説明

磁場形成源、磁気形成装置およびMRI装置

【課題】従来技術の欠点を有しない磁場調整装置を備えた磁場形成源、磁場成形装置およびMRI装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、MRI装置などに使用し得る磁場調整装置を有する磁場形成源に関する。上記の磁場調整装置は、磁場形成源(5,51)の周辺部に取り付けられた軟磁性材料からなる調整バー(71,81)を含んでおり、この調整バーは、上記の磁場形成源によって形成される磁場に実質的に平行な方向に移動可能であり、発生する磁場が上記のバーの位置によって調整されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気装置に対する磁場調整装置を備えた磁場形成源に関し、殊に磁気共鳴画像(MRI Magnetic Resonance Imaging)装置の磁場の均一性を改善してイメージング品質を改善するための機械的微調整装置(mechanical shimming device)を備えた磁場形成源に関する。本発明はまた磁場形成装置およびMRI装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁場は、さまざまな測定およびイメージング技術、例えばさまざまな種類のMRI装置に広く使用されている。永久磁石によって形成される永久磁場が使用される例もある。
【0003】
図1には、C字形の永久磁石を使用する磁気装置が示されている。この装置は、オープンMRI装置に使用可能である。この磁気装置は、ヨークとして使用されるC字形フレーム1と、このC字形フレームの開口部の上側および下側の端部にそれぞれ取り付けられ上部プレスプレート(press plate)2および下部プレスプレート21と、C字形フレームの開口部に配置され対向する上部ポールプレート(pole plate)3と下部ポールプレート31と、上部ポールプレート3および下部ポールプレート31の対向する表面にそれぞれ取り付けられるリング状部材(ローズリング rose ring)4および40と、上部ポールプレート3および下部ポールプレート31にそれぞれ平行に取り付けられ、それぞれのローズリング内に配置された(図示しない)上部傾斜コイル(gradient coil)および下部傾斜コイルとを有する。上部磁場形成源5は、上部プレスプレート2と上部ポールプレート3との間に配置され、同様の下部磁場形成源51は、下部ポールプレート21と下部ポールプレート31との間に配置される。各磁場形成源5,51は複数の永久磁石から構成される。
【0004】
上記の磁場形成源5,51は、一部のMRI装置では重要なコンポーネントである。例えば、このような磁場形成装置は、オープンMRI装置の開口部に配置されるプレスプレート2,21とポールプレート3,31との間に取り付けられて、全身形MRI装置に対して0.5テスラまでの磁場を生成し、または身体の部分または動物または産業用のMRI装置に対して1テスラまでの強度の磁場を形成する。結果的に得られる磁場の均一性は、イメージング品質に極めて重要である。一般的に磁場は、上部および下部ポールプレート3,31に近い中央のエリアでは比較的強いが、ポールプレートの周辺部では比較的弱い。上部ポールプレートと下部ポールプレートとの間の空間における磁場の均一性を改善するため、ローズリング4,40が上部および下部ポールプレート3,31の周辺部にそれぞれ取り付けられている。ローズリング4,40は、上部および下部ポールプレート3,31の表面から突き出ているため、ポールプレートの周辺部における磁場強度は、部分的に増大されて全体的な磁場の均一性が改善される。これによって上部ポールプレートと下部ポールプレートとの間の磁場の均一性が改善され、イメージングに有利である。永久磁石MRI装置を発送する前には上部ポールプレートと下部ポールプレートとの間の磁場を均一な状態に調整する必要があり、この均一な状態はイメージング処理によって検証することができる。
【0005】
しかしながらMRI装置の輸送、設置および操作中に上部ポールプレート3と下部ポールプレート31との間の磁場の均一性は、周囲環境温度および周囲磁場環境の変化などの環境変化によって劣化する。この結果、磁場を現場で再微調整(reshim)して、均一な磁場が得られ、ひいては所望の品質のイメージングが得られるようにしなければならないのである。
