説明

硬化性組成物、液晶シール剤及び液晶表示素子

【課題】液晶に対する汚染性を低減し、配線等により影になる部分であっても、十分な硬化性が得られ、狭額縁化に対応できる硬化性組成物を提供する。
【解決手段】下記成分(A)〜(D):(A)(メタ)アクリレート化合物(B)エポキシ硬化剤(C)オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤(D)エポキシ化合物を含有する硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関する。より詳細には、液晶表示素子用シール剤として有用な硬化性組成物及びそれを用いた液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示セル等の液晶表示素子は、所定の間隔をおいて対向させた二枚の電極付き透明基板の間に液晶を封入して形成したものである。従来、液晶表示セルを製造する際には、まず二枚の電極付き透明基板の一方にスクリーン印刷により熱硬化性シール剤を用いて、液晶を封入する範囲の外周に、液晶注入口を設けたパターンを形成する。次いで、スペーサーを挟んでもう一方の透明基板を対向させてアラインメントを行って二枚の基板を貼り合わせ、加熱して液晶シール剤を硬化させる。次いで、液晶注入口から液晶を注入した後、液晶注入口を封口剤で封止していた。このような方法は、一般に液晶注入方式と呼ばれている。
【0003】
液晶注入方式は、工程数が多く、製造効率が低く、熱歪みによる基板の位置ずれ、ギャップのばらつき、液晶シール剤と基板との密着性が不十分等の問題がある。
【0004】
液晶注入方式の問題点を解決する手段として、現在、液晶滴下方式と呼ばれる工法が案出され、液晶シール剤の硬化には光熱硬化併用法が主流になりつつある。このような液晶滴下方式は、まず、二枚の電極付き透明基板の一方にスクリーン印刷により液晶シール剤で、液晶を封入する範囲の外周となる長方形の枠を形成する。この際、液晶注入口は設けない。次いで、液晶シール剤未硬化の状態で、液晶をこの枠内全面に滴下塗布し、直ちに他方の透明基板を重ね合わせて圧着し、液晶シール剤部分に紫外線を照射して仮硬化する。その後、液晶アニール時に加熱してさらに液晶シール剤を硬化させて液晶セルを製造するものである。
【0005】
液晶滴下方式は、工程数が少なく効率よく液晶セルを製造でき、大型パネルの製造にも適している。また、紫外線による仮硬化を行っているため熱歪みによる基板の位置ずれも防止され、液晶シール剤と基板との密着性も向上する。
【0006】
しかしながら、液晶滴下方式では、未硬化の状態の液晶シール剤と液晶とが接触する段階があるため、液晶シール剤の成分が液晶に溶解して液晶を汚染し、液晶の比抵抗を低下させてしまう不良が発生する問題がある(特許文献1)。
未硬化の液晶シール剤の成分による液晶に対する汚染性の低減、硬化性の向上等を目的として、種々の成分が配合された硬化性組成物が提案されている(例えば、特許文献2〜7)。
【0007】
しかしながら、近年、液晶表示素子の狭額縁化が要請されており、狭額縁化により、液晶シール剤がブラックマトリックスや配線と重なる場合が多くなってきている。この部分では液晶シール剤に紫外線が照射されないため、液晶シール剤に未硬化の部分が残り、これが液晶と接触することにより液晶シール剤成分が溶出し、液晶が汚染されるという問題が生じている。
【0008】
【特許文献1】特開2001−133794号公報
【特許文献2】特開2004−37937号公報
【特許文献3】特開2003−28004号公報
【特許文献4】特開2005−263987号公報
【特許文献5】特開2005−60651号公報
【特許文献6】特開2006−30481号公報
【特許文献7】特開2006−58466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述の問題に鑑みなされたものであり、液晶に対する汚染性を低減し、配線等により影になる部分であっても、十分な硬化性が得られ、狭額縁化に対応できる硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を行い、(メタ)アクリレート化合物、エポキシ硬化剤、オキシムエステル構造を有する高感度の光ラジカル開始剤、及びエポキシ化合物を用いることで、液晶に対する汚染性が低く、かつ、配線等により影になる部分であっても良好な硬化性を示す硬化性組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明は、下記の硬化性組成物、これからなる液晶シール剤、及びこれを用いた液晶表示素子を提供する。
1.下記成分(A)、(B)及び(C):
(A)(メタ)アクリレート化合物
(B)エポキシ硬化剤
(C)オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤
(D)エポキシ化合物
を含有する硬化性組成物。
2.前記(C)オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤が、下記一般式(c−1)で表される上記1に記載の硬化性組成物。
【化2】

