硬貨残留検知装置
【課題】自動機から出金される硬貨が通過する硬貨通路に静電容量式非接触センサを配設することによって、硬貨の姿勢に係わらず残留した硬貨を確実に検知することができるとともに、硬貨通路に挿入された手指等を検知することができるようにして、出金口に蓋部材が取り付けられていても、釣り銭等の硬貨の取り忘れを確実に防止することができ、かつ、自動機から出金される硬貨についての不正行為を防止することができるようにする。
【解決手段】自動機の硬貨出金口に接続された硬貨通路に配設された静電容量式非接触センサである検知センサと、検知センサの動作を制御するとともに、検知センサの出力信号に応じた検出信号を出力するセンサ制御部と、検知信号に基づいて硬貨通路内に残留する硬貨の存在、及び、硬貨通路内の異物の存在を判定するセンサ出力判定部とを有する。
【解決手段】自動機の硬貨出金口に接続された硬貨通路に配設された静電容量式非接触センサである検知センサと、検知センサの動作を制御するとともに、検知センサの出力信号に応じた検出信号を出力するセンサ制御部と、検知信号に基づいて硬貨通路内に残留する硬貨の存在、及び、硬貨通路内の異物の存在を判定するセンサ出力判定部とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、硬貨残留検知装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、両替機、自動販売機等の自動機においては、出金口付近における硬貨通路に検知センサを設置することによって、硬貨通路に残留した硬貨を検知するようになっている（例えば、特許文献１及び２参照。）。
【０００３】
図２は従来の硬貨残留検知装置が有する検知センサの構成図である。なお、図において、 (ａ）は検知センサの平面図であり、（ｂ）は検知センサの断面図である。
【０００４】
図に示されるように、検知センサ１１４は、センサ基板１２５の表面に形成された電極として、被検知物を検知するために微弱な電磁波を送出する送信電極１２１、及び、該送信電極１２１から送出される電磁波を授受する受信電極１２２を有する。なお、センサ基板１２５の裏面には、導電性材料から成る補助電極１２３が付着し、更に、絶縁性材料から成る板状のスペーサ１２６を介して、導電性材料から成る板状のシールド電極１２４が積層されている。
【０００５】
そして、前記送信電極１２１及び受信電極１２２は、センサ基板１２５の同一平面上に形成され、互いに平行にかつ交互に配設されている。すなわち、櫛（くし）型に配設される。これにより、Ｂとして示される硬貨の姿勢が変化しても、硬貨通路内に硬貨が存在することを検知することができる。
【特許文献１】特願２００７−２４８９４８号
【特許文献２】特開２００７−９４９５７号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
しかしながら、前記従来の硬貨残留検知装置においては、残留した硬貨が硬貨通路上に直立した状態で停止した場合に硬貨の検知漏れが発生する可能性がある。例えば、図２に示されるような検知センサ１１４の場合、硬貨が電極のパターン又は電極間の溝に収まると検知漏れが発生する可能性がある。この場合、硬貨が送信電極１２１及び受信電極１２２の双方に跨（またが）らないので、送信電極１２１から硬貨を介して受信電極１２２に到達する電磁波が少なくなる。そのため、検知センサ１１４が硬貨を検知しにくくなって、検知漏れが発生すると考えられる。
【０００７】
一般的な自動機において、硬貨通路は傾斜した角筒形であり、円板形の硬貨が硬貨通路内に直立したまま停止することは稀である。しかし、硬貨抜き取りを目的として、硬貨通路の内壁に粘着テープ等の粘着部材が付着された場合には、硬貨が直立して停止した状態で残留することもある。
【０００８】
また、自動機の出金口（受け皿）には蓋（ふた）が取り付けられているので、釣り銭の視認性が悪くなり、釣り銭の取り忘れが発生してしまう。現在、営業用に設置されている自動機の多くには、出金口及び商品取出口に蓋が取り付けられている。これは、防犯（例えば、手指等の挿入による硬貨の抜き取りや悪戯の防止）、粉塵（じん）雨水の混入防止（特に、幹線道路沿線の屋外で粉塵雨水の混入による汚れ付着の防止）、出金硬貨の紛失防止（例えば、出金の勢いで硬貨が飛び出ることの防止）等のためである。
【０００９】
本発明は、前記従来の硬貨残留検知装置の問題点を解決して、自動機から出金される硬貨が通過する硬貨通路に静電容量式非接触センサを配設することによって、硬貨の姿勢に係わらず残留した硬貨を確実に検知することができるとともに、前記硬貨通路に挿入された手指等を検知することができるようにして、出金口に蓋部材が取り付けられていても、釣り銭等の硬貨の取り忘れを確実に防止することができ、かつ、自動機から出金される硬貨についての不正行為を防止することができる硬貨残留検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
そのために、本発明の硬貨残留検知装置においては、自動機の硬貨出金口に接続された硬貨通路に配設された静電容量式非接触センサである検知センサと、該検知センサの動作を制御するとともに、前記検知センサの出力信号に応じた検知信号を出力するセンサ制御部と、前記検知信号に基づいて前記硬貨通路内に残留する硬貨の存在、及び、前記硬貨通路内の異物の存在を判定するセンサ出力判定部とを有する。
【００１１】
本発明の他の硬貨残留検知装置においては、さらに、前記検知センサは、複数の送信電極及び受信電極を備え、前記送信電極及び受信電極の寸法及び配置は、硬貨の姿勢及び位置に係わらず、前記送信電極から送出された電磁波が硬貨を介して受信電極に到達するように設定されている。
【００１２】
本発明の更に他の硬貨残留検知装置においては、さらに、前記送信電極及び受信電極の寸法及び配置は、前記送信電極と受信電極との間の溝の幅と前記送信電極の幅との合計が前記硬貨の厚さ未満であり、かつ、前記溝の幅と前記受信電極の幅との合計が前記硬貨の厚さ未満であるように設定されている。
【００１３】
本発明の更に他の硬貨残留検知装置においては、さらに、前記センサ出力判定部は、前記検知信号が、前記硬貨通路を正常に通過する硬貨を検知したときの検知信号と同じ大きさで、かつ、該検知信号より長い時間継続したときに、前記硬貨通路内に残留する硬貨の存在、及び、前記硬貨通路内の異物の存在を判定する。
【００１４】
本発明の更に他の硬貨残留検知装置においては、さらに、前記検知センサは前記硬貨出金口にも配設され、前記センサ出力判定部は、前記硬貨通路内及び硬貨出金口内に残留する硬貨の存在、並びに、前記硬貨通路内及び硬貨出金口内の異物の存在を判定する。
【発明の効果】
【００１５】
本発明によれば、硬貨残留検知装置は、自動機から出金される硬貨が通過する硬貨通路に静電容量式非接触センサを配設することによって、硬貨の姿勢に係わらず残留した硬貨を確実に検知することができるとともに、前記硬貨通路に挿入された手指等を検知することができるようにして、出金口に蓋部材が取り付けられていても、釣り銭等の硬貨の取り忘れを確実に防止することができ、かつ、自動機から出金される硬貨についての不正行為を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１６】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【００１７】
図３は本発明の第１の実施の形態における自動機を示す図である。
【００１８】
図において、１０は本実施の形態における自動機であり、例えば、コンビニエンスストア、スーパーマーケット等の商店の店舗や屋外に配設されている飲料、タバコ、食品等を販売する自動販売機、鉄道の駅、博物館、テーマパーク等に配設されている切符、入場券、回数券等を販売する券売機、ゲームセンタ等に配設されている遊技用メダル販売機、紙幣を硬貨に両替する両替機、銀行、信用金庫、郵便局等の金融機関の支店等の営業店に配設された現金自動預払機（Ａｕｔｏｍａｔｉｃ Ｔｅｌｌｅｒ Ｍａｃｈｉｎｅ：ＡＴＭ）等であるが、釣銭等として硬貨を出金する装置であれば、いかなる装置であってもよい。ここでは、前記自動機１０が飲料、タバコ、食品等の各種商品を販売する自動販売機であるものとして説明する。
【００１９】
前記自動機１０は、本体前面に配設された操作部５１、商品取出部５２及び硬貨出金口１１を有する。前記操作部５１は、自動機１０の利用者が操作して商品を選択するスイッチ等の商品選択手段、紙幣又は硬貨を入金する貨幣入金口、前記利用者に対するメッセージ、広告等を表示する表示手段、前記利用者に対する警告、音楽等を出力するスピーカ等の音声出力手段等を備える。また、前記商品取出部５２は、利用者が購入した商品が排出される商品排出口、該商品排出口を覆う開閉可能な蓋部材等を備える。
【００２０】
さらに、前記硬貨出金口１１は、釣銭等として前記利用者に支払うために出金される一円玉、五円玉、十円玉、百円玉、五百円玉等の各金種の硬貨が排出される排出口であって、後述される硬貨通路１２の出口端に接続されている。そして、該硬貨通路１２の出口端近傍には、硬貨通路１２内に残留する硬貨の存在を検知することができるとともに、前記硬貨通路１２内に挿入された指、棒、粘着部材等の異物の存在を検知する硬貨残留検知装置としての硬貨残留検知部が配設されている。
【００２１】
次に、該硬貨残留検知部の構成について説明する。
【００２２】
図４は本発明の第１の実施の形態における硬貨残留検知部の構成を示す図、図５は本発明の第１の実施の形態における硬貨通路の断面図である。
【００２３】
図において、１３は、硬貨出金口１１を覆う開閉可能な蓋部材としての出金口蓋である。また、１４は、静電容量式非接触センサから成る検知センサであり、出口端が硬貨出金口１１に接続された硬貨通路１２の出口端近傍において、硬貨通路１２の内壁の外側に配設されている。なお、硬貨通路１２は、自動機１０が有する図示されない出金機の出口と硬貨出金口１１とを接続する通路であり、前記出金機から出金された硬貨が自重によって内部を通過する。
【００２４】
そして、１５は、前記検知センサ１４に接続されたセンサ制御部であり、前記検知センサ１４の動作を制御するとともに、前記検知センサ１４の出力信号を受信する。また、１６は、前記センサ制御部１５に接続されたセンサ出力判定部であり、前記検知センサ１４の出力信号に基づいて硬貨通路１２内における出口端近傍に残留した硬貨又は異物が存在するか否かを判定し、残留した硬貨又は異物が存在する場合には、異常を検知したと判定する。さらに、１７は、前記センサ出力判定部１６に接続された異常状態通知装置であり、前記センサ出力判定部１６が異常を検知したと判定すると、異常を検知した旨を利用者又は自動機１０の周囲の人々に通知する。例えば、操作部５１の表示手段に異常が発生した旨の表示を行わせたり、音声出力手段から警報音を音声出力させることによって、異常を検知した旨を前記利用者又は自動機１０の周囲の人々に通知する。さらに、１８は、前記センサ出力判定部１６に接続された異常状態記録装置であり、前記センサ出力判定部１６が異常を検知したと判定すると、異常を検知した日時等を磁気ディスク、半導体メモリ、記録用紙等の記録媒体に記録する。
