説明

硬質ポリウレタンスラブフォームの製造方法および配管用断熱材

【課題】内部にスコーチを発生させず、熱伝導率が低く、難燃性に優れた硬質ポリウレタンスラブフォームを製造する方法を提供すること。
【解決手段】〔A〕MDIを30〜80質量%の割合で含むポリメリックMDIの少なくとも一部を、官能基数が2〜4、水酸基価が100〜900mgKOH/gのポリエーテルポリオールからなる変性剤で変性することにより得られる、NCO含量が25〜28%である変性ポリイソシアネートと;〔B〕トルエンジアミンにエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを付加してなるポリエーテルポリオール(B1)を50質量%以上の割合で含むポリオール成分と;〔C〕水からなる発泡剤とを含有するフォーム形成性組成物を反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質ポリウレタンスラブフォームの製造方法および配管用断熱材に関し、さらに詳しくは、内部にスコーチを発生させず、熱伝導率が低く、難燃性に優れた硬質ポリウレタンスラブフォームを製造する方法、並びにかかる製造方法により得られる硬質ポリウレタンスラブフォームを裁断加工して得られる配管用断熱材に関する。
【0002】
本発明によって得られる硬質ポリウレタンスラブフォームは、各種パネル・ボード・冷蔵庫のような特定の形状に発泡・成型されるものではなく、また、現場発泡のようにスプレー塗布して発泡されるものでもなく、天面開放状態のモールド内に注入された組成物を自由発泡させることにより、または、天面開放状態の連続ラインに連続吐出した組成物を自由発泡させることにより生産される硬質の「スラブフォーム」である。
【背景技術】
【0003】
従来、硬質ポリウレタンフォームを形成するための発泡剤として、クロロフルオロカーボン類やハイドロフルオロカーボン類が使用されていた。
しかして、最近における脱フロン化の要請などにより、発泡剤として水を使用する水発泡処方の硬質ポリウレタンフォームが注目されている。
【0004】
水発泡処方により硬質ポリウレタンフォームを形成するための組成物には、ポリイソシアネート、ポリオール成分、および発泡剤としての水が含有される。
ここに、「ポリイソシアネート」としては、通常、ジフェニルメタンジイソシアネートを含むポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートが使用されている。
また、「ポリオール成分」の一部として、トルエンジアミンに、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加してなるポリエーテルポリオールが使用されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1〜5に開示されている組成物を含め、従来公知の水発泡処方の組成物により硬質ポリウレタンスラブフォームを製造する場合には、形成されるスラブフォームの内部にスコーチ(焼け)が発生するという問題がある。
これは、水発泡処方のスラブフォームの形成においては、発熱量が大きく、肉厚の形状(スラブ)であるために内部の熱を放散することが困難である(内部の蓄熱量が大きい)ことなどによる。そして、スラブフォームの内部に発生したスコーチは、これを裁断して得られる最終製品の外観不良、強度不良などを招来する。
このように、肉薄のモールドフォームでは特に問題とならない内部のスコーチは、スラブフォームを製造する場合においては深刻な問題であって、その解決が強く望まれている。
【0006】
また、特許文献1〜5に開示されている組成物によって製造される硬質ポリウレタンフォームは、いずれも、熱伝導率が高くて十分な断熱効果・保温効果を有するものではない。さらに、難燃性および寸法安定性なども満足できるものではない。
【特許文献1】特開平5−186549号公報
【特許文献2】特開平6−228260号公報
【特許文献3】特開平6−239956号公報
【特許文献4】特開平7− 10955号公報
【特許文献5】特開平9−132631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のような事情に基いてなされたものである。
本発明の第1の目的は、内部にスコーチを発生させず、熱伝導率が低く、難燃性に優れた硬質ポリウレタンスラブフォームを製造する方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、さらに寸法安定性にも優れた硬質ポリウレタンスラブフォームを製造する方法を提供することにある。
本発明の第3の目的は、硬質ポリウレタンスラブフォームを裁断加工して得られる断熱材であって、スコーチに起因する外観不良や強度不良などがなく、熱伝導率が低くて難燃性および寸法安定性にも優れた配管用断熱材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の製造方法は、〔A〕ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略記する。)を30〜80質量%の割合で含むポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(以下、「ポリメリックMDI(a)」ともいう。)の少なくとも一部を、官能基数が2〜4、水酸基価が100〜900mgKOH/gのポリエーテルポリオールからなる変性剤(以下、「特定の変性剤」ともいう。)で変性することにより得られる、NCO含量が25〜28%である変性ポリイソシアネートと;
〔B〕トルエンジアミンにエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを付加してなるポリエーテルポリオール(B1)を50質量%以上の割合で含むポリオール成分と;
〔C〕水からなる発泡剤と
を含有するフォーム形成性組成物を反応させることを特徴とする。
【0009】
本発明の製造方法において、前記ポリエーテルポリオール(B1)を得るためにトルエンジアミンに付加されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの質量比率(〔EO〕:〔PO〕)が0〜50:100〜50であることが好ましい。
【0010】
また、前記〔B〕成分として、前記ポリエーテルポリオール(B1)50〜90質量%、並びに分子中にOH基を6個以上有する開始剤に、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを付加してなるポリエーテルポリオール(B2)50〜10質量%を含むポリオール成分を含有することが好ましい。
