説明

硬化性組成物

【課題】優れた塗工性を有し、かつ各種基材の表面に、高硬度及び耐擦傷性を有する塗膜(被膜)を形成し得る硬化性組成物を提供する。
【解決手段】下記成分(A)〜(D):
(A)分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(B)光ラジカル重合開始剤
(C)フッ素を含有するポリシロキサン系消泡剤
(D)有機溶剤
を含有する硬化性組成物。前記硬化性組成物はさらに(E)金属酸化物粒子を含むこともできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、スレート等の各種基材表面の傷付き(擦傷)防止や汚染防止のための保護コ−ティング材及び反射防止膜用コート材として、優れた塗工性を有し、かつ各種基材の表面に、硬度、耐擦傷性、耐摩耗性、表面滑り性、低カール性、密着性、透明性、耐薬品性及び塗膜面の外観のいずれにも優れた硬化膜を形成し得る硬化性組成物が要請されている。
【0003】
このような要請を満たすため、種々の組成物が提案されているが、硬化性組成物として溶剤を含む場合は、組成物が泡を含んだまま基材に塗布されることで、塗膜異常を発生する原因となっていた。
【0004】
【特許文献1】特開2000−330403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた塗工性を有し、かつ各種基材の表面に、高硬度及び耐擦傷性を有する塗膜(被膜)を形成し得る硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成するため、鋭意研究した結果、放射線硬化性組成物に特定の構造の消泡剤を配合させることで諸特性を満足し得る組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、下記の硬化性樹脂組成物を提供する。
1.下記成分(A)〜(D):
(A)分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(B)光ラジカル重合開始剤
(C)フッ素を含有するポリシロキサン系消泡剤
(D)有機溶剤
を含有する硬化性組成物。
2. さらに、(E)金属酸化物粒子を含有する1に記載の硬化性組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、各種基材の表面に、優れた塗工性を有し、耐擦傷性と高い硬度を有する硬化物を与える硬化性組成物、及びその硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の硬化性組成物及びその硬化物の実施形態について以下説明する。
【0010】
1.硬化性組成物
本発明の硬化性組成物(以下、本発明の組成物という)は、下記の成分(A)〜(F)を含み得る。これらの成分のうち、(A)〜(D)は必須成分であり、(E)〜(F)は必要に応じて添加することのできる任意成分である。
(A)分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(B)光ラジカル重合開始剤
(C)フッ素を含有するポリシロキサン系消泡剤
(D)有機溶剤
(E)金属酸化物粒子
(F)その他の添加剤
以下、これらの成分について以下説明する。
【0011】
(A)分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、多官能(メタ)アクリレート化合物という)は、硬化性組成物を硬化して得られる硬化物の硬度及び耐擦傷性を高めるために用いられる。
【0012】
成分(A)としては、分子内に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物であれば特に制限されるものではない。(メタ)アクリロイル基が3個以上の化合物としては、例えば、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(以下「EO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(以下「PO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加物、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、フェノールノボラックポリグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート等を例示することができる。
【0013】
これらの多官能性モノマーの市販品としては、例えば、SA1002(以上、三菱化学(株)製)、ビスコート195、ビスコート230、ビスコート260、ビスコート215、ビスコート310、ビスコート214HP、ビスコート295、ビスコート300、ビスコート360、ビスコートGPT、ビスコート400、ビスコート700、ビスコート540、ビスコート3000、ビスコート3700(以上、大阪有機化学工業(株)製)、カヤラッドR−526、HDDA、NPGDA、TPGDA、MANDA、R−551、R−712、R−604、R−684、PET−30、GPO−303、TMPTA、THE−330、DPHA、DPHA−2H、DPHA−2C、DPHA−2I、D−310、D−330、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475、T−1420、T−2020、T−2040、TPA−320、TPA−330、RP−1040、RP−2040、R−011、R−300、