説明

硬化性組成物及び光情報媒体

【課題】硬化性に優れ、光情報媒体の反射膜、もしくは記録膜の保護性能に優れ、かつ経時で光透過層が黄変しないという耐光性に優れた硬化性組成物を提供する。
【解決手段】 ウレタン(メタ)アクリレート(A)、特定の(メタ)アクリレート(B)、(C)及び光重合開始剤(D)を含有する硬化性組成物であって、ウレタン(メタ)アクリレート(A)がイソシアネート化合物(a1)、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリラクトンポリオールから選ばれる少なくとも1種の多価アルコール(a2)並びに水酸基含有(メタ)アクリレート(a3)から合成されるウレタン(メタ)アクリレートである硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生専用光ディスク、記録型光ディスク等の光情報媒体の光透過層に好適な硬化性組成物であって、硬化性に優れ、光情報媒体の反射膜、もしくは記録膜の保護性能に優れ、かつ経時で光透過層が黄変しないという耐光性に優れた硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報記録媒体の分野では高密度化に関して様々な研究が進められている。光ディスクの分野においても、動画が記録できる0.6mm厚の基板を貼り合わせた構造のDVDが普及期を迎えている。
【0003】
しかしながら、今後、デジタルハイビジョン放送が広まるにつれ、更なる大容量の光ディスクが必要になると予想される。そこで、表面に情報記録面が形成された支持基体の情報記録面上の光透過層を0.1mm厚とし、レンズ開口数NAが0.85程度で、記録、再生のレーザー光の波長を400nm程度とした高密度光ディスクシステムが提案され、実用化されつつある。
【0004】
この0.1mm厚の光透過層の形成方法としては、液状の紫外線硬化型樹脂をスピンコート法により塗布した後、活性エネルギー線の照射により硬化させて光透過層を形成する方法が開発されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、機械物性に優れ、高密度光ディスクの0.1mm厚の光透過層に使用できる硬化性組成物が開発されている(例えば、特許文献2〜4)。
【0006】
しかしながら、特許文献2〜4に記載の組成物を光透過層に用いた場合、紫外線硬化時の硬化性が悪い、また紫外線硬化時の硬化収縮によって高密度光ディスクの反りが大きくなってしまう、また硬化物が経時変化によって黄変するという問題があった。
【特許文献1】特開2003−85836号公報
【特許文献2】特開平7−62267号公報
【特許文献3】特開平6−145276号公報
【特許文献4】特開平3−265669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、硬化性、硬化物の引張特性、光情報媒体の反射膜もしくは記録膜の保護性能に優れ、かつ経時で光透過層が黄変しないという耐光性に優れた光透過層を有する光情報媒体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)、下式(1)で表される(メタ)アクリレート(B)、下式(2)及び(3)で表される(メタ)アクリレートの少なくとも一方(C)並びに光重合開始剤(D)を含有する硬化性組成物であって、ウレタン(メタ)アクリレート(A)がイソシアネート化合物(a1)、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリラクトンポリオールから選ばれる少なくとも1種の多価アルコール(a2)並びに水酸基含有(メタ)アクリレート(a3)から合成されるウレタン(メタ)アクリレートである硬化性組成物である。
【化1】

【0009】
(Rは水素またはメチル基、Rは炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、mは0〜10の整数を示す。)
【化2】

【0010】
(Rは水素またはメチル基、Rは炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、nは0〜10の整数を示す。
【化3】

【0011】
(Rは水素またはメチル基、Rは炭素数1〜4の2価の炭化水素基、Rは炭素数1〜4の1価の炭化水素基を示し、pは0〜10の整数を示す。
【0012】
また、本発明は表面に情報記録面が形成された支持基体の情報記録面上に光透過層を有し、この光透過層を通して記録光及び再生光の少なくとも一方が入射するように使用される光情報媒体であって、光透過層が前述の硬化性組成物の硬化物である光情報媒体である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の硬化性組成物は、硬化性、硬化物の引張特性、光情報媒体の反射膜もしくは記録膜の保護性能に優れ、かつ経時で光透過層が黄変しないという耐光性に優れた光透過層を有する光情報媒体に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の硬化性組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)(以下、「成分A」という)、式(1)で表される(メタ)アクリレート(B)(以下、「成分B」という)、式(2)及び(3)で表される(メタ)アクリレートの少なくとも一方(C)(以下、「成分C」という)並びに光重合開始剤(D)(以下、「成分D」という)を含有する。
【0015】
