説明

硬化系における付加共重合型分岐コポリマーの使用

【課題】 本発明は、合成後に硬化可能な系における付加共重合型分岐コポリマー(分岐した付加共重合体)の使用に関するものである。さらには、前記の硬化系を作製する方法、係るコポリマーを含有する組成物を調製する方法、および係る組成物のコーティング、インク、シーラント、接着剤、または複合材料などにおける使用法にも関する。
【効果】 前記の付加共重合型分岐コポリマーを合成し、爾後に硬化せしめることで、ポリマー被覆、シーラント、インク、接着剤、または複合材料などを生ぜしめることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は付加共重合型分岐コポリマー(分岐した付加共重合体)に関するものである。より具体的には、合成後に硬化することでポリマーコーティング、シーラント、接着剤、または複合材料などを形成させることが可能な系における付加共重合型分岐コポリマーの使用に関する。さらには、前記の硬化系を作製する方法、かかるコポリマーを含有する組成物を調製する方法、かかる組成物のコーティング、インク、シーラント、接着剤、または複合材料など(ただしこれらに限定されない)における使用法にも関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、架橋反応により硬化可能な付加共重合型分岐コポリマー(分岐した付加共重合体)と、コーティング、インク、シーラント、接着剤、または複合材料などにおけるその使用とに関する。
【0003】
現今、化学反応によって事後修飾可能な固有の官能基を持つポリマーを調製することが可能である。前記の化学反応は1つのポリマー上の複数の官能基間で行われる場合もあり、あるいは複数のポリマー間で行われる場合もある。さらに、前記の化学反応は触媒剤または重合開始剤の存在下で行ってもよく、あるいは特定の小分子を用いてもよい。これらが目的とするところは、いずれも3次元架橋マトリクスを形成させることである。この事後化学修飾反応は「硬化反応」と呼ばれることが多く、分子内共有結合、分子間共有結合、分子内イオン結合、または分子間イオン結合を形成することができる。通常の硬化反応は製品の最終形状においてその場(in-situ)で行われ、一体成形物またはコーティングの調製品などを生成し得る。
【0004】
反応性部分をポリマー中に導入するには、適当な反応性モノマーを選択するか、あるいは調製後のポリマーを後官能化することができる。次にそれらの官能基同士を反応させて(例えば不飽和基の取り込みによる)、場合によっては好適な触媒剤または重合開始剤を用いて、硬化させる。それに代えて、相互反応性ユニットが同一のポリマー構造中に含有されていてもよく、あるいはある官能基を持つポリマーと、それに相補的な反応性ユニットを持つポリマーまたは小分子とを反応させてもよい。
【0005】
好適な硬化反応の例としては、側鎖アルケンユニット(例えばビニルユニットまたはアリルユニット)の重合が挙げられる。あるいは、2つの反応性ユニット間で硬化反応を行って共有結合(例えばエステル結合形成、アミド結合形成、エポキシド開環、ウレタン結合形成、尿素結合形成、求核置換、求核付加、求電子置換、もしくは求電子付加)を形成させてもよく、またはイオン結合形成(例えば塩橋形成)によって硬化反応を行ってもよい。
【0006】
硬化反応は雰囲気温度下で行ってもよく、加熱法により行ってもよく、あるいは光化学反応(通常はUVを用いる)により行ってもよい。さらに加えて重合開始剤(例えば反応種としてアルケンユニットを持つフリーラジカル重合開始剤)を用いてもよい。また、触媒剤(例えば、エステル結合形成もしくはアミド結合形成の場合は強酸、ウレタン結合形成もしくは尿素結合形成の場合は遷移金属化合物)を用いて硬化ステップを促進してもよい。
【0007】
硬化ポリマーの利点は非硬化材料よりも耐候性であることであり、これはその架橋網目構造によってもたらされる。しかしながら、その硬化メカニズムゆえに硬化材料は本質的に難加工性であり、架橋ステップ前に所望の最終製品形状に予備形成することが必要となる。
【0008】
硬化ポリマーコーティング剤(所謂2液性製剤など)は、多数の用途に用いられる。上述のように硬化ステップにおいて3次元網目構造が形成されることによって、コーティングの耐候性が増強される。かかる製剤の例としては、アルキド系、エポキシ系、またはポリウレタン系が挙げられる。
【0009】
通常のポリマー複合材料は、不活性マトリックス(またはフィラー)と硬化性ポリマーと、場合により溶剤とからなる。これらの材料を硬化するには、通常は開始剤、触媒、または反応性低分子補助剤を添加する。複合材料の利用用途は、成形物の製造または層状構造物の製造である(例えばガラス繊維樹脂複合材料または炭素繊維樹脂複合材料)。
【0010】
優良な接着剤およびシーラントを製造するための原料としても、硬化性ポリマー組成物を用いることができる。この場合には、硬化反応が官能性ポリマーと基質との間で起こることが有利である。
【0011】
上記で列記した事例には、種々の化学反応法が利用可能である。本質的には、2分子間に共有結合またはイオン結合を形成可能な任意の反応を用いることができる。次に挙げるリストは、ポリマー中に導入されて硬化ポリマーを生成させ得る官能基および反応の例示的リストである。
【0012】
下記の全ての例では、ポリマー構造中に官能基を導入するために官能モノマーを用いることができる。あるいはその代わりに、予じめ形成したポリマーに対してさらに反応ステップを加えることによって反応性部分を導入する。殆どの場合、分子間反応と分子内反応の両方が起こる。
【0013】
<アルケン重合>
不飽和炭素−炭素ユニット(例えばアルケン結合系のユニット)は本質的に重合可能であり、通常はフリーラジカル反応によって重合できる。かかるメカニズムの重合反応を行うには、フリーラジカル開始剤を導入して、次に加熱、紫外線、または化学的方法(例えば酸化還元反応)を用いて解離させることで、フリーラジカルを生じさせる。フリーラジカルが不飽和ユニットと反応することで、硬化したポリマーが得られる。アルキド系の場合は、遷移金属触媒の「ドライヤー」を用いてフリーラジカルを生じさせる。この種の硬化法には、通常は官能性アリルポリマー、官能性ビニルポリマー、または官能性アルキドポリマーを用いる。
【0014】
以下の例に記載する相互反応性の炭素ユニット同士は、同一のポリマー構造中に存在してもよい。あるいは、それらの反応性部分は2個のポリマー間の反応により生じてもよく、または1個のポリマーと1個の小分子との反応により生じてもよい。その場合には、各ポリマーまたは小分子上の相補的な官能基が反応してよい。
【0015】
<エステル形成またはアミド形成>
アルコール官能基またはアミン官能基とカルボン酸官能基とを反応させて、それぞれエステル結合ユニットまたはアミド結合ユニットを得ることができる。通常のこれらの結合反応は、強酸触媒存在下で加熱することによって開始する。異なる方法でこれらの結合を生成するには、アルコールまたはアミンと酸無水物またはアズラクトンとを反応させるか、あるいは活性化エステルのエステル転移またはアミド基転移を行う(これは、例えばメチルアクリルアミドグリコレートメチルエーテル単量体の場合に見られる)。
【0016】
<エポキシド開環>
この場合は、エポキシド環を持つ化合物と求核物質(通常は一級アミンまたは二級アミン)とを反応させる。このアミン−エポキシ反応は、ヒドロキシル系化学種(例えばフェノール類およびアルコール溶媒)により触媒される。エポキシドは、トリアルキルまたはアリールホスフィン触媒存在下でその他の求核種(例えばチオールまたはカルボン酸)とも反応できる。ルイス酸またはブレンステッド酸(例えばボロントリフルオリドまたはトリフルオロメタンスルホン酸)を用いて、エポキシドをホモポリマー化することもできる。
【0017】
<イソシアネートを用いた反応>
この反応では、活性水素を持つ基(例えばヒドロキシル基、チオール、またはアミン)とイソシアネート基とを反応させる。通常は、求核性の活性水素を含有するポリマーと、小分子量のジイソシアネートまたはポリイソシアネート(例えば2,4−トリエンジイソシアネート)とを反応させる。また、イソシアネートユニットと不安定な単官能活性化水素化合物とを反応させたブロックイソシアネートも使用可能である。この場合にはイソシアネートの反応性が抑えられるため、組成物を安定な1液性製剤の状態で保存することができる。
【0018】
<チオール/エン反応>
チオール/エン反応においては、チオール官能基と電子豊富なオレフィンとの間のラジカル反応によってチオエーテル結合を形成させる。通常のこれらの反応は光化学法により開始する。
【0019】
<ジスルフィドによる硬化>
2個のチオールユニットが1個のジスルフィドを形成する反応は、酸化処理(例えば過酸化水素の使用)により行うことができる。この硬化法は、特に接着剤およびシーラントに広く用いられている。
【0020】
<シリコーン硬化系>
シロキサン結合を形成させるには、アルキルオキシシラン官能基の反応を用いることができる。この場合には、カルボン酸(例えばアセトキシシリルユニットでは酢酸)の脱離によって硬化反応が進行する。この硬化反応は、シーラント系に多用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
線状ポリマーは溶解性が高く調製が容易であり、種々の用途に広く用いられている。しかしながらその構造ゆえに、線状ポリマーの溶液または溶融体は高粘稠性を被り得る上に、線状ポリマーの溶解または溶融により等方性溶液を得ることは困難であり得る(あるいは非常に長時間が要求され得る)。コーティング用途、シーラント用途、接着剤用途、または複合材料用途においては前記の線状ポリマー溶液の高粘性が問題となり得、実用的な製剤を調製するために大量の溶剤が必要とされる。溶剤が本質的に有機性である場合には、線状ポリマーを有効に用いるために大量の揮発性有機物質(VOC)が必要となり得る。多数の製剤のVOCレベル抑制のための法規制がいや増す現状では、このことは不都合である。さらに、通常の付加重合型線状ポリマーの官能基はポリマー主鎖の側鎖として存在するため、硬化反応が低速度になり得る。この原因は、ポリマー構造内部に存在する官能基の硬化反応中のアクセシビリティが低いことである。これは硬化時間の延伸をもたらし、熱硬化反応においては硬化温度の高温化を引き起こす。
【0022】
通常の線状ポリマー系の硬化速度は、関与する高分子の分子量に比例する。理想的には材料物質が高分子量であることが好ましい。しかしながら、製剤の分子量が増大すると溶液粘度または溶融体粘度が急激に上昇する。そのため、溶融法において製剤の高温化または溶剤(通常はVOC)含量を抑えるためには、分子量を犠牲にしなければならない。このような材料の硬化速度は小さく、プロセスの非効率化を招き得る。
【課題を解決するための手段】
【0023】
しかしながら本発見によれば、分岐構造を用いることでこれらの欠点(すなわちポリマー系の高粘性、低い硬化速度、または不完全な架橋)に処することが可能である。
【0024】
<分岐ポリマー>
分岐ポリマーとは、枝分かれ構造を持つ有限サイズのポリマー分子である。分岐ポリマーは架橋ポリマーの網目構造とは異なる。架橋ポリマーの網目構造は分子が相互に結合して無限サイズに成長し、通常は不溶性である。複数の事例において、分岐ポリマーは類似の線状ポリマーよりも有利な特性を持つ。例えば、通常の分岐ポリマー溶液の粘度は類似の線状ポリマー溶液よりも低い。また、高分子量の分岐ポリマーは、それに相当する線状ポリマーよりも容易に溶解することができる。加えて、分岐ポリマーは線状ポリマーよりも多くの末端基を持つ傾向があるため、概して表面修飾性に富む。本発見によれば、上記の特性ゆえに分岐ポリマーは種々の組成物の有用な成分であって、多数の用途において理想的な選択肢となる。
