説明

磁性パターン形成方法、磁気記録媒体、磁気記録再生装置

【課題】 高密度記録に対応する磁気記録媒体に好適な、磁気パターン形成方法を提供する。
【解決手段】 基板10上において、磁性層16、イオンバッファ層20をこの順に形成し、このイオンバッファ層20を介在させた状態で、磁性層16に対してイオンを注入する。その後、イオン注入された磁性層16に熱処理を加えることで、イオンの注入領域の磁気特性を改質し、この改質を利用して磁性パターンを形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体等に用いられる磁性パターン形成方法に関するものであり、特に、記録情報間の磁気干渉を低減して、高密度記録に適した磁性パターンを形成する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器の性能向上に伴って、これらの機器が扱う情報量も増大してきている。ハードディスクドライブ(以下、HDD)等の磁気記録媒体の分野では、情報機器が要求する情報量に対応するために、記録密度の向上を目的とした技術開発が盛んに行われている。
【0003】
例えば、記録層となる磁性薄膜を同心円状のトラック毎に分離加工したディスクリートトラック媒体や、トラック間のみならず、磁性薄膜を記録ビット方向にも分離加工したパターンド媒体などが提案されている。ディスクリートトラックトラック媒体は、トラック間に同心円状の非磁性領域を確保することでトラック間の磁気的な干渉を低減し、より高いトラック密度を実現する。また、パターンド媒体は、1ドット(ビット)を記録する磁性体が独立しているため、この磁性体が一つの磁区(単磁区)になることができ、数十個の磁性粒子に1ビットを記録する現行の磁気記録と比較して、磁化の熱安定性を飛躍的に高めることが可能になる。また、ビットの境界も物理的に明確になるため、信号ノイズを低減させることができる。
【0004】
これらのディスクリートトラック媒体やパターンド媒体を作成する方法としては、その分離形状に従った凹凸形状を非磁性基板に形成し、その凹凸形状に沿って磁性薄膜を形成したり、一旦成膜された磁性薄膜の一部をエッチングによって除去したりすることが一般的に行われている。これらの方法によって作成された磁気記録媒体は、磁化情報を記録する磁性膜が物理的に分離されているので、隣接するドット間或いはトラック間の磁気的な干渉が低減し、再生信号の品質も向上する。
【特許文献1】特開2000−322710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの方法によって製造された磁気記録媒体は、記録層となる磁性薄膜や非磁性基板に凹凸が形成されるため、10ナノメートル前後で浮上しながら記録・再生を行う浮上型ヘッドを用いたHDDへの適用においては、その凹凸の影響で空気流に変動が生じ、浮上特性が劣化するという問題があった。
【0006】
表面の凹凸を低減するには、磁性薄膜における凹凸を非磁性体で充填した後に、表面を平坦加工することが必要となる。その結果、製造プロセスが複雑となって生産性が悪化し、製造コストも増大するという問題があった。また、充填用の非磁性体の存在によって浮上型ヘッドと記録層の距離が大きくなってしまうので、その分、記録密度を向上させることができないという矛盾もあった。
【0007】
また、本発明者の詳細な検討によれば、記録ドットや記録トラックを磁性薄膜の面方向(ディスク型の場合は半径方向及び周方向等)に分離するようにしている従来の考えでは、今後、更に記録密度の向上させる場合に、媒体面積の制約から一定の限界があると考えられた。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、磁気特性を改質する手法を用いることで、ディスクリートトラック媒体やパターンド媒体と同等の機能を発揮し、更に高密度記録を可能にする磁性パターンを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究の結果、磁性層に対してイオンバッファ層を積層した状態で、効率的にイオン注入を行い、特定の領域の磁気特性を改質させることに着目した。即ち、上記目的は下記の手段によって達成されるものである。
【0010】
(1)基板上において、磁性層、イオンバッファ層をこの順に形成する工程と、前記イオンバッファ層を介在させた状態で前記磁性層に対してイオンを注入する工程と、前記磁性層を熱処理することで、前記イオンの注入領域の磁気特性を改質する工程と、を有することを特徴とする磁性パターン形成方法。
【0011】
(2)前記イオンバッファ層がカーボンを含んで構成されていることを特徴とする上記(1)記載の磁性パターン形成方法。
【0012】
(3)前記イオンバッファ層が有機レジストを含んで構成されていることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の磁性パターン形成方法。
【0013】
(4)前記イオンバッファ層における反基板側にステンシルマスクを配置して、前記イオンの注入領域を設定することを特徴とする上記(1)、(2)又は(3)記載の磁性パターン形成方法。
【0014】
(5)前記イオン注入後に、前記イオンバッファ層を除去する工程を含むことを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれか記載の磁性パターン形成方法。