更に、当該ポリエーテルポリオール(B2)を得るために使用される開始剤がシュークロースであることが好ましい。
【0011】
本発明の配管用断熱材は、前記フォーム形成性組成物を反応させることにより得られる硬質ポリウレタンスラブフォームを更に裁断加工して得られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、スラブ内部にスコーチを発生させず、熱伝導率が低くて、難燃性に優れた硬質ポリウレタンスラブフォームを製造することができる。
また、ポリエーテルポリオール(B1)に係る前記質量比率(〔EO〕:〔PO〕)を0〜50:100〜50とすることにより、更に寸法安定性にも優れた硬質ポリウレタンスラブフォームを製造することができる。
本発明の配管用断熱材は、スコーチに起因する外観不良や強度不良などがなく、熱伝導率が低くて難燃性および寸法安定性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
<本発明の製造方法>
本発明の製造方法は、変性ポリイソシアネートからなる〔A〕成分と;トルエンジアミン系のポリエーテルポリオール(B1)を含むポリオール成分からなる〔B〕成分と;水(発泡剤)からなる〔C〕成分とを含有するフォーム形成性組成物を反応させることに特徴を有する。
【0014】
<〔A〕成分>
〔A〕成分は、MDI(二核体)を含むポリメリックMDI(a)の少なくとも一部を特定の変性剤で変性することにより得られる変性ポリイソシアネートである。
ポリメリックMDI(a)を構成するMDI(二核体)には、4,4′−MDI、2,4′−MDI、2,2′−MDIの異性体が含まれ、MDIに占める4,4′−MDIの割合は50%以上であることが好ましい。
【0015】
ポリメリックMDI(a)に占めるMDI(二核体)の割合としては30〜80質量%とされ、好ましくは35〜75質量%とされる。
【0016】
MDI(二核体)の割合が30質量%未満である場合には、当該ポリメリックMDIにより得られる変性ポリイソシアネートの粘度が過大になり、〔B〕成分との混合性に悪影響を及ぼす。
一方、MDI(二核体)の割合が80質量%を超える場合には、当該ポリメリックMDIにより得られる変性ポリイソシアネートを含有する組成物の強度が不足して正常にフォームが立ち上がらず、所期の硬質スラブフォームを形成することができなくなることがある。また、当該組成物により形成される硬質スラブフォームが脆性を示し、十分な強度を有するものとならない。さらに、ポリメリックMDI(a)の貯蔵安定性、特に0℃以下といった低温雰囲気下での液貯蔵安定性が悪化(例えば、結晶の析出)する。
【0017】
〔A〕成分は、ポリメリックMDI(a)の少なくとも一部が、特定の変性剤によって変性されることにより得られる。
ポリメリックMDIを変性する特定の変性剤は、官能基数が2〜4、水酸基価が100〜900mgKOH/gのポリエーテルポリオールからなる。
【0018】
特定の変性剤は「ポリエーテルポリオール」からなる。ポリエステルポリオールにより変性すると、得られる変性イソシアネートに濁りが生じて、経時後における液の相分離の発生や結晶の析出を招くなど、貯蔵安定性において不具合が生じるので好ましくない。
【0019】
特定の変性剤を構成するポリエーテルポリオールの官能基数は2〜4とされ、好ましくは2とされる。
ポリメリックMDI(a)の変性剤として、単官能(官能基数が1)のポリエーテル(モノオール)を使用すると、得られる組成物により形成される硬質スラブフォームの圧縮強度や寸法安定性などの物性が低下するので好ましくない。
一方、ポリメリックMDI(a)の変性剤として、官能基数が5以上のポリエーテルポリオールを使用する場合には、得られる変性イソシアネートの粘度が過度に高くなって、例えば混合不良を起こすなどの不具合が生じるので好ましくない。
【0020】
特定の変性剤を構成するポリエーテルポリオールは、2〜4個の活性水素を有する化合物を開始剤として、これらに環式エーテルを付加させることにより製造することができる。ポリエーテルポリオールの製造に供される「2〜4個の活性水素を有する化合物」としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5ーペンタンジオール、ビスフェノールAなどの短鎖ジオール;グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパンなどの短鎖トリオール;ペンタエリスリトール(テトラメチロールメタン)、テトラメチロールシクロヘキサンなどの短鎖テトラオールなどを挙げることができる。
ポリエーテルポリオールの製造に供される「環式エーテル」としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを例示することができる。
【0021】
特定の変性剤を構成するポリエーテルポリオールの水酸基価は100〜900mgKOH/gとされ、好ましくは200〜700mgKOH/gとされる。
ポリメリックMDIの変性剤として、水酸基価が100mgKOH/g未満のポリエーテルポリオールを使用する場合には、得られる組成物により形成される硬質スラブフォームの圧縮強度や寸法安定性などの物性が低下するので好ましくない。
一方、ポリメリックMDIの変性剤として、水酸基価が900mgKOH/gを超えるポリエーテルポリオールを使用する場合には、得られる変性イソシアネートの粘度が過度に高くなって、例えば混合不良を起こすなどの不具合が生じるので好ましくない。
【0022】
特定の変性剤を構成するポリエーテルポリオールの平均分子量としては、125〜2500であることが好ましく、更に好ましくは160〜1200とされる。
【0023】
特定の変性剤による変性方法としては、予め加温されたポリメリックMDI(a)に、特定の変性剤を添加し、この系を加熱しながら攪拌混合する方法を挙げることができる。攪拌時の加熱温度としては例えば40〜80℃とされる。
【0024】
ポリメリックMDI(a)の「一部を」変性して〔A〕成分を調製する方法としては、例えば、
(イ)ポリメリックMDI(a)を、一部(a1)と、残部(a2)とに分割し、
(ロ)「ポリメリックMDIの一部(a1)」を、特定の変性剤で変性処理することにより「変性された(ポリメリック)MDI(A1)」を得、
(ハ)「変性された(ポリメリック)MDI(A1)」と、変性されていない「ポリメリックMDIの残部(a2)」とを混合する方法を挙げることができる。