(式中、Rは水素原子、フェニル基、又は炭素数1〜10のアルキル基を示し、Rは水素原子、フェニル基、又は炭素数1〜10のアルキル基を示し、Rは置換又は非置換のカルバゾール基、或いはPh−S−Ph−CO−基(Phはフェニル基又はフェニレン基を示す)を示す。)
3.前記(D)エポキシ化合物が、分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物を含有する上記1又は2に記載の硬化性組成物。
4.さらに、(E)部分(メタ)アクリロイル化エポキシ樹脂を含有する上記1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。
5.さらに、(G)無機微粒子を含有する上記1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物。
6.さらに、(H)シランカップリング剤を含有する上記1〜5のいずれかに記載の硬化性組成物。
7.上記1〜6のいずれかに記載の硬化性組成物からなる液晶シール剤。
8.上記7に記載の液晶シール剤を用いて製造された液晶表示素子。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液晶に対する汚染性が低く、かつ、配線等により影になる部分であっても良好な硬化性を示す硬化性組成物を提供できる。
本発明によれば、液晶表示素子を液晶滴下工法によって製造する際に、特に有用な液晶シール剤を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
I.硬化性組成物
本発明の硬化性組成物(以下、本発明の組成物という)は、下記成分(A)〜(I)を含み得る。下記成分のうち、(A)〜(D)は必須成分であり、(E)〜(I)は必要に応じて配合される任意成分である。
(A)(メタ)アクリレート化合物
(B)エポキシ硬化剤
(C)オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤
(D)エポキシ化合物
(E)部分(メタ)アクリロイル化エポキシ樹脂
(F)反応性(メタ)アクリルポリマー
(G)無機微粒子
(H)シランカップリング剤
(I)添加剤
【0014】
本発明の硬化性組成物は、高感度の(C)光ラジカル重合開始剤(オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤)を用いることにより、配線やブラックマトリックスによって紫外線が直接照射されない遮蔽部位の弱い紫外線散乱光であっても(メタ)アクリロイル基の架橋反応が進み、高い耐液晶汚染性を付与することができる。ここで、「高感度」とは、紫外線の吸光係数が大きく、弱い光でもラジカルを発生させることができるということを意味する。
【0015】
1.以下、各成分について説明する。
(A)(メタ)アクリレート化合物
(メタ)アクリレート化合物は、ラジカル重合する成分である。
【0016】
(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2,2,2,−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H,−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3―プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエンルジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等が挙げられる。これらの内、芳香環を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましく使用できる。
このような(メタ)アクリロイル基を有する化合物の市販品としては、例えば、VR−77LC(昭和高分子(株)社製)、EB3700(ダイセルサイテック(株)社製)等が挙げられる。
【0017】
本発明の組成物中における成分(A)の配合量は、組成物全体を100重量%としたときに、好ましくは0.1〜90重量%、より好ましくは1〜80重量%、特に好ましくは5〜60重量%である。成分(A)の配合量が上記0.1〜90重量%の範囲を逸脱すると、紫外線を照射したときに適度な硬度が得られず熱による位置ずれが起こりやすくなる可能性がある。
【0018】
(B)エポキシ硬化剤
エポキシ硬化剤は、エポキシ基を含む化合物を架橋し、接着性や硬度の効果を発現させるために配合される。エポキシ硬化剤としては、酸性化合物、酸発生剤、塩基性化合物又は塩基発生剤等が挙げられる。また、エポキシ硬化剤としては、硬化剤自体がエポキシ基と架橋反応を行い、架橋したポリマー中に取り込まれる「潜在型エポキシ硬化剤」を使用することが好ましい。
潜在性エポキシ硬化剤としては、公知のものが使用できるが一液型で粘度安定性が良好な配合物を与えることができる点からは、有機酸ジヒドラジド化合物、イミダゾール及びその誘導体、ジシアンジアミド、芳香族アミン等が好ましい。これらは単独で用いても組み合わせて用いてもよい。
【0019】
これらのうち、潜在型エポキシ硬化剤としては、アミン系潜在型硬化剤であって、かつ、その融点又は環球法(JISK2207に準拠)による軟化点温度が、100℃以上であるものがより好ましい。
【0020】
アミン系潜在型硬化剤を使用すると、アミンの活性水素が、本発明の組成物中の(メタ)アクリロイル基を有する他の成分の(メタ)アクリロイル基に対し熱求核付加反応を起こすため、本発明の組成物の硬化性が向上する。
【0021】
即ち、アミン系潜在型硬化剤は、成分(A)の(メタ)アクリレート化合物及び/又は成分(D)のエポキシ化合物の双方に対して熱反応特性を示すため、両成分の相溶化成分として機能し、液晶表示パネルの表示特性、接着信頼性等のパネルの信頼性が良好となり好ましい。
【0022】
尚、融点又は環球法による軟化点温度の上限値は特に限定されないが、通常は250℃以下である。
アミン系潜在型硬化剤であって、かつ、その融点又は環球法による軟化点温度が100℃以上である潜在型エポキシ硬化剤の具体例としては、例えば、ジシアンジアミド(融点209℃)等のジシアンジアミド類;アジピン酸ジヒドラジド(融点181℃)、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(融点120℃)等の有機酸ジヒドラジド;2,4−ジアミノ―6―[2’−エチルイミダゾリル−(1’)]−エチルトリアジン(融点215℃〜225℃)、2−フェニルイミダゾール(融点137〜147℃)、2−フェニル−4−メチルイミダゾール(融点174〜184℃)、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(融点191〜195℃)等のイミダゾール誘導体等が挙げられる。
【0023】
また、本発明に使用される潜在性エポキシ硬化剤は、水洗法、再結晶法等により、高純度化処理を行ったものを使用することが好ましい。
【0024】
上記アミン系潜在型硬化剤の市販品の例としては、例えば、アミキュアVDH、VDH−J、UDH、UDH−J(味の素ファインテクノ(株)社製)等が挙げられる。
潜在型エポキシ硬化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明の組成物中おける成分(B)の配合量は、組成物全体を100重量%としたときに、0.1〜60重量%、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%である。成分(B)の配合量が0.1重量%より少ないとエポキシとの硬化性が不十分であり十分な硬度や接着性が得られないおそれがあると共に、液晶汚染可能性が高くなるおそれがある。また、60重量%より多いと、エポキシと反応しない過剰の硬化剤が、液晶を汚染する可能性が高くなるおそれがある。
【0026】
(C)オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤
本発明で用いる光ラジカル重合開始剤は、オキシムエステル構造を有する化合物である。オキシムエステル構造を有する化合物は、高感度であり、配線やブラックマトリックス等の影となって紫外線が直接照射されない部位であっても、反射光、散乱光、回折光によって本発明の組成物を硬化させることができる。
【0027】
オキシムエステル構造を有する化合物は、下記一般式(c−1)で示される化合物であることが好ましい。
【化3】

