説明

硬化組成物

10重量%〜35重量%のシリカ、10重量%〜35重量%のアルミナ、3重量%〜30重量%の酸化亜鉛、4重量%〜30重量%のP、及び3重量%〜25重量%のフッ化物を含む粒状ガラスと、水性条件下で該粒状ガラスとの反応性を有する酸性コポリマーとを含む硬化組成物。10重量%〜65重量%の硬化組成物の酸性コポリマーを含む水性ポリマー溶液であって、該酸性コポリマーが、50000〜200000の平均分子量を有し、アクリル酸と、アクリル酸エステル(I)及び/又は式(II)の化合物と、任意に式(III)の化合物とを含有する混合物の共重合を含むプロセスにより得ることができる、水性ポリマー溶液(式(I)、式(II)、式(III)においてkは1〜5の整数であり、hは0〜(5−k)の整数であり、nは1〜3の整数であり、R1は水素、又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R2及びR3は独立して水素、炭素数1〜6のアルキル基、又は以下の式(IV)の部分を表し(式(IV)においてmは独立して0〜3の整数であり、Lは−CH−若しくは−CH=CH−である)、ただしR1、R2又はR3の少なくとも1つは水素ではない)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状ガラスと、水性条件下で該粒状ガラスとの反応性を有する酸性コポリマーとを含む硬化組成物(hardening composition)に関する。さらに本発明は、10重量%〜65重量%の特定の酸性コポリマーを含む水性ポリマー溶液にも関する。本発明のガラスアイオノマー硬化組成物に基づいて、特に本発明による水性ポリマー溶液を使用することにより得られる硬化したガラスアイオノマーは、改善した機械的特性、例えば2軸曲げ強度、破壊靱性及び圧縮強度を有する。
【背景技術】
【0002】
歯科用修復材として使用されるガラスアイオノマーは、幾つかの理由で、従来のレジン含有複合材、及び従来のレジン強化ガラスアイオノマー修復材に対する利点を有する。例えば、ガラスアイオノマーは、湿潤表面上への適用に耐容性を有しており、収縮性が低く、接着性を有する(self-adhesive)。これらの理由から、ガラスアイオノマーは、使用することが容易であり、且つ使用に対して寛容的であると言われている。また、ガラスアイオノマーは、モノマーではなくポリマーを含有するので、感作及びアレルギー反応を引き起こすことがあるアクリルモノマーが浸出するリスクがない。さらにガラスアイオノマーは、歯の硬組織に化学的に結合し、再発性齲蝕の予防に役立つ、有益なレベルのフッ化物放出をもたらすこともある。
【0003】
しかし、市販のガラスアイオノマーの主な短所は、それらの比較的低い2軸曲げ強度(約45MPaまでしかない)、及び低い破壊靱性(約0.5MPa・m1/2しかない)であり、修復物の端部での破壊、最悪の場合には修復物のバルク破壊を引き起こすことがある。
【0004】
従来のガラスアイオノマーの機械的特性が低いことにより、適用の範囲が制限されている。さらに、従来のガラスアイオノマーの機械的特性が低いことにより、歯科用修復物として使用した場合に、壊滅的な損壊が生じる場合があり、それにより該修復物の耐用期間が顕著に短くなる可能性がある。
【0005】
従来のガラスアイオノマー硬化組成物による第2の問題は、使用されるポリマー溶液の安定性である。十分な強度を得るために必要な高濃度では、ポリマー溶液は、貯蔵中にゲル化する傾向があり、その場合粒状ガラス粉末と混合することができない。
【0006】
第3の問題は、ガラスアイオノマー硬化組成物に使用されるポリマー溶液の粘度が分子量の増大とともに増大し、それにより高分子量のポリマーでは、ポリマー溶液と粒状ガラス粉末とを混合し難くなる。
【0007】
またさらなる問題は、ガラスアイオノマー調合物における使用に現在利用可能な多くのガラスは、酸に対する反応性が高すぎて、所要の微細な粒子径まで粉砕した場合、十分に長い作業時間(working time)をもたらさないことである。
【0008】
特許文献1は、粒状アルミノシリケートガラスと、1000〜1000000、好ましくは10000〜25000の平均分子量を有する水溶性ポリマーとを含有する歯科用セメントを記載している。アクリル酸、アコニット酸、イタコン酸又はシトラコン酸等の酸のコポリマーが、該発明における使用について示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,758,612号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
粒状ガラスと、水性条件下で該粒状ガラスとの反応性を有する酸性コポリマーとを含む硬化組成物であって、該酸性コポリマーが、
(i)水に溶解して、貯蔵時に高い安定性を有し、且つ粒状ガラス粉末と、若しくは粒状ガラス及び乾燥コポリマーの混和物(ガラスアイオノマー粉末)と容易に混合することができる、酸性コポリマーの高濃度の水性溶液を形成することができるか、又は
(ii)乾燥して粒状ガラスと混合し、ガラスアイオノマー粉末を提供することができ、
且つ該ガラスアイオノマー硬化組成物が、固化又は硬化して従来のガラスアイオノマーに対して改善した機械的特性(特に、増大した2軸曲げ強度及び破壊靱性KIc)をもたらす硬化したガラスアイオノマーを形成する、硬化組成物を提供することが、本発明の課題である。
【0011】
ゲル化に関して長時間にわたり安定な、所要の高い分子量及び濃度の酸性コポリマー溶液を提供することが、本発明のさらなる課題である。
【0012】
酸性ポリマー溶液と混合したときに適切な反応速度を有しており、それによりガラスを微細な粒子径に粉砕した場合の作業時間及び固化時間(setting times)を好適なものとする、ガラスの使用を提供することが、本発明のさらなる課題である。
【0013】
さらなる望ましい特徴として、硬化すると歯科用途に好適なガラスアイオノマーを形成する硬化組成物は、X線に対して不透性を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、
(i)粒状ガラスと、
(ii)水性条件下で該粒状ガラスとの反応性を有する酸性コポリマーと、
を含む硬化組成物であって、
上記粒状ガラスが、
a.10重量%〜35重量%のシリカ、
b.10重量%〜35重量%のアルミナ、
c.3重量%〜30重量%の酸化亜鉛、
d.4重量%〜30重量%のP
e.3重量%〜25重量%のフッ化物、
を含み、且つ
上記酸性コポリマーが、50000〜200000の平均分子量Mを有し、且つ以下の酸、又はその加水分解性誘導体:
(1)アクリル酸と、
(2)以下の式(I):
【化1】

(式中、kは1〜5の整数であり、hは0〜(5−k)の整数である)のアクリル酸エステル、及び/又は
以下の式(II):
【化2】

(式中、nは1〜3の整数である)の化合物と、任意に
(3)以下の式(III):
【化3】

(式中、R1は水素、又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R2及びR3は独立して水素、炭素数1〜6のアルキル基、又は以下の式(IV):
【化4】

(式中、mは独立して0〜3の整数であり、Lは−CH−若しくは−CH=CH−である)の部分を表し、ただしR1、R2又はR3の少なくとも1つは水素ではない)の化合物と、
を含有する混合物の共重合を含むプロセスにより得ることができることを特徴とする、硬化組成物を提供する。
【0015】
さらに本発明は、10重量%〜65重量%の酸性コポリマーを含む水性ポリマー溶液であって、該酸性コポリマーが、50000〜200000の平均分子量Mを有し、且つ以下の酸、又はその加水分解性誘導体:
(1)アクリル酸と、
(2)以下の式(I):
【化5】

(式中、kは1〜5の整数であり、hは0〜(5−k)の整数である)のアクリル酸エステル、及び/又は
以下の式(II):
【化6】

(式中、nは1〜3の整数である)の化合物と、任意に
(3)以下の式(III):
【化7】

(式中、R1は水素、又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R2及びR3は独立して水素、炭素数1〜6のアルキル基、又は以下の式(IV):
【化8】

