説明

硬質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】寸法安定性が良好で、充分な断熱性能を有する硬質ポリウレタンフォームが得られると共に、使用するポリマー分散ポリオールと硬質ポリウレタンフォーム用ポリオールとの混合物を貯蔵した場合の貯蔵安定性に優れ、故に硬質ポリウレタンフォームを安定に製造できる硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリオール成分(Z)とポリイソシアネート成分とを、発泡剤、整泡剤および触媒の存在下で反応させて硬質ポリウレタンフォームを製造する方法において、前記ポリオール成分(Z)は、平均水酸基価が200〜800mgKOH/gであり、かつポリオール(X)中で、含フッ素モノマーを含む重合性不飽和基を有するモノマーを重合させることにより、ポリマー微粒子がポリオール中に分散したポリマー分散ポリオール(A)を含有することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを発泡剤等の存在下で反応させて製造される硬質発泡合成樹脂(たとえば、硬質ポリウレタンフォーム等;以下、「硬質フォーム」ということがある。)は、独立気泡を有する断熱材として広く用いられている。
該硬質フォームに用いられる発泡剤としては、低沸点のハイドロフルオロカーボン化合物や炭化水素化合物が主に用いられている。
【0003】
ボード等に代表される硬質フォームにおいては、原料の使用量削減によるコストダウンや軽量化のため、フォームの更なる低密度化が要望されている。しかし、フォームの低密度化に伴って、フォーム強度が低下し、硬質フォームに収縮が生じやすい問題がある。
また、発泡剤においては、環境への負荷を考慮して、低沸点のハイドロフルオロカーボン化合物を削減して水を増やしたり、引火性の点を考慮して、炭化水素化合物を削減して水を増やしたり、また、低沸点のハイドロフルオロカーボン化合物や炭化水素化合物を使用しないで水だけを使用したりする技術が検討されている。
しかし、ハイドロフルオロカーボン化合物もしくは炭化水素化合物と、水とを併用してフォームの低密度化を図ったり、または、水だけで発泡させたり等の水発泡によりフォームを低密度化した場合、フォームが顕著に収縮しやすくなってフォームの寸法安定性が悪くなる。
【0004】
前記フォームの寸法安定性の対策としては、通常、フォームの密度を高めてフォーム強度を上げること、または、フォームの気泡を連続気泡にすること等が挙げられる。
しかし、フォームの密度を高める対策では、原料の使用量が多くなるためコストアップとなる。また、フォームの気泡を連続気泡化する対策では、フォームの寸法安定性は向上するものの、充分な断熱性能を得ることができない。
すなわち、硬質フォームにおいては、発泡剤として水を多用する、または、水だけで発泡する場合、フォームの寸法安定性が良好で、充分な断熱性能を有するものが望まれている。
【0005】
従来、硬質ポリウレタンフォームの収縮を防止して寸法安定性を向上させる公知技術として含フッ素化合物、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)類を用いた方法が提案されている(特許文献1、2参照)。特許文献1、2に記載の方法によれば、粒径の小さなPTFEの添加により、フォームに微細な空孔を開けることで寸法安定性が向上すると共に、良好な断熱性能も得られる。
【0006】
また、ポリオール成分中にポリマー分散ポリオールを配合する方法が提案されている(特許文献3、4参照)。
「ポリマー分散ポリオール」とは、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール等のポリオール中に、ポリマー微粒子が分散したポリオールである。
該ポリマー分散ポリオールは、従来から、軟質フォームまたは半硬質フォームの寸法安定性を向上させるために用いられている。
【0007】
ポリマー分散ポリオールを製造する方法の代表的な例としては、以下の方法が知られている。すなわち、重合性不飽和結合を有しない飽和ポリオール中で、場合によっては重合性不飽和結合を有する不飽和ポリオールも存在する条件下で、重合性不飽和基を有するモノマーの重合を行い、その後、未反応分を除去する方法である。該飽和ポリオールまたは該不飽和ポリオールとしては、各種のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールが知られている。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0224945号明細書
【特許文献2】特表平8−503720号公報
【特許文献3】特開昭57−25313号公報
【特許文献4】特開平11−302340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、たとえば特許文献1、2に記載の方法等に使用されている含フッ素化合物は、一般的に、有機物に対する溶解性が乏しいため、PTFE等の含フッ素化合物を、ポリオール化合物に添加して貯蔵した場合、含フッ素化合物とポリオール化合物とが分離する等、貯蔵安定性が不充分であり、硬質ポリウレタンフォームを安定に製造できないことが分かった。
また、特許文献3、4に記載の方法において使用されるポリマー分散ポリオールは、分子量の小さい硬質ポリウレタンフォーム用ポリオールと混合した際の貯蔵安定性が充分ではないため、硬質ポリウレタンフォームを安定に製造できず、また、硬質ポリウレタンフォームとした際の断熱性能との両立が困難であることが分かった。
【0009】
よって、本発明は、寸法安定性が良好で、充分な断熱性能を有する硬質ポリウレタンフォームが得られると共に、使用するポリマー分散ポリオールと硬質ポリウレタンフォーム用ポリオールとの混合物を貯蔵した場合の貯蔵安定性に優れ、故に硬質ポリウレタンフォームを安定に製造できる硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供する。
なお、本発明における「貯蔵安定性」とは、ポリマー分散ポリオールと硬質ポリウレタンフォーム用ポリオールとの混合物を貯蔵した場合に該混合物の均一性を保つことができる特性を意味する。貯蔵安定性が悪い場合、ポリマー微粒子がポリオール化合物から分離する、または該混合物中において、ポリマー分散ポリオールが移行して組成が不均一となる等、安定した品質の硬質ポリウレタンフォームを得ることが困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ポリオール成分(Z)とポリイソシアネート成分とを、発泡剤、整泡剤および触媒の存在下で反応させて硬質ポリウレタンフォームを製造する方法において、前記ポリオール成分(Z)は、平均水酸基価が200〜800mgKOH/gであり、かつ下記ポリマー分散ポリオール(A)を含有することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法である。
ただし、ポリマー分散ポリオール(A)は、ポリオール(X)中で重合性不飽和基を有するモノマーを重合させることにより、ポリマー微粒子がポリオール中に分散したものであり、前記ポリオール(X)はポリエーテルポリオールを含み、前記重合性不飽和基を有するモノマーは、含フッ素アクリレートまたは含フッ素メタクリレートを含む。
【0011】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、前記含フッ素アクリレートまたは含フッ素メタクリレートが、下式(1)で表されるモノマーであることが好ましい。
【0012】
【化1】

ただし、式(1)中、Rは炭素数1〜18のポリフルオロアルキル基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、Zは2価の連結基である。
【0013】
また、本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、前記重合性不飽和基を有するモノマーが、さらにアクリロニトリルを含むことが好ましい。