【0025】
分岐ポリマーまたは多分岐ポリマーは、硬化系に用いることもできる。デンドリマーとは異なって、通常の分岐ポリマーまたは多分岐ポリマーの分岐構造は最良のものではなく、その構造と分子量とは多分散的になり得る。しかしこれらの分岐ポリマーは相当するデンドリマーよりも容易に調製可能であって、基本構造が不完全で非単分散的であるにも関わらず多数の産業応用に適している。
【0026】
通常の分岐ポリマーを調製するには、適当なモノマーの縮重合による段階的成長機構を用いる。通常の分岐ポリマーは、選択されるモノマーと生成するポリマーの化学的官能性とポリマー分子量とによる制限を受ける。付加重合には、ワンステップ・プロセスを用いることができる。このプロセスにおいては、多官能モノマーを用いてポリマー鎖中に官能基を導入することで、官能基からポリマー分枝が成長できる。しかしながら従来のワンステップ・プロセスを用いるには制約があり、多官能モノマー量を慎重に(通常は実質的に0.5質量%未満に)調整して、ポリマーの重度の架橋と不溶性ゲルの形成とを回避しなくてはならない。この方法を使用するに当たり架橋を回避することは困難であって、希釈剤としての溶剤がない場合および/またはモノマー/ポリマーの変換率が高い場合には、特に困難である。
【0027】
特許文献1には分岐ポリマーを調製する方法が開示されており、その方法は次のステップを含む。すなわち、単官能ビニルモノマーと、単官能モノマー重量に対して0.3質量%から100質量%の多官能ビニルモノマーと、単官能モノマー重量に対して0.0001質量%から50質量%の連鎖移動剤と、任意選択のフリーラジカル重合開始剤とを混合する。しかる後に前記の混合物を反応させて、コポリマーを形成させる。国際公開第99/046301号パンフレットの実施例には、本来的に疎水性のポリマー(具体的には単官能モノマーがメチルメタクリレートのポリマー)の調製法が記載されている。これらのポリマーは、成形用樹脂の製造においてリニアなポリ(メチルメタクリレート)の溶融体粘度を低減する成分として有用である。
【0028】
特許文献2には(メタ)アクリレート官能化ポリマーを調製する方法が開示されており、その方法は次のステップを含む。すなわち、単官能ビニルモノマーと、単官能モノマーに対して0.3質量%から100質量%の多官能ビニルモノマーと、0.0001質量%から50質量%の連鎖移動剤とを混合する。しかる後に前記の混合物を反応させてポリマーを形成させ、変換率99%未満で重合反応を停止させる。生成するポリマーは、表面コーティング剤成分、インク成分、成形用樹脂、または硬化性化合物(例えば成形用硬化性樹脂もしくはフォトレジスト)に有用である。
【0029】
特許文献3に開示されたレオロジー改良剤としてのコポリマー組成物は、不飽和カルボン酸の分岐コポリマー、疎水性モノマー、疎水性連鎖移動剤、架橋剤、および任意選択の立体安定剤を含有する。前記のコポリマーは、電解質を含有する高pHの水溶液環境において粘度を増大させる。製造法は溶液重合法である。このポリマーは低度に架橋されている(0.25%未満)。
【0030】
特許文献4には、金属切断操作の潤滑剤として用いる水溶性金属加工流体が開示されている。前記の流体は、疎水性モノマーと親水性モノマーとを含有する分岐コポリマー(ミスト抑制剤)と、2個以上のエチレン性不飽和結合を含んでなる任意選択のモノマーとを含有する。前記の金属加工流体は、任意選択で水中油型エマルジョンであってもよい。前記のポリマーはスルホン酸含有モノマーと疎水性修飾したモノマーとを含有するポリ(アクリルアミド)に基づくものである。極少量のビス−アクリルアミドを使用し、連鎖移動剤を用いないことによって、それらのポリマーは非常に低度に架橋している。
【0031】
特許文献5の記載では、低摩擦係数の医療装置向けの親水性コーティングを作製している。この親水性コーティングは官能性樹枝状分子とポリビニルピロリドン系の線状ポリマーとを含んでなり、UV法により硬化する。官能性樹枝状ポリマーを用いることにより、相当する線状ポリマー系よりもコーティングの硬化時間が短縮化されることが観察されている。
【0032】
特許文献6に開示されているのは、UV硬化性インクジェット用途における樹枝状コアを持つ光硬化性ポリマーの使用である。合成は、前記の樹枝状ポリマーがUV硬化条件下で重合可能な重合性基、開始基、および共開始基を含有するように行われている。前記ポリマーは共有結合架橋されて最終インク組成物を生成するが、生成組成物は低粘度であって硬化後のインクからの浸出性が低いという利点を持つ。
【0033】
特許文献7の記載では、1分子当たり1つ以上のアクリル基と1つ以上の3級アミン基とを含有する光硬化性の分岐ポリマーを合成し、使用している。重合は、UV照射およびノリッシュII型反応により行われている。UV硬化性製剤中に多官能性で硬化性の前記分岐ポリマーを混合することで、硬化速度が増大し溶液粘度が低下することが示されている。
【0034】
非特許文献1の記載では、第四世代の多分岐ポリエステルを芳香族ジイソシアネートで官能化している。前記ポリオールを芳香族ジイソシアネートで予め官能化することによって、この種の分岐ポリオールと適当なジイソシアネート硬化剤との混和困難性が解決された。前記ポリマーの調製目的はポリウレタンフィルム用途であって、ポリマーの分岐性によって低粘度と短硬化時間という利点がもたらされると予想された。
【0035】
非特許文献2の報告では、星状枝分かれポリエステルを官能化するために、ε−カプロラクトンとの反応によってヒドロキシル官能基からさらにエステルオリゴマーを成長させ、得られた末端ヒドロキシルユニットをメタクリレート基で官能化している。この材料をUV開始により硬化して流動性をモニターしたところ、分岐ポリマー系の分子量を増大させるとゲル化時間は線形に増加した。
【0036】
非特許文献3の記載では、ビスフェノールAのエポキシ官能性ジグリジジルエーテルを用いて、ポリヒドロキシル官能性の樹枝状ポリマー(Boltorn H30)の硬化を行っている。前記の分岐ポリマーを用いた結果、この組成物のモノリス硬化中の収縮が抑えられ、ゲル化開始が速まった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【特許文献1】国際公開第99/046301号パンフレット
【特許文献2】国際公開第99/046310号パンフレット
【特許文献3】国際公開第02/034793号パンフレット
【特許文献4】米国特許第6020291号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1505102号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第1616899号明細書
【特許文献7】国際公開第02/022700号パンフレット
【非特許文献】
【0038】
【非特許文献1】Mechin and co-workers, Reactive and Functional polymers, 66 (2006) 1462
【非特許文献2】Hult and co-workers, Progress in organic coatings 44 (2002), 63-67
【非特許文献3】Fernandez-Francos et. al., Journal of applied polymer science 111, (2008),2822
【発明を実施するための形態】
【0039】
後からの硬化反応または後からの架橋反応が可能なポリマーは、日常用途に多数利用されている。これらのポリマーは通常は線状の構造であり、その官能基はポリマー主鎖のペンダント基として存在するか、あるいはポリマー末端に存在する。その組成上、これらのポリマーは天然ポリマー、合成ポリマー、またはハイブリッドポリマーであり得、分子内反応または分子内反応を行うことが可能である。通常の付加重合型ポリマーにおいては、適当な反応性モノマーを選択することでポリマー構造中に官能基を予め形成させるか、あるいは追加的な化学反応によって官能基を導入する。これらの場合、官能基は通常は材料の炭素主鎖に沿って存在する。官能基の密度および配置は、使用する官能モノマー比または制御された方法によってそれぞれに調整可能である。
【0040】
<硬化性リニア分子に関する問題>
硬化性樹枝状ポリマーまたは硬化性分岐ポリマーを用いることは、線状のポリマー系よりも多くの点で有利であることが見出された。樹枝状ポリマーまたは分岐ポリマーが分岐性であるということは、それらの溶液または溶融体の粘度が比較的低いということである。そのため、高固形分組成物を処方することが可能となり、また溶剤使用量(VOCを使用する場合に問題となり得る)を抑えることが可能となる。現在、多くの硬化系においては高固形分製剤に向かう趨勢が高まりつつある。有機溶剤は出来上りの硬化系にはほとんど全く含まれないにも関わらず、火炎燃焼性と高コストと多くの場合には毒性とをもたらすために何らかの有責義務を伴ってしまう。さらに溶剤は通常は硬化反応に関与せず、硬化反応を妨げることが多い。それゆえ、溶剤を除去することが好ましい。高固形分製剤を処方することが特に好ましい理由は、高い固形分含量レベルでの配合が可能ならば、硬化性の活性化ポリマー組成物をより高濃度で作製することが可能になり、硬化速度が速まるからである。多くの用途においては、最終製品のコーティングまたは成形時の硬化速度が極めて重要である。硬化開始が加熱による場合には、種々のコスト削減が可能となる。加えて、分岐ポリマー系はその多価性ゆえにポリマー構造中の官能基の可給性が高く、そのため硬化時間の短縮が可能となり、また「ポットライフ」の長いコーティング製剤が可能となる(例えば「2液性製剤」)。さらなる利点として、硬化開始が早まり、それによって系のゲル化が速まり、結果的にはコーティング、接着剤、およびシーラントの半硬化時間が早まることが可能である。
【0041】
このように、硬化反応中の官能基アクセシビリティが高くゲル化の開始が速やかであるので、製剤−基質間の相互作用は通常は大きくなり、その結果として基質付着性が増大する。これらは、特に接着剤、シーラント、またはコーティングに望ましい。
【0042】
樹枝状ポリマーの調製は多段階合成経路によって行われ、このポリマーは化学官能性および最終分子量による制約を受ける。その調製コストはハイエンドクラスであり、従ってこのような分子の産業用途は、限られたハイエンド用途のみである。通常の分岐ポリマーの調製は段階的成長反応によって行われ、これも自身の化学官能性および分子量による制約を受ける。しかしながら分岐ポリマーの製造コストは低いので、産業上は魅力は大きい。ただしこの種類の高分子の化学的性質ゆえに(すなわち、これらの分子は通常はエステル結合またはアミド結合を持つ)、オレフィン系ポリマーに対するこれらの混和性に由来する問題が複数観察されている。この問題を回避するには、アニオン重合により調製した炭化水素系の星状重合体を用いるか、あるいは予め形成したデンドリマーまたは予め形成した分岐分子種を後で官能化することができるが、これらはまたしても材料費の高騰を招く。
【0043】
