説明

硬化性組成物

【課題】
耐熱耐久性、耐光耐久性に優れ、かつ、集合基板封止後の基板の反りが小さい硬化物を与えうる硬化性組成物を得ることである。
【解決手段】
(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物(ただし、シロキサン骨格のみからなる化合物を除く)、(C)ヒドロシリル化触媒を必須成分として含有する硬化性組成物であり、耐熱耐久性、耐光耐久性に優れ、かつ、樹脂硬化後の薄板(被着体)の反りが小さい硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性に優れた硬化性組成物に関する。さらに詳しくは、耐熱耐久性、耐光耐久性に優れ、かつ、集合基板封止後の基板の反りの改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、受光、発光素子などの光半導体の保護・封止材といった光学材料用高分子材料には、高い透明性と硬度が要求されており、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリ−カーボネート樹脂、シクロオレフィン系樹脂などが使用されてきたが、近年、発光素子の高輝度化が進み、周辺部材が晒される熱的、光的環境がより苛酷になってきている。その結果、これまで使用されてきた樹脂では限界が生じている。
【0003】
このため、耐熱、耐光耐久性に優れた樹脂を用いることが提案されている。例えば、特許文献1では、イソシアヌレート骨格を有する化合物及びシロキサン骨格を有する化合物からなる硬化性樹脂を光記録機器や光学機器の保護フィルム、接着剤、受光センサー、コーティング剤、封止剤等に用いることが提案されている。
【0004】
しかしながら、例えば特許文献2に記載されているような薄板に特許文献1に記載の樹脂を塗布し、硬化した場合、樹脂の硬化収縮に伴う薄板(被着体)の反りが顕著であり、その後の加工が非常に困難になる。
【0005】
そのため、耐熱耐久性、耐光耐久性に優れ、かつ、樹脂硬化後の薄板(被着体)の反りが小さい透明樹脂の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−241614号公報
【特許文献2】特開2000−58718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
耐熱耐久性、耐光耐久性に優れ、かつ、樹脂硬化後の薄板(被着体)の反りが小さい硬化物を与えうる硬化性組成物を提供することにある。さらに詳しくは、耐熱耐久性、耐光耐久性に優れ、かつ、集合基板封止後の基板の反りが小さい硬化物を得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討した結果、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、特定のSiH基含有ケイ素化合物、ヒドロシリル化触媒に、適切な量の特定の鎖状オルガノポリシロキサンを添加することで、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記(A)〜(C)からなり、(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合と(B)成分のSiH基のモル比率が(A):(B)=1:2.0〜1:5.0である硬化性組成物を用いることを特徴とする、硬化後の被着体の反りの改善方法(請求項1)である。
(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、
(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、
(C)ヒドロシリル化触媒を含有する請求項1に記載の硬化性組成物
また本発明は、集合基板封止後の基板の反りが小さいことを特徴とする、請求項1記載の改善方法(請求項2)である。
また本発明は、上記(A)成分が一般式(I)
【0010】
【化1】

【0011】
(式中R1は、0〜3個の酸素原子を含み且つ構成元素としてC、H、N、O、Siのみを含む炭素数1〜50の一価の有機基、又は、炭素数1〜50の一価の炭化水素基を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよい。ただし式(I)中の3個のR1が、前記炭素−炭素二重結合を2個以上含む。)で表される有機化合物である、硬化後の被着体の反りの改善方法(請求項3)である。
また本発明は、上記(A)成分がトリアリルイソシアヌレートおよび/またはジアリルモノグリシジルイソシアヌレートである、硬化後の被着体の反りの改善方法(請求項4)である。
【0012】
また本発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の改善方法により得られた光学材料(請求項5)でもあり、請求項1〜4のいずれか一項に記載の改善方法により得られた電子材料(請求項6)でもあり、請求項1〜4のいずれか一項に記載の改善方法により得られた発光ダイオード(請求項7)でもある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の改善方法によれば、樹脂硬化後の薄板(被着体)の反りが小さく、さらに、透明性、耐熱耐久性、耐光耐久性に優れた硬化物を得られうる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するにあたって好ましい形態について説明する。
【0015】
まず、本発明における(A)成分について説明する。
【0016】
(A)成分としては、耐熱性および透明性が高いという観点からは、下記一般式(I)
【0017】
【化2】