【0028】
式(c−1)において、Rは、水素原子、フェニル基、又は炭素数1〜10のアルキル基等であることが好ましい。
は、水素原子、フェニル基、又は炭素数1〜10のアルキル基等であることが好ましい。
は、置換又は非置換のカルバゾール基を含む1価の有機基、Ph−S−Ph−CO−基(Phはフェニル基又はフェニレン基を示す)等であることが好ましい。
【0029】
また、成分(C)として好ましいオキシムエステル構造を有する化合物として、O−アシルオキシム系化合物が挙げられる。O−アシルオキシム系化合物としては、カルバゾール系のO−アシルオキシム型重合開始剤が好ましい。例えば、1−〔9−エチル−6−ベンゾイルカルバゾール−3−イル〕−ノナン−1,2−ノナン−2−オキシム−O−ベンゾアート、1−〔9−エチル−6−ベンゾイルカルバゾール−3−イル〕−ノナン−1,2−ノナン−2−オキシム−O−アセタート、1−〔9−エチル−6−ベンゾイルカルバゾール−3−イル〕−ペンタン−1,2−ペンタン−2−オキシム−O−アセタート、1−〔9−エチル−6−ベンゾイルカルバゾール−3−イル〕−オクタン−1−オンオキシム−O−アセタート、1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾアート、1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−アセタート、1−〔9−エチル−6−(1,3,5−トリメチルベンゾイル)カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾアート、1−〔9−ブチル−6−(2−エチルベンゾイル)カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾアート、1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロピラニルメトキシベンゾイル)カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−アセタート、1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−アセタート、1−〔9−エチル−6−〔2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル〕カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)等を挙げることができる。
これらのO−アシルオキシム化合物のうち、特に1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−アセタート、1−〔9−エチル−6−〔2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル〕カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)が好ましい。
【0030】
オキシムエステル構造を有する化合物の市販品の例としては、例えば、CGI242、OXE01(チバスペシャリティケミカルズ(株)社製)、N−1919((株)アデカ社製)等が挙げられる。
【0031】
成分(C)の光ラジカル重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、適当な増感剤や連鎖移動剤を組み合わせてもよい。光ラジカル開始剤自体に架橋性基を付与したものを使用することもできる。
【0032】
本発明の組成物中における成分(C)の配合量は、組成物全体を100重量%としたときに、0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%である。成分(C)の配合量が0.01重量%より少ないとアクリル基の架橋性が不十分となり十分な硬度や寸法安定性が得られないおそれがあると共に、液晶汚染可能性が高くなるおそれがある。また、20重量%より多いと内部(下部)まで硬化せず同様に液晶汚染可能性が高くなるおそれがある。
【0033】
(D)エポキシ化合物
(D)エポキシ化合物は、1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物であり、加熱により反応し硬化する成分である。(D)成分を配合することにより引っ張り接着強さが向上する。(D)成分としては、例えば、エポキシ基を有する脂肪族化合物、エポキシ基を有する脂環式化合物、エポキシ基を有する芳香族化合物等が挙げられる。エポキシ基を有する芳香族化合物が好ましい。
【0034】
エポキシ基を有する脂肪族化合物の具体例としては、例えば1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類;エポキシ化大豆油;エポキシステアリン酸ブチル;エポキシステアリン酸オクチル;エポキシ化アマニ油;エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
エポキシ基を有する脂肪族化合物の市販品としては、SR−NPG、SR−16H、SR−PG、SR−TPG(以上、阪本薬品工業社製);PG−202、PG−207(以上、東都化成社製);EX−610U、EX−1610−P(以上、ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
【0035】
エポキシ基を有する脂環式化合物の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシシクロへキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
