説明

硬貨識別装置及び硬貨識別方法

【課題】装置コストを維持しつつ、硬貨の外径検出及び画像鑑別を行うに際して質の良い硬貨画像を得ることを課題とする。
【解決手段】硬貨識別装置10では、円環状に配置されたLEDを複数の領域A、B、C及びDに4分割し、該4分割した各分割領域A、B、C及びDごとに硬貨画像を撮像する時の照明光の発光光量を変えてLED群110、LED群120、LED群130及びLED群140を発光させる。この時、分割領域AのLED群110の発光光量を他の分割領域B、C及びDに配したLED群120、130及び140に比較して大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨を搬送路の一端に寄せて搬送しながら、円環状に配した光源から光を照射して硬貨の画像を撮像する硬貨識別装置及び硬貨識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、硬貨の真偽および流通硬貨か否かならびに硬貨の金種を判別するため、硬貨の通路上に照明装置を設けておき、搬送される硬貨に光を照射して硬貨画像を撮像し、この硬貨画像に基づいて硬貨を判別する硬貨判別装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、硬貨の中央部に搬送ベルトを当てて硬貨を搬送しつつ、光源を円環状に配置した照明装置を通じて硬貨に光を照射し、硬貨の画像を撮像する技術が開示されている。このように、硬貨の中央部を支持しながら硬貨を搬送する場合には、硬貨の径が大小しても均等に光を照射することができる。
【0004】
また、特許文献3には、照明光の光源から被写体照明部に到る光路中に、光源から被写体照明部への光路長に応じ、光路長が長くなるに従い被写体照明部への光到達度が増すように調節した透過率分布型フィルタまたは反射率分布型ミラーなどの光ガイド部材を設けることにより、被写体である硬貨に均一な光を照射する照明装置が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特許第3652545号公報
【特許文献2】特許第3652547号公報
【特許文献3】特開平8−114427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、硬貨を搬送するにあたっては、硬貨の側面の形状を検出するギザセンサ等を機能させたり、また、通路上で硬貨を金種ごとに精度良く振り分けるためにも、搬送される硬貨を通路の片側に沿って搬送させたいというニーズが広く存在する。
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1及び特許文献2において、硬貨を搬送するに際して硬貨を通路の一端に寄せて搬送させた場合には、硬貨の径が小径である場合に硬貨に対する照明が不均一になるため、硬貨の外径検出及び画像鑑別を行うに際して質が低下した硬貨画像しか得ることができないという問題があった。
【0008】
すなわち、異なる複数の径が混在する硬貨を片寄せして照明を当てる場合には、1円硬貨等の小径の硬貨に合せて光源を配置したのでは大径の硬貨のエッジ部分に照明が当らないため、500円硬貨等の大径の硬貨に合せて光源を円環状に配置することとなるが、この場合、小径の硬貨に対しては、当該硬貨の反片寄せ側のエッジ部分と反片寄せ側の光源とが乖離してしまうため、反片寄せ側のエッジ部分に十分な光量が照射されず、片寄せ側と反片寄せ側で照明が不均一になってしまう。
【0009】
また、上記特許文献3においては、照明光の光到達度を調節するために透過率分布型フィルタまたは反射率分布型ミラーなどの光ガイド部材を設ける必要があり、かかる微細な細工が必要な部材を追加することによって装置コストが高騰するとともに、撮像部自体が大型化してしまうという問題がある。
【0010】
以上のように、硬貨を搬送するに際して硬貨を通路の一端に寄せて搬送させる場合に、いかにして余計な部材を追加せずに片寄せ側と反片寄せ側とで照明が不均一になる事態を防止するかが重要な課題となっている。
【0011】