【００２５】
また、検知センサ１４は、図５に示されるように、検知面が硬貨通路１２内を向き、かつ、硬貨通路１２の周囲を取り囲むように配設される。
【００２６】
例えば、硬貨通路１２が、図５（ａ）に示されるように、矩（く）形の断面形状を備えるものである場合、検知センサ１４は、４枚の板状部から成り、各板状部は、その検知面が硬貨通路１２内を向くようにして、硬貨通路１２の４つの平板状の側壁の各々と平行になるように、その外側に配設される。これにより、Ｂとして示される硬貨の姿勢がどのようなものであっても、硬貨通路１２内に硬貨が存在することを検知することができる。
【００２７】
また、例えば、硬貨通路１２が、図５（ｂ）に示されるように、円形の断面形状を備えるものである場合、検知センサ１４は、１枚の板状部から成り、その検知面が硬貨通路１２内を向くようにして、硬貨通路１２の湾曲した側壁と平行になるように湾曲した形状にされて、その外側に配設される。
【００２８】
次に、前記検知センサ１４の構成について詳細に説明する。
【００２９】
図１は本発明の第１の実施の形態における検知センサの電極の模式図、図６は本発明の第１の実施の形態における検知センサの構成図である。なお、図１において、（ａ）は硬貨の平面方向の検知センサの断面を示す図、（ｂ）は硬貨の厚さ方向の検知センサの断面を示す図であり、図６において、 (ａ）は平面図であって図４における矢印Ａで示される方向から見た図、（ｂ）は検知センサの断面を示す図である。
【００３０】
ここでは、説明の都合上、検知センサ１４が、図５（ａ）に示されるような矩形の断面形状を備える硬貨通路１２に配設されたものであるものとして説明する。
【００３１】
図１及び６に示されるように、検知センサ１４は、絶縁性材料から成る板状の基板２５、並びに、該基板２５の表面に付着する導電性材料から成る送信電極２１及び受信電極２２を有する。なお、前記検知センサ１４は、基板２５の表面が検知面として硬貨通路１２内を向くように配設される。
【００３２】
そして、前記送信電極２１は、硬貨通路１２内における硬貨及び異物、すなわち、被検知物に電磁波を放射するために、硬貨通路１２の裏面（図１における下面）に対向するように配設される。また、前記受信電極２２は、送信電極２１が放射し、被検知物によって反射された電磁波を受信するために、送信電極２ｌと同様、硬貨通路１２の裏面に対向するように配設される。つまり、前記検知センサ１４は、送信電極２１及び受信電極２２が配設された基板２５の表面が検知面として硬貨通路１２内を向くように配設される。
【００３３】
そして、図６（ａ）に示されるように、前記送信電極２１及び受信電極２２は、、各々が、ジグザグ、九十九折り又は波形状のような平面形状を備え、互いの凹部同士及び凸部同士が噛（か）み合うように配設されている。
【００３４】
また、基板２５の裏面には、図１及び６に示されるように、導電性材料から成る補助電極２３が付着し、さらに、絶縁性材料から成る板状のスペーサ２６を介して、導電性材料から成る板状のシールド電極２４が積層されている。該シールド電極２４は、送信電極２１の裏側から放射される電磁波を遮蔽（へい）するための電極である。また、前記補助電極２３は、送信電極２１とシールド電極２４との間に流れる電流を遮断するための電極である。そして、前記シールド電極２４は、補助電極２３との間にスペーサ２６を挟み込んだ状態で、基板２５の裏面に接着される。
【００３５】
検知センサ１４は、このような構造を有するので、裏面側、すなわち、シールド電極２４側で被検知物を検知することなく、表面側、すなわち、検知面側のみで被検知物を検知する。これにより、Ｂとして示される被検知物としての硬貨の姿勢がどのようなものであっても、硬貨通路１２内に硬貨が存在することを検知することができる。
【００３６】
そして、同種類の電極は、導電パターン、スルーホール等によって互いに接続されている。また、各電極は、センサ制御部１５に接続されており、送信電極２１及び補助電極２３には交流信号が印加され、受信電極２２及びシールド電極２４は接地される。
【００３７】
なお、前記検知センサ１４は、例えば、銅張り積層板（中興化成製）を用いて製造することができる。この場合、基板２５は、テフロン（Ｒ）製の板部材であり、送信電極２１、受信電極２２及び補助電極２３は、銅箔（はく）をエッチング等の方法によってパターニングすることにより作成される。なお、スペーサ２６は、基板２５と同様に、テフロン（Ｒ）製の板部材である。また、シールド電極２４は、例えば、金属板、導電性ゴム、導電性布等から成る。なお、前記検知センサ１４は、これに限らず、いかなる製造方法によって製造されたものであってもよい。
【００３８】
ところで、「発明が解決しようとする課題」において説明したように、硬貨が硬貨通路１２の電極のパターン又は電極間の溝に収まると検知漏れが発生する可能性がある。そこで、硬貨通路１２内に残留する硬貨の検知漏れを防止するためには、硬貨の姿勢及び位置に係わらず、Ｂとして示される硬貨が送信電極２１及び受信電極２２の両方に接近し、送信電極２１から放射される微弱な電磁波が、図１において矢印Ｃで示されるように、硬貨を介して受信電極２２に到達することが必要となる。そのためには、検知センサ１４の送信電極２１及び受信電極２２は、以下の条件を満たす必要がある。
【００３９】
なお、大半の自動販売機では一円玉硬貨及び五円玉硬貨を取り扱わないようになっているが、現金自動預払機等では一円玉硬貨及び五円玉硬貨を取り扱うので、ここでは、硬貨が最小の形状である一円玉硬貨であるものとして説明する。
【００４０】
この場合、硬貨の厚さをＴとし、硬貨の直径をＤとし、送信電極２１の幅をＸとし、受信電極２２の幅をＹとし、送信電極２１と受信電極２２との間の溝をＺとし、送信電極２１の辺をＬとする。なお、厚さＴ、直径Ｄ、幅Ｘ、幅Ｙ、溝Ｚ、辺Ｌはそれぞれ正の数とする。また、一円玉硬貨の場合、厚さＴは約１〔ｍｍ〕であり、直径Ｄは２０〔ｍｍ〕である。
【００４１】
前述されたように、送信電極２１から送出された微弱な電磁波が、図１において矢印Ｃで示されるように、硬貨の姿勢及び位置に係わらず、硬貨を介して受信電極２２に到達するためには、次の式（１）及び（２）を満たすことが条件となる。
【００４２】
Ｘ＋Ｚ＜Ｔ ・・・式（１）
Ｙ＋Ｚ＜Ｔ ・・・式（２）
すなわち、前記送信電極２１及び受信電極２２の寸法及び配置は、式（１）及び（２）を満たすように設定される。
【００４３】
なお、送信電極２１から送出される電磁波は、電極からの高さＨが大きくなるにつれ反比例的に弱くなる。すなわち、残留した硬貨の円周面が電極パターンから遠ざかるにつれて検知しにくくなる。この場合、センサ制御部１５の回路内での増幅度を高くすればよいが、該増幅度を高くすると雑音も大きくなることから、辺ＬはＤ／４程度であることが望ましい。
【００４４】
次に、前記センサ制御部１５の構成について説明する。
【００４５】
図７は本発明の第１の実施の形態におけるセンサ制御部の構成を示す回路図である。
【００４６】
図に示されるように、検知センサ１４に接続されたセンサ制御部１５は、発振回路３１、バッファ回路３２、電流検知抵抗素子３３、シールド線３４、第一差動増幅器３５、バンドパスフィルタ（ＢＰＦ）３６、検波回路（ＡＣ／ＤＣ）３７、ローパスフィルタ（ＬＰＦ）３８、第二差動増幅器４１、アナログ／デジタル（Ａ／Ｄ）変換器４２、ＣＰＵ（中央演算装置）４３及びデジタル／アナログ（Ｄ／Ａ）変換器４４を備えている。
【００４７】
そして、前記発振回路３１は、検知センサ１４に供給して、該検知センサ１４の送信電極２１から電磁波を放射させるための交流電圧を出力する。また、前記バッファ回路３２は、発振回路３１が出力した交流電圧を検知センサ１４に供給するバッファとして機能する。さらに、前記電流検知抵抗素子３３は、検知センサ１４に流れる電流を電圧に変換するための抵抗素子である。なお、前記電流検知抵抗素子３３は、バッファ回路３２の出力端とシールド線３４との間に接続される。
【００４８】
また、該シールド線３４は、バッファ回路３２が出力する交流電圧を検知センサ１４に供給する導電線である。なお、前記シールド線３４は、芯（しん）線３４ａと、該芯線３４ａを被覆する被覆線３４ｂとを備える。前記芯線３４ａの一端は、電流検知抵抗素子３３を介してバッファ回路３２の出力端に接続される。また、前記芯線３４ａの他端は、送信電極２１に接続される。そして、前記被覆線３４ｂの一端は、バッファ回路３２の出力端に電流検知抵抗素子３３を介さずに直接接続される。また、前記被覆線３４ｂの他端は、検知センサ１４の補助電極２３に接続される。
【００４９】
さらに、前記第一差動増幅器３５は、計測用アンプであり、非反転入力端子（＋）及び反転入力端子（−）がともに入力インピーダンスが高く、非反転入力端子（＋）と反転入力端子（−）との電位差に応じた電圧を出力する。そして、前記第一差動増幅器３５の非反転入力端子（＋）は、電流検知抵抗素子３３の一端、すなわち、バッファ回路３２側の端部に接続される。また、前記第一差動増幅器３５の反転入力端子（−）は、電流検知抵抗素子３３の他端、すなわち、送信電極２１側の端部に接続される。したがって、前記第一差動増幅器３５は、電流検知抵抗素子３３の端子間電圧に応じた値の交流電圧信号を出力する。
【００５０】
そして、前記バンドパスフィルタ３６は、第一差動増幅器３５から入力された交流電圧信号のうち、周波数ｆの信号成分、すなわち、発振回路３１と同じ周波数の成分のみを通過させる。前記バンドパスフィルタ３６によって、第一差動増幅器３５が出力する交流電圧信号からノイズ成分を取り除くことができる。
【００５１】
また、前記検波回路３７は、バンドパスフィルタ３６から入力された交流電圧信号を直流電圧信号に変換する。本実施の形態における検波回路３７は、時定数τを１／ｆ程度に設定した全波整流回路である（ｆは発振回路３１の出力周波数である）。
【００５２】
さらに、前記ローパスフィルタ３８は、検波回路３７から入力された直流電圧信号から高周波成分を除去する。このように、前記ローパスフィルタ３８によって、検波回路３７が出力した直流電圧信号からリップル成分を取り除くことができる。
【００５３】
そして、前記第二差動増幅器４１は、非反転入力端子（＋）と反転入力端子（−）との電位差に応じた電圧を出力する。前記第二差動増幅器４１の非反転入力端子（＋）は、ローパスフィルタ３８の出力端に接続される。また、前記第二差動増幅器４１の反転入力端子（−）は、デジタル／アナログ変換器４４の出力端に接続される。後述するように、前記第二差動増幅器４１によって、検知センサ１４の送信電極２１と受信電極２２との間に被検知物が存在していないときの値が零となるように、検波回路３７の出力信号が補正される。前記第二差動増幅器４１が出力した直流電圧信号は、検知信号Ｓｄとして外部に出力される。
【００５４】
また、前記アナログ／デジタル変換器４２は、第二差動増幅器４１が出力した直流電圧信号、すなわち、検知信号Ｓｄを、アナログ信号からデジタル信号に変換する。さらに、前記ＣＰＵ４３は、アナログ／デジタル変換器４２から入力されたデジタル信号に所定のアルゴリズムによる演算処理を施すことによって補正信号Ｓａを生成する。そして、前記ＣＰＵ４３は、生成した補正信号Ｓａを、内部に保存するとともに、デジタル／アナログ変換器４４に出力する。後述するように、前記補正信号Ｓａによって、検知信号Ｓｄが補正される。