【0015】
(6)前記イオンバッファ層の厚みをT1、前記磁性層の厚みをT2とした場合に、T1≦T2となっていることを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれか記載の磁性パターン形成方法。
【0016】
(7)上記(1)乃至(6)のいずれか記載の前記磁性パターン形成方法によって作成された前記磁性層を記録層として備えることを特徴とする磁気記録媒体。
【0017】
(8)基板と、該基板上に形成される磁性層と、を備える磁気記録媒体であって、前記磁性層の記録領域における反基板側表面の強磁性領域と比較して、前記記録領域における基板側表面の強磁性領域が縮小されていることを特徴とする磁気記録媒体。
【0018】
(9)上記(7)又は(8)に記載の磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体に情報を記録する磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドを前記磁気記録媒体上で移動させるアームと、を備えることを特徴とする磁気記録再生装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、物理的な加工を要することなく、ディスクリートトラック媒体やパターンド媒体と同様な機能を発揮し、高密度記録を実現可能な磁性層を得ることができる。特に、イオンバッファ層を用いることで磁性層の厚み方向に対するイオンの注入濃度を制御して、強磁性領域を特定領域に集中組成させることを可能とする。又磁性層の厚み方向にも分離効果を得ることが出来るので、高密度記録に対応することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態の例について詳細に説明する。
【0021】
図1には、本発明の第1実施形態に係る磁気記録媒体1が示されている。この磁気記録媒体1は、非磁性となる基板10、軟磁性を有する裏打ち層12、非磁性の中間層14、磁性薄膜によって形成される磁性層16、磁性層16の表面を保護する保護層18がこの順に積層されて構成されている。基板10はアルミやガラスで構成されており、磁気記録媒体1の全体的な強度を確保している。裏打ち層12は、垂直磁気記録を行う際に単磁極型ヘッドから発生する漏れ磁束を磁性層16に効率よく引き込む機能を有している。その為、裏打ち層12では高い飽和磁束密度を持つNiFe等の軟磁性材料が採用され、100ナノメートル前後の厚さで成膜されている。中間層14はMgO等の素材によって2ナノメートル程度の厚みで形成され、磁性層16をエピキャシタル形成するためのバッファ層として機能する。磁性層16は、FePtを主要素材とした、膜厚が5ナノメートルから20ナノメートル程度の薄膜であり、ここでは10ナノメートルに設定している。磁性層16には、磁気の変化によって情報が記録保持されるようになっている。保護層18は、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜や、酸化ケイ素薄膜(SiO2)であり、1〜5ナノメートル等の膜厚にすることで、密着性が強く且つ高い表面硬度を確保するようにしている。保護層18によって、磁性層16の磨耗や腐食が防止されている。
【0022】
磁性層16に用いられているFePt合金は、成膜直後はfcc−A1型結晶構造であり不規則合金であるが、高温でアニーリング処理(熱処理)を行うことで、L10型結晶構造の高い強磁性を有するようになる。なお、これらの結晶構造を調べるには、X線回析装置を用いればよい。この装置によれば、X線を磁性層に照射し、構成原子により生じる回折現象を利用して、磁性層の結晶構造を解析できる。
【0023】
図2に模式的に示されるように、磁性層16には、記録領域となる記録トラック30と、記録トラック30以外の領域となるガード領域32が形成されている。記録領域となる記録トラック30は、磁気記録媒体1の周方向に同心円状に形成され、FeとPtを主成分としており、そのFeとPtの比率であるFe1−XPtにおいて、Xが0.35以上且つ0.65以下の範囲に設定されている。更に記録トラック30は、BやAg等の元素が1原子%以上且つ20原子%以下の範囲で含有するように設定されている。これらのBやAgの元素は、後述するように、熱処理によって磁性層16の保磁力を増大させる機能を有している。
【0024】
一方、ガード領域32は、FeとPtを主成分としており、そのFeとPtの比率であるFe1−XPtにおいて、Xが0.35以上且つ0.65以下の範囲に設定されている。更にガード領域32には、Cr、Mo、Al、Nbなどの元素が1原子%以上且つ10原子%以下の範囲で含有するように設定されている。これらのCr等の元素は、後述するように、熱処理によって磁性層16の保磁力を低下させる機能を有している。なお、このような元素の組成比率を調べるには、エネルギー分散型X線分析装置を用いればよい。この装置によれば、電子ビームを磁性層に照射して、放出する元素固有のX線のエネルギーを検出することで、磁性層に含まれている元素を明らかにし、更に、このエネルギーの強度比率によって組成比率を調べることが出来る。
【0025】
記録トラック30は、反基板側表面の高保磁力領域30Aと比較して、基板側表面の高保磁力領域30Bが縮小されている。従って、記録トラック30の断面形状は、仮想的には略台形、又はかまぼこ形状となっている。この形状は、後述するイオン注入によって、磁性層16の強磁性領域の範囲を厚み方向に制御することで実現する。
