場合は600〜5,000mPa・sが好ましい。
【0060】
本発明の光情報記録媒体は、高密度用に情報記録層と半透明記録層の2層を使用することができる。この場合、情報記録層と半透明記録層は一定の厚みの透明な中間層(0.025mm厚程度を介して張りあわせて使用することができる。この場合、中間層として本硬化性組成物の硬化物を使用することができる。この場合、中間層を形成する際の本硬化性組成物の25℃における粘度は100〜1,000mPa・sが好ましい。
【0061】
光情報媒記録媒体には、光透過層の上に擦り傷防止や汚れ防止等を目的として、ハードコート層を設けることができる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明する。尚、以下における「部」は「質量部」を意味する。また、実施例及び比較例における評価項目及びその評価方法を以下に示す。
(1)透過率(単位:%)
評価用光ディスクから光透過層のみを30mm×30mm×100μmの大きさで切り出し、日立ハイテク社製日立レシオビーム分光光度計U−1900を用いて405nm透過率を測定し、下記基準で評価した。
【0063】
(D)成分の添加量が(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.1質量部の場合
○:硬化性組成物を硬化してから、1分以内の405nm透過率が80%以上
×:硬化性組成物を硬化してから、1分以内の405nm透過率が80%未満
(D)成分の添加量が(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.2質量部の場合
○:硬化性組成物を硬化してから、1分以内の405nm透過率が80%以上
×:硬化性組成物を硬化してから、1分以内の405nm透過率が80%未満
(D)成分の添加量が(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.5質量部の場合
○:硬化性組成物を硬化してから、1分以内の405nm透過率が85%以上
×:硬化性組成物を硬化してから、1分以内の405nm透過率が85%未満
【0064】
[合成例1]ウレタンアクリレートUA−1((A)成分)の製造
5リットルの4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート1333g及びジブチル錫ジオクテート0.5gを仕込んでウォーターバスでフラスコ内温が70℃になるように加熱した。次いで、フラスコ内温を70℃に保ち、得られた混合物を撹拌しながら、この混合物中に、多価アルコールとしてポリテトラメチレングリコール「PTG850SN」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製、数平均分子量850)1328g及びN−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシブタナミド198gの均一溶液を、40℃に保温した状態で側管付きの滴下ロートを用いて4時間の等速滴下で加え、更に、同温度で2時間攪拌して反応させた。その後、フラスコ内温を75℃に上げ、フラスコ内温を75℃に保ちながら、2−ヒドロキシエチルアクリレート760g及びハイドロキノンモノメチルエーテル1.8gの均一混合溶液を、滴下ロートを用いて2時間の等速滴下で加え、更に、フラスコ内温を75℃に保ちながら、4時間攪拌してウレタンアクリレートUA−1を得た。
【0065】
[実施例1]
(1)硬化性組成物の調製
(A)成分として上記合成例1で得たウレタンアクリレートUA−1を56部、(B)成分としてトリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート10部、ネオペンチルグリコールジアクリレート6部、及びテトラヒドロフルフリルアクリレート28部、(C)成分として2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン3部、(D)成分としてピロガロール0.2部を混合溶解し、ろ過精度1μmのフィルターでろ過した後、1.3×10Paで脱気して硬化性組成物を得た。
(2)評価用光ディスクの作製
ポリカーボネート樹脂(飽和吸水率:0.15%)を射出成型して光ディスク形状を有する透明円盤状の、表面が鏡面の支持基体(直径12cm、板厚1.1mm及び反り角0度)を作製した。
【0066】
得られた支持基体の片表面に、情報記録層として、スパッタリング法にて、膜厚20nmのAg98PdCu(原子比)合金膜(以下、「銀合金膜」という)を積層した。
【0067】
この銀合金膜上に、上記で調製した硬化性組成物(イ)を、雰囲気温度23℃及び相対湿度50%の環境下で、スピンコーターを用いて塗工した。その後、塗工した面の上方より、Dバルブランプ(フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)製)を用いて、紫外線を積算光量1,000mJ/cm(紫外線光量計「UV−350」(商品名、(株)オーク製作所製)で測定)で照射し、塗膜を硬化して平均膜厚が約100μmの硬化物で構成される光透過層を形成し、支持基体の上に情報記録層及び光透過層が順次積層された評価用光ディスクを作製した。
【0068】
得られた硬化性組成物についての評価結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
表1、2中の略号は以下の化合物を示す。なお、表には硬化性組成物を硬化してから1分後、10分後、1時間後、2時間後の硬化物における波長405nmの光線透過率を記載している。
UA−1:合成例1で得たウレタンアクリレートUA1
TAIC:トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
NPGDA:ネオペンチルグリコールジアクリレート
THFA:テトラヒドロフリフリルアクリレート
IRG−127:2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン
BHT:2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルベンゼン
【0071】
[実施例2〜3及び比較例1〜6]
表1、表2に示す組成の各硬化性組成物を使用したこと以外は実施例1と同様にして評価用光ディスクを作製した。得られた硬化性組成物の評価結果を表1及び2に示す。
【0072】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートから選ばれる(メタ)アクリレート(A)、(A)以外の(メタ)アクリレート(B)、光重合開始剤(C)、並びに式(I)で表される化合物(D)を含有する硬化性組成物。
【化1】

(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1から8のアルコキシル基、またはカルボキシル基を表す。)
【請求項2】
光情報記録媒体用である請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
支持基体上に情報記録層を有し、この情報記録層上に光透過層を有し、この光透過層を通して記録光及び再生光の少なくとも一方が入射するように使用される光情報記録媒体であって、該光透過層が請求項1または2に記載の光透過層用硬化性組成物の硬化物層である光情報媒体。

【公開番号】特開2011−44216(P2011−44216A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193365(P2009−193365)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】