本発明の硬化性組成物を構成する成分Aは、イソシアネート化合物(a1)(以下、「成分a1」という)、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリラクトンポリオールから選ばれる少なくとも1種の多価アルコール(a2)(以下、「成分a2」という)並びに水酸基含有(メタ)アクリレート(a3)(以下、「成分a3」という)から合成される。
【0016】
成分Aは、硬化性組成物に低収縮性を付与する成分であり、またその硬化物に強靭性や可とう性を付与するための成分であり、成分a1、成分a2、成分a3から合成される。
【0017】
成分a1としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ビス(4−イソシアナトフェニル)メタン、ビス(3−クロロ−4−イソシアナトフェニル)メタン、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、トリス(4−イソシアナトフェニル)メタン、1,2−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,2−水添キシリレンジイソシアネート、1,4−水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水添テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等のジイソシアネート類が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0018】
なかでも、硬化物に優れた靭性と難黄変性を付与できることから、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,2−水添キシリレンジイソシアネート、1,4−水添キシリレンジイソシアネート、水添テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族骨格のジイソシアネート化合物が好ましい。
【0019】
成分a2としては、例えば、市販されている各種の多価アルコール類が使用可能である。その具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1−メチルブチレングリコール等のポリエーテルポリオール類;ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、3−メチルペンタンジオール、2,4−ジエチルペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類と、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトラヒドロフタル酸等の多塩基酸類またはこれら多塩基酸の酸無水物類との反応によって得られるポリエステルポリオール類;これら多価アルコール類と、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類との反応によって得られるポリカプロラクトンポリオール類等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0020】
これらの中でも、ポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトンポリオール類は、組成物の硬化性が良好となり、得られた硬化物の強伸度バランスに優れることから、硬化物を光情報媒体の光透過層として使用した際の光情報媒体の寸法安定性に優れる。また、得られる光透過層の強伸度バランスを向上させる目的で、成分a2の他に例えば環状ヒドロキシカルボン酸エステルとアンモニア、又は1個の第一級又は第二級アミノ窒素を含む化合物との反応によって得られるアミドポリオール類、具体的にはN−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシブタナミド等を用いてもよい。
【0021】
成分a3としては、具体的には、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基、および分子内に少なくとも1個のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルであればよく、特に限定されない。その具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類や、これらのカプロラクトンの付加物等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。なかでも、低粘度であることから、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0022】
成分Aの合成手法は、特に限定されず、従来から知られるウレタン(メタ)アクリレート合成手法を使用できる。具体的には、例えば、フラスコ内に、2モルのジイソシアネートを仕込み、更にジブチル錫ジラウレート等の公知の触媒を総仕込量に対して50〜300ppmを混合し、フラスコ内温度を40〜60℃に保ちながら、滴下ロートを用いて1モルのジオール化合物を2〜4時間かけて滴下して、ウレタンプレポリマーを得る。その後、得られたウレタンプレポリマー末端に残存するイソシアネート基に、当量のヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルを滴下し、フラスコ内温60〜75℃で付加反応させればよい。
