説明

硬化性組成物及び硬化物

【課題】硬化後の硬化物が内部に空洞部を有するためにクッション性を有し、かつ硬化物の熱伝導性を効果的に高めることができる硬化性組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る硬化性組成物は、内部に複数の空洞部を有する硬化物を得るための硬化性組成物である。本発明に係る硬化性組成物は、硬化性を有するバインダー樹脂と、内部に空洞部を有する第1の粒子と、該第1の粒子とは異なる第2の粒子と、該第1の粒子及び該第2の粒子とは異なりかつ無機粒子である第3の粒子とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に複数の空洞部を有する硬化物を得ることができる硬化性組成物に関し、より詳細には、バインダー樹脂と粒子とを含む硬化性組成物に関する。また、本発明は、上記硬化性組成物を硬化させた硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な電気機器において、発熱部品から発せられる熱を逃がすために、放熱部材が発熱部品に積層されている。
【0003】
上記放熱部材を得るための材料の一例として、下記の特許文献1には、液状シリコーンゴムベースコンパウンドと(C)硬化剤とを含む硬化性組成物が開示されている。上記液状シリコーンゴムベースコンパウンドは、(A)(a)液状のジオルガノポリシロキサン又は(b)液状のジオルガノポリシロキサンと無機質充填材とを含むコンパウンドに、(B)熱により膨張する熱可塑性樹脂中空粉体を混合して混合物を得た後、該(B)成分の膨張開始温度以上の温度で上記混合物を加熱処理することにより得られる。
【0004】
下記の特許文献2には、(A)アルケニル基含有ポリオルガノシロキサンと、(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、(C)白金化合物と、(D)マイクロカプセルと、(E)溶融シリカと、(F)水、アルコール及び/又は珪素原子に結合した水酸基を少なくとも2個有しかつ平均重合度が10〜100であるシラノール基含有ポリオルガノシロキサンとを含む硬化性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−115025号公報
【特許文献2】特開2002−187971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載の硬化性組成物では、硬化物の熱伝導率を十分に高くすることは困難である。従って、該硬化物を放熱部材として用いたときに、発熱部品から発せられる熱を十分に放散させることは困難である。
【0007】
また、従来、硬化物の熱伝導性を高めるために、熱伝導率が高くかつ粒子径が比較的小さい無機充填材の配合量を多くすることが検討されている。しかしながら、該無機充填材の配合量を多くすると、硬化物の比重が高くなったり、柔軟性が低下したりする。
【0008】
さらに、従来の放熱部材では、クッション性が低いことがある。このため、放熱部材を発熱部品に積層して電子部品を得たときに、該電子部品に衝撃が加わると、各種の部品が破損することがある。
【0009】
本発明の目的は、硬化後の硬化物が内部に空洞部を有するためにクッション性を有し、かつ硬化物の熱伝導性を効果的に高めることができる硬化性組成物、並びに該硬化性組成物を硬化させた硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、内部に複数の空洞部を有する硬化物を得るための硬化性組成物であって、硬化性を有するバインダー樹脂と、内部に空洞部を有する第1の粒子と、該第1の粒子とは異なる第2の粒子と、該第1の粒子及び該第2の粒子とは異なりかつ無機粒子である第3の粒子とを含む、硬化性組成物が提供される。
【0011】
本発明に係る硬化性組成物のある特定の局面では、上記第1の粒子の含有量が、上記第2の粒子の含有量よりも多く、かつ上記第3の粒子の含有量よりも少ない。
【0012】
本発明に係る硬化性組成物の他の特定の局面では、該硬化性組成物100重量%中、上記第1の粒子の含有量が7重量%以上、25重量%以下、上記第2の粒子の含有量が1重量%以上、3重量%以下である。
【0013】
本発明に係る硬化性組成物のさらに他の特定の局面では、上記第1の粒子と上記第2の粒子とが重量比で、4:1〜20:1で含まれている。
【0014】
本発明に係る硬化性組成物の別の特定の局面では、上記第2の粒子の平均粒子径が、上記第1の粒子の平均粒子径よりも小さく、かつ上記第3の粒子の平均粒子径よりも大きい。