【００５５】
さらに、前記デジタル／アナログ変換器４４は、ＣＰＵ４３の出力信号、すなわち、補正信号Ｓａをデジタル信号からアナログ信号に変換する。
【００５６】
本実施の形態における硬貨残留検知部は、以上のような構成を有することによって、硬貨通路１２内に残留する硬貨、硬貨通路１２内に挿入された指、棒、粘着部材等の異物等の被検知物を検知することができる。
【００５７】
次に、前記構成の硬貨残留検知部の動作について説明する。
【００５８】
本実施の形態におけるセンサ制御部１５は、特許文献２に開示されている装置と同様の回路構成を有し、硬貨通路１２内に硬貨、異物等の被検知物が存在しない状態、すなわち、初期状態における電流検知抵抗素子３３の端子間電圧を基準電圧とし、前記電流検知抵抗素子３３の端子間電圧の基準電圧からの変化に基づいて、被検知物を検知する。
【００５９】
次に、センサ制御部１５で被検知物を検知する動作原理について説明する。
【００６０】
検知センサ１４に被検知物が接近する前の状態、すなわち、初期状態において、送信電極２１と受信電極２２との間の静電容量Ｃａは、送信電極２１及び受信電極２２の表面、すなわち、電極面上の空間によって与えられる。また、被検知物が接近していないときには、送信電極２１と受信電極２２との間に流れる電流は打ち消される。
【００６１】
これに対して、電極面に被検知物が接近したときの送信電極２１と受信電極２２との間の静電容量（ここではＣｓとする）は、前記被検知物によって与えられる。一般に、金属の比誘電率は無限大であり、また、人体を水と考えたときの人体の一部の比誘電率は８１程度である。したがって、Ｃａ＜Ｃｓであるから、電極面に硬貨、異物等の被検知物が接近すると、静電容量が増加することになる。
【００６２】
そのため、電極面に被検知物が接近したときには、送信電極２１と受信電極２２との間に流れる電流は増加する。ここで、初期状態に送信電極２１と受信電極２２との間に流れる電流の電流値をＩ0 とし、送信電極２１と受信電極２２との間の静電容量が増加したことによる電流値の増加分をＩS とすると、検知センサ１４の電極面に被検知物が接近することによって、電流検知抵抗素子３３を流れる電流がＩ0 からＩ0 ＋ＩS に増加する。このため、電流検知抵抗素子３３の端子間電位差が増大し、これにより、第一差動増幅器３５の出力も増大する。
【００６３】
前述のように、第一差動増幅器３５は、電流検知抵抗素子３３の端子間電圧に応じた交流電圧信号を出力する。該交流電圧信号は、バンドパスフィルタ３６でノイズ成分が除去され、検波回路３７で交流電圧信号から直流電圧信号に変換され、ローパスフィルタ３８でリップル成分が除去された後、第二差動増幅器４１の非反転入力端子（＋）に入力される。そして、前記第二差動増幅器４１は、入力された直流電圧信号と補正信号Ｓａとの差に応じた電圧を、検知信号Ｓｄとして出力する。ここで、前記補正信号Ｓａは、被検知物が存在しないとき、すなわち、電流検知抵抗素子３３に電流Ｉ0 が流れているときの検知信号Ｓｄが零ボルトとなるように設定されている。したがって、検知信号Ｓｄは、被検知物に流れる電流の増加分の電流値ＩS に応じた値となる。
【００６４】
このような動作を行うことにより、本実施形態における硬貨残留検知装置は、被検知物の存在を検知することができる。
【００６５】
また、前述のように、本実施形態においては、送信電極２１とシールド電極２４との間に補助電極２３を設けるとともに、１個のバッファ回路３２から、異なる配線を介して送信電極２１及び補助電極２３に交流電圧を供給する。したがって、次のような理由によって、被検知物に対する検知精度を高めることができる。
【００６６】
まず、補助電極２３を設ける理由と、異なる配線を介して送信電極２１及び補助電極２３に交流電圧を供給する理由とを説明する。
【００６７】
検知センサ１４が被検知物の検知を行うのは、本来は表面側のみである。しかし、実際には、送信電極２１から裏面側にも電磁波が放出される。したがって、検知センサ１４の裏面側に他の部材が存在する場合に、当該部材と送信電極２１との間に電界が形成されないようにする必要がある。これは、検知センサ１４の裏面側に存在する他の部材と送信電極２１との間に電界が形成されると、当該部材の位置変化に起因して電流検知抵抗素子３３を流れる電流が変動してしまい、誤検知や検知精度悪化の原因になるからである。そのため、検知センサ１４の裏面側には、接地されたシールド電極２４が設けられる。
【００６８】
しかしながら、該シールド電極２４のみを設けた場合、すなわち、補助電極２３を設けない場合には、送信電極２１とシールド電極２４との間に電流が流れてしまうことになる。通常、送信電極２１とシールド電極２４との間の静電容量は、送信電極２１と被検知物との間の静電容量と比べて非常に大きくなる。したがって、送信電極２１とシールド電極２４との間に流れる電流も、送信電極２１と被検知物との間を流れる電流と比較して、非常に大きくなる。そのため、送信電極２１とシールド電極２４との間に電流が流れると、送信電極２１と被検知物との間の電流を精度良く検知することが非常に困難になる。これに対して、送信電極２１とシールド電極２４との間に補助電極２３を設けるとともに、送信電極２１とシールド電極２４との間の電位をほぼ同電位にした場合、検知センサ１４の裏面側に存在する部材の影響をなくしつつ、当該裏面側に流れる電流を非常に小さく抑えることができる。
【００６９】
加えて、本実施の形態においては、異なる配線を介して送信電極２１及び補助電極２３に交流電圧を供給しており、バッファ回路３２と送信電極２１とを接続する配線に電流検知抵抗素子３３が設けられている。すなわち、送信電極２１はシールド線３４の芯線３４ａ及び電流検知抵抗素子３３を介してバッファ回路３２に接続され、補助電極２３はシールド線３４の被覆線３４ｂを介してバッファ回路３２に接続されている。このように、送信電極２１を流れる電流と補助電極２３を流れる電流とは分離されており、前記補助電極２３を流れる電流が電流検知抵抗素子３３を流れることはない。このため、該電流検知抵抗素子３３を流れる電流を小さくすることができ、したがって、送信電極２１から被検知物に流れる電流の検知精度が向上する。
【００７０】
また、本実施の形態における硬貨残留検知部は、１個のバッファ回路３２から異なる配線を介して送信電極２１及び補助電極２３に交流電圧を供給するので、前記送信電極２１から被検知物に流れる電流を精度良く検知することができる。したがって、硬貨残留検知部と同じ装置に搭載された他の部品等の影響を抑制して、被検知物の検知精度を向上させることができる。
【００７１】
さらに、本実施の形態における硬貨残留検知部は、被検知物が検知されていないときの検知信号値を用いて、被検知物が検知されたときの検知信号Ｓｄを補正するので、被検知物の検知精度を向上させることができる。
【００７２】
次に、硬貨通路１２内に残留する硬貨、及び、硬貨通路１２内に挿入された指、棒、粘着部材等の異物を検知する動作について説明する。
【００７３】
通常、硬貨は硬貨通路１２内をある一定の時間内で通過し、この状態を正常とする。
【００７４】
一方、硬貨が通過する前や後、すなわち、出金時以外では被検知物は硬貨通路１２内に存在しない。そのとき、硬貨を抜き取る操作として、硬貨通路１２内に指を挿入したり、棒、粘着テープ等を付着させたりすることが考えられる。そのような操作が行われると、硬貨通路１２内に指、棒、粘着テープ等の異物が存在することになる。そこで、そのような操作によって硬貨通路１２内に硬貨が残留したり、平常時に存在しない異物が検知されたりしたときを異常とする。
【００７５】
また、硬貨が正常に硬貨通路１２を通過したときでも、通過中においては、検知センサ１４が硬貨を検知する。そこで、該硬貨が検知センサ１４の配設された部分を正常に通過する所要時間より長い時間硬貨を検知した場合には、異常と判断する。つまり、センサ出力判定部１６は、センサ制御部１５が出力する検知信号Ｓｄが、硬貨通路１２を正常に通過する硬貨を検知したときの検知信号Ｓｄと同じ大きさで、かつ、該検知信号Ｓｄより長い時間継続したときに、硬貨通路１２内に残留する硬貨の存在、及び、硬貨通路１２内の異物の存在を判定する。なお、通常、硬貨通路１２内に指、棒、粘着テープ等の異物が存在することはない。したがって、硬貨通路１２内の検知センサ１４の配設された部分に指、棒、粘着テープ等の異物があることは、硬貨抜き取りの操作によるものと考えられる。しかし、指、棒、粘着テープ等の異物を検知したときの第二差動増幅器４１の出力と、硬貨を検知したときの第二差動増幅器４１の出力との相違だけで、異常を検知したと判定することは困難である。
【００７６】
そこで、センサ出力判定部１６は、第二差動増幅器４１の出力が、硬貨等の被検知物を検知したときと同等の大きさで、かつ、硬貨が検知センサ１４の配設された部分を正常に通過する所要時間より長い時間継続したときには、硬貨通路１２内に硬貨が残留している、又は、硬貨抜き取りの操作が行われているものとして、異常を検知したと判定する。そして、センサ出力判定部１６が異常を検知したと判定すると、異常状態通知装置１７は異常を検知した旨を通知し、異常状態記録装置１８は、異常を検知した日時等を記録する。
【００７７】
前記異常状態通知装置１７は、音や画像で周囲に通知するものであり、自動機１０に組み込む又は周囲に取り付けるものとする。
【００７８】
また、前記異常状態記録装置１８は、異常状態のあった日時等を記録媒体に記録する。該記録媒体は各種媒体が考えられるが、センサ制御部１５に備えられているＣＰＵ４３においても行うことができる。
【００７９】
なお、清掃や検査の保守時には、通常運転設定から保守設定に切り替えることによって、手、指等を長時間検知しても異常と判断しないようにセンサ機能を一時的に解除することができる。
【００８０】
このように、本実施の形態においては、硬貨通路１２内に残留する硬貨の存在を確実に検知することができるとともに、硬貨通路１２内に存在するはずのない指、棒、粘着部材等の異物の存在を検知することができる。これにより、異常状態を識別することができ、出金される硬貨についての不正行為を防止することができる。
【００８１】
なお、検知センサ１４は、静電容量式非接触センサ以外の非接触センサ、例えば、光学式非接触センサから成るものであってもよいが、その場合、硬貨との位置関係に応じて、検知漏れの可能性がある。検知センサ１４として、静電容量式非接触センサを採用することによって、被検知面全体を１つのセンサにより検知することができる。
【００８２】
さらに、検知センサ１４の電極形状を、図１及び６に示されるようにすることによって、硬貨が硬貨通路１２内において直立状態で残留している場合であっても、硬貨を確実に検知することができる。
【００８３】
次に、本発明の第２の実施の形態について説明する。なお、第１の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第１の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【００８４】