また、本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、前記ポリエーテルポリオールは、オキシエチレン基含有量が10質量%以上であることが好ましい。
また、本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、前記ポリエーテルポリオールは、水酸基価が84mgKOH/g以下であることが好ましい。
また、本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、前記ポリエーテルポリオールは、多価アルコールに、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとを付加重合させて得られるポリオキシアルキレンポリオールであることが好ましい。
また、本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、前記重合性不飽和基を有する全モノマー中の前記式(1)で表されるモノマーの割合が30〜100質量%であることが好ましい。
また、本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、前記ポリオール成分(Z)中の前記ポリマー分散ポリオール(A)の割合が0.8質量%以上であり、かつ前記ポリオール成分(Z)中の前記ポリマー微粒子の割合が0.1質量%以上であることが好ましい。
また、本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、前記発泡剤として水単独、または、ハイドロフルオロカーボン化合物および炭化水素化合物から選ばれる少なくとも一種と水とを使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法によれば、寸法安定性が良好で、充分な断熱性能を有する硬質ポリウレタンフォームが得られる。また、使用するポリマー分散ポリオールと硬質ポリウレタンフォーム用ポリオールとの混合物を貯蔵した場合の貯蔵安定性に優れるため、硬質ポリウレタンフォームを安定に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
≪硬質ポリウレタンフォームの製造方法≫
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、ポリオール成分(Z)とポリイソシアネート成分とを、発泡剤、整泡剤および触媒の存在下で反応させて硬質ポリウレタンフォームを製造する方法である。
以下、各成分の詳細について説明する。
【0016】
[ポリオール成分(Z)]
本発明におけるポリオール成分(Z)は、前記の特定のポリマー分散ポリオール(A)を含む。
ポリオール成分(Z)のポリマー分散ポリオール(A)以外の成分としては、たとえばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、末端に水酸基を有する炭化水素系ポリマー等の通常硬質ポリウレタンフォームを製造する際に用いられるポリオール(本明細書において、「硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール」という。)を使用することができる。
硬質ポリウレタンフォーム用ポリオールは、その平均官能基数が2〜8であることが好ましい。
なお、官能基数とは、ポリイソシアネート成分と反応するポリオールの官能基(水酸基)の数を意味し、たとえばポリエーテルポリオールの場合、該ポリエーテルポリオールを製造する際に使用した開始剤の活性水素数に等しい。
硬質ポリウレタンフォーム用ポリオールとして具体的には、後述するポリマー分散ポリオール(A)において説明するポリオール(X)について例示するものと同様のものが挙げられる。
【0017】
ポリオール成分(Z)の平均水酸基価は200〜800mgKOH/gであり、250〜600mgKOH/gが好ましく、300〜500mgKOH/gがより好ましい。該平均水酸基価が200mgKOH/g以上であると、得られる硬質ポリウレタンフォームの強度が出やすいため好ましい。該平均水酸基価が800mgKOH/g以下であると、得られる硬質ポリウレタンフォームの脆さが出難いため好ましい。
本発明において、平均水酸基価とは、ポリオール成分(Z)を構成する全ポリオール化合物の水酸基価の平均値を意味する。
【0018】
(ポリマー分散ポリオール(A))
本発明におけるポリマー分散ポリオール(A)は、ポリオール(X)中で重合性不飽和基を有するモノマーを重合させることにより、ポリマー微粒子がポリオール中に分散したものであり、前記ポリオール(X)はポリエーテルポリオールを含み、前記重合性不飽和基を有するモノマーは、含フッ素アクリレートまたは含フッ素メタクリレートを含むものである。
ポリオール成分(Z)が、該ポリマー分散ポリオール(A)を含有することにより、寸法安定性が良好で、充分な断熱性能を有する硬質ポリウレタンフォームが得られる。また、該ポリマー分散ポリオール(A)は、前記硬質ポリウレタンフォーム用ポリオールとの相溶性が高く、それらの混合物を貯蔵した場合の貯蔵安定性に優れ、故に硬質ポリウレタンフォームを安定に製造できる。
本発明において、「ポリオール(X)中で」とは、ポリオール(X)単独の中であってもよく、後述の「ポリマー分散ポリオール(A)の製造方法」についての説明において例示する溶媒と、ポリオール(X)との混合物中であってもよい。
【0019】
・ポリオール(X)
ポリマー分散ポリオール(A)において、ポリオール(X)としては、たとえばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、末端に水酸基を有する炭化水素系ポリマーを使用することができる。
ただし、本発明において、ポリオール(X)は、ポリエーテルポリオールを少なくとも含む。ポリエーテルポリオールを含むことにより、前記硬質ポリウレタンフォーム用ポリオールとポリマー分散ポリオール(A)との相溶性が高まって貯蔵安定性が向上する。
【0020】
ポリエーテルポリオールとしては、たとえば多価アルコール、多価フェノール等のポリヒドロキシ化合物やアミン類等の開始剤に、アルキレンオキシド等の環状エーテルを付加重合させて得られるものを使用することができる。
開始剤として具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、水、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、シュークロース、トリエタノールアミン等の多価アルコール;ビスフェノールA、フェノール−ホルムアルデヒド初期縮合物等の多価フェノール;ピペラジン、アニリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、イソプロパノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、アンモニア、アミノメチルピペラジン、アミノエチルピペラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミノ化合物またはそれらの環状エーテル付加物が挙げられる。
前記開始剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
環状エーテルとしては、たとえば環内に1個の酸素原子を有する3〜6員環の環状エーテル化合物を使用することができる。
環状エーテルとして具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、トリメチルエチレンオキシド、テトラメチルエチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、スチレンオキシド、α−メチルスチレンオキシド、エピクロロヒドリン、エピフルオロヒドリン、エピブロモヒドリン、グリシドール、ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2−クロロエチルグリシジルエーテル、o−クロロフェニルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド、ジヒドロナフタレンオキシド、ビニルシクロヘキセンモノオキシド等の3員環状エーテル基を有する化合物(モノエポキシド);オキセタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の4〜6員環状エーテル基を有する化合物が挙げられる。