(式中、mは独立して0〜3の整数であり、Lは−CH−若しくは−CH=CH−である)の部分を表し、ただしR1、R2又はR3の少なくとも1つは水素ではない)の化合物と、
を含有する混合物の共重合により得ることができる、水性ポリマー溶液を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、硬化組成物に関する。硬化組成物は、粒状ガラスと、水性条件下で該粒状ガラスとの反応性を有する酸性コポリマーとを含む。
【0017】
本発明の粒状ガラスは、粒状の反応性アルミノシリケートガラス組成物である。組成物は、ケイ素、アルミニウム、亜鉛、リン及びフッ素を必須元素として含有する。ケイ素、アルミニウム、亜鉛及びリンは、組成物中に主に酸化物として含有される。
【0018】
粒状ガラスは、
a.10重量%〜35重量%のシリカ、
b.10重量%〜35重量%のアルミナ、
c.3重量%〜30重量%の酸化亜鉛、
d.4重量%〜30重量%のP
e.3重量%〜25重量%のフッ化物、
を含む。
【0019】
ガラスアイオノマーの特性は多くの因子に依存するが、ガラスの組成とガラスアイオノマーの特性との間に、一般的な傾向を見出すことができる。傾向は必ずしも線形ではなく、多くの相互作用が存在するので、傾向を、既知の点からあまりにも遠くまで外挿すべきではない。ガラス中のたいていの成分の変化は、ガラス中の架橋結合の程度に影響を与えるので、ほとんどの組成の変化が、反応性に何らかの形で影響を与える。ガラスと得られるガラスアイオノマーの特性との重回帰分析においては、以下の傾向が見られる。
【0020】
シリカ(SiOとして算出される)は、本発明により使用されるガラス組成物中に10重量%〜35重量%の量で含有される。好ましい一実施形態では、シリカは20重量%〜25重量%の量で含有される。組成物中の量がこの範囲未満である場合、ガラスの溶解性及び反応性が高すぎることがあり、得られるガラスアイオノマーの強度が低いことがある。組成物中の量がこの範囲を超える場合、ガラスの特性が悪化することがあり、得られるガラスアイオノマーはさらに、固化速度が大きくなりすぎる傾向を有することがある。
【0021】
アルミナ(Alとして算出される)は、本発明により使用されるガラス組成物中に10重量%〜35重量%の量で含有される。好ましい一実施形態ではアルミナは、20重量%〜25重量%の量で含有される。組成物中の量がこの範囲未満である場合、ガラスの特性が悪化することがあり、ガラスの反応性が非常に高くなることがある。組成物中の量がこの範囲を超える場合、ガラスの特性が悪化することがあり、ガラスアイオノマーの強度が低いことがある。
【0022】
シリカとアルミナとの間の重量比は、好ましくは1.2〜0.8の範囲、より好ましくは1.15〜1.0の範囲である。組成物におけるこの比がこの範囲未満である場合、ガラスの特性が悪化することがあり、ガラスの反応性が非常に高くなることがある。組成物におけるこの比がこの範囲を超える場合、ガラスの特性が悪化することがあり、ガラスの反応性が非常に高くなり且つ調節することが困難になることがある。
【0023】
酸化亜鉛(ZnOとして算出される)は、本発明により使用されるガラス組成物中に3重量%〜30重量%の量で含有される。好ましい一実施形態では、酸化亜鉛は13重量%〜18重量%の量で含有される。組成物中の量がこの範囲未満である場合、ガラスの特性が悪化することがあり、ガラスアイオノマーからの亜鉛イオンの放出速度が減少する。組成物中の量がこの範囲を超える場合、ガラスの特性が悪化することがあり、ガラスの反応性が高くなりすぎる傾向を有することがある。
【0024】
五酸化リン(Pとして算出される)は、本発明により使用されるガラス組成物中に4重量%〜30重量%の量で含有される。好ましい一実施形態では、五酸化リンは14重量%〜18重量%の量で含有される。リン原子はまた、ホスフェートの形態で組成物中に含有され得る。組成物中の五酸化リンの量がこの範囲外である場合、作業時間及び固化時間が悪化することがある。
【0025】
フッ化物は、本発明によるガラス組成物中に3重量%〜25重量%の量で含有される。好ましい一実施形態では、フッ化物は4重量%〜7重量%の量で含有される。組成物中の量がこの範囲未満である場合、ガラスの特性が悪化することがある。ガラスの反応性がより低くなることがあり、このガラスから作製されるガラスアイオノマーの強度が低減することがある。組成物中の量がこの範囲を超える場合、ガラスの特性が悪化する。ガラスの反応性が高くなり、且つガラスアイオノマー調合物中で使用することがより困難になることがある。
【0026】
必須元素の他に、本発明の粒状ガラス組成物は、18重量%〜21重量%の、酸化カルシウムに酸化ストロンチウムを加えたものをさらに含んでいてもよい。
【0027】
粒状ガラス組成物は、好ましくはいかなるアルカリ金属酸化物も実質的に含有しない。特に、ガラス組成物は、多くとも2重量%、好ましくは多くとも1.5重量%のアルカリ金属酸化物MO(MはLi、Na又はKである)を含有する。好ましい一実施形態では、粒状ガラス中のNaOの含有量は、1重量%未満である。アルカリ金属がこれらの範囲を超える量で組成物中に存在する場合、ガラスの溶解性がより高くなることがあり、対応する硬化組成物の作業時間及び固化時間が悪化することがある。
【0028】
ガラス組成物は、好ましくはいかなるホウ素原子も実質的に含有しない。特に組成物は、多くとも2重量%、好ましくは多くとも1.5重量%のBを含有する。組成物中のBの含有量がこの範囲を超える場合、対応する硬化組成物の加水分解安定性が悪化することがある。
【0029】
好ましい一実施形態では、ガラス組成物は、Pに対する酸化亜鉛の重量比が2.0〜0.2であることを特徴とする。重量比がこの範囲外である場合、対応する硬化組成物の作業時間及び固化時間、及び/又は対応するガラスアイオノマーの機械的特性が、悪化することがある。
【0030】
さらに好ましい一実施形態では、ガラス組成物は、シリカに対する酸化亜鉛及び酸化ストロンチウムの合計の重量比が1.0〜1.95、より好ましくは1.25〜1.6であることを特徴とする。重量比がこの範囲外である場合、対応する硬化組成物の作業時間及び固化時間、及び/又は対応するガラスアイオノマーの機械的特性が、悪化することがある。
【0031】
さらに好ましい一実施形態では、ガラス組成物は、Pに対する酸化亜鉛及びフッ化物の合計の重量比が0.8〜3.0であることを特徴とする。重量比がこの範囲外である場合、対応する硬化(harding)組成物の作業時間及び固化時間、及び/又は対応するガラスアイオノマーの機械的特性が、悪化することがある。
【0032】
本発明のアルミノシリケートガラス組成物は、歯科用ガラスを調製する任意の方法により、調製することができる。特に、好適な出発材料の混合物を調製することが可能である。したがって、混合物は典型的には、シリカ、酸化アルミニウム、五酸化リン、及び好適なフッ化物源(例えば、三フッ化アルミニウム又はNaAlF)を含有し得る。任意に、混合物は、炭酸カルシウム若しくは炭酸ストロンチウム、又は対応するフッ化物(CaF若しくはSrF)を含有し得る。有利には、その後混合物を振とうし、成分を共に完全に混合させる。その後混合物を、50℃/分〜300℃/分の好適な速度で約600℃〜800℃の第1の高温まで加熱し、脱気及び水分蒸散を行わせる。高温での好適な時間の経過後、混合物を、50℃/分〜300℃/分の好適な速度で約1300℃〜1500℃の第2の高温まで加熱し、この温度で約60分間〜180分間保持し、その後温度を50℃/分〜300℃/分の好適な速度で1400℃〜1600℃の第3の高温まで増大させ、この温度で約10分間〜60分間保持する。オーブンからルツボを取り出した後、溶融ガラスを冷水中に直接注ぎ、砕けたガラス片を得る。
【0033】
その後ガラス片を、例えば乾式ボールミル中で粉砕して、100μm未満、好ましくは10μm未満の範囲の平均粒子径を有する粉末を得ることができる。この粉末をその後、例えば水スラリ中でさらに粉砕し、さらに小さい(典型的には、0.1μm〜8μmの範囲の)平均粒子径を有するガラス粉末を得ることができる。好ましくは粒状ガラス充填剤は、0.1μm〜100μmの範囲の、より好ましくは0.5μm〜25μmの範囲の、最も好ましくは1.0μm〜3.5μmの範囲の、平均粒子径を有する。ガラス粒子の反応性はその寸法及び表面積に依存するため、平均粒子径を注意深く制御することが重要である。
【0034】
粒子径測定は、Malvern Particle Master Sizerモデル Sにより具体的に例示されているもの等の、任意の従来の方法により行うことができる。
【0035】
本発明により使用されるガラス組成物は、歯科用修復材組成物の調製のために使用することができる。
【0036】
粒状ガラス充填剤は、水性条件下で粒状ガラスとの反応性を有する酸性コポリマーをさらに含む、本発明による硬化組成物に組み込まれる。
【0037】
本発明の硬化組成物において使用される酸性コポリマーは、50000〜200000、好ましくは75000〜150000、より好ましくは100000〜130000の平均分子量Mを有する。或いは、本発明の硬化組成物において使用される酸性コポリマーは、5000〜40000、好ましくは10000〜30000、より好ましくは15000〜25000の平均分子量Mを有する。平均分子量M及びMが低すぎる場合、酸性コポリマーは、最終的なガラスアイオノマーに対して所要の機械的特性をもたらさない。平均分子量M及びMが高すぎる場合、ポリマー溶液の粘度は分子量の増大とともに増大するため、ポリマー溶液及びガラスアイオノマー粉末は混合し難くなる。
【0038】
本明細書で開示される酸性コポリマーの平均分子量M及びM並びに分子量分布は、以下で、また実験の部4でさらに詳細に説明されるゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)分析法を使用して確定したものである。本明細書で説明されるGPC分析法は、溶離液(溶出剤)として水性溶液(脱イオン水における、11.88g/LのNaHPO)を使用する。GPC分析のために使用された固体支持体(浸透ゲル)を含有するカラムの組合せは、プレカラム(PSS Suprema、10μm、30Å、ID8mm×50mm)と、2本のさらなるカラム(PSS Suprema、10μm、30Å及び1000Å、ID8mm×300mm)とを含むものであった。濃度3.0g/Lの所定の酸性コポリマー試料50μLのインジェクションを、1.0 mL/分の流速を使用する23℃での溶出の前に行った。溶出した酸性コポリマーを、230nmの紫外光(UV)を使用して、又は示差屈折計を使用することにより検出し、各試料に関するGPC分析溶出プロファイル結果を作成した。カラムの組合せに関する検量線を作成するために、ポリアクリル酸ナトリウム標準を、同じ方法論を使用して分析した。酸性コポリマーの試料の平均分子量M及びM並びに分子量分布を、ポリアクリル酸ナトリウム検量線を基準として、それらの溶出プロファイル結果のコンピュータでの積算処理(integration)により算出した。
【0039】
酸性コポリマーは、アクリル酸、及び(I):
【化9】

(式中、kは1〜5の整数であり、hは0〜(5−k)の整数である)のアクリル酸エステルを含有する混合物の共重合を含むプロセスにより得ることができる。
酸性コポリマーは、代替的に、アクリル酸、及び(II):
【化10】

(式中、nは1〜3の整数である)の化合物を含有する混合物の共重合を含むプロセスにより得ることができる。
酸性コポリマーは、代替的に、アクリル酸、(I)のアクリル酸エステル、及び(II)の化合物を含有する混合物の共重合を含むプロセスにより得ることができる。
混合物は、以下の式(III):
【化11】