R−205(以上、日本化薬(株)製)、アロニックスM−210、M−220、M−233、M−240、M−215、M−305、M−309、M−310、M−315、M−325、M−400、M−6200、M−6400(以上、東亞合成(株)製)、ライトアクリレートBP−4EA、BP−4PA、BP−2EA、BP−2PA、DCP−A(以上、共栄社化学(株)製)、ニューフロンティアBPE−4、BR−42M、GX−8345(以上、第一工業製薬(株)製)、ASF−400(以上、新日鐵化学(株)製)、リポキシSP−1506、SP−1507、SP−1509、VR−77、SP−4010、SP−4060(以上、昭和高分子(株)製)、NKエステルA−BPE−4(以上、新中村化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0014】
これらのうち、分子内に3個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)が特に好ましい。尚、本発明の組成物には、分子内に4個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いることがさらに好ましい。かかる4個以上の化合物としては、上記に例示されたテトラ(メタ)アクリレート化合物、ペンタ(メタ)アクリレート化合物、ヘキサ(メタ)アクリレート化合物等の中から選択することができ、これらのうちジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトールヒドロキシトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートが特に好ましい。上記の化合物は、各々1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
また、これら多官能(メタ)アクリレート化合物はフッ素原子を含んでいてもよい。このような化合物の例として、パーフルオロ―1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタフルオロオクタン―1,6−ジ(メタ)アクリレート、オクタフルオロオクタンジオールと2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートとの付加物等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0016】
(A)成分の添加量については、特に制限されるものではないが、本発明の組成物中の(D)有機溶剤を除く全成分の合計を100質量%としたときに、5〜97質量%とするのが好ましい。この理由は、添加量が5質量%未満となると、硬化性組成物を硬化させてなる硬化物の耐擦傷性が低下する場合があるためであり、一方、添加量が97質量%を超えると、硬化性組成物の硬化物の硬度が低下するおそれがある。
【0017】
(B)光ラジカル重合開始剤
本発明で用いる光ラジカル重合開始剤としては、光照射により分解してラジカルを発生して重合を開始せしめるものであれば特に制限はなく、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)等を挙げることができる。
【0018】
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア 184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61、ダロキュア 1116、1173、BASF社製ルシリン TPO、8893UCB社製ユベクリル P36、フラテツリ・ランベルティ社製エザキュアーKIP150、KIP65LT、KIP100F、KT37、KT55、KTO46、KIP75/B等を挙げることができる。
【0019】
本発明において光ラジカル重合開始剤(B)の含有量は、本発明の組成物中の(D)有機溶剤を除く全成分の合計を100質量%としたときに、0.01〜20質量%配合することが好ましく、0.1〜10質量%がさらに好ましい。0.01質量%未満であると、硬化物としたときの硬度が不十分となることがあり、20質量%を超えると、硬化物としたときに内部(下層)まで硬化しないことがある。
【0020】
本発明の組成物を硬化させる場合、必要に応じて光ラジカル重合開始剤と熱ラジカル重合開始剤とを併用することができる。好ましい熱重合開始剤としては、例えば、過酸化物、アゾ化合物を挙げることができ、具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。
【0021】
(C)フッ素を含有するポリシロキサン系消泡剤
本発明で使用される(C)フッ素を含有するポリシロキサン系消泡剤は、塗工前の組成物に発生する泡を減らすために配合される。
成分(C)の具体例としては、BYK−063、BYK−065、BYK−066N(商品名、ビックケミー・ジャパン社製)、DOW CORNING TORAY 8621 ADDITIVE(東レ・ダウコーニング社製)等を挙げることができる。
【0022】
本発明においてフッ素を含有するポリシロキサン系消泡剤(C)の含有量は、本発明の組成物中の(D)有機溶剤を除く全成分の合計を100質量%としたときに、0.001〜5質量%配合することが好ましく、0.003〜1質量%がさらに好ましい。0.001質量%未満であると、消泡効果が不十分となることがあり、5質量%を超えると、硬化物の硬度が低下するおそれがある。
【0023】
(D)有機溶剤