【0026】
次に図3から図8の実験結果を参照して、記録トラック30及びガード領域32に注入する元素の選定根拠や、その磁性層16における元素比率の設定根拠について説明する。なお、実験は、厚み20nmのFe42Pt58の上に厚み5nmのカーボンのイオンバッファ層を形成して、イオン注入を行ったものである。
【0027】
図3の表は、Fe42Pt58に対して、注入電圧を6keVに設定してBイオンを注入した試料を、600℃で熱処理した後の保磁力を示したものである。B元素の注入より熱処理後の保磁力が高まっていることが分かる。例えば、注入量を20原子%とした際の熱処理後の保磁力は、注入しない場合の約2倍となっている。
【0028】
図4の表は、Fe42Pt58に対して、注入電圧を45keVに設定してAgイオンを注入した試料を、600℃で熱処理した後の保磁力を示したものである。Ag元素を2.5原子%注入することによって、注入しない場合の約2倍の保磁力が得られている。
【0029】
図5の表は、Fe42Pt58に対して、注入電圧を21keVに設定してCrイオンを注入した試料を、600℃で熱処理した後の保磁力を示したものである。Cr元素の注入より熱処理後の保磁力が低下することが分かる。例えば、注入量を10原子%とした際の熱処理後の保磁力は、注入しない場合の約1/10となっている。
【0030】
図6の表は、Fe42Pt58に対して、注入電圧を42keVに設定してMoイオンを注入した試料を、600℃で熱処理した後の保磁力を示したものである。Mo元素の注入より熱処理後の保磁力が低下することが分かる。例えば、注入量を10原子%とした際の熱処理後の保磁力は、注入しない場合の約1/10となっている。
【0031】
図7の表は、Fe42Pt58に対して、注入電圧を12keVに設定してAlイオンを注入した試料を、600℃で熱処理した後の保磁力を示したものである。Al元素の注入より熱処理後の保磁力が低下することが分かる。例えば、注入量を20原子%とした際の熱処理後の保磁力は、注入しない場合の約1/10となっている。
【0032】
図8の表は、Fe42Pt58に対して、注入電圧を39keVに設定してNbイオンを注入した試料を、600℃で熱処理した後の保磁力を示したものである。Al元素の注入より熱処理後の保磁力が低下することが分かる。例えば、注入量を10原子%とした際の熱処理後の保磁力は、注入しない場合の約1/10となっている。
【0033】
磁性層16の目的上、記録領域である記録トラック30は高い保磁力に設定され、ガード領域32は低い保磁力に設定されることが望ましい。従って、記録トラック30側に対しては、図3、図4で示したBイオンやAgイオンのように、その後の熱処理によって保磁力が増大する元素を注入するようにする。一方、ガード領域32には、図5、図6、図7、図8で示したCrイオン、Moイオン、Alイオン、Nbイオン等を注入して、その後の熱処理によって保磁力を低下させるようにする。この結果、記録トラック30とガード領域32の保磁力差が大きくなり、高密度記録に適した状態を構成できる。なお、本実施例では、記録トラック30とガード領域32の双方にイオン注入を実行するようにしているが、記録トラック30又はガード領域32の一方に対して行うようにしても良い。
【0034】
次に、この記録媒体1の製造工程について説明する。なお、各層の成膜工程自体に関しては従来と同様であるのでここでの説明を省略する。
【0035】
まず、磁性層16を成膜する際に、FePtの含有比を、Fe:Pt=42:58(Fe42Pt58)に設定する。磁性層16の成膜完了後、更に、磁性層16の表面にイオンバッファ層20を形成する(図10参照)。このイオンバッファ層20の素材はカーボン、又は有機レジスト、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)であり、磁性層16の膜厚をT2とした場合に、イオンバッファ層20の膜厚T1が、0.1×T2<T1<2×T2となるように設定する。この理由としては、膜厚T1が0.1×T2以下であるとイオンバッファ層20として機能することがそもそも難しくなり、また2×T2以上であると、注入されるイオンの30%以上がイオンバッファ層20に止まってしまい、磁性層16に対するイオン注入効率が極端に低下するからである。なお、本実施例では磁性層16の膜厚が10ナノメートルであることから、イオンバッファ層20の厚みは、1ナノメートルから20ナノメートルの範囲内で設定することが好ましく、具体的に10ナノメートルに設定している。素材はカーボンを採用している。
【0036】
この状態で、図9に示されるように、磁性層16に他の元素を注入するために、記録媒体1の記録面側にステンシルマスク50を配置し、イオン注入装置60によって、このステンシルマスク50を介して磁性層16に対してBイオンを注入する。イオン注入装置60は、イオンを発生するイオン源62、イオン源62からBイオンを引き出す引出電源64、イオンビームとなってイオンが移動するビームライン66、磁界を用いて必要なイオン(ここではBイオン)を選別する分析マグネット68、イオンビームに必要なエネルギーを付与する加速管70、イオンが注入される記録媒体1が格納される真空チャンバ72等を備える。
【0037】