の化合物を任意にさらに含有していてもよい。
【0040】
式(III)においてR1は、水素、又は直鎖、分枝鎖若しくは環状の炭素数1〜6のアルキル基、例えばメチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−、n−ブチル−、(R)−sec−ブチル−、(S)−sec−ブチル−、sec−ブチル−、イソブチル−、tert−ブチル−、n−ペンチル−、(R)−2−ペンチル−、(S)−2−ペンチル−、2−ペンチル−、3−ペンチル−、2−メチル−ブチル−、イソペンチル−、(R)−3−メチル−2−ブチル−、(S)−3−メチル−2−ブチル−、3−メチル−2−ブチル−、tert−ペンチル−、2,2−ジメチル−プロピル−、n−ヘキシル−、(R)−2−ヘキシル−、(S)−2−ヘキシル−、2−ヘキシル−、(R)−3−ヘキシル−、(S)−3−ヘキシル−、3−ヘキシル−、2−メチル−ペンチル−、2−メチル−2−ペンチル−、(R)−2−メチル−3−ペンチル−、(S)−2−メチル−3−ペンチル−、2−メチル−3−ペンチル−、(R)−4−メチル−2−ペンチル−、(S)−4−メチル−2−ペンチル−、4−メチル−2−ペンチル−、4−メチル−ペンチル−、3−メチル−ペンチル−、(2R,3R)−3−メチル−2−ペンチル−、(2R,3S)−3−メチル−2−ペンチル−、(2S,3R)−3−メチル−2−ペンチル−、(2S,3S)−3−メチル−2−ペンチル−、3−メチル−2−ペンチル−、3−メチル−3−ペンチル−、2−エチル−ブチル−、2,3−ジメチル−ブチル−、2,3−ジメチル−2−ブチル−、2,2−ジメチル−ブチル−、(R)−3,3−ジメチル−2−ブチル−、(S)−3,3−ジメチル−2−ブチル−、3,3−ジメチル−2−ブチル−、3,3−ジメチル−ブチル−、シクロプロピル−、1−メチルシクロプロピル−、(1R,2R)−2−メチルシクロプロピル−、(1R,2S)−2−メチルシクロプロピル−、(1S,2R)−2−メチルシクロプロピル−、(1S,2S)−2−メチルシクロプロピル−、2−メチルシクロプロピル−、1−エチルシクロプロピル−、(1R,2R)−2−エチルシクロプロピル−、(1R,2S)−2−エチルシクロプロピル−、(1S,2R)−2−エチルシクロプロピル−、(1S,2S)−2−エチルシクロプロピル−、2−エチルシクロプロピル−、1−プロピルシクロプロピル−、(1R,2R)−2−プロピルシクロプロピル−、(1R,2S)−2−プロピルシクロプロピル−、(1S,2R)−2−プロピルシクロプロピル−、(1S,2S)−2−プロピルシクロプロピル−、2−プロピルシクロプロピル−、(1R,2R)−1,2−ジメチルシクロプロピル−、(1R,2S)−1,2−ジメチルシクロプロピル−、(1S,2R)−1,2−ジメチルシクロプロピル−、(1S,2S)−1,2−ジメチルシクロプロピル−、1,2−ジメチルシクロプロピル−、(R)−2,2−ジメチルシクロプロピル−、(S)−2,2−ジメチルシクロプロピル−、2,2−ジメチルシクロプロピル−、(2R,3R)−2,3−ジメチルシクロプロピル−、(2R,3S)−2,3−ジメチルシクロプロピル−、(2S,3R)−2,3−ジメチルシクロプロピル−、(2S,3S)−2,3−ジメチルシクロプロピル−、2,3−ジメチルシクロプロピル−、(2R,3R)−1,2,3−トリメチルシクロプロピル−、(2R,3S)−1,2,3−トリメチルシクロプロピル−、(2S,3R)−1,2,3−トリメチルシクロプロピル−、(2S,3S)−1,2,3−トリメチルシクロプロピル−、1,2,3−トリメチルシクロプロピル−、(R)−1,2,2−トリメチルシクロプロピル−、(S)−1,2,2−トリメチルシクロプロピル−、1,2,2−トリメチルシクロプロピル−、(1R,3R)−2,2,3−トリメチルシクロプロピル−、(1R,3S)−2,2,3−トリメチルシクロプロピル−、(1S,3R)−2,2,3−トリメチルシクロプロピル−、(1S,3S)−2,2,3−トリメチルシクロプロピル−、2,2,3−トリメチルシクロプロピル−、(1R,2R)−1−エチル−2−メチルシクロプロピル−、(1R,2S)−1−エチル−2−メチルシクロプロピル−、(1S,2R)−1−エチル−2−メチルシクロプロピル−、(1S,2S)−1−エチル−2−メチルシクロプロピル−、1−エチル−2−メチルシクロプロピル−、(1R,2R)−2−エチル−1−メチルシクロプロピル−、(1R,2S)−2−エチル−1−メチルシクロプロピル−、(1S,2R)−2−エチル−1−メチルシクロプロピル−、(1S,2S)−2−エチル−1−メチルシクロプロピル−、2−エチル−1−メチルシクロプロピル−、(1R,2R)−2−エチル−2−メチルシクロプロピル−、(1R,2S)−2−エチル−2−メチルシクロプロピル−、(1S,2R)−2−エチル−2−メチルシクロプロピル−、(1S,2S)−2−エチル−2−メチルシクロプロピル−、2−エチル−2−メチルシクロプロピル−、(1R,2R,3R)−2−エチル−3−メチルシクロプロピル−、(1R,2R,3S)−2−エチル−3−メチルシクロプロピル−、(1R,2S,3R)−2−エチル−3−メチルシクロプロピル−、(1S,2R,3R)−2−エチル−3−メチルシクロプロピル−、(1R,2S,3S)−2−エチル−3−メチルシクロプロピル−、(1S,2R,3S)−2−エチル−3−メチルシクロプロピル−、(1S,2S,3R)−2−エチル−3−メチルシクロプロピル−、(1S,2S,3S)−2−エチル−3−メチルシクロプロピル−、2−エチル−3−メチルシクロプロピル−、シクロブチル−、1−メチルシクロブチル−、(1R,2R)−2−メチルシクロブチル−、(1R,2S)−2−メチルシクロブチル−、(1S,2R)−2−メチルシクロブチル−、(1S,2S)−2−メチルシクロブチル−、2−メチルシクロブチル−、3−メチルシクロブチル−、1−エチルシクロブチル−、(1R,2R)−2−エチルシクロブチル−、(1R,2S)−2−エチルシクロブチル−、(1S,2R)−2−エチルシクロブチル−、(1S,2S)−2−エチルシクロブチル−、2−エチルシクロブチル−、3−エチルシクロブチル−、(1R,2R)−1,2−ジメチルシクロブチル−、(1R,2S)−1,2−ジメチルシクロブチル−、(1S,2R)−1,2−ジメチルシクロブチル−、(1S,2S)−1,2−ジメチルシクロブチル−、1,2−ジメチルシクロブチル−、1,3−ジメチルシクロブチル−、(R)−2,2−ジメチルシクロブチル−、(S)−2,2−ジメチルシクロブチル−、2,2−ジメチルシクロブチル−、(1R,2R,3R)−2,3−ジメチルシクロブチル−、(1R,2R,3S)−2,3−ジメチルシクロブチル−、(1R,2S,3R)−2,3−ジメチルシクロブチル−、(1S,2R,3R)−2,3−ジメチルシクロブチル−、(1R,2S,3S)−2,3−ジメチルシクロブチル−、(1S,2S,3R)−2,3−ジメチルシクロブチル−、(1S,2R,3S)−2,3−ジメチルシクロブチル−、(1S,2S,3S)−2,3−ジメチルシクロブチル−、2,3−ジメチルシクロブチル−、(1R,2R)−2,4−ジメチルシクロブチル−、(1R,2S)−2,4−ジメチルシクロブチル−、(1S,2R)−2,4−ジメチルシクロブチル−、(1S,2S)−2,4−ジメチルシクロブチル−、2,4−ジメチルシクロブチル−、3,3−ジメチルシクロブチル−、シクロペンチル−、1−メチルシクロペンチル−、(1R,2R)−2−メチルシクロペンチル−、(1R,2S)−2−メチルシクロペンチル−、(1S,2R)−2−メチルシクロペンチル−、(1S,2S)−2−メチルシクロペンチル−、2−メチルシクロペンチル−、(1R,2R)−3−メチルシクロペンチル−、(1R,2S)−3−メチルシクロペンチル−、(1S,2R)−3−メチルシクロペンチル−、(1S,2S)−3−メチルシクロペンチル−、3−メチルシクロペンチル−、若しくはシクロヘキシル−である。
【0041】
式(III)において、R2及びR3は独立して、水素、直鎖、分枝鎖若しくは環状の炭素数1〜6のアルキル基、例えばメチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−、n−ブチル−、(R)−sec−ブチル−、(S)−sec−ブチル−、sec−ブチル−、イソブチル−、tert−ブチル−、n−ペンチル−、(R)−2−ペンチル−、(S)−2−ペンチル−、2−ペンチル−、3−ペンチル−、2−メチル−ブチル−、イソペンチル−、(R)−3−メチル−2−ブチル−、(S)−3−メチル−2−ブチル−、3−メチル−2−ブチル−、tert−ペンチル−、2,2−ジメチル−プロピル−、n−ヘキシル−、(R)−2−ヘキシル−、(S)−2−ヘキシル−、2−ヘキシル−、(R)−3−ヘキシル−、(S)−3−ヘキシル−、3−ヘキシル−、2−メチル−ペンチル−、2−メチル−2−ペンチル−、(R)−2−メチル−3−ペンチル−、(S)−2−メチル−3−ペンチル−、2−メチル−3−ペンチル−、(R)−4−メチル−2−ペンチル−、(S)−4−メチル−2−ペンチル−、4−メチル−2−ペンチル−、4−メチル−ペンチル−、3−メチル−ペンチル−、(R)−3−メチル−2−ペンチル−、(S)−3−メチル−2−ペンチル−、3−メチル−2−ペンチル−、3−メチル−3−ペンチル−、2−エチル−ブチル−、2,3−ジメチル−ブチル−、2,3−ジメチル−2−ブチル−、2,2−ジメチル−ブチル−、(R)−3,3−ジメチル−2−ブチル−、(S)−3,3−ジメチル−2−ブチル−、3,3−ジメチル−2−ブチル−、3,3−ジメチル−ブチル−、シクロプロピル−、1−メチルシクロプロピル−、(1R,2R)−2−メチルシクロプロピル−、(1R,2S)−2−メチルシクロプロピル−、(1S,2R)−2−メチルシクロプロピル−、(1S,2S)−2−メチルシクロプロピル−、2−メチルシクロプロピル−、1−エチルシクロプロピル−、(1R,2R)−2−エチルシクロプロピル−、(1R,2S)−2−エチルシクロプロピル−、(1S,2R)−2−エチルシクロプロピル−、(1S,2S)−2−エチルシクロプロピル−、2−エチルシクロプロピル−、1−プロピルシクロプロピル−、(1R,2R)−2−プロピルシクロプロピル−、(1R,2S)−2−プロピルシクロプロピル−、(1S,2R)−2−プロピルシクロプロピル−、(1S,2S)−2−プロピルシクロプロピル−、2−プロピルシクロプロピル−、(1R,2R)−1,2−ジメチルシクロプロピル−、(1R,2S)−1,2−ジメチルシクロプロピル−、(1S,2R)−1,2−ジメチルシクロプロピル−、(1S,2S)−1,2−ジメチルシクロプロピル−、1,2−ジメチルシクロプロピル−、(R)−2,2−ジメチルシクロプロピル−、(S)−2,2−ジメチルシクロプロピル−、2,2−ジメチルシクロプロピル−、(2R,3R)−2,3−ジメチルシクロプロピル−、(2R,3S)−2,3−ジメチルシクロプロピル−、(2S,3R)−2,3−ジメチルシクロプロピル−、(2S,3S)−2,3−ジメチルシクロプロピル−、2,3−ジメチルシクロプロピル−、(2R,3R)−1,2,3−トリメチルシクロプロピル−、(2R,3S)−1,2,3−トリメチルシクロプロピル−、(2S,3R)−1,2,3−トリメチルシクロプロピル−、(2S,3S)−1,2,3−トリメチルシクロプロピル−、1,2,3−トリメチルシクロプロピル−、(R)−1,2,2−トリメチルシクロプロピル−、(S)−1,2,2−トリメチルシクロプロピル−、1,2,2−トリメチルシクロプロピル−、(1R,3R)−2,2,3−トリメチルシクロプロピル−、(1R,3S)−2,2,3−トリメチルシクロプロピル−、(1S,3R)−2,2,3−トリメチルシクロプロピル−、(1S,3S)−2,2,3−トリメチルシクロプロピル−、2,2,3−トリメチルシクロプロピル−、(1R,2R)−1−エチル−2−メチルシクロプロピル−、(1R,2S)−1−エチル−2−メチルシクロプロピル−、(1S,2R)−1−エチル−2−メチルシクロプロピル−、(1S,2S)−1−エチル−2−メチルシクロプロピル−、1−エチル−2−メチルシクロプロピル−、(1R,2R)−2−エチル−1−メチルシクロプロピル−、(1R,2S)−2−エチル−1−メチルシクロプロピル−、(1S,2R)−2−エチル−1−メチルシクロプロピル−、(1S,2S)−2−エチル−1−メチルシクロプロピル−、2−エチル−1−メチルシクロプロピル−、(1R,2R)−2−エチル−2−メチルシクロプロピル−、(1R,2S)−2−エチル−2−メチルシクロプロピル−、(1S,2R)−2−エチル−2−メチルシクロプロピル−、(1S,2S)−2−エチル−2−メチルシクロプロピル−、2−エチル−2−メチルシクロプロピル−、(1R,2R,3R)−2−エチル−3−メチルシクロプロピル−、(1R,2R,3S)−2−エチル−3−メチルシクロプロピル−、(1R,2S,3R)−2−エチル−3−メチルシクロプロピル−、(1S,2R,3R)−2−エチル−3−メチルシクロプロピル−、(1R,2S,3S)−2−エチル−3−メチルシクロプロピル−、(1S,2R,3S)−2−エチル−3−メチルシクロプロピル−、(1S,2S,3R)−2−エチル−3−メチルシクロプロピル−、(1S,2S,3S)−2−エチル−3−メチルシクロプロピル−、2−エチル−3−メチルシクロプロピル−、シクロブチル−、1−メチルシクロブチル−、(1R,2R)−2−メチルシクロブチル−、(1R,2S)−2−メチルシクロブチル−、(1S,2R)−2−メチルシクロブチル−、(1S,2S)−2−メチルシクロブチル−、2−メチルシクロブチル−、3−メチルシクロブチル−、1−エチルシクロブチル−、(1R,2R)−2−エチルシクロブチル−、(1R,2S)−2−エチルシクロブチル−、(1S,2R)−2−エチルシクロブチル−、(1S,2S)−2−エチルシクロブチル−、2−エチルシクロブチル−、3−エチルシクロブチル−、(1R,2R)−1,2−ジメチルシクロブチル−、(1R,2S)−1,2−ジメチルシクロブチル−、(1S,2R)−1,2−ジメチルシクロブチル−、(1S,2S)−1,2−ジメチルシクロブチル−、1,2−ジメチルシクロブチル−、1,3−ジメチルシクロブチル−、(R)−2,2−ジメチルシクロブチル−、(S)−2,2−ジメチルシクロブチル−、2,2−ジメチルシクロブチル−、(1R,2R,3R)−2,3−ジメチルシクロブチル−、(1R,2R,3S)−2,3−ジメチルシクロブチル−、(1R,2S,3R)−2,3−ジメチルシクロブチル−、(1S,2R,3R)−2,3−ジメチルシクロブチル−、(1R,2S,3S)−2,3−ジメチルシクロブチル−、(1S,2S,3R)−2,3−ジメチルシクロブチル−、(1S,2R,3S)−2,3−ジメチルシクロブチル−、(1S,2S,3S)−2,3−ジメチルシクロブチル−、2,3−ジメチルシクロブチル−、(1R,2R)−2,4−ジメチルシクロブチル−、(1R,2S)−2,4−ジメチルシクロブチル−、(1S,2R)−2,4−ジメチルシクロブチル−、(1S,2S)−2,4−ジメチルシクロブチル−、2,4−ジメチルシクロブチル−、3,3−ジメチルシクロブチル−、シクロペンチル−、1−メチルシクロペンチル−、(1R,2R)−2−メチルシクロペンチル−、(1R,2S)−2−メチルシクロペンチル−、(1S,2R)−2−メチルシクロペンチル−、(1S,2S)−2−メチルシクロペンチル−、2−メチルシクロペンチル−、(1R,2R)−3−メチルシクロペンチル−、(1R,2S)−3−メチルシクロペンチル−、(1S,2R)−3−メチルシクロペンチル−、(1S,2S)−3−メチルシクロペンチル−、3−メチルシクロペンチル−、若しくはシクロヘキシル−、又は以下の式(IV):
【化12】