エポキシ基を有する脂環式化合物の市販品としては、セロキサイド2021、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、エポリードGT−300、エポリードGT−301、エポリードGT−302、エポリードGT−400、エポリード401、エポリード403(以上、ダイセル化学工業社製)等が挙げられる。
【0036】
エポキシ基を有する芳香族化合物としては、例えば、主骨格に芳香環構造を有し、エポキシ基を2個以上有する化合物が挙げられる。このような化合物の芳香環構造の例としては、ビスフェノールA型構造、ビスフェノールF型構造、ノボラック型構造、ナフタレン骨格、アントラセン骨格構造、フルオレン骨格等が挙げられる。
【0037】
エポキシ基を有する芳香族化合物の市販品としては、JER806、JER828、YL980(以上、ジャパンエポキシレジン社製);YD−127、YD−128、YDF−170、YDF−175S、YDPN−638、YDCN−701(以上、東都化成社製);EPICLON830、EPICLON850、EPICLON835、EPICLON HP−4032D(以上、DIC社製);等が挙げられる。
【0038】
本発明の組成物中における成分(D)の配合量は、組成物全体を100重量%としたときに、1〜90重量%、好ましくは5〜80重量%、より好ましくは5〜60重量%である。成分(D)の配合量が90重量%を超えると、紫外線を照射したときに適度な硬度が得られず熱による位置ずれが起こりやすくなる可能性がある。
【0039】
(E)部分(メタ)アクリロイル化エポキシ樹脂
部分(メタ)アクリロイル化エポキシ樹脂は、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂に対して、(メタ)アクリル酸をエステル化反応させて得られる部分エステル化エポキシ(メタ)アクリレート樹脂である。
部分(メタ)アクリロイル化エポキシ樹脂は、光照射によりラジカル重合し得るアクリル基を有しており、これが紫外線照射によって他のラジカル重合性成分と架橋反応するため、その後の加熱時に樹脂が低粘度化して液晶に溶出することを防止する効果がある。
【0040】
部分(メタ)アクリロイル化エポキシ樹脂は、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂に対して、そのエポキシ樹脂のエポキシ基に対して30〜80%当量、好ましくは40〜70%当量の(メタ)アクリル酸をエステル化反応させて得られる部分エステル化エポキシ(メタ)アクリレート樹脂又は部分エステル化エポキシ(メタ)アクリレート樹脂であることが好ましい。この合成反応は一般的に知られている方法によって行うことができる。例えば、エポキシ樹脂に所定の当量比のアクリル酸又はメタクリル酸を触媒(例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン等)と、重合防止剤(例えば、メトキノン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フェノチアジン、ジブチルヒドロキシトルエン等)を添加してエステル化反応を行う。
【0041】
得られた部分(メタ)アクリロイル化エポキシ樹脂の(メタ)アクリロイル基の当量の比率が、全当量の30%未満であると、光硬化性が不十分となり、液晶に対する防汚性が悪くなる。また、(メタ)アクリロイル基の当量の比率が全当量の80%を超える場合は、硬化後のガラス基板に対する接着強度が低下してしまう。尚、エポキシ当量はJIS K7236により測定される。
【0042】
部分(メタ)アクリロイル化エポキシ樹脂の合成原料のエポキシ樹脂としては、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有していれば、特に限定されるものではなく、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、N,N−ジグリシジルアニリン、レゾルシノールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロ無水フタル酸ジグリシジルエステル等の一般に製造、販売されているエポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は2種以上のエポキシ樹脂を混合して用いてもよい。本発明で用いられる部分エステル化エポキシアクリレート樹脂又は部分エステル化エポキシメタクリレート樹脂の合成原料のエポキシ樹脂としては、以上のように特に限定されるものではないが、好ましくは樹脂自身の液晶汚染性の低さ及び粘度の低さからビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0043】
部分アクリロイル化エポキシ樹脂の市販品の例としては、例えば、UVA1561(ダイセルサイテック(株)社製)、4HBAGE(日本化成(株)社製)等が挙げられる。
部分アクリル化エポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
本発明の組成物中における成分(E)の配合量は、組成物の固形分を100重量%としたときに、0〜90重量%、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは5〜60重量%である。成分(E)の配合量が上記0〜90重量%の範囲を逸脱すると、紫外線を照射したときに適度な硬度が得られず熱による位置ずれが起こりやすくなる可能性がある。
【0045】
(F)反応性(メタ)アクリルポリマー
反応性(メタ)アクリルポリマーとは、下記式(f−1)で示される構造を有し、1以上の反応性基を有する、数平均分子量が1,000〜100,000の化合物である。ここで数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した、ポリスチレン換算の数平均分子量をいう。反応性基としては、(メタ)アクリル基、エポキシ基、水酸基、カルボン酸基、アミノ基等が挙げられる。
【化4】

