説明

磁場押出成形装置

【課題】スムーズに押出材料を押し出すことができ、良好な磁場配向を有する成形体を製造可能な磁場押出成形装置を提供する。
【解決手段】押出材料2Eが押出口2cから所定量押し出され、略平板状の成形体8が成形される。成形体8は、搬送部3により、第1の磁場配向部4、二次成形部5、仮乾燥部6、第2の磁場配向部7の順に搬送される。第1の磁場配向部4では、成形体8に対し磁場を印加する。二次成形部5では、成形体8は略半円筒状に成形される。仮乾燥部6では、成形体8は可撓性を損なわない程度に乾燥される。第2の磁場配向部7では、第1の磁場配向部4で発生する磁場よりも強い磁場が成形体8に印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場押出成形装置に関し、特に、成形体を押し出した後に磁場配向を行う磁場押出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、磁石粉末材料および溶剤等からなる押出材料を押し出しながら磁場配向を行い、成形体を成形する磁場押出成形装置が提案されている。例えば、押出金型の押出口付近が磁性ヨークにより構成された磁場押出成形装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
そして、特許文献1の磁場押出成形装置では、押出材料が押出口を形成する磁性ヨークから押し出される際に、押出材料に所望の方向の磁場が印加され、成形体が成形されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−83726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし従来の磁場押出成形装置では、押出口において磁場を印加する構成であるため、強い磁場を印加しながら押し出そうとしても、磁場の影響によりうまく押し出されず押出材料が詰まってしまうことがあった。さらに、押出口を形成する磁性ヨークから発生している漏れ磁力の影響で、押出直後に成形体が変形してしまうことがあった。
【0006】
そこで、本発明は、スムーズに押出材料を押し出すことができ、良好な磁場配向を有する成形体を製造可能な磁場押出成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、押出口が形成された押出金型と、少なくとも磁石材料および溶媒を有する押出材料を押出金型へ供給する供給手段とを有し、押出材料を押出口から押出して成形体を成形する押出成形機と、押出成形機から離間して設けられ、成形体に対し磁場を印加する第1の磁場配向手段と、第1の磁場配向手段により磁場配向された成形体を仮乾燥する仮乾燥手段と、仮乾燥された成形体に対し磁場を印加する第2の磁場配向手段と、成形体を第1の磁場配向手段、仮乾燥手段、および第2の磁場配向手段の順に搬送する搬送手段とを備え、第2の磁場配向手段の磁場の強度は、第1の磁場配向手段の磁場の強度よりも強い磁場押出成形装置を提供している。
【0008】
かかる構成によれば、押出材料が押出金型から押し出される過程において、押出材料に対し磁場を印加しないので、押出材料が詰まることなくスムーズに押し出すことができ、また漏れ磁力の影響で成形体が変形するのを防止することができる。さらに、第1の磁場配向手段において、成形体を構成する磁石粉末材料の粒子の配向をそろえ、仮乾燥手段において成形体を仮乾燥して強度を向上させた後に、第2の磁場配向手段において第1の磁場配向部で発生される磁場よりも強い磁場を成形体に印加するので、良好な磁場配向を有する成形体を製造することができる
【0009】
ここで、押出成形機は、間欠的に押出動作を行い、搬送手段は、間欠的な押出動作に応じて成形体を搬送し、第1の磁場配向手段および第2の磁場配向手段は、成形体が静止した状態で、成形体に対し磁場を印加し、成形体は、搬送時には、第1の磁場配向手段および第2の磁場配向手段による磁場の印加から開放されていること好ましい。
【0010】
かかる構成によれば、搬送状態にある成形体に対し磁場を印加する場合と比較して、磁気配向が乱れることなく、成形体に対して良好な磁気配向を実現することができる。
【0011】