【0025】
ここで、変性処理される「ポリメリックMDIの一部(a1)」と、後添加される「ポリメリックMDIの残部(a2)」とは同一の組成である必要はなく、例えば、それぞれの核体分布などが異なっていてもよい。
また、核体分布などが異なる2種類のポリメリックMDIをそれぞれ準備し、その一方を(a1)成分とし、他方を(a2)成分としてもよい。
ここで、得られる〔A〕成分の粘度の上昇を抑制するなどの観点から、変性処理される「ポリメリックMDIの一部(a1)」はMDI(二核体)のみからなることが好ましい。
【0026】
この場合には、
(イ)ポリメリックMDI(a)を、MDIからなる一部(a1)と、ポリメリックMDIからなる残部(a2)とに分割し(あるいは、MDIからなる(a1)成分と、ポリメリックMDIからなる(a2)成分とをそれぞれ準備し)、
(ロ)「MDIからなる一部(a1)」を、特定の変性剤で変性処理することによって「変性されたMDI(A1)」を得、
(ハ)「変性されたMDI(A1)」と、「ポリメリックMDIの残部(a2)」とを混合することにより〔A〕成分が得られる。
この場合において、「ポリメリックMDIの残部(a2)」にMDI(二核体)が含まれていてもよい。
【0027】
ポリメリックMDI(a)の「全部を」変性する場合であっても、得られる〔A〕成分を構成する「変性ポリイソシアネート」中には、未変性のポリメリックMDI分子と、変性されたポリメリックMDI分子とが共存する。すなわち、特定の変性剤を構成するポリエーテルポリオールの分子は、ポリメリックMDI(a)を構成する分子のすべてに結合してプレポリマー化しているものではない。
【0028】
例えば、式:HO−(R1 O)n −H(式中、R1 はアルキレン基である)で示されるポリエーテルポリオールで変性された「変性ポリイソシアネート」中には、
式:R2 (NCO)m (式中、R2 はポリメチレンポリフェニル構造単位であり、mは2以上の整数である。)で示される「未変性のポリメリックMDI分子」と、
式:(OCN)m-1 2 NHCOO−(R1 O)n-1 1 O−CONHR2 (NCO)m-1 で示される「変性されたポリメリックMDI分子」とが存在する。
【0029】
〔A〕成分を構成する変性ポリイソシアネートのNCO含量は、通常25〜28%とされ、好ましくは26〜28%とされる。これにより、発熱量が低下し、フォーム形成時の反応もマイルドになり、肉厚のスラブフォームであっても内部におけるスコーチの発生を確実に防止することができる。
【0030】
変性ポリイソシアネートのNCO含量が25%未満である場合には、その粘度が過大となって、〔B〕成分との混合性に悪影響を及ぼす。
【0031】
一方、変性ポリイソシアネートのNCO含量が28%を超える場合には、得られる組成物により形成されるスラブフォームにおいて、内部のスコーチの発生を防止することができない(後述する比較例1〜2および比較例5〜6参照)。
【0032】
<〔B〕成分>
フォーム形成性組成物を構成する〔B〕成分は、トルエンジアミンを開始剤とするポリエーテルポリオール(B1)を50質量%以上の割合で含むポリオール成分からなる。
【0033】
ポリエーテルポリオール(B1)は、トルエンジアミンを開始剤として、これにエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを付加させることにより得られる。
【0034】
トルエンジアミン系のポリエーテルポリオール(B1)を一定の割合で含有する〔B〕成分により、形成される硬質スラブフォームにおいて、セルの微細化を図ることができ、低い熱伝導率(断熱性・保温性)を達成することができる。また、形成される硬質スラブフォームに優れた難燃性を付与することができる。さらに、ポリエーテルポリオール(B1)を含有する〔B〕成分は、〔A〕成分との相溶性にも優れている。
【0035】
トルエンジアミンとしては、2,4−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミンを単独でまたは両者の混合物を使用することができる。
【0036】
ここに、トルエンジアミン付加されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの質量比率(〔EO〕:〔PO〕)は0〜50:100〜50であることが好ましく、更に好ましくは0〜35:100〜65とされる。これにより、得られる硬質スラブフォームの寸法安定性を向上させることができる。
【0037】
ポリエーテルポリオール(B1)の水酸基価は、200〜700mgKOH/gであることが好ましく、更に好ましくは300〜500mgKOH/gとされる。
ポリエーテルポリオール(B1)の平均分子量は、320〜1200であることが好ましく、更に好ましくは450〜750とされる。
【0038】
〔B〕成分に占めるポリエーテルポリオール(B1)の割合は50質量%以上とされ、好ましくは50〜90質量%とされる。
ポリエーテルポリオール(B1)の割合が50質量%未満である場合には、形成される硬質スラブフォームの熱伝導率が高くなって良好な断熱性・保温性が発揮できず、また、当該硬質スラブフォームは難燃性にも劣るものとなる(後述する比較例3〜4および比較例6参照)。
【0039】
〔B〕成分には、ポリエーテルポリオール(B1)と共に、分子中にOH基を6個以上有する開始剤にエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを付加してなるポリエーテルポリオール(B2)が含有されていることが好ましい。
多官能性のポリエーテルポリオール(B2)を一定の割合で含有する〔B〕成分によれば、形成される硬質スラブフォームの寸法安定性を向上させることができる。
【0040】
ポリエーテルポリオール(B2)を得るための開始剤としては、シュークロース、ソルビトール(グルシトール)、マンニトール、ズルシトール(ガラクチトール)、スークロースなどを挙げることができ、これらのうちシュークロースが好ましい。
【0041】
ポリエーテルポリオール(B2)の水酸基価は、300〜600mgKOH/gであることが好ましく、更に好ましくは350〜550mgKOH/gとされる。
ポリエーテルポリオール(B2)の平均分子量は、550〜1500であることが好ましく、更に好ましくは600〜1300とされる。
【0042】
〔B〕成分に占めるポリエーテルポリオール(B2)の割合は10〜50質量%であることが好ましく、更に好ましくは10〜30質量%とされる。