式中、R11は、特に限定されず有機基を示し、mは、1〜2,000の整数を示し、R12、R13は、(メタ)アクリル基、エポキシ基、水酸基、カルボン酸基及びアミノ基から選択される1以上の反応性基を含む1価の基を示す。反応性基は、1種のみであってもよいし、複数種を含んでいてもよい。
【0046】
反応性(メタ)アクリルポリマーを配合することによって、未硬化の本発明の組成物による液晶の汚染をより低減することができ、さらに、硬化後の引っ張り接着強さをより向上させることができるため、好適に用いられる。
【0047】
反応性(メタ)アクリルポリマーとしては、(メタ)アクリロイル基含有アクリルポリマーやエポキシ基含有アクリルポリマー、水酸基含有アクリルポリマー等が挙げられ、これらのうち、(メタ)アクリロイル基含有アクリルポリマー及びエポキシ基含有アクリルポリマーが好ましい。
(メタ)アクリル架橋性アクリルポリマーの市販品の例としては、例えば、RC100C、RC200C((株)カネカ社製)、BGV−12(綜研化学(株)社製)等が挙げられる。
エポキシ架橋性アクリルポリマーの市販品の例としては、例えば、UG−4000、UG−4010(東亞合成(株)社製)等が挙げられる。
反応性(メタ)アクリルポリマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
本発明の組成物中における成分(F)の配合量は、組成物全体を100重量%としたときに、0〜70重量%、好ましくは0〜60重量%、より好ましくは0〜50重量%である。成分(F)の配合量が多すぎると十分な強度が得られず、寸法安定性が悪化するおそれがある。
【0049】
(G)無機微粒子
無機微粒子を配合することによって、寸法安定性向上の効果を発現(改善、改良)させることができるため好適に用いられる。
無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、タルク、モンモリロナイト等を主成分とする粒子が挙げられ、シリカ及びアルミナを主成分とする粒子が好ましい。
無機微粒子の形状は、球状、棒状、板状、繊維状、不定形状のいずれであってもよく、また、これらは、中実状、中空状、多孔質状であってもよい。
無機微粒子の数平均粒径は、通常0.001〜10μm、好ましくは0.01〜5μmの範囲である。10μmを超えると、液晶セル製作時のガラス基板貼り合わせのギャップ形成がうまくいかないおそれがある。ここで、無機微粒子の数平均粒径は、レーザー光回折法によって測定する。
【0050】
無機微粒子は、粉体状のものを直接、他の成分に添加・混合してもよいし、溶媒分散液としたものを他の成分に添加・混合して溶剤を留去してもよい。
【0051】
無機微粒子の市販品の例としては、例えば、アドマファインSO−E1、SO−E2、SO−E3、SO−E4、SO−E5((株)アドマテックス社製)、SS01、SS03、SS15、SS35(大阪化成(株)社製)等が挙げられる。
無機微粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
無機微粒子は、シランカップリング剤等によって表面処理されていてもよい。このような表面処理を行うことにより、他の成分との相溶性を向上させることができ、組成物中での分散性や機械的強度を向上させることができる。
【0053】
本発明の組成物中における成分(G)の配合量は、組成物全体を100重量%としたときに、0〜50重量%、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%である。成分(G)の配合量が50重量%より多いと液晶セル製作時のガラス基板貼り合わせのギャップ形成がうまくいかないおそれがある。
【0054】
(H)シランカップリング剤
シランカップリング剤を配合することによって、接着強度の耐久性向上の効果を発現(改善、改良)させることができるため好適に用いられる。
シランカップリング剤としては、エポキシ基を有するもの、(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。
シランカップリング剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
