説明

硬化過程自動測定装置

【課題】試料中を伝播する超音波の音速をリアルタイムで測定することによって、同試料の弾性率を連続的に測定し、表示する硬化過程自動測定装置を提供する。
【解決手段】測定手順、測定値の処理方法などをプログラムしたコンピュータと測定に必要なハードウエアを有機的に組合わせることによって、液体の状態からゼリー状の状態を経て次第に弾性率の大きい固体となり、更に硬度を増して来る状況を連続的にリアルタイムで測定、表示することが出来た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、試料の弾性率などを超音波で測定し温度も同時にグラフ表示する硬化過程自動測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性率の測定方法をしては、定められた形状の試料を製作し、その試料に引張試験機で機械的応力を加え、応力に対応した伸びを測る方法が一般的であり、試料の製作に多大な労力を要した。また、固体試料の測定や、赤外線の吸収や誘電率の変化からプラスチックの硬化度を判定する装置はあったが、弾性率という物理的特性を、液体の状態からゼリー状の状態を経て次第に弾性率の大きい固体となり、さらに硬度を増して来る状況を測定し、表示するものは無かった。
【特許文献1】特許第278205号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
たとえば、2液性エポキシ樹脂接着剤や熱可塑性樹脂の如きプラスチック材料や、溶融金属等では、硬化する前は液状であるため、従来の引張り試験機による方法では弾性率は測定出来ない。本発明の方法によれば液体の状態からゼリー状の状態を経て次第に弾性率の大きい固体となり、更に硬度を増して来る状況が表示され、且つ試料中の化学反応の強度に対応した温度上昇と共に表示することが出来るので、プラスチック材料や接着剤の開発にもきわめて有用である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
測定対象の音速を測定するためのセンサ(1)、(2)と導波体(7)、(8)及び、試料中を伝播する超音波の振幅や伝播時間を測定し、コンピュータ部にデータを送る伝播時間測定部(4)、試料の温度を測定するための温度センサ(5)、温度センサの信号を変換してコンピュータ部にデータを送る温度測定部(6)、試料名その他の情報を入力したり、伝播時間測定部(4)や温度測定部(6)からの信号を処理して結果を表示する表示部(11)と結果を印字するプリンタ(12)などを接続したコンピュータ部(10)、および測定プログラム(13)から成る。
【発明の効果】
【0005】
試料を導波体上に置いたスペーサ内に注入し、コンピュータ部に測定開始の指令をするだけで、自動的に試料の弾性率を測定し、グラフ表示させることによって試料の硬化過程が把握出来る。
【発明を実施するための最良の形態1】
【0006】
以下、本発明を実施するための最良の形態1について説明する。図1に本発明の測定系統図を示す。電気パルスを超音波に変換する上部及び下部超音波センサ(1)(2)、試料中に超音波を伝播させ且つ試料が発熱しても超音波センサに熱が伝わらないよう断熱機能を有する上下導波体(7)(8)及び試料の温度を測定する温度センサ(5)を挿入する切欠きを有するスペーサ(9)などの機構と、コンピュータ部(10)からの指令により試料中の超音波の伝播時間を測定しコンピュータ部にデータを送る伝播時間測定部(4)、温度センサ(5)の信号を変換してコンピュータ部にデータを送る温度測定部(6)、試料名や測定時間間隔や測定回数その他の測定条件を入力したり伝播時間測定部(4)や温度測定部(6)からのデータを処理して結果を表示する表示部(11)と結果を印字するプリンタ(12)及び、測定手順を実行するための測定プログラム(13)を含むコンピュータ部(10)から成る。
【0007】
下部導波体の上に温度センサ(5)を挿入するための切欠きを有する環状のスペーサ(9)と温度センサ(5)を置く。測定する試料を環状のスペーサ内部の空間を十分満たす量注入する。
上部導波体をスペーサの上に降ろして固定する。この際試料の一部がはみ出て溢れても試料の厚さは、スペーサ(9)により一定の値Dに保たれる。
【0008】
測定開始のキーを押すとコンピュータにより測定が開始される。コンピュータは、先ず伝播時間測定部(4)のS1のa側とS3をONにして上部の超音波センサ(1)から放射された縦波超音波が7aの経路で上部導波体を往復するに要した時間を測定するように指令を送りT1を得る。次に伝播時間測定部(4)のS2のa側とS3をONにして下部の超音波センサから放射された縦波超音波が7bの経路で下部導波体を往復するに要した時間を測定するように指令を送り時間T2を得る。更に伝播時間測定部(4)のS1のa側とのS2のa側をONにして上部の超音波センサから放射された縦波超音波が7cの経路で上部導波体と試料及び下部導波体を通過して下部の超音波センサに到達する透過伝播時間を測定するように指令を送り時間T3を得る。試料中を縦波超音波が通過するに要した時間T1は、
【数1】