【0006】
米国特許第4,943,774号には図2に示した磁場調整装置が開示されている。ローズリングは、環状のリング56と、これに取り付けられる可動の16個の微調整プレート(shim plate)60とから構成されている。各微調整プレート60により、2つのスロット64が定められ、またスロット64を貫通して延びる2つのねじ66によってリング56に固定される。磁場が調整(shimming シミング)される場合、ねじ66をゆるめて、微調整プレート60を半径方向に内側または外側に移動する。スロット64は、ねじ66を通り越してスライドする。微調整プレートが位置決めされると、そのねじ66は再び締め付けられて、微調整プレートの位置が固定される。付加的には均一性を高めるため、1つまたは複数の微調整プレートを薄板状にすることも可能である。微調整プレートは、積層された薄板を含むことができるため、いくつかの薄板を追加また取り除くことによって均一性を得ることができる。このような機械的な均一性改善法の制限にはつぎようなものがある。微調整プレートは磁場形成源に強く吸引されているため、微調整プレートを移動するためにはかなり大きな外力が必要である。微調整プレートと表面との間の摩擦により、微調整プレートをそもそも動かすためにはこれを強く押さなければならない。このような強い力の元では、微調整プレートを所要の位置に精確に位置決めすることは困難である。ここに示されたねじ66によって精確な位置決めは得られないため、移動距離の精確を制御することまたは微調整プラグをその元々の位置に戻すことは極めて困難である。微調整プレートに対して行われた変位を測定すること、または1つの微調整プレートがその元々の位置に戻されたことを保証することは困難である。このような構造体の組み立ておよび分解にはかなり長い時間と多くの人的資源が必要あり、これによって設置コストが劇的に増大してしまう。調整操作は最上部の層についてしか行うことができず、また調整範囲も極めて限られている。微調整プレートまたは積層された薄板の層を分解するという手段によって、連続的な調整を実現することはできない。また専用の分解装置が必要であり、これにもまたかなり長い時間および多くの人的資源が必要であり、そのコストを劇的に増大させてしまうのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,943,774号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、従来技術の欠点を有しない磁場調整装置を備えた磁場形成源、磁場成形装置およびMRI装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の磁場形成源に関する課題は、本願発明の請求項1により、磁場調整装置を備えた磁場形成源において、上記磁場調整装置は、上記磁場形成源の周辺部に取り付けられた軟磁性材料からなる調整バーを含んでおり、この該調整バーは、前記磁場形成源によって形成される磁場に実質的に平行な方向に移動可能であり、発生する磁場が前記のバーの位置によって調整されることを特徴とする磁場形成源によって解決される。
【0010】
上記の磁場形成装置に関する課題は、本願発明の請求項13により、磁場形成装置には、上記の磁場形成源が対向して対になって含まれており、この磁場形成源を構成して、磁場形成源間に磁場が形成されるようにしたことを特徴とする磁場形成装置を構成することよって解決される。
【0011】
またMRI装置に関する課題は、本願発明の請求項14により、請求項13に記載の磁場形成装置を有することを特徴とするMRI装置を構成することによって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】慣用のMRI装置の一般的な構造を示す等角投影図である。
【図2】微調整プレートが環状ングの最上部表面にねじで固定されている、慣用のMRI装置の磁場に対する慣用の機械的磁場調整装置を示す等角投影図である。
【図3】適切な形状を有する微調整プレートが燕尾形溝に取り付けられている、本発明の磁場調整装置の有利な実施形態による調整装置の等角投影図である。
【図4A】微調整プラグが燕尾形溝内で駆動ねじによって内側および外側に動かされることを示す、図3の実施形態の部分拡大等角投影図である。