【0023】
本発明において、成分Aの使用割合は、硬化性組成物の低収縮性の観点から、成分A、成分B及び成分Cの合計100質量%を基準として、または後述する成分A〜C以外のエチレン性不飽和化合物(E)(以下、「成分E」ともいう)を含む場合は成分A、成分B、成分C及び成分Eの合計100質量%を基準として20質量%以上が好ましく、硬化性組成物を低粘度化して塗布作業性を良好にするためには80質量%以下が好ましい。さらに下限については30質量%以上が特に好ましく、上限については70質量%以下が特に好ましい。
【0024】
成分Aの含有量の下限値が20質量%以上の場合には、組成物の硬化収縮率の低減効果が十分に発現し、かつ得られる硬化物の可撓性が良好となる傾向にある。また、その上限値が80質量%以下の場合には、得られる組成物の液粘度が低くなり、基材への塗工作業性が良好となる傾向にある。
【0025】
本発明の硬化性組成物を構成する式(1)で表される(メタ)アクリレート(B)は、硬化性組成物の粘度を調節し、硬化物が経時で光透過層が黄色に変色しない耐光性を付与するための成分である。
【0026】
成分Bとしては、例えば、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシメチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。なかでも、低粘度であることから、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、が好ましい。
【0027】
本発明において、成分Bの使用割合は、硬化性組成物の低粘度と耐光性の観点から、成分A、成分B及び成分Cの合計100質量%を基準として、または成分A、成分B、成分C及び成分Eの合計100質量%を基準として5質量%以上が好ましく、硬化性組成物の強伸度バランスの観点から30質量%以下が好ましい。さらに下限については10質量%以上が特に好ましく、上限については25質量%以下が特に好ましい。
【0028】
成分Bの含有量の下限値が5質量%以上の場合には、硬化物の耐光性に効果が十分に発現し、かつ得られる硬化性組成物が低粘度となる傾向にある。また、その上限値が30質量%以下の場合には、得られる組成物の強伸度バランスが良好となる傾向にある。
【0029】
成分Cは、硬化性組成物の粘度を低くし、硬化性組成物の硬化性を向上させるための成分である。
【0030】
本発明では、式(2)で表される化合物及び式(3)で表される化合物の少なくとも一方を使用する。これら一般式で表される化合物の具体的な例としては、式(2)で表される化合物として、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシメチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が揚げられる。
【0031】
また、式(3)で表される化合物として、2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチル(メタ)アクリレート、2−イソブチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
これらは1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。なかでも、低粘度であることから、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0033】
本発明において、成分Cの使用割合は、硬化性組成物の低粘度と硬化性の観点から、成分A、成分B及び成分Cの合計100質量%を基準として、または成分A、成分B、成分C及び成分Eの合計100質量%を基準として10質量%以上が好ましく、硬化性組成物の強伸度バランスの観点から40質量%以下が好ましい。さらに下限については12質量%以上が特に好ましく、上限については30質量%以下が特に好ましい。
【0034】
成分Cの含有量の下限値が10質量%以上の場合には、本硬化性組成物が低粘度となり、かつ硬化性が良好となる傾向にある。また、その上限値が40質量%以下の場合には、得られる組成物の強伸度バランスが良好となる傾向にある。
【0035】
成分Dは本硬化性組成物を活性エネルギー照射により効率よく硬化させるための成分である。
【0036】
成分Dとしては、例えば、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン及びメチルベンゾイルホルメートが挙げられる。
【0037】
これらの中で、本硬化性組成物の硬化性及び本硬化物の難黄変性の点で、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン及び1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。
【0038】
成分Dは単独で、又は二種以上を併用して使用できる。
【0039】
本発明において、成分Dの使用割合は、硬化性組成物の硬化性の観点から、成分A、成分B及び成分Cの合計100質量部に対して、または成分A、成分B、成分C及び成分Eの合計100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、硬化性組成物の強伸度バランスの観点から10質量部以下が好ましい。さらに下限については1質量部以上が特に好ましく、上限については8質量部以下が特に好ましい。
【0040】