エポキシ基を有するシランカップリング剤の例としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤の市販品の例としては、例えば、SH6040(東レダウコーニング(株)社製)、KBM−403(信越シリコーン(株)社製等が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の例としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤の市販品の例としては、例えば、SZ6030(東レダウコーニング(株)社製)、KBM−503、KBM−5103(信越シリコーン(株)社製等が挙げられる。
【0056】
本発明の組成物中における成分(H)の配合量は、組成物全体を100重量%としたときに、0.001〜15重量%、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。成分(H)の配合量が0.001重量%より少ないと十分な接着耐久性が得られないおそれがある。また、15重量%より多いと液晶汚染可能性が高くなるおそれがある。
【0057】
(I)その他の添加剤
本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の添加物を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、成分(C)以外の光ラジカル開始剤、増感剤、連鎖移動剤、消泡剤、イオン捕捉剤、吸水剤、有機微粒子、レベリング剤、スペーサー等が挙げられる。
【0058】
2.硬化性組成物の製造方法
本発明の組成物は、成分(A)〜(D)、及び必要に応じて、成分(E)〜(I)を容器に入れ、遊星式攪拌機等の攪拌機を用いて十分に混合した後、真空下で脱泡を行うことによって製造できる。
【0059】
3.硬化性組成物の硬化方法・硬化条件
本発明の組成物は、紫外線照射によっても、加熱によっても硬化させることができる。
本発明の組成物を液晶シール剤として使用し、液晶滴下工法を用いる場合には、一般に、紫外線照射した後、さらに加熱することによって硬化させる。
本発明の組成物を硬化させるために用いる光の波長は特に限定されないが、配向膜や液晶へのダメージを考慮して350〜700nmが好ましい。照射線量は、好ましくは500〜10,000mJ/cm、より好ましくは1,000〜3,000mJ/cmである。
熱硬化の温度としては特に限定されないが、好ましくは硬化温度が70℃以上200℃未満、より好ましくは100℃以上150℃未満である。また、硬化時間としては、好ましくは20分以上3時間未満、より好ましくは30分以上2時間未満である。
【0060】
II.液晶シール剤
液晶シール剤は、液晶表示素子の二枚のガラス基板を接着させ、内部を保護すると共に液晶の流出を防止するために用いられる。
本発明の液晶シール剤は、上記本発明の硬化性組成物からなることを特徴とする。従って、本発明の液晶シール剤は、耐液晶汚染性、暗部硬化性、引っ張り接着強さ等を備え、液晶滴下工法による液晶表示素子(液晶表示セル)の製造に有用である。
【0061】
本発明の液晶シール剤の粘度は特に限定されないが、ディスペンス性や形状保存性の観点から、好ましくは10〜1,000Pa・s、より好ましくは100〜500Pa・sである。
【0062】
III.液晶表示素子
本発明の液晶表示素子は、上記本発明の液晶シール剤を用いて製造されることを特徴とする。従って、本発明によれば、耐液晶汚染性、引っ張り接着強さに優れており、長期安定性、信頼性に優れた液晶表示素子が得られる。
【0063】
図1に示す、本発明の液晶表示素子の一実施形態の模式図を参照しながら、本発明の液晶表示素子の構造について説明する。
液晶表示素子1は、図1に示すように、透明電極14、配向膜12、カラーフィルター16が設けられた二枚のガラス基板10の間に、スペーサー18を挟んで、液晶シール剤によって液晶22を保持する構造を有する。
液晶シール剤20によって、二枚のガラス基板10を接着すると同時に、ガラス基板10と液晶シール剤20とで囲まれた空間に液晶22を封入・保持する。図1からわかるように、液晶シール剤20は、液晶22と直接接触するため、未硬化の液晶シール剤20中の成分が液晶22中に溶解することがあると、液晶22の比抵抗を低下させてしまい、液晶表示素子1の長期安定性、信頼性が損なわれる結果となるのである。