【図4B】T字形微調整プラグがT字形溝内で動かされる本発明の別の実施形態を示す、図4Aの図と同様の図である。
【図5】調整バーが磁場形成源の周辺部に取り付けられている本発明の択一的な実施形態による微調整装置の等角投影図である。
【図6】調整バーがガイドレールにおいて動かされることを示す、図5の有利な実施形態の部分拡大等角投影図である。
【図7】図4Aおよび6の装置が一緒に使用される、さらに別の択一的な実施形態の等角投影図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の目標は、磁場調整装置を提供し、この装置により、磁気的な外力に打ち勝って微調整部(shim)を移動して、この微調整部の連続的な調整および精確な位置決めを行えるようにすることである。
【0014】
本発明によって提供されるのは、磁場形成源に装着されるポールプレートに取り付けるための磁場調整装置であり、ここでこの磁場調整装置は、複数の移動可能な複数の微調整プラグを有する。各微調整プラグは、保持溝に取り付けられており、各微調整プラグは保持溝の方向にのみ移動可能である。
【0015】
上記の保持溝は燕尾形の溝とすることができ、また上記の微調整プラグは、燕尾形溝に咬合しかつこの燕尾形溝にてスライドするための台形断面を有することが可能である。択一的には上記の保持溝はT字形の溝とすることができ、また上記の微調整プラグは、このT字形溝に咬合しかつT字形溝においてスライドするためにT字形断面を有することが可能である。
【0016】
上記の微調整プラグは駆動ねじ(drive screw)によって駆動することができる。
【0017】
上記の微調整プラグは、サイズの異なるまたは磁場特性の異なる微調整プラグとの交換のために取り外し可能である。
【0018】
使用の際に上記の微調整プラグは、ポールプレートの周辺部に取り付けることができ、また各保持溝は実質的にこのポールプレートの半径方向に配向することが可能である。
【0019】
また本発明によれば、ポールプレートと、上記の磁場調整装置とを有するアセンブリが提供され、ここでポールプレートの周辺部にはリング状部材が取り付けられ、上記の保持溝はこのリング状部材に形成される。1実施形態では、12個の保持溝がこのリング状部材の周りに均等に配分される。
【0020】
また本発明では磁場調整装置を備える磁場形成源も提供される。ここでこの磁場調整装置は、上記の磁場形成源の周辺部に取り付けられた調整バーを含んでおり、この調整バーは、上記の磁場形成源によって形成される磁場に実質的に平行な方向に移動可能である。
【0021】
上記の磁場形成源はさらに、この磁場形成源に取り付けられたポールプレートを有しており、上記の調整バーはこのポールプレートに垂直な方向に移動可能である。
【0022】
上記の調整バーは、移動可能に保持手段に取り付け可能である。
【0023】
上記の保持手段は、磁場形成源の周辺部に配置可能である。また保持手段は、ポールプレートの周辺部に配置可能である。
【0024】
上記の調整バーは、ラック構造を有することができ、また咬合するピニオンギアによって動かされるように構成されている。
【0025】
上記の調整バーは、ねじの形態をとることができ、このねじは、前記の保持手段に形成される内側のねじ山を介して動かすことができる。
【0026】
上記の調整バーは、サイズの異なるまたは磁気特性の異なる調整バーとの交換のために取り外し可能である。
【0027】
上記の微調整プラグまたは調整バーは、同期して調整されるように配置構成することができる。
【0028】
上記の微調整プラグまたは調整バーを配置構成して、これらの微調整プラグまたは調整バーが1つまたは複数の電気モータによってリモート調整されるようにすることが可能である。
【0029】
上記の磁場調整装置または磁場形成装置はさらに、磁場測定および/またはモデリングソフトウェアがプログラムされたコンピュータを含むことができ、ここではこのコンピュータは、磁場測定またはモデリングに応じて得られた命令にしたがって前記の電気モータを制御して微調整プラグまたは調整バーを調整するように構成されるようにされている。
【0030】
上記のコンピュータは、電動モータを制御して微調整プラグまたは調整バーを自動的に調整して所望のレベルの場の均一性が得られるように構成されている。