多官能性のポリエーテルポリオール(B2)の割合が10質量%未満である場合には、形成される硬質スラブフォームが寸法安定性に劣るものとなる。一方、このポリエーテルポリオール(B2)の割合が50質量%を超える場合には、トルエンジアミン系のポリエーテルポリオール(B1)の割合を50質量%以上とすることができない。
【0043】
〔B〕成分は、トルエンジアミン系のポリエーテルポリオール(B1)と、多官能性のポリエーテルポリオール(B2)とからなることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲内で、これら以外のポリオールが含有されていてもよい。
そのようなポリオールとしては、ポリエーテルポリオール〔前記(B1)および(B2)に相当するものを除く。〕、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、動植物系ポリオール、鎖延長剤として機能する分子量300以下の低分子ポリオール、ポリマーポリオール、ハロゲン含有ポリオール、リン含有ポリオール、フェノールベースポリオールなどを例示することができる。これらのうち、ポリエーテルポリオールが好ましい。
【0044】
<〔C〕成分>
本発明で使用するフォーム形成性組成物は、発泡剤として水(〔C〕成分)を含有する水発泡処方の組成物である。
〔C〕成分である水の含有量としては、〔B〕成分100質量部に対して2〜10質量部であることが好ましく、更に好ましくは3〜7質量部とされる。この含有量が過大である場合には、形成される硬質スラブフォームの密度が、所望される密度よりも低下(軽量化)してしまうほか、強度不足や寸法安定性の低下を招き、さらには当該硬質スラブフォームが脆いものとなる。一方、この含有量が過少である場合には、発泡が不十分となって、密度が上昇することによりコストアップになる。
【0045】
<任意成分>
本発明で使用するフォーム形成性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記の必須成分以外の成分が含有されていてもよい。
そのような任意成分としては、難燃剤、整泡剤、酸化防止剤、触媒、充填剤、安定剤、着色剤などを挙げることができる。
【0046】
任意成分として使用できる『難燃剤』としては、有機ハロゲン系化合物、リン系化合物、(イソ)シアヌル酸誘導体化合物(ハロゲン非含有含窒素化合物)、(イソ)シアヌル酸誘導体化合物以外の窒素含有化合物(ハロゲン非含有含窒素化合物)、無機化合物などを挙げることができる。
【0047】
ここに、「有機ハロゲン系化合物」としては、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)、ジブロモネオペンチルグリコール、デカブロモジフェニルオキサイド(DBDPO)、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、トリブロモフェノール(TBP)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、臭素化ポリスチレン、TBBPAエポキシオリゴマー、TBBPAビスジブロモプロピルエーテル、エチレンビスペンタブロモジフェニルなどを例示することができる。
【0048】
また、「リン系化合物」としては、オルソリン酸アンモニウムと尿素の縮合生成物などのポリリン酸アンモニウム系化合物、トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートおよびオクチルジフェニルホスフェートなどのリン酸エステル類、高分子量化したポリホスフェートなどの縮合リン酸エステル類、トリス(クロロプロピル)ホスフェート(TCPP)、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジブロモネオペンチル)ホスフェートなどのハロゲン含有リン酸エステルなどを例示することができる。
【0049】
また、「(イソ)シアヌル酸誘導体化合物(ハロゲン非含有含窒素化合物)」としては、メラミン、硫酸メラミン、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メチロールメラミン、シアヌル酸トリメチルエステル、シアヌル酸トリエチルエステル、アンメリン、アンメリド、2,4,6−トリオキシシアニジンおよびメラミンシアヌレートなどのシアヌル酸誘導体;イソアンメリン、イソメラミン、イソアンメリド、トリメチルカルボジイミド、トリエチルカルボジイミドおよびトリカルボイミドなどのイソシアヌル酸誘導体などを例示することができる。
【0050】
また、「(イソ)シアヌル酸誘導体化合物以外の窒素含有化合物(ハロゲン非含有含窒素化合物)」としては、ジシアンジアミド、ジシアンジアミジシン、グアニジン、スルファミン酸グアニジン、及びジグアニドなどのシアナミド誘導体;並びに尿素、ジメチロール尿素、ジアセチル尿素、トリメチル尿素、及びN−ベンゾイル尿素などの尿素誘導体などを例示することができる。
【0051】
また、「無機化合物」としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、四ホウ酸酸ナトリウム、リン酸マグネシウム、二リン酸ナトリウム、リン酸亜鉛、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンおよび窒素化グアニジン、赤燐などを例示することができる。
【0052】
任意成分として使用される『整泡剤』としては、例えば、「SZ−1171」、「SZ−1649」、「SZ−1666」、「SZ−1694」、「SZ−1671」、「SZ−1711」、「SZ−1127」、「SZ−1919」(以上、日本ユニカー(株)製)、「SF−2936F」、「SF−2937F」、「SF−2938F」、「SH−192」(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)、「B−8444」、「B−8465」、「B−8870」、「B−8871」(以上、ゴールドシュミット社製)、「F−373」、「F−388」(以上、信越化学工業(株)製)などを挙げることができる。
【0053】
任意成分として使用できる『酸化防止剤』としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤およびイオウ系酸化防止剤などを挙げることができる。
【0054】
