説明

硬化性組成物及びそれからなる弾性ローラ

電子写真方式の画像形成装置に組み込まれるローラにおいて、導電性シャフト周りの設けられた少なくとも1層の弾性層とその外周に設けられた少なくとも1層の被覆層からなる弾性ローラが他部材と接触しながら回転する際に、弾性層と被覆層の界面での剥がれが発生することが問題となっていた。(A)分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を有し、かつアルコキシ基及び/またはエポキシ基を有さない有機重合体、(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)下記一般式(1)M−OR (1)(M:ケイ素原子、アルミニウム原子、チタン原子から選ばれる原子、R:アルキル基、アルケニル基等の有機基)に示す構造を含有する化合物及び/またはエポキシ基を含有する化合物を必須成分とする硬化性組成物を使用することにより、前記課題を解決するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、硬化性組成物が硬化して得られる弾性体が、他の材料との接着性を付与することを目的とした硬化性組成物、または電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ、これらの複合OA機器等の電子写真方式を利用した画像形成装置に組み込まれる弾性ローラの硬化性組成物の技術分野に関するものである。
【背景技術】
前記技術分野におけるローラは、帯電ローラ、現像ローラ及び定着ローラ等の用途で使用されており、それぞれの用途に対して、要求特性は異なっている。これらのローラはその要求特性に合わせて、導電性シャフト周りに、複数の樹脂層が設けられる。例えば、他部材と接触する際のニップ幅を得ることを目的として、低硬度の弾性層が設けられる。その弾性層の外層には、弾性層に含まれる低分子成分のローラ表面へのブリードの抑制、あるいはローラ表面の粘着性の抑制など、それぞれの用途に応じた被覆層が設けられる。このようにして、各層にそれぞれ違った特性を持たせることにより、様々な目的に応じたローラが提案されているが、複数層が設けられるローラは、各層の界面における接着性が非常に重要になってくる。なぜなら、該ローラが他部材と接触しながら、回転する場合には、ローラ表面に接触による摩擦が発生し、接着が弱い層界面において、被覆層の剥がれが発生するためである。
近年、電子写真方式のプリンターやコピー機などのOA機器の高速化が急激に進んでおり、OA機器に内蔵されるローラの芯金と弾性層、弾性層と被覆層等の界面での接着性の向上が求められるようになってきている。OA機器の高速化、つまり1分間当りの印刷枚数が増えるということは、ローラの1分間当りの回転数も多くなることで、ローラ表面には従来よりも強いストレスがかかり、十分に接着していない層界面から剥がれが生じることにより、画像不良が発生する。該問題を解決するために、芯金と弾性層の接着性を向上する方法として、エポキシ基を含有した有機ケイ素化合物を弾性層に添加する方法(特開平11−231706)、また、弾性層と被覆層の接着性を向上する方法として、弾性層上にカップリング剤を設けた後、被覆層を形成する方法(特開平9−292767)がそれぞれ提案されている。このように弾性層と被覆層の接着性を向上する技術が既に提案されているが、OA機器の高速化が進む上で、従来の方法よりさらなる接着性の向上が期待されていた。
【発明の開示】
本発明は、かかる実状を鑑みてなされたものであり、導電性シャフトの周りに少なくとも1層の弾性層とその外周に形成された少なくとも1層の被覆層からなる電子写真方式で使用されるローラが、他部材と接触しながら回転する際に発生する層界面での剥がれを改善した硬化性組成物及びそれからなる弾性ローラを提供するものである。
本発明者らは、前記課題を解決するために、鋭意研究を重ね、(A)分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を有し、かつアルコキシ基、エポキシ基より選ばれた少なくとも1以上の基を有さない有機重合体、(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)下記一般式(1)
M−OR (1)
(M:ケイ素原子、アルミニウム原子、チタン原子から選ばれる原子、R:炭化水素基)
に示す構造、エポキシ基構造より選ばれた少なくとも1以上の構造を含有する化合物からなる硬化性組成物を用いて、該硬化性組成物からなる弾性層とその外周に設けられる被覆層との接着性を向上させることにより、弾性層と被覆層の界面の剥がれを抑制できることを見出し、本発明に至った。
1つの実施形態では、前記(A)成分と(D)成分の重量配合比を、90.0:10.0〜99.7:0.3の範囲とすることが好ましい。
1つの実施形態では、前記(D)成分が分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を有することが好ましい。
1つの実施形態では、前記(D)成分のアルケニル基に含まれる二重結合上の3つの置換基が水素からなることが好ましい。
1つの実施形態では、前記(B)成分と分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を有する(D)成分を予め反応させ、(E)成分を合成することが好ましい。
