説明

硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】断熱性能に優れたペンタン発泡硬質ポリウレタンフォームを製造するためのポリオール組成物及びペンタン発泡硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリオール化合物及び発泡剤を含み、ポリイソシアネート成分と混合、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するための硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物であって、前記発泡剤はペンタン類及び水を含有するものであり、前記ポリオール化合物はクリプトン、キセノン、HFC化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む結晶性ゼオライトを含有することを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンタン類及び水を発泡剤成分として使用し、断熱性能に優れた硬質ポリウレタンフォームを製造するためのポリオール組成物及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォームは、断熱材、軽量構造材等として周知の材料である。かかる硬質ポリウレタンフォームは、ポリオール化合物、発泡剤を必須成分として含有するポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合して反応させ、発泡、硬化させることにより形成される。
【0003】
近年、省エネルギーの観点から、発泡後の硬質ポリウレタンフォームの熱伝導率を低減し、断熱性能を向上させることが重要な課題となっている。基本的に、硬質ポリウレタンフォームの断熱性能を向上するには、フォームセル内ガス成分の熱伝導率を低減することが重要であり、熱伝導率の低い気体成分でフォームセル内を満たすことが効果的手段とされてきた。このため、発泡剤として熱伝導率の低いCFC−11等のフロン化合物が古くから使用されていた。しかし、CFC化合物はオゾン層の破壊を引き起こすことから禁止され、HCFC−141bに切り換えられ、さらに2004年からはオゾン層破壊係数がゼロであるHFC化合物への切り換えが行われているが、HFC化合物は高価であるという問題を有する。
【0004】
HFC化合物等のハロゲン化炭化水素化合物に代えて、オゾン破壊係数がゼロであり、地球温暖化へ与える影響も極めて小さく、低コストの発泡剤としてn−ペンタン、iso−ペンタン、シクロペンタン等のペンタン類を水と併用する技術が公知である。しかし、このような構成においては熱伝導率の高い炭酸ガスがフォームセル内に高い比率で残存するため、硬質ポリウレタンフォームの断熱性能は悪化する傾向にある。
【0005】
上記問題を鑑みて、フォームセル内の炭酸ガスを除去することにより硬質ポリウレタンフォームの断熱性能を向上する手段として、例えば特許文献1では、ゼオライト等から成る吸着剤を原料中に予め添加混合し、生成した炭酸ガスを吸着剤にて吸着除去し、フォームセル内をフロン系ガスで満たすことで断熱性能を向上させる方法が提案されている。
【0006】
しかし、上記方法においては、ゼオライト等から成る吸着剤が炭酸ガスの吸着以上に水分を選択優先的に吸着し、ポリイソシアネート成分と水との反応が充分に起こらないため、ポリイソシアネート成分と水との反応熱に起因する発泡初期の発熱が少ない。したがって、沸点の高いペンタン類を発泡剤として用いた場合には、ペンタン類が充分に気化できず、フォーム発泡効率が低下するため、セル径分布が狭くボイドの少ないフォームを得ることができない。
【0007】
また、例えば特許文献2では、発泡剤であるシクロペンタンを含浸したゼオライト及び水を混合したポリオール成分とイソシアネート成分を混合・発泡することにより硬質ポリウレタンフォームを得ることが記載されている。
【0008】
しかし、上記方法においては、強燃性で引火性のあるシクロペンタンを発泡剤として使用した場合に問題となる火災や爆発等の危険性を低減する効果を有するものの、発泡剤であるシクロペンタンをゼオライトに含浸させない場合に比べて発泡・硬化後に得られる硬質ポリウレタンの断熱性能が改良されるわけではない。
【特許文献1】特開昭57−49628号公報
【特許文献2】特開平8−157636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、断熱性能に優れたペンタン発泡硬質ポリウレタンフォームを製造するためのポリオール組成物及びペンタン発泡硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下に示す組成物により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物は、ポリオール化合物及び発泡剤を含み、ポリイソシアネート成分と混合、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するための硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物であって、前記発泡剤はペンタン類及び水を含有するものであり、前記ポリオール化合物はクリプトン、キセノン、HFC化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む結晶性ゼオライトを含有することを特徴とする。