(式中、mは独立して0〜3の整数であり、Lは−CH−若しくは−CH=CH−である)の部分を表す。式(III)の化合物において、R1、R2又はR3の少なくとも1つは水素ではない。
【0042】
混合物はまた、ホスホネート基又はスルホネート基から選択される部分を有する酸性重合性モノマーを含有していてもよい。
【0043】
式(I)の化合物の好ましい例としては、単独で又は組合せでの、2−ヒドロキシエチルアクリル酸エステル(エチレングリコールモノアクリレート)、(R)−2−ヒドロキシプロピルアクリル酸エステル、(S)−2−ヒドロキシプロピルアクリル酸エステル、2−ヒドロキシプロピルアクリル酸エステル、3−ヒドロキシプロピルアクリル酸エステル、(R)−2−ヒドロキシブチルアクリル酸エステル、(S)−2−ヒドロキシブチルアクリル酸エステル、2−ヒドロキシブチルアクリル酸エステル、(R)−3−ヒドロキシブチルアクリル酸エステル、(S)−3−ヒドロキシブチルアクリル酸エステル、3−ヒドロキシブチルアクリル酸エステル、4−ヒドロキシブチルアクリル酸エステル、(R)−2−ヒドロキシペンチルアクリル酸エステル、(S)−2−ヒドロキシペンチルアクリル酸エステル、2−ヒドロキシペンチルアクリル酸エステル、(R)−3−ヒドロキシペンチルアクリル酸エステル、(S)−3−ヒドロキシペンチルアクリル酸エステル、3−ヒドロキシペンチルアクリル酸エステル、(R)−4−ヒドロキシペンチルアクリル酸エステル、(S)−4−ヒドロキシペンチルアクリル酸エステル、4−ヒドロキシペンチルアクリル酸エステル、5−ヒドロキシペンチルアクリル酸エステル、(R)−2−ヒドロキシヘキシルアクリル酸エステル、(S)−2−ヒドロキシヘキシルアクリル酸エステル、2−ヒドロキシヘキシルアクリル酸エステル、(R)−3−ヒドロキシヘキシルアクリル酸エステル、(S)−3−ヒドロキシヘキシルアクリル酸エステル、3−ヒドロキシヘキシルアクリル酸エステル、(R)−4−ヒドロキシヘキシルアクリル酸エステル、(S)−4−ヒドロキシヘキシルアクリル酸エステル、4−ヒドロキシヘキシルアクリル酸エステル、(R)−5−ヒドロキシヘキシルアクリル酸エステル、(S)−5−ヒドロキシヘキシルアクリル酸エステル、5−ヒドロキシヘキシルアクリル酸エステル、又は6−ヒドロキシヘキシルアクリル酸エステルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0044】
式(II)の化合物の好ましい例としては、単独で又は組合せでの、イタコン酸(2−メチレンブタン二酸としても既知である)、2−メチレンペンタン二酸又は2−メチレンヘキサン二酸が挙げられるがこれらに限定されない。
【0045】
式(III)の化合物の好ましい例としては、単独で又は組合せでの、cis−アコニット酸、trans−アコニット酸、アンゲリカ酸、cis−シトラコン酸、trans−シトラコン酸、cis−クロトン酸、trans−クロトン酸、フマル酸、cis−グルタコン酸、trans−グルタコン酸、マレイン酸、cis−メサコン酸、trans−メサコン酸、メタクリル酸、cis,cis−ムコン酸、cis,trans−ムコン酸、trans,trans−ムコン酸、チグリン酸、ビニルホスホン酸、ビニルホスホネート(ここで、ホスホネートは、ナトリウム塩若しくはカリウム塩として存在していてもよい)、ビニルスルホン酸又はビニルスルホネート(ここで、スルホネートは、ナトリウム塩若しくはカリウム塩として存在していてもよい)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0046】
モノマーとしてアクリル酸及びイタコン酸を含有する混合物の共重合を含むプロセスにより得ることができる酸性コポリマーが、最も好ましい。
【0047】
好ましい一実施形態では、重合して酸性コポリマーとなる、組成物を構成する成分は、99/1〜80/20のアクリル酸/イタコン酸の重量比、より好ましくは98/2〜85/15の比を特徴とする。重量比が低すぎる場合、得られる酸性コポリマーを、本発明により開示した平均分子量の範囲内で形成することはできず、又は得られる酸性コポリマーを水に溶解することにより形成されるポリ酸溶液を、開示したような本発明に必要な濃度で生成することはできない。重量比が高すぎる(すなわちアクリル酸のポリマーを使用した)場合、得られる酸性ポリマーを水に溶解することにより形成した溶液は物理的に安定ではなく、時間が経つとゲル化することがある。
【0048】
好ましい一実施形態では、本発明の酸性コポリマーを、代替的に、2工程プロセスで形成することができ、それにより適切なモノマーが最初に共重合して酸性コポリマー前駆体が形成され、該酸性コポリマー前駆体はその後加水分解されて本発明の酸性コポリマーを形成する。
【0049】
例えば、アクリル酸の加水分解性誘導体としてアクリル酸無水物を使用することができ、イタコン酸の加水分解性誘導体としてイタコン酸無水物を使用することができる。これらのモノマーの共重合により、対応する無水物コポリマーが形成され、該無水物コポリマーは、その後の加水分解により、本発明による混合アクリル酸−イタコン酸コポリマーを形成する。
【0050】
上の例では、両方の酸性モノマー成分が無水物として「マスクされて(masked)」いるが、最低でも1つのモノマー成分が無水物として「マスクされて」いる場合にも、加水分解を受けやすい酸性コポリマー前駆体が形成される。さらに、加水分解によりアクリル酸又はアルケン酸を生じる任意のモノマーを、酸性コポリマーの形成のためのこの2工程プロセスにおいて使用することができ、ただし、酸性コポリマー前駆体は(上で規定したように)、
(1)アクリル酸と、
(2)以下の式(I):
【化13】

(式中、kは1〜5の整数であり、hは0〜(5−k)の整数である)のアクリル酸エステル、及び/又は
以下の式(II):
【化14】

(式中、nは1〜3の整数である)の化合物と、任意に
(3)以下の式(III):
【化15】

(式中、R1は水素、又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R2及びR3は独立して水素、炭素数1〜6のアルキル基、又は以下の式(IV):
【化16】