そこで、本発明は、上述した従来技術による課題(問題点)を解消するためになされたものであり、硬貨を搬送するに際して硬貨を通路の一端に寄せて搬送させる場合に、余計な部材を追加せずに片寄せ側と反片寄せ側とで照明が不均一になる事態を防止し、もって装置コストを維持しつつ、硬貨の外径検出及び画像鑑別を行うに際して質の良い硬貨画像を得ることができる硬貨識別装置及び硬貨識別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る硬貨識別装置は、硬貨を搬送路の一端に寄せて搬送しながら、円環状に配した光源から光を照射して前記硬貨の画像を撮像する硬貨識別装置であって、前記円環状の光源を複数の領域に分割し、該分割した各領域ごとに前記硬貨画像を撮像する時の照明光の発光光量を変えて前記光源を発光させる発光制御手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る硬貨識別装置は、上記の発明において、前記光源がLEDであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る硬貨識別装置は、上記の発明において、前記発光制御手段は、前記硬貨が片寄せされる搬送路の一端から離れた位置の領域ほど発光光量が多くなるように前記光源を発光させることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る硬貨識別装置は、上記の発明において、前記発光制御手段は、各領域の光源に供給する発光電流、各領域の光源を発光させる発光時間もしくはこれらの両方を変化させることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る硬貨識別装置は、上記の発明において、前記硬貨の金種に対応付けて各領域の光源に設定された発光光量の設定情報を記憶する設定情報記憶手段と、前記硬貨の金種の判別結果を取得する判別結果取得手段とをさらに備え、前記発光制御手段は、前記設定情報記憶手段によって記憶された発光光量の設定情報のうち、前記判別結果取得手段によって判別結果として取得された硬貨の金種に対応付けられた設定情報に基づいて各領域の光源を発光させることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る硬貨識別装置は、上記の発明において、前記光源近傍の温度を検知する温度検知手段をさらに備え、前記発光制御手段は、前記温度検知手段によって検知された光源近傍の温度に応じて前記光源の発光時間または発光電流を変化させることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る硬貨識別方法は、硬貨を搬送路の一端に寄せて搬送しながら、円環状に配した光源から光を照射して前記硬貨の画像を撮像する硬貨識別方法であって、前記円環状の光源を複数の領域に分割し、該分割した各領域ごとに前記硬貨画像を撮像する時の照明光の発光光量を変えて前記光源を発光させる発光制御工程を含んだことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る硬貨識別方法は、上記の発明において、前記硬貨の金種に対応付けて各領域の光源に設定された発光光量の設定情報を設定情報記憶手段に格納する設定情報格納工程と、前記硬貨の金種の判別結果を取得する判別結果取得工程とをさらに含み、前記発光制御工程は、前記設定情報記憶手段によって記憶された発光光量の設定情報のうち、前記判別結果取得工程によって判別結果として取得された硬貨の金種に対応付けられた設定情報に基づいて各領域の光源を発光させることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る硬貨識別方法は、上記の発明において、前記光源近傍の温度を検知する温度検知工程をさらに含み、前記発光制御工程は、前記温度検知工程によって検知された光源近傍の温度に応じて前記光源の発光時間または発光電流を変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、円環状の光源を複数の領域に分割し、該分割した各領域ごとに硬貨画像を撮像する時の照明光の発光光量を変えて光源を発光させるように構成したので、硬貨を搬送するに際して硬貨を通路の一端に寄せて搬送させる場合に、余計な部材を追加せずに片寄せ側と反片寄せ側とで照明が不均一になる事態を防止することができ、装置コストを維持しつつ、硬貨の外径検出及び画像鑑別を行うに際して質の良い硬貨画像を得ることが可能になるという効果を奏する。