【0015】
本発明に係る硬化性組成物のさらに別の特定の局面では、上記第1の粒子の平均粒子径が50μm以上、300μm以下であり、上記第2の粒子の平均粒子径が10μm以上、50μm未満である。
【0016】
本発明に係る硬化性組成物の他の特定の局面では、上記第1の粒子及び上記第2の粒子の内の少なくとも一方が、粒子本体と、該粒子本体の表面に付着している複数の無機物質とを有する粒子である。
【0017】
本発明に係る硬化性組成物の別の特定の局面では、上記無機物質の熱伝導率が10W/m・K以上である。
【0018】
本発明に係る硬化性組成物の他の特定の局面では、該硬化性組成物100重量%中、上記第3の粒子の含有量が55重量%以上、85重量%以下である。
【0019】
本発明に係る硬化性組成物のさらに他の特定の局面では、上記第3の粒子の平均粒子径が0.5μm以上、10μm未満である。
【0020】
本発明に係る硬化性組成物の別の特定の局面では、無機粒子である上記第3の粒子の熱伝導率が10W/m・K以上である。
【0021】
本発明に係る硬化物は、上述した硬化性組成物を硬化させることにより得られ、内部に複数の空洞部を有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る硬化性組成物は、硬化性を有するバインダー樹脂と、内部に空洞部を有する第1の粒子と、該第1の粒子とは異なる第2の粒子と、該第1の粒子及び該第2の粒子とは異なりかつ無機粒子である第3の粒子とを含むので、内部に複数の空洞部を有する硬化物を得たときに、該硬化物がクッション性を有する。さらに、得られる硬化物の熱伝導性を効果的に高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明に係る硬化性組成物は、内部に複数の空洞部を有する硬化物を得るための硬化性組成物である。本発明に係る硬化性組成物は、硬化性を有するバインダー樹脂と、内部に空洞部を有する第1の粒子と、該第1の粒子とは異なる第2の粒子と、該第1の粒子及び該第2の粒子とは異なりかつ無機粒子である第3の粒子とを含む。
【0025】
本発明に係る硬化性組成物における上記組成の採用により、硬化後の硬化物が内部に空洞部を有するためにクッション性を有するようになる。さらに、上記組成の採用により、硬化物の熱伝導性を効果的に高めることができる。クッション性を有しかつ熱伝導性が高い硬化物が得られるので、本発明に係る硬化性組成物は、熱伝導性緩衝材として用いることができる。上記硬化物は、発熱部品に積層されて用いられることが好ましい。
【0026】
本発明に係る硬化性組成物を硬化させた硬化物は、上述した硬化性組成物を硬化させることにより得られ、内部に複数の空洞部を有する。該硬化物は、発泡体であることが好ましい。なお、発泡体は、上記硬化性組成物を硬化させる際に発泡させた硬化物であってもよく、発泡させた発泡粒子を含む硬化性組成物を硬化させた硬化物であってもよい。すなわち、発泡体には、粒子を得る際に発泡させた発泡粒子を上記第1の粒子、上記第2の粒子又は上記第3の粒子として硬化性組成物に配合して、該硬化性組成物を硬化させた硬化物も含まれる。
【0027】
上記硬化物における複数の空洞部は、上記第1の粒子における空洞部に由来して形成されていることが好ましい。また、内部に空洞部を有する第1の粒子の使用により、硬化物の内部に複数の空洞部を形成できる。
【0028】
上記硬化物の発泡倍率は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.5倍以上、更に好ましくは2倍以上、好ましくは10倍以下、より好ましくは7倍以下、更に好ましくは5倍以下である。上記発泡倍率が上記下限以上であると、硬化物のクッション性及び柔軟性がより一層高くなる。上記発泡倍率が上記上限以下であると、硬化物の強度が高くなる。
【0029】
以下、本発明に係る硬化性組成物に含まれている各成分の詳細を説明する。
【0030】
(第1,第2,第3の粒子)
上記第1の粒子としては、無機粒子、有機粒子及び有機無機複合粒子が挙げられる。上記第1の粒子の材質は、無機化合物であってもよく、有機化合物であってもよく、無機化合物と有機化合物との双方であってもよい。
【0031】
上記第2の粒子としては、無機粒子、有機粒子及び有機無機複合粒子が挙げられる。上記第2の粒子の材質は、無機化合物であってもよく、有機化合物であってもよく、無機化合物と有機化合物との双方であってもよい。
【0032】
上記第3の粒子は、無機粒子である。上記第3の粒子の材質は、無機化合物である。