(式中、mは独立して0〜3の整数であり、Lは−CH−若しくは−CH=CH−である)の部分を表し、ただしR1、R2又はR3の少なくとも1つは水素ではない)の化合物と、
を含み、
(i)アクリル酸、又は(ii)式(I)の化合物、若しくは式(II)の化合物、又は(iii)式(III)の化合物の少なくとも1つが、1つ又は複数の加水分解性誘導体により置換されている。
【0051】
アクリル酸の加水分解性誘導体は、単独で又は組合せで、アクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸無水物、アクリル酸エステル[例えば、式(I)の化合物]、及び混合カルボン酸−アクリル酸無水物(例えば、酢酸−アクリル酸無水物)を含むがこれらに限定されないリストから選択することができる。
【0052】
酸性コポリマー前駆体の式(I)の化合物の加水分解性誘導体は、ヒドロキシル保護誘導体を含むがこれらに限定されないリストから選択することができる。その選択される例としては、単独で又は組合せで使用することができる、エチレングリコールのトリフリン酸アクリル酸ジエステル、及び2−ヒドロキシエチルアクリル酸エステルのトリアルキルシリルエーテルが挙げられるがこれらに限定されない。式(I)の化合物の加水分解性誘導体、及びアクリル酸(又はその加水分解性誘導体)のみから形成される酸性コポリマー前駆体は、ヒドロキシアルキルアクリル酸エステル部分が加水分解により変化しない(intact)ままで残存する場合にのみ、本発明の酸性コポリマーをもたらす。この条件は、上の2つの成分に加えて化合物(II)又は化合物(III)を含む混合物から形成されるこれらのコポリマー前駆体に関しては満たされる必要がない。
【0053】
酸性コポリマー前駆体の式(II)の化合物の加水分解性誘導体は、無水物、混合無水物、アミド及びニトリル誘導体を含むがこれらに限定されないリストから選択することができる。誘導体は、イタコン酸、2−メチレンペンタン二酸又は2−メチレンヘキサン二酸の誘導体であり、単独で又は組合せで使用することができる。その選択される例としては、イタコン酸無水物、イタコン酸アミド(itaconic amide)及び酢酸−イタコン酸無水物が挙げられるがこれらに限定されず、これらは単独で又は組合せで使用され得る。
【0054】
酸性コポリマー前駆体の任意の成分(III)の加水分解性誘導体は、無水物、混合無水物、アミド及びニトリル誘導体を含むがこれらに限定されないリストから選択することができる。誘導体は、単独で又は組合せでの、cis−アコニット酸、trans−アコニット酸、アンゲリカ酸、cis−シトラコン酸、trans−シトラコン酸、cis−クロトン酸、trans−クロトン酸、フマル酸、cis−グルタコン酸、trans−グルタコン酸、マレイン酸、cis−メサコン酸、trans−メサコン酸、メタクリル酸、cis,cis−ムコン酸、cis,trans−ムコン酸、trans,trans−ムコン酸、チグリン酸の誘導体である。
【0055】
(i)アクリル酸無水物及びイタコン酸無水物、又は(ii)アクリロニトリル及びイタコン酸無水物、又は(iii)アクリル酸及びイタコン酸無水物を重合することにより形成される酸性コポリマー前駆体が、最も好ましい。これらの酸性コポリマー前駆体は、加水分解により本発明の酸性コポリマーを形成する。
【0056】
好ましい一実施形態では、重合して酸性コポリマー前駆体となる、組成物を構成する成分は、99/1〜80/20のアクリル酸の加水分解性誘導体/イタコン酸の加水分解性誘導体の重量比、より好ましくは98/2〜85/15の比を特徴とする。重量比が低すぎる場合、加水分解により生成される酸性コポリマーを、本発明により開示した平均分子量の範囲内で形成することはできず、又は開示したような本発明に必要な濃度の溶液を形成することはできない。重量比が高すぎる(すなわちアクリル酸の加水分解性誘導体のポリマーを使用した)場合、加水分解により生成した酸性ポリマーを水に溶解することにより形成した溶液は物理的に安定ではなく、時間が経つとゲル化することがある。
【0057】
酸性コポリマー及び/又は酸性コポリマー前駆体を得ることができるプロセスは、好ましくはバルク中での、溶液中での、エマルション中での、又は界面でのフリーラジカル重合による、混合物の共重合を含む。重合を、回分プロセス又は半回分プロセス(連続的なエマルション又はモノマーの供給)で、連鎖成長重合又は段階成長重合として、行うことができる。重合は概して、酸素を系から排除するために、不活性ガス(窒素又はアルゴン等)の雰囲気下で、0℃〜110℃の温度で行われる。重合は、任意に、乳化剤、開始剤、触媒、調整剤若しくは光、又はそれらの組合せを含むがこれらに限定されない添加物の存在下で行うことができる。
【0058】
重合時に使用する溶媒は、単独で又は組合せで、水、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、四塩化炭素、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトンを含むがこれらに限定されないリストから選択することができる。
【0059】
乳化剤は、使用する場合、単独で又は組合せで、(i)アニオン性乳化剤、例えば脂肪酸及びスルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩又はアンモニウム塩、(ii)非イオン性乳化剤、例えばエトキシル化脂肪アルコール及びアルキルフェノール、並びに(iii)カチオン性乳化剤を含むがこれらに限定されないリストから選択することができる。
【0060】
開始剤は、単独で又は組合せで、(i)可溶性ペルオキソ化合物、例えば過酸化水素、過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトン、メチルヒドロペルオキシド、過酸化ジ−tert−ブチル、過酢酸、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム及び過硫酸アルキル、(ii)可溶性アゾ化合物、例えば2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、並びに(iii)硫酸鉄(II)、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム及びホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムを含むがこれらに限定されないリストから選択することができる。重合は、また、360nm未満の波長の光により、又はガンマ照射により開始することができる。
【0061】
触媒は、単独で又は組合せで、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)、硫酸鉄(II)及び酢酸鉄(II)を含むがこれらに限定されない鉄(II)塩のリストから選択することができる。
【0062】
調整剤は、単独で又は組合せで、(i)ハロゲン含有化合物、例えば四塩化炭素、四臭化炭素、ブロモホルム、クロロホルム、ベンジルブロミド及びブロモトリクロロメタン、(ii)チオール、例えばブチルチオール及びドデシルチオール、並びに(iii)分枝鎖アルコール、例えば2−プロパノール、(R)−2−ブタノール、(S)−2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、(R)−2−ペンタノール、(S)−2−ペンタノール,3−ペンタノール、イソペンタノール、(R)−3−メチル−2−ブタノール、(S)−3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−プロパノール、(R)−2−ヘキサノール、(S)−2−ヘキサノール、(R)−3−ヘキサノール、(S)−3−ヘキサノール、2−メチル−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、(R)−2−メチル−3−ペンタノール−、(S)−2−メチル−3−ペンタノール−、(R)−4−メチル−2−ペンタノール、(S)−4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−ペンタノール、3−メチル−ペンタノール、(R)−3−メチル−2−ペンタノール、(S)−3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、2−エチル−ブタノール、2,3−ジメチル−ブタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−ブタノール、(R)−3,3−ジメチル−2−ブタノール、(S)−3,3−ジメチル−2−ブタノール及び3,3−ジメチル−ブタノールを含むがこれらに限定されないリストから選択することができる。
【0063】
酸性コポリマーを得るプロセスは、任意に、熱を除去して重合の速度(kinetics)を制御すること、及び/又は重合完了後にコポリマーから残りのモノマーを排除することを含み得る。モノマーの排除としては、(i)必要に応じて減圧を適用して、及び/又は消泡剤を添加して、加熱下で除去する方法、又は(ii)ポリマー分散液に対して真空を適用すること、及びそれに蒸気を吹き込むことにより連続的に除去する方法を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0064】
酸性コポリマー前駆体を経由して2工程プロセスで形成される酸性コポリマーの場合には、さらなる加水分解工程が必要である。酸性コポリマー前駆体の加水分解は、水中で、又は水及びテトラヒドロフラン、水及びメタノール、水及びエタノール、水及びイソプロパノール、並びに水及びブタノールが挙げられるがこれらに限定されない混合溶媒系で、行うことができる。水性溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び水酸化アンモニウムが挙げられるがこれらに限定されない無機塩を含有していてもよい。
【0065】
本発明により得られる酸性コポリマーを、コーティング材料、接着剤、繊維処理剤及び含浸剤として利用して、望ましい物理的特性及び化学的特性を有する製品を得ることができる。特に、酸性コポリマーは、本発明による硬化組成物の形成において使用される。
【0066】
硬化させて架橋結合ガラスアイオノマーを形成することができる硬化組成物を製造する方法は、水の存在下における粒状ガラスと酸性コポリマーとの反応を含む。
【0067】
本発明によれば、硬化組成物を調製するプロセスは、以下:
(a)酸性コポリマーを含有する成分を用意する工程、
(b)粒状ガラスを含有する成分を用意する工程、
(c)水の存在下で工程(a)の成分と工程(b)の成分とを混合する工程であって、硬化組成物を調製する、混合する工程、
を含む。
【0068】
ガラスアイオノマーを形成するための硬化組成物は、一方の成分が酸性コポリマー(及び任意に、固化遅延剤及び/又は顔料)の水性溶液を含んでおり、他方の成分が粒状ガラスを含んでおり、パックを組み合わせると本発明による硬化組成物が形成される、2成分(two-part)パックとして提供することができる。
【0069】
好ましい一実施形態では、乾式ブレンド又は混和物(水固化性ガラスアイオノマーとしても既知である)は、代替的に、粒状ガラスと無水形態の(好ましくは粉末としての)酸性コポリマーとから形成することができ、ここで上記粒状ガラスが上記無水形態の酸性コポリマーと混合して提供されることが好ましい。この無水混合物(例えば、混合前の各成分の凍結乾燥により、形成される)は、その後水を添加することであって、その後硬化してガラスアイオノマーを形成する組成物を形成する、添加することを必要とする。この場合、固化遅延剤及び/又は顔料は、乾式ブレンド中に、又は水中に存在し得る。さらに、したがって溶液中のポリマーの安定性は重要ではないが、本発明において特許請求しているような、酸性コポリマーの最適化した分子量範囲、及び粒状ガラスの組成が依然として有利である。
【0070】
さらなる一代替形態では、酸性コポリマー(及び任意に、固化遅延剤及び/又は顔料)の水性溶液を含む一方の成分と、粒状ガラス及び酸性コポリマーの乾式ブレンドを含む他方の成分とを用意して、セメント形成組成物を形成することができる。この場合、固化遅延剤及び/又は顔料は、乾式ブレンド中に、又は酸性コポリマーの水性溶液中に、存在し得る。
【0071】
好ましい一実施形態では、上で説明した粉末及び液体系の混合は、手により行うことができる。しかし、混合は、手動の方法に限定されず、機械的に行ってもよい。
【0072】
上で説明した粉末及び液体系は、使用直前に混合して硬化組成物とする前には、各々別々に収容されていてもよい。しかし、硬化組成物の成分は、1つのパッケージ中で組み合わせることもでき、好ましい一実施形態では、硬化組成物は、カプセル中で混合及び送達される。カプセルは、歯科産業及び医療産業で使用されるもののような、硬化組成物の送達のための標準的なカプセルであり得る。
【0073】
好ましい一実施形態では、酸性コポリマーは、水に予め溶解して水性溶液を形成した場合、10重量%〜65重量%の酸性コポリマー濃度を有する。65重量%より大きい酸性コポリマー濃度は、酸性コポリマーの水中での固有の溶解性により達成することが困難である。しかし、10重量%未満の濃度の酸性コポリマーを使用した場合、硬化組成物の作業時間及び固化時間、及び/又は対応するガラスアイオノマーの機械的特性が、悪化することがある。
【0074】
粒状ガラスに対する酸性ポリマーの重量比は、好適には0.1:1〜0.5:1、好ましくは0.2:1〜0.4:1であり、ガラスに対する水の重量比は好ましくは、0.4:1〜0.1:1である。好ましい一実施形態では、無水形態の酸性コポリマーは、硬化組成物の0重量%〜25重量%、より好ましくは8重量%〜15重量%を占める。硬化組成物中で使用される酸性コポリマーの量がこの範囲外である場合、硬化組成物の固化時間、及び/又は対応するアイオノマーセメントの機械的特性が、悪化することがある。
【0075】
ポリ酸とガラスとの反応は、好ましくは固化遅延剤の存在下で実施することができる。固化遅延剤は、必要に応じて混合物の作業時間(すなわち、酸性コポリマー、粒状ガラス及び水の混合開始から、混合物がゴム状且つ作業不可能になる時間までにかかる時間)及び/又は固化時間を調整するのに十分な量で存在し得る。以下の発明において単独で又は組合せで使用することができる固化遅延剤の例としては、キレート剤、例えば酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、イタコン酸、アコニット酸、マレイン酸、メリト酸、トリカルバリル酸、又は少なくとも1つのヒドロキシル基を含むそれらの誘導体、多価金属キレート剤、例えばアセチルアセトネートを含むβ−ジケトン、又はエチレンジアミン四酢酸が挙げられる。
【0076】
好ましい一実施形態では、酒石酸は、固化遅延剤として、好ましくは0重量%〜12重量%の水性溶液として利用される。或いは、酒石酸が、無水形態の固化遅延剤として、好ましくは混和物の成分として利用され、ここで粉末中の上記遅延剤の濃度は、0重量%〜5重量%である。濃度が12重量%を超える水性溶液として、又は濃度が5重量%を超える混和物で酒石酸が使用される場合、混合物の固化時間は、硬化組成物が実用上有用でない程度まで増大することがある。
【0077】
本発明の硬化組成物は、単独で又は組合せでの、顔料、静菌剤若しくは抗生剤、充填剤、又は天然若しくは合成のレジンと練られていてもよく、又は混合されていてもよい。
【0078】
好ましい一実施形態では、硬化組成物は、顔料(単数又は複数)を含む。好適な有機及び無機の着色顔料は、酸化チタン、酸化鉄、ハンザエロー、クロムイエロー、フタロシアニンブルー及びカーボンブラック、耐水性顔料、例えばクレイ、タルク、炭酸カルシウム、シリカ粉末及びシリカゲル、並びにコポリマー溶液中に容易に分散できるように調製される顔料分散液を含むがこれらに限定されないリストから選択することができる。これらの顔料は、コーティングされる材料を着色するために、添加される。かかる顔料は、硬化組成物中に最大2重量%の量で存在し得る。
【0079】
特に歯科用修復材として使用する場合、静菌剤又は抗生剤を、必要に応じて、セメント粉末に少量添加して、使用時に抗微生物活性又は抗齲蝕原性活性をもたらすことができる。好適な静菌剤又は抗生剤の例としては、単独で又は組合せでの、クロルヘキサジン(chlorhexadine)、塩素化フェノール、フェノール、第四アミン塩、銀イオン、銅イオン又はコロイド性銀が挙げられるがこれらに限定されない。
【0080】
充填剤を、必要に応じて、硬化組成物に少量添加して、ガラスアイオノマー複合材を提供することができる。好適な充填剤の例としては、単独で又は組合せでの、ナノ粒子、フレーク、ホイスカ、繊維、ダンベル形粒子、球形粒子、凝集物、織りユニティ(woven unities)及び編み(braided)ユニティが挙げられるがこれらに限定されない。好適な充填剤は、単独で又は組合せでの、ガラス、アスベスト、プラスチック、セラミック及び金属が挙げられるがこれらに限定されない不活性充填剤をさらに含む。
【0081】
レジン又はポリマーを、必要に応じて、硬化組成物に少量添加して、ガラスアイオノマー複合材を提供することができる。好適なレジン又はポリマーの例としては、単独で又は組合せでの、天然レジン若しくは天然ポリマー、例えばセルロース、ペクチン、キチン、リグニン、コラーゲン、ラテックス、天然ゴム若しくはラバー、又は合成レジン若しくは合成ポリマー、例えば合成ラバー、ニトリルラバー若しくはポリアミドレジンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0082】
本発明の硬化組成物は、硬化すると、改善した機械的特性、例えば2軸曲げ強度、破壊靱性及び圧縮強度を有するガラスアイオノマーを提供する。好ましい一実施形態では、本発明の硬化組成物は、固化すると、実施例で説明するように測定される、好ましくは0.6MPa・m1/2より大きい、より好ましくは0.8MPa・m1/2より大きい、最も好ましくは1.0MPa・m1/2より大きい破壊靱性KIc、及び/又は45MPaより大きい、好ましくは60MPaより大きい、より好ましくは65MPaより大きい2軸曲げ強度を有する。
【0083】
硬化組成物が、固化すると、硬化したガラスアイオノマー1mm当たり少なくとも1.5mmのアルミニウム、好ましくは1mm当たり少なくとも2.0mmのAlと等価の(equivalent)X線に対する不透性を有することがさらに好ましい。
【0084】
かかる特性は、硬化組成物を様々な分野における使用に好適なものとする。好ましい一実施形態では、硬化組成物は、歯科用途に好適である。硬化組成物は、例えば、歯腔若しくは裂溝の充填若しくは充塞、歯の再構築、コア構築、又は歯科用ブリッジの合着に好適な歯科用アイオノマーセメントとして、歯科用修復物における用途を見出すことができる。伝統的な歯科用途に加えて、本発明の硬化組成物は、例えば、予防歯科において、例えば小窩及び裂溝のシーラントとして、並びに頸部病変に対する充填剤として、用途を見出すこともできる。
【0085】
本発明の硬化組成物の使用は、歯科に限定されないが、医療専門分野における使用にも好適である。例えば、硬化組成物は、外科、特に整形外科における使用に好適であり、硬化組成物を使用して、破壊した骨材料の整復において、及び注入組成物において、助けとすることができる。
【0086】
硬化組成物は、任意の都合の良い手段により、歯、又は他の表面に適用することができる。概して、混合した材料を、小さいスパチュラ上に取り、歯腔中に押し込む、又は表面上に押し付ける。別の一般的な使用方法は、好適なシリンジ、カプセル、又は他の手持ち式歯科器具、例えばハンドガン、より具体的には歯科用ハンドガンから、歯腔中に、又は表面上に材料を直接適用することである。歯腔又は表面への硬化組成物の適用のための圧力の使用に加えて、機械的振動又は超音波振動も、利用することができる。
【0087】
このようにして適用した硬化組成物は、その後、任意の都合の良い手段を使用して、所望の形状に形成することができる。概して、歯腔の充填、合着、及び関連する歯の再構築手順のために、歯科医又は歯科技工士が利用可能な器具の範囲は、ガラスアイオノマーの成形に十分なものである。
【0088】
本発明を十分に理解することができるように、例示のみを目的として以下の実施例を示す。実施例中の全ての百分率は、特に明示のない限り重量基準のものである。
【実施例】
【0089】
実験の部
1.粒状ガラスの形成
以下の表に示した組成を有するガラスを、商業的な供給源から入手したか、又は電気炉において1400℃〜1500℃で溶融した。或るガラスを溶融する手順(実施例1)を以下に示し、商業的に入手できない他のガラスは、適切な原料を使用して同様に作製した。
【0090】
実施例1
重量基準による以下の材料を合わせて添加した。シリカ(25.8部)、酸化アルミニウム(23.4部)、酸化亜鉛(25.0部)、五酸化リン(16.4部)、及びフッ化カルシウム(20.4部)。混合物をガラスボトル中に入れ、1時間タンブルし成分を合わせて完全に混合した。その後混合物を酸化アルミニウムのルツボに移し、200℃/分の速度で700℃まで加熱し、脱気及び水分蒸散を行わせた。700℃での10分経過後、200℃/分で1400℃まで混合物を加熱し、120分間この温度で保持し、その後200℃/分で1500℃まで温度を増大させ、30分間この温度で保持した。オーブンをその後開き、ルツボを取り出し、溶融ガラスを冷水中に直接注ぎ、砕けたガラス片を得た。
【0091】
【表1】

