説明

硬化性組成物、硬化膜、反射防止膜、及び硬化膜の製造方法

【課題】より屈折率の低い硬化膜が得られる光硬化性組成物、硬化膜の製造方法を提供する。
【解決手段】(A)シリカを主成分とする粒子、(B)分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、(C)水溶性であり、かつ重合性不飽和基を有しない、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が200〜20,000の化合物、及び(D)光重合開始剤を含有する光硬化性組成物を塗布する工程、光照射する工程、及び水に浸漬する工程を含む、硬化膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性組成物及びそれを硬化してなる硬化膜及び硬化膜の製造方法に関する。より詳細には、低屈折率の硬化膜を与える光硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネル、冷陰極線管パネル、プラズマディスプレー等の各種表示パネルにおいて、外光の映りを防止し、画質を向上させるために、低屈折率性、耐擦傷性、塗工性、及び耐久性に優れた硬化物からなる低屈折率層を含む反射防止膜が求められている。
【0003】
反射防止膜は、屈折率の異なる透明薄膜を、1/4波長厚に積層することにより、光学的に表面反射率を低く抑えるものである。反射防止効果の高い反射防止膜を構成するために、より屈折率の低い透明薄膜を形成できる低屈折率膜用材料が求められており、屈折率が低いフッ素原子を含有する樹脂等が広く検討されている。
【0004】
さらに、より低反射率の反射防止膜を提供するために従来よりもさらに低屈折率を有する低屈折率膜用材料が望まれている。そこでアクリル等の樹脂成分よりも空気の屈折率が低いことを利用して、多孔質粒子や中空粒子等の粒子内部に空隙を有する粒子(以下、総称として中空粒子」という。)を用いた技術が知られている(例えば、特許文献1〜3)。
【0005】
一方、いわゆるフィルターとして用いられる多孔質高分子膜の製造方法として、硬化膜作製後に、硬化膜中に存在する水又は有機溶剤に溶解する成分を溶出させて多孔質膜とする技術が知られている(例えば、特許文献4、5)。この技術によって製造される多孔質膜の膜厚は通常200μm程度であり、また、硬化膜作製用組成物には、粒子成分は含まれていない。
【0006】
【特許文献1】特開2003−139906号公報
【特許文献2】特開2002−317152号公報
【特許文献3】特開平10−142402号公報
【特許文献4】特開昭59−62648号公報
【特許文献5】特開平5−271460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、より屈折率の低い硬化膜を製造するための光硬化性組成物、及びそれから硬化膜を製造した後、硬化膜中の特定成分を除去することによって、より屈折率の低い硬化膜を得る方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を行い、シリカを主成分とする粒子、(メタ)アクリレートモノマー、ポリエチレングリコール及び光重合開始剤を含有する光硬化性組成物を硬化させて得た硬化膜を水に浸漬してポリエチレングリコールを溶出させると、硬化膜内にナノオーダーの孔径を有する空隙が形成され、硬化膜がより低屈折率になることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、下記の光硬化性組成物、それを硬化させてなる硬化膜、硬化膜の製造方法を提供する。
1.下記成分(A)〜(D):
(A)シリカを主成分とする粒子
(B)分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(C)水溶性であり、かつ重合性不飽和基を有しない、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が200〜20,000の化合物
(D)光重合開始剤
を含有する光硬化性組成物を塗布する工程、光照射する工程、及び水に浸漬する工程を含む、硬化膜の製造方法。
2.下記成分(A)〜(D):
(A)シリカを主成分とする粒子
(B)分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(C)水溶性であり、かつ重合性不飽和基を有しない、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が200〜20,000の化合物
(D)光重合開始剤
を含有する低屈折率層形成用光硬化性組成物。
3.前記(A)シリカを主成分とする粒子が、中空粒子である上記2に記載の低屈折率層形成用光硬化性組成物。
4.前記(C)の化合物の配合量が、有機溶剤を除く組成物全量を100重量%としたときに、5〜50重量%である上記2又は3に記載の低屈折率層形成用光硬化性組成物。
5.前記(B)分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である上記2〜4のいずれかに記載の低屈折率層形成用光硬化性組成物。
6.さらに(E)有機溶剤を含有する上記2〜5のいずれかに記載の低屈折率層形成用光硬化性組成物。
7.上記1に記載の製造方法によって得られる硬化膜。