本発明の液晶表示素子は、上記本発明の液晶シール剤を用いているため、未硬化の液晶シール剤成分が液晶に溶解することが防止されているため、長期安定性、信頼性に優れている。
【0064】
本発明の液晶表示素子は、液晶滴下方式によって製造されることが好ましい。図2を参照しながら、液晶滴下方式による液晶表示素子の製造工程の概要について説明する。
一方のガラス基板上に、ディスペンサーを用いて、液晶を封入する範囲を囲う液晶シール剤の枠を形成する。液晶シール剤の線幅、膜厚は、それぞれ通常0.1〜5mm、0.1〜20μm程度であり、0.5〜3mm、1〜10μmであることが好ましい。この際用いる液晶シール剤のディスペンサーとしては、SHOTminiSL(武蔵エンジニアリング(株)製)等が挙げられる。
液晶シール剤を硬化させることなく、液晶シール剤の枠の中に液晶を滴下し、気泡等を除去した後、他方のガラス基板を貼り合わせ、2枚のガラス基板を圧着し、液晶を封止する。
次に、紫外線を照射して、液晶シール剤を仮硬化させる。この際に用いる紫外線は、波長200〜700nmのものを用いることが好ましく、配向膜や液晶へのダメージを考慮すると、波長350〜700nmのものを用いることがより好ましい。紫外線の光源としては、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、LED等を用いることが好ましい。
その後、この基板を70〜200℃、好ましくは90〜150℃で、10分〜5時間、好ましくは30分〜2時間加熱して液晶アニールを行うと同時に、液晶シール剤を本硬化させて液晶表示素子を得る。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0066】
実施例1
下記表1の実施例1に示した成分を容器に量り取り、遊星式攪拌機(あわとり練太郎、シンキー社製)を用いて十分に混合した。その後真空下にて脱泡を行い、硬化性組成物を製造した。
【0067】
実施例2〜8及び比較例1〜2
下記表1に示す組成とした以外は、実施例1と同様にして各硬化性組成物を製造した。
【0068】
<硬化物の特性評価>
上記実施例及び比較例で得られた硬化性組成物を硬化させたときの下記特性を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0069】
1.引っ張り接着強さ
硬化性組成物をスライドガラスの中央部に取って、硬化性組成物の周辺に4.5μmのスペーサー粒子を筆で薄く塗布し、もう一つのスライドガラスを十字になるように重ね合わせ、圧着させて均一な厚さとする。これに紫外線を照射(500mW/cm、3000mJ/cm)した後、120℃で1時間放置し、引っ張り接着強度測定用のサンプルとした。このサンプルを引っ張り試験機により接着強度(N/cm)を測定した。
【0070】
2.液晶相転移温度変化
サンプル瓶(内径10mm)に硬化性組成物0.025gを入れた後、液晶(メルク社製MLC−6608)0.075gを入れた。このサンプル瓶の底面から紫外線を照射(3000mJ/cm)した後、120℃で1時間放置した。25℃まで放冷してから、液晶を取り出し、DSC測定を行った(昇温速度2℃/分)。測定された相転移温度と処理していない液晶(ブランク)の相転移温度との差から変化量を求め、下記評価基準に従って評価した。
○:ブランクに対して差が1.0℃以下
△:ブランクに対して差が1.0℃を超え、2.0℃以下
×:ブランクに対して差が2.0℃を超える
【0071】
3.暗部硬化性
スライドガラスの全面を遮光処理したもの(1)と、半分を遮光処理したもの(2)を準備する。(1)の中央部に樹脂組成物をスポット塗布し、(2)を貼り合わせる(このとき、(2)の遮蔽部と非遮蔽部の境界にシール剤の中心が来るようにする)。十分圧着したのち、紫外線を照射(3000mJ/cm)した後、120℃で1時間放置する。2枚のスライドガラスをはがし、非遮蔽部及び遮蔽部末端から1mm内側の部分のIR測定を行い、下記式からアクリル反応率を算出し、下記評価基準に従って評価した。