成分Dの含有量の下限値が0.1質量部以上の場合には、本硬化性組成物の硬化性が良好となる傾向にある。また、その上限値が10質量部以下の場合には、本硬化性組成物の深部硬化性、本硬化物の難黄変性及び光透過層の膜厚安定性が良好となる傾向にある。
【0041】
本発明に使用する硬化性組成物は、前述した成分A、成分B、成分C、および成分Dを構成成分とするものであるが、本発明の特性を損なわない範囲であれば、必要に応じてそれら成分A〜C以外のエチレン性不飽和化合物(E)を含有させることができる。
【0042】
成分Eとしては、例えば、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、モノ(メタ)アクリレート、及びポリエステルポリ(メタ)アクリレート及びが挙げられる。
【0043】
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリスエトキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0044】
ジ(メタ)アクリレートの具体例としては、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッドシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッドシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシレーテッドビスフェノールA、ジ(メタ)アクリロイルオキシポリプロポキシレーテッドビスフェノールA、ジ(メタ)アクリロイルオキシ水添ビスフェノールA、ジ(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシレーテッド水添ビスフェノールA、ジ(メタ)アクリロイルオキシポリプロポキシレーテッド水添ビスフェノールA、ビスフェノキシフルオレンエタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物(付加数;n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,11−ウンデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,13−トリデカンジオールジ(メタ)アクリレート及び1,14−テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0045】
モノ(メタ)アクリレートの具体例としては、2−エチル−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性リン酸(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、2−エチル−ヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルオキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性クレゾール(メタ)アクリレート、ノニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アダマンチルオキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリブチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジブチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリブチレングリコール(メタ)アクリレート及びブトキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。ポリエステルポリ(メタ)アクリレートの具体例としては、フタル酸、コハク酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テレフタル酸、アゼライン酸、アジピン酸等の多塩基酸、エチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコール及び(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応で得られる化合物が挙げられる。
【0046】
上記成分Eの中で、本硬化物の機械物性向上の点で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性リン酸(メタ)アクリレート、並びにイソシアネート成分としてイソホロンジイソシアネート、多価アルコール成分としてポリカプロラクトンジオール類及びアミドジオール類から選ばれる少なくとも1種、水酸基含有(メタ)アクリレート成分として2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの少なくとも3成分から合成されるウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0047】
本発明において、成分Eの使用割合は、硬化性組成物の低粘度と硬化性の観点から、成分A、成分B、成分C及び成分Eの合計100質量%を基準として5質量%以上が好ましく、硬化性組成物の強伸度バランスの観点から30質量%以下が好ましい。さらに下限については8質量%以上が特に好ましく、上限については20質量%以下が特に好ましい。
【0048】