本発明者が過去に開示したところによると、市販モノマーを用いたワンステップ・プロセスで高分子量の分岐ポリマー類を調製することができる。特定のモノマーを選択することによって、これらのポリマーの化学的官能性を用途ごとに調整することが可能である。これらの利点は、樹枝状ポリマーもしくは逐次重合型の分岐ポリマーに優る有利性を生ずる。本発明者のこれらのポリマーの調製には市販モノマーを原料とした付加反応を用いるため、調整を加えることで同等の線状付加重合ポリマーに対する優良な混和性を得ることが可能である。分岐ポリマー類の骨格は炭素−炭素結合であるため、エステル系デンドリマーまたは逐次重合型分岐ポリマーとは異なって熱的不安定性または加水分解性は高くない。本発明者の観察によれば、これらのポリマーの溶解速度は同等の線状ポリマーよりも大きい。
【0044】
さらに、付加共重合型分岐コポリマー(分岐した付加共重合体)の製剤は溶液粘度または溶融体粘度が比較的低いため、このようなポリマーの塗布は従来の系よりも容易である(従来の系では、通常はより高粘性のポリマーの加工が使用される)。これは製剤をスプレー塗布する場合に特に当てはまり、ここでも付加共重合型分岐コポリマーを用いることで相当のコスト節減が可能である。
【0045】
以上をまとめると、硬化性分岐ポリマーを用いることによって、線状ポリマーの系に優る多くの利点がもたらされる。例えば、高固形分含量の製剤が可能であり、低粘度の製剤を調製可能であり、最終製剤に要求されるVOC(揮発性有機物質)が比較的少量であり、硬化速度を上げることが可能であり、基質付着性を高めることが可能である。
【0046】
本発明の硬化性の付加共重合型分岐コポリマーは、分岐を持ち架橋によらない付加重合型のポリマーであって、分岐したランダム共重合体、分岐したブロック共重合体、分岐したグラフト共重合体、分岐したグラジエント共重合体、および分岐した交互共重合体を包含する。本発明のコポリマーは、末端以外のブリッジで共有結合した少なくとも2本の鎖を含んでなる。すなわち、前記コポリマーのサンプルを抽出して平均すると、末端以外のブリッジで共有結合した少なくとも2本の鎖を含んでなる。前記コポリマーのサンプルの一部として分岐を持たないポリマー分子も存在し得るが、これはポリマーの製造法(付加重合法)と不可分である。同じ理由で、末端に連鎖移動剤(CTA)が存在しないポリマーも少数含まれると予想される。
【0047】
<用途>
次の例示的リストは、本発明の硬化性の付加共重合型分岐コポリマーの用途の利点である。
【0048】
(コーティング)
線状ポリマー系よりも高固形分含量または低粘度の、硬化性の付加共重合型分岐コポリマー製剤を調製することが可能である。さらに硬化速度を下げることが可能であり、半硬化時間の短縮が可能であり、より高い基質付着性でより長い「ポットライフ」が達成可能である。
【0049】
(接着剤)
硬化性の付加共重合型分岐コポリマー製剤を用いることによって、粘性がより低く硬化性接着活性成分がより多い組成を有する接着製剤が得られる。さらに、より高い付着強度を達成することができる。
【0050】
(シーラント)
より少ない溶剤を用い、硬化性接着活性成分がより高濃度で、固形分含量がより大きい製剤を調製することが可能である。これは、より高い基質付着性をもたらす。
【0051】
(インク)
硬化速度がより高いポリマー添加剤によって、印刷時間の短縮と必要に応じて硬化温度の低下とが可能になる。
【0052】
(複合材料)
シーラントに似て、より少ない溶剤を用い、硬化性接着活性成分またはフィラーがより高濃度で、固形分含量がより大きい製剤を調製することが可能である。これは、より高い基質付着性とより大きい硬化速度とを有する複合材料をもたらす。加えて製剤が低粘度であるため、より高い基質浸透性が達成可能である。
【0053】
(樹脂)
硬化性の分岐コポリマーを混合することによって、樹脂を効率的に溶液加工または溶融加工することが可能である。溶液加工における大きな利点は、低VOC(揮発性有機物質)で低粘稠度の高固形分製剤が調製されることである。溶融加工においては、より低い製造温度が達成可能である。
【0054】
(リソグラフィー)
硬化性の分岐コポリマーをリソグラフィー用のレジスト剤に用いる。このことは、前記製剤の低粘稠性によって、より精密なテンプレートまたは構造の形成が促進されることを意味する。この場合にも、より大きい硬化速度を達成可能である。
【0055】
したがって、本発明の第一の態様では、付加共重合型分岐コポリマーの用途を提供する。前記の用途では付加共重合型分岐コポリマーを硬化して、架橋された製剤を作製する。前記の付加共重合型分岐コポリマーは付加重合プロセスにより調製可能であり、その重量平均分子量は2,000Daから1,500,000Daである。
【0056】
本発明の第一の態様の付加共重合型分岐コポリマーは、末端以外のブリッジで共有結合した少なくとも2本以上の鎖を含んでなる。前記の少なくとも2本の鎖は1つ以上のエチレン系モノ不飽和モノマーを含んでなり、前記のブリッジは少なくとも1つのエチレン系ポリ不飽和モノマーを含んでなる。前記のポリマーは、連鎖移動剤残基および任意選択の開始剤残基を含んでなる。前記のポリ不飽和モノマーと前記のモノ不飽和モノマーとのモル比は、1:100から1:4の範囲である。
【0057】
さらに、付加重合プロセスで付加重合型分岐ポリマーが形成した後に、付加重合型分岐ポリマーを硬化する。
【0058】
付加共重合型分岐コポリマーの硬化を行うには、反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性低分子を添加する。あるいは付加共重合型分岐コポリマーの硬化には熱反応、光分解反応、酸化反応、もしくは還元反応を用いてもよく、または触媒剤もしくは開始剤を添加してもよい。
【0059】
本発明の第一の態様で使用される付加共重合型分岐コポリマーは、次の基のうち1つまたは複数を含んでなるモノマーから調製する。すなわち、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、ピリジニル基、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリレート基、およびスチレニル基である。前記モノマーが備える相互反応性の官能基が反応することによって、付加共重合型分岐コポリマーが硬化する。
【0060】
本発明の第一の態様で用いる付加共重合型分岐コポリマーは、1%未満の不純物を含んでなる。より具体的には、本発明の付加共重合型分岐コポリマーの重合は、モノマー不純物が1%未満となるように行う。
【0061】
さらに、前記の付加重合型分岐ポリマーの重量平均分子量は、3,000Daから900,000Daである。
【0062】
本発明の第一の態様の硬化した分岐コポリマーを使用する応用領域は、次のものを包含する。すなわち、コーティング、接着剤、インク、複合材料、シーラント、および硬化樹脂である。
【0063】
本発明の第一の態様で使用する付加共重合型分岐コポリマーは、好ましくは次からなる群から選択されるユニットを含んでなる。すなわち、スチレン、ビニルベンジルクロリド、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、アリルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルリン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、(チイラン−2−イル)メチルメタクリレート、1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ドデカンチオール、ヘキサンチオール、2−メルカプトエタノール、ならびにアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ジ−t−ブチル、およびペルオキシ安息香酸t−ブチルから生ずる分子断片である。
【0064】
より好ましくは、前記の付加共重合型分岐コポリマーは、次からなる群から選択されるユニットを含んでなる。すなわち、スチレン、グリシジルメタクリレート、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ドデカンチオール、ヘキサンチオール、2−メルカプトエタノール、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ジ−t−ブチル、およびペルオキシ安息香酸t−ブチルである。
【0065】
本発明の第二の態様では、本発明の第一の態様に記載の付加共重合型分岐コポリマーを用いて調製される硬化性のコーティング、接着剤、インク、またはシーラントの組成物を提供する。これらの硬化組成物は、次から選択される硬化剤をさらに含んでなる。すなわち、ジブロモペンタン、ジブロモヘキサン、ジブロモヘプタン、ジブロモオクタン、ジヨードペンタン、ジヨードヘキサン、ジヨードヘプタン、ジヨードオクタン、テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミノヘキサン、タータメチエチレンジアミン、テトラメチルブタン−1,4−ジアミン、トリレンジイソシアネート、およびヘキサメチレンジイソシアネートである。
【0066】
本発明のさらなる態様では、本発明の第一の態様に記載の硬化した付加共重合型分岐コポリマーを含んでなる樹脂、本発明の第一の態様に記載の硬化した付加共重合型分岐コポリマーを含んでなる複合材料、本発明の第一の態様に記載の硬化した付加共重合型分岐コポリマーを含んでなるコーティング、本発明の第一の態様に記載の硬化した付加共重合型分岐コポリマーを含んでなるインク、および本発明の第一の態様に記載の硬化した付加共重合型分岐コポリマーを含んでなる接着剤を提供する。
【0067】
本発明の第三の態様では、相当する線状ポリマー含有組成物よりも大きい硬化速度、優れた付着性、または高い引っ掻き抵抗性を示す、付加共重合型分岐コポリマーを含有する硬化性組成物を提供する。
【0068】
連鎖移動剤(CTA)とは、フリーラジカル重合中に連鎖移動機構により分子量を低下させることが知られた分子である。この作用剤は任意のチオール含有分子であってもよく、単官能性または多官能性であってもよい。また、親水性、疎水性、両親媒性、アニオン性、カチオン性、中性、両イオン性、または反応性であってもよい。また、前記の分子はチオール部分を含有するオリゴマーまたは予め形成したポリマーであってもよい。さらにまた、前記の作用剤は立体障害アルコールまたは類似のフリーラジカル安定化剤であってもよい。触媒連鎖移動剤(例えばコバルトビス(ボロンジフルオロジメチルグリオキシメート)(CoBF)のような遷移金属複合体に基づくもの)を使用してもよい。好適なチオールの例としては、分岐したC〜C18アルキルチオールまたは線状のC〜C18アルキルチオール(例えばドデカンチオールならびに官能性チオール化合物(チオグリコール酸、チオプロピオン酸、チオグリセロール、システイン、およびシステアミンなど))が挙げられるが、これらに限定されない。チオール含有オリゴマーまたはチオール含有ポリマーを使用してもよい(例えばポリ(システイン)、後からの官能化によりチオール基を生じたオリゴマーもしくはポリマー(例えばポリ(エチレングリコール)(ジ)チオグリコレート)、またはチオール基で官能化した予じめ形成されたポリマー)。例えば、末端官能化アルコールもしくは側鎖官能化アルコール(ポリ(プロピレングリコール)など)とチオブチロラクトンとの反応によって、それに対応するチオール官能化された鎖延長ポリマーが生じる。あるいは、RAFT(可逆的付加開裂連鎖移動)リビングラジカル法またはMADIX(キサンテート交換による高分子設計)リビングラジカル法により調製したキサンテート末端官能化ポリマー、ジチオエステル末端官能化ポリマー、またはジチオカーボナート末端官能化ポリマーを還元することで、多官能チオールを調製してもよい。あるいは、キサンテート、ジチオエステル、およびジチオカーボナート(例えばクミルフェニルジチオアセテート)を使用してもよい。これらに代えて、フリーラジカル付加重合において分子量を制限することが知られた任意の化学種を連鎖移動剤として用いてもよい。例としては、ハロゲン化アルキル、官能アリル化合物、および遷移金属塩または遷移金属複合体が挙げられる。複数種の連鎖移動剤を組み合わせて使用してもよい。