【0022】
また、本発明によれば、光源をLEDで構成したので、キセノンランプやLDなどの他の光源よりもコストを低減することが可能になるという効果を奏する。
【0023】
また、本発明によれば、硬貨が片寄せされる搬送路の一端から離れた位置の領域ほど発光光量が多くなるように光源を発光させるように構成したので、片寄せされる小径硬貨の反片寄せ側のエッジ部分に十分な強度の照明を当てることが可能になるという効果を奏する。
【0024】
また、本発明によれば、各領域の光源に供給する発光電流、各領域の光源を発光させる発光時間もしくはこれらの両方を変化させるように構成したので、各領域の光源ごとに発光光量を変化させることが可能になるという効果を奏する。
【0025】
また、本発明によれば、硬貨の金種に対応付けて各領域の光源に設定された発光光量の設定情報を記憶しておき、硬貨の金種の判別結果を取得し、記憶した発光光量の設定情報のうち、判別結果として取得した硬貨の金種に対応付けられた設定情報に基づいて各領域の光源を発光させるように構成したので、硬貨の金種特性に適合した発光光量で光源を発光させるとともに、照明が不均一になる事態を防止するための発光制御を小径硬貨のみに選択的に適用することが可能になるという効果を奏する。
【0026】
また、本発明によれば、光源近傍の温度を検知し、検知した光源近傍の温度に応じて光源の発光時間または発光電流を変化させるように構成したので、たとえば硬貨の連続進入など予定の発光光量を得るのが困難な阻害要因が生じた場合でも、硬貨画像を撮像するにあたって好適な発光光量の照明光を得ることが可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る硬貨識別装置及びその方法の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下では、日本硬貨を用いる場合について説明することとする。
【実施例】
【0028】
まず、本実施例に係る硬貨識別装置の概要を説明する。図1は、本実施例に係る硬貨識別装置の概要を説明するための説明図である。本実施例に係る硬貨識別装置10は、同図に示すように、硬貨を搬送路の一端に寄せて搬送しながら、円環状に配したLEDから光を照射して硬貨の画像を撮像するものである。
【0029】
このように硬貨を片寄せして搬送する際には、上記の従来技術で説明したように、500円硬貨のような大きい径の硬貨や1円硬貨のような小さい径の硬貨など、大小様々な径の硬貨が同一搬送路上で搬送されることが原因となり、硬貨画像の撮像時に円環状に配したLEDから光を照射しても、1円硬貨のような小径の硬貨を撮像する場合には照明が不均一になってしまうという問題がある。
【0030】
すなわち、硬貨識別装置10では、500円硬貨等の大径の硬貨に合せて円環状に配置されたLED群110〜140により1円硬貨に照明を当てた際に、当該1円硬貨の反片寄せ側のエッジ部分と反片寄せ側のLED群110とが乖離してしまうため、反片寄せ側のエッジ部分に十分な光量が照射されない。
【0031】
そこで、本実施例に係る硬貨識別装置10では、円環状の光源を複数の領域A、B、C及びDに4分割し、該4分割した各分割領域A〜Dごとに硬貨画像を撮像する時の照明光の発光光量を変えてLED群110、120、130及び140を発光させることとしている。
【0032】
つまり、硬貨識別装置10では、片寄せされる小径硬貨の反片寄せ側のエッジ部分に十分な強度の照明を当てるために、本来的にはそのエッジ部分に照明を供給すべき分割領域AのLED群110の発光光量を他の分割領域B、C及びDに配したLED群120、130及び140に比較して大きくしている。
【0033】
図1の例で言えば、上記の従来技術のように、LED群110、120、130及び140から同一の光量の照明を1円硬貨に当てた場合には、円環状に配されたLEDの中心部に1円硬貨の反片寄せ側のエッジ部分が位置することになり、反片寄せ側のエッジ部分に当たる照明が暗くなってしまう。
【0034】
その一方で、本実施例のように、分割領域AのLED群110の発光光量を他の分割領域B、C及びDに配したLED群120、130及び140に比較して大きくすれば、1円硬貨の反片寄せ側のエッジ部分に十分な強度の照明が当り、1円硬貨全体に照明を均一に当てることができる。
【0035】