【0018】
(式中R1は、0〜3個の酸素原子を含み且つ構成元素としてC、H、N、O、Siのみを含む炭素数1〜50の一価の有機基又は、炭素数1〜50の一価の炭化水素基を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよい。ただし式中の3個のR1が、前記炭素−炭素二重結合を2個以上含む。)で表される化合物が好ましい。
【0019】
上記一般式(I)のR1としては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、3個以下の酸素原子を含み且つ構成元素としてC、H、N、O、Siのみを含む炭素数1〜20の一価の有機基又は、炭素数1〜20の一価の炭化水素基であることが好ましく、3個以下の酸素原子を含み且つ構成元素としてC、H、N、O、Siのみを含む炭素数1〜10の一価の有機基又は、炭素数1〜10の一価の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1〜4の一価の炭化水素基であることがさらに好ましい。ここで、炭化水素基とはアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。これらの好ましいR1の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、
【0020】
【化3】

【0021】
等が挙げられる。
【0022】
上記一般式(I)のR1としては、得られる硬化物の各種材料との接着性が良好になりうるという観点からは、3つのR1のうち少なくとも1つがエポキシ基を一つ以上含む炭素数1〜50の一価の炭化水素基であることが好ましく、これらの好ましいR1の例としては、グリシジル基、
【0023】
【化4】

【0024】
等が挙げられる。
【0025】
上記一般式(I)のR1としては、反応性が良好になるという観点からは、3つのR1のうち少なくとも1つが
【0026】
【化5】

【0027】
で表される基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましく、下記一般式(II)
【0028】
【化6】

【0029】
(式中R2は水素原子あるいはメチル基を表す。)で表される基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることがより好ましく、
3つのR1のうち少なくとも2つが下記一般式(III)
【0030】
【化7】

【0031】
(式中R3は直接結合あるいは炭素数1〜48の二価の有機基を表し、R4は水素原子あるいはメチル基を表す。)で表される有機化合物(複数のR3およびR4はそれぞれ異なっていても同一であってもよい。)であることがさらに好ましい。
【0032】
上記一般式(III)のR3は、直接結合あるいは炭素数1〜48の二価の有機基であるが、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、直接結合あるいは炭素数1〜20の二価の有機基であることが好ましく、直接結合あるいは炭素数1〜10の二価の有機基であることがより好ましく、直接結合あるいは炭素数1〜4の二価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいR3の例としては、
【0033】
【化8】

【0034】
等が挙げられる。
【0035】
上記一般式(III)のR3としては、得られる硬化物の化学的な熱安定性が良好になりうるという観点からは、直接結合あるいは2つ以下の酸素原子を含みかつ構成元素としてC、H、Oのみを含む炭素数1〜48の二価の有機基であることが好ましく、直接結合あるいは炭素数1〜48の二価の炭化水素基であることがより好ましい。これらの好ましいR3の例としては、
【0036】
【化9】

【0037】
が挙げられる。
【0038】
上記一般式(III)のR4は、水素原子あるいはメチル基であるが、反応性が良好であるという観点からは、水素原子が好ましい。
【0039】
ただし、上記のような一般式(I)で表される有機化合物の好ましい例においても、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有することは必要である。耐熱性をより向上し得るという観点からは、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に3個以上含有する有機化合物であることがより好ましい。
【0040】
以上のような一般式(I)で表される有機化合物の好ましい具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、
【0041】
【化10】

【0042】
等が挙げられる。
【0043】
次に、本発明における(B)成分について説明する。
【0044】
本発明の(B)成分は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物である。
【0045】
(B)成分については1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物であれば特に制限がなく、例えば国際公開WO96/15194に記載される化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するもの等が使用できる。
【0046】
これらのうち、入手性の面からは、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状オルガノポリシロキサンが好ましく、(A)成分との相溶性が良いという観点からは、さらに、下記一般式(IV)
【0047】
【化11】