前記のなかでも、3員環状エーテル基を有する化合物(モノエポキシド)が好ましく、炭素数2〜4のアルキレンオキシドがより好ましく、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシドがさらに好ましく、エチレンオキシド、プロピレンオキシドが特に好ましい。
前記環状エーテルは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
環状エーテルの2種以上を組み合わせて使用する場合、環状エーテルとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキシドが好ましく、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの組み合わせが最も好ましい。その際、前記開始剤に、2種以上の環状エーテルの混合物を付加重合させたり、2種以上の環状エーテルを順次、付加重合させたりすることができる。
【0022】
ポリエーテルポリオールは、該ポリエーテルポリオール中のオキシエチレン基含有量が10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、55質量%以上であることが特に好ましく、60質量%以上であることが最も好ましい。一方、該オキシエチレン基含有量は、90質量%以下であることが好ましい。
該オキシエチレン基含有量が10質量%以上であると、ポリマー微粒子が安定に分散したポリマー分散ポリオール(A)が得られやすく貯蔵安定性が向上する。特に、該オキシエチレン基含有量が60質量%以上であると、より長期間(たとえば1ヶ月間程度)の貯蔵安定性が良好となる。
本発明において、「オキシエチレン基含有量」とは、ポリオール化合物中のオキシエチレン基の割合を意味する。
【0023】
また、ポリエーテルポリオールは、該ポリエーテルポリオールの水酸基価が84mgKOH/g以下であることが好ましく、67mgKOH/g以下であることがより好ましく、60mgKOH/g以下であることが特に好ましい。該水酸基価の下限値としては、5mgKOH/g以上であることが好ましく、8mgKOH/g以上であることがより好ましく、20mgKOH/g以上であることが特に好ましく、30mgKOH/gであることが最も好ましい。該水酸基価が84mgKOH/g以下であると、低粘度でありながら貯蔵安定性を良好にすることができ、5mgKOH/g以上であると貯蔵安定性が良好になるため好ましい。
ポリエーテルポリオールの水酸基価が84mgKOH/g以下である場合、ポリエーテルポリオール中のオキシエチレン基含有量は、該ポリエーテルポリオール中のOA基全体に対するオキシエチレン基含有量とほぼ等しくなる。
【0024】
また、前記ポリエーテルポリオールは、開始剤として多価アルコールを使用し、エチレンオキシド、または、エチレンオキシドと他の環状エーテルとを付加重合させて得られるものが好ましい。
多価アルコールとしては、たとえばグリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオールが好ましい。
他の環状エーテルとしては、たとえばプロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシドが好ましく、プロピレンオキシドが特に好ましい。
なかでも、前記ポリエーテルポリオールは、多価アルコールに、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとを付加重合させて得られるポリオキシアルキレンポリオールが好ましい。該ポリオキシアルキレンポリオールであると、ポリマー微粒子がより安定に分散したポリマー分散ポリオール(A)がさらに得られやすく貯蔵安定性がより向上する。
【0025】
ポリエステルポリオールとしては、たとえば多価アルコールと多価カルボン酸との重縮合によって得られるポリエステルポリオールを使用することができる。その他、たとえばヒドロキシカルボン酸の重縮合、環状エステル(ラクトン)の重合、ポリカルボン酸無水物への環状エーテルの重付加、廃ポリエチレンテレフタレートのエステル交換反応によって得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0026】
末端に水酸基を有する炭化水素系ポリマーとしては、たとえばポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリブタジエンポリオールを使用することができる。
【0027】
本発明において、ポリオール(X)としては、前記ポリエーテルポリオールを少なくとも含み、該ポリエーテルポリオール以外に、ポリエステルポリオール、末端に水酸基を有する炭化水素系ポリマー等を併用してもよい。
前記ポリエーテルポリオールの含有量は、ポリオール(X)中、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが最も好ましい。該含有量が50質量%以上、最も好ましくは100質量%であると、ポリマー微粒子が安定に分散したポリマー分散ポリオール(A)が得られやすく貯蔵安定性が向上する。
【0028】
・重合性不飽和基を有するモノマー
本発明における重合性不飽和基を有するモノマーは、含フッ素アクリレートまたは含フッ素メタクリレート(以下、「含フッ素モノマー」ということがある。)を含む。
該含フッ素モノマーを含むことにより、前記ポリオール(X)中でのポリマー微粒子の分散安定性が良好となる。また、使用するポリマー分散ポリオール(A)と前記硬質ポリウレタンフォーム用ポリオールとの相溶性が高まって貯蔵安定性が向上し、硬質ポリウレタンフォームを安定に製造しやすくなる。さらに、硬質ポリウレタンフォームとした際、寸法安定性が良好となり、同時に、良好な断熱性能も得られやすくなる。
【0029】
本発明において、含フッ素モノマーの好適なものとしては、ポリオール(X)との相溶性が高いことから、前記式(1)で表されるモノマーが挙げられる。
前記式(1)中、Rは、炭素数1〜18のポリフルオロアルキル基である。Rにおいて、炭素数は1〜18であり、1〜10であることが好ましく、3〜8であることがより好ましい。
は、アルキル基中のフッ素原子の割合(アルキル基中の水素原子がフッ素原子に置換されている個数の割合)が、80%以上であることが好ましく、全部の水素原子がフッ素原子で置換されていることが特に好ましい。炭素数が18以下であると、硬質ポリウレタンフォーム製造における発泡時、フォームの安定性が良好となり好ましい。
Rは、水素原子またはメチル基である。すなわち、前記式(1)で表されるモノマーは、Rが水素原子であればアクリレートとなり、Rがメチル基であればメタクリレートとなる。
Zは、2価の連結基であり、たとえばアルキレン基、アリーレン基が挙げられ、アルキレン基が好ましい。該アルキレン基は、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基が特に好ましく、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
前記式(1)で表されるモノマーの具体例を以下に例示する。
【0030】
【化2】

【0031】
前記含フッ素モノマーは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記含フッ素モノマーの使用量は、前記重合性不飽和基を有する全モノマーに対し、10〜100質量%であることが好ましく、30〜100質量%であることがより好ましい。