ここに、「フェノール系酸化防止剤」としては、ペンタエリスリチル−テトラキス−[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−〔β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、ビス〔3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェロール類などを例示することができる。
【0055】
また、「リン系酸化防止剤」としては、アルキルホスファイト、アルキルアリルホスファイト、アリルホスファイト、アルキルホスフォナイト、アリルホスフォナイトなどのリン系安定剤を挙げることができ、具体的には、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジフォスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイトなどを例示することができる。
【0056】
また、「イオウ系酸化防止剤」としては、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネート、ペンタエリストール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジラウリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジトリデシル−3,3′−チオジプロピオネート、チオジプロピオン酸ジラウリルなどを例示することができる。
【0057】
任意成分として使用できる『触媒』としては、トリエチレンジアミン(TEDA)、テトラメチルヘキサメチレンジアミン(TMHMDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCHA)、ビスジメチルアミノエチルエーテル(BDMAEA)、N−メチルイミダゾール、トリメチルアミノエチルピペラジン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリンなどのアミン化合物、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレートなどのスズ化合物、アセチルアセトン金属塩などの金属錯化合物、反応型アミン触媒〔例えば、ジメチルエタノールアミン(DMEA)、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール〕に代表されるウレタン化触媒を挙げることができる。
触媒の含有量としては、〔B〕成分100質量部に対して0〜2.5質量部であることが好ましく、更に好ましくは0〜1.0質量部とされる。
【0058】
<製造方法>
本発明の製造方法は、フォーム形成性組成物を反応させることにより硬質スラブフォームを製造する方法である。
フォーム形成性組成物は、例えば、〔A〕成分からなる第1液と、〔B〕成分、〔C〕成分および任意成分を混合してなる第2液とにより構成される二液硬化性の組成物として使用される。
フォーム形成性組成物は、また、〔A〕成分からなる第1液と、〔B〕成分からなる第2液と、〔C〕成分および任意成分からなる第3液とにより構成される三液硬化性の組成物として使用してもよい。
【0059】
具体的な製造方法としては、特に限定されるものではなく、硬質スラブフォームを製造するための従来公知の方法を採用することができる。
ここに、製造方法の一例を示せば、第1液(〔A〕成分)と、第2液(〔B〕成分、〔C〕成分および任意成分を含むポリオール混合物)とを、公知の攪拌混合機により混合して、フォーム形成性組成物(発泡性の混合物)を調製し、これを天面開放状態のモールド内に注入して自由発泡させ、スラブ(ブロック)として硬化成形する方法(不連続法)を挙げることができる。
また、製造方法の他の例として、第1液(〔A〕成分)と、第2液(〔B〕成分、〔C〕成分および任意成分を含むポリオール混合物)とを、公知の攪拌混合機により混合して、フォーム形成性組成物(発泡性の混合物)を調製し、これを天面開放状態の連続ラインに連続吐出して自由発泡させ、スラブとして硬化成形する方法(連続法)を挙げることができる。
本発明の製造方法により製造される硬質スラブフォームは、独立気泡構造を有するもの、具体的には、ASTM D2856に準拠して測定される独立気泡率が75%を超えるものである。
【0060】
<配管用断熱材>
図1は、本発明の配管用断熱材の一例を示す斜視図であり、図2は図1に示した断熱材が配管に装着された状態を一部破断して示す説明図である。
図1に示す断熱材1A,1Bは、円筒体を縦方向に分割(半割)してなる形状を有している。断熱材1A,1Bは、本発明の製造方法によって形成された硬質スラブフォームを裁断加工して成形されたものである。なお、「裁断加工」には、「くり抜き加工」なども含まれる。
図2に示すように、断熱材1A,1Bは、配管Pの表面を被覆するよう配置され、その状態で堅縛手段3により固定される。
断熱材1A,1Bの外表面は、ガス不透過性のシートまたはフィルムで被覆されていてもよい。これにより、フォームを構成する気泡内のガス(二酸化炭素)が空気(二酸化炭素よりも熱伝導率が高い)に置換されることが防止される結果、初期の断熱性を維持することができる。かかる「ガス不透過性のシートまたはフィルム」としては、1つの層としてアルミニウム層を有するラミネートフィルムを例示することができる。
【0061】
断熱材1A,1Bは、前記フォーム形成性組成物により形成された硬質スラブフォームから成形されたものであるので、スラブ内部のスコーチに起因する外観不良や強度不良などがない。また、熱伝導率が低くて断熱性・保温性に優れるとともに、難燃性および寸法安定性にも優れている。
【0062】
なお、本発明の配管用断熱材の形状および配管への装着方法は、上記のものに限定されるものではない。
【実施例】
【0063】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、以下において、「%」および「部」は、特にことわらない限り、それぞれ「質量%」および「質量部」を意味する。
【0064】
〔調製例1〕
攪拌機、温度計、冷却器および窒素導入管を備えた反応容器内に、下記表1に示す処方に従って、MDI(a1)(4,4′−MDIを70%以上の割合で含有する二核体)48部を仕込み、60℃に加温した後、平均分子量=200、水酸基価=561mgKOH/gのポリオキシプロピレングリコールからなる特定の変性剤(d1)8部を添加し、この系を60℃で約2時間攪拌することによりMDIを変性処理した。