【0092】
2.粒状ガラスの粒子径の低減
上述のように溶融した、又は商業的に入手したガラスを、必要ならば乾式ボールミル中で最初に粉砕し、約100μm未満の平均粒子径D50を有する粉末を得た。その後この粉末を、水スラリ中でさらに粉砕し、およそ3μmの平均粒子径D50を有する粒状ガラス粉末を得た。この粒状ガラスの一部分をさらに粉砕して、およそ1μmの平均粒子径D50を有するガラス粉末を得た。粒子径測定は、Malvern Particle Master Sizerモデル Sにより行った。ガラス粒子の反応性はその寸法及び表面積に依存するため、粒子径を注意深く制御することが重要である。
【0093】
3.酸性コポリマーの形成
本明細書で開示した組成及び分子量を有する酸性コポリマーを、商業的な供給源から入手するか、又は室温での、特定の比での、選択したモノマー(単数又は複数)及び/又は添加物を用いるアクリル酸の共重合により形成した。室温とは、湿度50%±10%での23℃±1℃を表す。得られた溶液の(及び以下で説明されるガラスアイオノマー液体の)粘度はBohlin CS 50粘度計を使用して測定したものであり、23℃でのPa・s単位で報告する。かかる混合物を共重合するために使用した手順を実施例2〜実施例13に示し、商業的に入手できない他の酸性コポリマーは、適切な原料を使用して同様に作製した。
【0094】
実施例2(アクリル酸−イタコン酸コポリマー(2%のイタコン酸部分を有する))
不活性雰囲気下、96.5mLのアクリル酸、125mLの脱イオン水、3.78gのイタコン酸、及び20mLのイソプロパノールの混合物、並びに75mLの水中における1.19gの過硫酸カリウムの溶液を、400mLの水中における1.92gの過硫酸カリウムの攪拌した溶液に、95℃で1時間かけて同時に添加した。反応混合物を、還流下でさらに2時間維持し、反応を完了させた後、減圧下で213mLの水を除去した。得られたポリ酸は、平均分子量として54000g/molのMと、9500g/molのMとを有することが見出された。
【0095】
実施例3(アクリル酸−イタコン酸コポリマー(3%のイタコン酸部分を有する))
不活性雰囲気下、306mLのアクリル酸、600mLの脱イオン水、1.27gの過硫酸カリウム、17.90gのイタコン酸、及び44mLのイソプロパノールの混合物を、190mLの水中における1.27gの過硫酸カリウムの攪拌した溶液に、95℃で2時間かけて連続的に添加した。反応混合物を、還流下でさらに2時間維持し、反応を完了させた後、減圧下で450mLの水を除去した。得られたポリ酸は、平均分子量として120000g/molのMと、18000g/molのMとを有することが見出された。
【0096】
実施例4(アクリル酸−イタコン酸コポリマー(3%のイタコン酸部分を有する))
不活性雰囲気下、160mLのアクリル酸、300mLの脱イオン水、0.62gの過硫酸カリウム、8.95gのイタコン酸、及び47.4mLのイソプロパノールの混合物を、95mLの水中における0.62gの過硫酸カリウムの攪拌した溶液に、95℃で2時間かけて連続的に添加した。反応混合物を、還流下でさらに2時間維持し、反応を完了させた後、減圧下で240mLの水を除去した。得られたポリ酸は、平均分子量として99000g/molのMと、17000g/molのMとを有することが見出された。
【0097】
実施例5(アクリル酸−イタコン酸コポリマー(3%のイタコン酸部分を有する))
不活性雰囲気下、84mLのアクリル酸、20mLの脱イオン水、394mgのAIBN、4.68gのイタコン酸、及び1.80gのメルカプトコハク酸の混合物を、撹拌しながら110mLの水に95℃で1時間かけて連続的に添加した。反応混合物を、還流下でさらに2時間維持し、反応を完了させた後、減圧下で28mLの水を除去した。得られたポリ酸は、平均分子量として53000g/molのMと、13000g/molのMとを有することが見出された。
【0098】
実施例6(アクリル酸−イタコン酸コポリマー(5%のイタコン酸部分を有する))
不活性雰囲気下、149.5mLのアクリル酸、300mLの脱イオン水、0.62gの過硫酸カリウム、14.92gのイタコン酸、及び22mLのイソプロパノールの混合物を、95mLの水中における0.62gの過硫酸カリウムの攪拌した溶液に、95℃で2時間かけて連続的に添加した。反応混合物を、還流下でさらに2時間維持し、反応を完了させた後、減圧下で217mLの水を除去した。得られたポリ酸は、平均分子量として120000g/molのMと、16000g/molのMとを有することが見出された。
【0099】
実施例7(アクリル酸−イタコン酸コポリマー(7%のイタコン酸部分を有する))
不活性雰囲気下、146.4mLのアクリル酸、300mLの脱イオン水、0.62gの過硫酸カリウム、20.89gのイタコン酸、及び22mLのイソプロパノールの混合物を、95mLの水中における0.62gの過硫酸カリウムの攪拌した溶液に、95℃で2時間かけて連続的に添加した。反応混合物を、還流下でさらに2時間維持し、反応を完了させた後、減圧下で214mLの水を除去した。得られたポリ酸は、平均分子量として150000g/molのMと、21000g/molのMとを有することが見出された。
【0100】
実施例8(アクリル酸−イタコン酸コポリマー(10%のイタコン酸部分を有する))
不活性雰囲気下、142mLのアクリル酸、300mLの脱イオン水、0.62gの過硫酸カリウム、29.84gのイタコン酸、及び22mLのイソプロパノールの混合物を、95mLの水中における0.62gの過硫酸カリウムの攪拌した溶液に、95℃で2時間かけて連続的に添加した。反応混合物を、還流下でさらに2時間維持し、反応を完了させた後、減圧下で210mLの水を除去した。得られたポリ酸は、平均分子量として140000g/molのMと、19000g/molのMとを有することが見出された。
【0101】
実施例9(アクリル酸−イタコン酸コポリマー(10%のイタコン酸部分を有する))
不活性雰囲気下、88.9mLのアクリル酸、125mLの脱イオン水、18.9gのイタコン酸、及び20mLのイソプロパノールの混合物、並びに1.23gのアゾビス(4−シアノ吉草酸)、18mLの水、及び57mLのエタノールの混合物を、250mLの水中における1.23gのアゾビス(4−シアノ吉草酸)の攪拌した溶液に、95℃で1.5時間かけて同時に添加した。反応混合物を、還流下でさらに3時間維持し、反応を完了させた後、減圧下で280mLの水、エタノール、及びイソプロパノールを除去した。得られたポリ酸は、平均分子量として66000g/molのMと、8000g/molのMとを有することが見出された。
【0102】
実施例10(アクリル酸−イタコン酸コポリマー(12%のイタコン酸部分を有する))
不活性雰囲気下、138.5mLのアクリル酸、300mLの脱イオン水、0.62gの過硫酸カリウム、25.81gのイタコン酸、及び22mLのイソプロパノールの混合物を、95mLの水中における0.62gの過硫酸カリウムの攪拌した溶液に、95℃で2時間かけて連続的に添加した。反応混合物を、還流下でさらに2時間維持し、反応を完了させた後、減圧下で210mLの水を除去した。得られたポリ酸は、平均分子量として170000g/molのMと、23000g/molのMとを有することが見出された。
【0103】
実施例11(アクリル酸−2−ヒドロキシエチルアクリル酸コポリマー(3%の2−ヒドロキシエチルアクリル酸部分を有する))
不活性雰囲気下、48mLのアクリル酸、63mLの脱イオン水、2.53gの2−ヒドロキシエチルアクリル酸、及び10mLのイソプロパノールの混合物、並びに38mLの水中における0.59gの過硫酸カリウムの溶液を、200mLの水中における0.59gの過硫酸カリウムの攪拌した溶液に、95℃で1時間かけて同時に添加した。反応混合物を、還流下でさらに2時間維持し、反応を完了させた後、減圧下で320mLの水を除去した。得られたポリ酸は、平均分子量として70000g/molのMと、9000g/molのMとを有することが見出された。
【0104】
実施例12(アクリル酸−2−ヒドロキシエチルアクリル酸コポリマー(10%の2−ヒドロキシエチルアクリル酸部分を有する))
不活性雰囲気下、44.5mLのアクリル酸、63mLの脱イオン水、8.44gの2−ヒドロキシエチルアクリル酸、及び10mLのイソプロパノールの混合物、並びに38mLの水中における0.59gの過硫酸カリウムの溶液を、200mLの水中における0.59gの過硫酸カリウムの攪拌した溶液に、95℃で1時間かけて同時に添加した。反応混合物を、還流下でさらに2時間維持し、反応を完了させた後、減圧下で320mLの水を除去した。得られたポリ酸は、平均分子量として69000g/molのMと、9500g/molのMとを有することが見出された。
【0105】
実施例13(アクリル酸−2−ヒドロキシエチルアクリル酸コポリマー(15%の2−ヒドロキシエチルアクリル酸部分を有する))
不活性雰囲気下、42mLのアクリル酸、163mLの脱イオン水、12.65gの2−ヒドロキシエチルアクリル酸、及び10mLのイソプロパノールの混合物、並びに38mLの水中における0.59gの過硫酸カリウムの溶液を、200mLの水中における0.59gの過硫酸カリウムの攪拌した溶液に、95℃で1時間かけて同時に添加した。反応混合物を、還流下でさらに2時間維持し、反応を完了させた後、減圧下で320mLの水を除去した。得られたポリ酸は、平均分子量として67000g/molのMと、8000g/molのMとを有することが見出された。
【0106】
4.酸性コポリマーの平均分子量M及びMの確定
本明細書で開示した酸性コポリマーの平均分子量M及びM並びに分子量分布を、以下で説明されるゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)分析法を使用して確定した。Mは数−平均分子量を表し、Mは重量−平均分子量を表す。全ての平均分子量M及びMを、g/molの値で報告する。
【0107】
a.分析条件:
溶離液:脱イオン水中における、11.88g/L NaHPO
プレカラム:PSS Suprema、10μm、30Å、ID8mm×50mm
カラム:PSS Suprema、10μm、30Å、ID8mm×300mm
PSS Suprema、10μm、1000Å、ID8mm×300mm
ポンプ:Agilent 1100 HPLCポンプ
流速:1.0mL/分
インジェクションシステム:インジェクションボリューム50μLによる、Agilent 1100オートサンプラー
試料濃度:3.0g/L
温度:23℃
検出器:Agilent 1100UV(230nmで)
Agilent 1100示差屈折計
分析:PSS−WinGPC Unity Version 7.2
【0108】
b.試料調製:
酸性コポリマーの試料を正確に秤量し、規定の量の脱イオン水中の11.88g/LのNaHPOと混合し、室温で溶解した。酸性コポリマーの試料は、ほんの短時間の後に、完全に溶解した。酸性コポリマーの試料溶液を、1.0μmディスポーザブルフィルターを通して濾過し、GPC分析に関して50μLをインジェクトした。GPC分析により、各試料に関する溶出プロファイルの結果を得た。
【0109】
c.較正及び分析
カラムの組合せに関する検量線を、ポリアクリル酸ナトリウム標準PAAを使用するGPC分析により、最初に確立した。酸性コポリマーの試料の平均分子量M及びM並びに分子量分布を、ポリアクリル酸ナトリウムPAA検量線を基準として、工程2において得られた溶出プロファイル結果からコンピュータでの積算処理により算出した。
【0110】
5.コポリマーの水性溶液(ガラスアイオノマー液体)の形成
酸性コポリマーを水に溶解して、硬化組成物の形成において使用するための酸性コポリマーの水性溶液を形成した。固化遅延剤をさらに含む水性酸性コポリマー溶液も作製し、本明細書で以後ガラスアイオノマー液体と称する。かかる溶液(ガラスアイオノマー液体)の形成のために使用した組成及び手順を、実施例14〜実施例19に示す。
【0111】