図10には、イオン注入される際のステンシルマスク50及び記録媒体1の状態が拡大して示されている。ステンシルマスク50の素材には、タンタル等の薄膜が用いられており、この薄膜を(電子線)リソグラフィ加工することで、記録トラック30の全体配置と一致する記録領域パターン52が形成されている。従って、記録媒体1の上面に、このステンシルマスク50を介在させた状態でイオン注入することで、記録領域パターン52と一致する注入領域に対してB元素が注入される。なお、イオン注入装置60から発せられるBのイオンビームは、図中の矢印で示されるように、ステンシルマスク50を経た後に拡散するので、その拡散量を予め想定して、記録領域パターン52を実際の記録トラック30よりも細めに形成しておくようにする。
【0038】
図11に、イオンバッファ層20を介して磁性層16にB元素をイオン注入する際における、深さ方向のB元素の分布状況を模式的に示す。イオンビームに含まれるBイオンは、イオンバッファ層20及び磁性層16内に含まれる元素と衝突を繰り返しながら、自らのエネルギーを失って停止する。従って、イオンビームが最初に衝突するイオンバッファ層20の表面には、Bイオンはほとんど停止しない。大半のBイオンは、深さ10ナノメートル程度の位置でエネルギーを失って停止するように調整しており、その前後にある程度広がりをもって分布される。従って、10ナノメートルのイオンバッファ層20の存在によって、Bイオンの注入濃度のピーク位置を、磁性層16の反基板側表面にもってくることが可能になる。
【0039】
Bイオンの注入完了後は、ガード領域32側が開口形成された第2ステンシルマスク(図示省略)を再配置し、ガード領域32側にCrイオンを注入する。この場合も、Bイオン注入時と同様に、イオンバッファ層20が存在するので、磁性層16における反基板側表面の含有量が最大となるような状態でCrイオンを積極的に注入することができる。この結果、記録トラック30にはBイオンが含有され、ガード領域32にはCrイオンが含有された磁性層16が形成されることになる。
【0040】
ところで、磁性層16を単独で考えると、反基板側の表面に大量のBイオン及びCrイオンが注入されることになるが、その注入濃度は深さ方向に進むにつれて減少する。従って、特に磁性層16の表面の強磁性境界が鮮明となり、記録情報の再生ノイズを低減させることができる。なお、イオン注入電圧を小さくすれば、イオンビームのエネルギーが減少するので、イオンバッファ層20を用いなくても磁性層16の表面近傍でBイオンやCrイオンを停止させることも可能ではある。しかしながら、それでも磁性層16の表面に直接的にイオンを停止させることは極めて困難であり、又そのようにすると、単位時間当たりのイオン注入量が減少するので、目的のイオン数量を注入するのに時間がかかる。従って、本実施形態のようにイオンバッファ層20を用いることで、高出力のイオンビームを用いて、磁性層16の表面に対して効果的にイオンを注入する。既に述べたが、磁性層16の表面側に集中してイオン注入することは、背面側の裏打ち層12への影響を低減させることにもつながっている。
【0041】
図12には、一例として、ステンシルマスク50を通過したBイオンが記録トラック30の幅方向に広がる様子が模式的に示されている。イオンビーム間にはクローン相互作用が発生し、お互いに反発しようとする。従って、Bイオンは、ステンシルマスク50の裏側を回り込むようにしてイオンバッファ層20及び磁性層16に注入される。その結果、注入領域はステンシルマスク50に形成される記録領域パターン52よりも大きくなってしまうため、実際に磁性層16に形成する記録トラック30よりも、その開口幅を狭くしておくことが必要である。より具体的には、この幅方向の広がり量は、磁性層16の膜厚T1に対して、イオンバッファ層20の膜厚T2が、T1よりも大きくなった時点から増大することから、イオンバッファ層20の膜厚T2は、望ましくは磁性層16の膜厚T1と同等又はそれ以下に設定することが望ましい。ここでは磁性層16の厚み(10ナノメートル)を一致させている。なお、記録トラック30とガード領域32の境界を鮮明にする為にも、ステンシルマスク50を可能な限り記録媒体1に密着させておくことも望ましい。
【0042】
BイオンとCrイオンの注入が完了したら、特に図示しない急速加熱熱処理(RTA)装置を用いて600℃で約1時間加熱して、記録トラック30とガード領域32の磁気特性を異ならせる。具体的には、記録トラック30側の保磁力を増大させ、ガード領域32側の保磁力を低下させる。その後、イオンバッファ層20を、エッチング処理又はアッシング処理によって除去し、磁性層16に対してDLCによる保護層18を成膜することで、図1及び図2で示したような記録媒体1が完成する。
【0043】
次に、図13を参照して、この記録媒体1を用いた記録再生装置100について説明する。この記録再生装置100は、スピンドル102、磁気ヘッド104、アーム106、アクチュエータ108、筐体110等を備える。スピンドル102は、複数の記録媒体1を同軸状態で保持しており、特に図示しないスピンドルモータによって、3000rpm〜10000rpmで回転駆動される。磁気ヘッド104は、複数の記録媒体1のそれぞれに対応して配置されており、記録媒体1に情報を書き込むとともに、記録された信号を読み取る。特にここでは、磁気ヘッド104が単磁極型ヘッドとなっており、裏打ち層12を利用することで磁性層16の面方向に対して垂直に磁力線が通過するようにして、垂直型の記録を可能にしている。この磁気ヘッド104はアーム106の先端側に保持されている。アーム106は自らが揺動することで、記録媒体1の特定の記録ビットに磁気ヘッド104を移動させて、信号の読み書きを行うようになっている。アクチュエータ108は、このアーム106を極めて高い精度で制御する。