図８は本発明の第２の実施の形態における硬貨残留検知部の構成を示す図である。
【００８５】
本実施の形態において、硬貨残留検知装置は、図に示されるように、硬貨出金口１１用の検知センサ７０を有する。該検知センサ７０は、検知面が硬貨出金口１１内を向き、かつ、硬貨出金口１１の底面の外側を覆うように配設される。硬貨通路１２から硬貨出金口１１に到達した硬貨は、検知センサ７０によって検知される。
【００８６】
なお、該検知センサ７０の構成は、硬貨通路１２用の検知センサ１４と同様であるので、その説明は省略する。また、前記検知センサ１４及び７０は、それぞれセンサ制御部１５に接続される。
【００８７】
次に、本実施の形態におけるセンサ制御部１５の構成について説明する。
【００８８】
図９は本発明の第２の実施の形態におけるセンサ制御部の構成を示す回路図である。
【００８９】
本実施の形態において、センサ制御部１５は、図に示されるように、硬貨通路１２用の検知センサ１４の動作を制御するとともに該検知センサ１４の出力信号を受信する第１センサ制御部１５ａと、硬貨出金口１１用の検知センサ７０の動作を制御するとともに該検知センサ７０の出力信号を受信する第２センサ制御部１５ｂとから成る。なお、前記第１センサ制御部１５ａの構成は、前記第１の実施の形態におけるセンサ制御部１５と同様であるので、その説明を省略する。
【００９０】
硬貨出金口１１用の検知センサ７０に接続された第２センサ制御部１５ｂは、発振回路８１、バッファ回路８２、電流検知抵抗素子８３、シールド線８４、第一差動増幅器８５、バンドパスフィルタ（ＢＰＦ）８６、検波回路（ＡＣ／ＤＣ）８７、ローパスフィルタ（ＬＰＦ）８８、第二差動増幅器９１、アナログ／デジタル（Ａ／Ｄ）変換器９２及びデジタル／アナログ（Ｄ／Ａ）変換器９４を備えている。なお、第２センサ制御部１５ｂは、ＣＰＵ４３を第１センサ制御部１５ａと共有し、前記アナログ／デジタル変換器９２及びデジタル／アナログ変換器９４は、ＣＰＵ４３に接続されている。
【００９１】
そして、前記発振回路８１は、検知センサ７０に供給して、該検知センサ７０の送信電極７１から電磁波を放射させるための交流電圧を出力する。また、前記バッファ回路８２は、発振回路８１が出力した交流電圧を検知センサ７０に供給するバッファとして機能する。さらに、前記電流検知抵抗素子８３は、検知センサ７０に流れる電流を電圧に変換するための抵抗素子である。なお、前記電流検知抵抗素子８３は、バッファ回路８２の出力端とシールド線８４との間に接続される。
【００９２】
また、該シールド線８４は、バッファ回路８２が出力する交流電圧を検知センサ７０に供給する導電線である。なお、前記シールド線８４は、芯線８４ａと、該芯線８４ａを被覆する被覆線８４ｂとを備える。前記芯線８４ａの一端は、電流検知抵抗素子８３を介してバッファ回路８２の出力端に接続される。また、前記芯線８４ａの他端は、送信電極７１に接続される。そして、前記被覆線８４ｂの一端は、バッファ回路８２の出力端に電流検知抵抗素子８３を介さずに直接接続される。また、前記被覆線８４ｂの他端は、検知センサ７０の補助電極７３に接続される。
【００９３】
さらに、前記第一差動増幅器８５は、計測用アンプであり、非反転入力端子（＋）及び反転入力端子（−）がともに入力インピーダンスが高く、非反転入力端子（＋）と反転入力端子（−）との電位差に応じた電圧を出力する。そして、前記第一差動増幅器８５の非反転入力端子（＋）は、電流検知抵抗素子８３の一端、すなわち、バッファ回路８２側の端部に接続される。また、前記第一差動増幅器８５の反転入力端子（−）は、電流検知抵抗素子８３の他端、すなわち、送信電極７１側の端部に接続される。したがって、前記第一差動増幅器８５は、電流検知抵抗素子８３の端子間電圧に応じた値の交流電圧信号を出力する。
【００９４】
そして、前記バンドパスフィルタ８６は、第一差動増幅器８５から入力された交流電圧信号のうち、周波数ｆの信号成分、すなわち、発振回路８１と同じ周波数の成分のみを通過させる。前記バンドパスフィルタ８６によって、第一差動増幅器８５が出力する交流電圧信号からノイズ成分を取り除くことができる。
【００９５】
また、前記検波回路８７は、バンドパスフィルタ８６から入力された交流電圧信号を直流電圧信号に変換する。本実施の形態における検波回路８７は、時定数τを１／ｆ程度に設定した全波整流回路である（ｆは発振回路８１の出力周波数である）。
【００９６】
さらに、前記ローパスフィルタ８８は、検波回路８７から入力された直流電圧信号から高周波成分を除去する。このように、前記ローパスフィルタ８８によって、検波回路８７が出力した直流電圧信号からリップル成分を取り除くことができる。
【００９７】
そして、前記第二差動増幅器９１は、非反転入力端子（＋）と反転入力端子（−）との電位差に応じた電圧を出力する。前記第二差動増幅器９１の非反転入力端子（＋）は、ローパスフィルタ８８の出力端に接続される。また、前記第二差動増幅器９１の反転入力端子（−）は、デジタル／アナログ変換器９４の出力端に接続される。後述するように、前記第二差動増幅器９１によって、検知センサ７０の送信電極７１と受信電極７２との間に被検知物が存在していないときの値が零となるように、検波回路８７の出力信号が補正される。前記第二差動増幅器９１が出力した直流電圧信号は、検知信号Ｓｄ２として外部に出力される。
【００９８】
また、前記アナログ／デジタル変換器９２は、第二差動増幅器９１が出力した直流電圧信号、すなわち、検知信号Ｓｄ２を、アナログ信号からデジタル信号に変換する。さらに、前記ＣＰＵ４３は、アナログ／デジタル変換器９２から入力されたデジタル信号に所定のアルゴリズムによる演算処理を施すことによって補正信号Ｓａ２を生成する。そして、前記ＣＰＵ４３は、生成した補正信号Ｓａ２を、内部に保存するとともに、デジタル／アナログ変換器９４に出力する。後述するように、前記補正信号Ｓａ２によって、検知信号Ｓｄ２が補正される。
【００９９】
さらに、前記デジタル／アナログ変換器９４は、ＣＰＵ４３の出力信号、すなわち、補正信号Ｓａ２をデジタル信号からアナログ信号に変換する。
【０１００】
本実施の形態における硬貨残留検知部は、以上のような構成を有することによって、硬貨出金口１１内に残留する硬貨を検知することができる。
【０１０１】
次に、本実施の形態における硬貨残留検知部の動作について説明する。
【０１０２】
なお、検知センサ１４及び７０の各々が、残留した硬貨を検知する際におけるセンサ制御部１５、センサ出力判定部１６、異常状態通知装置１７及び異常状態記録装置１８の動作については、前記第１の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【０１０３】
本実施の形態において、センサ出力判定部１６は、硬貨通路１２用の検知センサ１４又は硬貨出金口１１用の検知センサ７０の少なくとも一方が検知状態にあるときに、異常を検知したと判定する。
【０１０４】
このように、本実施の形態においては、硬貨通路１２に検知センサ１４が配設されるとともに、硬貨出金口１１にも検知センサ７０が配設されている。これにより、硬貨通路１２内に存在する残留硬貨及び異物の存在を検知することができるとともに、硬貨出金口１１内に存在する残留硬貨及び異物の存在を検知することができる。したがって、利用者が釣銭等の出金された硬貨を取り忘れることを確実に防止することができるとともに、出金される硬貨についての不正行為を防止することができる。
【０１０５】
なお、前記第１の実施の形態においては、本発明を自動販売機の硬貨通路１２に適用した例について説明したが、本発明は他の自動機、例えば、現金自動預払機や遊技機の硬貨通路にも適用可能である。
【０１０６】
また、前記第２の実施の形態においては、本発明を自動販売機の硬貨通路１２及び硬貨出金口１１に適用した例を示したが、本発明は他の自動機、例えば、現金自動預払機や遊技機の硬貨通路及び硬貨出金口にも適用可能である。
【０１０７】
さらに、前記第１及び第２の実施の形態においては、硬貨通路１２用の検知センサ１４及び硬貨出金口１１用の検知センサ７０の制御を１つのセンサ制御部１５で行う場合について説明したが、硬貨通路１２用の検知センサ１４及び硬貨出金口１１用の検知センサ７０の制御をそれぞれ別個のセンサ制御部で行うようにすることもできる。
【０１０８】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【０１０９】
【図１】本発明の第１の実施の形態における検知センサの電極の模式図である。
【図２】従来の硬貨残留検知装置が有する検知センサの構成図である。
【図３】本発明の第１の実施の形態における自動機を示す図である。
【図４】本発明の第１の実施の形態における硬貨残留検知部の構成を示す図である。
【図５】本発明の第１の実施の形態における硬貨通路の断面図である。
【図６】本発明の第１の実施の形態における検知センサの構成図である。
【図７】本発明の第１の実施の形態におけるセンサ制御部の構成を示す回路図である。
【図８】本発明の第２の実施の形態における硬貨残留検知部の構成を示す図である。
【図９】本発明の第２の実施の形態におけるセンサ制御部の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【０１１０】
１０ 自動機
１１ 硬貨出金口
１２ 硬貨通路
１４、７０ 検知センサ
１５ センサ制御部
１５ａ 第１センサ制御部
１５ｂ 第２センサ制御部
１６ センサ出力判定部
２１、７１ 送信電極
２２、７２ 受信電極
【技術分野】
【０００１】
本発明は、硬貨残留検知装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、両替機、自動販売機等の自動機においては、出金口付近における硬貨通路に検知センサを設置することによって、硬貨通路に残留した硬貨を検知するようになっている（例えば、特許文献１及び２参照。）。
【０００３】
図２は従来の硬貨残留検知装置が有する検知センサの構成図である。なお、図において、 (ａ）は検知センサの平面図であり、（ｂ）は検知センサの断面図である。
【０００４】
図に示されるように、検知センサ１１４は、センサ基板１２５の表面に形成された電極として、被検知物を検知するために微弱な電磁波を送出する送信電極１２１、及び、該送信電極１２１から送出される電磁波を授受する受信電極１２２を有する。なお、センサ基板１２５の裏面には、導電性材料から成る補助電極１２３が付着し、更に、絶縁性材料から成る板状のスペーサ１２６を介して、導電性材料から成る板状のシールド電極１２４が積層されている。
【０００５】
そして、前記送信電極１２１及び受信電極１２２は、センサ基板１２５の同一平面上に形成され、互いに平行にかつ交互に配設されている。すなわち、櫛（くし）型に配設される。これにより、Ｂとして示される硬貨の姿勢が変化しても、硬貨通路内に硬貨が存在することを検知することができる。
【特許文献１】特願２００７−２４８９４８号
【特許文献２】特開２００７−９４９５７号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