1つの実施形態では、(A)成分の重合体中、ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基が分子末端に含有されてなることが好ましい。
1つの実施形態では、前記(A)成分の有機重合体がオキシアルキレン系重合体であることが好ましい。
1つの実施形態では、前記硬化性組成物に、(F)導電性付与剤を添加することが好ましい。
1つの実施形態では、前記硬化性組成物が硬化して得られるゴム弾性体のASKER−C硬度が20〜80°の範囲であることが好ましい。
1つの実施形態では、導電性シャフトの周りに少なくとも1層の前記硬化性組成物からなる弾性層を設けることが好ましい。
1つの実施形態では、前記弾性層の外周面上に少なくとも1層の被覆層を設けることが好ましい。
1つの実施形態では、前記被覆層がウレタン結合を有する化合物からなることが好ましい。
1つの実施形態では、前記弾性層表面にプライマー処理した後、被覆層を形成することが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
本発明の(A)成分の、分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を有し、かつアルコキシ基、エポキシ基より選ばれた少なくとも1以上の基を有さない有機重合体とは、必須官能基として、少なくとも1個のアルケニル基を持ち、アルコキシ基とエポキシ基の少なくともどちらかの基を有さないもので、両方の基を有さない場合もある。その他の官能基としては、任意の官能基から選ぶことができ、特に制限されるものではない。
(A)成分のアルケニル基とは、ヒドロシリル化反応に対して活性のある炭素−炭素2重結合を含む基であれば特に制限されるものではない。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の脂肪族不飽和炭化水素基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環式不飽和炭化水素基、メタクリル基等が挙げられる。好適には、下記一般式(2)、
C=C(R)−CH− (2)
(式中、Rは水素原子またはメチル基)で示されるアルケニル基が、硬化性に優れる点で特に好ましい。また、(A)成分は、上記ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を重合体末端に導入されていることが望ましい。このようにアルケニル基が重合体末端にあるときは、最終的に形成される硬化物の有効網目鎖量が多くなり、高強度のゴム状硬化物が得られやすくなるなどの点から好ましい。
また、(A)成分の主鎖は任意の重合体から選ぶことができ、特に制限されるものではない。例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリクロロプレン、ポリオキシアルキレン、ポリシロキサン、ポリスルフィド、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステルなどが挙げられる。これらの重合体は単独でも併用でも良く、また共重合体としても使用することができる。特に、オキシアルキレン単位からなる重合体は、硬化前に低粘度であるため扱いやすく、また、弾性ローラの用途で使用する場合、硬化物が特に柔軟な構造を持つため、肉厚を薄くしても十分にその弾性効果を発揮するという点で、好ましい。
また、本発明の硬化性組成物の(A)成分として使用される前記オキシアルキレン系重合体とは、主鎖を構成する単位のうち30%以上、好ましくは50%以上がオキシアルキレン単位からなる重合体をいい、オキシアルキレン単位以外に含有される単位としては、重合体製造時の出発物質として使用される、活性水素を2個以上有する化合物、たとえば、エチレングリコール、ビスフェノール系化合物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどからの単位が挙げられる。なお、オキシアルキレン単位は、一種類である必要はなく、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどからなる共重合体(グラフト重合体も含む)であってもよい。電気特性の環境安定性において、主鎖骨格として比較的吸水性の低いオキシプロピレン単位、またはオキシブチレン単位からなる重合体であることが好ましく、コスト面を考慮すると、オキシプロピレン単位からなる重合体が、特に好ましい。
上記のようなポリオキシアルキレン系重合体の分子量としては、数平均分子量(GPC法、ポリスチレン換算)で500〜50,000であることが、その取扱やすさ、硬化後のゴム弾性の点で好ましい。数平均分子量が500未満の場合、この硬化性組成物を硬化させた場合に充分な機械的特性(ゴム硬度、伸び率)などが得られにくくなる。一方、数平均分子量が50,000以上の場合、分子中に含まれるアルケニル基1個あたりの分子量が大きくなったり、立体障害で反応性が落ちたりするため、硬化が不充分になることが多く、また、粘度が高くなりすぎて加工性が悪くなる傾向にある。