【0031】
また本発明により、磁場形成装置が提案され、ここでこの磁場形成装置には、上記のような磁場形成源が対向して対になって含まれており、またこの磁場形成装置は、この磁場形成装置間に磁場が形成されるように構成されている。
【0032】
また本発明により、磁場形成装置が提案され、ここでこの磁場形成装置には、磁場形成源間に磁場が形成されるように構成された対向式磁場形成源の対と、磁場形成源の対向する面にそれぞれ取り付けられた1対のポールプレートと、少なくとも1つの上記の磁場調整装置とが含まれている。
【0033】
また本発明により、磁場形成装置が提案され、ここでこの磁場形成装置には、対向して配置されている上部プレスプレートおよび下部プレスプレートに接続されたヨークと、相応する磁場形成源を有する上記の磁場形成装置と、相応するプレスプレートに対向して取り付けられたポールプレートとが含まれている。
【0034】
また本発明により、上記の磁場形成装置を含むMRI装置が提案される。
【0035】
また本発明により、つぎのような解決手段、すなわちMRI装置に対する磁場調整装置が提案される。ここでこの装置には、ヨークと、1対の磁場形成源と、1対のポールプレートと、移動可能な複数の微調整プラグとが含まれており、上記のヨークは上部プレスプレートおよび下部プレスプレートに接続されており、ここで下部プレスプレートおよび上部プレスプレートは対向して配置されており、上記の1対の磁場形成源は、対向して上部プレスプレートおよび下部プレスプレートにそれぞれ取り付けられ、磁場がこれらの2つの磁場形成源間に形成され、上記の1対のポールプレートの上部ポールプレートは、磁場形成源に取り付けられ、また下部ポールプレートは磁場形成源に取り付けられており、これらの磁場形成源の間に磁場空間が形成され、上記の移動可能な複数の微調整プラグは、上記の上部ポールプレートおよび下部ポールプレートの周辺部に取り付けられている。上記の磁場調整装置の特徴は、各微調整プラグは案内溝に取り付けられており、このプラグは案内溝の案内方向にのみ移動可能である。
【0036】
さらに本発明の有利な実施形態によれば、上記の上部ポールプレートおよび下部ポールプレートの周辺部にはそれぞれリング状部材が取り付けられており、前記の案内溝はこのリング状部材に形成される。この案内溝は実質的にリング状部材の半径方向に形成される。ここではリング状部材に均一に分配された12個の案内溝が設けられている。
【0037】
本発明の別の有利な実施形態によれば、上記の案内溝は燕尾形の溝であり、微調整プラグは、この燕尾形溝に咬合しかつこの燕尾形溝にてスライドするための台形断面を有する。上記の微調整プラグは、案内ねじによって動かされる。
【0038】
本発明の択一的で有利な実施形態によれば、上記の案内溝はT字形の溝であり、上記の微調整プラグは、このT字形溝に咬合しかつT字形溝にてスライドするためのT字形断面を有する。上記の微調整プラグは、案内ねじによって動かされる。
【0039】
上記の目標は、つぎの択一的な解決手段によって達成可能である。すなわちMRI装置に対する磁場調整装置によって達成可能であり、ここでこの装置は、ヨークと、1対の磁場形成源と、1対のポールプレートと、リング状部材とを含んでおり、上記のヨークは上部プレスプレートおよび下部プレスプレートに接続されており、ここで下部プレスプレートおよび上部プレスプレートは対向して配置されており、上記の1対の磁場形成源はそれぞれ上部プレスプレートおよび下部プレスプレートに、対向して取り付けられ、磁場がこれらの2つの磁場形成源間に形成され、上記の1対のポールプレートの上部ポールプレートは、磁場形成源に取り付けられ、また下部ポールプレートは磁場形成源に取り付けられており、これらの磁場形成源の間に磁場空間が形成され、上記のリング状部材は、上記の上部ポールプレートおよび下部ポールプレートの周辺部に取り付けられている。上記の磁場調整装置の特徴は、上および下に移動することのできる調整バーが、磁場形成源の周辺部に取り付けられていることである。
【0040】
本発明の有利な実施形態によれば、上記の調整バーは、案内手段に移動可能に取り付けられる。この案内手段は、上記のプレスプレートおよび/またはポールプレートの周辺部に配置される。
【0041】
本発明の別の有利な実施形態によれば、上記の調整バーは、ラック構造を有しており、歯車によって別個にまたは同期して動かすことができる。