しかしながら、前記従来の硬貨残留検知装置においては、残留した硬貨が硬貨通路上に直立した状態で停止した場合に硬貨の検知漏れが発生する可能性がある。例えば、図２に示されるような検知センサ１１４の場合、硬貨が電極のパターン又は電極間の溝に収まると検知漏れが発生する可能性がある。この場合、硬貨が送信電極１２１及び受信電極１２２の双方に跨（またが）らないので、送信電極１２１から硬貨を介して受信電極１２２に到達する電磁波が少なくなる。そのため、検知センサ１１４が硬貨を検知しにくくなって、検知漏れが発生すると考えられる。
【０００７】
一般的な自動機において、硬貨通路は傾斜した角筒形であり、円板形の硬貨が硬貨通路内に直立したまま停止することは稀である。しかし、硬貨抜き取りを目的として、硬貨通路の内壁に粘着テープ等の粘着部材が付着された場合には、硬貨が直立して停止した状態で残留することもある。
【０００８】
また、自動機の出金口（受け皿）には蓋（ふた）が取り付けられているので、釣り銭の視認性が悪くなり、釣り銭の取り忘れが発生してしまう。現在、営業用に設置されている自動機の多くには、出金口及び商品取出口に蓋が取り付けられている。これは、防犯（例えば、手指等の挿入による硬貨の抜き取りや悪戯の防止）、粉塵（じん）雨水の混入防止（特に、幹線道路沿線の屋外で粉塵雨水の混入による汚れ付着の防止）、出金硬貨の紛失防止（例えば、出金の勢いで硬貨が飛び出ることの防止）等のためである。
【０００９】
本発明は、前記従来の硬貨残留検知装置の問題点を解決して、自動機から出金される硬貨が通過する硬貨通路に静電容量式非接触センサを配設することによって、硬貨の姿勢に係わらず残留した硬貨を確実に検知することができるとともに、前記硬貨通路に挿入された手指等を検知することができるようにして、出金口に蓋部材が取り付けられていても、釣り銭等の硬貨の取り忘れを確実に防止することができ、かつ、自動機から出金される硬貨についての不正行為を防止することができる硬貨残留検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
そのために、本発明の硬貨残留検知装置においては、自動機の硬貨出金口に接続された硬貨通路に配設された静電容量式非接触センサである検知センサと、該検知センサの動作を制御するとともに、前記検知センサの出力信号に応じた検知信号を出力するセンサ制御部と、前記検知信号に基づいて前記硬貨通路内に残留する硬貨の存在、及び、前記硬貨通路内の異物の存在を判定するセンサ出力判定部とを有する。
【００１１】
本発明の他の硬貨残留検知装置においては、さらに、前記検知センサは、複数の送信電極及び受信電極を備え、前記送信電極及び受信電極の寸法及び配置は、硬貨の姿勢及び位置に係わらず、前記送信電極から送出された電磁波が硬貨を介して受信電極に到達するように設定されている。
【００１２】
本発明の更に他の硬貨残留検知装置においては、さらに、前記送信電極及び受信電極の寸法及び配置は、前記送信電極と受信電極との間の溝の幅と前記送信電極の幅との合計が前記硬貨の厚さ未満であり、かつ、前記溝の幅と前記受信電極の幅との合計が前記硬貨の厚さ未満であるように設定されている。
【００１３】
本発明の更に他の硬貨残留検知装置においては、さらに、前記センサ出力判定部は、前記検知信号が、前記硬貨通路を正常に通過する硬貨を検知したときの検知信号と同じ大きさで、かつ、該検知信号より長い時間継続したときに、前記硬貨通路内に残留する硬貨の存在、及び、前記硬貨通路内の異物の存在を判定する。
【００１４】
本発明の更に他の硬貨残留検知装置においては、さらに、前記検知センサは前記硬貨出金口にも配設され、前記センサ出力判定部は、前記硬貨通路内及び硬貨出金口内に残留する硬貨の存在、並びに、前記硬貨通路内及び硬貨出金口内の異物の存在を判定する。
【発明の効果】
【００１５】
本発明によれば、硬貨残留検知装置は、自動機から出金される硬貨が通過する硬貨通路に静電容量式非接触センサを配設することによって、硬貨の姿勢に係わらず残留した硬貨を確実に検知することができるとともに、前記硬貨通路に挿入された手指等を検知することができるようにして、出金口に蓋部材が取り付けられていても、釣り銭等の硬貨の取り忘れを確実に防止することができ、かつ、自動機から出金される硬貨についての不正行為を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１６】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【００１７】
図３は本発明の第１の実施の形態における自動機を示す図である。
【００１８】
図において、１０は本実施の形態における自動機であり、例えば、コンビニエンスストア、スーパーマーケット等の商店の店舗や屋外に配設されている飲料、タバコ、食品等を販売する自動販売機、鉄道の駅、博物館、テーマパーク等に配設されている切符、入場券、回数券等を販売する券売機、ゲームセンタ等に配設されている遊技用メダル販売機、紙幣を硬貨に両替する両替機、銀行、信用金庫、郵便局等の金融機関の支店等の営業店に配設された現金自動預払機（Ａｕｔｏｍａｔｉｃ Ｔｅｌｌｅｒ Ｍａｃｈｉｎｅ：ＡＴＭ）等であるが、釣銭等として硬貨を出金する装置であれば、いかなる装置であってもよい。ここでは、前記自動機１０が飲料、タバコ、食品等の各種商品を販売する自動販売機であるものとして説明する。
【００１９】
前記自動機１０は、本体前面に配設された操作部５１、商品取出部５２及び硬貨出金口１１を有する。前記操作部５１は、自動機１０の利用者が操作して商品を選択するスイッチ等の商品選択手段、紙幣又は硬貨を入金する貨幣入金口、前記利用者に対するメッセージ、広告等を表示する表示手段、前記利用者に対する警告、音楽等を出力するスピーカ等の音声出力手段等を備える。また、前記商品取出部５２は、利用者が購入した商品が排出される商品排出口、該商品排出口を覆う開閉可能な蓋部材等を備える。
【００２０】
さらに、前記硬貨出金口１１は、釣銭等として前記利用者に支払うために出金される一円玉、五円玉、十円玉、百円玉、五百円玉等の各金種の硬貨が排出される排出口であって、後述される硬貨通路１２の出口端に接続されている。そして、該硬貨通路１２の出口端近傍には、硬貨通路１２内に残留する硬貨の存在を検知することができるとともに、前記硬貨通路１２内に挿入された指、棒、粘着部材等の異物の存在を検知する硬貨残留検知装置としての硬貨残留検知部が配設されている。
【００２１】
次に、該硬貨残留検知部の構成について説明する。
【００２２】
図４は本発明の第１の実施の形態における硬貨残留検知部の構成を示す図、図５は本発明の第１の実施の形態における硬貨通路の断面図である。
【００２３】
図において、１３は、硬貨出金口１１を覆う開閉可能な蓋部材としての出金口蓋である。また、１４は、静電容量式非接触センサから成る検知センサであり、出口端が硬貨出金口１１に接続された硬貨通路１２の出口端近傍において、硬貨通路１２の内壁の外側に配設されている。なお、硬貨通路１２は、自動機１０が有する図示されない出金機の出口と硬貨出金口１１とを接続する通路であり、前記出金機から出金された硬貨が自重によって内部を通過する。
【００２４】
そして、１５は、前記検知センサ１４に接続されたセンサ制御部であり、前記検知センサ１４の動作を制御するとともに、前記検知センサ１４の出力信号を受信する。また、１６は、前記センサ制御部１５に接続されたセンサ出力判定部であり、前記検知センサ１４の出力信号に基づいて硬貨通路１２内における出口端近傍に残留した硬貨又は異物が存在するか否かを判定し、残留した硬貨又は異物が存在する場合には、異常を検知したと判定する。さらに、１７は、前記センサ出力判定部１６に接続された異常状態通知装置であり、前記センサ出力判定部１６が異常を検知したと判定すると、異常を検知した旨を利用者又は自動機１０の周囲の人々に通知する。例えば、操作部５１の表示手段に異常が発生した旨の表示を行わせたり、音声出力手段から警報音を音声出力させることによって、異常を検知した旨を前記利用者又は自動機１０の周囲の人々に通知する。さらに、１８は、前記センサ出力判定部１６に接続された異常状態記録装置であり、前記センサ出力判定部１６が異常を検知したと判定すると、異常を検知した日時等を磁気ディスク、半導体メモリ、記録用紙等の記録媒体に記録する。
【００２５】
また、検知センサ１４は、図５に示されるように、検知面が硬貨通路１２内を向き、かつ、硬貨通路１２の周囲を取り囲むように配設される。
【００２６】
例えば、硬貨通路１２が、図５（ａ）に示されるように、矩（く）形の断面形状を備えるものである場合、検知センサ１４は、４枚の板状部から成り、各板状部は、その検知面が硬貨通路１２内を向くようにして、硬貨通路１２の４つの平板状の側壁の各々と平行になるように、その外側に配設される。これにより、Ｂとして示される硬貨の姿勢がどのようなものであっても、硬貨通路１２内に硬貨が存在することを検知することができる。
【００２７】
また、例えば、硬貨通路１２が、図５（ｂ）に示されるように、円形の断面形状を備えるものである場合、検知センサ１４は、１枚の板状部から成り、その検知面が硬貨通路１２内を向くようにして、硬貨通路１２の湾曲した側壁と平行になるように湾曲した形状にされて、その外側に配設される。
【００２８】
次に、前記検知センサ１４の構成について詳細に説明する。
【００２９】
図１は本発明の第１の実施の形態における検知センサの電極の模式図、図６は本発明の第１の実施の形態における検知センサの構成図である。なお、図１において、（ａ）は硬貨の平面方向の検知センサの断面を示す図、（ｂ）は硬貨の厚さ方向の検知センサの断面を示す図であり、図６において、 (ａ）は平面図であって図４における矢印Ａで示される方向から見た図、（ｂ）は検知センサの断面を示す図である。
【００３０】
ここでは、説明の都合上、検知センサ１４が、図５（ａ）に示されるような矩形の断面形状を備える硬貨通路１２に配設されたものであるものとして説明する。
【００３１】
図１及び６に示されるように、検知センサ１４は、絶縁性材料から成る板状の基板２５、並びに、該基板２５の表面に付着する導電性材料から成る送信電極２１及び受信電極２２を有する。なお、前記検知センサ１４は、基板２５の表面が検知面として硬貨通路１２内を向くように配設される。
【００３２】
そして、前記送信電極２１は、硬貨通路１２内における硬貨及び異物、すなわち、被検知物に電磁波を放射するために、硬貨通路１２の裏面（図１における下面）に対向するように配設される。また、前記受信電極２２は、送信電極２１が放射し、被検知物によって反射された電磁波を受信するために、送信電極２ｌと同様、硬貨通路１２の裏面に対向するように配設される。つまり、前記検知センサ１４は、送信電極２１及び受信電極２２が配設された基板２５の表面が検知面として硬貨通路１２内を向くように配設される。
【００３３】
そして、図６（ａ）に示されるように、前記送信電極２１及び受信電極２２は、、各々が、ジグザグ、九十九折り又は波形状のような平面形状を備え、互いの凹部同士及び凸部同士が噛（か）み合うように配設されている。
【００３４】