次に、前記(B)成分である硬化剤は、分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物であれば良いが、分子中に含まれるヒドロシリル基の数が多すぎると、硬化後も多量のヒドロシリル基硬化物中に残存しやすくなり、ボイドやクラックの原因となるため、その数を50個以下に調整するのが好ましく、更には、硬化物のゴム弾性の制御や貯蔵安定性を良好にする観点からは、2〜30個に調整することがより好ましい。尚、本発明において、ヒドロシリル基を1個有するとは、Siに結合するHを1個有することを意味する。よって、SiHの場合にはヒドロシリル基を2個有することになるが、Siに結合するHは異なるSiに結合する方が、硬化性とゴム弾性の点から好ましい。
このような硬化剤の分子量は、成形品の加工性を良好にする観点からは、数平均分子量(Mn)で30,000以下に調整するのが好ましく、更に、上記ベースポリマーとの反応性や相溶性を良好にする観点からはMnで300〜10,000に調整するのがより好ましい。
また、以上の硬化剤は、ベースポリマーの凝集力が硬化剤の凝集力に比べて大きいことを考慮すると、相溶性の点でフェニル基含有変性体を有することが重要であり、入手のし易さの点ではスチレン変性体が好適であり、貯蔵安定性の観点からはα−メチルスチレン変性体が好適である。
(C)成分であるヒドロシリル化触媒については、特に制限はなく、任意のものが使用できる。具体的に例示すれば、塩化白金酸、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;白金ービニルシロキサン錯体{例えば、Pt(ViMeSiOSiMeVi)、Pt〔(MeViSiO)};白金−ホスフィン錯体{例えば、Pt(PPh、Pt(PBu};白金−ホスファイト錯体{例えば、Pt〔P(OPh)、Pt〔P(OBu)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒も挙げられる。
白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh、RhCl、Rh/Al、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiCl、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)等が好ましい。触媒量としては特に制限はないが、(A)成分中のアルケニル基1molに対して10−1〜10−8molの範囲で用いるのがよい。ヒドロシリル化反応を十分に進行させるには、10−2〜10−6molの範囲で用いるのがさらに好ましい。また、ヒドロシリル化触媒は、一般に高価で腐食性であり、また、水素ガスを大量に発生して硬化物が発泡してしまう場合があるので10−1mol以上用いない方がよい。
次に(D)成分について説明する。
下記一般式(1)
M−OR (1)
(M:ケイ素原子、アルミニウム原子、チタン原子から選ばれる原子、R:炭化水素基)
に示す構造、エポキシ基構造より選ばれた少なくとも1以上の構造を含有する化合物とは、分子中に前記M−OR及びエポキシ基の少なくとも一方の構造を含有する化合物であり、M−ORとエポキシ基の構造を両方含有した化合物であってもよい。
下記一般式(1)
M−OR (1)
(M:ケイ素原子、アルミニウム原子、チタン原子から選ばれる原子、R:炭化水素基)
に示す構造とは、分子中にケイ素原子、アルミニウム原子、チタン原子から選ばれる少なくとも1つの原子(一般式(1)のMに相当)を含有し、かつ該原子にアルコキシ基が結合している化合物であれば特に限定されるものではない。アルコキシ基を形成しているアルキル基等の炭化水素基(一般式(1)のRに相当)としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トルイル基等が挙げられる。こうした化合物の具体例としては、市販されているシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤が挙げられる。
また、(D)成分のエポキシ基を含有する化合物というのは、

の構造を持つ官能基であれば、特に制限はなく、具体的には、グリシジル基、脂環式エポキシ基、脂肪族エポキシ基などのエポキシ基が挙げられる。1分子当りのエポキシ基の数は増加するにつれて、エポキシ基を含有する化合物である(D)成分の貯蔵安定性が悪くなるため、1分子中に1〜4個のエポキシ基を含有することが好ましく、さらに1〜2個のエポキシ基を含有することが好ましい。
前記(A)成分と(D)成分の重量配合比は、90.0:10.0〜99.7:0.3であることが好ましく、さらに、95.0:5.0〜99.5:0.5の場合、(A)〜(C)成分を必須成分とする硬化性組成物からなる弾性層の優れた弾性回復力と、(D)成分の添加による弾性層と被覆層との接着性向上という両方の特徴を好適に発揮することができる。前記(D)成分の添加量が0.3重量部以下の場合は、弾性層と被覆層の間での接着性が不十分なため好ましくなく、逆に10.0重量部以上の場合は、圧縮歪みが大きくなるため好ましくない。
弾性層と被覆層の接着性をさらに向上させるために、(D)成分は、下記一般式(1)
M−OR (1)
(M:ケイ素原子、アルミニウム原子、チタン原子から選ばれる原子、R:炭化水素基)
に示す構造、エポキシ基構造より選ばれた少なくとも1以上の構造を含有し、かつ分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を含有することが好ましい。これは(D)成分のアルケニル基が(B)成分のヒドロシリル基と反応すること、及びアルコキシ基及び/またはエポキシ基が被覆層と反応あるいは相互作用することにより接着力が向上したものと考えられる。