8.上記7に記載の硬化膜からなる低屈折率層を含む反射防止膜。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な方法で、より屈折率の低い硬化膜が製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
I.光硬化性組成物
本発明の光硬化性組成物(以下、本発明の組成物という)は、 下記成分(A)〜(F)を含み得る。成分(A)〜(D)は必須成分であり、成分(E)、(F)は必要に応じて添加される任意成分である。
(A)シリカを主成分とする粒子
(B)分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(C)水溶性であり、かつ重合性不飽和基を有しない、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が200〜20,000の化合物
(D)光重合開始剤
(E)有機溶剤
(F)各種添加剤
以下、各成分について説明する。
【0012】
(A)シリカを主成分とする粒子
シリカを主成分とする粒子(以下、「シリカ粒子」という)としては、中実又は中空粒子を用いることができる。また、中実粒子と中空粒子を併用することもできる。当該粒子は低屈折率層の塗膜強度を発現させる機能を有する。また、中空粒子を用いた場合、低屈折率化を図ることができる。さらに、連鎖球状粒子等不定形粒子を用いることで、内部空隙及び表面凹凸によりこれも低屈折率化を図ることができる。
本発明で用いるシリカ粒子としては、公知のものを使用することができ、また、その形状も、球状に限らず、不定形の粒子であってもよい。動的光散乱法で求めたシリカ粒子の数平均粒子径は1〜100nmであることが好ましく、5〜80nmであることがより好ましく、5〜60nmであることがさらに好ましい。
【0013】
さらに、本発明においては、シリカ粒子は、本発明の組成物が硬化する際に、硬化膜内で、後述する(B)分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の重合体と、(C)の化合物とが相分離して、それぞれの大きな塊となるのを妨げ、これらの成分の相分離を小さいサイズに抑制し、ナノオーダーの(C)の化合物の塊が硬化膜内に散在した硬化膜とする機能を有する。
シリカ粒子が存在しない場合には、(C)の化合物が硬化膜内で、より大きな孔径を有する塊を形成し、硬化膜から(C)の化合物を除去すると、より大きな孔径の空隙が生じ、得られる硬化膜のヘイズが高くなる(後記する表2を参照)。
【0014】
本発明で用いるシリカ粒子は、粉体状であってもよいし、分散液であってもよい。
シリカ粒子の分散媒は、水あるいは有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエ−テル類等の有機溶剤を挙げることができ、これらの中で、アルコール類及びケトン類が好ましい。これら有機溶剤は、単独で、又は2種以上混合して分散媒として使用することができる。
シリカを主成分とする中実球状粒子の市販品としては、例えば、コロイダルシリカとして、日産化学工業(株)製 商品名:メタノールシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、MEK−ST−S、MEK−ST−L、IPA−ZL、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL等を挙げることができる。また、不定形粒子としては、日産化学工業(株)製 商品名:スノーテックス−PS−M、PS−S、PS−SO、UP、OUP、芙蓉化学工業(株)製 商品名:PL−1、PL−2、PL−3、PL−3H等を挙げることができる。また、中空粒子としては、触媒化成工業(株)製 商品名:JX1008SIV、JX1009SIV、JX1010SIV、JX1011SIV等を挙げることができる。
【0015】
また、これらコロイダルシリカ表面に化学修飾等の表面処理を行ったものを使用することができ、例えば分子中に1個以上のアルキル基を有する加水分解性ケイ素化合物又はその加水分解物を含有するもの等を反応させることができる。このような加水分解性ケイ素化合物としては、トリメチルメトキシシラン、トリブチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、1,1,1―トリメトキシ−2,2,2−トリメチル−ジシラン、ヘキサメチル−1,3−ジシロキサン、1,1,1−トリメトキシ−3,3,3−トリメチル−1,3−ジシロキサン、α−トリメチルシリル−ω−ジメチルメトキシシリル−ポリジメチルシロキサン、α−トリメチルシリル−ω−トリメトキシシリル−ポリジメチルシロキサンヘキサメチル−1,3−ジシラザン等を挙げることができる。また、分子中に1以上の反応性基を有する加水分解性ケイ素化合物を使用することもできる。分子中に1以上の反応性基を有する加水分解性ケイ素化合物は、例えば反応性基としてNH基を有するものとして、尿素プロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等、OH基を有するものとして、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3アミノトリプロピルメトキシシラン等、イソシアネート基を有するものとして3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等、チオシアネート基を有するものとして3−チオシアネートプロピルトリメトキシシラン等、エポキシ基を有するものとして(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等、チオール基を有するものとして、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。好ましい化合物として、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0016】