特に、前記重合性不飽和基を有する全モノマー中の前記式(1)で表されるモノマーの割合は、30〜100質量%であることが好ましく、40〜100質量%であることがより好ましく、50質量%であることが最も好ましい。
該使用量が10質量%以上、特に30質量%以上であると、貯蔵安定性がさらに優れる。また、特に、硬質ポリウレタンフォームとした際により良好な断熱性能が得られる。
前記より、本発明におけるポリマー微粒子は、含フッ素モノマー単独からなる重合体であってもよく、含フッ素モノマーと他の重合性不飽和基を有するモノマーとの共重合体であってもよい。なかでも、前記ポリオール(X)中でのポリマー微粒子の分散安定性が良好なことから、ポリマー微粒子は共重合体であることが好ましい。
【0032】
本発明において、前記含フッ素モノマーと併用してもよい重合性不飽和基を有するモノマーとしては、たとえばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、2,4−ジシアノブテン−1等のシアノ基含有モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン等のスチレン系モノマー;アクリル酸、メタクリル酸またはそれらのアルキルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアクリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;イソプレン、ブタジエンその他のジエン系モノマー;マレイン酸ジエステル、イタコン酸ジエステル等の不飽和脂肪酸エステル類;塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;またはそれら以外のオレフィン、ハロゲン化オレフィン、マクロモノマー等が挙げられる。
「マクロモノマー」とは、片末端にラジカル重合性不飽和基を有する低分子量のポリマーまたはオリゴマーのことをいう。
前記のなかでも、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレンが好ましく、より長期間(たとえば1ヶ月間程度)の貯蔵安定性が良好となることから、アクリロニトリルが特に好ましい。また、破泡効果が高く、寸法安定性が良好となることから、スチレンを用いることも好ましい。
前記含フッ素モノマー以外のモノマーは、1種、または2種以上を使用することができる。
【0033】
前記含フッ素モノマーとアクリロニトリルとを併用する場合、前記含フッ素モノマーとアクリロニトリルとの混合割合は、質量比で10:90〜90:10であることが好ましく、30:70〜70:30であることがより好ましい。該範囲であると、長期間の貯蔵安定性が向上する。また、特に、硬質ポリウレタンフォームとした際に断熱性能が向上する。
前記含フッ素モノマーとアクリロニトリルとを併用し、さらに、ポリオール(X)としてオキシエチレン基含有量が60質量%以上のポリエーテルポリオールを使用すると、貯蔵安定性が特に優れると共に、硬質ポリウレタンフォームとした際に充分な断熱性能が得られる。
【0034】
さらに、前記含フッ素モノマーとアクリロニトリルとスチレンとを併用する場合、前記含フッ素モノマーと、それ以外のモノマーとの混合割合は、質量比で10:90〜90:10であることが好ましく、30:70〜70:30であることがより好ましい。
また、アクリロニトリルとスチレンとの混合割合は、質量比で0:100〜100:0であることが好ましく、90:10〜10:90であることがより好ましい。
該混合割合であると、使用するポリマー分散ポリオールと硬質ポリウレタンフォーム用ポリオールとの混合物を貯蔵した場合の貯蔵安定性と、硬質ポリウレタンフォームとした際における寸法安定性および断熱性能がいずれも向上し、それら特性がバランスよく得られる。
【0035】
[ポリイソシアネート成分]
本発明におけるポリイソシアネート成分としては、特に制限はなく、たとえばイソシアネート基を2以上有する芳香族系、脂環族系および脂肪族系等のポリイソシアネート;該ポリイソシアネートの2種類以上の混合物;それらを変性して得られる変性ポリイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(通称:クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)等のポリイソシアネートまたはそれらのプレポリマー型変性体;イソシアヌレート変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体等が挙げられる。なかでも、TDI、MDI、クルードMDIまたはそれらの変性体が好ましい。
ポリイソシアネート成分は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
[発泡剤]
本発明における発泡剤としては、主に水が用いられる。水以外の発泡剤としては、たとえばハイドロフルオロカーボン化合物、炭化水素化合物、不活性ガスを併用することができる。
ハイドロフルオロカーボン化合物として具体的には、たとえば1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、1,1,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(HFE−236pc)、1,1,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル(HFE−254pc)、1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロプロピルメチルエーテル(HFE−347mcc)等が挙げられる。
炭化水素化合物として具体的には、たとえばブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。
不活性ガスとしては、たとえば空気、窒素、炭酸ガス等が挙げられる。なかでも、炭酸ガスが好ましい。不活性ガスの添加状態は、液状態、超臨界状態、亜臨界状態のいずれでも構わない。
【0037】
発泡剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明においては、発泡剤として水単独、または、ハイドロフルオロカーボン化合物および炭化水素化合物から選ばれる少なくとも一種と水とを使用することが好ましい。これにより、発泡効果が向上し、硬質ポリウレタンフォームの軽量化を図ることができる。
【0038】
[整泡剤]
本発明における整泡剤としては、特に制限はなく、たとえばシリコーン系整泡剤が好適なものとして挙げられる。その中でも、硬質ポリウレタンフォームの断熱性能を付与するため、セル径を小さくできる整泡効果が高いシリコーン系整泡剤が特に好ましい。
整泡剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
[触媒]
本発明における触媒としては、ウレタン化反応を促進する触媒であれば特に制限はない。
ウレタン化反応を促進する触媒としては、たとえばトリエチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン等の3級アミン類;ジブチルスズジラウレート等の有機金属化合物が挙げられる。
また、イソシアネート基の三量化反応を促進させる触媒を併用してもよく、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等のカルボン酸金属塩等が挙げられる。
また、硬質フォームの製造方法としてスプレー発泡を採用する場合には、反応を短時間で完結させるために、2−エチルヘキサン酸鉛等の有機金属触媒を併用することが好ましい。
【0040】
[その他の配合剤]
本発明においては、必要に応じて任意の配合剤を使用してもよい。
配合剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の充填剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤等の老化防止剤;難燃剤、可塑剤、着色剤、抗カビ剤、破泡剤、分散剤、変色防止剤等が挙げられる。