【0012】
上記構成のポリオール組成物を使用して得られた硬質ポリウレタンフォームは、断熱性能に優れ、さらに経時的な断熱性能の悪化も抑制された硬質ポリウレタンフォームである。かかる効果が得られる理由は、ポリオール化合物がクリプトン、キセノン、HFC化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む結晶性ゼオライトを含有するため、フォーム発泡時の発熱により熱伝導率の低いクリプトン、キセノン及び/又はHFC化合物がガス化し、フォームセル内を充填するためであると推測される。上記理由に加えて、クリプトン、キセノン及び/又はHFC化合物のガス化により、結晶性ゼオライトの気孔が空洞化し、その空洞化した気孔に熱伝導率の高い炭酸ガスが吸着除去されるため、フォーム発泡初期のみならず経時的な断熱性能の悪化を抑制することが可能となるものと推測される。
【0013】
また、発泡剤としてペンタン類及び水を含有するポリオール組成物中に結晶性ゼオライトを添加すると、通常は水が選択優先的に結晶性ゼオライトに吸着除去される。その結果、ポリイソシアネート成分と水との反応熱に起因する発泡初期の発熱が少なくなり、ペンタン類が充分に気化できず、フォーム発泡効率が低下することが考えられる。しかし、本発明では結晶性ゼオライトがクリプトン、キセノン、HFC化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことにより飽和状態となり、事前に結晶性ゼオライトと水との吸着能力が無くなるため、ポリイソシアネート成分と水との反応を阻害しない。このため、ポリイソシアネート成分と水との反応熱に起因する発泡初期の発熱が低下し難い。これにより、ペンタン類が充分に気化し、フォーム発泡効率の低下を抑制するため、セル径分布が狭くボイドの少ないフォームが得られるものと推測される。
【0014】
また、クリプトン、キセノン、HFC化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む結晶性ゼオライトの含有量は、ポリオール組成物及びポリイソシアネート成分の合計100重量部に対して5〜40重量部であることにより、フォーム発泡後のフォームセル内に存在する炭酸ガスが吸着除去され、より断熱性能が高い硬質ポリウレタンフォームが得られる。
【0015】
また、結晶性ゼオライトに対するクリプトン、キセノン、HFC化合物からなる群より選択される少なくとも1種の含有量が5〜20重量%であることにより、強度及び寸法安定性等が良好に保持され、より断熱性能が高い硬質ポリウレタンフォームが得られる。
【0016】
別の本発明は、ポリオール化合物及び発泡剤を含むポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合して発泡原液組成物とし、前記発泡原液組成物を発泡・硬化させる硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、前記発泡剤はペンタン類及び水を含有するものであり、前記ポリオール化合物はクリプトン、キセノン、HFC化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む結晶性ゼオライトを含有することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【0017】
上記の構成により、断熱性能が高く、さらに経時的な断熱性能の悪化も抑制された硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。なお、上記構成において、クリプトン、キセノン、HFC化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む結晶性ゼオライトはポリオール組成物中に含まれるが、ポリイソシアネート成分に含まれるものであっても、断熱性能が高く、さらに経時的な断熱性能の悪化も抑制された硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のポリオール化合物に含まれる結晶性ゼオライトは、アルミノ珪酸塩質の結晶材料であり、結晶中に微細な細孔を有し、化学組成によって結晶構造、吸着性能が変化する。結晶性ゼオライトは、ペレット形状のものやパウダー状のものがあるが、パウダー状の結晶性ゼオライトを使用した場合、ポリオール組成物中で凝集することなく分散するため好ましい。また、水分及び炭酸ガスを吸着除去するためには、結晶性ゼオライト中の細孔の孔径は0.30nm〜1.2nmのものが好ましく、0.40nm〜1.2nmのものがより好ましい。
【0019】
上記結晶性ゼオライトは、クリプトン、キセノン、HFC化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む。クリプトン、キセノン、HFC化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む結晶性ゼオライトの含有量は、ポリオール組成物及びポリイソシアネート成分の合計100重量部に対して5〜40重量部であることが好ましく、10〜30重量部であることがより好ましい。5重量部未満であると、充分な断熱性能の向上効果が得られず、40重量部を超えると、発泡・硬化後の硬質ポリウレタンフォームのセル荒れが発生し、フォーム外観不良となる恐れがあると共に、結晶性ゼオライト自体の熱伝導率が気体成分に比べて高いため、フォームの断熱性能が悪化する傾向にある。
【0020】
