説明

磁性粉及び圧粉磁心

【課題】圧磁性粉末同士の絶縁性を確保することができると共に、成型された圧粉磁心の磁束密度の低下を抑制することができる圧粉磁心用粉末を提供する。
【解決手段】磁性粉末11の表面11aに絶縁層が形成された圧粉磁心用粉末10A,10Bを含む磁性粉であって、絶縁層として、磁性粉末11の表面11aから絶縁層12Aの層厚さ方向に、少なくとも第一絶縁層12aと第二絶縁層12bとが順次形成されており、第二絶縁層12bの硬度は第一絶縁層12aの硬度よりも高い第一の圧粉磁心用粉末10Aと、絶縁層として、第一の圧粉磁心用粉末10Aの第二絶縁層12aの硬度よりも低い軟質絶縁層12bが形成された第二の圧粉磁心用粉末10Bと、を圧粉磁心用粉末として少なくとも含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性粉末の表面に少なくとも絶縁層が被覆された圧粉磁心用粉末からなる磁性粉、及び該磁性粉により成型された圧粉磁心に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電動機等に用いる磁心は、磁性粉末を含む磁性粉を圧粉成型することにより製造されている。このような圧粉磁心に用いられる磁性粉を構成する圧粉磁心用粉末は、加圧成型後の各磁性粉末間の電気的な絶縁性を確保するために、磁性粉末の表面に絶縁層が被覆されている。
【0003】
例えば、前記圧粉磁心用粉末として、磁性粉末の表面にシリコーン樹脂等の絶縁性に優れた高分子樹脂を塗布し、絶縁層として樹脂層を被覆した圧粉磁心用粉末や、磁性粉末の表面に化学気相蒸着法(CVD)によりシリカ(SiO)等の酸化物を蒸着させ、前記絶縁層として酸化物層を被覆した圧粉磁心用粉末を挙げることができる。この他にも、圧粉磁心用粉末として、磁性粉末の表面から厚さ方向に向って、酸化物絶縁層、シリコーン樹脂層が絶縁層として順次形成された圧粉磁心用粉末からなる磁性粉が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平2006−233295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記圧粉磁心用粉末を含む磁性粉から圧粉磁心を製造する場合には、前記磁性粉を金型内に充填し、時には1000MPa以上の高圧条件で成型する。そして、成型後の成型体は、炉内に投入されて、数100℃の非酸化雰囲気炉内で焼鈍され、ひずみ除去熱処理が行われる。
【0006】
しかし、圧粉磁心用粉末の絶縁層としてシリコーン樹脂の樹脂層を形成した場合には、成型時の圧力または熱処理時の樹脂の軟化に伴い、樹脂層の樹脂が磁性粉末の表面から流動することがあった。この結果、絶縁層として樹脂層を設けたにも拘らず、磁性粉末同士が直接接触してしまい、充分な絶縁特性を確保することができない場合があった。また、前記熱処理の条件によっては、シリコーン樹脂などの高分子樹脂は、変質したり、化学変化を起したりすることもあり、所望の絶縁特性が得られない場合もあった。
【0007】
一方、前記絶縁層としてシリカ等の酸化物層を被覆した場合には、酸化物は脆性材料であるため、該酸化物により構成された酸化物層は、成型時の磁性粉末の塑性変形と共に変形することができず(酸化物層が磁性粉末の塑性変形に追従できず)、破壊されてしまうことが多い。この場合も同様に、磁性粉末同士が直接接触することになり、これにより成型された圧粉磁心は十分な絶縁特性を得ることができなかった。
【0008】
さらに、特許文献1の粉末を用いた場合であっても、同様に、加圧成型の初期成型時に粉末の外側層を構成するシリコーン樹脂が押し流される。そして、シリコーン樹脂の流動に伴って、シリコーン樹脂層の一部が無くなった粉末の酸化物絶縁層同士が接触し、前記したと同様に、酸化物絶縁層が破壊され、磁性粉末同士が直接接触する場合がある。