【0041】
<硬質ポリウレタンフォームの製造方法>
本発明は、ポリオール成分(Z)とポリイソシアネート成分とを、発泡剤、整泡剤および触媒の存在下で反応させて硬質ポリウレタンフォームを製造する方法である。
製造の際は予め、ポリオール成分(Z)を調製し、該ポリオール成分(Z)と、ポリイソシアネート成分以外の一部または全部との混合物(以下、ポリオールシステム液という。)を調製しておくことが好ましい。
なお、発泡剤は、ポリオールシステム液に予め配合しておいてもよく、ポリオールシステム液にポリイソシアネート成分を混合した後に配合してもよく、なかでもポリオールシステム液に予め配合しておくことが好ましい。
【0042】
ポリオール成分(Z)は、たとえばポリマー分散ポリオール(A)と硬質ポリウレタンフォーム用ポリオールとを混合することにより調製することができる。
ポリマー分散ポリオール(A)の製造方法は、ポリオール(X)中で重合性不飽和基を有するモノマーを重合させることにより、該モノマーが重合したポリマー微粒子がポリオール中に分散したポリマー分散ポリオールを製造する方法であれば、特に限定されるものではない。たとえば、ポリオール(X)中でのポリマー微粒子の分散安定性が良好なことから、必要に応じて溶媒の存在下、ポリオール(X)中で重合性不飽和基を有するモノマーを重合し、直接ポリマー微粒子を析出させてポリマー分散ポリオールを得る製造方法が好適な方法として挙げられる。
【0043】
ポリマー分散ポリオール(A)の製造方法として具体的には、たとえば以下の(a)、(b)の製造方法が挙げられる。
(1)反応器内にポリオール(X)の一部を仕込み、撹拌下、該反応器内に残りのポリオール(X)、重合性不飽和基を有するモノマー、重合開始剤等の混合物を、徐々にフィードして重合を行うバッチ法。
(2)ポリオール(X)、重合性不飽和基を有するモノマー、重合開始剤等の混合物を、撹拌下、反応器内に連続的にフィードして重合を行い、同時に、生成したポリマー分散ポリオールを連続的に反応器から排出する連続法。
本発明においては、(1)、(2)のいずれの製造方法も用いることができる。
【0044】
本発明において、前記重合性不飽和基を有する全モノマーの使用量は、特に限定されないが、ポリマー分散ポリオール(A)中のポリマー微粒子の濃度が50質量%以下となる量とすることが好ましく、1〜50質量%となる量とすることがより好ましく、2〜45質量%となる量とすることが特に好ましく、5〜30質量%となる量とすることが最も好ましい。該ポリマー微粒子の濃度を50質量%以下とすると、前記ポリオール(X)中でポリマー微粒子が安定に分散したポリマー分散ポリオール(A)がさらに得られやすくなって貯蔵安定性がより向上する。また、適度な粘度が得られ、ポリマー分散ポリオール(A)の液安定性が向上する。
【0045】
ポリマー分散ポリオール(A)の製造方法において、重合開始剤としては、通常、遊離基を生成させて重合性不飽和基を有するモノマーの重合を開始させるものが用いられる。
具体的には、たとえば2,2−アゾビス−イソブチロニトリル(以下、「AIBN」と略す。)、2,2−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、アセチルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、過硫酸塩等が挙げられる。なかでも、AIBN、2,2−アゾビス−2−メチルブチロニトリルが好ましい。
該重合開始剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
該重合開始剤の使用量は、ポリオール(X)、含フッ素モノマーを含む重合性不飽和基を有する全モノマーおよび必要に応じて使用される安定化剤またはグラフト化剤(後述)の合計100質量部に対し、0.01〜10質量部であることが好ましい。
【0046】
溶媒としては、たとえばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール類;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘキセン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、アセトフェノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ベンジルエチルエーテル、アセタール、アニソール、メチル−tert−ブチルエーテル等のエーテル類;クロロベンゼン、クロロホルム、ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素;ニトロベンゼン等のニトロ化合物;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン等のアミン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の硫黄化合物等が挙げられる。
前記溶媒は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリマー分散ポリオール(A)の製造において、溶媒を使用する場合、該溶媒と前記ポリオール(X)との混合割合は、質量比で0:100〜60:40であることが好ましく、0:100〜40:60であることがより好ましい。該混合割合の範囲であると、ポリマー粒子同士の凝集が抑制され、ポリマー微粒子が安定に分散したポリマー分散ポリオール(A)が得られやすくなる。
重合性不飽和基を有するモノマーの重合が終了した後、該溶媒は除去される。溶媒の除去方法は、通常、減圧加熱により行われる。また、常圧加熱または減圧常温下により行うこともできる。この際、溶媒とともに未反応モノマーも除去される。
【0047】
ポリオール(X)中での重合性不飽和基を有するモノマーの重合反応は、重合開始剤の分解温度以上、通常は80〜160℃で行われ、90〜150℃で行われることが好ましく、100〜130℃で行われることが特に好ましい。
【0048】
また、本発明においては、ポリマー分散ポリオール(A)中のポリマー微粒子の分散安定性を向上させるため、安定化剤またはグラフト化剤を使用することができる。
安定化剤またはグラフト化剤の好適なものとしては、たとえば分子内に不飽和結合を有する化合物が挙げられる。具体的には、開始剤としてビニル基、アリル基、イソプロピル基等の不飽和結合含有基を有する活性水素化合物に、アルキレンオキシドを反応させて得られた高分子量のポリオールまたはモノオール;ポリオールに、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸またはその酸無水物を反応させた後、必要に応じてプロピレンオキシド、エチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加して得られた高分子量のポリオールまたはモノオール;2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブテンジオール等の不飽和アルコールと他のポリオールとポリイソシアネートとの反応物;アリルグリシジルエーテル等の不飽和エポキシ化合物とポリオールとの反応物等が挙げられる。
これらの安定化剤またはグラフト化剤は、水酸基を有していてもよく、水酸基を有していなくてもよいが、水酸基を有していることが好ましい。
該安定化剤またはグラフト化剤は、ポリオール(X)、重合性不飽和基を有するモノマーおよび重合開始剤等と共に混合して配合することができる。
【0049】
重合反応終了後、得られたポリマー分散ポリオール(A)は、硬質ポリウレタンフォーム用の原料としてそのまま使用してもよく、得られたポリマー分散ポリオール(A)を減圧処理して未反応モノマーを除去した後に使用してもよく、なかでも後者の方が好ましい。
【0050】