シリカ粒子は、重合性不飽和基を含む有機化合物によって表面処理がなされたものであってもよい。かかる表面処理により、後述する(B)の(メタ)アクリレートモノマーと共架橋化することができ、耐擦傷性が向上する。本発明で用いる特定有機化合物、及び特定有機化合物によるシリカ粒子の表面処理方法については、特開平9−100111号公報に記載されている。
【0017】
本発明の組成物中における(A)成分の配合量は、有機溶剤以外の組成物全量に対して通常10〜70重量%配合され、20〜70重量%が好ましく、30〜65重量%がさらに好ましい。10重量%未満では屈折率が高くなり十分な反射防止効果が得られないおそれがあり、70重量%以上では成膜性が悪化するおそれがある。
尚、(A)シリカ粒子の量は、固形分を意味し、粒子が溶剤分散ゾルの形態で用いられるときは、その配合量には溶剤の量を含まない。
【0018】
(B)分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「(メタ)アクリレート化合物」ということがある)は、本発明の組成物を硬化して得られる硬化膜の形状を保持し、硬化膜及びそれを用いた反射防止膜の耐擦傷性を高める機能を有する。
【0019】
(メタ)アクリロイル基を1個含有する化合物としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらの市販品としては、アロニックス M−101、M−102、M−111、M−113、M−114、M−117(以上、東亜合成(株)製);ビスコート LA、STA、IBXA、2−MTA、#192、#193(大阪有機化学(株)製);NK エステル AMP−10G、AMP−20G、AMP−60G(以上、新中村化学工業(株)製);ライトアクリレート L−A、S−A、IB−XA、PO−A、PO−200A、NP−4EA、NP−8EA(以上、共栄社化学(株)製);FA−511、FA−512A、FA−513A(以上、日立化成工業(株)製)等が挙げられる。
【0020】
1個の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を添加することにより、下地ハードコートとの密着性を改善することができる。具体的には、上記化合物のうち、(メタ)アクリロイルモルホリン、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン等が挙げられる。これらの化合物うち(メタ)アクリロイルモルホリン、ベンジル(メタ)アクリレートが特に好ましい。これらの化合物の市販品としては、例えばMMDOL30、MEDOL30、MIBDOL30、CHDOL30、MEDOL10、MIBDOL10、MIBDOL10、CHDOL10、ビスコート150、ビスコート160(以上、大阪有機化学工業(株)製)、ACMO(以上、(株)興人製)等を挙げることができる。
【0021】
(メタ)アクリロイル基を2個以上含有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(以下「EO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(以下「PO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加物、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、フェノールノボラックポリグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート等を例示することができる。これらの多官能性モノマーの市販品としては、例えば、SA1002(以上、三菱化学(株)製)、ビスコート195、ビスコート230、ビスコート260、ビスコート215、ビスコート310、ビスコート214HP、ビスコート295、ビスコート300、ビスコート360、ビスコートGPT、ビスコート400、ビスコート700、ビスコート540、ビスコート3000、ビスコート3700(以上、大阪有機化学工業(株)製)、カヤラッドR−526、HDDA、NPGDA、TPGDA、MANDA、R−551、R−712、R−604、R−684、PET−30、GPO−303、TMPTA、THE−330、DPHA、DPHA−2H、DPHA−2C、DPHA−2I、D−310、D−330、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475、T−1420、T−2020、T−2040、TPA−320、TPA−330、RP−1040、RP−2040、R−011、R−300、R−205(以上、日本化薬(株)製)、アロニックスM−210、M−220、M−233、M−240、M−215、M−305、M−309、M−310、M−315、M−325、M−400、M−6200、M−6400(以上、東亞合成(株)製)、ライトアクリレートBP−4EA、BP−4PA、BP−2EA、BP−2PA、DCP−A(以上、共栄社化学(株)製)、ニューフロンティアBPE−4、BR−42M、GX−8345(以上、第一工業製薬(株)製)、ASF−400(以上、新日鐵化学(株)製)、リポキシSP−1506、SP−1507、SP−1509、VR−77、SP−4010、SP−4060(以上、昭和高分子(株)製)、NKエステルA−BPE−4(以上、新中村化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0022】