次いで、この反応生成物〔変性されたMDI〕に、ポリメリックMDI(a2)44部を添加混合することにより、NCO含量が26.0%の変性ポリイソシアネートからなる〔A〕成分(以下「〔A−1〕成分」という。)100部を得た。
【0065】
〔A−1〕成分の粘度(25℃)は500mPa・s、〔A−1〕成分中に含有される二核体(未変性のMDI分子)の割合は44%であった。
また、変性処理に供したMDI(a1)と、変性後に混合したポリメリックMDI(a2)との総量(92部)における二核体の割合は71.3%である。
【0066】
〔調製例2〕
下記表1に示す処方に従って、MDI(a1)の仕込み量を37部に変更し;平均分子量=200、水酸基価=561mgKOH/gのポリオキシプロピレングリコールからなる特定の変性剤(d1)3.4部と、平均分子量=400、水酸基価=281mgKOH/gのポリオキシプロピレングリコールからなる特定の変性剤(d2)4.6部とを添加してMDIを変性処理し;ポリメリックMDI(a2)の添加量を55部に変更したこと以外は調製例1と同様にして、NCO含量が27.0%の変性ポリイソシアネートからなる〔A〕成分(以下「〔A−2〕成分」という。)100部を得た。
【0067】
〔A−2〕成分の粘度(25℃)は300mPa・s、〔A−2〕成分中における二核体(未変性のMDI分子)の含有割合は44%であった。
また、変性処理に供したMDI(a1)と、変性後に混合したポリメリックMDI(a2)との総量(92部)における二核体の割合は64.1%である。
【0068】
〔調製例3〕
下記表1に示す処方に従って、MDI(a1)の仕込み量を37部に変更し;グリセリンにプロピレンオキサイドを付加してなる3官能のポリエーテルポリオール(平均分子量=600、水酸基価=281mgKOH/g)からなる特定の変性剤(d3)8部を添加してMDIを変性処理し;ポリメリックMDI(a2)の添加量を55部に変更したこと以外は調製例1と同様にして、NCO含量が27.0%の変性ポリイソシアネートからなる〔A〕成分(以下「〔A−3〕成分」という。)100部を得た。
〔A−3〕成分の粘度(25℃)は330mPa・s、〔A−3〕成分中における二核体(未変性のMDI分子)の含有割合は49%であった。
また、変性処理に供したMDI(a1)と、変性後に混合したポリメリックMDI(a2)との総量(92部)における二核体の割合は64.1%である。
【0069】
〔調製例4〕
下記表1に示す処方に従って、MDI(a1)の仕込み量を37部に変更し;ペンタエリストールにプロピレンオキサイドを付加してなる4官能のポリエーテルポリオール(平均分子量=561、水酸基価=400mgKOH/g)からなる特定の変性剤(d4)8部を添加してMDIを変性処理し;ポリメリックMDI(a2)の添加量を55部に変更したこと以外は調製例1と同様にして、NCO含量が27.0%の変性ポリイソシアネートからなる〔A〕成分(以下「〔A−4〕成分」という。)100部を得た。
〔A−4〕成分の粘度(25℃)は580mPa・s、〔A−4〕成分中における二核体(未変性のMDI分子)の含有割合は44%であった。
また、変性処理に供したMDI(a1)と、変性後に混合したポリメリックMDI(a2)との総量(92部)における二核体の割合は64.1%である。
【0070】
〔調製例5〕
下記表1に示す処方に従って、MDI(a1)の仕込み量を51部に変更し;グリセリンにプロピレンオキサイドを付加してなる3官能のポリエーテルポリオール(平均分子量=250、水酸基価=673mgKOH/g)からなる特定の変性剤(d5)5部を添加してMDIを変性処理したこと以外は調製例1と同様にして、NCO含量が28.0%の変性ポリイソシアネートからなる〔A〕成分(以下「〔A−5〕成分」という。)100部を得た。
〔A−5〕成分の粘度(25℃)は280mPa・s、〔A−5〕成分中における二核体(未変性のMDI分子)の含有割合は52%であった。
また、変性処理に供したMDI(a1)と、変性後に混合したポリメリックMDI(a2)との総量(95部)における二核体の割合は72.2%である。
【0071】
〔調製例6〕
下記表1に示す処方に従って、MDI(a1)の仕込み量を32部に変更し;特定の変性剤(d1)の添加量を4部に変更してMDIを変性処理し;ポリメリックMDI(a2)の添加量を64部に変更したこと以外は調製例1と同様にして、NCO含量が29.0%の変性ポリイソシアネート100部を得た。
この変性ポリイソシアネートの粘度(25℃)は180mPa・s、当該変性ポリイソシアネート中における二核体(未変性のMDI分子)の含有割合は48%であった。
また、変性処理に供したMDI(a1)と、変性後に混合したポリメリックMDI(a2)との総量(96部)における二核体の割合は60.0%である。
【0072】
〔調製例7〕
調製例1〜6で使用したポリメリックMDI(a2)(二核体=40%,三核体=27%,四核体=9%,五核体または六核体=5%、七核体以上の多核体=19%:NCO含量=31.0%)を準備した。
【0073】
【表1】

【0074】
*1):4,4′−MDIを70%以上の割合で含有するMDI(二核体)
*2):ポリオキシプロピレングリコール(官能基数=2、平均分子量=200、水酸基価=561mgKOH/g)
*3):ポリオキシプロピレングリコール(官能基数=2、平均分子量=400、水酸基価=281mgKOH/g)
*4):グリセリンにプロピレンオキサイドを付加してなるポリエーテルポリオール(官能基数=3、平均分子量=600、水酸基価=281mgKOH/g)
*5):ペンタエリストールにプロピレンオキサイドを付加してなるポリエーテルポリオール(官能基数=4、平均分子量=561、水酸基価=400mgKOH/g)
*6):グリセリンにプロピレンオキサイドを付加してなるポリエーテルポリオール(官能基数=3、平均分子量=250、水酸基価=673mgKOH/g)
*7):後添加用のポリメリックMDI(二核体=40%,三核体=27%,四核体=9%,五核体または六核体=5%、七核体以上の多核体=19%:NCO含量=31.0%)
【0075】
<実施例1>
下記表2に示す処方に従って、〔B〕成分、〔C〕成分および任意成分を含有するポリオール混合物(液温=30℃)131.7部と、調製例1で得られた〔A−1〕成分(液温=20℃)183.0部(NCOインデックス=100)とを高圧発泡機を用いて混合・吐出して発泡性の組成物を調製した。