また、基板２５の裏面には、図１及び６に示されるように、導電性材料から成る補助電極２３が付着し、さらに、絶縁性材料から成る板状のスペーサ２６を介して、導電性材料から成る板状のシールド電極２４が積層されている。該シールド電極２４は、送信電極２１の裏側から放射される電磁波を遮蔽（へい）するための電極である。また、前記補助電極２３は、送信電極２１とシールド電極２４との間に流れる電流を遮断するための電極である。そして、前記シールド電極２４は、補助電極２３との間にスペーサ２６を挟み込んだ状態で、基板２５の裏面に接着される。
【００３５】
検知センサ１４は、このような構造を有するので、裏面側、すなわち、シールド電極２４側で被検知物を検知することなく、表面側、すなわち、検知面側のみで被検知物を検知する。これにより、Ｂとして示される被検知物としての硬貨の姿勢がどのようなものであっても、硬貨通路１２内に硬貨が存在することを検知することができる。
【００３６】
そして、同種類の電極は、導電パターン、スルーホール等によって互いに接続されている。また、各電極は、センサ制御部１５に接続されており、送信電極２１及び補助電極２３には交流信号が印加され、受信電極２２及びシールド電極２４は接地される。
【００３７】
なお、前記検知センサ１４は、例えば、銅張り積層板（中興化成製）を用いて製造することができる。この場合、基板２５は、テフロン（Ｒ）製の板部材であり、送信電極２１、受信電極２２及び補助電極２３は、銅箔（はく）をエッチング等の方法によってパターニングすることにより作成される。なお、スペーサ２６は、基板２５と同様に、テフロン（Ｒ）製の板部材である。また、シールド電極２４は、例えば、金属板、導電性ゴム、導電性布等から成る。なお、前記検知センサ１４は、これに限らず、いかなる製造方法によって製造されたものであってもよい。
【００３８】
ところで、「発明が解決しようとする課題」において説明したように、硬貨が硬貨通路１２の電極のパターン又は電極間の溝に収まると検知漏れが発生する可能性がある。そこで、硬貨通路１２内に残留する硬貨の検知漏れを防止するためには、硬貨の姿勢及び位置に係わらず、Ｂとして示される硬貨が送信電極２１及び受信電極２２の両方に接近し、送信電極２１から放射される微弱な電磁波が、図１において矢印Ｃで示されるように、硬貨を介して受信電極２２に到達することが必要となる。そのためには、検知センサ１４の送信電極２１及び受信電極２２は、以下の条件を満たす必要がある。
【００３９】
なお、大半の自動販売機では一円玉硬貨及び五円玉硬貨を取り扱わないようになっているが、現金自動預払機等では一円玉硬貨及び五円玉硬貨を取り扱うので、ここでは、硬貨が最小の形状である一円玉硬貨であるものとして説明する。
【００４０】
この場合、硬貨の厚さをＴとし、硬貨の直径をＤとし、送信電極２１の幅をＸとし、受信電極２２の幅をＹとし、送信電極２１と受信電極２２との間の溝をＺとし、送信電極２１の辺をＬとする。なお、厚さＴ、直径Ｄ、幅Ｘ、幅Ｙ、溝Ｚ、辺Ｌはそれぞれ正の数とする。また、一円玉硬貨の場合、厚さＴは約１〔ｍｍ〕であり、直径Ｄは２０〔ｍｍ〕である。
【００４１】
前述されたように、送信電極２１から送出された微弱な電磁波が、図１において矢印Ｃで示されるように、硬貨の姿勢及び位置に係わらず、硬貨を介して受信電極２２に到達するためには、次の式（１）及び（２）を満たすことが条件となる。
【００４２】
Ｘ＋Ｚ＜Ｔ ・・・式（１）
Ｙ＋Ｚ＜Ｔ ・・・式（２）
すなわち、前記送信電極２１及び受信電極２２の寸法及び配置は、式（１）及び（２）を満たすように設定される。
【００４３】
なお、送信電極２１から送出される電磁波は、電極からの高さＨが大きくなるにつれ反比例的に弱くなる。すなわち、残留した硬貨の円周面が電極パターンから遠ざかるにつれて検知しにくくなる。この場合、センサ制御部１５の回路内での増幅度を高くすればよいが、該増幅度を高くすると雑音も大きくなることから、辺ＬはＤ／４程度であることが望ましい。
【００４４】
次に、前記センサ制御部１５の構成について説明する。
【００４５】
図７は本発明の第１の実施の形態におけるセンサ制御部の構成を示す回路図である。
【００４６】
図に示されるように、検知センサ１４に接続されたセンサ制御部１５は、発振回路３１、バッファ回路３２、電流検知抵抗素子３３、シールド線３４、第一差動増幅器３５、バンドパスフィルタ（ＢＰＦ）３６、検波回路（ＡＣ／ＤＣ）３７、ローパスフィルタ（ＬＰＦ）３８、第二差動増幅器４１、アナログ／デジタル（Ａ／Ｄ）変換器４２、ＣＰＵ（中央演算装置）４３及びデジタル／アナログ（Ｄ／Ａ）変換器４４を備えている。
【００４７】
そして、前記発振回路３１は、検知センサ１４に供給して、該検知センサ１４の送信電極２１から電磁波を放射させるための交流電圧を出力する。また、前記バッファ回路３２は、発振回路３１が出力した交流電圧を検知センサ１４に供給するバッファとして機能する。さらに、前記電流検知抵抗素子３３は、検知センサ１４に流れる電流を電圧に変換するための抵抗素子である。なお、前記電流検知抵抗素子３３は、バッファ回路３２の出力端とシールド線３４との間に接続される。
【００４８】
また、該シールド線３４は、バッファ回路３２が出力する交流電圧を検知センサ１４に供給する導電線である。なお、前記シールド線３４は、芯（しん）線３４ａと、該芯線３４ａを被覆する被覆線３４ｂとを備える。前記芯線３４ａの一端は、電流検知抵抗素子３３を介してバッファ回路３２の出力端に接続される。また、前記芯線３４ａの他端は、送信電極２１に接続される。そして、前記被覆線３４ｂの一端は、バッファ回路３２の出力端に電流検知抵抗素子３３を介さずに直接接続される。また、前記被覆線３４ｂの他端は、検知センサ１４の補助電極２３に接続される。
【００４９】
さらに、前記第一差動増幅器３５は、計測用アンプであり、非反転入力端子（＋）及び反転入力端子（−）がともに入力インピーダンスが高く、非反転入力端子（＋）と反転入力端子（−）との電位差に応じた電圧を出力する。そして、前記第一差動増幅器３５の非反転入力端子（＋）は、電流検知抵抗素子３３の一端、すなわち、バッファ回路３２側の端部に接続される。また、前記第一差動増幅器３５の反転入力端子（−）は、電流検知抵抗素子３３の他端、すなわち、送信電極２１側の端部に接続される。したがって、前記第一差動増幅器３５は、電流検知抵抗素子３３の端子間電圧に応じた値の交流電圧信号を出力する。
【００５０】
そして、前記バンドパスフィルタ３６は、第一差動増幅器３５から入力された交流電圧信号のうち、周波数ｆの信号成分、すなわち、発振回路３１と同じ周波数の成分のみを通過させる。前記バンドパスフィルタ３６によって、第一差動増幅器３５が出力する交流電圧信号からノイズ成分を取り除くことができる。
【００５１】
また、前記検波回路３７は、バンドパスフィルタ３６から入力された交流電圧信号を直流電圧信号に変換する。本実施の形態における検波回路３７は、時定数τを１／ｆ程度に設定した全波整流回路である（ｆは発振回路３１の出力周波数である）。
【００５２】
さらに、前記ローパスフィルタ３８は、検波回路３７から入力された直流電圧信号から高周波成分を除去する。このように、前記ローパスフィルタ３８によって、検波回路３７が出力した直流電圧信号からリップル成分を取り除くことができる。
【００５３】
そして、前記第二差動増幅器４１は、非反転入力端子（＋）と反転入力端子（−）との電位差に応じた電圧を出力する。前記第二差動増幅器４１の非反転入力端子（＋）は、ローパスフィルタ３８の出力端に接続される。また、前記第二差動増幅器４１の反転入力端子（−）は、デジタル／アナログ変換器４４の出力端に接続される。後述するように、前記第二差動増幅器４１によって、検知センサ１４の送信電極２１と受信電極２２との間に被検知物が存在していないときの値が零となるように、検波回路３７の出力信号が補正される。前記第二差動増幅器４１が出力した直流電圧信号は、検知信号Ｓｄとして外部に出力される。
【００５４】
また、前記アナログ／デジタル変換器４２は、第二差動増幅器４１が出力した直流電圧信号、すなわち、検知信号Ｓｄを、アナログ信号からデジタル信号に変換する。さらに、前記ＣＰＵ４３は、アナログ／デジタル変換器４２から入力されたデジタル信号に所定のアルゴリズムによる演算処理を施すことによって補正信号Ｓａを生成する。そして、前記ＣＰＵ４３は、生成した補正信号Ｓａを、内部に保存するとともに、デジタル／アナログ変換器４４に出力する。後述するように、前記補正信号Ｓａによって、検知信号Ｓｄが補正される。
【００５５】
さらに、前記デジタル／アナログ変換器４４は、ＣＰＵ４３の出力信号、すなわち、補正信号Ｓａをデジタル信号からアナログ信号に変換する。
【００５６】
本実施の形態における硬貨残留検知部は、以上のような構成を有することによって、硬貨通路１２内に残留する硬貨、硬貨通路１２内に挿入された指、棒、粘着部材等の異物等の被検知物を検知することができる。
【００５７】
次に、前記構成の硬貨残留検知部の動作について説明する。
【００５８】
本実施の形態におけるセンサ制御部１５は、特許文献２に開示されている装置と同様の回路構成を有し、硬貨通路１２内に硬貨、異物等の被検知物が存在しない状態、すなわち、初期状態における電流検知抵抗素子３３の端子間電圧を基準電圧とし、前記電流検知抵抗素子３３の端子間電圧の基準電圧からの変化に基づいて、被検知物を検知する。
【００５９】
次に、センサ制御部１５で被検知物を検知する動作原理について説明する。
【００６０】
検知センサ１４に被検知物が接近する前の状態、すなわち、初期状態において、送信電極２１と受信電極２２との間の静電容量Ｃａは、送信電極２１及び受信電極２２の表面、すなわち、電極面上の空間によって与えられる。また、被検知物が接近していないときには、送信電極２１と受信電極２２との間に流れる電流は打ち消される。
【００６１】
これに対して、電極面に被検知物が接近したときの送信電極２１と受信電極２２との間の静電容量（ここではＣｓとする）は、前記被検知物によって与えられる。一般に、金属の比誘電率は無限大であり、また、人体を水と考えたときの人体の一部の比誘電率は８１程度である。したがって、Ｃａ＜Ｃｓであるから、電極面に硬貨、異物等の被検知物が接近すると、静電容量が増加することになる。
【００６２】
そのため、電極面に被検知物が接近したときには、送信電極２１と受信電極２２との間に流れる電流は増加する。ここで、初期状態に送信電極２１と受信電極２２との間に流れる電流の電流値をＩ0 とし、送信電極２１と受信電極２２との間の静電容量が増加したことによる電流値の増加分をＩS とすると、検知センサ１４の電極面に被検知物が接近することによって、電流検知抵抗素子３３を流れる電流がＩ0 からＩ0 ＋ＩS に増加する。このため、電流検知抵抗素子３３の端子間電位差が増大し、これにより、第一差動増幅器３５の出力も増大する。
【００６３】