クリプトン、キセノン、HFC化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む結晶性ゼオライトは、例えば、クリプトン、キセノン及び/又はHFC化合物に結晶性ゼオライトを浸漬し、クリプトン、キセノン及び/又はHFC化合物を結晶性ゼオライトに含浸吸着させることにより得られる。HFC化合物としては、例えば、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)等が挙げられる。
【0021】
結晶性ゼオライトに対するクリプトン、キセノン、HFC化合物からなる群より選択される少なくとも1種の含有量は5〜20重量%であることが好ましい。5重量%未満であると、結晶性ゼオライトがクリプトン、キセノン及び/又はHFC化合物によって飽和されず、結晶性ゼオライトと水との吸着が発生し、ポリイソシアネート成分と水との反応熱に起因する発泡初期の発熱が低下する。その結果、フォーム発泡効率が低下する傾向にあるため好ましくない。一方、20重量%を越えると、発泡・硬化後に得られる硬質ポリウレタンフォームの製品密度が低下し、充分なフォーム物性(強度及び寸法安定性等)が保持できない傾向にあるため好ましくない。
【0022】
結晶性ゼオライトはモレキュラーシーブとして広く市販されており、例えばユニオン昭和社製のモレキュラーシーブ(吸着タイプ4A、5A及び13X)が挙げられ、吸着タイプとしては炭酸ガスをより効果的に吸着する観点から、5A及び13Xのものが好ましい。また、モレキュラーシーブに疎水処理したものも使用可能であり、市販品として例えばユニオン昭和社製モレキュラーシーブ(HiSiv)が挙げられる。
【0023】
また、本発明のポリオール化合物においては、硬質ポリウレタンフォームの技術分野において公知のポリオールを限定なく使用することができる。ポリオールとしては、例えば芳香族ポリエステルポリオール、芳香族アミン系ポリエーテルポリオール、脂肪族アミン系ポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0024】
芳香族ポリエステルポリオールとしては、公知の樹脂発泡体用のものが限定なく使用可能であり、例えば、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸等のフタル酸類やトリメリット酸等とエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール等の多価アルコールとの水酸基末端のエステルポリオールが挙げられる。芳香族ポリエステルポリオール化合物の平均官能基数は、ポリオール組成物の粘度上昇を抑制する見地から、2〜3であることが好ましく、2〜2.5であることがより好ましい。また芳香族ポリエステルポリオールの水酸基価は、ポリオール組成物の粘度上昇を抑制し、発泡・硬化後の硬質ポリウレタンフォームのフォーム強度を確保する等の見地から、200〜450mgKOH/gであることが好ましく、200〜300mgKOH/gであることがより好ましい。また、芳香族濃度は、断熱性能を向上する見地から、20%以上であることが好ましい。
【0025】
また、上記芳香族ポリエステルポリオールの配合量が、ポリオール化合物合計100重量部に対して30〜70重量部、さらに35〜60重量部であると、フォームの断熱性能及び難燃性能が向上するため好ましい。
【0026】
芳香族アミン系ポリエーテルポリオールは、芳香族ジアミンを開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の環状エーテル化合物を開環付加させたポリオール化合物である。開始剤である芳香族ジアミンとしては、公知の芳香族ジアミンを限定なく使用することができる。具体的には2,4−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン等が例示される。これらの中で、得られる硬質ポリウレタンフォームの断熱性と強度等の特性が優れている点でトルエンジアミン(2,4−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミン又はこれらの混合物)の使用が好ましい。
【0027】
芳香族アミン系ポリエーテルポリオールの水酸基価は、ポリオール組成物の粘度上昇を抑制し、発泡・硬化後の硬質ポリウレタンフォームのフォーム強度を確保する等の見地から、300〜600mgKOH/gであることが好ましく、400〜550mgKOH/gであることがより好ましい。また、芳香族ポリエステルポリオールの配合量は、ポリオール化合物合計100重量部に対して10〜40重量部、さらに10〜30重量部であると、フォームの断熱性能及び難燃性能が向上するため好ましい。
【0028】
脂肪族アミン系ポリエーテルポリオールとしては、アルキレンジアミン系ポリオールや、アルカノールアミン系ポリオールが例示される。これらのポリオール化合物は、アルキレンジアミンやアルカノールアミンを開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加させた末端水酸基の多官能ポリオール化合物である。アルキレンジアミンとしては、公知の化合物が限定なく使用できる。具体的にはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンチルジアミン等の炭素数が2〜8のアルキレンジアミンの使用が好適である。これらの中でも、炭素数の小さなアルキレンジアミンの使用がより好ましく、特にエチレンジアミン、プロピレンジアミンを開始剤としたポリオール化合物の使用が好ましい。アルキレンジアミン系ポリオールにおいては、開始剤であるアルキレンジアミンは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等が例示される。