この実施例で使用したポリエーテルポリオール(B1)を構成するエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの質量比率(〔EO〕:〔PO〕)は34:66である。
低圧発泡機から吐出した組成物を、600mm×600mm×600mmの内部寸法を有する天面開放型の木製モールドに注入し、発泡・硬化成形過程における反応時間(クリームタイムおよびライズタイム)を測定した。結果を併せて表2に示す。
攪拌混合操作の開始時刻から1時間経過後に脱型操作を行って、硬質ポリウレタンスラブフォームを得た。
【0076】
<実施例2〜9>
下記表2に示す処方に従って、〔B〕成分、〔C〕成分および任意成分を含有するポリオール混合物と、〔A〕成分とを、NCOインデックスが100となるよう、表2に示す配合比(量)で使用したこと以外は実施例1と同様にして、ポリオール混合物と〔A〕成分との攪拌混合操作(発泡性の組成物の調製)、組成物の注入操作、反応時間の測定(結果を下記表2に示す)および脱型操作を行って、硬質ポリウレタンスラブフォームの各々を得た。
これらの実施例で使用したポリエーテルポリオール(B1)を構成するエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの質量比率(〔EO〕:〔PO〕)は、
実施例2〜5において、〔EO〕:〔PO〕=34:66、
実施例6において、〔EO〕:〔PO〕=49:51、
実施例7〜8において、〔EO〕:〔PO〕=20:80、
実施例9において、〔EO〕:〔PO〕=63:37である。
【0077】
【表2】

【0078】
〔表2の注(下記3において同じ)〕
*8)(B1−1):トルエンジアミンにEOおよびPOを付加してなるポリエーテルポリオール。官能基数=4、平均分子量=561、水酸基価=400mgKOH/g、粘度(25℃)=20,000mPa・s、〔EO〕:〔PO〕=20:80(質量比)。 *9)(B1−2):トルエンジアミンにEOおよびPOを付加してなるポリエーテルポリオール。官能基数=4、平均分子量=748、水酸基価=300mgKOH/g、粘度(25℃)=2,000mPa・s、〔EO〕:〔PO〕=70:30(質量比)。
*10)(B2−1):シュークロースにPOを付加してなるポリエーテルポリオール。官能基数=8、平均分子量=1069、水酸基価=420mgKOH/g、粘度(25℃)=28,000mPa・s。
*11)(b−1):グリセリンにPOを付加してなるポリエーテルポリオール。官能基数=3、平均分子量=599、水酸基価=281mgKOH/g、粘度(25℃)=270mPa・s。
*12)(b−2):モノエタノールアミンにPOを付加してなるポリエーテルポリオール。官能基数=3、平均分子量=337、水酸基価=500mgKOH/g、粘度(25℃)=430mPa・s。
*13)難燃剤(TCPP):トリス(クロロプロピル)ホスフェート
*14)整泡剤(1):「B−8465」(ゴールドシュミット社製)
*15)整泡剤(2):「SZ−1671」(以上、日本ユニカー(株)製)
*16)触媒(1):「カオーライザーNo.1」(花王(株)製)
*17)酸化防止剤(1):テトラキス−〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン「イルガノックス 1010」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
*18)酸化防止剤(2):ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト「JPP−13R」(城北化学(株)製)
【0079】
<比較例1>
下記表3に示す処方に従って、〔A−1〕成分に代えて、調製例6で得られた変性ポリイソシアネート(NCO含量=29.0%)164.0部を使用したこと以外は実施例1と同様にして、ポリオール混合物と変性ポリイソシアネートとの攪拌混合操作(発泡性の組成物の調製)、組成物の注入操作、反応時間の測定(結果を下記表3に示す)および脱型操作を行って、硬質ポリウレタンスラブフォームを得た。
この例は、変性ポリイソシアネートのNCO含量が28%を超える比較例である。
【0080】
<比較例2>
下記表3に示す処方に従って、〔A−1〕成分に代えて、調製例7で準備したポリメリックMDI(a2)(NCO含量=31.0%)153.0部を使用したこと以外は実施例1と同様にして、ポリオール混合物とポリメリックMDIとの攪拌混合操作(発泡性の組成物の調製)、組成物の注入操作、反応時間の測定(結果を下記表3に示す)および脱型操作を行って、硬質ポリウレタンスラブフォームを得た。
この例は、変性していないポリメリックMDI(NCO含量=31.0%)を使用した比較例である。
【0081】
<比較例3>
下記表3に示す処方に従って、ポリオール成分、〔C〕成分および任意成分を含有するポリオール混合物131.2部と、調製例2で得られた〔A−2〕成分173.0部(NCOインデックス=100)とを使用したこと以外は実施例1と同様にして、ポリオール混合物と〔A−2〕成分との攪拌混合操作(発泡性の組成物の調製)、組成物の注入操作、反応時間の測定(結果を下記表3に示す)および脱型操作を行って、硬質ポリウレタンスラブフォームを得た。
この例は、トルエンジアミン系のポリエーテルポリオール(B1)の割合が50質量%未満のポリオール成分を使用した比較例である。
【0082】
<比較例4>
下記表3に示す処方に従って、ポリオール成分、〔C〕成分および任意成分を含有するポリオール混合物131.8部と、調製例2で得られた〔A−2〕成分197.0部(NCOインデックス=100)とを使用したこと以外は実施例1と同様にして、ポリオール混合物と〔A−2〕成分との攪拌混合操作(発泡性の組成物の調製)、組成物の注入操作、反応時間の測定(結果を下記表3に示す)および脱型操作を行って、硬質ポリウレタンスラブフォームを得た。
この例は、トルエンジアミン系のポリエーテルポリオール(B1)を含有しないポリオール成分を使用した比較例である。
【0083】
<比較例5>
下記表3に示す処方に従って、〔B〕成分、〔C〕成分および任意成分を含有するポリオール混合物131.2部と、調製例7で準備したポリメリックMDI(a2)(NCO含量=31.0%)150.0部(NCOインデックス=100)とを使用したこと以外は実施例1と同様にして、ポリオール混合物とポリメリックMDIとの攪拌混合操作(発泡性の組成物の調製)、組成物の注入操作、反応時間の測定(結果を下記表3に示す)および脱型操作を行って、硬質ポリウレタンスラブフォームを得た。
この例は、変性していないポリメリックMDI(NCO含量=31.0%)を使用した比較例である。