成分Eの含有量の下限値が5質量%以上の場合には、本硬化性組成物の硬化性が良好となる傾向にある。また、その上限値が30質量%以下の場合には、得られる組成物の強伸度バランスが良好となる傾向にある。
【0049】
本発明において、硬化性組成物は前述の成分A、成分B、成分C、及び成分Dを含有する。
【0050】
本発明においては、本発明の特性が損なわれない範囲で、本硬化性組成物中に、例えば、熱重合開始剤、酸化防止剤や光安定剤、光増感剤、熱可塑性樹脂、スリップ剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、無機フィラー、有機フィラー及び表面有機化処理した無機フィラー等の公知の添加剤を適宜配合することができる。
【0051】
前記の酸化防止剤や光安定剤を配合する場合の配合量は特に限定されないが、それぞれ、成分A、成分B及び成分Cの合計100質量部に対して0.001〜5質量部が好ましく、0.01〜3質量部がより好ましい。
【0052】
硬化性組成物は、ダストやゲル物等の異物の存在による読み取り又は書き込みエラーを防止するために、5μm以上、好ましくは1μm以上の異物を除去できるろ過フィルターを用いてろ過することが好ましい。
【0053】
ろ過フィルターの素材としては、例えば、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン及びナイロンが挙げられる。
【0054】
本発明においては、光透過層に気泡が存在しても読み取り又は書き込みエラーの原因となるため、本硬化性組成物は予め真空、超音波振動若しくは遠心回転条件下、又はその組み合わせの条件下において、脱気を行うことが好ましい。
【0055】
本硬化性組成物は活性エネルギー線を照射することにより硬化させることができる。
【0056】
活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、X線、紫外線及び可視光線が挙げられる。
【0057】
本発明においては、本硬化性組成物は、支持基体上に形成された情報記録面の上に、スピンコート法、スプレーコート法、ブラシコート法等の公知の塗工方法で塗工され、情報記録面上に本硬化性組成物の塗膜が形成される。この塗膜の厚みとしては、硬化後に0.5〜300μmの厚みになるようにすることが好ましい。
【0058】
上記で得られた塗膜は、活性エネルギー線により硬化され、情報記録面上に本硬化物からなる光透過層が形成され、光記録媒体が得られる。
【0059】
上記の塗膜に活性エネルギー線を照射する雰囲気としては、空気中又は窒素、アルゴン等の不活性ガス中のいずれでもよいが、製造コストの点で空気中が好ましい。
【0060】
本発明において、光透過層の厚みは0.5μm以上で光情報媒体の表面を十分に保護できる傾向にあり、300μm以下で光情報媒体の反りを抑制しやすい傾向にある。
【0061】
本発明においては、高温高湿条件下においても光透過層の膜厚変化を小さくするために、本硬化性組成物を90%以上の反応率となるよう硬化させることが好ましい。反応率が90%以上であれば、光透過層中に残存する未反応のジ(メタ)アクリレート類や光重合開始剤が経時的に揮発することを抑制でき、膜厚が減少するのを小さくできる傾向にある。本硬化性組成物の反応率は93%以上であることがより好ましく、95%以上が更に好ましい。
【0062】
本発明に使用する前記硬化物の23℃における破断伸度と引張弾性率は、それぞれ20%以上80%以下、200MPa以上1500MPa以下であることが好ましく、より好ましくは、25%以上70%以下、500MPa以上1200MPa以下である。
【0063】
破断伸度が20%以上の場合、得られる光情報媒体の反りが小さくなる傾向にあり、また80%以下の場合、得られる光情報媒体の光透過層が傷つきにくくなる傾向にある。
引張弾性率が200MPa以上の場合、得られる光情報媒体の光透過層が傷つきにくくなる傾向にあり、また、1500MPa以下の場合、外部の環境変化(温度及び湿度)に対して寸法安定性が優れる傾向にある。
23℃における破断伸度と引張弾性率は、それぞれ20%以上80%以下、200MPa以上1500MPa以下にするためには、好ましくは紫外線の積算光量を500mJ/cm以上、より好ましくは1000mJ/cm以上、さらに好ましくは2000mJ/cm以上の条件で照射して、硬化性組成物を硬化させる。
【0064】
本硬化性組成物の反応率を測定する方法としては、例えば、赤外分光法により(メタ)アクリロイル基の残存量を測定する方法、硬化物の弾性率、Tg等の物理特性の飽和度から測定する方法及びゲル分率により架橋度合いを測定する方法が挙げられる。
【0065】
上記方法の中で、本硬化物中に残存する膜厚減少の原因となる残渣を定量しやすい点で、ゲル分率を測定する方法が好ましい。ゲル分率の測定方法としては、例えば、本硬化物を粉砕し、溶剤で未硬化成分を抽出後、乾燥させて、その重量変化によりゲル分率を測定する方法が挙げられる。
【0066】
光情報媒体
本発明の光情報媒体は支持基体上に情報記録面を有し、この情報記録面上に光透過層を有する構造を具備している。また、この光透過層を通して記録光又は再生光が入射して、情報記録面に情報を記録したり、情報記録面の情報を読み出したりできる光情報媒体である。
【0067】
支持基体
本発明に使用される支持基体としては、例えば、金属、ガラス、セラミックス、紙、木材、プラスチック及びこれらの複合材料が挙げられる。特に、従来の光ディスク製造プロセスを利用できる点で、メチルメタクリレート系樹脂、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン等の熱可塑性樹脂が好適である。