【0042】
本発明のさらに別の有利な実施形態によれば、上記の調整バーはねじであり、これは上記の案内手段に形成されている内部のねじ山を介して動かすことができる。
【0043】
本発明のさらに別の有利な実施形態によれば、上記の調整バーは取り外して、別のサイズの調整バーと交換可能である。
【実施例】
【0044】
図1,3および4Aには、本発明の実施形態の磁場調整装置および公知の磁気装置へのその適用が示されている。
【0045】
図1には、本発明にしたがって適合させることの可能な公知の磁気装置が示されている。図1に示したように、この磁気装置は、MRI装置のフレームとして使用可能なC字形のヨーク1を有している。ヨーク1により、対向する上部プレスプレート2と下部プレスプレート21とが接続される。1対の磁場形成源5,51はそれぞれ上部プレスプレート2および下部プレスプレート21に対向して取り付けられているため、これらの2つの磁場形成源の間に磁場が形成される。この磁場形成源は、永久磁石とすることができる。上部ポールプレート3は、上部磁場形成源5の下側を向いた表面に、また下部ポールプレート31は下部磁場形成源51の上側を向いた表面に取り付けられており、これによってこれらのポールプレート間に磁場空間が定められる。周辺部のリング状部材(ここではローズリングと称される)4,40は、上部および下部ポールプレート3,31の対向する表面の周辺部にそれぞれ取り付けられる。リング状部材4,40は、上部および下部ポールプレート3,31から突き出ており、ポールプレート3,31の周辺部における磁場強度を増大するために使用される。これによってポールプレート3,31間の中央の3次元空間およびポールプレート3,31の周辺部分における磁場の均一性が改善される。リング状部材4,40は一般的には軟磁性材料から形成される。
【0046】
図3には例として下部プレスプレート21に載置された下部磁場形成源51と、下部ポールプレート31と、その周辺部のリング状部材40が示されている。リング状部材40は、複数の、例えば12個のセクタセグメント41を含んでおり、これらは互いに接続されてリング状部材40を形成する。各セグメント41にはリング状部材40の半径方向に沿って保持溝45が組み込まれている。微調整プラグ42は、各保持溝内に配置されているため、保持溝内で保持されて移動可能である。この実施形態では12個の保持溝45と、12個の微調整プラグ42が設けられており、これらはリング状部材40の周りに均一に分散されている。当然のことながら、保持溝45および微調整プラグ42の数は、必要に応じて変更することができ、非対称に分散させることも可能である。図1に示した実施形態において同様の変更を上部磁場形成源5に対して行うことができる。
【0047】
図4Aには図3のリング状部材41の単一のセクタセグメント41の拡大図が示されている。図示したこの実施形態においてセクタセグメント41の保持溝45は、燕尾形の溝であり、微調整プラグ42は、これに咬合する台形の断面を有しており、これは燕尾形の溝45に咬合してスライドするように配置されている。燕尾形溝は、微調整プラグ42の移動を半径方向だけに制限する。微調整プラグ42は、強力な磁力が及ぼされても半径方向以外の他の方向には移動できない。強力な磁力の影響下でも微調整プラグ42を保持し、移動し、またその位置を固定するため、微調整プラグ42にはねじ山が切られた孔と、クランププレート44に取り付けられた駆動ねじ43が設けられている。駆動ねじ43は、微調整プラグ42のねじ山が切られた孔に咬合してこれを貫通して延びている。クランププレート44は、セクタセグメント41の外側に固定して取り付けられている。微調整プラグ42は、強い磁場が存在する場合であっても、案内ねじ43を時計回りまたは反時計回りに回すことによって半径方向に内側および外側に精確に動かすことができる。微調整プラグは、案内ねじ43のセルフロッキング作用を利用することによって精確に位置決めし、また必要であれば元の位置に戻すことができる。相応する領域の磁場はこのような微調整動作によって増大または低減することができるため、磁場を調整して所要の均一度を得ることができるのである。
【0048】