ポリオール成分(Z)の調製において、ポリマー分散ポリオール(A)と硬質ポリウレタンフォーム用ポリオールとの混合割合は、ポリオール成分(Z)中のポリマー分散ポリオール(A)の割合が0.1質量%以上であることが好ましく、0.8質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。一方、該ポリマー分散ポリオール(A)の割合は10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましい。
また、ポリオール成分(Z)中のポリマー微粒子の割合が0.005質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.3質量%以上であることがさらに好ましい。一方、該ポリマー微粒子の割合は5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
ポリオール成分(Z)中のポリマー分散ポリオール(A)およびポリマー微粒子の割合がそれぞれ下限値以上であると、硬質ポリウレタンフォームとした際に寸法安定性および断熱性能が共に向上する。一方、上限値以下であると、貯蔵安定性が向上し、硬質ポリウレタンフォームを安定に製造できる。また、ポリオール成分(Z)として適度な粘度が得られやすく液安定性が向上する。
【0051】
発泡剤として用いる水の使用量は、ポリオール成分(Z)100質量部に対して、1〜15質量部が好ましく、2〜13質量部がより好ましく、4〜12質量部がさらに好ましい。水の使用量が1質量部以上であれば、得られる硬質ポリウレタンフォームの軽量化の点で好ましい。一方、水の使用量が15質量部以下であれば、水とポリオール成分(Z)との混合性がより良好になるため好ましい。
発泡剤として水以外のものを併用する際、水以外のものとしてハイドロフルオロカーボン化合物を用いる場合の使用量は、ポリオール成分(Z)100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、20〜40質量部がより好ましい。
炭化水素化合物を用いる場合の使用量は、ポリオール成分(Z)100質量部に対して、1〜40質量部が好ましく、10〜20質量部がより好ましい。
不活性ガスを用いる場合の使用量は、ポリオール成分(Z)100質量部に対して、1〜100質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましい。
【0052】
整泡剤の使用量は、適宜選定する必要があるが、ポリオール成分(Z)100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。
触媒の使用量は、ポリオール成分(Z)100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。
【0053】
ポリイソシアネート成分の使用量は、イソシアネート指数(INDEX)で50〜300が好ましい。
なお、イソシアネート指数(INDEX)とは、ポリオール成分(Z)およびその他の活性水素化合物の活性水素の合計数に対するイソシアネート基の数の割合を100倍して表される値を示す。
触媒としてウレタン化触媒を主に用いるポリウレタン処方においては、ポリイソシアネート成分の使用量は、イソシアネート指数で50〜140が好ましく、60〜130がより好ましい。
また、触媒としてイソシアネート基の三量化反応を促進させる触媒を主に用いるポリイソシアヌレート処方(ウレタン変性ポリイソシアヌレート処方)においては、ポリイソシアネート成分の使用量は、イソシアネート指数で120〜300が好ましく、150〜250がより好ましい。
【0054】
本発明における硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、各種の成形法に適用できる。
成形法としては、たとえば注入、連続生産ボード、スプレー発泡フォームが挙げられる。
注入とは、金型等の枠内に硬質ポリウレタンフォーム原料を注入し、発泡させる方法である。連続生産ボードとは、2枚の面材間に硬質ポリウレタンフォームが挟まれた積層体であり、建築用途として断熱材に用いられるものである。スプレー発泡フォームとは、硬質ポリウレタンフォームをスプレーで吹き付け施工するものである。
前記のなかでも、本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、注入ウレタンフォーム、連続生産ボード、スプレー発泡フォーム等の製造に好適に適用できる。
【0055】
前記のように、本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法によれば、寸法安定性が良好で、充分な断熱性能を有する硬質ポリウレタンフォームが得られる。また、使用するポリマー分散ポリオールと硬質ポリウレタンフォーム用ポリオールとの混合物を貯蔵した場合の貯蔵安定性に優れるため、硬質ポリウレタンフォームを安定に製造できる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら例によって何ら限定されない。
以下の実施例において、水酸基価は、JIS K1557(1970年版)に準拠して測定した。粘度は、JIS K1557(1970年版)に準拠して測定した。ポリマー微粒子の濃度(固形分)は、重合性不飽和基を有するモノマーの仕込み量を微粒子濃度(固形分)とした。
ポリマー分散ポリオールの製造(製造例1〜8)におけるモノマーの反応率は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製)によって作成した検量線より算出した。
【0057】
≪ポリマー分散ポリオールの評価≫
表1に示す配合比に従って、下記製造例1〜8によりポリマー分散ポリオールF1〜F8を製造した。
ポリマー分散ポリオール製造時の配合組成、得られたポリマー分散ポリオールF1〜F8の水酸基価(mgKOH/g)、粘度(mPa・s)およびポリマー微粒子の濃度(固形分;質量%)を表1にそれぞれ示す。
表1の配合組成において、ポリオールD〜Gおよび重合性不飽和基を有するモノマーは「g」;重合開始剤は、ポリオールD〜Gと重合性不飽和基を有する全モノマーとの合計100質量部に対する「質量部」の値である。
【0058】
(使用した原料)。
・ポリエーテルポリオール
ポリオールD:開始剤としてグリセリンを用い、該グリセリンに、プロピレンオキシド(PO)とエチレンオキシド(EO)との混合物[PO/EO=33/67(質量比)]を付加重合させた、ポリオールD中のオキシエチレン基含有量65質量%、水酸基価が50mgKOH/gのポリオキシアルキレンポリオール。
ポリオールE:開始剤としてグリセリンを用い、該グリセリンに、PO/EO=85.5/14.5(質量比)となるようにPOを付加重合させた後、EOを付加重合させた、ポリオールE中のオキシエチレン基含有量14.2質量%、水酸基価が34mgKOH/gのポリオキシアルキレンポリオール。
【0059】
ポリオールF:開始剤としてエチレンジアミンを用い、該エチレンジアミンに、POを付加重合させた、ポリオールF中のオキシエチレン基含有量 0質量%、水酸基価が760mgKOH/gのポリオキシアルキレンポリオール。
ポリオールG:開始剤としてグリセリンを用い、該グリセリンに、POを付加重合させた、ポリオールG中のオキシエチレン基含有量 0質量%、水酸基価650mgKOH/gのポリオキシアルキレンポリオール。
【0060】
・含フッ素モノマー
含フッ素モノマー(f):下記化学式(1−1)で表されるモノマー(旭硝子社製)を用いた。
【0061】
【化3】

【0062】
・他の重合性不飽和基を有するモノマー
アクリロニトリル(純正化学製)。
スチレン(ゴードー溶剤製)。
酢酸ビニル(純正化学製)。
・重合開始剤
2,2−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(商品名:ABN−E、日本ヒドラジン製;以下、「AMBN」と略す。)。
【0063】
<ポリマー分散ポリオールの製造>
製造例1:ポリマー分散ポリオールF1の製造