【0044】
本第1実施形態の記録媒体1によれば、隣接する記録トラック30の間にガード領域32が形成されているので、記録トラック30間の磁気的な干渉を低減することが可能になる。また、エッチング等によって記録媒体1を物理的に加工して分離させる場合と異なり、イオン注入による性質変化によって分離効果を得るようにしているため、製造プロセスが簡便となり、生産性を向上させることができる。
【0045】
更に本第1実施形態では、イオンバッファ層20を用いて、磁性層16の反基板側(表面側)にしっかりとした強磁性パターンを描くことが可能になるため、記録信号の再生ノイズが低減される。また、高出力のイオンビームを用いることができるので、イオンバッファ層20の表面でイオンが反発するバックスキャッタ現象を回避でき、イオンの注入効率を向上させることができる。
【0046】
また磁性層16を覆うイオンバッファ層20の存在は、注入イオンの衝突によって、磁性層16内の他の原子が磁性層16表面から放出されてしまうスパッタ現象を防止することにも貢献している。同様に、イオンバッファ層20の存在によって、イオン注入時に磁性層16の表面に傷が形成されることを防止でき、又磁性層16にパーティクルが付着することも回避できる。この結果、磁性層16の品質を安定させることが出来る。
【0047】
更に又、本第1実施例では、記録トラック30側にBイオンを含有させることで、非含有状態よりも保磁力を増大させ、ガード領域32にCrイオン注入して、非含有状態よりも保磁力を低下させているので、保磁力差の大きい磁性パターンを容易に形成可能となっている。又、ステンシルマスク50を用いて磁性層16にトラックフォーマットを描くことができるので、このトラックフォーマットを柔軟に変更することが出来る。また、イオン注入によって記録トラック32を形成することから、基板10や磁性層16を平坦にできる。その結果、記録ヘッド104が記録媒体1の表面の突部と衝突することを防止でき、浮上ヘッドの場合はその浮上特性を安定させることが可能になる。
【0048】
なお、この記録再生装置100を用いて磁気記録を行う場合、定期的にガード領域32に対してリフレッシュ効果を目的とした書き込みを行ってもよい。つまり、記録トラック30側の磁気記録工程によってガード領域32が何らかの磁気影響を受けている場合であっても、ガード領域32を含めた積極的なリフレッシュ作業によって、隣接する記録トラック30間の分離効果を維持できる。なお、そのときにリフレッシュ用の磁気記録は、ガード領域32側が低保磁力であることから、極めて弱い磁束で実行できるので、記録トラック30の記録状態に影響を与えることを防止できる。更に、この記録再生装置100では、本記録媒体1を用いていることから媒体表面が平滑であるので、既存の装置構成をそのまま採用することができる。その結果、低コストで記録密度の高い記録再生装置100が得られる。
【0049】
次に、図14を参照して、本発明の第2実施形態の磁気記録媒体200における磁気パターンの形成方法について説明する。なお、第1実施形態の磁気記録媒体1と同一又は類似する部分・部材については、同記録媒体1で示した符号と下二桁を一致させることで、詳細な説明は省略する。
【0050】
ここでは、DLCによって形成された保護層218を予め成膜しておき、その上からイオン注入を実行する。つまり、保護層218がイオンバッファ層を兼ねている。ステンシルマスク250には、記録領域パターン252として記録ドット用の開口が形成されている。本実施形態では、このステンシルマスク250を介して、磁性層216に対してBイオン注入し、その後に熱処理を行うことで、Bイオン注入領域が高保磁力の記録ドット230となるようにしている。既に図3で示したように、Bをイオン注入してから熱処理を行うことで、その注入領域に対応する磁性層216が高保磁力となるからである。一方、記録ドット230の周囲のガード領域232にはBイオンが注入されないので、熱処理後のガード領域232は、記録ドット230と比較して低保磁力となる。
【0051】
更に本第2実施形態では、保護層218をイオンバッファ層として用いているので、イオンバッファ層を除去する工程が省略され、生産性を向上させることが出来る。また、この保護層218によって、磁性層216における反基板側の表面にBイオンを集中してドーピングできるので、形成される記録ドット230の境界を鮮明にすることができ、信号のノイズを低減させることができる。
【0052】
なお、第2実施形態ではBイオンを注入して高保磁力にする場合を示したが、ガード(分離)領域側にCrイオンを注入して、ガード領域側の保磁力を低下させることで、記録ドット230との保磁力差を確保するようにしてもよい。勿論、第1実施形態と同様に、記録ドット230側には、熱処理によって高保磁力とし得る元素を注入しつつ、ガード領域側には熱処理によって低保磁力とし得る元素を注入して、目的の磁性パターンを形成することも可能である。
【0053】