このように、本実施例では、各分割領域A〜Dごとに硬貨画像を撮像する時の照明光の発光光量を変えてLED群110、120、130及び140を発光させることで、硬貨を搬送するに際して硬貨を通路の一端に寄せて搬送させる場合に、小径硬貨で生じる片寄せ側と反片寄せ側とで照明が不均一になることを防止できる。さらに、かかる発光制御をソフトウェアにより実現すれば、余計な部材を追加する必要もない。
【0036】
したがって、本実施例では、装置コストを維持しつつ、硬貨の外径検出及び画像鑑別を行うに際して質の良い硬貨画像を得ることが可能になる。
【0037】
続いて、本実施例に係る硬貨識別装置の構成について説明する。図2は、本実施例に係る硬貨識別装置の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、この硬貨識別装置10は、搬送ベルト11aと、搬送駆動部12と、磁気センサ13と、画像センサ100と、記憶部14と、制御部15とを有する。
【0038】
搬送ベルト11aは、硬貨を押圧支持する機構であり、搬送駆動部12は、硬貨の中央部に当てられた搬送ベルト11aを進行方向に繰り出すことにより硬貨を搬送する機構である。
【0039】
磁気センサ13は、搬送ベルト11aによって搬送される硬貨の磁気特性を検出するものあり、予め記憶しておいた金種ごとの磁気特性と比較することにより搬送硬貨の金種を判別する。
【0040】
ここで、図3を用いて、硬貨が搬送される際の装置動作を簡単に説明する。図3に示すように、硬貨を搬送路11bの一端(片寄せ側)に片寄せするとともに、硬貨の中央部を搬送ベルト11aで支持しながら、搬送駆動部12によって搬送ベルト11aを進行方向に繰り出して硬貨を搬送する。そして、硬貨を磁気センサ13の近傍まで搬送すると、磁気センサ13の信号を用いて硬貨の金種を判別し、その判別結果を制御部15に出力する。その後、硬貨が磁気センサ13を通過して画像センサ100に設けられたタイミングセンサ160に至ると、タイミングセンサ160によって硬貨が撮像範囲の好位置に進入したことが検知されるので、そのタイミングでLEDを発光させ硬貨を画像センサ100により撮像する。
【0041】
画像センサ100は、LED群110、120、130及び140と、LED駆動部115、125、135及び145と、温度センサ150と、タイミングセンサ160と、撮像デバイス170とを有する。
【0042】
LED群110、120、130及び140は、LED駆動部115、125、135及び145それぞれからの電流の供給に応答して発光する発光ダイオードなどの光源である。例えば、図1に示すように、搬送路11bの面に正対して円環状にLEDが配置されており、このLEDアレイが分割領域A、分割領域B、分割領域C及び分割領域Dに4分割されている。なお、LED群110は分割領域A、LED群120は分割領域B、LED群130は分割領域C、そしてLED群140は分割領域Dにそれぞれ対応している。
【0043】
LED駆動部115、125、135及び145は、後述する発光制御部15aからの指示に基づいてLED群110、120、130及び140それぞれに電流を供給する駆動回路である。なお、本実施例では、図示しないコンデンサ等により各々のLED群110〜140に略一定の電圧を印加しておき、発光制御部15aから発光指示を受け付けた場合にだけトランジスタ等によりスイッチングして電力をLED群110〜140に供給するものとする。
【0044】
このように、光源としてLEDを採用することとしたのは、キセノンランプやLD(Laser diode)などの他の光源よりもコスト面において優れているからである。
【0045】
タイミングセンサ160は、硬貨が搬送路11b上の撮像範囲に進入したことを検知するセンサである。具体的には、図4に示すように、発光素子160a及び受光素子160bから構成され、搬送される硬貨が発光素子160a及び受光素子160b間に到達して発光素子160aから受光素子160bに照射される光が遮光されると、発光タイミングを制御部15内の発光制御部15aに通知する。
【0046】