5L加圧反応槽にポリオールDの70質量%分を仕込み、120℃に保ちながら、残りの30質量%分のポリオールD、アクリロニトリル、含フッ素モノマー(f)および重合開始剤(AMBN)の混合物を、撹拌しながら2時間かけてフィードし、全フィード終了後、同温度下で約0.5時間撹拌を続けた。その際、前記方法により測定されるモノマーの反応率が80%以上であることを確認して反応を終了した。その後、未反応モノマーを、120℃、20Paで8時間加熱減圧脱気して除去することによりポリマー分散ポリオールF1を製造した。結果を表1に示す。
【0064】
製造例2:ポリマー分散ポリオールF2の製造
5L加圧反応槽にポリオールDの70質量%分を仕込み、120℃に保ちながら、残りの30質量%分のポリオールD、アクリロニトリル、スチレン、含フッ素モノマー(f)および重合開始剤(AMBN)の混合物を、撹拌しながら1時間かけてフィードし、全フィード終了後、同温度下で約0.5時間撹拌を続けた。その際、前記方法により測定されるモノマーの反応率が80%以上であることを確認して反応を終了した。その後、未反応モノマーを、120℃、20Paで6時間加熱減圧脱気して除去することによりポリマー分散ポリオールF2を製造した。結果を表1に示す。
【0065】
製造例3〜7:ポリマー分散ポリオールF3〜F7の製造
表1の重合性不飽和基を有するモノマーを用いた以外は、製造例1と同様にしてポリマー分散ポリオールF3〜F7をそれぞれ製造した。結果を表1に示す。
【0066】
製造例8:ポリマー分散ポリオールF8の製造
5L加圧反応槽にポリオールD、ポリオールF、ポリオールG、アクリロニトリル、酢酸ビニルおよび重合開始剤(AMBN)を全て仕込んだ後、撹拌しながら昇温を開始し、反応液を80℃に保ちながら10時間反応させた。その際、前記方法により測定されるモノマーの反応率が80%以上であることを確認して反応を終了した。その後、未反応モノマーを、110℃、20Paで2時間加熱減圧脱気して除去することによりポリマー分散ポリオールF8を製造した。結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
<貯蔵安定性の評価>
表2に示す試験例1〜8の配合比に従って、製造例1〜7で製造されたポリマー分散ポリオールF1〜F7と下記ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末を、下記ポリオールA〜Cを混合した混合ポリオールにそれぞれ添加して評価サンプルを調製した。
そして、該評価サンプルを、23℃で1週間貯蔵し、貯蔵後の評価サンプルの外観(分離状態)を目視観察し、下記評価基準により、貯蔵安定性(1週間)を評価した。
評価基準
○:均一な分散溶液であった。
×:ポリマー微粒子またはPTFE粉末と、ポリオールとが分離していた。
【0069】
(使用した原料)
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末(商品名:ポリテトラフルオロエチレン樹脂粉末fluon L−173、旭硝子社製)。
【0070】
・硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール
ポリオールA:開始剤としてトリレンジアミンを用い、該トリレンジアミンに、EOとPOとEOとを、この順序で付加重合させた、水酸基価が350mgKOH/gであり、EOとPOとの合計に対するEOの割合が25質量%のポリエーテルポリオール。
ポリオールB:開始剤としてN−(2−アミノエチル)ピペラジンを用い、該N−(2−アミノエチル)ピペラジンに、EOのみを付加重合させた、水酸基価が350mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
ポリオールC:開始剤としてシュークロースとグリセリンとの混合物(質量比で5:4)を用い、該混合物に、POのみを付加重合させた、水酸基価が380mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
【0071】
【表2】

【0072】
表2に示した結果から、ポリマー分散ポリオールF1〜F7を用いた試験例1〜7は、貯蔵安定性が良好であることが確認できた。
一方、PTFE粉末を用いた試験例8は、貯蔵安定性が悪いことが確認された。
したがって、本発明にかかるポリマー分散ポリオールF1〜F7は、硬質ポリウレタンフォーム用ポリオールとの相溶性が高く、それらの混合物を貯蔵した場合の貯蔵安定性に優れていることが確認できた。
【0073】
≪硬質ポリウレタンフォームの評価≫
表3に示す製造例11〜18の配合比に従って、下記製造方法により硬質ポリウレタンフォームを製造した。
表3の配合組成において、各原料の使用量の単位は「質量部」である。
【0074】
(使用した原料)。
・ポリオール成分
ポリオールA〜C、PTFE粉末:表2に記載したものと同一。
ポリオールD、F1〜F4、F6、F8:表1に記載したものと同一。
【0075】
・難燃剤:トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート(商品名:TMCPP、大八化学社製)。
・発泡剤:水。
・整泡剤:シリコーン系整泡剤(商品名:SZ−1671、東レ・ダウコーニング社製)。
・触媒:N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン(商品名:TOYOCAT MR、東ソー社製)。
・ポリイソシアネート:ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI)(商品名:MR−200、日本ポリウレタン工業社製)。
【0076】
<硬質ポリウレタンフォームの製造>
1Lポリビーカーに、表3に示すポリオール成分100質量部、発泡剤6質量部、整泡剤1質量部、触媒0.5質量部および難燃剤10質量部をそれぞれ投入し、これらを撹拌機でよく混合し、ポリオールシステム液を得た。
ポリイソシアネートの使用量は、イソシアネート指数(INDEX)で110とした。
ポリオールシステム液とポリイソシアネート成分の原料双方の液温を20℃に保温した後、回転数3000rpmで5秒間撹拌混合した。その後、縦200×横200×高さ200mmの木製ボックスに投入し、自由発泡を行い、硬質ポリウレタンフォームを製造した。
【0077】
<硬質ポリウレタンフォームの評価>
得られた各製造例の硬質ポリウレタンフォームにおいて、ゲルタイム(秒)、全密度としてボックスフリー密度(単位:kg/m)、圧縮強度(単位:MPa)、寸法安定性として高温収縮(単位:%)、断熱性能として24℃における熱伝導率(単位:mW/m・K)をそれぞれ測定した。また、貯蔵安定性として下記評価を行った。それらの結果を表3に示す。
【0078】
ゲルタイムの測定は、発泡途中のフォームに針金を差し込み、引き上げる時に糸引きが発生するまでの時間(秒)を測定した。
全密度(ボックスフリー密度)の測定は、JIS K7222(1998年版)に準拠し、質量と体積から求めた。
圧縮強度は、JIS A9511に準拠して測定した。試料片の大きさは、5cm×5cm×5cmとした。また、重力方向に対して平行方向(//)および垂直方向(⊥)の圧縮強度について測定した。表3中、「//+⊥」は、平行方向(//)の圧縮強度と、垂直方向(⊥)の圧縮強度とを足し合わせた圧縮強度を表す。
【0079】
(寸法安定性の評価)
高温収縮は、ASTM D 2126−75に準じた方法で測定し、高温寸法安定性および湿熱寸法安定性の評価を行った。
試料として各例の硬質ポリウレタンフォームの縦(Z)100mm×横(X)150mm×厚さ(Y)75mmを切り出して用いた。
高温寸法安定性は70℃、湿熱寸法安定性は70℃で相対湿度95%のそれぞれの雰囲気下に、試料片を24時間保存し、増加した長さ(厚さ)を、保存前の長さ(厚さ)に対する寸法変化率(単位:%)で表した。すなわち、2条件で各3方向(X、Y、Z)の全6方向について寸法変化率をそれぞれ測定した。
ただし、寸法変化率において、負の数値は収縮を意味し;絶対値が大きいことは、寸法変化が大きいことを意味する。寸法変化は、下記評価基準により評価した。
評価基準
◎:6方向の寸法変化率の中の絶対値の最大値が1%未満であった。