次に、図15から図17を参照して、本発明の第3実施形態の磁気記録媒体300における磁気パターンの形成方法について説明する。なお、図15に示された磁気記録媒体300に関して、第1実施形態の磁気記録媒体1と同一又は類似する部分・部材については、同記録媒体1で示した符号と下二桁を一致させることで、詳細な説明は省略する。
【0054】
この磁気記録媒体300は、FePtを主成分とする磁性層316に対してイオン注入することで、このFeとPtの含有比率を変動させるようにしている。即ち、注入するイオンは、磁性層316の主成分であるFeイオン又はPtイオンということになる。
【0055】
磁性層316には、記録トラック330とガード領域332が形成されているが、記録トラック330側のFeの含有量は、少なくとも一部において38原子%以上且つ60原子%以下の範囲、詳細には50原子%程度に設定されている。一方、ガード領域332は、Feの含有量が35原子%以下且つ20原子%以上の範囲、詳細には29原子%程度となるように設定されている。
【0056】
図16は、原子含有比率に応じた結晶構造と磁性について、熱処理前と熱処理後を比較したものである。例えば、Fe:Ptが75:25や50:50の場合、熱処理前はfcc−A1型(立方Cu3Au型)の結晶構造の不規則合金であり軟磁性を有するが、熱処理を行うと、fcc−L12型(立方Cu3Au型)又はfct−L10型(正方CuAuI型)の規則合金に変化して、高保磁力の強磁性素材となる。
【0057】
一方、Fe:Ptが25:75の場合は、熱処理後はfcc−L12型(立方Cu3Au型)の規則合金になり常磁性を有することになる。つまり、Fe:Ptが25:75の場合は、熱処理を行っても磁気記録には極めて不向きな状態となる。このように、含有比率を変動させることで、同じ原子の組み合わせであっても磁気特性を異ならせることが可能である。
【0058】
図17の(A)には、磁性層316の熱処理温度及びFeの含有比率を変化させることで、保磁力が変動する様子が示されている。例えば、600℃の熱処理を行う場合、Feを38原子%未満(おおよそ35原子%以下、確定的には34原子%以下)に設定すると常磁性となることが分かる。反対に、38原子%以上にすると強磁性になることもわかる。
【0059】
また同様に、Fe含有量をおおよそ35原子%以下にすると保磁力が1(kOe)以下となり、38原子%以上に設定すると保磁力が4(kOe)以上になる。従って、Feの含有量の多い領域と比較して、Feの含有量の少ない領域の保磁力が4分の1以下となる。つまり、一方を35原子%以下、他方を38原子%以上にすることで、低保磁力側の領域と高保磁力側の領域との間で3(kOe)以上の保磁力差を確保でき、隣接する記録トラック330間の磁気干渉を大幅に低減することができる。常磁性と強磁性の境界は35原子%程度となっている。なお、保磁力を調べるには振動試料型磁力計を用いればよい。これにより、磁性層におけるスタティックな保磁力を明らかにすることができる。
【0060】
又熱処理温度を400℃で行う場合、Feを44原子%以上にすれば、強磁性となる。一方、Feが38原子%以下の場合は保磁力が増大することはなく常磁性になることがわかる。つまり常磁性と強磁性の境界としては40原子%程度となっている。
【0061】
図17の(B)には、磁性層316の熱処理温度及びFeの含有比率を変化させることで、飽和磁化量が変動する様子が示されている。例えば、600℃の熱処理を行う場合、Fe含有量を34原子%以下にすることで、飽和磁化量を400G以下に設定することができ、一方、Fe含有量を38原子%以上にすると飽和磁化量が400Gを超える状態となる。つまり400Gの飽和磁化量を基準に考えると、35原子%程度が境界となっている。
【0062】
又熱処理温度を400℃で行う場合、Feを29原子%以下にすると飽和磁化量が極端に減少することがわかる。一方、Feが34%以上の場合は、飽和磁化量が低下せず、400Gを大きく上回ることがわかる。つまり、400Gの飽和磁化量を基準に考えると、32原子%程度が境界になると考えられる。
【0063】
またいずれにしろ、Feの含有比率が20原子%未満とすることは現実的ではない。というのも、図17(A)で示したように、強磁性にするためには、20%未満から少なくとも15原子%程度は含有量を増大させて35原子%程度にする必要があり、長時間に亘ってFeのイオン注入作業を行わなければならないからである。また、Feの含有比率を60原子%よりも大きくすることも現実的ではない。それ以上大きく設定した場合には、Fe:Ptが75:25となるL12型の規則合金が形成されてしまい、L10型の規則合金と比較して磁気異方性が低下するからである。
【0064】
以上の分析を整理すると下記(1)(2)が明らかとなる。
【0065】
(1)400℃程度で熱処理をする場合、記録トラック330のFe含有量を少なくとも40原子%以上、好ましくは44原子%以上に設定して、4(kOe)以上の高保磁力及び400G以上の高飽和磁化量となるようにする。一方、ガード領域332については、Fe含有量を30原子%以下に設定することで、1(kOe)以下の低保磁力及び400G未満の低飽和磁化量となるように設定する。
【0066】