【0048】
(式中、R5は炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状オルガノポリシロキサンが好ましい。
【0049】
一般式(IV)で表される化合物中の置換基R5は、C、H、Oから構成されるものであることが好ましく、炭化水素基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0050】
一般式(IV)で表される化合物としては、入手容易性の観点からは、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
【0051】
また、前記(A)成分と良好な相溶性を有するという観点からは、鎖状又は環状ポリオルガノシロキサンと、炭素−炭素二重結合を有する有機化合物から選ばれた一種以上の化合物(以降(D)成分と称する。)との反応物も好適に使用できる。この場合、反応物と(A)成分との相溶性をより高めるために、反応物から未反応のシロキサン類を脱揮などにより除去したものをもちいることもできる。
【0052】
(D)成分はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1個含有する有機系骨格からなる有機化合物であって、前記(A)成分と同じ説明のものも使用できる。(B)成分の(A)成分に対する相溶性を高くし得るという観点からは、(D)成分の好ましい具体例として、ノボラックフェノールのアリルエーテル及びビスフェノールAジアリルエーテル、2,2’−ジアリルビスフェノールA、ジアリルフタレート、フタル酸のビス(2−アリルオキシエチル)エステル、スチレン、α−メチルスチレン、アリル末端プリプロピレンオキシド及びポリエチレンオキシド、トリアリルイソシアヌレートなどが挙げられる。(D)成分の有機化合物は、単独もしくは2種類以上のものを混合して用いることが可能である。
【0053】
(B)成分の分子量は特に制約はなく任意のものが好適に使用できるが、より流動性を発現しやすいという観点からは低分子量のものが好ましく用いられる。この場合、好ましい分子量の下限は50であり、好ましい分子量の上限は100,000、より好ましくは50,000、さらに好ましくは10,000である。
【0054】
上記したような各種(B)成分は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0055】
反応時の触媒混合方法としては、各種方法をとることができるが、(A)成分にヒドロシリル化触媒((C)成分)を混合したものを、(B)成分に混合する方法が好ましい。(A)成分と(B)成分との混合物にヒドロシリル化触媒を混合する方法では反応の制御が困難な場合がある。また、(B)成分とヒドロシリル化触媒((C)成分)を混合したものに(A)成分を混合する方法では、ヒドロシリル化触媒((C)成分)の存在下(B)成分が混入している水分と反応性を有するため、変質することがある。
【0056】
反応温度としては種々設定できるが、好ましい温度範囲の下限は30℃、より好ましくは50℃であり、好ましい温度範囲の上限は200℃、より好ましくは150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなる傾向があり、反応温度が高いと工業的に不利な場合がある。反応は一定の温度で行ってもよく、また必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。
【0057】
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。反応時間については特に限定されない。経済的な面からは、好ましくは20時間以内、さらに好ましくは10時間以内である。圧力も特に限定されないが、特殊な装置が必要になったり、操作が煩雑になったりする、という面から、好ましくは大気圧〜5MPa、さらに好ましくは大気圧〜2MPaである。
【0058】
ヒドロシリル化反応の際に溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、クロロホルムが好ましい。使用する溶媒量も適宜設定できる。
【0059】
溶媒の使用量は、特に限定されないが、反応を均一、かつ、促進させるためには、(A)成分を完全に溶解できる量が好ましい。(A)成分100重量部に対して20重量部以上500重量部以下が好ましく、50重量部以上300重量部以下がより好ましい。
【0060】
その他、反応性を制御する目的等のために種々の添加剤を用いてもよい。
【0061】
ヒドロシリル化反応後に、溶媒並びに/または未反応のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機系化合物(A)と1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するポリオルガノシロキサン(B)を除去することもできる。これらの揮発分を除去することにより、得られる硬化剤が揮発分を有さないため、硬化の場合に揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい。除去する方法としては例えば、減圧脱揮の他、活性炭、ケイ酸アルミニウム、シリカゲル等による処理等が挙げられる。減圧脱揮する場合には低温で処理することが好ましい。この場合の好ましい温度の上限は120℃であり、より好ましくは100℃である。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。
【0062】
以上のような、硬化剤の例としては、トリアリルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジビニルベンゼンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビスフェノールAジアリルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物や、ビス〔4−(2−アリルオキシ)フェニル〕スルホンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物がより好ましい。
【0063】
本発明では、(B)成分は単独又は2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0064】
(A)成分と(B)成分の混合比率は、(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合と(B)成分のSiH基のモル比率が、(A):(B)=1:2.0〜1:5.0であることが好ましい。(A):(B)は、1:2.1〜1:4.5であることがより好ましく、1:2.5〜1:3.5であることがさらに好ましい。比の値〔(A)/(B)〕が1/2よりも大きい場合は、充分な反り低減効果が得られず、比の値〔(A)/(B)〕が1/5よりも小さい場合は、充分な強度が得られない場合があり、耐熱性も低くなりうる。
【0065】
次に、(C)成分であるヒドロシリル化触媒について説明する。
【0066】
ヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、例えば、白金の単体;アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;塩化白金酸;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体;白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2=CH22(PPh32、Pt(CH2=CH22Cl2);白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)a、Pt[(MeViSiO)4b);白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34);白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)34、Pt[P(OBu)34)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、a、bは、整数を示す。);ジカルボニルジクロロ白金;カールシュテト(Karstedt)触媒;アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び第3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体;ラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒等が挙げられる。さらに、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0067】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4等が挙げられる。
【0068】
これらの中では、触媒活性の点から、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0069】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能である。助触媒の例としては、トリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物、水等が挙げられる。