本発明の組成物は、扱いを容易にするために(D)有機溶剤を含有する。(D)有機溶剤の種類は、有機溶剤以外の成分を均一に溶解または分散させることができれば特に限定されない。
【0024】
本発明で使用される有機溶剤の具体例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、2−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族類、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族類等から選択される一種又は二種以上の組み合わせが挙げられる。これらの内、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、2−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類が好ましく、より好ましくはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、t-ブタノールの一種単独又は二種以上との組み合わせが挙げられる。
【0025】
(D)有機溶剤の合計の添加量については特に制限されるものではないが、(D)成分以外の成分の合計量100質量部に対し、50〜100,000質量部とするのが好ましい。この理由は、添加量が100質量部未満となると、硬化性組成物の粘度調整が困難となる場合があるためであり、一方、添加量が100,000質量部を超えると、硬化性組成物の保存安定性が低下したり、あるいは粘度が低下しすぎて取り扱いが困難となる場合があるためである。
【0026】
(E)金属酸化物粒子
本発明の組成物は、(E)金属酸化物粒子を配合することもできる。成分(E)を配合することで、硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物の硬度及び耐擦傷性を向上させることができる。
【0027】
本発明で用いる金属酸化物粒子としては、公知のものを使用することができる。具体例としては、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン及びセリウムからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物粒子を挙げることができる。また、その形状は、球状でも不定形のものでもよく、中空粒子、多孔質粒子、コア・シェル型粒子等であっても構わない。
また、動的光散乱法で求めた金属酸化物粒子の数平均粒子径は5〜200nmであることが好ましく、5〜100nmであることがさらに好ましく、10〜80nmであることが特に好ましい。金属酸化物粒子の数平均粒子径が5nm未満であると、硬化膜の硬度が低下するおそれがあり、200nmを超えると硬化膜のヘイズが高くなるおそれがある。
【0028】
また、金属酸化物粒子の分散媒は、水または有機溶剤を使用することができる。有機溶剤としては、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエ−テル類等の有機溶剤を挙げることができ、これらの中で、アルコール類及びケトン類が好ましい。これら有機溶剤は、単独で、又は2種以上混合して分散媒として使用することができる。
【0029】
ケイ素酸化物粒子(例えば、シリカ粒子)として市販されている商品としては、例えば、コロイダルシリカとして、日産化学工業(株)製 商品名:メタノ−ルシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL等を挙げることができる。また粉体シリカとしては、日本アエロジル(株)製 商品名:アエロジル130、アエロジル300、アエロジル380、アエロジルTT600、アエロジルOX50、旭硝子(株)製 商品名:シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122、日本シリカ工業(株)製 商品名:E220A、E220、富士シリシア(株)製 商品名:SYLYSIA470、日本板硝子(株)製商品名:SGフレ−ク等を挙げることができる。
【0030】
また、アルミナの水分散品としては、日産化学工業(株)製 商品名:アルミナゾル−100、−200、−520;アルミナのイソプロパノール分散品としては、住友大阪セメント(株)製 商品名:AS−150I;アルミナのトルエン分散品としては、住友大阪セメント(株)製 商品名:AS−150T;ジルコニアのトルエン分散品としては、住友大阪セメント(株)製 商品名:HXU−110JC;アンチモン酸亜鉛粉末の水分散品としては、日産化学工業(株)製 商品名:セルナックス;アルミナ、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛等の粉末及び溶剤分散品としては、シーアイ化成(株)製 商品名:ナノテック;アンチモンドープ酸化スズの水分散ゾルとしては、石原産業(株)製 商品名:SN−100D;ITO粉末としては、三菱マテリアル(株)製の製品;酸化セリウム水分散液としては、多木化学(株)製 商品名:ニードラール等を挙げることができる。
【0031】
また、本発明で用いる金属酸化物粒子は、公知の方法、例えば、特開平9−100111号公報に記載の方法等で変性されていてもよい。
【0032】
(E)成分の配合量は、組成物中の(D)有機溶剤を除く成分の合計を100質量%としたときに、5〜75質量%配合することが好ましく、10〜65質量%がさらに好ましい。
尚、(E)成分の量は、固形分を意味し、粒子が溶剤分散ゾルの形態で用いられるときは、その配合量には溶剤の量を含まない。
【0033】