前述のように、第一差動増幅器３５は、電流検知抵抗素子３３の端子間電圧に応じた交流電圧信号を出力する。該交流電圧信号は、バンドパスフィルタ３６でノイズ成分が除去され、検波回路３７で交流電圧信号から直流電圧信号に変換され、ローパスフィルタ３８でリップル成分が除去された後、第二差動増幅器４１の非反転入力端子（＋）に入力される。そして、前記第二差動増幅器４１は、入力された直流電圧信号と補正信号Ｓａとの差に応じた電圧を、検知信号Ｓｄとして出力する。ここで、前記補正信号Ｓａは、被検知物が存在しないとき、すなわち、電流検知抵抗素子３３に電流Ｉ0 が流れているときの検知信号Ｓｄが零ボルトとなるように設定されている。したがって、検知信号Ｓｄは、被検知物に流れる電流の増加分の電流値ＩS に応じた値となる。
【００６４】
このような動作を行うことにより、本実施形態における硬貨残留検知装置は、被検知物の存在を検知することができる。
【００６５】
また、前述のように、本実施形態においては、送信電極２１とシールド電極２４との間に補助電極２３を設けるとともに、１個のバッファ回路３２から、異なる配線を介して送信電極２１及び補助電極２３に交流電圧を供給する。したがって、次のような理由によって、被検知物に対する検知精度を高めることができる。
【００６６】
まず、補助電極２３を設ける理由と、異なる配線を介して送信電極２１及び補助電極２３に交流電圧を供給する理由とを説明する。
【００６７】
検知センサ１４が被検知物の検知を行うのは、本来は表面側のみである。しかし、実際には、送信電極２１から裏面側にも電磁波が放出される。したがって、検知センサ１４の裏面側に他の部材が存在する場合に、当該部材と送信電極２１との間に電界が形成されないようにする必要がある。これは、検知センサ１４の裏面側に存在する他の部材と送信電極２１との間に電界が形成されると、当該部材の位置変化に起因して電流検知抵抗素子３３を流れる電流が変動してしまい、誤検知や検知精度悪化の原因になるからである。そのため、検知センサ１４の裏面側には、接地されたシールド電極２４が設けられる。
【００６８】
しかしながら、該シールド電極２４のみを設けた場合、すなわち、補助電極２３を設けない場合には、送信電極２１とシールド電極２４との間に電流が流れてしまうことになる。通常、送信電極２１とシールド電極２４との間の静電容量は、送信電極２１と被検知物との間の静電容量と比べて非常に大きくなる。したがって、送信電極２１とシールド電極２４との間に流れる電流も、送信電極２１と被検知物との間を流れる電流と比較して、非常に大きくなる。そのため、送信電極２１とシールド電極２４との間に電流が流れると、送信電極２１と被検知物との間の電流を精度良く検知することが非常に困難になる。これに対して、送信電極２１とシールド電極２４との間に補助電極２３を設けるとともに、送信電極２１とシールド電極２４との間の電位をほぼ同電位にした場合、検知センサ１４の裏面側に存在する部材の影響をなくしつつ、当該裏面側に流れる電流を非常に小さく抑えることができる。
【００６９】
加えて、本実施の形態においては、異なる配線を介して送信電極２１及び補助電極２３に交流電圧を供給しており、バッファ回路３２と送信電極２１とを接続する配線に電流検知抵抗素子３３が設けられている。すなわち、送信電極２１はシールド線３４の芯線３４ａ及び電流検知抵抗素子３３を介してバッファ回路３２に接続され、補助電極２３はシールド線３４の被覆線３４ｂを介してバッファ回路３２に接続されている。このように、送信電極２１を流れる電流と補助電極２３を流れる電流とは分離されており、前記補助電極２３を流れる電流が電流検知抵抗素子３３を流れることはない。このため、該電流検知抵抗素子３３を流れる電流を小さくすることができ、したがって、送信電極２１から被検知物に流れる電流の検知精度が向上する。
【００７０】
また、本実施の形態における硬貨残留検知部は、１個のバッファ回路３２から異なる配線を介して送信電極２１及び補助電極２３に交流電圧を供給するので、前記送信電極２１から被検知物に流れる電流を精度良く検知することができる。したがって、硬貨残留検知部と同じ装置に搭載された他の部品等の影響を抑制して、被検知物の検知精度を向上させることができる。
【００７１】
さらに、本実施の形態における硬貨残留検知部は、被検知物が検知されていないときの検知信号値を用いて、被検知物が検知されたときの検知信号Ｓｄを補正するので、被検知物の検知精度を向上させることができる。
【００７２】
次に、硬貨通路１２内に残留する硬貨、及び、硬貨通路１２内に挿入された指、棒、粘着部材等の異物を検知する動作について説明する。
【００７３】
通常、硬貨は硬貨通路１２内をある一定の時間内で通過し、この状態を正常とする。
【００７４】
一方、硬貨が通過する前や後、すなわち、出金時以外では被検知物は硬貨通路１２内に存在しない。そのとき、硬貨を抜き取る操作として、硬貨通路１２内に指を挿入したり、棒、粘着テープ等を付着させたりすることが考えられる。そのような操作が行われると、硬貨通路１２内に指、棒、粘着テープ等の異物が存在することになる。そこで、そのような操作によって硬貨通路１２内に硬貨が残留したり、平常時に存在しない異物が検知されたりしたときを異常とする。
【００７５】
また、硬貨が正常に硬貨通路１２を通過したときでも、通過中においては、検知センサ１４が硬貨を検知する。そこで、該硬貨が検知センサ１４の配設された部分を正常に通過する所要時間より長い時間硬貨を検知した場合には、異常と判断する。つまり、センサ出力判定部１６は、センサ制御部１５が出力する検知信号Ｓｄが、硬貨通路１２を正常に通過する硬貨を検知したときの検知信号Ｓｄと同じ大きさで、かつ、該検知信号Ｓｄより長い時間継続したときに、硬貨通路１２内に残留する硬貨の存在、及び、硬貨通路１２内の異物の存在を判定する。なお、通常、硬貨通路１２内に指、棒、粘着テープ等の異物が存在することはない。したがって、硬貨通路１２内の検知センサ１４の配設された部分に指、棒、粘着テープ等の異物があることは、硬貨抜き取りの操作によるものと考えられる。しかし、指、棒、粘着テープ等の異物を検知したときの第二差動増幅器４１の出力と、硬貨を検知したときの第二差動増幅器４１の出力との相違だけで、異常を検知したと判定することは困難である。
【００７６】
そこで、センサ出力判定部１６は、第二差動増幅器４１の出力が、硬貨等の被検知物を検知したときと同等の大きさで、かつ、硬貨が検知センサ１４の配設された部分を正常に通過する所要時間より長い時間継続したときには、硬貨通路１２内に硬貨が残留している、又は、硬貨抜き取りの操作が行われているものとして、異常を検知したと判定する。そして、センサ出力判定部１６が異常を検知したと判定すると、異常状態通知装置１７は異常を検知した旨を通知し、異常状態記録装置１８は、異常を検知した日時等を記録する。
【００７７】
前記異常状態通知装置１７は、音や画像で周囲に通知するものであり、自動機１０に組み込む又は周囲に取り付けるものとする。
【００７８】
また、前記異常状態記録装置１８は、異常状態のあった日時等を記録媒体に記録する。該記録媒体は各種媒体が考えられるが、センサ制御部１５に備えられているＣＰＵ４３においても行うことができる。
【００７９】
なお、清掃や検査の保守時には、通常運転設定から保守設定に切り替えることによって、手、指等を長時間検知しても異常と判断しないようにセンサ機能を一時的に解除することができる。
【００８０】
このように、本実施の形態においては、硬貨通路１２内に残留する硬貨の存在を確実に検知することができるとともに、硬貨通路１２内に存在するはずのない指、棒、粘着部材等の異物の存在を検知することができる。これにより、異常状態を識別することができ、出金される硬貨についての不正行為を防止することができる。
【００８１】
なお、検知センサ１４は、静電容量式非接触センサ以外の非接触センサ、例えば、光学式非接触センサから成るものであってもよいが、その場合、硬貨との位置関係に応じて、検知漏れの可能性がある。検知センサ１４として、静電容量式非接触センサを採用することによって、被検知面全体を１つのセンサにより検知することができる。
【００８２】
さらに、検知センサ１４の電極形状を、図１及び６に示されるようにすることによって、硬貨が硬貨通路１２内において直立状態で残留している場合であっても、硬貨を確実に検知することができる。
【００８３】
次に、本発明の第２の実施の形態について説明する。なお、第１の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第１の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【００８４】
図８は本発明の第２の実施の形態における硬貨残留検知部の構成を示す図である。
【００８５】
本実施の形態において、硬貨残留検知装置は、図に示されるように、硬貨出金口１１用の検知センサ７０を有する。該検知センサ７０は、検知面が硬貨出金口１１内を向き、かつ、硬貨出金口１１の底面の外側を覆うように配設される。硬貨通路１２から硬貨出金口１１に到達した硬貨は、検知センサ７０によって検知される。
【００８６】
なお、該検知センサ７０の構成は、硬貨通路１２用の検知センサ１４と同様であるので、その説明は省略する。また、前記検知センサ１４及び７０は、それぞれセンサ制御部１５に接続される。
【００８７】
次に、本実施の形態におけるセンサ制御部１５の構成について説明する。
【００８８】
図９は本発明の第２の実施の形態におけるセンサ制御部の構成を示す回路図である。
【００８９】
本実施の形態において、センサ制御部１５は、図に示されるように、硬貨通路１２用の検知センサ１４の動作を制御するとともに該検知センサ１４の出力信号を受信する第１センサ制御部１５ａと、硬貨出金口１１用の検知センサ７０の動作を制御するとともに該検知センサ７０の出力信号を受信する第２センサ制御部１５ｂとから成る。なお、前記第１センサ制御部１５ａの構成は、前記第１の実施の形態におけるセンサ制御部１５と同様であるので、その説明を省略する。
【００９０】
硬貨出金口１１用の検知センサ７０に接続された第２センサ制御部１５ｂは、発振回路８１、バッファ回路８２、電流検知抵抗素子８３、シールド線８４、第一差動増幅器８５、バンドパスフィルタ（ＢＰＦ）８６、検波回路（ＡＣ／ＤＣ）８７、ローパスフィルタ（ＬＰＦ）８８、第二差動増幅器９１、アナログ／デジタル（Ａ／Ｄ）変換器９２及びデジタル／アナログ（Ｄ／Ａ）変換器９４を備えている。なお、第２センサ制御部１５ｂは、ＣＰＵ４３を第１センサ制御部１５ａと共有し、前記アナログ／デジタル変換器９２及びデジタル／アナログ変換器９４は、ＣＰＵ４３に接続されている。
【００９１】
そして、前記発振回路８１は、検知センサ７０に供給して、該検知センサ７０の送信電極７１から電磁波を放射させるための交流電圧を出力する。また、前記バッファ回路８２は、発振回路８１が出力した交流電圧を検知センサ７０に供給するバッファとして機能する。さらに、前記電流検知抵抗素子８３は、検知センサ７０に流れる電流を電圧に変換するための抵抗素子である。なお、前記電流検知抵抗素子８３は、バッファ回路８２の出力端とシールド線８４との間に接続される。
【００９２】