【0009】
このことを鑑みて、例えばシリコーン樹脂層の層厚さを大きくしたり、シリコーン樹脂の替わりに流動し難い絶縁性を選択したりすることも考えられる。しかし、特許文献1に記載の圧粉磁心用粉末は、絶縁層の二層構造からなるため、必然的に、絶縁層の層厚さは厚くなる。このため、この圧粉磁心用粉末を含む磁性粉を用いて圧粉磁心を成型した場合、圧粉磁心中に占める磁性粉末を構成する材料(たとえば、磁性粉末が鉄粉からなる場合には鉄系材料)の占積率が低くなってしまう。この結果、成型された圧粉磁心は、該材料の密度の低下に伴い、磁心として使用した場合には、所望の磁束密度を得ることができない場合があった。
【0010】
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、圧粉磁心への成型時及び成型後の熱処理時であっても、磁性粉末同士の絶縁性を確保することができると共に、成型された圧粉磁心の磁束密度の低下を抑制することができる磁性粉及び圧粉磁心を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決すべく、本発明に係る磁性粉は、磁性粉末の表面に絶縁層が形成された圧粉磁心用粉末を含む磁性粉であって、前記絶縁層として、前記磁性粉末の表面から前記絶縁層の層厚さ方向に、少なくとも第一絶縁層と第二絶縁層とが順次形成されており、前記第二絶縁層の硬度が前記第一絶縁層の硬度よりも高い第一の圧粉磁心用粉末と、前記絶縁層として、前記第一の圧粉磁心用粉末の前記第二絶縁層の硬度よりも低い軟質絶縁層が形成された第二の圧粉磁心用粉末と、を前記圧粉磁心用粉末として少なくとも含むことを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る磁性粉によれば、加圧成型時に、第一及び第二の圧粉磁心用粉末が相互に接触する場合に、その接触部分は、第一の圧粉磁心用粉末の硬質絶縁層である第二絶縁層を挟むように、第一の圧粉磁心用粉末の軟質絶縁層となる第一の絶縁層と、第二の圧粉磁心用粉末の軟質絶縁層と、が形成されることになる。この結果、以下の利点を得ることができる。
【0013】
まず、第一に、加圧成型時に、硬質である第二絶縁層に大きな応力が作用した場合であっても、第二絶縁層と磁性粉末との間にある軟質絶縁層(第一の圧粉磁心用粉末の第一の絶縁層及び第二の圧粉磁心用粉末の軟質絶縁層)が前記応力に対する緩衝材として機能し、硬質の第二絶縁層の変形・破壊を抑制し、磁性粉末間の絶縁性を確保することができる。
【0014】
第二に、軟質絶縁層(第一の圧粉磁心用粉末の第一の絶縁層及び第二の圧粉磁心用粉末の軟質絶縁層)が、圧粉成形時に磁性粉末の表面から押し流されたとしても、硬質の第二絶縁層が、磁性粉末の間に配置されることになり、磁性粉末の絶縁性を確保することができる。
【0015】
第三に、前記応力よりもさらに高い応力が作用して、硬質の第二絶縁層が破壊された場合であっても、破壊された第二絶縁層の破片が磁性粉末間に分散される。該分散された破片の間の空間を満たすように軟質絶縁層(第一の圧粉磁心用粉末の第一の絶縁層及び第二の圧粉磁心用粉末の軟質絶縁層)の成分が流動し、それ以上の流動は抑制されるので、磁性粉末同士の直接接触を回避し、磁性粉末間の絶縁性を確保することができる。
【0016】
さらに、成型後の焼鈍時において、第一の圧粉磁心用粉末の第一の絶縁層又は第二の圧粉磁心用粉末の軟質絶縁層のいずれかが変質した場合であっても、第一絶縁層の成分が変質なく絶縁性を確保することができれば、磁性粉末間の絶縁性を確保することができる。
【0017】