撮像デバイス170は、硬貨を撮像することにより画素単位の濃度データを読取るCCD(Charge Coupled Devices)などのデバイスである。具体的には、図4に示す光学レンズ170aによって撮像範囲に入った硬貨の像が撮像素子170bの受光平面に結像されており、LED群110、120、130及び140による照明が硬貨に照射されると、CCD基板170cでは、撮像素子170bを介して硬貨の反射光を受光し、その反射光を光電変換してデジタル信号を制御部15に出力する。なお、本実施例では、CCDセンサを用いることとしたが、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)など他のデバイスを用いることもできる。
【0047】
記憶部14は、制御部15による各種処理に必要なデータ(例えば、判別時の参照硬貨画像等)およびプログラムを記憶する不揮発性メモリ等の記憶デバイスであり、併せて各分割領域のLED群に割り当てられた発光量を管理する発光量テーブル14aを記憶する。
【0048】
発光量テーブル14aは、図5に示すように、硬貨の金種ごとに各分割領域A、B、C及びDの光源の発光時間を記憶する。図5に示した例では、金種Sの場合には、分割領域AのLED群110には発光時間a1、分割領域BのLED群120には発光時間b1、分割領域CのLED群130には発光時間c1、さらに、分割領域DのLED群140には発光時間d1がそれぞれ設定されている。
【0049】
ここで、各分割領域A、B、C及びDにおける発光時間は、金種ごとに異なる硬貨の径に基づき設定されたものであり、500円硬貨などの大きい径の硬貨については分割領域A、B、C及びD間の発光時間に特に差を設けていない一方で、1円硬貨などの小さい径の硬貨については分割領域B、C及びDに比べて分割領域Aの発光時間を多くしている。
【0050】
すなわち、大きい径の硬貨の場合には、当該硬貨の反片寄せ側のエッジ部分と反片寄せ側のLED群110にズレが発生せず、各分割領域間で発光光量に差を設けずとも硬貨に均一に光があてられることから、各分割領域A〜Dの発光時間a1、b1、c1及びd1に特に差を設けていない。
【0051】
一方、小さい径の硬貨の場合には、図1を用いて上述したように、当該硬貨の反片寄せ側のエッジ部分と反片寄せ側のLED群110にズレが発生するので、このズレを補うべく、反片寄せ側に配置されているLED群110の発光時間a1については他のLED群120、130及び140の発光時間b1、c1及びd1よりも大きく設定している。
【0052】
制御部15は、硬貨識別装置10を全体制御する制御部であり、発光制御部15aと、判別部15bとを有する。実際には、これらの機能部に対応するプログラムを図示しないROMや不揮発性メモリに記憶しておき、これらのプログラムをCPUやMPU等にロードして実行し、発光制御部15a及び判別部15bにそれぞれ対応するプロセスを実行させることになる。
【0053】
発光制御部15aは、発光量テーブル14aを用いて、LED群110、120、130及び140の発光制御を行う処理部である。具体的には、磁気センサ13から硬貨の金種判別結果を受け付けると、判別結果として得られた金種Sに対応する各分割領域A〜Dの発光時間a1、b1、c1及びd1を発光量テーブル14aから読み出し、該読み出した各分割領域A〜Dごとの発光時間a1、b1、c1及びd1をLED駆動部115、125、135及び145それぞれに通知してLED群110、120、130及び140を発光させる。
【0054】
例えば、磁気センサ13による金種判別結果が大きい径の硬貨である場合には、LED群110、120、130及び140がドライブされるときの発光時間は、a1=b1=c1=d1であるため、図6に示すように、各LED群110、120、130及び140が同じ時間の間点灯する。
【0055】
一方、磁気センサ13による金種判別結果が小さい径の硬貨である場合には、LED群110、120、130及び140がドライブされるときの発光時間は、a1>b1=c1=d1となっており、図7に示すように、分割領域AのLED群110だけが分割領域B、C及びDのLED群120、130及び140よりも長い時間の間点灯する。
【0056】
このように、本実施例では、反片寄せ側のLED群の発光時間と他の箇所に配したLED群の発光時間とを変化させることで、光源に供給する電流またはその電流を制限する抵抗を可変にせずとも簡易なソフトウェア構成の改良で照明が不均一になる事態を防止することができるようにしている。
【0057】