図4Bには本発明の別の実施形態が示されている。この実施形態において磁場調整装置は、図3および4Aに示した第1の実施例と類似の構造を有するが、リング状部材40の保持溝がT字形であり、微調整プラグ42の断面もT字形であり、これによってこの溝内で精確に嵌ってスライド式に咬合する点が異なる。残りの技術的な特徴については図4Aの実施形態の特徴と同じである。
【0049】
上部リング部材4は、図3および4Aまたは4Bに図示した下部リング部材40と同じ構造を有するので、さらに詳述しない。
【0050】
微調整プラグは、個別に取り外しまたはサイズの異なるまたは磁気特性の異なる微調整プラグによって置き換え可能であり、これによって所要の磁場調整作用を得ることができる。各微調整プラグは、積層した薄板を含むことができる。ここでこれらの薄板は異なる厚さを有することができ、また個別に調整または取り外し可能である。
【0051】
本発明の磁場調整装置によって少なくとも以下の利点が得られる。まず図2に示した従来技術の微調整プレートは、強力な磁力の元ではそもそも移動することが困難であり、また精確に移動することは極めて困難であったが、本発明では保持溝45と、駆動ねじ43を使用することによって、精確かつ容易にしかも連続的に移動および位置決め可能な微調整プラグ42が得られるため、磁場の調整が極めて使い勝手がよく簡単になるという利点が得られるのである。駆動ねじを使用し、また有利には保持溝45内での微調整プラグ42をしまりばめ(interference fit)も使用することによって、微調整プラグは、移動されない場合に所定の位置に確実に保持される。これはセルフロッキング機構と称することができる。択一的にはそれ自体公知の固有の機構または別のセルフロッキング機構を設けて、動かない時に駆動ねじを所定の位置に保持することができる。本発明によって可能になるのは、磁場を高い精度および効率で調整することである。図示の実施形態では、磁場の主軸を中心とする半径方向に保持溝が配置され、また微調整プラグの移動が行われる。当然のことながら本発明の範囲内では保持溝の別の配向も可能である。
【0052】
一部の実施形態においてリング状部材4,40は、複数の層から形成することができる。これらの実施形態において本発明の保持溝、駆動ねじおよびセルフロッキング機構は、2つまたはそれ以上の層に設けられる。微調整プラグの移動によって生じた場の変化の測定は、モデリングおよびアジマスによって容易に予測可能である。
【0053】
図1,5および6は本発明の別の実施形態を示している。
【0054】
図5には下部プレスプレート21および下部ポールプレート31ならびにこれらの間に取り付けられた磁場形成源51が図示されている。複数の調整バー71,81が磁場形成源51の周辺部に可動に取り付けられている。これらの調整バーは、有利には保持手段(73,83)にスライド可能に取り付けられている。調整バー71,81は有利には軟磁性材料からなる。調整バー71,81が、磁場形成源51の円周においてポールプレートに対して垂直方向に移動される場合、磁場の相応する部分が効率的に短絡される。これにより、磁場の短絡のこのような作用を使用することによって磁場は調整され、磁場形成源51の周辺部における磁場の均一性が改善される。調整バー71,81の断面は、任意の適切な形状、例えば四角形、台形、弧の形状などとすることができ、調整バー71,81の厚さは、磁石のサイズの要求にしたがって定めることができる。また調整バー71,81の幅は、磁場の所要の調整範囲にしたがって定めることができる。これによって磁場ポールサイズを大きくすることなく磁場調整作用を得ることができる。
【0055】
図6に示したように調整バー71を収容するのに有利な少なくとも1つの保持手段73が下部ポールプレート31の周辺部に設けられている。また調整バー81を収容するのに有利な少なくとも1つの保持手段83が下部プレスプレート21の周辺部に設けられている。調整バー71,81は、上記の保持手段73,83に取り付けられており、これによって保持手段73,83内に保持されるのと同時にプレスプレート21に対して垂直に移動可能に案内される。これらの保持手段によって保証されるのは、強力な磁力の影響下であっても調整バー71,81をガイド方向に精確に移動できることである。磁力に打ち勝って調整バーを動かするため、調整バー71,81は有利にはラックとして設計され、また咬合するピニオンギア72,82によって上および下に動かすことができる。上記の複数の調整バーは別個にまたは同期して調整することができる。この実施形態では複数の調整バー71,81が、下部プレスプレート21および下部ポールプレート31のそれぞれの周辺部に共に取り付けられている。有利であることが判明しているのは、調整バー71および81を垂直方向にペアで配置することにより、効率的な調整作用が得られ、全体的な磁場が微調整されることである。