このように、本発明に係る磁性粉は、第一の圧粉磁心用粉末と、第二の圧粉磁心用粉末の双方を含むことにより、第二の圧粉磁心用粉末のみを含む磁性粉に比べて、圧粉磁心に、より高い絶縁性を確保させることができる。
【0018】
さらに、第一の圧粉磁心用粉末のみを用いた場合には、絶縁層が少なくとも二層構造となっているため、成型された圧粉磁心の磁性粉末の占積率は低下し、磁心として使用した際に、磁束密度の低下が懸念されるが、本発明の如く、磁性粉に第二の圧粉磁心用粉末を含めることにより、磁性粉末の占積率の低下は抑えられ、磁束密度の低下を抑制することができる。
【0019】
なお、本発明にいう磁性粉とは、圧粉磁心用粉末を含む粉末の集合体のことをいう。また、本発明にいう絶縁層とは、成形後の磁性粉末(粒子)間の電気的絶縁性を確保するための層である。また本発明にいう、第二絶縁層の硬度が第一絶縁層の硬度よりも高いとは、第二絶縁層を構成する材料が、第一絶縁層を構成する材料に比べて、相対的に硬質であることを意味し、このような関係とすることにより、第一絶縁層は、第二絶縁層に比べて、外力により変形しやすいことになる。
【0020】
また、本発明でいう磁性粉末とは、透磁性を有する粉末のことをいい、軟磁性金属粉末が好ましく、例えば、鉄、コバルト、または、ニッケルなどを挙げることができる。より好ましい材料として鉄系の材料であり、例えば、鉄(純鉄)、鉄−シリコン系合金、鉄−窒素系合金、鉄−ニッケル系合金、鉄−炭素系合金、鉄−ホウ素系合金、鉄−コバルト系合金、鉄−リン系合金、鉄−ニッケル−コバルト系合金、または、鉄−アルミニウム−シリコン系合金などが挙げられる。また、磁性粉末は、水アトマイズ粉末、ガスアトマイズ粉末、または粉砕粉末等を挙げあることができ、加圧成型時における絶縁層の破壊の抑制を考慮した場合、粉末の表面に凹凸の少ない粉末を選定することがより好ましい。
【0021】
そして、本発明に係る圧粉磁心用粉末に含まれる、前記第一の圧粉磁心用粉末と、前記第二の圧粉磁心用粉末との重量比は、3:7〜9:1の範囲にあることがより好ましい。前記範囲の重量比とすることにより、成型された圧粉磁心は、他の範囲のもので成型された圧粉磁心に比べて、より高い比抵抗の確保と磁束密度の低下のさらなる抑制とを両立させることができる。
【0022】
また、本発明に係る磁性粉は、前記第一絶縁層の硬度及び軟質絶縁層の硬度のいずれもが、前記第一及び第二の圧粉磁心用粉末の磁性粉末の硬度よりも低いことがより好ましい。本発明によれば、第一絶縁層の硬度を前記第一及び第二の圧粉磁心粉末の磁性粉末の硬度よりも低くしたことにより、成型時の磁性粉末の変形に追従するように前記第一絶縁層及び軟質絶縁層が変形可能となり、第二絶縁層は破壊され難い。この結果、磁性粉末間の絶縁性を確保することができる。なお、本発明にいう第一絶縁層の硬度及び軟質絶縁層の硬度が、前記磁性粉末の硬度よりも低いとは、前記第一絶縁層及び軟質絶縁層を構成する材料が、前記磁性粉末を構成する材料に比べて、相対的に軟質であることを意味する。
【0023】
また、本発明に係る磁性粉は、前記第二絶縁層の硬度が、前記第一及び第二の圧粉磁心粉末の磁性粉末の硬度よりも高いことがより好ましい。本発明によれば、第一の圧粉磁心の第二絶縁層を磁性粉末よりも硬質にしたことにより、加圧成型時に第二絶縁層が破壊されたとしても、その破片が磁性粉末の表面に刺さり、該破片の投錨効果によって、第一の圧粉磁心用粉末の第一の絶縁層及び第二の圧粉磁心用粉末の軟質絶縁層の流動を抑制することができる。この結果、磁性粉末間の絶縁性を確保することができる。
【0024】