ここで、LED群を発光させるに際しての状況は、いつも一定の環境で行われる訳ではない。例えば、LED駆動部115、125、135及び145内では電圧を一定に保つようにコンデンサによって充電がなされるが、硬貨が連続的に進入した場合には、各LED群110、120、130及び140を連続的に発光するため、十分に充電されておらず電圧が定常状態よりも低い状態で発光させざるを得ない状況が起こる。
【0058】
このような場合には、発光量テーブル14aに記憶されている各分割領域A〜Dの発光時間a1、b1、c1及びd1をそのまま用いていたのでは、電圧を定常状態とした時の発光光量でLED群110、120、130及び140を発光させることは困難である。
【0059】
このため、発光制御部15aは、LED駆動部115、125、135及び145から電圧値を取得して発光時間a1、b1、c1及びd1を補正することとしている。
【0060】
すなわち、各々のLED駆動部における電圧値が定常状態の電圧値から設定された電圧値適正範囲内である場合には、発光量テーブル14aから読み出した発光時間a1、b1、c1及びd1をそのまま利用する。また、電圧値適正範囲よりも低い場合には、定常状態の電圧値と同等の発光光量が得られる程度に発光時間a1、b1、c1及びd1よりも長い発光時間をそれぞれ再設定する。そして、コンデンサ等の異常により電圧値適正範囲よりも電圧値が高くなった場合には、定常状態の電圧値と同等の発光光量が得られる程度に発光時間a1、b1、c1及びd1よりも短い発光時間をそれぞれ再設定する。
【0061】
また、硬貨が連続的に進入した場合や気温が高い場合には、LED群110、120、130及び140の温度が定常状態の温度(間欠的にLEDが点灯される適正な温度)よりも上昇し、その場合には、LEDの発光効率が低下するおそれがある。
【0062】
このことから、発光制御部15aは、温度センサ150からLED近傍の温度を取得して発光時間a1、b1、c1及びd1を補正することとしている。
【0063】
すなわち、温度センサ150によって検知された温度が定常状態の温度から設定された温度適正範囲内である場合には、発光量テーブル14aから読み出した発光時間a1、b1、c1及びd1をそのまま利用する。また、温度適正範囲よりも高い場合には、定常状態の温度と同等の発光光量が得られる程度に発光時間a1、b1、c1及びd1よりも長い発光時間をそれぞれ再設定する。そして、天候や空調等の影響により温度適正範囲よりも温度が低くなった場合には、定常状態の電圧値と同等の発光光量が得られる程度に発光時間a1、b1、c1及びd1よりも短い発光時間をそれぞれ再設定する。
【0064】
このように、LED駆動部115、125、135及び145の電圧値やLED群110、120、130及び140の温度によって発光時間を補正することで、たとえば硬貨の連続進入など予定の発光光量を得るのが困難な阻害要因が生じた場合でも、硬貨画像を撮像するにあたって好適な発光光量の照明光を得ることが可能になる。
【0065】
判別部15bは、画像センサ100によって撮像された硬貨画像に基づいて硬貨の金種及び真偽を判別する処理部である。具体的には、磁気センサ13による金種判別結果として得られた金種に該当する参照硬貨画像を記憶部14から読み出し、画像センサ100によって撮像された硬貨画像と参照硬貨画像とを照合して硬貨の金種及び真偽を判別する。
【0066】
次に、本実施例に係る硬貨識別装置の処理の流れを説明する。図8は、本実施例に係る発光制御処理に関する磁気センサ、発光制御部、タイミングセンサ及びLED駆動部間の制御シーケンスを示す図である。
【0067】
同図に示すように、磁気センサ13によって硬貨の金種が判別され(ステップS101)、その金種判別結果が発光制御部15aに通知されると(ステップS102)、発光制御部15aは、判別結果として得られた金種Sに対応する各分割領域A〜Dの発光時間a1、b1、c1及びd1を発光量テーブル14aから読み出す(ステップS103)。
【0068】
続いて、発光制御部15aは、LED駆動部115、125、135及び145から電圧値を取得するとともに(ステップS104)、温度センサ150からLED近傍の温度を取得する(ステップS105)。
【0069】