(D)成分のアルケニル基とは、ヒドロシリル化反応に対して活性のある炭素−炭素2重結合を含む基であれば特に制限されるものではない。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の脂肪族不飽和炭化水素基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環式不飽和炭化水素基、メタクリル基等が挙げられる。(B)成分と全く反応しない(D)成分は、該硬化性組成物から得られる弾性体からブリードし、他部材を汚染する可能性があり、また、(B)成分のヒドロシリル基と化学的に結合していないため、被覆層との接着性も劣る。ヒドロシリル化反応のアルケニル基上に置換基があると、ヒドロシリル化反応は遅くなり、(B)成分と反応しない(D)成分が多くなるため、アルケニル基に含まれる二重結合上の3つの置換基が水素からなることが特に好ましい。例えば、ビニル基、アリル基などが挙げられる。
(E)成分は、(B)成分と分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を有する(D)成分を予め反応させた化合物であり、反応には触媒として、(C)成分のヒドロシリル化触媒が必須である。このように、予め(B)成分と(D)成分を反応させた(E)成分を合成し、後処理工程で未反応の(D)成分を除去する方が、未反応の(D)成分を弾性体からのブリードを抑制することができる点で好ましい。また、合成した(E)成分は、さらに(A)成分と(C)成分と反応させる必要があるため、液状である方が、配合する上で好ましい。このような性状を得るために、(E)成分の原料となる(D)成分は、分子中にアルケニル基を1つだけ有するものが、(B)成分と架橋構造を構築しないため、特に好ましい。なお、硬化性組成物として(E)成分を使用する場合、少なくとも2個のヒドロシリル基を含有するように、(B)成分と(D)成分の配合量を調整するか、あるいは(E)、(A)及び(C)成分を必須成分とする硬化性組成物に(B)成分をさらに添加することによって配合量を調整することが、硬化性組成物からなる弾性ローラに十分な弾性を持たせることができるという点で好ましい。
プリンターやコピー機などのOA機器に内蔵されるローラは、導電性〜半導電性の領域で抵抗をコントロールする必要があるため、(A)〜(D)成分を必須成分とする硬化性組成物、あるいは(A)、(C)及び(E)成分を必須成分とする硬化性組成物に、さらに(F)成分として、導電性付与剤を添加する方が好ましい。(F)成分の導電性付与剤としては、カーボンブラックや金属酸化物、金属微粉末、さらには、第4級アンモニウム塩、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基などを有する有機化合物もしくは重合体、エーテルエステルイミド、もしくはエーテルイミド重合体、エチレンオキサイド−エピハロヒドリン共重合体、メトキシポリエチレングリコールアクリレートなどで代表される導電性ユニットを有する化合物、または高分子化合物などの帯電防止剤といった化合物などがあげられる。本発明における(F)成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記カーボンブラックの例としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、オイルブラックなどがあげられる。これらカーボンブラックの種類、粒径等に制限はない。
(F)成分の添加量は、所望の導電特性に応じて調整して添加され、(A)成分の重合体100重量部に対し、0.01〜100重量部、さらには0.1〜50重量部用いることが好ましい。添加量が少なすぎると、発現される導電付与能が不十分であり、また、添加量が多すぎると硬化性組成物の粘度の上昇が大きく作業性が悪くなる恐れがある。また、用いる導電性付与剤の種類あるいは添加量によっては、ヒドロシリル化反応を阻害するものがあるため、導電性付与物質のヒドロシリル化反応に対する影響を考慮する方が好ましい。
本発明では必要に応じて、各種充填剤、各種機能付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、界面活性剤、溶剤を適宜添加してよい。前記充填剤の具体例としては、シリカ微粉末、金属微粉末、炭酸カルシウム、クレー、タルク、酸化チタン、亜鉛華、ケイソウ土、硫酸バリウムなどが挙げられる。
本発明の硬化性組成物には貯蔵安定性を改良する目的で、貯蔵安定性改良剤を使用することができる。この貯蔵安定性改良剤としては、本発明の(B)成分の保存安定剤として知られている通常の安定剤であり、所期の目的を達成するものであればよく、特に限定されるものではない。具体的には、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等を好適に用いることができる。さらに具体的には、2−ベンゾチアゾリルサルファイド、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルアセチレンダイカルボキシレート、ジエチルアセチレンダイカルボキシレート、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ビタミンE、2−(4−モルフォジニルジチオ)ベンゾチアゾール、3−メチル−1−ブテン−3−オール、アセチレン性不飽和基含有オルガノシロキサン、エチレン性不飽和基含有オルガノシロキサン、アセチレンアルコール、3−メチル−1−ブチル−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート、ジエチルフマレート、ジエチルマレエート、ジメチルマレエート、2−ペンテンニトリル、2,3−ジクロロプロペン等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