【0069】
疎水性CTAの例としては、線状のアルキル(ジ)チオールおよびアリール(ジ)チオールと分岐したアルキル(ジ)チオールおよびアリール(ジ)チオールとが挙げられるが(例えば、ドデカンチオール、オクタデシルメルカプタン、2−メチル−1−ブタンチオール、および1,9−ノナンジチオール)、これらに限定されない。疎水性マクロCTA(分子量1000ダルトン以上のCTA)は、RAFT(またはMADIX)合成後に鎖末端を還元した疎水性ポリマーから調製できる。あるいはまた、予じめ形成した疎水性ポリマーの末端ヒドロキシル基をチオブチロラクトンのような化合物で後から官能化できる。
【0070】
通常の親水性CTA類は、水素結合および/または永久電荷もしくは過渡電荷を含んでなる。親水性CTAの例としては次のものが挙げられるが、これらに限定されない。すなわちチオ酸(例えばチオグリコール酸およびシステイン)、チオアミン(例えばシステアミン)、およびチオアルコール(例えば2−メルカプトエタノール、チオグリセロール、エチレングリコールモノチオグリコレート、およびエチレングリコールジチオグリコレート)である。親水性マクロCTA類(分子量1000ダルトン以上)は、RAFT(またはMADIX)合成後に鎖末端を還元した親水性ポリマーから調製できる。あるいはまた、予め形成した親水性ポリマーの末端ヒドロキシル基をチオブチロラクトンのような化合物で後から官能化できる。
【0071】
両親媒性CTA類を、重合混合物中に混合することもできる。通常のこれらの物質は、親水性官能基(例えばカルボン酸基であるがこれに限定されない)を持つ疎水性アルキル含有チオールである。この種の分子の例としては、メルカプトウンデシレン酸が挙げられる。
【0072】
反応性マクロCTA類(分子量1000ダルトン以上)は、RAFT(またはMADIX)合成後に鎖末端を還元した反応性ポリマーから調製できる。あるいはまた、予め形成した反応性ポリマー(例えばポリ(プロピレングリコール))の末端ヒドロキシル基をチオブチロラクトンのような化合物で後から官能化できる。非チオール系連鎖移動剤(CTA)(例えば2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンタン)を用いることもできる。
【0073】
連鎖移動剤の残基は、(単官能モノマーのモル数を基準として)コポリマーの0モル%から80モル%であってよい。より好ましくは、連鎖移動剤の残基は(単官能モノマーのモル数を基準として)コポリマーの0モル%から50モル%、さらにより好ましくは0モル%から40モル%である。なかんずく、連鎖移動剤は(単官能モノマーのモル数を基準として)コポリマーの0.05モル%から30モル%である。
【0074】
開始剤はフリーラジカル重合開始剤であり、フリーラジカル重合を開始することの知られた任意の分子であってよい(例えばアゾ含有分子、過硫酸化物、レドックス開始剤、過酸化物、ベンジルケトン)。これらは加熱法、光分解法、または化学的方法によって活性化してよい。これらの例としては次のものが挙げられるが、これらに限定されない。すなわち2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビス(4−シアノ吉草酸)、過酸化ベンゾイル、ペルオキシ安息香酸t−ブチル(ルペロックス(登録商標)P)、ジ−t−ブチルペルオキシド(ルペロックス(登録商標)DI)、過酸化ジイソプロピル、クミルペルオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、過酸化水素/アスコルビン酸である。また、ベンジル−N,N−ジエチルジチオカルバメートなどのイニファータも使用できる。場合によっては、複数種類の開始剤を使用してもよい。開始剤は分子量1000ダルトン以上のマクロ開始剤であってもよい。この場合のマクロ開始剤は本質的に親水性、疎水性、または反応性であってもよい。
【0075】
フリーラジカル重合の開始剤の残基は、(モノマーの総重量を基準として)コポリマーの0質量%から10質量%であることが好ましい。より好ましくは、フリーラジカル重合の開始剤の残基は、コポリマーの0.001質量%から8質量%である。なかんずく、フリーラジカル重合の開始剤の残基は(モノマーの総重量を基準として)コポリマーの0.001質量%から5質量%である。
【0076】
好ましくは、連鎖移動剤と開始剤とを使用する。ただし一部の分子はいずれの機能を果たすこともできる。
【0077】
親水性マクロ開始剤(予め形成したポリマーの分子量が1000ダルトン以上の親水性開始剤)は、RAFT(またはMADIX)合成した親水性ポリマーから調製できる。予め形成した親水性ポリマーの官能基(例えば末端ヒドロキシル基)を、官能性ハロゲン化合物(例えば2−ブロモイソブチリル臭化物)で後から官能化し、適当な低原子価遷移金属触媒(例えばCuBrビピリジル)と共にATRP(原子移動ラジカル重合)に用いることができる。
【0078】
疎水性マクロ開始剤(予め形成ポリマーの分子量が1000ダルトン以上)は、RAFT(またはMADIX)合成した疎水性ポリマーから調製できる。予じめ形成した親水性ポリマーの官能基(例えば末端ヒドロキシル基)を、官能性ハロゲン化合物(例えば2−ブロモイソブチリル臭化物)で後から官能化し、適当な低原子価遷移金属触媒(例えばCuBrビピリジル)と共にATRP(原子移動ラジカル重合)に用いることができる。
【0079】
反応性マクロ開始剤(予じめ形成ポリマーの分子量が1000ダルトン以上)は、RAFT(またはMADIX)合成した反応性ポリマーから調製できる。予め形成した親水性ポリマーの官能基(例えば末端ヒドロキシル基)を、官能性ハロゲン化合物(例えば2−ブロモイソブチリル臭化物)で後官能化し、適当な低原子価遷移金属触媒(例えばCuBrビピリジル)と共にATRP(原子移動ラジカル重合)に用いることができる。
【0080】
単官能モノマーは、付加重合メカニズムにより重合可能な、例えばビニル化合物およびアリル化合物のような任意の炭素−炭素不飽和化合物(よりなる。前記の単官能モノマーは、本質的に親水性、疎水性、両親媒性、アニオン性、カチオン性、中性、または両イオン性であってよい。単官能モノマーは次のものから選択してもよいが、これらに限定されない。すなわちビニル酸、ビニル酸エステル、ビニルアリール化合物、ビニル酸無水物、ビニルアミド、ビニルエーテル、ビニルアミン、ビニルアリールアミン、ビニルニトリル、ビニルケトン、およびこれらの誘導体、ならびにこれらに対応するアリルバリアントである。
【0081】
その他の好適な単官能モノマーの例としては、次のものが挙げられる。すなわちヒドロキシル含有モノマー、後からの反応によりヒドロキシル基を形成可能なモノマー、酸含有モノマー、酸官能性モノマー、両イオン性モノマー、および四級アミノモノマーである。オリゴマー性モノマー、ポリマー性モノマー、二官能モノマー、または多官能モノマーを使用してもよい。特に、オリゴマー性またはポリマー性の(メタ)アクリル酸エステル(例えばポリアルキレングリコールもしくはポリジメチルシロキサンのモノ(アルキル/アリール)(メタ)アクリル酸エステル)あるいは低分子量オリゴマーのその他の任意のモノビニル付加体またはモノアリル付加体を使用してもよい。複数のモノマーの混合物を用いることで、ランダム共重合体、グラフト共重合体、グラジエント共重合体、または交互共重合体を得てもよい。
【0082】
ビニル酸およびその誘導体の例としては、次のものが挙げられる。すなわち(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、およびそれらの酸ハロゲン化物(例えば(メタ)アクリロイル塩化物)である。ビニル酸エステルおよびその誘導体の例としては、次のものが挙げられる。すなわち線状のC〜C20アルキル(メタ)アクリレートおよび分岐したC〜C20アルキル(メタ)アクリレート(例えばメチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、および2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート)、アリール(メタ)アクリレート(例えばベンジル(メタ)アクリレート)、トリ(アルキルオキシ)シリルアルキル(メタ)アクリレート(例えばトリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート)、および(メタ)アクリル酸の活性エステル(例えばN−ヒドロキシスクシンアミド(メタ)アクリレート)である。ビニルアリール化合物およびその誘導体の例としては、次のものが挙げられる。すなわちスチレン、アセトキシスチレン、スチレンスルホン酸、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ビニルナフタレン、ビニルベンジルクロリド、およびビニル安息香酸である。無水ビニル酸およびその誘導体の例としては、無水マレイン酸が挙げられる。ビニルアミドおよびその誘導体の例としては、次のものが挙げられる。すなわち(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、[3−((メタ)アクリルアミド)プロピル]ジメチルアンモニウム塩化物、3−[N−(3−(メタ)アクリルアミドプロピル)−N,N−ジメチル]アミノプロパンスルホン酸塩、メチル(メタ)アクリルアミドグリコレートメチルエーテル、およびN−イソプロピル(メタ)アクリルアミドである。ビニルエーテルおよびその誘導体の例としては、メチルビニルエーテルが挙げられる。ビニルアミンおよびその誘導体の例としては、次のものが挙げられる。すなわちジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノ−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、および後反応によりアミン基を形成するモノマー(例えばN−ビニルホルムアミド)である。ビニルアリールアミンおよびその誘導体の例としては、ビニルアニリン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、およびビニルイミダゾールが挙げられる。ビニルニトリルおよびその誘導体の例としては、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。ビニルケトンまたはビニルアルデヒドおよびそれらの誘導体の例としては、アクロレインが挙げられる。
【0083】