【0029】
脂肪族アミン系ポリエーテルポリオールの水酸基価は、ポリオール組成物の粘度上昇を抑制し、発泡・硬化後の硬質ポリウレタンフォームのフォーム強度を確保する等の見地から、500〜850mgKOH/gであることが好ましく、600〜810mgKOH/gであることがより好ましい。また、芳香族ポリエステルポリオールの配合量は、ポリオール化合物合計100重量部に対して10〜50重量部、さらに10〜40重量部であると、フォームの断熱性能及び難燃性能が向上するため好ましい。
【0030】
本発明のポリオール組成物には、架橋剤を添加してもよい。架橋剤としてはポリウレタンの技術分野において使用される低分子量多価アルコールが使用可能である。具体的には、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が例示される。
【0031】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造に際しては、当業者に周知の触媒、整泡剤、難燃剤、低粘度化助剤、着色剤、酸化防止剤等が使用可能である。
【0032】
触媒としては、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン(カオライザーNo.1)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン(ポリキャット−8)等の第3級アミン類を使用することが好ましい。特に、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミンを用いることが好ましい。
【0033】
本発明においては、上記ウレタン化反応促進触媒に加えてポリウレタン分子の構造において難燃性向上に寄与するイソシアヌレート結合を形成する三量化触媒の使用も好ましく、例えば酢酸カリウム、オクチル酸カリウム(商品名ペルロン9540)等の脂肪族カルボン酸カリウム塩や第4級アンモニウム塩が例示できる。第4級アンモニウム塩としては、従来公知のものは限定なく使用可能であり、例えば、テトラメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、水酸化テトラメチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物、テトラメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩等のテトラアルキルアンモニウム有機酸塩等が挙げられる。
【0034】
本発明においては、イソシアヌレート結合生成を促進する三量化触媒とウレタン結合生成を促進するアミン触媒とを併用することが好ましい。特に、三量化触媒としてオクチル酸カリウム及び/又は第4級アンモニウム塩を用い、アミン触媒としてN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンを用いることが好ましい。三量化触媒としてオクチル酸カリウムと第4級アンモニウム塩とを併用する場合、その配合重量比は前者/後者=1/2〜2/1であることが好ましい。また、アミン触媒と三量化触媒とを併用する場合、その配合重量比はアミン触媒/三量化触媒=10/3〜20/1であることが好ましい。
【0035】
本発明においては、さらに難燃剤を添加することも好ましい態様であり、好適な難燃剤としては、ハロゲン含有化合物、有機リン酸エステル類、水酸化アルミニウム等の金属化合物が例示される。
【0036】
有機リン酸エステル類は、可塑剤としての作用も有し、従って硬質ポリウレタンフォームの脆性改良の効果も奏することから、好適な添加剤である。またポリオール組成物の粘度低下効果も有する。かかる有機リン酸エステル類としては、リン酸のハロゲン化アルキルエステル、アルキルリン酸エステルやアリールリン酸エステル、ホスホン酸エステル等が使用可能であり、具体的にはトリス(β−クロロエチル)ホスフェート(CLP、大八化学製)、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート(TMCPP、大八化学製)、トリブトキシエチルホスフェート(TBXP,大八化学製)、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート等が例示でき、これらの1種以上が使用可能である。有機リン酸エステル類の添加量はポリオール化合物の合計100重量部に対して40重量部以下であることが好ましく、より好ましくは10〜20重量部である。この範囲を越えると可塑化効果、難燃効果が十分に得られなかったり、フォームの機械的特性が低下する等の問題が生じる場合が発生する。
【0037】
発泡剤として使用するペンタン類は、n−ペンタン、イソペンタン、シクロペンタンから1種以上を適宜選択して使用する。なお、本発明においては、発泡・硬化後に得られる硬質ポリウレタンフォームの製品密度の調整のために、発泡剤として使用するペンタン類及び水の添加量を適宜調整してもよい。ただし、水の添加量を減らすと発泡・硬化後に得られる硬質ポリウレタンフォームの強度が低下する傾向にあり、水の添加量を増やすと発泡・硬化後に得られる硬質ポリウレタンフォームの密度が低下するため、ポリオール化合物100重量部に対して水を1〜3重量部入れることが好ましい。