また、本発明のような電子写真方式を利用した画像形成装置に組み込まれるローラ用途で使用される場合においては、前記硬化性組成物からなる硬化物のASKER−C硬度は、20〜80°であることが好ましく、特に他部材と接触しながら、トナーを搬送する現像ローラに用いられる場合は、30〜70°であることが好ましい。前記範囲より低硬度の領域では、硬度が低すぎるため、圧縮歪みが大きくなり、逆に高硬度の領域では、硬度が高すぎるため、トナーに大きなストレスがかかるため好ましくない。
本発明の硬化性組成物からなる弾性ローラは、導電性シャフトの周りに少なくとも1層の前記硬化性組成物からなる弾性層を形成することによって使用される。ゴムローラの弾性層の形成方法は、特に限定されず、従来公知の各種ローラの成形方法を用いることができる。例えば、中心にSUS製などの導電性シャフトを設置した金型に、組成物を押出成形、プレス成形、射出成形、反応射出成形(RIM)、液状射出成形(LIM)、注型成形などの各種成形法により成形し、適切な温度および時間で加熱硬化させて、導電性シャフトの周りに導電性弾性層を成形する。ここで、本発明における導電性ローラの製造方法としては、弾性層を形成するための硬化性組成物が液状である場合、生産性、加工性の点で液状射出成形が好ましい。この場合、硬化性組成物は、半硬化させた後に、別途後硬化させるプロセスを設けて完全硬化させてもよい。
前記弾性層は表面に粘着性が付与されていることが多いため、弾性層の外周面上に少なくとも1層の被覆層を設けること好ましい。該被覆層は、粘着性の少ない被覆層が好適に用いられる。
被覆層の材料としては、特に制限はないが、他部材と接触しながら回転するローラに使用される場合は、耐磨耗性が必要であるため、耐磨耗性に優れるウレタン結合を有する化合物であることが好ましい。さらに、被覆層は適度な柔軟性を有する必要があり、この観点からはポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート骨格を有する樹脂を主な組成とするウレタン樹脂組成物からなることが好ましく、これらはポリエーテルウレタン、ポリエステルウレタン、ポリカーボネートウレタンのブレンド樹脂、あるいは1分子中にウレタン結合とポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリシロキサンからなる群において選ばれる少なくとも1つの骨格を有するウレタン樹脂組成物であってもよい。
また、表面層を構成する樹脂組成物には抵抗調整、表面形状の調整あるいは導電性弾性層に対する接着性等の観点から、導電性付与剤、各種フィラー等の各種添加剤を必要に応じて添加してもよい。本発明の硬化性組成物からなる弾性層と被覆層との接着性をさらに向上させるために、弾性層表面にプライマー処理した後、被覆層を形成することが好ましい。本発明のプライマーは各種カップリング剤またはエポキシ化合物を含有する任意のプライマーを使用することができる。
本発明の被覆層の形成方法としては特に制限はないが、導電性シャフトの周りに形成された弾性層の外周面上に、被覆層を構成する樹脂組成物をスプレー塗布、ディップ塗布、ロールコート等の方法を用いて所定の厚みに塗布し、所定の温度で乾燥、硬化させることにより、被覆層を形成することができる。具体的には、前記被覆層として使用される樹脂を溶剤に溶かして固形分を5〜20%にしてスプレーあるいはディップ塗布する方法が簡便である。使用する用材としては用いる被覆層の主成分である樹脂が相溶すれば特に制限はなく、具体的には、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、イソプロパノール、水等が例示される。特に、ウレタン樹脂を用いて被覆層を形成する場合、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが相溶性の観点から好ましい。ここで、被覆層の乾燥温度としては、70〜200℃が好ましい。乾燥温度が70℃より低いと乾燥が不十分になる場合があり、200℃より高いと、内層の弾性層の劣化を招く恐れがある。また、被覆層の厚さは、用いる材料、組成及び用途等により適切な値に設定するものであり、特に限定されないが、通常1〜100μmが好ましい。1μmより薄くなると耐磨耗性が低下し、長期間の耐久性が低下する傾向がある。また、100μmより厚いと、弾性層との線膨張率の差に起因してしわが発生しやすくなる、または圧縮歪みが大きくなるなどの問題が発生する傾向がある。被覆層の厚みを調整するために、スプレー法、ディップ法等の方法を数回繰り返し、重ね塗りしてもよい。本発明においては、被覆層溶液の被膜製を改善するために、レベリング剤等の各種添加剤を必要に応じて添加してもよい。
【実施例】
以下に、本発明の非限定的な実施例について説明する。
(実施例1)