尚、本発明の組成物には、これらのうち、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物が好ましく、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物がより好ましい。かかる2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物としては、上記に例示されたトリ(メタ)アクリレート化合物、テトラ(メタ)アクリレート化合物、ペンタ(メタ)アクリレート化合物、ヘキサ(メタ)アクリレート化合物等の中から選択することができ、これらのうちペンタエリスリトールヒドロキシトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートが特に好ましい。上記の化合物は、各々1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
また、これら(メタ)アクリレート化合物はフッ素を含んでいてもよい。このような化合物の例として、パーフルオロ−1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタフルオロオクタン−1,6−ジ(メタ)アクリレート、オクタフルオロオクタンジオールと2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートとの付加、トリアクリロイルヘプタデカフルオロノネニルペンタエリスリトール(LINC−3A、共栄社化学製)物等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0024】
本発明の組成物中における(B)成分の配合量については、特に制限されるものではないが、有機溶剤を除く組成物全量に対して通常5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは10〜35重量%である。添加量が5重量%未満となると、得られる硬化膜の耐擦傷性が不十分となる場合があるためであり、一方、添加量が50重量%を超えると、得られる硬化膜の屈折率が高くなり、十分な反射防止効果が得られない場合があるためである。
【0025】
(C)分子量200以上で重合性不飽和基を有しない水溶性の化合物(以下、「水溶性化合物」ということがある)
水溶性化合物は、本発明の組成物を硬化させた硬化膜を水に浸漬した際に水に溶解して硬化膜から除去される成分である。水溶性化合物が硬化膜から除去されることにより、ナノオーダーの孔径を有する空隙が形成され、これによって硬化膜の屈折率を下げることができる。
【0026】
水溶性化合物の分子量は200以上であることが必要である。それは分子量が200未満では化合物の沸点が低くなり、本発明の組成物の塗膜形成時の加熱工程で、低沸点の化合物は揮発して膜中に残らないため、水に浸漬してもナノオーダーの孔を形成することができない。上述の通り、その分子量は200以上であることが必要であり、200〜20,000の範囲内であることが好ましく、400〜4,000の範囲内であることがより好ましい。なお、本発明の分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を言う。
【0027】
水溶性化合物は、25℃で、5g/水100g以上の水溶性を有している必要があり、10g/水100g以上であることが好ましく、15g/水100g以上であることがより好ましい。5g/水100g未満では、硬化膜を水に浸漬した際に十分溶出されず、屈折率を下げるという本発明の効果が得られないおそれがある。
【0028】
水溶性化合物の具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール等が挙げらる。
【0029】
本発明の組成物における成分(C)の配合量は、有機溶剤を除く組成物全量を100重量%に対して、通常5〜50重量%の範囲内、好ましくは10〜40重量%の範囲内、より好ましくは10〜30重量%である。5重量%未満では、得られる硬化膜の屈折率の低下が不十分となるおそれがあり、50重量%を超えると、膜の強度が低下するおそれがある。
【0030】
(D)光重合開始剤
本発明で用いる光重合開始剤とは、活性エネルギー線の照射により活性種を発生する化合物をいい、活性種としてラジカルを発生する光ラジカル発生剤等が挙げられる。
尚、活性エネルギー線とは、活性種を発生する化合物を分解して活性種を発生させることのできるエネルギー線と定義される。このような活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等の光エネルギー線が挙げられる。ただし、一定のエネルギーレベルを有し、硬化速度が速く、しかも照射装置が比較的安価で、小型である点で、紫外線を使用することが好ましい。