【0038】
ポリオール組成物と混合、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリイソシアネート化合物としては、取扱の容易性、反応の速さ、得られる硬質ポリウレタンフォームの物理特性が優れていること、低コストであること等から、液状MDIを使用する。液状MDIとしては、クルードMDI(c−MDI)(スミジュール44V−10,スミジュール44V−20等(住化バイエルウレタン社製)、ミリオネートMR−200(日本ポリウレタン工業))、ウレトンイミン含有MDI(ミリオネートMTL;日本ポリウレタン工業製)等が使用される。液状MDIに加えて、他のポリイソシアネート化合物を併用してもよい。併用するポリイソシアネート化合物としては、ポリウレタンの技術分野において周知のポリイソシアネート化合物は限定なく使用可能である。
【0039】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造においては、イソシアネート基と活性水素基の当量比(NCO index)は、1.1〜1.8であることが好ましく、より好ましくは1.1〜1.6である。
【0040】
本発明のポリオール組成物及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、例えばスラブストックフォーム、サンドイッチパネル等の連続生産されるフォームの製造に使用可能である。得られる硬質ポリウレタンフォームの製品密度は、22〜50kg/mが好ましい。
【0041】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法を、両面に紙面材を積層した断熱パネルの製造を例として説明する。本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、一般にスラブフォームやサンドイッチパネルを製造するのに使用される、面材供給装置、コンベア装置、ポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合して下面材上に供給する発泡機(ミキサー)、加熱オーブン、及び連続状に形成された硬質ポリウレタンフォームを適宜の長さに裁断する裁断機を備えた公知の連続発泡装置を使用することができる。
【0042】
サンドイッチパネルの製造工程は、一般的には以下の工程から構成される。
1)下紙面材を原反ロールから巻き戻してコンベアに供給する。
2)下紙面材上に、発泡機にてポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合して形成された発泡原液組成物を、紙面材の幅方向に均一に供給する。
3)上紙面材を供給する。上面材供給後にニップロール等のニップ装置を通過させて発泡原液組成物液の幅方向への拡散、液の厚さの均一化、上下面材と発泡原液組成物の親和等を行う。
4)加熱オーブンに送り込んで加熱し、発泡・硬化反応を行わせて両面に紙面材が積層された硬質ポリウレタンフォームとする。所定の厚さにするために、フォームの上下面を押さえるダブルコンベアを使用してもよい。
5)加熱オーブンから連続的に出てくる硬質ポリウレタンフォームを、裁断機にて所定長さに裁断する。
【0043】
硬質ポリウレタンフォームサンドイッチパネルは、幅が1300mm以下、厚さが薄物の場合には10〜60mm、厚物の場合には60〜150mmであり、用途に応じて適宜設定される。使用する面材は特に限定されるものではないが、紙面材の場合には0.3〜2.0mmの厚さのクラフト紙が使用される。
【実施例】
【0044】
<使用原料>
(1)ポリオール化合物
・ポリオールA:エチレンジアミンのPO付加体(旭硝子社製、水酸基価760mgKOH/g)
・ポリオールB:芳香族ポリエステルポリオール(日立化成ポリマー社製、水酸基価250mgKOH/g、官能基数2、芳香族濃度24.0%)
・ポリオールC:トルエンジアミンのEO及びPO付加体(旭硝子社製、水酸基価450mgKOH/g)
(2)結晶性ゼオライト
・モレキュラーシーブ13X(ユニオン昭和社製)
(3)難燃剤(可塑剤):TMCPP(大八化学工業社製)
(4)整泡剤:SH−193:シリコン系界面活性剤(東レ・ダウコーニングシリコン社製)
(5)アミン触媒:N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン(カオライザーNo.1、花王社製)
(6)三量化触媒:オクチル酸カリウム(ペルロン9540、ペルロン社製)
(7)発泡剤:ペンタン類(シクロペンタン)、水
(8)ポリイソシアネート化合物:スミジュール44V−20(住化バイエルウレタン社製)
<硬質ポリウレタンフォームの製造例>
(実施例1〜12、比較例1〜2)
表1に記載した組成のポリオール化合物に、クリプトン、キセノン、又はHFC−245faを含むモレキュラーシーブ13X(モレキュラーシーブ13Xに対するクリプトンの含有量は 10〜20重量%、キセノンの含有量は5〜20重量%、HFC−245faの含有量は10〜20重量%)をそれぞれ添加し、充分に混合した後、サンドイッチパネル連続製造ラインにてミキサーによりポリイソシアネート成分と混合して発泡原液組成物とし、この発泡原液組成物をクラフト紙面材上に撒布した後に同じ材料の上面材を供給してサンドイッチ状態とし、発泡、硬化させて幅1300mm以下,厚さ10〜150mmの硬質ポリウレタンフォームサンドイッチパネルを得た(実施例1〜12)。また、表1に記載した組成により、実施例1〜12と同様の手法にて硬質ポリウレタンフォームサンドイッチパネルを得た(比較例1〜2)。