【0033】
上記第2の粒子は上記第1の粒子と異なる。上記第2の粒子の平均粒子径が、上記第1の粒子の平均粒子径と異なるか、又は上記第2の粒子の材質が、上記第1の粒子の材質と異なることが好ましい。上記第2の粒子の平均粒子径が、上記第1の粒子の平均粒子径と異なっていてもよい。上記第2の粒子の材質が、上記第1の粒子の材質と異なっていてもよい。また、上記第1の粒子が発泡粒子であり、かつ上記第2の粒子は発泡粒子ではない場合には、上記第2の粒子は上記第1の粒子と異なる。上記第1の粒子が、粒子本体と、該粒子本体の表面に付着している複数の無機物質とを有する粒子であり、かつ上記第2の粒子が、粒子本体と、該粒子本体の表面に付着している複数の無機物質とを有する粒子ではない場合には、上記第2の粒子は上記第1の粒子と異なる。
【0034】
上記第3の粒子は、上記第1の粒子及び上記第2の粒子とは異なる。上記第3の粒子の平均粒子径が、上記第1の粒子の平均粒子径と異なるか、又は上記第3の粒子の材質が、上記第1の粒子の材質と異なることが好ましい。上記第3の粒子の平均粒子径が、上記第1の粒子の平均粒子径と異なっていてもよい。上記第3の粒子の材質が、上記第1の粒子の材質と異なっていてもよい。上記第3の粒子の平均粒子径が、上記第2の粒子の平均粒子径と異なるか、又は上記第3の粒子の材質が、上記第2の粒子の材質と異なることが好ましい。上記第3の粒子の平均粒子径が、上記第2の粒子の平均粒子径と異なっていてもよい。上記第3の粒子の材質が、上記第2の粒子の材質と異なっていてもよい。
【0035】
上記第1の粒子の含有量は、上記第2の粒子の含有量よりも多いことが好ましい。上記第1の粒子の含有量は、上記第3の粒子の含有量よりも少ないことが好ましい。上記第1の粒子の含有量は、上記第2の粒子の含有量よりも多く、かつ上記第3の粒子の含有量よりも少ないことがより好ましい。上記第1,第2,第3の粒子の含有量が好ましい上記関係を満足すると、硬化物のクッション性及び熱伝導性がバランスよく高くなる。
【0036】
上記硬化性組成物100重量%中、上記第1の粒子の含有量は好ましくは7重量%以上、好ましくは25重量%以下である。上記硬化性組成物100重量%中、上記第2の粒子の含有量は好ましくは1重量%以上、好ましくは3重量%以下である。上記硬化性組成物100重量%中、上記第3の粒子の含有量は好ましくは55重量%以上、好ましくは85重量%以下である。上記第1,第2,第3の粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物のクッション性及び熱伝導性がバランスよく高くなる。
【0037】
上記硬化性組成物100重量%中、上記第1,第2,第3の粒子の合計の含有量は好ましくは63重量%以上、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。上記第1,第2,第3の粒子の合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物のクッション性及び熱伝導性がバランスよく高くなる。
【0038】
上記硬化性組成物は、上記第1の粒子と上記第2の粒子とを重量比で、4:1〜20:1で含むことが好ましい。上記硬化性組成物は、上記第2の粒子と上記第3の粒子とを重量比で、1:25〜1:70で含むことが好ましい。上記第1,第2の粒子の含有量及び上記第2,第3の粒子の含有量が好ましい上記関係を満足すると、硬化物のクッション性及び熱伝導性がバランスよく高くなる。
【0039】
上記第2の粒子の平均粒子径が、上記第1の粒子の平均粒子径よりも小さいことが好ましい。上記第2の粒子の平均粒子径が、上記第3の粒子の平均粒子径よりも大きいことが好ましい。上記第2の粒子の平均粒子径が、上記第1の粒子の平均粒子径よりも小さく、かつ上記第3の粒子の平均粒子径よりも大きいことがより好ましい。上記第1,第2,第3の粒子の平均粒子径が好ましい上記関係を満足すると、硬化物のクッション性及び熱伝導性がバランスよく高くなる。
【0040】
上記第2の粒子の平均粒子径が、上記第1の粒子の平均粒子径よりも小さく、かつ上記第3の粒子の平均粒子径よりも大きい場合に、上記第2の粒子は、上記第1の粒子と上記第3の粒子との間に効果的に配置され、硬化性組成物の混合過程でベアリング的に機能する。このため、上記第1,第2,第3の混合性が良好になる。
【0041】