【0031】
光ラジカル発生剤の例としては、例えばアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、3−メチルアセトフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(BTTB)、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジル、又はBTTBとキサンテン、チオキサンテン、クマリン、ケトクマリン、その他の色素増感剤との組み合わせ等を挙げることができる。
【0032】
これらの光重合開始剤のうち、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン等が好ましく、さらに好ましくは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン等を挙げることができる。
【0033】
本発明の組成物中における成分(D)の配合量は特に制限されるものではないが、有機溶剤を除く組成物全量を100重量%としたときに、通常0.01〜15重量%の範囲内、好ましくは0.1〜10重量%の範囲内、より好ましくは0.5〜8重量%の範囲内である。配合量が0.01重量%未満であると、硬化反応が不十分となり耐擦傷性が低下する場合があるためである。一方、配合量が15重量%を超えると、硬化物の屈折率が増加し反射防止効果が低下したり、耐擦傷性が不十分となる場合がある。
【0034】
(E)有機溶剤
本発明の組成物は、必要に応じて、有機溶剤を含有していてもよい。このような有機溶剤としては、上記(A)シリカを主成分とする粒子の分散液における分散媒や、均一な塗膜を形成するために粘度を調整するために添加される有機溶剤が挙げられる。具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルアセテート、メチルアミルケトン等のエステル類、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、t−ブタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0035】
本発明の組成物中における成分(E)有機溶剤の配合量は特に制限されるものではないが、有機溶剤を除く組成物全量100重量部に対し、100〜100,000重量部の有機溶剤を添加するのが好ましい。この理由は、添加量が100重量部未満又は100,000重量部以上となると、塗布性が悪化し反射防止膜に適した光学薄膜を得ることができない。
【0036】
(F)その他の添加剤
本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて、光増感剤、重合禁止剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、無機充填剤、顔料、染料等を適宜配合できる。
【0037】
2.本発明の組成物の製造方法
本発明の組成物は、上記(A)シリカを主成分とする粒子、上記(B)(メタ)アクリレート、上記(C)水溶性化合物及び(D)光重合開始剤、並びに、必要に応じて(F)有機溶剤、及び(F)添加剤をそれぞれ添加して、室温又は加熱条件下で混合することにより調製することができる。具体的には、ミキサ、ニーダー、ボールミル、三本ロール等の混合機を用いて、調製することができる。
【0038】
3.本発明の組成物の塗布(コーティング)方法
本発明の組成物は反射防止膜の低屈折率層を形成する用途に好適であり、反射防止膜の基材としては、例えば、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ、メラミン、トリアセチルセルロース、ABS、AS、ノルボルネン系樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、スレート等を挙げることができる。これら基材の形状は板状、フィルム状又は3次元成形体でもよく、コーティング方法は、通常のコーティング方法、例えばディッピングコート、スプレーコート、フローコート、シャワーコート、ロールコート、スピンコート、刷毛塗り等を挙げることができる。
【0039】
4.本発明の組成物の硬化方法
本発明の組成物は、放射線(光)によって硬化させることができる。その線源としては、組成物をコーティング後短時間で硬化させることができるものである限り特に制限はないが、例えば、赤外線の線源として、ランプ、抵抗加熱板、レーザー等を、また可視光線の線源として、日光、ランプ、蛍光灯、レーザー等を、また紫外線の線源として、水銀ランプ、ハライドランプ、レーザー等を、また電子線の線源として、市販されているタングステンフィラメントから発生する熱電子を利用する方式、金属に高電圧パルスを通じて発生させる冷陰極方式及びイオン化したガス状分子と金属電極との衝突により発生する2次電子を利用する2次電子方式を挙げることができる。また、アルファ線、ベータ線及びガンマ線の線源として、例えば、60Co等の核分裂物質を挙げることができ、ガンマ線については加速電子を陽極へ衝突させる真空管等を利用することができる。これら放射線は1種単独で又は2種以上を同時に又は一定期間をおいて照射することができる。