更に、第1の磁場配向手段により磁場配向された成形体を成形する二次成形手段をさらに備え、仮乾燥手段は、二次成形手段により成形された成形体を仮乾燥し、第2の磁場配向手段は、二次成形手段により成形された成形体の成形後の形状に沿って磁場を印加することが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、二次成形により成形体の磁場配向が乱れたとしても、第2の磁場配向手段で修正し、良好な磁場配向を有する成形体を製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の磁場押出成形装置によれば、スムーズに押出材料を押し出すことができ、良好な磁場配向を有する成形体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態における磁場押出成形装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の磁場押出成形装置の実施の形態について図1に基づき説明する。図1に示すように、磁場押出成形装置1は、押出成形部2、搬送部3、第1磁場配向部4、二次形成部5、仮乾燥部6、および第2磁場配向部7を備えている。
【0016】
押出成形部2は、押出金型2Aと、材料供給部2Bとを備えている。押出金型2Aには、押出口2cが形成され、押出金型2Aは、押出パンチ2Dを備えている。押出口2cは、略矩形状をなしている。材料供給部2Bは、押出金型2A内へ押出材料2Eを供給可能に構成されている。押出材料2Eは、磁石粉末材料(例えば、フェライト、希土類金属)、溶剤(例えば、水)、結合剤、および、可塑剤の混合物から構成されている。押出金型2A内の押出材料2Eは、押出パンチ2Dにより押出口2cから間欠的に押し出されるように構成されている。すなわち、押出材料2Eが押出金型2Aから所定量押し出されると、押出パンチ2Dが停止する。そして、押出金型2Aから押し出された成形体8は、略平板状をなし可撓性を有している。なお、本実施の形態で示す押出成形部2はプランジャ式の押出機であるが、スクリュー式の押出機でもよく、このような構成であっても同様の成形体8を成形可能であり、本発明の効果を実現することができる。
【0017】
搬送部3は、複数の吸着パッド3Aを備え、吸着パッド3Aにより成形体8を吸着して成形体8を搬送する吸着ハンドであり、押出成形部2、第1磁場配向部4、二次形成部5、仮乾燥部6、および第2磁場配向部7のそれぞれの間において成形体8を搬送可能に構成されている。
【0018】
第1磁場配向部4は、押出成形部2から離間した位置に配置され、第1磁場発生部4Aおよび第2磁場発生部4Bを備えている。第1および第2磁場発生部4A、4Bは、上下方向において互いに対向するように配置されている。また、第1磁場発生部4Aは、図示せぬ移動機構により上下方向に沿って、第2磁場発生部4Bに対し近接および離間可能に構成されている。第1および第2磁場発生部4A、4Bは、それぞれ図示せぬコイルを備え、当該コイルに電流を流すことにより、矢印4Cで示す方向に磁場を発生する。
【0019】
二次成形部5は、第1成形金型5Aおよび第2成形金型5Bを備えている。第1成形金型5Aおよび第2成形金型5Bは、それぞれ断面視略長方形状をなし、上下方向において互いに対向するように配置されている。また、第1成形金型5Aは、図示せぬ移動機構により上下方向に沿って、第2成形金型5Bに対し近接および離間可能に構成されている。第1成形金型5Aは、第2成形金型5Bに対向する下面5Cを有し、下面5Cには、断面視略半円状の凹部5dが形成されている。第2成形金型5Bは、第1成形金型5Aに対向する上面5Eを有し、上面5Eには、断面視略半円状の凸部5Fが設けられている。そして、第1成形金型5Aが第2成形金型5Bに対し近接し、下面5Cと上面5Eとが当接することによって、第1成形金型5Aと第2成形金型5Bとの間に略半円筒状の空間(キャビティ)が画成されるように構成されている。
【0020】
仮乾燥部6は、第1温風発生部6Aおよび第2温風発生部6Bを備え、それらは上下方向において、成形体8を介して互いに対向するように配置され、お互いに向かって温風6C、6Dを発生するように構成されている。
【0021】