(F)添加剤
本発明の組成物には、本発明の目的や効果を損なわない範囲において、光増感剤、熱重合開始剤、重合禁止剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、顔料、染料等の添加剤をさらに含有させることも好ましい。
【0034】
熱重合開始剤は、熱により活性種を発生する化合物であり、活性種としてラジカルを発生する熱ラジカル発生剤等が挙げられる。熱ラジカル発生剤の例としては、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチル−オキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル、アセチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、tert−ブチルパーアセテート、クミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等の一種単独又は二種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0035】
本発明の組成物は反射防止膜や被覆材の用途に好適であり、反射防止や被覆の対象となる基材としては、例えば、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ、メラミン、トリアセチルセルロース、ABS、AS、ノルボルネン系樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、スレート等を挙げることができる。これら基材の形状は板状、フィルム状又は3次元成形体でもよく、コーティング方法は、通常のコーティング方法、例えばディッピングコート、スプレーコ−ト、フローコ−ト、シャワーコート、ロールコート、スピンコート、刷毛塗り等を挙げることができる。これらコーティングにおける塗膜の厚さは、乾燥、硬化後、通常0.1〜400μmであり、好ましくは、1〜200μmである。
【0036】
本発明の組成物は、(D)有機溶剤を含有し、塗膜の厚さを調節するために、有機溶剤の添加量を調整することにより、組成物の粘度を調節することができる。例えば、反射防止膜や被覆材として用いる場合の粘度は、通常0.1〜50,000mPa・秒/25℃であり、好ましくは、0.5〜10,000mPa・秒/25℃である。
【0037】
本発明の組成物は、熱及び/又は放射線(光)によって硬化させることができる。熱による場合、その熱源としては、例えば、電気ヒーター、赤外線ランプ、熱風等を用いることができる。放射線(光)による場合、その線源としては、組成物をコーティング後短時間で硬化させることができるものである限り特に制限はないが、例えば、赤外線の線源として、ランプ、抵抗加熱板、レーザー等を、また可視光線の線源として、日光、ランプ、蛍光灯、レーザー等を、また紫外線の線源として、水銀ランプ、ハライドランプ、レーザー等を、また電子線の線源として、市販されているタングステンフィラメントから発生する熱電子を利用する方式、金属に高電圧パルスを通じて発生させる冷陰極方式及びイオン化したガス状分子と金属電極との衝突により発生する2次電子を利用する2次電子方式を挙げることができる。また、アルファ線、ベータ線及びガンマ線の線源として、例えば、60Co等の核分裂物質を挙げることができ、ガンマ線については加速電子を陽極へ衝突させる真空管等を利用することができる。これら放射線は1種単独で又は2種以上を同時に又は一定期間をおいて照射することができる。
【0038】
本発明の硬化物は、前記硬化性組成物を種々の基材、例えば、プラスチック基材にコーティングして硬化させることにより得ることができる。具体的には、組成物をコーティングし、好ましくは、0〜200℃で揮発成分を乾燥させた後、熱及び/又は放射線で硬化処理を行うことにより被覆成形体として得ることができる。熱による場合の好ましい硬化条件は20〜150℃であり、10秒〜24時間の範囲内で行われる。放射線による場合、紫外線又は電子線を用いることが好ましい。そのような場合、好ましい紫外線の照射光量は0.01〜10J/cm2であり、より好ましくは、0.1〜2J/cm2である。また、好ましい電子線の照射条件は、加速電圧は10〜300kV、電子密度は0.02〜0.30mA/cm2であり、電子線照射量は1〜10Mradである。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例の記載に限定されるものではない。「部」及び「%」は、特に断らない限り、「質量部」及び「質量%」を意味する。また、本発明において「固形分」とは、組成物から溶剤等の揮発成分を除いた部分を意味し、具体的には、組成物を所定温度のホットプレート上で1時間乾燥して得られる残渣物(不揮発成分)を意味する。
【0040】
(製造例1)
粒子変性剤(Eb)の製造
乾燥空気中、メルカプトプロピルトリメトキシシラン23.0部、ジブチルスズジラウレート0.5部からなる溶液に対し、イソホロンジイソシアネート60.0部を攪拌しながら50℃で1時間かけて滴下後、70℃で3時間攪拌した。これに新中村化学製NKエステルA−TMM−3LM−N(ペンタエリスリトールトリアクリレート60質量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート40質量%とからなる。このうち、反応に関与するのは、水酸基を有するペンタエリスリトールトリアクリレートのみである。)202.0部を30℃で1時間かけて滴下後、60℃で3時間加熱攪拌することで特定有機化合物(S1)を得た。