上記第1の粒子の平均粒子径は、好ましくは30μm以上、より好ましくは40μm以上、更に好ましくは50μm以上、好ましくは300μm以下である。上記第2の粒子の平均粒子径は好ましくは10μm以上、好ましくは50μm未満、より好ましくは40μm未満である。上記第3の粒子の平均粒子径は好ましくは0.5μm以上、好ましくは10μm未満である。上記第1,第2,第3の粒子の平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物のクッション性及び熱伝導性がバランスよく高くなる。
【0042】
上記第2の平均粒子径は、上記第1の粒子の平均粒子径の1/10以上であることが好ましく、1/2以下であることが好ましい。上記第2の粒子の平均粒子径は、上記第3の粒子の平均粒子径の5倍以上であることが好ましく、20倍以下であることが好ましい。上記第1,第2の粒子の平均粒子径、上記第2,第3の粒子の平均粒子径が好ましい上記関係を満足すると、硬化物のクッション性及び熱伝導性がバランスよく高くなる。
【0043】
上記第1,第2,第3の粒子の平均粒子径及び後述する無機物質の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡などを用いて観察した視野中の100個の粒子の一次粒子の大きさをそれぞれ測定したときの測定値の平均値である。上記平均粒子径は、上記粒子が球形である場合には粒子の直径の平均値を意味し、非球形である場合には粒子の長径の平均値を意味する。
【0044】
上記第1,第2,第3の粒子の形状としては、球状、板状、針状及び不定形状等が挙げられる。上記第1,第2,第3の粒子の充填性及び分散性をより一層高める観点からは、上記第1の粒子は球状であることが好ましく、上記第2の粒子は球状であることが好ましく、上記第3の粒子は球状であることが好ましい。球状の粒子のアスペクト比は2以下であり、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下である。
【0045】
上記第1の粒子は内部に空洞部を有する。上記第1の粒子は、言い換えれば中空粒子である。該中空粒子には、多孔粒子が含まれる。上記第1の粒子は内部に少なくとも1つの空洞部を有する。上記第1の粒子は、内部に1つの空洞部を有していてもよく、複数の空洞部を有していてもよい。上記空洞部は粒子の表面に露出していてもよい。上記第1の粒子は空洞部と外殻部とを有することが好ましい。
【0046】
上記第2の粒子は、内部に空洞部を有していてもよい。内部に空洞部を有する粒子を第2の粒子として用いると、硬化物のクッション性及び柔軟性がより一層高くなる。上記第2の粒子は、中空粒子であってもよい。上記第2の粒子は内部に少なくとも1つの空洞部を有する場合に、上記第2の粒子は、内部に1つの空洞部を有していてもよく、複数の空洞部を有していてもよい。上記空洞部は粒子の表面に露出していてもよい。上記第2の粒子は空洞部と外殻部とを有することが好ましい。
【0047】
上記第1,第2の粒子の空隙率はそれぞれ、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは40%以上、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは80%以下である。上記空隙率が上記下限以上であると、硬化物のクッション性及び柔軟性がより一層高くなる。上記空隙率が上記上限以下であると、粒子の強度がより一層高くなり、外殻部に割れが生じ難くなる。
【0048】
上記第1の粒子は、内部に空洞部を形成するように発泡させた発泡粒子であることが好ましい。上記第2の粒子は、内部に空洞部を形成するように発泡させた発泡粒子であってもよい。このような発泡粒子の使用により、硬化物のクッション性及び柔軟性がより一層高くなる。
【0049】
上記発泡粒子は、熱発泡性を有する粒子を発泡させた発泡粒子であることが好ましく、熱膨張性マイクロカプセルを熱膨張させて発泡させた発泡粒子であることが好ましい。また、上記第1,第2の粒子はそれぞれ、発泡前の発泡可能な粒子であってもよく、熱発泡性を有する粒子であってもよく、熱膨張性マイクロカプセルであってもよい。
【0050】
上記第1の粒子は、粒子本体と、該粒子本体の表面に付着している複数の無機物質とを有する粒子であることが好ましい。上記第2の粒子は、粒子本体と、該粒子本体の表面に付着している複数の無機物質とを有する粒子であることが好ましい。上記第1の粒子及び上記第2の粒子の内の少なくとも一方が、粒子本体と、該粒子本体の表面に付着している複数の無機物質とを有する粒子であることが好ましい。粒子本体と、該粒子本体の表面に付着している複数の無機物質とを有する粒子の使用により、硬化物のクッション性及び熱伝導性がバランスよく高くなる。また、上記第1の粒子又は上記第2の粒子の平均粒子径が上記第3の粒子の平均粒子径よりも大きい場合に、上記第1の粒子及び上記第2の粒子の内の少なくとも一方が、粒子本体と、該粒子本体の表面に付着している複数の無機物質とを有する粒子であることにより、硬化物のクッション性及び熱伝導性が効果的に高くなる。上記無機物質は、上記粒子本体の表面に熱融着していることが好ましい。