第2磁場配向部7は、第3磁場発生部7Aおよび第4磁場発生部7Bを備えている。第3および第4磁場発生部7A、7Bは、上下方向において互いに対向するように配置されている。また、第3磁場発生部7Aは、図示せぬ移動機構により上下方向に沿って、第4磁場発生部7Bに対し近接および離間可能に構成されている。第3磁場発生部7Aは、第1成形金型5Aとほぼ同様の形状をなしている。よって、第3磁場発生部7Aの下面7Cには、断面視略半円状の凹部7dが形成されている。第4磁場発生部7Bは、断面視略半円状の凸部7Eを備えている。また、第3および第4磁場発生部7A、7Bは、それぞれコイルを備え、コイルに電流を流すことにより、矢印7Fで示すように、第4磁場発生部7Bから第3磁場発生部7Aに向かって放射状に磁場を発生する。そして、第2磁場配向部7は、第1磁場配向部4で発生する磁場よりも強い磁場を発生可能に構成されている。
【0022】
次に、成形体8を形成し、成形体8に対し着磁する方法について説明する。始めに、押出材料2Eが充填された押出金型2Aにおいて、押出パンチ2Dを所定ストローク動かし、押出材料2Eを押出口2cから所定量押し出す。これにより、略平板状の成形体8が成形される。また、押出材料2Eが押出口2cから所定量押し出された時点で、押出パンチ2Dは停止される。
【0023】
次に、搬送部3が、吸着パッド3Aにより成形体8を吸着した状態で、成形体8を第1磁場配向部4まで搬送し、成形体8が第2磁場発生部4B上に載置される。成形体8が第2磁場発生部4B上に載置される時点で、第1および第2磁場発生部4A、4Bの図示せぬコイルに対する電流はOFF状態である。そして、第1磁場発生部4Aが、成形体8に対し近接するように下降し、第1磁場発生部4Aと第2磁場発生部4Bとで成形体8を挟む。この状態で、第1および第2磁場発生部4A、4Bの図示せぬコイルに電流を流し、矢印4Cで示す方向に磁場を発生し、成形体8に対し磁場を印加する。これにより、成形体8を構成する磁石粉末材料の粒子の配向が磁場の方向にそろえられる。なお、磁場の強度は、溶剤を十分に含んだ成形体8を変形させない程度の強さに設定されている。そして、第1および第2磁場発生部4A、4Bの図示せぬコイルに対する電流をOFFにし、第1磁場発生部4Aが上昇し成形体8から離間する。
【0024】
次に、第1磁場配向部4による磁場配向後の成形体8を、搬送部3により第1磁場配向部4から二次成形部5へ搬送する。二次成形部5において、成形体8は、第2成形金型5Bの凸部5F上に載置される。そして、第1成形金型5Aが第2成形金型5Bへ向かって下降し、成形体8を変形させながら、第1成形金型5Aの下面5Cと第2成形金型5Bの上面5Eとが当接する。この当接状態において、上述のように第1成形金型5Aと第2成形金型5Bとの間には、凹部5dと凸部5Fとにより略半円筒状の空間が画成される。よって、成形体8は、当該画成された空間に沿って略半円筒状に成形され、内周面8Aおよび外周面8Bが形成される。そして、第1成形金型5Aが上昇し成形体8から離間する。
【0025】
次に、二次成形部5による二次成形後の成形体8を、搬送部3により二次成形部5から仮乾燥部6へ搬送する。仮乾燥部6において、成形体8は、第1温風発生部6Aと第2温風発生部6Bとの間に配置される。そして、第1温風発生部6Aおよび第2温風発生部6Bから、温風6C、6Dが発生され、成形体8の可撓性を損なわない程度に乾燥(仮乾燥)される。これにより、乾燥(仮乾燥)の前と比べて、乾燥(仮乾燥)後の成形体8の強度は相対的に向上する。
【0026】
次に、仮乾燥部6による仮乾燥後の成形体8を、搬送部3により仮乾燥部6から第2磁場配向部7へ搬送する。第2磁場配向部7において、成形体8は、その内周面8Aが第4磁場発生部7Bの凸部7Eに当接するように載置される。成形体8が第4磁場発生部7B上に載置される時点で、第3および第4磁場発生部7A、7Bの図示せぬコイルに対する電流はOFF状態である。そして、第3磁場発生部7Aが、成形体8に対し近接するように下降し、第3磁場発生部7Aの凹部7dを形成する面と成形体8の外周面8Bとが当接し、第3磁場発生部7Aと第4磁場発生部7Bとで成形体8を挟んだ状態となる。
【0027】
この状態で、第3および第4磁場発生部7A、7Bの図示せぬコイルに電流を流し、矢印7Fで示す方向に第1磁場配向部4で発生する磁場よりも強い磁場を発生する。磁場が第4磁場発生部7Bから第3磁場発生部7Aに向かって放射状に発生されるので、略半円筒状の成形体8の形状に沿って磁場が印加される。これにより成形体8に対し、その内周面8Aから外周面8Bに向かって放射状に磁石粉末材料の粒子の配向が揃えられる。そして、第3および第4磁場発生部7A、7Bの図示せぬコイルに対する電流をOFFにし、第3磁場発生部7Aが上昇し成形体8から離間する。次に、第2磁場配向部7による磁場配向後の成形体8は、搬送部3によりパレット等へ収容される。