ヒドロキシル含有モノマーの例としては、ビニルヒドロキシルモノマー(例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、および糖モノ(メタ)アクリレート(例えばグルコースモノ(メタ)アクリレート))が挙げられる。後反応によりヒドロキシル基を形成可能なモノマーの例としては、ビニルアセテート、アセトキシスチレン、およびグリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。酸含有モノマーまたは酸官能性モノマーの例としては、次のものが挙げられる。すなわち(メタ)アクリル酸、スチレンスルホン酸、ビニルホスホン酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、2−(メタ)アクリルアミド2−エチルプロパンスルホン酸、モノ−2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチルスクシネート、およびアンモニウムスルファトエチル(メタ)アクリレートである。両イオン性モノマーの例としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよびベタイン(例えば[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ジメチル−(3−スルホプロピル)アンモニウム水酸化物)が挙げられる。四級アミノモノマーの例としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリ(アルキル/アリール)アンモニウムハロゲン化物(例えば(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物)が挙げられる。
【0084】
ビニルアセテートおよびその誘導体を用いることもできる。
【0085】
オリゴマー性モノマーおよびポリマー性モノマーの例としては、オリゴマー性(メタ)アクリル酸エステルおよびポリマー性(メタ)アクリル酸エステル(例えば、モノ(アルキル/アリール)オキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートおよびモノ(アルキル/アリール)オキシポリジメチル−シロキサン(メタ)アクリレート)が挙げられる。これらのエステルの例としては、次のものが挙げられる。すなわち、モノメトキシオリゴ(エチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノメトキシオリゴ(プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノヒドロキシオリゴ(エチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノヒドロキシオリゴ(プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノメトキシポリ(エチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノメトキシポリ(プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノヒドロキシポリ(エチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、およびモノヒドロキシポリ(プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレートである。さらなる例としては、開環重合により予め形成されたオリゴマー(またはポリマー)のビニル(またはアリル)のエステル、アミド、またはエーテル(例えばオリゴ(カプロラクタム)、オリゴ(カプロラクトン)、ポリ(カプロラクタム)、またはポリ(カプロラクトン))、あるいはリビング重合法により形成されたオリゴマーまたはポリマー(例えばポリ(1,4−ブタジエン))が挙げられる。
【0086】
必要に応じて、上記リストに対応するアリルモノマーも用いることができる。
【0087】
単官能モノマーの例としては、次のものが挙げられる。
すなわち、アミド含有モノマー(例えば(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミド、Nおよび/またはN’−ジ(アルキルまたはアリール)(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、[3−((メタ)アクリルアミド)プロピル]トリメチルアンモニウム塩化物、3−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、3−[N−(3−(メタ)アクリルアミドプロピル)−N,N−ジメチル]アミノプロパンスルホネート、メチル(メタ)アクリルアミドグリコレートメチルエーテル、およびN−イソプロピル(メタ)アクリルアミド)、
(メタ)アクリル酸およびその誘導体(例えば(メタ)アクリル酸、塩化(メタ)アクリロイル(または任意のハロゲン化物)、(アルキル/アリール)(メタ)アクリレート;
官能オリゴマーまたはポリマー性モノマー(例えば、モノメトキシオリゴ(エチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノメトキシオリゴ(プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノヒドロキシオリゴ(エチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノヒドロキシオリゴ(プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノメトキシポリ(エチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノメトキシポリ(プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノヒドロキシポリ(エチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノヒドロキシポリ(プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、および糖モノ(メタ)アクリレート(例えばグルコースモノ(メタ)アクリレート))、
ビニルアミン(例えばアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノ−t−ブチルアミノ(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート)、
ビニルアリールアミン(例えばビニルアニリン、ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、および後からの反応によりアミン基を形成可能なモノマー(例えばビニルホルムアミド))、
ビニルアリールモノマー(例えばスチレン、ビニルベンジルクロリド、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸、ビニルナフタレン、およびビニル安息香酸)、
ビニルヒドロキシルモノマー(例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、または後官能化によりヒドロキシル基を形成可能なモノマー(例えばビニルアセテート、アセトキシスチレン、およびグリシジル(メタ)アクリレート))、
酸含有モノマー(例えば、(メタ)アクリル酸、スチレンスルホン酸、ビニルホスホン酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−エチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、およびモノ−2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチルスクシネート)または酸無水物(例えば無水マレイン酸)、
両イオン性モノマー(例えば(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)およびベタイン含有モノマー(例えば[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ジメチル−(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド)、
四級アミノモノマー(例えば(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド)、および
ビニルアセテート、ビニルブチレート、またはそれらの誘導体である。
【0088】
必要に応じて、これらに対応するアリルモノマーも用いることができる。
【0089】
官能性モノマー(すなわち反応性側鎖基を持ち、別の部分による修飾(事前修飾または重合後の事後修飾)が可能なモノマー)を用いることもできる。例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、トリ(アルコキシ)シリルアルキル(メタ)アクリレート(例えばトリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリロイルクロリド、無水マレイン酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ビニルベンジルクロリド、(メタ)アクリル酸の活性化エステル(例えばN−ヒドロキシスクシンアミド(メタ)アクリレート)、およびアセトキシスチレンが挙げられる。
【0090】
通常のマクロモノマー(分子量が1000ダルトン以上のモノマー)の形成は、重合性部分(例えばビニル基またはアリル基)と予め形成された単官能ポリマーとを、好適な結合ユニット(例えばエステル、アミド、またはエーテル)を介して結合することによりなされる。好適なポリマーの例としては、単官能性ポリ(アルキレンオキシド)(例えばモノメトキシ[ポリ(エチレングリコール)]またはモノメトキシ[ポリ(プロピレングリコール)])、シリコーン(例えばポリ(ジメチルシロキサン))、開環重合により形成されるポリマー(例えばポリ(カプロラクトン)またはポリ(カプロラクタム))、あるいはリビング重合を介して形成される単官能ポリマー(例えばポリ(1,4−ブタジエン))が挙げられる。
【0091】
好ましいマクロモノマーの例としては、モノメトキシ[ポリ(エチレングリコール)]モノ(メタクリレート)、モノメトキシ[ポリ(プロピレングリコール)]モノ(メタクリレート)、およびモノ(メタ)アクリルオキシプロピル末端化ポリ(ジメチルシロキサン)が挙げられる。
【0092】
単官能モノマーによってコポリマー中に必須の親水性がもたらされる場合、単官能モノマーは親水性単官能モノマーの残基であることが好ましく、1000ダルトン以上の分子量を持つことが好ましい。
【0093】