【0070】
助触媒の添加量は特に限定されないが、上記ヒドロシリル化触媒1モルに対して、下限1×10-5モル、上限1×102モルの範囲が好ましく、より好ましくは下限1×10-3モル、上限50モルの範囲である。上記触媒には助触媒を併用することができる。
(C)成分の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるために、SiH基1モルに対して、10-1〜10-8モルの範囲が好ましく、より好ましくは、10-2〜10-6モルの範囲である。
【0071】
本発明の硬化性組成物には、接着性改良剤を添加することができ、接着性改良剤として例えば、シランカップリング剤及び/又はエポキシ基含有化合物が挙げられる。
【0072】
シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。
【0073】
有機基と反応性のある官能基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0074】
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
【0075】
シランカップリング剤の添加量としては種々設定できるが、[(A)成分+(B)成分]100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは0.5重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは25重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0076】
エポキシ基含有化合物としては種々のエポキシ樹脂が例示される。エポキシ樹脂としては、例えば、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等のエポキシ樹脂を、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、水素化メチルナジック酸無水物等の脂肪族酸無水物で硬化させるものが挙げられる。これらのエポキシ樹脂あるいは硬化剤はそれぞれ単独で用いても、複数のものを組み合わせてもよい。
【0077】
エポキシ基含有化合物の添加量としては種々設定できるが、[(A)成分+(B)成分]100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは0.5重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは25重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0078】
これらのシランカップリング剤、エポキシ基含有化合物は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0079】
また、本発明においてはカップリング剤やエポキシ基含有化合物の硬化を高めるために、シラノール縮合触媒を用いることができ、接着性の向上及び/又は安定化が可能である。シラノール縮合触媒の代表例としてはほう酸エステルが挙げられ、下記一般式(V)、(VI)で示されるものを好適に用いることが出来る。
B(OR63 (V)
B(OCOR63 (VI)
(式中R13は炭素数1〜48の有機基を表す。)
【0080】
上記一般式(V)、(VI)の具体例として、ほう酸トリ−2−エチルヘキシル、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリノルマルオクチル、ほう酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリ−sec−ブチル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピル、ほう酸トリアリル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリメチル、ほう素メトキシエトキサイドを好適に用いることができる。
【0081】
シラノール縮合触媒は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を混合して用いても良い。混合は事前に行なっても良く、また硬化物作製時に混合しても良い。
【0082】
入手性の点からほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリノルマルブチルが好ましく、ほう酸トリメチルがさらに好ましい。
【0083】
硬化時の揮発性を抑制出来る点から、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリノルマルオクチル、ほう酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリ−sec−ブチル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピル、ほう酸トリアリル、ほう素メトキシエトキサイドが好ましく、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリフェニル、ほう酸トリノルマルブチルがさらに好ましい。
【0084】
揮発性の抑制、作業性の点からほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピルが好ましく、ほう酸トリノルマルブチルがさらに好ましい。
【0085】
高温下での着色性が低い点からほう酸トリエチルが好ましく、ほう酸トリメチルがさらに好ましい。
【0086】
シラノール縮合触媒を用いる場合の使用量は種々設定できるが、カップリング剤100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは1重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは30重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0087】
また、本発明においては接着性改良効果をさらに高めるために、さらにシラノール源化合物を用いることができ、接着性の向上および/あるいは安定化が可能である。本明細書中におけるシラノール源化合物とはシラノール基もしくはアルコキシシリル基を1分子中に1個以上有する化合物を指す。このようなシラノール源としては、例えばトリフェニルシラノール、ジフェニルジヒドロキシシラン等のシラノール化合物、ジフェニルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン類等を挙げることができる。
【0088】
シラノール源化合物を用いる場合の使用量は種々設定できるが、カップリング剤あるいは/およびエポキシ化合物エポキシ化合物100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは1重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは30重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0089】
また、これらのシラノール源化合物は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0090】
本発明の硬化性組成物は、溶剤を添加して粘度を調整し、作業性を向上させることも可能である。使用できる溶剤としては、特に限定されるものではないが、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸n−ブチル、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶剤等を好適に用いることができる。また、当該溶剤は単独で使用してもよく、2種類以上の混合溶剤として用いることもできる。
【0091】
使用する溶剤量は、[(A)成分+(B)成分]100重量部に対して、下限0.1重量部、上限100重量部の範囲で用いるのが好ましく、下限0.5重量部、上限50重量部の範囲で用いるのがより好ましく、下限1重量部、上限30重量部の範囲で用いるのがさらに好ましい。使用量が0.1重量部より少ないと、低粘度化の効果が得られにくくなる傾向があり、使用量が100重量部より多いと、材料に溶剤が残留して耐熱性の低下等の問題となり易く、またコスト的にも不利になり易い傾向がある。
【0092】
本発明の硬化性組成物の保存安定性を改良する目的、又は、製造過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、硬化遅延剤を使用することができる。硬化遅延剤としては、例えば、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上併用してよい。
【0093】
脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、プロパルギルアルコール類、エン−イン化合物類、マレイン酸エステル類等が例示される。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示される。有機硫黄化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示される。窒素含有化合物としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジン等が例示される。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示される。有機過酸化物としては、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸tert−ブチル等が例示される。
【0094】
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが好ましい。
【0095】
硬化遅延剤の添加量は、使用するヒドロシリル化触媒1モルに対して、下限10-1モル、上限103モルの範囲が好ましく、より好ましくは下限1モル、上限50モルの範囲である。
【0096】
次に、本発明の硬化性組成物の特性を改質する目的で添加することが可能な種々の樹脂について説明する。当該樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、エポキシ樹脂、シアナート樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて無機フィラーを添加してもよい。無機フィラーを添加すると、材料の高強度化や難燃性向上などに効果がある。無機フィラーとしては、微粒子状のものが好ましく、アルミナ、水酸化アルミニウム、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ、疎水性超微粉シリカ、タルク、硫酸バリウム、蛍光体等を挙げることができる。
【0098】
フィラーを添加する方法としては、例えば、アルコキシシラン、アシロキシシラン、ハロゲン化シラン等の加水分解性シランモノマー又はオリゴマーや、チタン、アルミニウム等の金属のアルコキシド、アシロキシド又はハロゲン化物等を、本発明の硬化性組成物に添加して、組成物中あるいは組成物の部分反応物中で反応させ、組成物中で無機フィラーを生成させる方法等も挙げることができる。
【0099】
本発明で得られる硬化性組成物には老化防止剤を添加してもよい。老化防
止剤としては、ヒンダートフェノール系等一般に用いられている老化防止剤の他、クエン酸やリン酸、硫黄系老化防止剤等が挙げられる。
【0100】
ヒンダートフェノール系老化防止剤としては、チバスペシャリティーケミカルズ社から入手できるイルガノックス1010をはじめとして、各種のものが用いられる。
【0101】
硫黄系老化防止剤としては、メルカプタン類、メルカプタンの塩類、スルフィドカルボン酸エステル類や、ヒンダードフェノール系スルフィド類を含むスルフィド類、ポリスルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、スルホニウム化合物、チオアルデヒド類、チオケトン類、メルカプタール類、メルカプトール類、モノチオ酸類、ポリチオ酸類、チオアミド類、スルホキシド類等が挙げられる。
【0102】
また、これらの老化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0103】
本発明で得られる硬化性組成物にはラジカル禁止剤を添加してもよい。ラジカル禁止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス(メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系ラジカル禁止剤や、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−第二ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン系ラジカル禁止剤等が挙げられる。
【0104】
また、これらのラジカル禁止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0105】
本発明で得られる硬化性組成物には紫外線吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート等が挙げられる。
【0106】
これらの紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0107】
本発明の硬化性組成物には、その他、難燃剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、アンチモン−ビスマス等のイオントラップ剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、加工安定剤、反応性希釈剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、接着性付与剤、物性調整剤等を、本発明の目的及び効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0108】
本発明の硬化性組成物は、上記各成分を混合等することにより得られる。
【0109】
また、本発明の硬化性組成物を硬化させる方法としては、特に限定されないが、各成分を単に混合するだけで反応させることもできるし、加熱して反応させることもできる。反応が速く、一般に耐熱性の高い材料が得られ易いという観点から、加熱して反応させる方法が好ましい。
【0110】
反応温度としては種々設定できるが、下限25℃、上限300℃の温度範囲が好ましく、下限50℃、上限280℃がより好ましく、下限100℃、上限260℃がさらに好ましい。反応温度が25℃より低いと十分に反応させるための反応時間が長くなる傾向があり、反応温度が300℃より高いと製品の熱劣化が生じ易くなる傾向がある。
【0111】
反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うより、多段階的あるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が、歪のない均一な硬化物が得られ易いという点で好ましい。
【0112】
反応時の圧力も必要に応じて種々設定でき、常圧、高圧又は減圧状態で反応させることもできる。
【0113】
また、本発明の硬化性組成物を硬化させる方法として、一旦、Bステージ化した後に硬化させることもできる。
【0114】
本発明の硬化性組成物又は硬化物は、特に限定されるわけではないが、光学材料または電子材料に好適である。
【0115】
本発明で言う光学材料とは、可視光、赤外線、紫外線、X線、レーザー等の光をその材料中を通過させる用途に用いる材料一般を示す。
【0116】
形状は、フィルムやシートといった薄膜状のものやレンズやプリズムといったバルク状のもの等、様々な形の光学部品にすることができる。例えば、カメラ(スチールカメラ、デジタルカメラ、防犯カメラ、携帯電話用カメラ等)や光学計測機器、光メモリー機材等に使用される各種レンズやプリズムや光半導体の封止剤、導光板、プリズムシート、偏向板といった各種透明フィルムやシートといった用途が挙げられる。
【0117】
本発明で言う電子材料とは、電気・電子用途一般に用いられる材料を示し、半導体素子等の封止材料、ダイボンド剤、導電性接着剤、ビルトアップ基板を含む多層基板の層間接着剤、パッシベーション膜、ソルダーレジスト等が挙げられる。
【実施例】
【0118】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
【0119】
(合成例1)
2Lオートクレーブにトルエン696g、1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサン556gを加えて、内温が104℃になるように加熱した。そこに、トリアリルイソシアヌレート80g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.05g、トルエン60gの混合物を滴下し、7時間加熱撹拌させた。未反応の1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去した。1H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応したもの(反応物Aと称す、SiH価:9.4mmol/g)であることがわかった。生成物は混合物であるが、本発明の(B)成分であるものを主成分として含有している。また、本発明の(C)成分である白金ビニルシロキサン錯体を含有している。
【0120】
なお、反応後のSiH基価はバリアン・テクノロジーズ・ジャパン・リミテッド製、300MHz NMR装置を用い、1,2−ジブロモエタン換算でのSiH基価(mmol/g)として求めた。
【0121】
(実施例1〜3および比較例1)
下記表1に従い配合した。(A)成分としてトリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートを用い、(B)成分として反応物A(合成例1の合成物)を用い、(C)成分として白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金3重量%含有)を用い、表1に示した配合で硬化性組成物を作製した。
【0122】
【表1】