【0068】
情報記録面
本発明に使用される情報記録面の材料としては特に限定されず、読み取り専用型媒体、相変化型記録媒体、ピット形成タイプ記録媒体、光磁気記録媒体等に適用可能な材料を必要に応じて使用することができる。例えば、金、銀、銀・Pd・Cu合金、銀・In・Te・Sb合金、銀・In・Te・Sb・Ge合金、アルミニウム、Al・Ti合金、Ge・Sb・Te合金、Ge・Sn・Sb・Te合金、Sb・Te合金、Tb・Fe・Co合金及び色素が使用可能である。
【0069】
本発明においては、情報記録面の少なくとも一方の側に、情報記録面の保護やレーザー光の反射率を変化させるといった光学的効果を目的として、SiN、ZnS、SiO等の誘電体層を設けることができる。
【0070】
光透過層
本発明に使用される光透過層は前述の硬化性組成物の硬化物であって、その厚みは0.5〜300μmが好ましい。光透過層の厚みは1〜200μmが好ましく、1.5〜150μmがより好ましい。また、情報記録面上への記録及び再生のために400nm程度のレーザー光に対する透明性を有していることが好ましい。
【実施例】
【0071】
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明する。尚、以下における「部」は「質量部」を意味する。
尚、実施例における評価項目及びその評価方法を以下に示す。
【0072】
(1)粘度(単位:mPa・s)
硬化性組成物の粘度をE型粘度計「TVE−20」(商品名、東機産業(株)製)にて25℃で測定した。
【0073】
(2)硬化性
ポリカーボネート樹脂(飽和吸水率:0.15%)を射出成型して得た光ディスク形状を有する透明円盤状鏡面基板(直径12cm、板厚1.1mm、反り角0度)の片面に、Ag98PdCu(原子比)合金を膜厚20nmとなるようにスパッタリング法にて製膜し、鏡面に銀合金反射膜を有する評価用光ディスク基材を得た。得られた基材の銀合金反射膜上に、得られた硬化性組成物を、雰囲気温度23℃、相対湿度50%の環境下、スピンコーターを用いて塗工した。塗工面の上方より、フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)製、Dバルブランプを用いて、積算光量200mJ/cmのエネルギー量(オーク(株)製UV−350にて測定)で紫外線を照射、塗膜を硬化させて、平均膜厚がほぼ100μmの硬化物層を有する評価用光ディスクを得た。得られた硬化物に対し、塗布面と光ディスクの端面のべたつき具合を脂触にて判定した。
○ 塗布面、ならびに端面ともにべたつきがない
△ 塗布面にべたつきはないが、端面がべたつく
× 塗布面、端面共にべたつく
【0074】
(3)破断伸度、引張弾性率
評価用光ディスクから剥離させた硬化物層から、10mm×100mm×100μmの試験片を切り出し、標線間距離を50mm、引張速度20mm/分とすること以外は、JIS K7127−1999に準拠し、23℃、相対湿度50%の環境下において、破断伸度(単位:%)と引張弾性率(単位:MPa)を測定した。
<破断伸度>
○ 20%以上
× 20%を下回る
<引張弾性率>
○ 500MPa以上
× 500MPaを下回る
【0075】
(3)保護性能
積算光量を1000mJ/cmのエネルギー量としたこと以外は先と同様にして平均膜厚が100μmの硬化物層を有する評価用光ディスクを得た。得られた光ディスクを80℃、85%RH、200時間放置した。取り出し後、反射膜であるAg98PdCu(原子比)合金の状態を観察した。
○ 光ディスク作成後と変わらず反射膜に変化が見られない
× 反射膜が変色または、ピンホールが大きく見られる
【0076】
(4)耐光性
積算光量を1000mJ/cmのエネルギー量としたこと以外は先と同様にして平均膜厚が100μmの硬化物層を有する評価用光ディスクを得た。スガ試験機製フ塗料用退色試験機FM−1型を用い、硬化物層を光源に向けた状態で評価用光ディスクを配置、ブラックパネル温度60度の条件下で100時間耐光性テストを行った。その後、光ディスクを取り出し、23℃、相対湿度50%環境下にて24時間放置後、硬化物層を剥離して日立ハイテクノロジーズ製U−1900形レシオビーム分光硬度計を用いて波長405nmの光線透過率を測定した。
○ 85%以上の範囲で良好
× 85%未満の範囲で不良
【0077】
[合成例1](ウレタンアクリレートUA1(成分A)の製造)
5リットルの4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート1333g及びジブチル錫ジオクテート0.5gを仕込んでウォーターバスでフラスコ内温が70℃になるように加熱した。次いで、フラスコ内温を70℃に保ち、得られた混合物を撹拌しながら、この混合物中に、多価アルコールとしてポリテトラメチレングリコール「PTG850SN」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製、数平均分子量850)1328g及びN−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシブタナミド198gの均一溶液を、40℃に保温した状態で側管付きの滴下ロートを用いて4時間の等速滴下で加え、更に、同温度で2時間攪拌して反応させた。その後、フラスコ内温を75℃に上げ、フラスコ内温を75℃に保ちながら、2−ヒドロキシエチルアクリレート760g及びハイドロキノンモノメチルエーテル1.8gの均一混合溶液を、滴下ロートを用いて2時間の等速滴下で加え、更に、フラスコ内温を75℃に保ちながら、4時間攪拌してウレタンアクリレートUA1を得た。