アリル末端ポリオキシプロピレン(商品名ACX004−N、鐘淵化学工業製;A成分に相当)500gに対して、カーボンブラック#3030B(三菱化学製;F成分に相当)70gを3本ロールミルで混練した混合物に、ついで、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(商品名CR100、鐘淵化学工業製;B成分に相当)を16g、ビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒(白金含有量3wt%、キシレン溶液;C成分に相当)を350μL、マレイン酸ジメチルを170μL、テトラエトキシシラン(D成分に相当)5gを均一混合した。該硬化性組成物を真空脱泡撹拌装置(シーテック製)で90分間脱泡を行った。この硬化性組成物を金型(内径16mm)内部に直径8mmのSUS製シャフトを配置した該金型に射出し、金型を140℃の環境下で20分間静置して硬化させた。このようにして得られた弾性層ローラのASKER−C硬度を表1に示した。次に、メチルエチルケトンを150gに対して、カーボンブラック#3030B(三菱化学製)12gをビーズミルで混練した混合物に、ついで、ウレタン樹脂溶液(商品名ハイムレンY−258、大日精化製)を100g,N,N−ジメチルホルムアミドを300gに調整することにより被覆層塗布液を得た。前記塗布液をディッピング法により塗布し、140℃で5分間乾燥させた。同様の塗布操作を1回繰り返し、加えて160℃で90分の条件で乾燥させることにより、被覆層を設けた。こうして得られたローラをカラープリンター用カートリッジ(EP−85、キヤノン製)にセットし、カラープリンター(LASER SHOT LBP−2510、キヤノン製)に該カートリッジを組み込み、10000枚画像を出力した後のローラ弾性層と被覆層の剥がれを目視により観察した。剥がれの観察結果を表1に示した。
(実施例2)
アリル末端ポリオキシプロピレン(商品名ACX004−N、鐘淵化学工業製;A成分に相当)500gに対して、#3030B(三菱化学製;F成分に相当)70gを3本ロールで混練した混合物に、ついで、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(商品名CR100、鐘淵化学工業製;B成分に相当)を16g、ビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒(白金含有量3wt%、キシレン溶液;C成分に相当)を350μL、マレイン酸ジメチルを170μL、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート(商品名AL−M、味の素ファインテクノ製;D成分に相当)5gを均一混合した。実施例1と同様の方法により得られた弾性層ローラのASKER−C硬度、ローラ被覆層形成後の弾性層と被覆層の剥がれ試験結果を表1にまとめた。
(実施例3)
アリル末端ポリオキシプロピレン(商品名ACX004−N、鐘淵化学工業製;A成分に相当)500gに対して、#3030B(三菱化学製;F成分に相当)70gを3本ロールで混練した混合物に、ついで、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(商品名CR100、鐘淵化学工業製;B成分に相当)を16g、ビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒(白金含有量3wt%、キシレン溶液;C成分に相当)を350μL、マレイン酸ジメチルを170μL、テトラブトキシチタン(D成分に相当)5gを均一混合した。実施例1と同様の方法により得られた弾性層ローラのASKER−C硬度、ローラ被覆層形成後の弾性層と被覆層の剥がれ試験結果を表1にまとめた。
(実施例4)
アリル末端ポリオキシプロピレン(商品名ACX004−N、鐘淵化学工業製;A成分に相当)495gに対して、#3030B(三菱化学製;F成分に相当)70gを3本ロールで混練した混合物に、ついで、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(商品名CR100、鐘淵化学工業製;B成分に相当)を19g、ビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒(白金含有量3wt%、キシレン溶液;C成分に相当)を430μL、マレイン酸ジメチルを210μL、トリメトキシビニルシラン(D成分に相当)5gを均一混合した。実施例1と同様の方法により得られた弾性層ローラのASKER−C硬度、ローラ被覆層形成後の弾性層と被覆層の剥がれ試験結果を表1にまとめた。
(実施例5)
ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(商品名CR100、鐘淵化学工業製;B成分に相当)16gとトルエン30gを調整した溶液(以下a液とする)を100℃まで昇温し、トリメトキシビニルシラン(D成分に相当)を5g、ビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒(白金含有量3wt%、キシレン溶液;C成分に相当)を150μL、トルエン10gを調整した溶液を撹拌しているa液中に滴下する。5時間撹拌後、トルエン及び未反応のトリメトキシビニルシランを減圧留去し、(E)成分を得た。次に、アリル末端ポリオキシプロピレン(商品名ACX004−N、鐘淵化学工業製;A成分に相当)495gに対して、カーボンブラック#3030B(三菱化学製;F成分に相当)70gを3本ロールミルで混練した混合物に、ついで、前記(E)成分、ビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒(白金含有量3wt%、キシレン溶液;C成分に相当)を280μL、マレイン酸ジメチル140μLを均一混合した。実施例1と同様の方法により得られた弾性層ローラのASKER−C硬度、ローラ被覆層形成後の弾性層と被覆層の剥がれ試験結果を表1にまとめた。