【0123】
配合物を攪拌、脱泡したものを硬化性組成物とした。この硬化性組成物を、2枚のガラス板に3mm厚みのシリコーンゴムシートをスペーサーとして挟み込んで作製したセルに流し込み、60℃、70℃、80℃、100℃、120℃、150℃/各1時間、180℃/30分間加熱し硬化物を得た。
【0124】
得られた各硬化性組成物および各硬化物について、透明性・耐熱性・耐光性・硬化後の基板の反りを以下に述べる試験方法により測定した。
【0125】
(硬化物の透明性)
得られた硬化物(3mm厚)の470nmにおける光線透過率を分光光度計(U−3300、日立)で測定した。
【0126】
(耐熱性試験)
硬化物を200℃に熱したガラスに24時間挟みこんで耐熱性試験を行った。耐熱性試験後の硬化物について、470nmの光線透過率を分光光度計(U−3300、日立)で測定した。
【0127】
(耐光性試験)
硬化物をメタリングウェザーメーター(スガ試験機(株)社製、形式M6T)を用い、構内温度120℃、放射照度0.53kW/m2で、積算放射照度50MJ/m2まで照射して耐光性試験を行った。耐光性試験後の硬化物について、470nmの光線透過率を分光光度計(U−3300、日立)で測定した。
【0128】
(硬化後の基板の反り)
100×50×0.3mmのFR4(ガラス繊維強化エポキシ)の板の4辺にダムを作製(高さ0.5〜1.0mm程度)したもの(以下、基板と称する。)に上記硬化性組成物約1.5gを流し込み、150℃1時間、180℃30分間加熱して硬化させた。硬化後の基板を水平な場所に置き、一番高く反り返った角の高さを測定した。
【0129】
上記の条件で作製し、測定したデータを表2に示す。
【0130】
【表2】