そして、発光制御部15aは、各々のLED駆動部の電圧値及びLED近傍の温度に基づいて、発光量テーブル14aから読み出した発光時間a1、b1、c1及びd1から補正発光時間a2、b2、c2及びd2を算出する(ステップS106)。つまり、ここでは、定常状態の電圧値及び温度の状況下で得られる発光光量と同等の発光光量を得られるように発光時間a1、b1、c1及びd1を補正する。
【0070】
その後、タイミングセンサ160によって硬貨による遮光が検知され(ステップS107)、発光タイミング(撮像範囲への硬貨の進入)が発光制御部15aに通知されると(ステップS108)、発光制御部15aは、各分割領域A〜Dごとの発光時間a2、b2、c2及びd2をLED駆動部115、125、135及び145それぞれに通知する(ステップS109)。
【0071】
この発光時間の通知を受け付けた各LED駆動部は、それぞれに割り当てられた発光時間a2、b2、c2及びd2についてLED群110、120、130及び140に電力を供給し(ステップS110)、処理を終了する。
【0072】
上述してきたように、本実施例では、各分割領域A〜Dごとに硬貨画像を撮像する時の照明光の発光光量を変えてLED群110、120、130及び140を発光させるように構成したので、硬貨を搬送するに際して硬貨を通路の一端に寄せて搬送させる場合に、小径硬貨で生じる片寄せ側と反片寄せ側とで照明が不均一になる事態を防止でき、硬貨の外径検出及び画像鑑別を行うに際して質の良い硬貨画像を得ることが可能になる。
【0073】
これを図9を用いて具体的に説明すると、図中の左側の硬貨画像は、従来技術によるLEDの発光制御を行って1円硬貨を撮像した場合のものであり、図中右側の硬貨画像は、本発明に係るLEDの発光制御を行って1円硬貨を撮像した場合のものである。これら両者を比較すると、従来技術のものは、反片寄せ側のエッジ部分が暗くなってしまっているのに対し、本実施例のものは、1円硬貨の反片寄せ側のエッジ部分に十分な強度の照明が当り、1円硬貨全体で撮像画像の明るさが均一になっていることがわかる。
【0074】
さらに、本実施例では、硬貨の金種に対応付けて各分割領域のLED群に設定された発光時間の設定情報を記憶しておき、硬貨の金種の判別結果を取得し、記憶した発光時間の設定情報のうち、判別結果として取得した硬貨の金種に対応付けられた設定情報に基づいて各分割領域のLED群を発光させるように構成したので、硬貨の金種特性に適合した発光光量でLEDを発光させるとともに、照明が不均一になる事態を防止するための発光制御を小径硬貨のみに選択的に適用することが可能になる。
【0075】
なお、本実施例では、各分割領域A〜DのLED群110、120、130及び140の発光時間を変えることで各分割領域間の発光光量を変化させる例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、たとえばLED駆動部115、125、135及び145が各LED群に供給する電流を可変にするよう構成にしてもよいし、電流を制限する抵抗を可変にしてもよく、また、発光電流及び発光時間の両方を変化させることで発光光量を調節するようにしてもかまわない。
【0076】
また、本実施例では、円環状に配したLEDを領域A、B、C及びDに4分割した例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも片寄せ側と反片寄せ側で2分割すれば本発明を同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明に係る硬貨識別装置及びその方法は、装置コストを維持しつつ、硬貨の外径検出及び画像鑑別を行うに際して質の良い硬貨画像を得る場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本実施例に係る硬貨識別装置の概要を説明するための説明図である。
【図2】本実施例に係る硬貨識別装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】硬貨の搬送を説明するための説明図である。
【図4】画像センサの構成例を示す図である。
【図5】発光量テーブルに記憶される情報の構成例を示す図である。
【図6】大きな径の硬貨に照明光を当てる場合のLED点灯のタイミングチャートである。
【図7】小さな径の硬貨に照明光を当てる場合のLED点灯のタイミングチャートである。