【0051】
なお、本明細書において、上記第1の粒子又は第2の粒子が、粒子本体と、該粒子本体の表面に付着している複数の無機物質とを有する粒子である場合には、上記第1の粒子又は第2の粒子の平均粒子径は、上記粒子本体の平均粒子径をいうものとする。
【0052】
上記粒子本体が内部に空洞部を有することが好ましい。上記粒子本体としては、無機粒子本体、有機粒子本体及び有機無機複合粒子本体が挙げられる。上記粒子本体の材質は、無機化合物であってもよく、有機化合物であってもよく、無機化合物と有機化合物との双方であってもよい。上記粒子本体は、有機粒子本体であることが好ましく、上記粒子本体の材質は有機化合物であることが好ましい。
【0053】
上記無機物質は、無機粒子であることが好ましい。上記無機物質の材質は、無機化合物である。上記無機物質の形状は球状であることが好ましい。
【0054】
上記無機物質の平均粒子径は好ましくは0.5μm以上、好ましくは10μm未満である。上記無機物質の平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物のクッション性及び熱伝導性がバランスよく高くなる。
【0055】
上記有機粒子又は上記有機無機複合粒子の材質である有機化合物としては、エポキシ化合物、アクリル化合物、ビニル化合物、シリコーン化合物、アクリロニトリル化合物及びフェノール化合物等が挙げられる。上記有機化合物は、シリコーン化合物、アクリロニトリル化合物又はフェノール化合物であることが好ましい。
【0056】
上記無機粒子、上記有機無機複合粒子又は上記無機物質の材質である無機化合物としては、アルミナ、合成マグネサイト、シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、タルク、マイカ、及びハイドロタルサイト等が挙げられる。熱伝導性と電気絶縁性とが高いことから、上記無機化合物は、アルミナ、合成マグネサイト、結晶性シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛又は酸化マグネシウムであることが好ましい。上記無機物質である第3の粒子の材質と上記無機物質の材質とは、同じであることが好ましい。
【0057】
上記硬化物の熱伝導性をより一層高める観点からは、上記第1の粒子、上記第2の粒子及び上記第3の粒子の熱伝導率はそれぞれ、好ましくは10W/m・K以上、より好ましくは15W/m・K以上、更に好ましくは20W/m・K以上である。また、上記無機物質の熱伝導率は、好ましくは10W/m・K以上、より好ましくは15W/m・K以上、更に好ましくは20W/m・K以上である。熱伝導率の上限は特に限定されない。熱伝導率が300W/m・K程度である無機粒子は広く知られており、また熱伝導率が200W/m・K程度である粒子は容易に入手できる。
【0058】
硬化物の熱伝導性を効果的に高める観点からは、上記第1の粒子、上記第2の粒子及び上記第3の粒子のうち、硬化性組成物中に重量基準で最も多く含まれている粒子の熱伝導率が、10W/m・K以上であることが好ましい。硬化物の熱伝導性を効果的に高める観点からは、上記第3の粒子の熱伝導率が10W/m・K以上であることが好ましい。硬化物の熱伝導性をより一層高める観点からは、上記無機物質の熱伝導性が10W/m・K以上であることが好ましい。
【0059】
(バインダー樹脂)
上記硬化性組成物に含まれているバインダー樹脂は硬化性を有する。バインダー樹脂の硬化物は、クッション性や柔軟性を有する。バインダー樹脂は、例えば、硬化性化合物と、該硬化性化合物を硬化させる物質とを含む。上記硬化性化合物は、熱硬化性化合物であることが好ましい。上記硬化性化合物を硬化させる物質としては、硬化剤及び硬化触媒が挙げられる。
【0060】
上記硬化性化合物としては、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。上記硬化性化合物は、シリコーン化合物であることが好ましい。上記硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0061】