【0131】
本発明による硬化剤を用いた硬化物は、光学的透明性、耐熱耐久性、耐光耐久性を保持しつつ、硬化後の基板の反りが小さいことが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(C)からなり、(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合と(B)成分のSiH基のモル比率が(A):(B)=1:2.0〜1:5.0である硬化性組成物を用いることを特徴とする、硬化後の被着体の反りの改善方法。
(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、
(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、
(C)ヒドロシリル化触媒を含有する請求項1に記載の硬化性組成物
【請求項2】
集合基板封止後の基板の反りが小さいことを特徴とする、請求項1記載の改善方法。
【請求項3】
上記(A)成分が一般式(I)
【化12】

(式中R1は、0〜3個の酸素原子を含み且つ構成元素としてC、H、N、O、Siのみを含む炭素数1〜50の一価の有機基、又は、炭素数1〜50の一価の炭化水素基を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよい。ただし式(I)中の3個のR1が、前記炭素−炭素二重結合を2個以上含む。)で表される有機化合物である、請求項1又は2に記載の改善方法。
【請求項4】
上記(A)成分がトリアリルイソシアヌレートおよび/またはジアリルモノグリシジルイソシアヌレートである、請求項1〜3いずれか一項に記載の改善方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の改善方法により得られた光学材料。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の改善方法により得られた電子材料。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の改善方法により得られた発光ダイオード。

【公開番号】特開2010−265361(P2010−265361A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116739(P2009−116739)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】