【図8】本実施例に係る発光制御処理に関する磁気センサ、発光制御部、タイミングセンサ及びLED駆動部間の制御シーケンスを示す図である。
【図9】1円硬貨に対する本発明の照明効果を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0079】
10 硬貨識別装置
11a 搬送ベルト
11b 搬送路
12 搬送駆動部
13 磁気センサ
14 記憶部
14a 発光量テーブル
15 制御部
15a 発光制御部
15b 判別部
100 画像センサ
110,120,130,140 LED群
115,125,135,145 LED駆動部
150 温度センサ
160 タイミングセンサ
160a 発光素子
160b 受光素子
170 撮像デバイス
170a 光学レンズ
170b 撮像素子(CCD)
170c CCD基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨を搬送路の一端に寄せて搬送しながら、円環状に配した光源から光を照射して前記硬貨の画像を撮像する硬貨識別装置であって、
前記円環状の光源を複数の領域に分割し、該分割した各領域ごとに前記硬貨画像を撮像する時の照明光の発光光量を変えて前記光源を発光させる発光制御手段
を備えたことを特徴とする硬貨識別装置。
【請求項2】
前記光源がLEDであることを特徴とする請求項1に記載の硬貨判別装置。
【請求項3】
前記発光制御手段は、
前記硬貨が片寄せされる搬送路の一端から離れた位置の領域ほど発光光量が多くなるように前記光源を発光させることを特徴とする請求項1または2に記載の硬貨識別装置。
【請求項4】
前記発光制御手段は、
各領域の光源に供給する発光電流、各領域の光源を発光させる発光時間もしくはこれらの両方を変化させることを特徴とする請求項1、2または3に記載の硬貨識別装置。
【請求項5】
前記硬貨の金種に対応付けて各領域の光源に設定された発光光量の設定情報を記憶する設定情報記憶手段と、
前記硬貨の金種の判別結果を取得する判別結果取得手段とをさらに備え、
前記発光制御手段は、
前記設定情報記憶手段によって記憶された発光光量の設定情報のうち、前記判別結果取得手段によって判別結果として取得された硬貨の金種に対応付けられた設定情報に基づいて各領域の光源を発光させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の硬貨識別装置。
【請求項6】
前記光源近傍の温度を検知する温度検知手段をさらに備え、
前記発光制御手段は、
前記温度検知手段によって検知された光源近傍の温度に応じて前記光源の発光時間または発光電流を変化させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の硬貨識別装置。
【請求項7】
硬貨を搬送路の一端に寄せて搬送しながら、円環状に配した光源から光を照射して前記硬貨の画像を撮像する硬貨識別方法であって、
前記円環状の光源を複数の領域に分割し、該分割した各領域ごとに前記硬貨画像を撮像する時の照明光の発光光量を変えて前記光源を発光させる発光制御工程
を含んだことを特徴とする硬貨識別方法。
【請求項8】
前記硬貨の金種に対応付けて各領域の光源に設定された発光光量の設定情報を設定情報記憶手段に格納する設定情報格納工程と、
前記硬貨の金種の判別結果を取得する判別結果取得工程とをさらに含み、
前記発光制御工程は、
前記設定情報記憶手段によって記憶された発光光量の設定情報のうち、前記判別結果取得工程によって判別結果として取得された硬貨の金種に対応付けられた設定情報に基づいて各領域の光源を発光させることを特徴とする請求項7に記載の硬貨識別方法。
【請求項9】
前記光源近傍の温度を検知する温度検知工程をさらに含み、
前記発光制御工程は、
前記温度検知工程によって検知された光源近傍の温度に応じて前記光源の発光時間または発光電流を変化させることを特徴とする請求項7または8に記載の硬貨識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−252035(P2009−252035A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100626(P2008−100626)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】