上記硬化性組成物100重量%中、上記バインダー樹脂の含有量は好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、好ましくは37重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下である。上記バインダー樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物のクッション性及び熱伝導性がバランスよく高くなる。
【0062】
(他の成分)
上記硬化性組成物は、必要に応じて、カップリング剤、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、着色剤、変性剤、粘度調整剤、光拡散剤、又は難燃剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。上記着色剤としては、顔料が挙げられる。上記粘度調整剤としては、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0063】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0064】
以下の第1,第2,第3の粒子を用意した。
【0065】
(第1の粒子の作製)
熱発泡性粒子(平均粒子径39μm、球状、有機粒子、徳山積水社製「アドバンセルEMH204」)1gと、無機物であるアルミナ(平均粒子径3μm、球状、熱伝導率36W/m・K、新日鉄マテリアルズマイクロン社製「AX3−32R」)30gとを容器に入れて、常温(23℃)で、上下に振動して予備分散させた。その後、加圧ニーダーに入れ、150℃で15分間加熱して、発泡した中空粒子と該中空粒子の表面に付着しているアルミナとを有する粒子(以下、中空複合粒子Pと記載する)を得た。熱膨張性マイクロカプセルである熱発泡粒子が加熱により柔軟になり、内部に包含された有機溶剤のガス化により膨張し発泡して行く過程で、同様に加熱された無機物が柔軟になった表面に付着し熱融着される。得られた中空複合粒子Pでは、用いたアルミナが全て、発泡した中空粒子の表面に付着していた。得られた中空複合粒子Pの平均粒子径は100μmであり、嵩密度は0.12g/cmであった。
【0066】
(第2の粒子)
熱発泡性粒子(平均粒子径39μm、球状、有機粒子、徳山積水社製「アドバンセルEMH204」、発泡開始温度117℃、最大発泡する最大発泡温度167℃)
【0067】
(第3の粒子)
アルミナ(平均粒子径3μm、球状、熱伝導率36W/m・K、新日鉄マテリアルズマイクロン社製「AX3−32R」)
【0068】
(実施例1)
第3の粒子であるアルミナ(新日鉄マテリアルズマイクロン社製「AX3−32R」)25.0gと、第2の粒子である熱発泡性粒子(徳山積水社製「アドバンセルEMH204」)0.5gとを、常温(23℃)でドライ混合して、混合物を得た。さらに、得られた混合物と、第1の粒子である中空複合粒子P7.5gとを、常温(23℃)でドライ混合して、粉体混合物Aを得た。
【0069】
次に、2液硬化型シリコーン樹脂(モメンテブ社製「TSE3062A」)と、2液硬化型シリコーン樹脂(モメンテブ社製「TSE3062B」)とを、常温(23℃)で重量比で1:1で混合し、バインダー樹脂A7.0gを得た。バインダー樹脂Aに含まれているシリコーン樹脂は、硬化後にシリコーンゲルを形成する。
【0070】
次に、得られた粉体混合物Aの全量を撹拌しながら、得られたバインダー樹脂Aの全量を注入して、混合し、成形前の硬化性組成物を得た。
【0071】
(実施例2)
2液硬化型シリコーン樹脂(モメンテブ社製「TSE3032A」)と、2液硬化型シリコーン樹脂(モメンテブ社製「TSE3032B」)とを、常温(23℃)重量比で10:1で混合し、バインダー樹脂B7.0gを得た。バインダー樹脂Bに含まれているシリコーン樹脂は、硬化後にシリコーンゲルを形成する。
【0072】
バインダー樹脂A7.0gをバインダー樹脂B7.0gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0073】
(比較例1)
第3の粒子であるアルミナ(新日鉄マテリアルズマイクロン社製「AX3−32R」)25.0gと、第1の粒子である中空複合粒子P8.0gとを、常温(23℃)でドライ混合して、粉体混合物Bを得た。
【0074】
粉体混合物Aを粉体混合物Bに変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0075】