親水性の単官能モノマーの例としては、次のものが挙げられる。すなわち、(メタ)アクリロイルクロリド、N−ヒドロキシスクシンアミド(メタ)アクリレート、スチレンスルホン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−ビニルピロリジノン、N−ビニルホルムアミド、四級アミノモノマー(例えば(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、[3−((メタ)アクリルアミド)プロピル]トリメチルアンモニウム塩化物、および(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物)、3−[N−(3−(メタ)アクリルアミドプロピル)−N,N−ジメチル]アミノプロパンスルホナート、メチル(メタ)アクリルアミドグリコレートメチルエーテル、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、モノメトキシオリゴ(エチレンオキシド)(メタ)アクリレート、モノヒドロキシオリゴ(エチレンオキシド)(メタ)アクリレート、糖モノ(メタ)アクリレート(例えばグルコースモノ(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリル酸、ビニルホスホン酸、フマル酸、イタコン酸、2−(メタ)アクリルアミド2−エチルプロパンスルホン酸、モノ−2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチルスクシネート、アンモニウムスルファトエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、およびベタイン含有モノマー(例えば[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ジメチル−(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド)である。親水性マクロモノマーを使用してもよく、その例としては、モノメトキシポリ(エチレンオキシド)(メタ)アクリレートと、モノヒドロキシポリ(エチレンオキシド)(メタ)アクリレートと、末端官能基を持つその他の親水性ポリマー(重合性部分(例えば(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、またはスチレン基)により後から官能化可能なもの)とが挙げられる。
【0094】
疎水性の単官能モノマーの例としては、次のものが挙げられる。すなわち(線状および分岐した)C〜C28アルキル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミド(例えばメチル(メタ)アクリレートおよびステアリル(メタ)アクリレート)、アリール(メタ)アクリレート(例えばベンジル(メタ)アクリレート)、トリ(アルキルオキシ)シリルアルキル(メタ)アクリレート(例えばトリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート)、スチレン、アセトキシスチレン、ビニルベンジルクロリド、メチルビニルエーテル、ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロニトリル、アクロレイン、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビニルアセテート、5−ビニル2−ノルボルネン、イソボルニルメタクリレート、ならびにグリシジル(メタ)アクリレートである。疎水性マクロモノマーを使用してもよく、その例としては、モノメトキシポリ(ブチレンオキシド)(メタ)アクリレートと、モノヒドロキシポリ(ブチレンオキシド)(メタ)アクリレートと、末端官能基を持つその他の疎水性ポリマー(重合性部分(例えば(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、またはスチレン基)により後から官能化可能なもの)とが挙げられる。
【0095】
反応性の単官能モノマーの例としては、次のものが挙げられる。すなわち(メタ)アクリル酸、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ビニル安息香酸、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、三級アミン(メタ)アクリレートおよび三級アミン(メタ)アクリルアミド(例えば2−(ジメチル)アミノエチル(メタ)アクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノ−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、およびN−モルホリノエチル(メタ)アクリレート)、ビニルアニリン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ならびにビニル安息香酸である。反応性マクロモノマー類を使用してもよく、その例としては、モノメトキシポリ(プロピレンオキシド)(メタ)アクリレートと、モノヒドロキシポリ(プロピレンオキシド)(メタ)アクリレートと、末端官能基を持つその他の反応性ポリマー(重合性部分(例えば(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、またはスチレン基)により後から官能化可能なもの)とが挙げられる。
【0096】
スチレン系モノマーまたは芳香族官能基含有モノマー(例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルベンジルクロリド、ビニルナフタレン、ビニル安息香酸、N−ビニルカルバゾール、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ビニルアニリン、アセトキシスチレン、スチレンスルホン酸、ビニルイミダゾール、またはそれらの誘導体)。
【0097】
好ましいモノマーは、次の群から選択されるものである。すなわちスチレン、ビニルベンジルクロリド、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、アリルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルリン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、および(チイラン−2−イル)メチルメタクリレートである。
【0098】
多官能モノマーまたは分岐剤が含んでなる分子は2つ以上のビニル基を含有してもよく、それらは付加重合によりポリマー化されてもよい。前記の分子は親水性であってもよく、疎水性、両親媒性、中性、カチオン性、両イオン性、オリゴマー、またはポリマーであってもよい。多くの場合、このような分子は当分野では架橋剤として知られており、任意の二官能性分子または多官能性分子と適当な反応性モノマーとを反応させることで調製され得る。例としては、ジビニルエステルもしくはマルチビニルエステル、ジビニルアミドもしくはマルチビニルアミド、ジビニルアリール化合物もしくはマルチビニルアリール化合物、またはジビニルアルキル/アリールエーテルもしくはマルチビニルアルキル/アリールエーテルが挙げられる。通常のオリゴマー性またはポリマー性の多官能性分岐剤(または二官能性分岐剤)の場合には、連結反応によって二官能性または多官能性のオリゴマーまたはポリマーに重合性部分を付加する。分岐剤自体に複数の分岐点が存在してもよい(例えばジビニル系のT字形オリゴマーまたはポリマー)。場合によっては、複数種類の多官能モノマーを用いてもよい。多官能モノマーによってコポリマーの必須の親水性がもたらされる場合には、多官能モノマーの分子量は1000ダルトン以上であることが好ましい。
【0099】
必要に応じて、上記リストに対応するアリルモノマーも用いることができる。
【0100】
好ましい多官能モノマーまたは分岐剤の例としては次のものが挙げられるが、これらに限定されない。すなわち、ジビニルアリールモノマー(例えばジビニルベンゼン);(メタ)アクリレートジエステル(例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、および1,3−ブチレンジ(メタ)アクリレート);ポリアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート(例えばテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、およびポリ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート);ジビニル(メタ)アクリルアミド(例えばメチレンビスアクリルアミド);シリコーン含有ジビニルエステルまたはシリコーン含有ジビニルアミド(例えば(メタ)アクリルオキシプロピル末端化ポリ(ジメチルシロキサン));ジビニルエーテル(例えばポリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル);およびテトラ(メタ)アクリル酸エステルまたはトリ(メタ)アクリル酸エステル(例えばペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グルコースジ(メタ)アクリレート、グルコーストリ(メタ)アクリレート、グルコーステトラ(メタ)アクリレート、またはグルコースペンタ(メタ)アクリレート)である。さらなる例としては、開環重合により予め形成されるオリゴマーまたはポリマーのビニル(またはアリル)のエステル、アミド、またはエーテル(例えばオリゴ(カプロラクタム)、オリゴ(カプロラクトン)、1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ポリ(カプロラクタム)、もしくはポリ(カプロラクトン))、あるいはリビング重合により形成されるオリゴマーまたはポリマー(例えばオリゴ(1,4−ブタジエン)もしくはポリ(1,4−ブタジエン))が挙げられる。
【0101】
通常のマクロ架橋剤またはマクロ分岐剤(分子量が1000ダルトン以上の多官能モノマー)を形成するには、重合性部分(例えばビニル基またはアリール基)と予め形成した多官能ポリマーとを、適当な連結ユニット(例えばエステル、アミド、またはエーテル)を介して連結する。適当なポリマーの例としては、次のものが挙げられる。すなわち二官能ポリ(アルキレンオキシド)(例えばポリ(エチレングリコール)もしくはポリ(プロピレングリコール))、シリコーン(例えばポリ(ジメチルシロキサン))、開環重合により形成されるポリマー(例えばポリ(カプロラクトン)もしくはポリ(カプロラクタム))、またはリビング重合により形成される多官能ポリマー(例えばポリ(1,4−ブタジエン))である。
【0102】
好ましいマクロ分岐剤の例としては、次のものが挙げられる。すなわちポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、メタクリルオキシプロピル末端化したポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(カプロラクトン)ジ(メタ)アクリレート、およびポリ(カプロラクタム)ジ(メタ)アクリルアミドである。
【0103】
分岐剤の例としては、次のものが挙げられる。すなわちメチレンビスアクリルアミド、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グルコースジ(メタ)アクリレート、グルコーストリ(メタ)アクリレート、オリゴ(カプロラクタム)、およびオリゴ(カプロラクトン)である。また、複数末端を官能化した親水性ポリマーを、適当な重合性部分(例えば(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、またはスチレン基)を用いて官能化してもよい。
【0104】