【0040】
本発明の組成物の硬化条件については特に制限されるものではないが、例えば活性エネルギー線を用いた場合、露光量を0.01〜10J/cm2の範囲内の値とするのが好ましい。この理由は、露光量が0.01J/cm2未満となると、硬化不良が生じる場合があるためであり、一方、露光量が10J/cm2を超えると、硬化時間が過度に長くなる場合があるためである。
また、このような理由により、露光量を0.05〜5J/cm2の範囲内の値とするのがより好ましく、0.1〜3J/cm2の範囲内の値とするのがより好ましい。
さらに酸素による重合阻害を防ぐために硬化雰囲気を不活性ガス雰囲気とすることが望ましい。不活性ガスとは、ヘリウム、アルゴン、窒素、二酸化炭素等が挙げられる。これらの不活性ガスの雰囲気としては、残存酸素濃度が5000ppm以下となることが好ましく、さらに好ましくは1000ppm以下、特に好ましくは100ppm以下である。残存酸素濃度が5000ppmを超えると硬化不良が生じることがある。
【0041】
また、本発明の組成物を、加熱して硬化させる場合には、30〜200℃の範囲内の温度で、1〜180分間加熱するのが好ましい。このように加熱することにより、基材等を損傷することなく、より効率的に耐擦傷性に優れた反射防止膜を得ることができる。
また、このような理由から、50〜180℃の範囲内の温度で、2〜120分間加熱するのがより好ましく、80〜150℃の範囲内の温度で、5〜60分間加熱するのがさらに好ましい。
【0042】
II.(C)の化合物が除去された本発明の硬化膜の製造方法
成分(C)の化合物が除去された本発明の硬化膜の製造方法(以下、本発明の方法という)は、本発明の組成物を塗布する工程、光照射する工程及び水に浸漬する工程を含むことを特徴とする。
本発明の組成物を用いて硬化膜を作製する工程は特に限定されず、前述したような従来公知の方法によって行うことができる。この工程で得られた硬化膜は、成分(C)の化合物を除去する前の硬化膜である。
硬化膜を水に浸漬する工程は、硬化膜中の(C)水溶性化合物を水で溶出・除去してナノオーダーの孔径を有する空隙を生じさせる工程である。
【0043】
硬化膜の水への浸漬は、例えば、10cm×15cm四方の硬化フィルム1枚を25℃程度の純水1Lに吊るし、撹拌子等の撹拌手段を用いて、又は用いないで、室温付近で、2分〜1時間撹拌を行う。。
【0044】
III.硬化膜
本発明の硬化膜は、上記本発明の方法によって製造されたものであり、成分(C)を除去することにより、除去前に比べて最低反射率が大きく低下する。最低反射率の低下の大きさは、成分(C)の配合量に依存しており、成分(C)が多く配合されている場合には、除去前後での最低反射率の差は大きくなる。
また、本発明の硬化膜は、成分(C)を除去することにより、光線透過率が向上する。
本発明の硬化膜は、低い最低反射率を有し、かつ高い光線透過率を有することにより、反射防止膜の低屈折率層として用いた場合に、非常に優れた反射防止効果及び視認性が得られる。
【0045】
IV.反射防止膜
本発明の反射防止膜は、上記本発明の方法で製造された硬化膜(成分(C)の化合物を除去した硬化膜)からなる低屈折率層を含む。さらに、本発明の反射防止膜は、典型的には、低屈折率層の下に、高屈折率層、ハードコート層、帯電防止層及び基材を含むことができる。
図1に、かかる反射防止膜10の模式図を示す。図1に示すように、基材12の上に、ハードコート層14、高屈折率層16及び低屈折率層18が積層されている。
このとき、基材12の上に、ハードコート層14を設けずに、直接、高屈折率層16を形成してもよい。
また、高屈折率層16と低屈折率層18の間、又は高屈折率層16とハードコート層14の間に、さらに、中屈折率層や帯電防止層(何れも図示せず。)を設けてもよい。
【0046】
(1)低屈折率層
低屈折率層は、前記本発明の組成物を硬化して得られる硬化膜を水に浸漬して(C)水溶性化合物を除去して得られた硬化膜から構成される。樹脂組成物の構成等については、上述の通りであるため、ここでの具体的な説明は省略するものとし、以下、低屈折率層の屈折率及び厚さについて説明する。
【0047】
(i)屈折率
本発明の反射防止膜の低屈折率層を構成する、成分(C)を除去した後の硬化膜の屈折率(Na−D線の屈折率、測定温度25℃)は、通常1.45以下であり、好ましくは1.20〜1.43であり、より好ましくは1.20〜1.40である。成分(C)を除去することにより、成分(C)除去前の硬化膜よりも屈折率が低くなる。これは、成分(C)を除去することによって硬化膜内にナノオーダーの孔径を有する空隙が生じ、溶媒又は空気等の硬化膜を構成する成分よりも屈折率が低い物質によってこの空隙が占められるからである。
尚、低屈折率膜を複数層設ける場合には、そのうちの少なくとも一層が上述した範囲内の屈折率の値を有していればよく、従って、その他の低屈折率膜は1.45を超えた値であってもよい。
【0048】
また、低屈折率層を設ける場合、より優れた反射防止効果が得られることから、高屈折率層との間の屈折率差を0.05以上の値とするのが好ましい。この理由は、低屈折率層と、高屈折率層との間の屈折率差が0.05未満の値となると、これらの反射防止膜層での相乗効果が得られず、却って反射防止効果が低下する場合があるためである。