(実施例6)
実施例1と同様の硬化性組成物を用いて得られた弾性層ローラ表面に、A−187(日本ユニカー製)2g、テトラブトキシチタン2g、及びメチルエチルケトン100gから調整したプライマー溶液を、刷毛で均一に塗布し、100℃、3分の条件で乾燥させた。このようにプライマー処理した弾性層ローラを実施例1と同様の方法で、被覆層をディッピング塗布することにより形成し、弾性層と被覆層の剥がれ試験結果を表1にまとめた。
(実施例7)
実施例4と同様の硬化性組成物を用いて得られた弾性層ローラ表面に、A−187(日本ユニカー製)2g、テトラブトキシチタン2g、及びメチルエチルケトン100gから調整したプライマー溶液を、刷毛で均一に塗布し、100℃、3分の条件で乾燥させた。このようにプライマー処理した弾性層ローラを実施例1と同様の方法で、被覆層をディッピング塗布することにより形成し、弾性層と被覆層の剥がれ試験結果を表1にまとめた。
(実施例8)
アリル末端ポリオキシプロピレン(商品名ACX004−N、鐘淵化学工業製;A成分に相当)495gに対して、カーボンブラック#3030B(三菱化学製;F成分に相当)70gを3本ロールミルで混練した混合物に、ついで、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(商品名CR100、鐘淵化学工業製;B成分に相当)を21g、ビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒(白金含有量3wt%、キシレン溶液;C成分に相当)を480μL、マレイン酸ジメチルを240μL、アリルグリシジルエーテル(D成分に相当)5gを均一混合した。実施例1と同様の方法により得られた弾性層ローラのASKER−C硬度、ローラ被覆層形成後の弾性層と被覆層の剥がれ試験結果を表1にまとめた。
(実施例9)
アリル末端ポリオキシプロピレン(商品名ACX004−N、鐘淵化学工業製;A成分に相当)495gに対して、#3030B(三菱化学製;F成分に相当)70gを3本ロールで混練した混合物に、ついで、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(商品名CR100、鐘淵化学工業製;B成分に相当)を21g、ビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒(白金含有量3wt%、キシレン溶液;C成分に相当)を480μL、マレイン酸ジメチルを240μL、4−ビニルシクロヘキセンオキサイド(D成分に相当)5gを均一混合した。実施例1と同様の方法により得られた弾性層ローラのASKER−C硬度、ローラ被覆層形成後の弾性層と被覆層の剥がれ試験結果を表1にまとめた。
(実施例10)
ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(商品名CR100、鐘淵化学工業製;B成分に相当)21gとトルエン30gを調整した溶液(以下a液とする)を100℃まで昇温し、アリルグリシジルエーテル(D成分に相当)を5g、ビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒(白金含有量3wt%、キシレン溶液;C成分に相当)を200μL、トルエン10gを調整した溶液を撹拌しているa液中に滴下する。5時間撹拌後、トルエン及び未反応のアリルグリシジルエーテルを減圧留去し、(E)成分を得た。次に、アリル末端ポリオキシプロピレン(商品名ACX004−N、鐘淵化学工業製;A成分に相当)495gに対して、カーボンブラック#3030B(三菱化学製;F成分に相当)70gを3本ロールミルで混練した混合物に、ついで、前記(E)成分、ビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒(白金含有量3wt%、キシレン溶液;C成分に相当)を280μL、マレイン酸ジメチル240μLを均一混合した。実施例1と同様の方法により得られた弾性層ローラのASKER−C硬度、ローラ被覆層形成後の弾性層と被覆層の剥がれ試験結果を表1にまとめた。
(実施例11)
実施例8と同様の硬化性組成物を用いて得られた弾性層ローラ表面に、A−187(日本ユニカー製)2g、テトラブトキシチタン2g、及びメチルエチルケトン100gから調整したプライマー溶液を、刷毛で均一に塗布し、100℃、3分の条件で乾燥させた。このようにプライマー処理した弾性層ローラを実施例1と同様の方法で、被覆層をディッピング塗布することにより形成し、弾性層と被覆層の剥がれ試験結果を表1にまとめた。
(比較例1)
アリル末端ポリオキシプロピレン(商品名ACX004−N、鐘淵化学工業製;A成分に相当)500gに対して、#3030B(三菱化学製;F成分に相当)70gを3本ロールで混練した混合物に、ついで、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(商品名CR100、鐘淵化学工業製;B成分に相当)を16g、ビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒(白金含有量3wt%、キシレン溶液;C成分に相当)を350μL、マレイン酸ジメチル170μLを均一混合した。実施例1と同様の方法により得られた弾性層ローラのASKER−C硬度、ローラ被覆層形成後の弾性層と被覆層の剥がれ試験結果を表1にまとめた。