実施例14
酒石酸(0.75g)を14.44gの実施例4の水性ポリ酸溶液に添加した。混合物を室温で1時間撹拌した後、減圧下で0.19gの水を除去した。得られたガラスアイオノマー液体は、41重量%のポリ酸含有量と、5重量%の酒石酸含有量とを有していた。
【0112】
実施例15
酒石酸(2.40g)及び水(12.82g)を14.78gの実施例4の水性ポリ酸溶液に添加し、混合物を室温で1時間撹拌して、21重量%のポリ酸含有量と、8重量%の酒石酸含有量とを有するガラスアイオノマー液体を得た。
【0113】
実施例16
酒石酸(2.40g)及び水(10.00g)を17.60gの実施例4の水性ポリ酸溶液に添加し、混合物を室温で1時間撹拌して、25重量%のポリ酸含有量と、8重量%の酒石酸含有量とを有するガラスアイオノマー液体を得た。
【0114】
実施例17
酒石酸(1.20g)及び水(0.58g)を18.22gの実施例6の水性ポリ酸溶液に添加し、混合物を室温で1時間撹拌して、40重量%のポリ酸含有量と、6重量%の酒石酸含有量とを有するガラスアイオノマー液体を得た。
【0115】
実施例18
酒石酸(1.20g)及び水(0.54g)を18.26gの実施例7の水性ポリ酸溶液に添加し、混合物を室温で1時間撹拌して、40重量%のポリ酸含有量と、6重量%の酒石酸含有量とを有するガラスアイオノマー液体を得た。
【0116】
実施例19
酒石酸(1.20g)及び水(0.28g)を18.52gの実施例8の水性ポリ酸溶液に添加し、混合物を室温で1時間撹拌して、40重量%のポリ酸含有量と、6重量%の酒石酸含有量とを有するガラスアイオノマー液体を得た。
【0117】
6.無水酸性コポリマーの形成
酸性コポリマーを、酸性コポリマーと粒状ガラスとを含む無水混和物の形成に必要な無水形態で得ることができた。無水酸性コポリマーを形成する2つの方法を、実施例20及び実施例21に示す。
【0118】
実施例20
不活性雰囲気下、305mLのアクリル酸、600mLの脱イオン水、1.55gの過硫酸カリウム、17.90gのイタコン酸、及び56mLのイソプロパノールの混合物を、190mLの水中における1.55gの過硫酸カリウムの攪拌した溶液に、95℃で2時間かけて連続的に添加した。反応混合物を、還流下でさらに2時間維持し、反応を完了させた後、減圧下でおよそ200mLの水を除去した。このポリ酸溶液を、120℃で48時間予備乾燥して固体のポリ酸を得て、これを33μmのD50まで粉砕し、最終的に高真空下90℃で24時間乾燥した。
【0119】
実施例21
不活性雰囲気下、305mLのアクリル酸、600mLの脱イオン水、1.18gの過硫酸カリウム、17.90gのイタコン酸、及び35mLのイソプロパノールの混合物を、190mLの水中における1.18gの過硫酸カリウムの攪拌した溶液に、95℃で2時間かけて連続的に添加した。反応混合物を、還流下でさらに2時間維持し、反応を完了させた後、減圧下でおよそ200mLの水を除去した。このポリ酸溶液を、120℃で21時間予備乾燥して固体のポリ酸を得て、これを35μmのD50まで粉砕し、最終的に高真空下90℃で24時間乾燥した。
【0120】
7.硬化組成物の形成
表に示した組成を有する硬化組成物を、23℃で、粒状ガラスと酸性コポリマーとを特定の比で混合することにより、形成した。組成物は、任意の都合の良い手段、例えば(i)パッド(若しくは他の混合用表面)及びスパチュラを使用して、若しくは乳鉢及び乳棒を使用することによって手により、又は(ii)機械的に、例えばカプセル及び機械的バイブレーター若しくは超音波バイブレーターを使用して、若しくは機械的混合器具を使用して、混合することができる。かかる硬化組成物の形成のために使用した手順を、実施例22及び実施例23に示す。
【0121】
実施例22
3μmの平均粒子径を有するガラス粉末(86.64部)を、実施例20又は実施例21の乾燥した(無水)酸性コポリマー(12.27部)、及び微粉砕した酒石酸(1.09部)と混合した。この成分を、ガラスボトル中で合わせて1時間タンブルして、均質な混合物を得た。粉末3重量部と40重量%の酸性コポリマー水溶液1重量部とを23℃で組み合わせることにより、この混合粉末を硬化組成物に変換した。
【0122】
実施例23
ガラス粉末(1.65重量部)を、40重量%の酸性コポリマーと12重量%の酒石酸とを含有する水性溶液1重量部と23℃で組み合わせ、この2つを均質なペーストが得られるまで合わせてスパチュラで混合した(spatulated)。
【0123】
各試験方法に関して、作業時間(w.t.)は、酸性コポリマー、粒状ガラス及び水の混合開始から、混合物がゴム状且つ作業不可能になる時間までの時間とした。作業時間は、分単位で報告する。固化時間(s.t.)は、ISO9917−1:2003に準拠して確定したものであり、分単位で報告する。
【0124】
8.硬化したガラスアイオノマー
上の実施例22及び実施例23で開示した硬化組成物の固化(硬化)後に形成した硬化したガラスアイオノマーを、各材料の機械的特性に関して試験した。概して試料を、37℃で、且つ95%を超える湿度で、調製直後1時間貯蔵し、その後水中で37℃でさらに23時間貯蔵した後、試験した。具体的には、圧縮強度、破壊靱性KIc、及び/又は2軸曲げ強度を各材料に関して測定した。硬化したガラスアイオノマーの物理的特性を、ISO9917−1:2003に準拠して測定した。
【0125】
圧縮強度c.s.は、ISO9917−1:2003に準拠して確定したものであり、MPa単位で報告する。
【0126】
破壊靱性KIcを、文献の方法に従って、マクロ硬度試験機DIA−TESTOR 7521(Wolpert)を使用して、室温で測定した。試験片に荷重を加えた後、その荷重を30秒間一定に維持した。一連の測定において、約9.8N(1キロポント(kilopont))から2425.5N(250キロポント)まで、荷重を変化させた。試験片1つ当たり少なくとも2回(各材料に関して最低12回)の試験結果を分析して、圧痕の対角線長さの半分、及び放射状クラック(パルムクヴィスト(Palmqvist)クラック)寸法の長さの半分(応力拡大係数Kの算出に必須の値である)を確定した。圧痕の寸法、及びパルムクヴィストクラックの長さは、光学顕微鏡を使用して測定した。破壊靱性KIcは、標準方程式を使用して算出したものであり、MPa・m1/2単位で報告する。この方法の十分な詳細は、(i)K. Niihara, R. Morena, D. P. H. Hasselman, Evaluation of KIc of brittle solids by the indentation method with low crack-to-indent ratios. J. Mater. Sci. Lett, 1 (1982) 13、及び(ii)M. T. Laugier, New formula for indentation toughness in ceramics, J. Mater. Sci. Lett. 6 (1987) 355に示されている。
【0127】
示した2軸曲げ強度の値を、ディスク(直径20cm、及び厚さ1mm)(直径15mmの支持ナイフ端環支持(supporting knife edge ring support)、及びピン直径3mm)で測定した。強度の値は、Zwick universal試験機を使用して測定したものであり、MPaで報告する。例えば方法は、ASTM F 394において、並びにWilliams、Billington及びPearsonによりDental Materials 2002, July, 18 (5), 376 to 379において、説明されている。
【0128】
X線に対する不透性を、ISO9917−1:2003に準拠して確定した。X線に対する不透性は、硬化したガラスアイオノマー試料に関して測定したものであり、硬化したガラスアイオノマー1.0mmと等価のアルミニウムのmm単位で表す。
【0129】
9.結果及び考察
行った実験の成果を、表1〜表5に表した結果を参照しながら以下で論じる。
【0130】
特別に開発した粒状ガラスと、特定の組成及び分子量範囲を有する特別に開発した酸性コポリマーとの組合せを使用することにより、得られたガラスアイオノマーの2軸曲げ強度を、70MPaを超えるまで増大させることができることが見出された。以下の表で実証されるように、これまでの既知のガラスアイオノマー材料に対する、このほぼ80%の増大は、ポリマー組成と共に最適化したガラスを使用することによってのみ可能である。さらに、得られたガラスアイオノマーの破壊靱性KIcを、1.30MPa・m1/2まで増大させることができる。
【0131】
表1、表2及び表5において、p/l比は、液体に対する粉末の重量比を表す。
【0132】
表1、表2及び表3において、ガラスの種類Zn、Sr及びCaは、以下の組成を表し、ここでZnと記載したガラスは本発明のガラスであり、Ca及びSrと記載したガラスは市販のガラスアイオノマー調合物において何年もの間使用されている従来のガラスである。かかる調合物において一般的であるように、本発明のガラスアイオノマー調合物は、反応遅延剤、促進剤、又は顔料着色剤(pigmentation)として作用する成分も含んでいてもよい。
【0133】
本発明のガラスと組合せて、得られたガラスアイオノマーの2軸曲げ強度を、酸の濃度及び分子量の一方又は両方を増大させることにより、増大させることができることが示された。例えば表1では、実験の対2−3及び5−6により、酒石酸濃度を変化させても2軸曲げ強度に対する影響はないが、酸濃度を30%から35%まで増大させると34MPaから41MPaまで強度が増大することが示されている。実験番号19及び20により、分子量の増大も2軸曲げ強度の増大をもたらすことが示されている。
【0134】
表1における実験番号1〜8は全て、30%〜35%の濃度と、約50000の分子量とを有する100%ポリアクリル酸を使用しており、2軸曲げ強度は約34MPa〜49.5MPaに到達している。かかるポリマー溶液は、少なくとも15ヵ月経過まで安定であることが、表3から明らかである。対照的に、40%の濃度を有する純粋なポリアクリル酸溶液は安定でなく9ヵ月後にゲル化した。ポリ酸の分子量を増大させることも溶液がゲル化する傾向を増大させることは、当業者には既知(know)である。したがって、100%アクリル酸ポリマーを使用する限りは、2軸曲げ強度を増大させるために酸の濃度又は分子量をさらに増大させることはできず、これは得られるポリ酸溶液が物理的に安定でなく時間が経つとゲル化するためである。
【0135】
少量のコモノマーをポリマーに添加すると、ポリマー溶液がゲル化する傾向を著しく減少させることができることは、従来技術(Wilson et al. J. Dent. Res, 1975, 54 (6), 1173)から既知である。さらにわずか1%のイタコン酸をコモノマーとして添加することにより、49%の濃度と72000の平均分子量とを有する安定な溶液を生成することができることが、表3中のデータにより示されている。イタコン酸コモノマーの量を10%まで増大させることにより、50%の濃度と122000の平均分子量とを有する安定な溶液を作製することができる。
【0136】
酸性コポリマーの平均分子量が増大すると2軸曲げ強度が増大することが実験番号29及び31により示されており、粒状ガラスの平均寸法が減少すると2軸曲げ強度が増大することが実験番号31及び32により示されており、平均分子量の増大と共に2軸曲げ強度が増大することが実験番号32及び33によりさらに示されている。比較のための実験番号34〜37により、高い2軸曲げ強度値は本発明のガラスでのみ実現可能であること、従来のガラスは、本発明のガラスで実現可能な小さい平均粒子径まで粉砕した場合には硬化が速すぎ、より大きい平均粒子径で使用した場合には強度値が低くなることが示されている。最後に、比較のための実験番号38〜40により、本発明のガラスアイオノマーの2軸曲げ強度は、典型的な市販のガラスアイオノマーの2軸曲げ強度より高いことが示されている。
【0137】
【表2】