従って、低屈折率層と、高屈折率層との間の屈折率差を0.1〜0.5の範囲内の値とするのがより好ましく、0.15〜0.5の範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0049】
(ii)厚さ
また、低屈折率層の厚さについても特に制限されるものではないが、例えば、50〜300nmであることが好ましい。この理由は、低屈折率層の厚さが50nm未満となると、下地としての高屈折率膜に対する密着力が低下する場合があるためであり、一方、厚さが300nmを超えると、光干渉が生じて反射防止効果が低下する場合があるためである。
従って、低屈折率層の厚さを50〜250nmとするのがより好ましく、60〜200nmとするのがさらに好ましい。
尚、より高い反射防止性を得るために、低屈折率層を複数層設けて多層構造とする場合には、その合計した厚さを50〜300nmとすればよい。
【0050】
(2)高屈折率層
高屈折率層を形成するための硬化性組成物としては、特に制限されるものでないが、被膜形成成分として、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂、シアネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、シロキサン樹脂等の一種単独又は二種以上の組み合わせを含むことが好ましい。これらの樹脂であれば、高屈折率層として、強固な薄膜を形成することができ、結果として、反射防止膜の耐擦傷性を著しく向上させることができるためである。
しかしながら、通常、これらの樹脂単独での屈折率は1.45〜1.62であり、高い反射防止性能を得るには十分で無い場合がある。そのため、高屈折率の無機粒子、例えば金属酸化物粒子を配合することがより好ましい。また、硬化形態としては、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化できる硬化性組成物を用いることができるが、より好適には生産性の良好な紫外線硬化性組成物が用いられる。
【0051】
高屈折率層の厚さは特に制限されるものではないが、例えば、50〜30,000nmであることが好ましい。この理由は、高屈折率層の厚さが50nm未満となると、低屈折率層と組み合わせた場合に、反射防止効果や基材に対する密着力が低下する場合があるためであり、一方、厚さが30,000nmを超えると、光干渉が生じて逆に反射防止効果が低下する場合があるためである。
従って、高屈折率層の厚さを50〜1,000nmとするのがより好ましく、60〜500nmとするのがさらに好ましい。
また、より高い反射防止性を得るために、高屈折率層を複数層設けて多層構造とする場合には、その合計した厚さを50〜30,000nmとすればよい。
尚、高屈折率層と基材との間にハードコート層を設ける場合には、高屈折率層の厚さを50〜300nmとすることができる。
【0052】
(3)ハードコート層
本発明の反射防止膜に用いるハードコート層の構成材料については特に制限されるものでない。このような材料としては、シロキサン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の一種単独又は二種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0053】
また、ハードコート層の厚さについても特に制限されるものではないが、1〜50μmとするのが好ましく、5〜10μmとするのがより好ましい。この理由は、ハードコート層の厚さが1μm未満となると、反射防止膜の基材に対する密着力を向上させることができない場合があるためであり、一方、厚さが50μmを超えると、均一に形成するのが困難となる場合があるためである。
【0054】
(4)基材
本発明の反射防止膜に用いる基材の種類は特に制限されるものではないが、例えば、ガラス、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース樹脂(TAC)等からなる基材を挙げることができる。これらの基材を含む反射防止膜とすることにより、カメラのレンズ部、テレビ(CRT)の画面表示部、あるいは液晶表示装置におけるカラーフィルター等の広範な反射防止膜の利用分野において、優れた反射防止効果を得ることができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
【0056】
製造例1
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(商品名:PET−30、日本化薬社製)95部、イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)4部、イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)1部、メチルイソブチルケトン70部、メチルエチルケトン30部を混合し、均一になるまで撹拌し、ハードコート用組成物とした。上記ハードコート用組成物をトリアセチルセルロース(TAC)基材上に12.5ミルのバーコーターで塗布し、80℃のオーブンに1分間入れ乾燥を行った後、高圧水銀灯で500mJ/cm照射して硬化を行い、6μm厚のハードコート付きフィルムを作製した。
【0057】
実施例1
(1)光硬化性組成物の製造
下記表1に示す割合で成分(A)〜(E)を茶褐色瓶に入れ室温で30分間撹拌し組成物を得た。
【0058】
(2)水浸漬処理前の硬化膜の作製