【0078】
[合成例2](ウレタンアクリレートUA2(成分A)の製造)
イソシアネート成分としてイソホロンジイソシアネート222g、多価アルコール成分としてポリカプロラクトンジオール「プラクセル205」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製、数平均分子量530)789g、水酸基含有アクリレート成分として2−ヒドロキシエチルアクリレート348gを用いる以外は、合成例1と同様にしてウレタンアクリレートUA2を製造した。
【0079】
[合成例3](ウレタンアクリレートUA3(その他の成分)の製造)
イソシアネート成分としてイソホロンジイソシアネート1333g、多価アルコール成分としてポリカーボネートジオール「T−5650J」(商品名、旭化成ケミカルズ株式会社製、数平均分子量826)1503g、水酸基含有アクリレート成分として2−ヒドロキシエチルアクリレート971gを用いる以外は、合成例1と同様にしてウレタンアクリレートUA2を製造した。
【0080】
[実施例1]
(1)硬化性組成物の調製
成分Aとして上記合成例1で得たウレタンアクリレートUA1を45部、成分Bとしてジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート27部、成分Cとしてテトラヒドロフルフリルアクリレートを6部、2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチルアクリレートを10部、成分Eとしてトリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートを8部、ネオペンチルグリコールジアクリレート4部、及び成分Dとして1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン3部を混合溶解し、ろ過精度1μmのフィルターでろ過した後、1.3×10Paで脱気をして、硬化性組成物を得た。
【0081】
得られた硬化性組成物及び評価用光ディスクについての評価結果を表1に示す。
【表1】

【0082】
[実施例2〜4及び比較例1〜8]
硬化性組成物の組成及び光透過層の膜厚を表1、2に示すものとし、それ以外は実施例1と同様にして、評価用光ディスクを作製した。得られた硬化性組成物及び評価用光ディスクについて実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1、2に示す。
【表2】

【0083】
尚、表1、2中の略号は、以下の化合物を示す。
UA1:合成例1で得たウレタンアクリレートUA1
UA2:合成例2で得たウレタンアクリレートUA2
UA3:合成例3で得たウレタンアクリレートUA3
DCPEOA:ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート
THFA:テトラヒドロフルフリルアクリレート
MEDA:2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル−アクリレート
TAIC:トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
NPGDA:ネオペンチルグリコールジアクリレート
DCPA:ジシクロペンタニルアクリレート
IBXA:イソボルニルアクリレート
DMDCPDA:ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート
LA:ラウリルアクリレート
TBCHA:t−ブチルシクロヘキシルアクリレート
HCPK:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)、下式(1)で表される(メタ)アクリレート(B)、下式(2)及び(3)で表される(メタ)アクリレートの少なくとも一方(C)並びに光重合開始剤(D)を含有する硬化性組成物であって、ウレタン(メタ)アクリレート(A)がイソシアネート化合物(a1)、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリラクトンポリオールから選ばれる少なくとも1種の多価アルコール(a2)並びに水酸基含有(メタ)アクリレート(a3)から合成されるウレタン(メタ)アクリレートである硬化性組成物。
【化1】

(Rは水素またはメチル基、Rは炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、mは0〜10の整数を示す。)
【化2】

(Rは水素またはメチル基、Rは炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、nは0〜10の整数を示す。
【化3】

(Rは水素またはメチル基、Rは炭素数1〜4の2価の炭化水素基、Rは炭素数1〜4の1価の炭化水素基を示し、pは0〜10の整数を示す。
【請求項2】
表面に情報記録面が形成された支持基体の情報記録面上に光透過層を有し、この光透過層を通して記録光及び再生光の少なくとも一方が入射するように使用される光情報媒体であって、光透過層が請求項1に記載の硬化性組成物の硬化物である光情報媒体。

【公開番号】特開2009−256503(P2009−256503A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108910(P2008−108910)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】