(2)600℃以上で熱処理が可能な場合は、記録トラック330のFe含有量を約35原子%以上、好ましくは38原子%以上にして、4(kOe)以上の高保磁力、及び400G以上の高飽和磁化量を確保する。一方、ガード領域332については、Fe含有量を約35原子%未満、好ましくは34原子%以下に設定することで、1(kOe)以下の低保磁力、及び400G未満の低飽和磁化量となるようにする。なお、600℃の熱処理の方が、両者の含有比差4%で十分な磁性差が得られることから、イオン注入時間も短縮でき生産性が向上する。なお、これらの(1)(2)によって、記録トラック330の保磁力に対して、ガード領域332の保磁力が4分の1以下となり、記録トラック330間の磁気干渉を低減することができる。
【0067】
本第3実施形態では、上記設定根拠に基づいて、記録トラック330においてはFeが50原子%程度、ガード領域332では29原子%程度に設定されている。従って、400℃以上でアニール処理を行えば、記録トラック330側が強磁性でガード領域332が常磁性となる状態を容易に作り出すことができる。
【0068】
次に図15に戻って、この記録媒体300の製造工程を説明する。なお、第1実施形態の製造工程と同様又は類似する部分については具体的な説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0069】
磁性層316を成膜する際のFePtの含有比は、ガード領域332側で求められている含有比、即ちFe:Pt=29:71に設定する。成膜完了後、更に、磁性層316の表面にイオンバッファ層320を形成する。このイオンバッファ層320の素材はカーボン等であり、磁性層316の膜厚をT2とした場合に、イオンバッファ層320の膜厚T1が、0.1×T2<T1<2×T2となるように設定する。
【0070】
この状態で、磁性層316内のFePtの含有比率を変化させるために、記録媒体300の記録面側にステンシルマスク350を配置し、イオン注入装置(図示省略)によって、このステンシルマスク350を介して磁性層316に対してFeをイオン注入する。
【0071】
ステンシルマスク350には、記録トラック330の全体配置と一致する記録領域パターン352が形成されている。従って、記録媒体300の上面に、このステンシルマスク350を介在させた状態でイオン注入することで、記録領域パターン352と一致する領域に対してFeが注入される。
【0072】
イオンバッファ層320の存在によって、磁性層316における反基板側の表面に大量のFeイオンが注入されることになり、その注入濃度は深さ方向に進むにつれて減少する。従って、磁性層316の表面の強磁性境界が鮮明となり、記録情報の再生ノイズを低減させることができる。磁性層316の表面側に集中してFeイオン注入することは、背面側の裏打ち層312への影響を低減させることにもつながっている。
【0073】
なお、ステンシルマスク350によって覆われているガード領域332の含有比は成膜時と変わらないが、記録トラック330側では、Feを積極的にイオン注入してFe含有比を向上させて、Fe:Ptが38:72〜60:40の範囲内となるように制御する。具体的に本実施形態ではFe:Ptが50:50となるように設定している。イオン注入が完了したら、急速加熱熱処理(RTA)装置を用いて600℃で約1時間加熱して、記録トラック330とガード領域332の磁気特性を異ならせる。その後、イオンバッファ層320を、エッチング処理又はアッシング処理によって除去し、磁性層316に対してDLCによる保護層318を成膜することで記録媒体300が完成する。
【0074】
本第3実施形態の記録媒体300によれば、磁性層316を、L10型結晶構造を構成可能な原子(ここではFePt)であって、且つ、熱処理を行っても強磁性とならない程度の含有比率によって成膜を行いつつ、特定の領域に限定してイオン注入して強磁性にするので、トラックフォーマットに適した磁性パターンを容易に形成可能である。
【0075】
また、本記録媒体300のように、ガード領域332におけるFe含有量を35原子%以下に設定することで、ガード領域332の保磁力を1(kOe)以下に設定することができるので、記録トラック330との間で大きな保磁力差を確保可能になる。同様に、ガード領域332の飽和磁化量が400G以下に設定されているので、記録トラック330との間で大きな飽和磁化量差を確保することが可能になる。しかも、一度のイオン注入処理によって、保磁力差と飽和磁化量差を同時に確保できることになるという合理的な製造方法となっている。
【0076】
なお、本第3実施形態では、記録領域に対してイオン注入する場合に限って示したが、例えば、ガード領域にPtをイオン注入することで、ガード領域の磁気特性を改質させてもかまわない。例えば、熱処理によって強磁性となり得る素材によって磁性層を形成し、ガード領域にイオン注入して部分的に常磁性にすることも可能である。これらの選択は、その原子がイオン注入に適しているか否か等を考慮して、適宜決定すればおい。
【0077】
以上、本発明の実施形態では、磁性層の原子組み合わせとしてFe−Ptの場合に限って示したが、本発明はそれに限定されず、他の原子を採用してもかまわない。特にL10型結晶構造の規則合金を構成可能な原子組み合わせ(例えばFe−Pt、Fe−Pd、Co−Pt)が好ましい。それらの含有比率や第3の元素の含有量を調整することで強磁性パターンを自在に形成することが可能となるからである。
【0078】