(比較例2)
第3の粒子であるアルミナ(新日鉄マテリアルズマイクロン社製「AX3−32R」)35.0gと、第1の粒子である得られた中空粒子P5.0gとを、常温(23℃)でドライ混合して、粉体混合物Cを得た。
【0076】
粉体混合物Aを粉体混合物Cに変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0077】
(評価)
アルミニウム板(厚み5mm)と、離型用PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(厚み100μm)と、四角形の枠部材(厚さ2mm、縦10cm×横10cmの開口部を有する)を用意した。
【0078】
枠部材の開口部に得られた硬化性組成物40gを入れ、枠部材をアルミニウム板と離型用PETフィルムとの間に配置した状態で、プレス機で110℃で30分間加熱して、上記硬化性組成物を硬化させて、硬化物であるシートを得た。なお、プレス時に枠部材からはみ出た硬化性組成物は除去した。なお、得られたシートでは、第2の粒子である熱発泡性粒子は、発泡していなかった。
【0079】
得られたシートの厚み、比重、発泡倍率及び熱伝導率を評価した結果を、下記の表1に示した。なお、熱伝導率は、熱伝導率測定装置(英弘精機製「HC−110」)を用いて定常法にて、20℃の温度差(高温35℃、低温5℃)を設けて測定した。
【0080】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に複数の空洞部を有する硬化物を得るための硬化性組成物であって、
硬化性を有するバインダー樹脂と、
内部に空洞部を有する第1の粒子と、
前記第1の粒子とは異なる第2の粒子と、
前記第1の粒子及び前記第2の粒子とは異なりかつ無機粒子である第3の粒子とを含む、硬化性組成物。
【請求項2】
前記第1の粒子の含有量が、前記第2の粒子の含有量よりも多く、かつ前記第3の粒子の含有量よりも少ない、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
硬化性組成物100重量%中、前記第1の粒子の含有量が7重量%以上、25重量%以下、前記第2の粒子の含有量が1重量%以上、3重量%以下である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記第1の粒子と前記第2の粒子とを重量比で、4:1〜20:1で含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記第2の粒子の平均粒子径が、前記第1の粒子の平均粒子径よりも小さく、かつ前記第3の粒子の平均粒子径よりも大きい、請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記第1の粒子の平均粒子径が50μm以上、300μm以下であり、前記第2の粒子の平均粒子径が10μm以上、50μm未満である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記第1の粒子及び前記第2の粒子の内の少なくとも一方が、粒子本体と、該粒子本体の表面に付着している複数の無機物質とを有する粒子である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記無機物質の熱伝導率が10W/m・K以上である、請求項7に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
硬化性組成物100重量%中、前記第3の粒子の含有量が55重量%以上、85重量%以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記第3の粒子の平均粒子径が0.5μm以上、10μm未満である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
無機粒子である前記第3の粒子の熱伝導率が10W/m・K以上である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化させることにより得られ、
内部に複数の空洞部を有する、硬化物。

【公開番号】特開2013−95761(P2013−95761A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236629(P2011−236629)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】