【0045】
【表1】

【0046】
<測定及び評価方法>
(1)熱伝導率
熱伝導率測定装置AUTO−Λ HC−074(英弘精機社製)を使用し、測定条件は、JIS A 9511に準拠して熱伝導率(w/mk)を測定した。
(2)フォーム密度
上記硬質ポリウレタンフォームの製造例にて得た幅1300mm以下,厚さ10〜150mmの硬質ポリウレタンフォームサンドイッチパネルのコア部分から100×100×100(mm)のサンプルを切り出し、重量を測定することにより密度を求めた。
(3)フォーム外観
発泡・硬化後に得られた硬質ポリウレタンフォームのフォーム状態を目視にて確認した。○は収縮等による寸法変化が無い場合、×は寸法変化がある場合を示す。また、発泡・硬化後に得られた硬質ポリウレタンフォームのセル状態を目視にて確認した。○はボイドが殆ど発生せず、セル荒れが確認されなかった場合、×はボイドが発生し、セル荒れが確認された場合を示す。測定結果を表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
クリプトン、キセノン、又はHFC化合物を含むモレキュラーシーブ13Xを含有するポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合・発泡することにより得られる実施例1〜12の硬質ポリウレタンフォームは、モレキュラーシーブ13Xを含有しない比較例1の硬質ポリウレタンフォームに比べて、発泡1日後及び発泡30日後における熱伝導率が低く、発泡初期の断熱性能に優れ、さらに経時的な断熱性能の悪化も抑制されていることがわかる。また、比較例2の硬質ポリウレタンフォームは、ポリオール組成物中でモレキュラーシーブ13Xが水を選択優先的に吸着除去するため、フォーム発泡効率の低下によりセル荒れ・クラックが発生し、その結果、フォーム密度及び熱伝導率の測定ができなかった。一方、実施例1〜12ではセル荒れ・クラックが発生することなく、フォーム外観のセル径分布が狭くボイドが殆ど無い硬質ポリウレタンフォームが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物及び発泡剤を含み、ポリイソシアネート成分と混合、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するための硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物であって、
前記発泡剤はペンタン類及び水を含有するものであり、
前記ポリオール化合物はクリプトン、キセノン、HFC化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む結晶性ゼオライトを含有することを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項2】
クリプトン、キセノン、HFC化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む前記結晶性ゼオライトの含有量が、前記ポリオール組成物及び前記ポリイソシアネート成分の合計100重量部に対して5〜40重量部である請求項1記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項3】
前記結晶性ゼオライトに対するクリプトン、キセノン、HFC化合物からなる群より選択される少なくとも1種の含有量が5〜20重量%である請求項1又は2記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項4】
ポリオール化合物及び発泡剤を含むポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合して発泡原液組成物とし、前記発泡原液組成物を発泡・硬化させる硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、
前記発泡剤はペンタン類及び水を含有するものであり、
前記ポリオール化合物はクリプトン、キセノン、HFC化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む結晶性ゼオライトを含有することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項5】
ポリオール化合物及び発泡剤を含むポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合して発泡原液組成物とし、前記発泡原液組成物を発泡・硬化させる硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、
前記発泡剤はペンタン類及び水を含有するものであり、
前記ポリイソシアネート成分はクリプトン、キセノン、HFC化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む結晶性ゼオライトを含有することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。

【公開番号】特開2009−35685(P2009−35685A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203127(P2007−203127)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】