さらなる分岐剤の例としては、次のものが挙げられる。すなわちジビニルベンゼン、(メタ)アクリル酸エステル(例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、および1,3−ブチレンジ(メタ)アクリレート)、オリゴ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート(例えばテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート)、テトラ(メタ)アクリル酸エステルもしくはトリ(メタ)アクリル酸エステル(例えばペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレートおよびトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート)、ならびにグルコースペンタ(メタ)アクリレートである。また、複数末端を官能化した疎水性ポリマーを、適当な重合性部分(例えば(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、またはスチレン基)を用いて官能化してもよい。
【0105】
適当な重合性部分(例えば(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、またはスチレン基)を用いて、多官能反応性ポリマーを官能化してもよい(例えばポリ(プロピレンオキシド)ジ(メタ)アクリレート)。
【0106】
スチレン系分岐剤または芳香族系官能基含有分岐剤は特に好ましい。例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、およびそれらの誘導体が挙げられる。また、ジヒドロキシジメチルベンゼンの1,4、1,3、または1,2誘導体のアクリレート誘導体またはメタクリレート誘導体、およびそれらの誘導体が挙げられる。
【実施例】
【0107】
以下、非限定的な実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0108】
以下の実施例では、コポリマーの表記に次の命名法を用いる。
(モノマーG)(モノマーJ)(分岐剤L)(連鎖移動剤)
下付き文字の値は各成分のモル比であり、単官能モノマーの値が100となるように正規化する(すなわち、g+j=100)。分岐度または分岐レベルはlで表される。dは連鎖移動剤のモル比である。
【0109】
例えば「メタクリル酸100エチレングリコールジメタクリレート15ドデカンチオール15」は、メタクリル酸:エチレングリコールジメタクリレート:ドデカンチオールのモル比が100:15:15のポリマーを表す。
【0110】
<略称・略号>
(モノマー)
AMA:アリルメタクリレート
BMA:n−ブチルメタクリレート
GMA:グリシジルメタクリレート
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
HPMA:2−ヒドロキシプロピルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
(分岐剤)
DVB:ジビニルベンゼン(80%等級)
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート
(連鎖移動剤(CTA))
DDT:1−ドデカンチオール
2−ME:2−メルカプトエタノール
(開始剤)
ABCC:1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)
DI:ルペロックス(登録商標)DI(ジ−t−ブチルペルオキシド)
P:ルペロックス(登録商標)P:(ペルオキシ安息香酸t−ブチル)
(溶剤、その他)
MEK:ブタン−2−オン
THF:テトラヒドロフラン
MDA:ビス−(4−アミノフェニル)メタン
TETA:トリエチレンテトラミン
【0111】
ルペロックス(登録商標)DIおよびルペロックス(登録商標)Pはアルケマ社から、デスモジュール(登録商標)N3390はバイエル社から入手したことを除き、全ての材料はアルドリッチ社から入手した。
【0112】
<合成と特性分析>
(一般的方法)
DrySyn(登録商標)Vortexオーバーヘッドスターラーシステムとコンデンサーとを取り付けた三口丸底フラスコに、モノマーと溶剤とを導入した。溶液中に窒素気泡を通して、溶液を10分間脱気した。次にこの溶液を適切な温度に加熱し、320rpmで撹拌した。所定の温度に達したら開始剤を添加して反応を開始させ、5時間から20時間に渡り、変換率(H NMRにより測定)が99%を超えるまで反応を進行させた。この反応混合物を室温に冷却し、ベッセル中に移した。ポリマーの特性分析は、TD-SECにより行った。
【0113】
(三重検出サイズ排除クロマトグラフィー)
装置パッケージはビスコテック社製であり、TDA302カラムオーブンおよびマルチ検出器モジュールを取り付けた(coupled)GPCmax溶離液ポンプおよびオートサンプラーからなる。使用したカラムは、2本のViscoGel HHR−Hカラムおよびポリスチレンの排除限界分子量が10gmol−1のガードカラム1本である。
【0114】
移動相としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、カラムオーブン温度を35℃に設定し、流速は1mL/分であった。インジェクション試料の調製は、10mgのポリマーを1.5mLのTHF(HPLC等級)に溶解し、アクロディスク(登録商標)0.2ミクロンPTFE膜でろ過して行った。この混合物のうち0.1mLをインジェクションし、データポイントを30分間収集した。Omnisecを用いて、検出器からコンピュータに転送されるシグナルを回収して処理し、分子量を算出した。

【0115】
実 施 例 1(BP1)
(AMAポリマーの合成)
MMA50BMAAMA45EGDMADDT19
メチルメタクリレート(MMA)(15g、0.15mol)、n−ブチルメタクリレート(BMA)(2.13g、15mmol)、アリルメタクリレート(AMA)(17g、0.135mol)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)(2.97g、15mmol)、ドデカンチオール(DDT)(11.52g、57mmol)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(ABCC)(1.61g、6.6mmol)、およびトルエン(48.6g)を、オーバーヘッドスターラーを取り付け、コンデンサーを備えた250mLの三口丸底フラスコ中に導入した。この溶液を30分間窒素パージにより脱気した。次にこの溶液を100℃に加熱し、19時間撹拌した。この反応混合物を室温に冷却し、1Lの冷ヘキサン中でポリマーを沈殿させた。沈殿したポリマーをろ過分離し、40℃で恒量まで減圧乾燥した。この分岐ポリマーの特性分析結果は次の通りであった。Mn=20,000g/モル、Mw=336,000g/モル、Mw/Mn=17、α=0.324、粘度=579mPa・s(25℃、酢酸ブチル溶液中固形分含量50%)。
【0116】
実 施 例 2(BP2)
(ポリオールの合成)
MMA41BA20HEMA39DVB252ME35
メチルメタクリレート(MMA)(15g、0.15mol)、BA(9.37g、73.1mmol)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)(18.55g、0.142mol)、ジビニルベンゼン(DVB)(80%等級、11.89g、91.3mmol)、2−メルカプトエタノール(2ME)(9.92g、0.127mol)、および酢酸ブチル(27.8g)を、オーバーヘッドスターラーシステムに取り付け、コンデンサーを備えた250mLの三口丸底フラスコ中に導入した。この溶液を30分間窒素パージにより脱気した。次にこの溶液を撹拌しながら126℃に加熱した。反応混合物の還流が開始した時点で、ルペロックス(登録商標)DI(1.04ml、5.4mmol)を添加した。反応の30分後、60分後、90分後、および180分後に、追加のルペロックス(登録商標)DIを各1.04ml(5.4mmol)ずつ添加した。5時間後に反応混合物を室温に冷却した。この分岐ポリマーの特性分析結果は次の通りであった。Mn=1300g/モル、Mw=28000g/モル、Mw/Mn=21、α=0.471、粘度=143mPa・s(25℃、酢酸ブチル溶液中固形分含量50%)。
【0117】
実 施 例 3
(AMAベース分岐ポリマーのコーティングおよび硬化の方法)
実施例1の分岐ポリマー(BP1)を酢酸ブチルに溶解し、50質量%溶液とした。次にナフテン酸コバルト溶液−溶媒(AMAに対するコバルトの重量比が2%)、N,N−ジメチルアニリン(AMAに対するモル比が0.25%)、過酸化ベンゾイル(AMAに対するモル比が1.2%)、およびルペロックス(登録商標)P(AMAに対するモル比が2.3%)を添加し、溶液を完全に混合した。50ミクロンのスパイラルアプリケータを用いて、この試料をアルミパネル製のコーティングパネル上に塗布(drawn down)した。この試料を雰囲気温度下で5分間乾燥させた後、80℃で15分間焼成した。試料を放置して室温まで冷却した後に、ジクロロメタン槽に移した。硬化ポリマーがジクロロメタン溶媒に溶解しなかったことから、前記ポリマーは架橋されていることが示された。
【0118】
実 施 例 4
(分岐ポリオール材料のコーティングおよび硬化の方法)
2液性の標準クリアコーティングを、酢酸ブチル中の上記で調製したポリオール、ジイソシアネート、および錫系触媒を使用し、調製した。分岐ポリオールBP2を酢酸ブチルに溶解し(A液)、デスモジュール(登録商標)N3390ジイソシアネート(B液)およびジラウリン酸ジブチル錫触媒と完全に混合した。この調製により得られたRFU(レディー・フォー・ユース)クリアコートの特性は、次の通りである。活性化RFU固形分=50質量%、NCO:OHモル比=1.2、ジラウリン酸ジブチル錫触媒溶液レベル(酢酸ブチル中1質量%)=1.0質量%(乾燥組成物重量)。100ミクロンのスパイラルアプリケータを用いて、この試料をアルミパネル上に塗布した。この試料を雰囲気温度下で3時間乾燥させた後、60℃で30分間焼成した。試料を一晩放置して硬化させた後に、振り子式硬度試験(BS−EN−ISO−1522)を行った。
【0119】
線状ポリマーおよび分岐ポリマーの合成条件を表1に示す。
【0120】
【表1】

【0121】
調製した線状ポリマー線状ポリマーおよび分岐ポリマーの組成および分析データを、表2に示す。
【0122】
【表2】

【0123】
<粘度測定>
ポリマーを適当な溶剤に溶解し、一定質量%の溶液を作製した。ポリマー粘度の測定は、CP−40またはCP−52を取り付けたブルックフィールド社DV−II+Pro粘度計を用いて、25℃で行った。分岐ポリオールおよび線状ポリオールはMEKに溶解し、分岐エポキシドおよび線状エポキシドはキシレンに溶解し、AMA系分岐ポリマーは酢酸ブチルに溶解した。
【0124】
<分岐ポリオール材料および線状ポリオール材料のコーティングおよび硬化の方法>
2液性の標準クリアコーティングは、酢酸ブチル中、上記で調製したポリオール、ジイソシアネート、および錫系触媒を使用し、調製した。ポリオールを酢酸ブチルに溶解し(A液)、デスモジュール(登録商標)N3390ジイソシアネート(B液)およびジラウリン酸ジブチル錫触媒と完全に混合した。この調製で得られたRFU(レディー・フォー・ユース)クリアコートの特性は、次の通りである。活性化RFU固形分=50質量%(MEK溶液)、NCO:OHモル比=1.2、ジラウリン酸ジブチル錫触媒溶液レベル(1質量%(酢酸ブチル溶液))=1.0質量%(乾燥剤型)。
【0125】
<硬度(振り子式)>