【0084】
<比較例6>
下記表3に示す処方に従って、ポリオール成分、〔C〕成分および任意成分を含有するポリオール混合物131.8部と、調製例7で準備したポリメリックMDI(a2)(NCO含量=31.0%)173.0部(NCOインデックス=100)とを使用したこと以外は実施例1と同様にして、ポリオール混合物とポリメリックMDIとの攪拌混合操作(発泡性の組成物の調製)、組成物の注入操作、反応時間の測定(結果を下記表3に示す)および脱型操作を行って、硬質ポリウレタンスラブフォームを得た。
この例は、トルエンジアミン系のポリエーテルポリオール(B1)を含有しないポリオール成分を使用するとともに、変性していないポリメリックMDI(NCO含量=31.0%)を使用した比較例である。
【0085】
【表3】

【0086】
*19)(b−3):グリセリンにPOを付加してなるポリエーテルポリオール。官能基数=3、平均分子量=250、水酸基価=673mgKOH/g、粘度(25℃)=950mPa・s。
*20)触媒(2):「トヨキャット DT」(東ソー(株)製)
【0087】
<スラブフォームの評価>
実施例1〜9および比較例1〜6により得られた硬質ポリウレタンスラブフォーム(600mm×600mm×600mm)の各々について、脱型してから室温下に24時間静置した後、下記(1)〜(6)の項目について測定・評価した。なお、下記(3)の評価が「×」である比較例2、比較例5および比較例6に係るスラブフォームついては、下記(5)および(6)の測定・評価は実施しなかった。結果を下記表4に示す。
【0088】
(1)密度:
JIS K7222に準拠して、スラブフォームから切り出した試験片(200mm×200mm×200mm)の寸法と質量を測定して密度(kg/m3 )を求めた。
【0089】
(2)独立気泡率:
スラブフォームから切り出した試験片〔30mm×30mm×130mm(発泡方向)〕を用い、ASTM D2856に準拠して独立気泡率(%)を測定した。
【0090】
(3)内部スコーチの有無:
スラブフォームを切断して内部を観察し、スコーチの発生状況を下記の基準に基いて評価した。
・「○」:スコーチの発生が全く認められない。
・「△」:スコーチの発生が僅かに認められる(フォームの中央部が僅かに茶色に変色している)。
・「×」:スコーチの発生が明らかに認められる(フォームの中央部が茶色に変色している)。
【0091】
(4)熱伝導率:
スラブフォームを、その発泡方向に平行に切断(スライス)して200mm(発泡方向)×200mm×25mmの試験片を作製し、JIS A 1412に準拠して熱伝導率測定装置(オートΛ)を用いて測定した。
硬質ポリウレタンフォームからなる保温材として、熱伝導率が0.024W/mK以下であることが要求される。
【0092】
(5)燃焼試験:
JIS A 9511に準拠して、燃焼距離および燃焼時間を測定し、これらに基いて燃焼性を評価した。
【0093】
(6)寸法安定性(体積変化率の測定):
スラブフォームから切り出した試験片(50mm×50mm×50mm)を下記の雰囲気下に一定時間静置したときの体積変化を測定して寸法安定性を評価した。
・ 80℃×2日間
・−20℃×2日間
【0094】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の製造方法により得られる硬質ポリウレタンスラブフォームは、断熱性・保温性が要求される種々の用途に使用される製品(特に、各種配管用の保温材)を製造するための原材料として好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の配管用断熱材の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示した断熱材が配管に装着された状態を一部破断して示す説明図である。
【符号の説明】
【0097】
1A 断熱材
1B 断熱材
3 堅縛手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
〔A〕ジフェニルメタンジイソシアネートを30〜80質量%の割合で含むポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの少なくとも一部を、官能基数が2〜4、水酸基価が100〜900mgKOH/gのポリエーテルポリオールからなる変性剤で変性することにより得られる、NCO含量が25〜28%である変性ポリイソシアネートと;
〔B〕トルエンジアミンにエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを付加してなるポリエーテルポリオール(B1)を50質量%以上の割合で含むポリオール成分と;
〔C〕水からなる発泡剤と
を含有するフォーム形成性組成物を反応させる硬質ポリウレタンスラブフォームの製造方法。
【請求項2】
前記ポリエーテルポリオール(B1)を得るためにトルエンジアミンに付加されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの質量比率(〔EO〕:〔PO〕)が0〜50:100〜50である請求項1に記載の硬質ポリウレタンスラブフォームの製造方法。
【請求項3】
前記〔B〕成分として、
前記ポリエーテルポリオール(B1)50〜90質量%、並びに
分子中にOH基を6個以上有する開始剤に、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを付加してなるポリエーテルポリオール(B2)50〜10質量%を含むポリオール成分を含有する請求項1または請求項2に記載の硬質ポリウレタンスラブフォームの製造方法。
【請求項4】
前記ポリエーテルポリオール(B2)を得るために使用される開始剤がシュークロースである請求項3に記載の硬質ポリウレタンスラブフォームの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の製造方法により得られる硬質ポリウレタンスラブフォームを裁断加工して得られる配管用断熱材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−273973(P2006−273973A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93645(P2005−93645)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】