上記製造例1で作製した6μm膜厚のハードコートが形成されたTAC基材上に固形分濃度が4.2%の上記組成物を3ミルのバーコーターを用いて塗工した。塗工後、80℃で2分間乾燥を行い、窒素ボックスにて窒素のパージを2分間行った。この後80mW/cm2の高圧水銀灯を用い300mJ/cmを2回照射し硬化を行った。
【0059】
(3)水浸漬処理後の硬化膜の作製
水浸漬後のフィルムは80℃のオーブン中で1時間乾燥を行い、十分に膜内の水分を除去してから反射率の測定を行った。
【0060】
実施例2〜3及び比較例1
表1に示す組成とした以外は実施例1と同様にして光硬化性組成物、水浸漬処理前の硬化膜及び水浸漬処理後の硬化膜を作製した。
【0061】
実施例1〜3及び比較例1で製造した硬化膜の特性を下記のように評価した。
(a)最低反射率(%)
得られた反射防止膜の反射率を、反射分光計を用いて測定した。最低反射率の値を表1に示す。
【0062】
(b)ヘイズ
得られた反射防止膜について、カラーヘーズメーターでヘーズを測定した。結果を表1に示す。
【0063】
(c)光線透過率(%)
得られた反射防止膜について、カラーヘーズメーターで光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
表1の結果から、水浸漬処理後の硬化膜は、水浸漬処理前の硬化膜に比べて、反射率が低くなっており、また、光線透過率が高くなっていることがわかる。これに対し、成分(C)を含有していない比較例1では、水浸漬処理前後で、光線透過率は高くなっているが、最低反射率は変化していないことがわかる。
【0066】
実施例4、及び比較例2、3
表2に示した組成の光硬化性組成物を、表2に示した膜厚となるように、TAC基材上に直接塗布した以外は実施例1と同様にして水浸漬処理後の硬化膜を得た。得られた硬化膜のヘイズ及び光線透過率を測定した。結果を表2に示す。
【0067】
【表2】

【0068】
表2の結果から、成分(A)シリカ粒子を含有しない比較例2では、膜厚が100nmと薄いためヘイズは比較的小さいが、光線透過率は低いことがわかる。実施例4では膜厚が300nmであってもヘイズが小さいが、比較例3では、硬化膜が白濁しており、光線透過率も低いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の光硬化性組成物によれば、屈折率及び反射率が非常に低い硬化膜を形成することができる。それ故、特に反射防止膜の低屈折率層形成用材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態による反射防止膜の断面図である。
【符号の説明】
【0071】
10 反射防止膜
12 基材
14 ハードコート層
16 高屈折率層
18 低屈折率層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(D):
(A)シリカを主成分とする粒子
(B)分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(C)水溶性であり、かつ重合性不飽和基を有しない、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が200〜20,000の化合物
(D)光重合開始剤
を含有する光硬化性組成物を塗布する工程、光照射する工程、及び水に浸漬する工程を含む、硬化膜の製造方法。
【請求項2】
下記成分(A)〜(D):
(A)シリカを主成分とする粒子
(B)分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(C)水溶性であり、かつ重合性不飽和基を有しない、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が200〜20,000の化合物
(D)光重合開始剤
を含有する低屈折率層形成用光硬化性組成物。
【請求項3】
前記(A)シリカを主成分とする粒子が、中空粒子である請求項2に記載の低屈折率層形成用光硬化性組成物。
【請求項4】
前記(C)の化合物の配合量が、有機溶剤を除く組成物全量を100重量%としたときに、5〜50重量%である請求項2又は3に記載の低屈折率層形成用光硬化性組成物。
【請求項5】
前記(B)分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である請求項2〜4のいずれか1項に記載の低屈折率層形成用光硬化性組成物。
【請求項6】
さらに(E)有機溶剤を含有する請求項2〜5のいずれか1項に記載の低屈折率層形成用光硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の製造方法によって得られる硬化膜。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化膜からなる低屈折率層を含む反射防止膜。


【図1】
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【公開番号】特開2008−212832(P2008−212832A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54007(P2007−54007)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】