【0056】
図5および6では例としてMRI装置の下部磁場形成源51だけが示されている。この図では調整バー71,81を使用する磁場調整装置が示されている。上部磁場形成源5の調整バーの構造は有利には、図5および6に示した調整バーに対称であり、精確に同じ構造を有しているため、ここでは詳述しない。
【0057】
本発明の調整バーは、制限された方向に精確に調整することができ、これによって磁場源5,51の周辺部における磁場強度が変更される。調整バーは、保持手段73,72,83,82によって取り付けおよび保持されて、ポールプレートおよびプレスプレートの外側の周辺部に配置することができ、これによって磁石のポールサイズを大きくすることなく最大源の場調整効果を得ることができる。
【0058】
本発明の別の実施形態(図示せず)によれば、本発明の磁場調整装置は、図1,5および6に示したのと類似の構造を有しているが、調整バー71,81が複数のねじの形態である点が異なる。これらのねじは、保持手段として使用されるプレスプレート21またはポールプレート31に形成される内側のねじ山において動かすことができる。ここでこれらのねじは、適正なやり方でベースに取り付けられて保持される。
【0059】
本発明の磁場調整装置はまた別の変形形態を有することも可能である。例えば、上記の調整バーは、下部ポールプレート31および下部プレスプレート21のうちのいずれかの周辺部だけに配置することができる。さらに調整バー71,81は取り外して、サイズの異なる、または磁気特性の異なる調整バーによって置き換えて、所要の場調整作用を得ることができる。
【0060】
図7には本発明の別の実施形態が示されている。すなわち図3および4Aならびに図5および6に示した両方の調整装置が同じ磁場調整装置に使用されて、場調整の作用が増大されている。両者の調整装置の構造は上で示しため、詳しい説明は繰り返さない。
【0061】
限られた数の実施形態について本発明を実施例として説明したが、添付の特許請求の範囲に定められた本発明の範囲内で、磁場調整装置に対して数多くの変更および変形を行うことが可能である。例えば、
本発明による磁場調整装置を有する磁場源は、永久磁石、抵抗マグネット(resistive magnet)または超伝導マグネットとすることが可能である。
【0062】
対向する磁場源は有利には逆の極性が付与されて、これらの磁場源の間に線形の磁場が得られる。
【0063】
ポール面の表面は均一の場を供給するために有利には平行であるが、これは必須ではない。
【0064】
上記の磁場調整装置は、MRIまたは核磁気共鳴イメージングに使用される磁場の均一性を高めるのに殊に有効であり、これは装置を設置する場合に磁場を簡単かつ精確に微調整できることによる。当然のことながら、本発明は他のアプリケーションにおける磁場の調整にも使用可能である。
【0065】
上記の駆動手段は、これが手動で駆動されるように、または適切に制御される電気モータによってリモート駆動されるように配置構成することができる。殊に有利な実施形態では、このような電気モータは、コンピュータによって制御することができ、ここでこのコンピュータにより、磁場測定およびモデリングソフトウェアが処理されて、自動的に磁気が微調整されて最適な均一性を得られる。
【0066】
本発明の微調整プラグおよび調整バーは、回転式ねじまた歯車機構によって動かされて保持されるため、回転式ねじまたは歯車機構に適用される角度変位の記録することによって、必要な量だけプラグまたはバーを移動したり、プラグまたはバーを元の位置に戻すことができる。
【符号の説明】
【0067】
1 ヨーク、 2 上部プレスプレート、 21 下部プレスプレート、 3 上部ポールプレート、 31 下部ポールプレート、 4 上部リング状部材、 40 下部リング状部材、 41 セクタセグメント、 42 微調整プラグ、 43 駆動ねじ、 44 クランププレート、 45 保持溝、 5 上部磁場形成源、 51 下部磁場調整源、 56 リング、 60 微調整プレート、 64 スロット、 66 ねじ、 71,81 調整バー、 72,72,82,83 保持手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場調整装置を備えた磁場形成源(51)において、