となる。
ここでスペーサの厚さをDとすると、試料中を伝播する超音波の縦波音速C1は、
【数2】

となる。
しかるに、試料の縦弾性率Eは、予め求めて置いた試料の密度をρとすると、
【数3】

となる。
また、引続いて温度測定部(6)に温度測定の指令を送り、温度データTを得て弾性率Eと共に図3の測定例に示す表示を行う。
【発明を実施するための最良の形態2】
【0009】
測定の開始前に[図2]の如く上部導波体(7)と下部導波体(8)を直接接触させてゼロ点校正を行い
【数4】

を得れば、
【数5】

により以下[数2]、[数3]となり弾性率Eが求まる。
【発明を実施するための最良の形態3】
【0010】
このとき超音波センサとして縦波振動子と横波振動子を組込んだ、縦波横波兼用センサを使用する場合は、S1のa側に縦波振動子をS1のb側に横波振動子を接続し、同様にS2のa側に縦波振動子をS2のb側に横波振動子を接続しておく。(発明を実施するための最良の形態1)の測定に引続いてコンピュータは、伝播時間測定部(4)のS1のb側とS3をONにして上部の超音波センサ(1)から放射された横波超音波が7aの経路で上部導波体を往復するに要した時間を測定するように指令を送りT4を得る。次に伝播時間測定部(4)のS2のb側とS3をONにして下部の超音波センサから放射された横波超音波が7bの経路で下部導波体を往復するに要した時間を測定するように指令を送り時間T5を得る。更に、伝播時間測定部(4)のS1のb側とのS2のb側をONにして上部の超音波センサから放射された横波超音波が7cの経路で上部導波体と試料及び下部導波体を通過して下部の超音波センサに到達する横波の強度を測定し設定値以下の場合は、試料が液状で横波が伝播しないと判断し、測定を行わず空白を出力する。
【0011】
試料が次第に固化して横波振幅が設定値以上伝播する状態になったら、横波超音波の伝播時間T6の測定も合せて行い、[数6][数7]により横波音速Tsを求める。
【0012】
【数6】

横波音速 Csは、
【数7】

となる。
剛性率 Gは、
【数8】

となる。
また、ヤング率Yは、
【数9】

となる。
体積弾性率 Kは、
【数10】

となる。
更に、ポアソン比 σは、
【数11】

となる。
以上[数8]〜[数11]の結果も合わせて表示することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の測定系統図である。
【図2】本発明の実施例2[発明を実施するための最良の形態2]の説明図である。
【図3】本発明の測定例である。
【符号の説明】
【0014】
1 上部超音波センサ
2 下部超音波センサ
3 センサケーブル
4 伝播時間測定部
4a 受信回路
4b 送信回路
4c CPU及びI/O
5 温度センサ
6 温度測定部
7 上部導波体
7a 上部導波体中を往復する超音波の経路
7b 下部導波体中を往復する超音波の経路
7c 上部超音波センサから発した超音波が、試料を通過し、下部超音波センサに至る超音波の経路
8 下部導波体
9 スペーサ
10 コンピュータ
11 表示器
12 本装置の動作手順を記述したプログラム
13 プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中に、縦波の超音波を送受するセンサと、試料から発生する熱により超音波センサが劣化することを防ぐため、超音波センサの前面に熱が伝わらないよう断熱機能を有する導波体を設け、導波体の間隔を一定に保ち試料の厚さを一定に保つ機構と、温度センサを保持する機構と、コンピュータからの指令により超音波の振幅と伝播時間を測定しデータを返す伝播時間測定部と、試料中に挿入した温度センサの信号を変換してコンピュータ部にデータを返す温度測定部と、試料の情報と測定条件に関する情報を漏れなく入力するための入力画面表示手順と測定値や計算値などをグラフ表示したり結果をプリンタに印字する手順を実行させるためのプログラムを内蔵したコンピュータ部からなり、温度や弾性率などの時間的変化をリアルタイムでグラフ表示する硬化過程測定装置。
【請求項2】
請求項1の硬化過程測定装置において、縦波と横波の超音波を送受するセンサを用い、縦波と横波の音速を測定することによって、温度や弾性率の他に剛性率、体積弾性率、ヤング率、ポアソン比、ラーメのパラメータなどの全動弾性率の時間的変化を精密に測定し、上記の測定結果をリアルタイムでグラフ表示する硬化過程測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−282005(P2009−282005A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160971(P2008−160971)
【出願日】平成20年5月24日(2008.5.24)
【出願人】(508184457)
【Fターム(参考)】