また、該シールド線８４は、バッファ回路８２が出力する交流電圧を検知センサ７０に供給する導電線である。なお、前記シールド線８４は、芯線８４ａと、該芯線８４ａを被覆する被覆線８４ｂとを備える。前記芯線８４ａの一端は、電流検知抵抗素子８３を介してバッファ回路８２の出力端に接続される。また、前記芯線８４ａの他端は、送信電極７１に接続される。そして、前記被覆線８４ｂの一端は、バッファ回路８２の出力端に電流検知抵抗素子８３を介さずに直接接続される。また、前記被覆線８４ｂの他端は、検知センサ７０の補助電極７３に接続される。
【００９３】
さらに、前記第一差動増幅器８５は、計測用アンプであり、非反転入力端子（＋）及び反転入力端子（−）がともに入力インピーダンスが高く、非反転入力端子（＋）と反転入力端子（−）との電位差に応じた電圧を出力する。そして、前記第一差動増幅器８５の非反転入力端子（＋）は、電流検知抵抗素子８３の一端、すなわち、バッファ回路８２側の端部に接続される。また、前記第一差動増幅器８５の反転入力端子（−）は、電流検知抵抗素子８３の他端、すなわち、送信電極７１側の端部に接続される。したがって、前記第一差動増幅器８５は、電流検知抵抗素子８３の端子間電圧に応じた値の交流電圧信号を出力する。
【００９４】
そして、前記バンドパスフィルタ８６は、第一差動増幅器８５から入力された交流電圧信号のうち、周波数ｆの信号成分、すなわち、発振回路８１と同じ周波数の成分のみを通過させる。前記バンドパスフィルタ８６によって、第一差動増幅器８５が出力する交流電圧信号からノイズ成分を取り除くことができる。
【００９５】
また、前記検波回路８７は、バンドパスフィルタ８６から入力された交流電圧信号を直流電圧信号に変換する。本実施の形態における検波回路８７は、時定数τを１／ｆ程度に設定した全波整流回路である（ｆは発振回路８１の出力周波数である）。
【００９６】
さらに、前記ローパスフィルタ８８は、検波回路８７から入力された直流電圧信号から高周波成分を除去する。このように、前記ローパスフィルタ８８によって、検波回路８７が出力した直流電圧信号からリップル成分を取り除くことができる。
【００９７】
そして、前記第二差動増幅器９１は、非反転入力端子（＋）と反転入力端子（−）との電位差に応じた電圧を出力する。前記第二差動増幅器９１の非反転入力端子（＋）は、ローパスフィルタ８８の出力端に接続される。また、前記第二差動増幅器９１の反転入力端子（−）は、デジタル／アナログ変換器９４の出力端に接続される。後述するように、前記第二差動増幅器９１によって、検知センサ７０の送信電極７１と受信電極７２との間に被検知物が存在していないときの値が零となるように、検波回路８７の出力信号が補正される。前記第二差動増幅器９１が出力した直流電圧信号は、検知信号Ｓｄ２として外部に出力される。
【００９８】
また、前記アナログ／デジタル変換器９２は、第二差動増幅器９１が出力した直流電圧信号、すなわち、検知信号Ｓｄ２を、アナログ信号からデジタル信号に変換する。さらに、前記ＣＰＵ４３は、アナログ／デジタル変換器９２から入力されたデジタル信号に所定のアルゴリズムによる演算処理を施すことによって補正信号Ｓａ２を生成する。そして、前記ＣＰＵ４３は、生成した補正信号Ｓａ２を、内部に保存するとともに、デジタル／アナログ変換器９４に出力する。後述するように、前記補正信号Ｓａ２によって、検知信号Ｓｄ２が補正される。
【００９９】
さらに、前記デジタル／アナログ変換器９４は、ＣＰＵ４３の出力信号、すなわち、補正信号Ｓａ２をデジタル信号からアナログ信号に変換する。
【０１００】
本実施の形態における硬貨残留検知部は、以上のような構成を有することによって、硬貨出金口１１内に残留する硬貨を検知することができる。
【０１０１】
次に、本実施の形態における硬貨残留検知部の動作について説明する。
【０１０２】
なお、検知センサ１４及び７０の各々が、残留した硬貨を検知する際におけるセンサ制御部１５、センサ出力判定部１６、異常状態通知装置１７及び異常状態記録装置１８の動作については、前記第１の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【０１０３】
本実施の形態において、センサ出力判定部１６は、硬貨通路１２用の検知センサ１４又は硬貨出金口１１用の検知センサ７０の少なくとも一方が検知状態にあるときに、異常を検知したと判定する。
【０１０４】
このように、本実施の形態においては、硬貨通路１２に検知センサ１４が配設されるとともに、硬貨出金口１１にも検知センサ７０が配設されている。これにより、硬貨通路１２内に存在する残留硬貨及び異物の存在を検知することができるとともに、硬貨出金口１１内に存在する残留硬貨及び異物の存在を検知することができる。したがって、利用者が釣銭等の出金された硬貨を取り忘れることを確実に防止することができるとともに、出金される硬貨についての不正行為を防止することができる。
【０１０５】
なお、前記第１の実施の形態においては、本発明を自動販売機の硬貨通路１２に適用した例について説明したが、本発明は他の自動機、例えば、現金自動預払機や遊技機の硬貨通路にも適用可能である。
【０１０６】
また、前記第２の実施の形態においては、本発明を自動販売機の硬貨通路１２及び硬貨出金口１１に適用した例を示したが、本発明は他の自動機、例えば、現金自動預払機や遊技機の硬貨通路及び硬貨出金口にも適用可能である。
【０１０７】
さらに、前記第１及び第２の実施の形態においては、硬貨通路１２用の検知センサ１４及び硬貨出金口１１用の検知センサ７０の制御を１つのセンサ制御部１５で行う場合について説明したが、硬貨通路１２用の検知センサ１４及び硬貨出金口１１用の検知センサ７０の制御をそれぞれ別個のセンサ制御部で行うようにすることもできる。
【０１０８】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【０１０９】
【図１】本発明の第１の実施の形態における検知センサの電極の模式図である。
【図２】従来の硬貨残留検知装置が有する検知センサの構成図である。
【図３】本発明の第１の実施の形態における自動機を示す図である。
【図４】本発明の第１の実施の形態における硬貨残留検知部の構成を示す図である。
【図５】本発明の第１の実施の形態における硬貨通路の断面図である。
【図６】本発明の第１の実施の形態における検知センサの構成図である。
【図７】本発明の第１の実施の形態におけるセンサ制御部の構成を示す回路図である。
【図８】本発明の第２の実施の形態における硬貨残留検知部の構成を示す図である。
【図９】本発明の第２の実施の形態におけるセンサ制御部の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【０１１０】
１０ 自動機
１１ 硬貨出金口
１２ 硬貨通路
１４、７０ 検知センサ
１５ センサ制御部
１５ａ 第１センサ制御部
１５ｂ 第２センサ制御部
１６ センサ出力判定部
２１、７１ 送信電極
２２、７２ 受信電極
【特許請求の範囲】
【請求項１】
（ａ）自動機の硬貨出金口に接続された硬貨通路に配設された静電容量式非接触センサである検知センサと、
（ｂ）該検知センサの動作を制御するとともに、前記検知センサの出力信号に応じた検知信号を出力するセンサ制御部と、
（ｃ）前記検知信号に基づいて前記硬貨通路内に残留する硬貨の存在、及び、前記硬貨通路内の異物の存在を判定するセンサ出力判定部とを有することを特徴とする硬貨残留検知装置。
【請求項２】
前記検知センサは、複数の送信電極及び受信電極を備え、
前記送信電極及び受信電極の寸法及び配置は、硬貨の姿勢及び位置に係わらず、前記送信電極から送出された電磁波が硬貨を介して受信電極に到達するように設定されている請求項１に記載の硬貨残留検知装置。
【請求項３】
前記送信電極及び受信電極の寸法及び配置は、前記送信電極と受信電極との間の溝の幅と前記送信電極の幅との合計が前記硬貨の厚さ未満であり、かつ、前記溝の幅と前記受信電極の幅との合計が前記硬貨の厚さ未満であるように設定されている請求項２に記載の硬貨残留検知装置。
【請求項４】
前記センサ出力判定部は、前記検知信号が、前記硬貨通路を正常に通過する硬貨を検知したときの検知信号と同じ大きさで、かつ、該検知信号より長い時間継続したときに、前記硬貨通路内に残留する硬貨の存在、及び、前記硬貨通路内の異物の存在を判定する請求項１〜３のいずれか１項に記載の硬貨残留検知装置。
【請求項５】
前記検知センサは前記硬貨出金口にも配設され、前記センサ出力判定部は、前記硬貨通路内及び硬貨出金口内に残留する硬貨の存在、並びに、前記硬貨通路内及び硬貨出金口内の異物の存在を判定する請求項１〜４のいずれか１項に記載の硬貨残留検知装置。
【請求項１】
（ａ）自動機の硬貨出金口に接続された硬貨通路に配設された静電容量式非接触センサである検知センサと、
（ｂ）該検知センサの動作を制御するとともに、前記検知センサの出力信号に応じた検知信号を出力するセンサ制御部と、
（ｃ）前記検知信号に基づいて前記硬貨通路内に残留する硬貨の存在、及び、前記硬貨通路内の異物の存在を判定するセンサ出力判定部とを有することを特徴とする硬貨残留検知装置。
【請求項２】
前記検知センサは、複数の送信電極及び受信電極を備え、
前記送信電極及び受信電極の寸法及び配置は、硬貨の姿勢及び位置に係わらず、前記送信電極から送出された電磁波が硬貨を介して受信電極に到達するように設定されている請求項１に記載の硬貨残留検知装置。
【請求項３】
前記送信電極及び受信電極の寸法及び配置は、前記送信電極と受信電極との間の溝の幅と前記送信電極の幅との合計が前記硬貨の厚さ未満であり、かつ、前記溝の幅と前記受信電極の幅との合計が前記硬貨の厚さ未満であるように設定されている請求項２に記載の硬貨残留検知装置。
【請求項４】
前記センサ出力判定部は、前記検知信号が、前記硬貨通路を正常に通過する硬貨を検知したときの検知信号と同じ大きさで、かつ、該検知信号より長い時間継続したときに、前記硬貨通路内に残留する硬貨の存在、及び、前記硬貨通路内の異物の存在を判定する請求項１〜３のいずれか１項に記載の硬貨残留検知装置。
【請求項５】
前記検知センサは前記硬貨出金口にも配設され、前記センサ出力判定部は、前記硬貨通路内及び硬貨出金口内に残留する硬貨の存在、並びに、前記硬貨通路内及び硬貨出金口内の異物の存在を判定する請求項１〜４のいずれか１項に記載の硬貨残留検知装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【公開番号】特開２００９−１９３０９０（Ｐ２００９−１９３０９０Ａ）
【公開日】平成２１年８月２７日（２００９．８．２７）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−２９８９５（Ｐ２００８−２９８９５）
【出願日】平成２０年２月１２日（２００８．２．１２）
【出願人】（００００００２９５）沖電気工業株式会社 (6,645)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年８月２７日（２００９．８．２７）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年２月１２日（２００８．２．１２）
【出願人】（００００００２９５）沖電気工業株式会社 (6,645)
【Ｆターム（参考）】
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