生成物の赤外吸収スペクトルは原料中のメルカプト基に特徴的な2550cm−1の吸収ピーク及びイソシアネート基に特徴的な2260cm−1の吸収ピークが消失し、新たに、[−O−C(=O)−NH−]基及び[−S−C(=O)−NH−]基中のカルボニルに特徴的な1660cm−1のピーク及びアクリロイル基に特徴的な1720cm−1のピ−クが観察され、重合性不飽和基としてのアクリロイル基と[−S−C(=O)−NH−]基、[−O−C(=O)−NH−]基を共に有する特定有機化合物が生成していることを示した。
【0041】
(製造例2)
反応性シリカ粒子((E)成分)の製造
製造例1で製造した組成物9.36部(重合性不飽和基を有する有機化合物(A)を7.28部含む)、シリカ粒子分散液FM−01(シリカ濃度30%、アデカ製MEKゾル)98.07部、イオン交換水0.13部、及びp−ヒドロキシフェニルモノメチルエーテル0.01部の混合液を、60℃、4時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.45部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌することで反応性粒子の分散液を得た。この分散液をアルミ皿に2g秤量後、175℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、35.7%であった。また、分散液を磁性るつぼに2g秤量後、80℃のホットプレート上で30分予備乾燥し、750℃のマッフル炉中で1時間焼成した後の無機残渣より、固形分中の無機含量を求めたところ、77.7%であった。
このシリカ系粒子の平均粒子径は、20nmであった。ここで、平均粒子径は透過型電子顕微鏡により測定した。
【0042】
(実施例1)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 190部、Irg184 9.99部、BYK−063 0.01部、メチルイソブチルケトン160部および、メチルエチルケトン 40部をフラスコに入れ室温で30分間攪拌し均一な混合液を得た。
【0043】
(実施例2)
製造例2で製造した反応性粒子(E) 343.2部(固形分102.96部、MEK240.24部)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 86.53部、Irg184 10.5部、BYK−063 0.01部、メチルイソブチルケトン(60.0)部、メチルイソブチルケトン160部をフラスコに入れ室温で30分間攪拌し均一な混合液とした後、減圧濃縮し、 を得た。
【0044】
(比較例1〜4)
下記表1に示す組成とした他は、実施例1と同様にして各硬化性組成物を得た。
【0045】
<組成物の消泡性評価>
得られた各硬化性組成物 50gを、100mlのサンプル瓶に入れ、10秒間激しく振盪させ、泡が消えるまでの時間を測定した。
【0046】
<硬化膜の製造>
実施例1〜4及び比較例1〜3で製造した各組成物を80μm厚のTAC基材上に30ミルのバーコーターを用いて塗工し、膜厚が12μmの塗膜を得た。これを80℃のオーブンに1分間入れ、乾燥を行った。この後フィルムを、空気中で高圧水銀灯を用いて50mJ/cmの照射スピードで4回高圧水銀ランプコンベアに通し合計200mJ/cmを照射して硬化を行った。
【0047】
<硬化膜の特性評価>
得られた各硬化膜について、鉛筆硬度の評価を行った。
評価方法は、JIS K5600−5−4に準拠し、鉛筆硬度を測定した。
【0048】
【表1】

【0049】
表1中の商品名は次のものを表す。
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
Irg 184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製
BYK−063:含フッ素ポリシロキサン系消泡剤、ビックケミー・ジャパン製
AC−901:シリコーン系消泡剤、共栄社化学製
MEK:メチルエチルケトン
MIBK:メチルイソブチルケトン
【0050】
表1の結果から、特定の消泡剤を配合することで、消泡効果が高いため泡による塗布異常を抑えることができ、高い硬度を有する硬化膜が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の硬化物は、高硬度であるため、CD、DVD、MO等の記録用ディスク、プラスチック光学部品、タッチパネル、フィルム型液晶素子、プラスチック容器、建築内装材としての床材、壁材、人工大理石等の傷付き(擦傷)防止や汚染防止のための保護コーティング材、又は、フィルム型液晶素子、タッチパネル、プラスチック光学部品等の反射防止膜等として特に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(D):
(A)分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(B)光ラジカル重合開始剤
(C)フッ素を含有するポリシロキサン系消泡剤
(D)有機溶剤
を含有する硬化性組成物。
【請求項2】
さらに、(E)金属酸化物粒子を含有する請求項1に記載の硬化性組成物。

【公開番号】特開2009−185184(P2009−185184A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27004(P2008−27004)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】