BS−EN−ISO−1522に準拠した硬度(振り子式)は、ケーニッヒ振り子を用いた。100ミクロンのキー・バー型アプリケータ(key bar applicator)を用いて、試料をガラスパネル上に塗布した。この試料を雰囲気温度下で30分間乾燥させた後、60℃で2時間焼成した。室温に2日間置いた後に、硬度測定を行った。
【0126】
<引っ掻き抵抗性>
引っ掻き抵抗性試験は、BS−EN−ISO−1518に準拠して行った。100ミクロンのスパイラルアプリケータを用いて、試料をアルミパネル上に塗布した。この試料を雰囲気温度下で30分間乾燥させた後、60℃で2時間焼成した。室温に2日間置いた後に、引っ掻き抵抗性の測定を行った。
【0127】
<乾燥時間(BK測定器)>
湿潤なクリアコートを、75ミクロンの厚さで1/2インチ厚の複数のガラス片上に塗布し、BK乾燥時間測定器中に置いた。BK測定器の12時間追跡機能を用いて、前記クリアコートの乾燥時間を測定した。
【0128】
<付着性(碁盤目試験)>
100ミクロンのスパイラルアプリケータを用い、クロメート処理済みアルミパネル上にクリアコートを塗布した。この試料を雰囲気温度下で30分間乾燥させた後、60℃で2時間焼成した。室温に2日間置いた後に、BS−EN−ISO−2409に準拠して付着性の碁盤目試験を行った。膜剥がれ率(%)を記録した。
【0129】
表3に示すのは、分岐ポリオール材料および線状ポリオール材料の、粘度、乾燥時間、およびコーティング特性である。
【0130】
【表3】

【0131】
表3中、fとgは、MEK溶液中50質量%で測定した。;hはBuOAc溶液中の固形分質量%を表す。
【0132】
表3のデータが示すように、分岐ポリマー製剤(BP3からBP8)の硬化速度は、線状材料から調製した硬度が同等の組成物(LP1からLP3)よりも大きかった。加えて、BP8から調製した製剤はより高い引っ掻き抵抗性を示した。
【0133】
<分岐エポキシ材料および線状エポキシ材料のコーティングおよび硬化の方法>
分岐エポキシ含有材料および線状エポキシ含有材料を、固形分含量50%になるように酢酸ブチルに溶解した。調製済みアミン溶液(0.1g/mLのTETAまたはMDA)を、エポキシ/アミン比=1となるように添加した。この2液性溶液をサンプルローラー上で混合し、均一溶液を得た。100ミクロンのスパイラルコーターを用いて、この溶液をクロメート処理済みアルミパネルに塗布した。この試料を雰囲気温度下で10分間乾燥させた後、100℃で2時間焼成した。48時間後に、振り子式硬度(BS−EN−ISO−1522)、碁盤目付着性(BS−EN−ISO−2409)、および引っ掻き抵抗性(BS−EN−ISO−1518)を測定した。
【0134】
表4に示すのは、分岐材料または線状材料を含んでなるGMAの粘度、硬度、付着性、および引っ掻き抵抗性である。
【0135】
【表4】

【0136】
表4が示すように、エポキシド含有分岐ポリマーを含んでなる製剤は、それに相当する線状ポリマー系製剤よりも高い付着性を発揮した。さらに、前者は線状材料よりも低い溶液粘度を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加共重合型分岐コポリマーの使用であって、
前記の付加共重合型分岐コポリマーを硬化して架橋組成物を形成せしめ、
前記の付加共重合型分岐コポリマーが付加重合プロセスにより得られ、および
前記の付加重合型分岐ポリマーの重量平均分子量が2,000Daから1,500,000Daである、
ことを特徴とする、上記使用。
【請求項2】
請求項1に記載の付加共重合型分岐コポリマーの使用であって、
前記の付加共重合型分岐コポリマーが、末端以外のブリッジで共有結合した少なくとも2本の鎖を含んでなり、
前記の少なくとも2本の鎖が、少なくとも1つのエチレン系モノ不飽和モノマーを含んでなり、
前記のブリッジが、少なくとも1つのエチレン系ポリ不飽和モノマーを含んでなり、
前記のポリマーが、連鎖移動剤残基および任意に開始剤残基を含んでなり、および
前記のポリ不飽和モノマーと前記のモノ不飽和モノマーとのモル比が1:100から1:4の範囲である、
ことを特徴とする、上記使用。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の付加共重合型分岐コポリマーの使用であって、
前記の付加重合プロセスにより、前記の付加重合型分岐ポリマーを形成せしめた後に、前記の付加重合型分岐ポリマーを硬化せしめることを特徴とする、上記使用。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の付加共重合型分岐コポリマーの使用であって、
前記の付加共重合型分岐コポリマーは、反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性低分子を添加することにより硬化することを特徴とする、上記使用。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の付加共重合型分岐コポリマーの使用であって、
前記の付加共重合型分岐コポリマーは、熱反応、光分解反応、酸化反応、もしくは還元反応を用いるか、または触媒剤もしくは開始剤を添加することにより硬化することを特徴とする、上記使用。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の付加共重合型分岐コポリマーの使用であって、
前記の付加共重合型分岐コポリマーは、少なくとも、ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、カルボキシル、エポキシ、イソシアネート、ピリジニル、ビニル、アリル、(メタ)アクリレート、およびスチレニルのうちの1つまたは複数の基を含んでなるモノマーから、調製されたことを特徴とする、上記使用。
【請求項7】
請求項6に記載の付加共重合型分岐コポリマーの使用であって、
前記の付加共重合型分岐コポリマーは、モノマーが備える相互反応性官能基の反応により硬化したものであることを特徴とする、上記使用。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の付加共重合型分岐コポリマーの使用であって、
前記分岐コポリマーに含まれる不純物が1%未満であることを特徴とする、上記使用。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の付加共重合型分岐コポリマーの使用であって、
前記の付加重合型分岐ポリマーの重量平均分子量が3,000Daから900,000Daであることを特徴とする、上記使用。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の付加共重合型分岐コポリマーの使用であって、
前記のモノ不飽和モノマー、ポリ不飽和モノマー、および連鎖移動剤のうち少なくとも1つが親水性残基であることを特徴とする、上記使用。
【請求項11】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の付加共重合型分岐コポリマーの使用であって、
前記のモノ不飽和モノマー、ポリ不飽和モノマー、および連鎖移動剤のうち少なくとも1つが疎水性残基であることを特徴とする、上記使用。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の付加共重合型分岐コポリマーの使用であって、
前記の付加共重合型分岐コポリマーが、スチレン、ビニルベンジルクロリド、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、アリルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルリン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、(チイラン−2−イル)メチルメタクリレート、1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ドデカンチオール、ヘキサンチオール、2−メルカプトエタノール、ならびにアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ジ−t−ブチル、およびペルオキシ安息香酸t−ブチルから生ずる分子断片からなる群から選択されるユニットを含んでなることを特徴とする、上記使用。
【請求項13】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の付加共重合型分岐コポリマーの使用であって、
、前記の付加共重合型分岐コポリマーが、スチレン、グリシジルメタクリレート、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ドデカンチオール、ヘキサンチオール、2−メルカプトエタノール、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ジ−t−ブチル、およびペルオキシ安息香酸t−ブチルからなる群から選択されるユニットを含んでなることを特徴とする、上記使用。
【請求項14】
請求項1から請求項13に記載の付加共重合型分岐コポリマーを用いて調製した硬化コーティング、接着剤、またはシーラントの組成物であって、
前記の硬化組成物がさらに、ジブロモペンタン、ジブロモヘキサン、ジブロモヘプタン、ジブロモオクタン、ジヨードペンタン、ジヨードヘキサン、ジヨードヘプタン、ジヨードオクタン、テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミノヘキサン、タータメチエチレンジアミン、テトラメチルブタン−1,4−ジアミン、トリレンジイソシアネート、およびヘキサメチレンジイソシアネートからなる群から選択される硬化剤を含んでなることを特徴とする、上記硬化コーティング、接着剤、またはシーラントの組成物。
【請求項15】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の硬化した付加共重合型分岐コポリマーの使用であって、
前記使用の応用領域が、コーティング、接着剤、インク、シーラント、複合材料、および樹脂を含む群から選択されることを特徴とする、上記使用。
【請求項16】
請求項1から請求項13に記載の硬化した付加共重合型分岐コポリマーを含んでなる、樹脂。
【請求項17】
請求項1から請求項13に記載の硬化した付加共重合型分岐コポリマーを含んでなる、複合材料。
【請求項18】
請求項1から請求項13に記載の硬化した付加共重合型分岐コポリマーを含んでなる、コーティング。
【請求項19】
請求項1から請求項19に記載の硬化した付加共重合型分岐コポリマーを含んでなる、インク。
【請求項20】
付加共重合型分岐コポリマーを含んでなる硬化性組成物であって、
相当する線状ポリマーを含んでなる組成物よりも速い硬化速度、高い付着性、高い引っ掻き抵抗性、またはそれらの組み合わせを示すことを特徴とする、硬化性組成物。

【公表番号】特表2013−505319(P2013−505319A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529339(P2012−529339)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001741
【国際公開番号】WO2011/033262
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(509011857)ユニリーバー・ピーエルシー (11)
【Fターム(参考)】