前記磁場調整装置は、前記磁場形成源(5,51)の周辺部に取り付けられた軟磁性材料からなる調整バー(71,81)を含んでおり、
該調整バーは、前記磁場形成源によって形成される磁場に実質的に平行な方向に移動可能であり、
発生する磁場が前記のバーの位置によって調整されることを特徴とする、
磁場調整装置を備えた磁場形成源。
【請求項2】
前記の磁気形成源は、当該磁場形成源(51)に取り付けられたポールプレート(31)を有しており、
前記調整バー(71,81)は当該ポールプレートに垂直な方向に移動可能である、
請求項1に記載の磁場形成源。
【請求項3】
前記の調整バー(71,81)は、移動可能に保持手段(72,73;82,83)に取り付けられる、
請求項1または2に記載の磁場形成源。
【請求項4】
前記の保持手段(72,73;82,83)は磁場形成源の周辺部に配置されている、
請求項3に記載の磁場形成源。
【請求項5】
前記の保持手段(72,73;82,83)はポールプレートの周辺部に配置されている、
請求項2を引用する請求項3に記載の磁場形成源。
【請求項6】
前記調整バー(71,81)は、ラック構造を有しており、
調整バーを構成して、当該調整バーが、咬合するピニオンギア(72,82)によって動かされるようにした、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の磁場形成源。
【請求項7】
前記調整バー(71,81)はねじの形態をとり、
該ねじは、前記の保持手段に形成される内側のねじ山を介して動かされる、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の磁場形成源。
【請求項8】
前記の調整バー(71,81)は、サイズの異なるまたは磁気特性の異なる調整バーとの交換のために取り外し可能である、
請求項1から7までのいずれか1項に記載の磁場形成源。
【請求項9】
前記の微調整プラグまたは調整バーは、同期して調整されるように配置構成されている、
請求項1から8までのいずれか1項に記載の磁場形成源。
【請求項10】
前記の微調整プラグまたは調整バーを配置構成して、当該の微調整プラグまたは調整バーが1つまたは複数の電気モータによってリモート調整されるようにした、
請求項1から9までのいずれか1項に記載の磁場形成源。
【請求項11】
磁場測定および/またはモデリングソフトウェアがプログラムされたコンピュータが含まれており、
該コンピュータを構成して、当該コンピュータにより、磁場測定またはモデリングに応じて得られた命令にしたがって前記の電気モータが制御されて微調整プラグまたは調整バーが調整されるようにした、
請求項10に記載の磁場形成源。
【請求項12】
前記のコンピュータを構成して、当該コンピュータにより、前記の電動モータが制御され、微調整プラグまたは調整バーが自動的に調整されて、所望のレベルの場の均一性が得られるようにした、
請求項11に記載の磁場形成源。
【請求項13】
磁場形成装置において、
該磁場形成装置には、請求項1から12までのいずれか1項に記載の磁場形成源(5,51)が対向して対になって含まれており、
該磁場形成源を構成して、当該磁場形成源間に磁場が形成されるようにしたことを特徴とする
磁場形成装置。
【請求項14】
請求項13に記載の磁場形成装置を有することを特徴とする、
MRI装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−131436(P2010−131436A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47761(P2010−47761)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【分割の表示】特願2007−501250(P2007−501250)の分割
【原出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】