○:6方向の寸法変化率の中の絶対値の最大値が1%以上5%未満であった。
△:6方向の寸法変化率の中の絶対値の最大値が5%以上10%未満であった。
×:6方向の寸法変化率の中の絶対値の最大値が10%以上であった。
【0080】
(断熱性の評価)
熱伝導率(単位:mW/m・K)は、JIS A1412に準拠し、熱伝導率測定装置(製品名:オートラムダHC−074型、英弘精機社製)を用いて測定した。
断熱性は、下記評価基準により評価した。
評価基準
○:熱伝導率が27以下であった。
×:熱伝導率が27超であった。
【0081】
(貯蔵安定性の評価)
表3に示す製造例11〜18の配合比に従って、ポリオールA、ポリオールBおよびポリオールCを混合した後に、F1〜F4、F6、F8、PTFE粉末、ポリオールDをそれぞれ添加、混合して混合ポリオール300gを調製し、蓋付きガラス瓶に入れた。そして、23℃で1週間、または23℃で1ヶ月間貯蔵し、貯蔵後の混合ポリオールの上層から注射器で上層液100gを抜き取り、下層から下層液100gが取れるように液を廃棄し、下層から下層液100gの混合ポリオールを採取した。
次いで、前記<硬質ポリウレタンフォームの製造>において、ポリオール成分100質量部に代えて、上層液100質量部または下層液100質量部を用いた以外は、<硬質ポリウレタンフォームの製造>と同様にして硬質ポリウレタンフォームを製造した。
そして、得られた硬質ポリウレタンフォームの特性から、下記評価基準に基づいて貯蔵安定性を評価した。
貯蔵安定性が悪い場合、貯蔵中に上層もしくは下層にポリマー分散ポリオールが移行して、混合ポリオールの上下の組成が異なり、これを用いて製造された硬質ポリウレタンフォームの特性に影響を与える。そのため、上層液と下層液の各々を用いた場合の発泡状態、または、得られる硬質ポリウレタンフォームの寸法変化率により貯蔵安定性を評価できる。
評価基準
○:上層液および下層液を発泡したもののいずれにも発泡不良が見られず、かつ硬質ポリウレタンフォームの寸法変化率の絶対値がいずれも5%未満であった。
×:上層液および下層液を発泡したもののいずれかに発泡不良が見られるか、またはいずれかの硬質ポリウレタンフォームの寸法変化率の絶対値が5%以上であった。
【0082】
【表3】

【0083】
表3に示した結果から明らかなように、ポリマー分散ポリオールF1〜F4、F6を用いて製造された、本発明にかかる製造例11〜15の硬質ポリウレタンフォームは、寸法安定性が良好で、充分な断熱性能を有することが確認できた。
また、ポリマー分散ポリオールF1〜F4、F6と、硬質ポリウレタンフォーム用ポリオールとの混合物(混合ポリオール)を貯蔵した場合、それぞれの混合物は、貯蔵安定性(1週間)に優れることが分かった。故に、本発明にかかる製造例11〜15の硬質ポリウレタンフォームは、安定に製造できることが確認できた。
【0084】
また、ポリマー分散ポリオールF1〜F3と、硬質ポリウレタンフォーム用ポリオールとの混合物(混合ポリオール)を貯蔵した場合、それぞれの混合物は、さらに貯蔵安定性(1ヶ月間)にも優れることが確認できた。
これにより、ポリエーテルポリオール中のオキシエチレン基含有量を60質量%以上とし、かつ重合性不飽和基を有するモノマーとしてアクリロニトリルを含むポリマー分散ポリオールを使用することにより、さらに顕著な貯蔵安定性の向上効果が得られ、硬質ポリウレタンフォームをより安定に製造できることが分かった。
【0085】
一方、PTFE粉末を用いた場合、貯蔵安定性(1週間、1ヶ月)が悪いことが確認された。
含フッ素モノマー(f)を用いていないポリマー分散ポリオールF8を用いて製造された製造例16の硬質ポリウレタンフォームは、断熱性能が悪いことが確認された。
ポリマー微粒子を含まないポリオールDを用いて製造された製造例18の硬質ポリウレタンフォームは、寸法安定性が悪いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の製造方法により、軽量化が図られ、断熱性および寸法安定性が共に優れた硬質ポリウレタンフォームが得られる。また、本発明において用いられるポリマー分散ポリオールは、硬質ポリウレタンフォーム用の分子量の小さいポリオールと混合しておいても貯蔵安定性が良好である。本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、注入ウレタンフォーム、連続生産ボード、スプレー発泡フォーム等の製造に好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分(Z)とポリイソシアネート成分とを、発泡剤、整泡剤および触媒の存在下で反応させて硬質ポリウレタンフォームを製造する方法において、
前記ポリオール成分(Z)は、平均水酸基価が200〜800mgKOH/gであり、かつ下記ポリマー分散ポリオール(A)を含有することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
ただし、ポリマー分散ポリオール(A)は、ポリオール(X)中で重合性不飽和基を有するモノマーを重合させることにより、ポリマー微粒子がポリオール中に分散したものであり、前記ポリオール(X)はポリエーテルポリオールを含み、前記重合性不飽和基を有するモノマーは、含フッ素アクリレートまたは含フッ素メタクリレートを含む。
【請求項2】
前記含フッ素アクリレートまたは含フッ素メタクリレートが、下式(1)で表されるモノマーである請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【化1】

ただし、式(1)中、Rは炭素数1〜18のポリフルオロアルキル基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、Zは2価の連結基である。
【請求項3】
前記重合性不飽和基を有するモノマーが、さらにアクリロニトリルを含む請求項1または2に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項4】
前記ポリエーテルポリオールは、オキシエチレン基含有量が10質量%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項5】
前記ポリエーテルポリオールは、水酸基価が84mgKOH/g以下である請求項1〜4のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項6】
前記ポリエーテルポリオールは、多価アルコールに、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとを付加重合させて得られるポリオキシアルキレンポリオールである請求項1〜5のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項7】
前記重合性不飽和基を有する全モノマー中の前記式(1)で表されるモノマーの割合が30〜100質量%である請求項2〜6のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項8】
前記ポリオール成分(Z)中の前記ポリマー分散ポリオール(A)の割合が0.8質量%以上であり、かつ前記ポリオール成分(Z)中の前記ポリマー微粒子の割合が0.1質量%以上である請求項1〜7のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項9】
前記発泡剤として水単独、または、ハイドロフルオロカーボン化合物および炭化水素化合物から選ばれる少なくとも一種と水とを使用する請求項1〜8のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。

【公開番号】特開2010−31064(P2010−31064A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312812(P2006−312812)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】