【0028】
以上のように、押出材料2Eが押出金型2Aから押し出される過程において、押出材料2Eに対し磁場を印加しないので、押出材料2Eが詰まることなくスムーズに押し出すことができ、また漏れ磁力の影響で成形体8が変形するのを防止することができる。また、第1磁場配向部4において、成形体8を構成する磁石粉末材料の粒子の配向をそろえ、仮乾燥部6において成形体8を仮乾燥して強度を向上させた後に、第2磁場配向部7において第1磁場配向部4で発生される磁場よりも強い磁場を成形体8に印加するので、良好な磁場配向を有する成形体8を製造することができる。
【0029】
また、上記のように、第1および第2磁場配向部4、7は、成形体8が静止した状態で成形体8に対し磁場を印加し、成形体8の搬送部3による搬送時には、成形体8は第1および第2磁場配向部4、7による磁場の印加からは開放されている。よって、搬送状態にある成形体に対し磁場を印加する場合と比較して、磁気配向が乱れることなく、成形体8に対して良好な磁気配向を実現することができる。
【0030】
また、成形体8を二次成形部5により二次成形した後に、仮乾燥部6により仮乾燥し、第2磁場配向部7により磁場配向するので、二次成形により成形体8の磁場配向が乱れたとしても、第2磁場配向部7で修正し、良好な磁場配向を有する成形体8を製造することができる。
【0031】
尚、本発明の磁場押出成形装置は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、第1磁場配向部4と第2磁場配向部7との間に、若しくは第2磁場配向部7の後ろに脱磁手段を設けてもよい。また、搬送部3は、吸着パッド3Aにより成形体8を吸着して搬送する吸着ハンドであったが、押出成形部2、第1磁場配向部4、二次形成部5、仮乾燥部6、および第2磁場配向部7のそれぞれの間において成形体8を搬送可能であれば、ベルトコンベアであっても良い。
【符号の説明】
【0032】
1 磁場押出成形装置
2 押出成形部
2A 押出金型
2B 材料供給部
2c 押出口
3 搬送部
3A 吸着パッド
4 第1磁場配向部
4A 第1磁場発生部
4B 第2磁場発生部
5 二次形成部
6 仮乾燥部
7 第2磁場配向部
7A 第3磁場発生部
7B 第4磁場発生部
8 成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出口が形成された押出金型と、少なくとも磁石材料および溶媒を有する押出材料を押出金型へ供給する供給手段とを有し、該押出材料を押出口から押出して成形体を成形する押出成形機と、
該押出成形機から離間して設けられ、該成形体に対し磁場を印加する第1の磁場配向手段と、
該第1の磁場配向手段により磁場配向された該成形体を仮乾燥する仮乾燥手段と、
仮乾燥された該成形体に対し磁場を印加する第2の磁場配向手段と、
該成形体を該第1の磁場配向手段、該仮乾燥手段、および該第2の磁場配向手段の順に搬送する搬送手段と、を備え、
該第2の磁場配向手段の磁場の強度は、該第1の磁場配向手段の磁場の強度よりも強いことを特徴とする磁場押出成形装置。
【請求項2】
該押出成形機は、間欠的に押出動作を行い、該搬送手段は、該間欠的な押出動作に応じて該成形体を搬送し、
該第1の磁場配向手段および該第2の磁場配向手段は、該成形体が静止した状態で、該成形体に対し磁場を印加し、該成形体は、搬送時には、該第1の磁場配向手段および該第2の磁場配向手段による磁場の印加から開放されていることを特徴とする請求項1に記載の磁場押出成形装置。
【請求項3】
該第1の磁場配向手段により磁場配向された該成形体を成形する二次成形手段をさらに備え、
該仮乾燥手段は、該二次成形手段により成形された該成形体を仮乾燥し、
該第2の磁場配向手段は、該二次成形手段により成形された該成形体の成形後の形状に沿って磁場を印加することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁場押出成形装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−56273(P2012−56273A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204047(P2010−204047)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】