アクリル反応率={1−(硬化後のアクリル基ピーク面積/硬化後の基準ピーク面積)/(硬化前のアクリル基ピーク面積/硬化前の基準ピーク面積)}×100

○:遮蔽部末端から1mmの部分のアクリル反応率が50%以上
×:遮蔽部末端から1mmの部分のアクリル反応率が50%未満
【0072】
【表1】

【0073】
表1中の市販品は、下記のものを表す。
VR−77LC:昭和高分子(株)社製ビスフェノールA含有エポキシアクリレート
【0074】
UVA1561:ダイセルサイテック(株)社製部分アクリル化エポキシ樹脂、分子量414
【化5】

【0075】
UG−4010:東亞合成(株)社製エポキシ含有アクリルポリマー、分子量2900
【0076】
アミキュアVDH−J:味の素ファインテクノ(株)社製潜在型エポキシ硬化剤
【化6】

【0077】
CGI242:チバスペシャリティケミカルズ(株)製光ラジカル重合開始剤;エタイン、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)
【化7】

【0078】
N−1919:(株)アデカ社製光ラジカル重合開始剤
【化8】

【0079】
OXE01:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製光重合開始剤;1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]
【化9】

【0080】
RC100C:(株)カネカ社製アクリル基含有ポリマー、分子量24000
【化10】

【0081】
YL980:ジャパンエポキシレジン(株)社製ビスフェノールAジグリシジルエーテル
EX1610−P:ナガセケムテックス(株)社製多官能エポキシ樹脂
【0082】
SH6040:東レダウコーニング(株)社製シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
SZ6030:東レダウコーニング(株)社製シランカップリング剤;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
【0083】
KIP150:サートマー社製光ラジカル重合開始剤
【化11】

【0084】
表1の結果から、高感度光ラジカル重合開始剤(成分(C))及びエポキシ化合物(成分(D))を配合した実施例1〜8の硬化性組成物は、優れた暗部硬化性、引っ張り接着強さを示すことがわかる。また、反応性(メタ)アクリルポリマー(成分(F))を配合することにより、液晶相転位温度変化を低く抑えることができ、さらに引っ張り接着強さも改善できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の液晶シール剤は、近年の狭額縁化の要請によって、配線やブラックマトリックス等とが重なる紫外線が直接照射されない部分においても十分硬化するため、基板との密着性が高く、未硬化の液晶シール剤成分による液晶汚染可能性が低減されており、長期安定性に優れた液晶表示素子を提供することができる。
本発明によれば、工程数が少なく効率よく液晶表示素子を製造することができる液晶滴下方式において有用な液晶シール剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の液晶表示素子の断面模式図である。
【図2】液晶滴下工法の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
1 液晶表示素子
10 ガラス基板
12 配向膜
14 透明電極
16 カラーフィルター
18 スペーサー
20 液晶シール剤
22 液晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、(B)及び(C):
(A)(メタ)アクリレート化合物
(B)エポキシ硬化剤
(C)オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤
(D)エポキシ化合物
を含有する硬化性組成物。
【請求項2】
前記(C)オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤が、下記一般式(c−1)で表される請求項1に記載の硬化性組成物。
【化1】

(式中、Rは水素原子、フェニル基、又は炭素数1〜10のアルキル基を示し、Rは水素原子、フェニル基、又は炭素数1〜10のアルキル基を示し、Rは置換又は非置換のカルバゾール基、或いはPh−S−Ph−CO−基(Phはフェニル基又はフェニレン基を示す)を示す。)
【請求項3】
前記(D)エポキシ化合物が、分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物を含有する請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
さらに、(E)部分(メタ)アクリロイル化エポキシ樹脂を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
さらに、(G)無機微粒子を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
さらに、(H)シランカップリング剤を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性組成物からなる液晶シール剤。
【請求項8】
請求項7に記載の液晶シール剤を用いて製造された液晶表示素子。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−227955(P2009−227955A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200166(P2008−200166)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】