【0138】
【表3】

【0139】
【表4】

【0140】
【表5】

【0141】
当然、ガラスアイオノマー材料の提示において、変形形態が、本発明の範囲を逸脱することなく考えられ得る。表5の実験番号50〜55では、酸性コポリマーを、乾燥し、平均粒子径16μm(D50 乾燥ポリマー)まで粉砕し、表5に示したような平均粒子径(D50 ガラス)を有する粒状ガラスと混合した。実験番号53及び54は、70MPaを超える高い2軸曲げ強度を、本発明の粒状ガラス及び酸性コポリマーを使用することにより、さらに得ることができることを実証している。
【0142】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)粒状ガラスと、
(ii)水性条件下で該粒状ガラスとの反応性を有する酸性コポリマーと、
を含む硬化組成物であって、
前記粒状ガラスが、
a.10重量%〜35重量%のシリカ、
b.10重量%〜35重量%のアルミナ、
c.3重量%〜30重量%の酸化亜鉛、
d.4重量%〜30重量%のP
e.3重量%〜25重量%のフッ化物、
を含み、且つ
前記酸性コポリマーが、50000〜200000の平均分子量Mを有し、且つ以下の酸、又はその加水分解性誘導体:
(1)アクリル酸と、
(2)以下の式(I):
【化1】

(式中、kは1〜5の整数であり、hは0〜(5−k)の整数である)のアクリル酸エステル、及び/又は
以下の式(II):
【化2】

(式中、nは1〜3の整数である)の化合物と、任意に
(3)以下の式(III):
【化3】

(式中、R1は水素、又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R2及びR3は独立して水素、炭素数1〜6のアルキル基、又は以下の式(IV):
【化4】

(式中、mは独立して0〜3の整数であり、Lは−CH−若しくは−CH=CH−である)の部分を表し、ただしR1、R2又はR3の少なくとも1つは水素ではない)の化合物と、
を含有する混合物の共重合を含むプロセスにより得ることができることを特徴とする、硬化組成物。
【請求項2】
前記粒状ガラスが、
a.20重量%〜25重量%のシリカ、
b.20重量%〜25重量%のアルミナ、
c.18重量%〜21重量%の、CaOにSrOを加えたもの、
d.13重量%〜18重量%の酸化亜鉛、
e.14重量%〜18重量%のP
f.4重量%〜7重量%のフッ化物、
を含み、
NaOの含有量が1重量%未満である、請求項1に記載の硬化組成物。
【請求項3】
前記粒状ガラスの平均粒子径が、0.1μm〜100μmの範囲である、請求項1に記載の硬化組成物。
【請求項4】
前記粒状ガラスの平均粒子径が、0.5μm〜25μmの範囲である、請求項1に記載の硬化組成物。
【請求項5】
前記粒状ガラスの平均粒子径が、1μm〜3.5μmの範囲である、請求項1に記載の硬化組成物。
【請求項6】
前記酸性コポリマーが、アクリル酸及びイタコン酸のコポリマーである、請求項1に記載の硬化組成物。
【請求項7】
前記酸性コポリマーが、99/1〜80/20のアクリル酸/イタコン酸比と、50000〜200000の平均分子量Mとを有する、請求項6に記載の硬化組成物。
【請求項8】
前記酸性コポリマーが、99/1〜80/20のアクリル酸/イタコン酸比と、75000〜150000の平均分子量Mとを有する、請求項6に記載の硬化組成物。
【請求項9】
前記酸性コポリマーが、98/2〜85/15のアクリル酸/イタコン酸比と、100000〜130000の平均分子量Mとを有する、請求項6に記載の硬化組成物。
【請求項10】
前記酸性コポリマーが、99/1〜80/20のアクリル酸/イタコン酸比と、5000〜40000の平均分子量Mとを有する、請求項6に記載の硬化組成物。
【請求項11】
前記酸性コポリマーが、99/1〜80/20のアクリル酸/イタコン酸比と、10000〜30000の平均分子量Mとを有する、請求項6に記載の硬化組成物。
【請求項12】
前記酸性コポリマーが、98/2〜85/15のアクリル酸/イタコン酸比と、15000〜25000の平均分子量Mとを有する、請求項6に記載の硬化組成物。
【請求項13】
固化遅延剤をさらに含む、請求項1に記載の硬化組成物。
【請求項14】
前記固化遅延剤が酒石酸である、請求項13に記載の硬化組成物。
【請求項15】
水中における前記酸性コポリマーの濃度が10重量%〜65重量%である、請求項14に記載の硬化組成物。
【請求項16】
水中における前記遅延剤の濃度が0重量%〜12重量%である、請求項14に記載の硬化組成物。
【請求項17】
粉末中における前記遅延剤の濃度が0重量%〜5重量%である、請求項14に記載の硬化組成物。
【請求項18】
ガラス中におけるPに対する酸化亜鉛及びフッ化物の合計の重量比が0.8〜3.0である、請求項1に記載の硬化組成物。
【請求項19】
シリカに対する酸化ストロンチウム及び酸化亜鉛の合計の重量比が1.0〜1.95である、請求項1に記載の硬化組成物。
【請求項20】
シリカに対する酸化ストロンチウム及び酸化亜鉛の合計の重量比が1.25〜1.6である、請求項1に記載の硬化組成物。
【請求項21】
無水形態の前記酸性コポリマーが、前記組成物の0重量%〜25重量%を占める、請求項20に記載の硬化組成物。
【請求項22】
無水形態の前記酸性コポリマーが、前記組成物の8重量%〜15重量%を占める、請求項20に記載の硬化組成物。
【請求項23】
前記粒状ガラスが、無水形態の前記酸性コポリマーと混合して提供される、請求項1に記載の硬化組成物。
【請求項24】
固化すると、硬化したガラスアイオノマー1.0mm当たり少なくとも1.5mmのアルミニウムと等価のX線に対する不透性を有する、請求項1に記載の硬化組成物。
【請求項25】
顔料(単数又は複数)をさらに含む、請求項1に記載の硬化組成物。
【請求項26】
前記コポリマーが、ホスホネート基又はスルホネート基から選択される部分を有する酸性重合性モノマーのコポリマーである、請求項1〜25のいずれか一項に記載の硬化組成物。
【請求項27】
固化すると、0.6MPa・m1/2より大きい破壊靱性KIc(本文中に記載したように測定される)、及び/又は45MPaより大きい2軸曲げ強度を有する、請求項1〜26のいずれか一項に記載の硬化組成物。
【請求項28】
固化すると、0.8MPa・m1/2より大きい破壊靱性KIc(本文中に記載したように測定される)、及び/又は45MPaより大きい2軸曲げ強度を有する、請求項1〜26のいずれか一項に記載の硬化組成物。
【請求項29】
前記組成物が、カプセル中で混合及び送達される、請求項27又は28に記載の硬化組成物。
【請求項30】
前記組成物が、手で混合することができる粉末及び液体系として送達される、請求項27又は28に記載の硬化組成物。
【請求項31】
歯科用途のための、請求項1〜30のいずれか一項に記載の硬化組成物。
【請求項32】
10重量%〜65重量%の酸性コポリマーを含む水性ポリマー溶液であって、該酸性コポリマーが、50000〜200000の平均分子量Mを有し、且つ
(1)アクリル酸と、
(2)以下の式(I):
【化5】

(式中、kは1〜5の整数であり、hは0〜(5−k)の整数である)のアクリル酸エステル、及び/又は
以下の式(II):
【化6】

(式中、nは1〜3の整数である)の化合物と、任意に
(3)以下の式(III):
【化7】

(式中、R1は水素、又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R2及びR3は独立して水素、炭素数1〜6のアルキル基、又は以下の式(IV):
【化8】

(式中、mは独立して0〜3の整数であり、Lは−CH−若しくは−CH=CH−である)の部分を表し、ただしR1、R2又はR3の少なくとも1つは水素ではない)の化合物と、
を含有する混合物の共重合により得ることができる、水性ポリマー溶液。

【公表番号】特表2011−506367(P2011−506367A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537309(P2010−537309)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010488
【国際公開番号】WO2009/077113
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(502289695)デンツプライ デトレイ ゲー.エム.ベー.ハー. (28)
【Fターム(参考)】