更に本実施形態では、磁性パターンの形成方法を、ディスク型の磁気記録媒体における磁性層に用いた場合に限って示したが、本発明はそれに限定されず、他の磁気記録媒体に用いることも勿論可能である。イオン注入手法も様々であり、本発明は本実施形態で示したイオン注入装置を用いる場合に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本磁性パターン形成方法等は、例えば、磁気記録カード、磁気記録テープ、磁性層を活用した各種表示媒体等、様々な分野で利用することが可能である。また、MO(Magnet Optical)等の光磁気記録や、磁気と熱を併用する熱アシスト型記録においても本磁性パターンが形成された媒体を用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1実施形態に係る磁気記録媒体の積層状態を示す断面図
【図2】同磁気記録媒体断面における磁性層の状態を示す斜視図
【図3】同磁気記録媒体にBイオンを注入した際の磁気特性の変化を示す表図
【図4】同磁気記録媒体にAgイオンを注入した際の磁気特性の変化を示す表図
【図5】同磁気記録媒体にCrイオンを注入した際の磁気特性の変化を示す表図
【図6】同磁気記録媒体にMoオンを注入した際の磁気特性の変化を示す表図
【図7】同磁気記録媒体にAlイオンを注入した際の磁気特性の変化を示す表図
【図8】同磁気記録媒体にNbイオンを注入した際の磁気特性の変化を示す表図
【図9】同磁気記録媒体に対してイオン注入する際の装置構成を模式的に示す全体図
【図10】同磁気記録媒体に対してイオン注入する際のステンシルマスクを拡大して示す斜視図
【図11】同磁気記録媒体に対するイオン注入量の深さ方向分布を模式的に示すグラフ
【図12】同磁気記録媒体に対するイオン注入時の幅方向の拡散状態を模式的に示すグラフ
【図13】同磁気記録媒体を用いた記録再生装置の構成を示す部分断面図
【図14】本発明の第2実施形態に係る磁気記録媒体のイオン注入工程を示す斜視図
【図15】本発明の第3実施形態に係る磁気記録媒体のイオン注入工程を示す斜視図
【図16】同磁気記録媒体で用いるFePtの含有比率に応じた磁性状態を熱処理前後で比較して示す表図
【図17】同磁気記録媒体で用いるFePtの含有比率と熱処理温度に応じた、保磁力及び飽和磁化量の変化を示すグラフ
【符号の説明】
【0081】
1、200、300 磁気記録媒体
10、210、310 基板
12、212、312 裏打ち層
14、214、314 中間層
16、216、316 磁性層
18、218、318 保護層
30、330 記録トラック
32、232、332 ガード領域
50、250、350 ステンシルマスク
100 記録再生装置
102 スピンドル
104 記録ヘッド
106 アーム
108 アクチュエータ
230 記録ビット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上において、磁性層、イオンバッファ層をこの順に形成する工程と、
前記イオンバッファ層を介在させた状態で前記磁性層に対してイオンを注入する工程と、
前記磁性層を熱処理することで、前記イオンの注入領域の磁気特性を改質する工程と、
を有することを特徴とする磁性パターン形成方法。
【請求項2】
前記イオンバッファ層がカーボンを含んで構成されていることを特徴とする請求項1記載の磁性パターン形成方法。
【請求項3】
前記イオンバッファ層が有機レジストを含んで構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の磁性パターン形成方法。
【請求項4】
前記イオンバッファ層における反基板側にステンシルマスクを配置して、前記イオンの注入領域を設定することを特徴とする請求項1、2又は3記載の磁性パターン形成方法。
【請求項5】
前記イオン注入後に、前記イオンバッファ層を除去する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の磁性パターン形成方法。
【請求項6】
前記イオンバッファ層の厚みをT1、前記磁性層の厚みをT2とした場合に、T1≦T2となっていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の磁性パターン形成方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか記載の前記磁性パターン形成方法によって作成された前記磁性層を記録層として備えることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項8】
基板と、該基板上に形成される磁性層と、を備える磁気記録媒体であって、
前記磁性層の記録領域における反基板側表面の強磁性領域と比較して、前記記録領域における基板側表面の強磁性領域が縮小されていることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に情報を記録する磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを前記磁気記録媒体上で移動させるアームと、
を備えることを特徴とする磁気記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−309841(P2006−309841A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−129383(P2005−129383)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】