【表1】

◎:本試験による剥がれも発生せず、手で剥がそうとしても全く剥がれない。
○:本試験による剥がれが発生していないが、無理やり手で剥がすことは可能。
○△:本試験による剥がれは発生していないが、被覆層に若干のしわが見られる。
×:剥がれている。
【産業上の利用可能性】
本発明の硬化性組成物及びそれからなる弾性ローラを用いれば、電子写真方式のプリンターやコピー機等のOA機器に内蔵されるローラが他部材と接触しながら回転する際に発生する剥がれを抑制することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(D)成分を必須成分としてなる硬化性組成物。
(A)分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を有し、かつアルコキシ基、エポキシ基より選ばれた少なくとも1以上の基を有さない有機重合体
(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物
(C)ヒドロシリル化触媒
(D)少なくとも
下記一般式(1)
M−OR (1)
(M:ケイ素原子、アルミニウム原子、チタン原子から選ばれる原子、R:炭化水素基)
に示す構造、エポキシ基構造より選ばれた少なくとも1以上の構造を含有する化合物。
【請求項2】
前記(A)成分と(D)成分の重量配合比を、90.0:10.0〜99.7:0.3の範囲とすることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記(D)成分が分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を有することを特徴とする請求の範囲第1項〜第2項のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記(D)成分のアルケニル基に含まれる二重結合上の3つの置換基が水素からなることを特徴とする請求の範囲第3項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記(B)成分と分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を有する(D)成分を予め反応させることにより合成した(E)成分、(A)成分及び(C)成分を必須成分としてなる前記請求の範囲第3項〜第4項のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
(A)成分の重合体中、ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基が分子末端に含有されてなる請求の範囲第1項〜第5項のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記(A)成分の有機重合体がオキシアルキレン系重合体であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第6項のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記請求の範囲第1項〜第7項のいずれか1項に記載の硬化性組成物に、(F)導電性付与剤を添加することを特徴とする請求の範囲第1項〜第7項のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記硬化性組成物が硬化して得られる弾性体のASKER−C硬度が20〜80°の範囲であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第8項のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
導電性シャフトの周りに少なくとも1層の、請求の範囲第1項〜第9項のいずれか1項に記載の硬化性組成物からなる弾性層を設けてなる弾性ローラ。
【請求項11】
前記弾性層の外周面上に少なくとも1層の被覆層を設けてなることを特徴とする請求の範囲第10項に記載の弾性ローラ。
【請求項12】
前記被覆層がウレタン結合を有する化合物からなることを特徴とする請求の範囲第11項に記載の弾性ローラ。
【請求項13】
請求の範囲第11項〜第12項のいずれか1項に記載の弾性ローラにおいて、弾性層表面にプライマー処理した後、被覆層を形成することを特徴とする請求の範囲第11項〜第12項のいずれか1項に記載の弾性ローラ。

【国際公開番号】WO2005/054372
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【発行日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515915(P2005−515915)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017658
【国際出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】