また、本発明に係る磁性粉は、前記第一絶縁層及び前記軟質絶縁層が高分子樹脂からなり、前記第二絶縁層が金属酸化物などの酸化物からなることがより好ましい。本発明によれば、第二絶縁層を酸化物にすることにより、加圧成型後の焼鈍時に、高分子樹脂が変質した場合であっても、酸化物は変質しないので、磁性粉末間の絶縁性を安定的に確保することができる。
【0025】
たとえば、前記高分子樹脂として、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、または、シリコーン樹脂などの高分子樹脂を挙げることができ、酸化物として、シリカ、アルミナ、または、ジルコニアなどのセラミックス系材料を挙げることができ、耐熱性のある酸化物であることが好ましい。また、第一の圧粉磁心用粉末と第二の圧粉磁心用粉末とを構成する材料は、異なる材料であってもよいが、圧粉磁心により安定した特性等を要求する場合には、同じ材料から構成されることがより好ましい。
【0026】
さらに、前記第一絶縁層及び軟質絶縁層の層厚さは、10nm〜10μmが好ましく、より好ましくは、10nm〜2μmである。本発明によれば、前記層厚さの範囲の第一絶縁層及び軟質絶縁層を設けることにより、より好適に磁性粉末間の絶縁性を確保することができる。すなわち、第一絶縁層の層厚さが10nmよりも薄い場合には、第一絶縁層及び軟質絶縁層が加圧成型時に緩衝材として機能し難く、磁性粉末間の絶縁性を充分に確保することが難しい。さらに、2μmよりも厚い場合には、第一絶縁層及び軟質絶縁層の機能をそれ以上期待することができず、また、10μmよりも厚い場合には、成型後の圧粉磁心の焼鈍時に、第一絶縁層の収縮量が大きくなり、圧粉磁心の寸法精度を確保することが難しくなる。
【0027】
また、より好ましい態様としては、本発明に係る磁性粉は、前記第一絶縁層及び軟質絶縁層がシリコーン樹脂からなり、前記第二絶縁層はシリカからなる。本発明によれば、前記第一絶縁層の材質をシリコーン樹脂とし、前記第二絶縁層の材質をシリカ(SiO)としたことにより、シリカとシリコーン樹脂は、同じSi元素を主成分として含むので、馴染み性がよく、高温時におけるシリコーン樹脂の凝集防止効果を高めることができる。また、材料コストも比較的安価であり、圧粉磁心の大量生産に際してその製造コストを可及的に廉価にできる。
【0028】
また、前記磁性粉末の平均粒径は、5μm〜500μmが好ましく、さらに好ましくは、20μm〜450μmである。前記範囲の磁性粉末を用いることにより、絶縁性に優れた圧粉磁心を得ることができる。すなわち、平均粒径が20μmよりも小さい場合には、該粉末の表面に均一な厚みの第一絶縁層と第二絶縁層を被覆することが難しくなる場合があり、平均粒径が5μmよりも小さい場合には前記理由に加え、磁性粉末そのものを製造することが難しく、製造コストが高くなることがある。一方、450μmよりも大きい場合には、絶縁層を構成する絶縁材料の割合が低下してしまい、所望の磁気特性及び絶縁性(比抵抗)を得ることができ難く、500μm以上である場合には、前記理由に加え粉末を圧粉成型し難くなる。
【0029】
前述した第一の及び第二の圧粉磁心用粉末の磁性粉末に絶縁層を被覆する方法としては、液相法(ゾル−ゲル法)、化学気相蒸着法(CVD)、物理気相蒸着法(PVD)、CCVD(燃焼化学気相蒸着法)、陽極酸化処理、などを挙げることができ、均一かつ均質に絶縁層を被覆することができる方法であれば、特のその方法は限定されるものではない。
【0030】
また、第一絶縁層及び軟質絶縁層として、磁性粉末の表面にシリコーン樹脂を被覆する場合には、磁性粉末の表面にシリコーン樹脂を塗布し、さらに第二絶縁層として、シリカを被覆する場合には、シリコーン樹脂の塗布後の粉末を、LPGガスとシラン化合物を含むシラン系ガスとを燃焼させた雰囲気中に投入し、粉末の表面にシリカを蒸着させる方法(燃焼化学気相蒸着法(CCVD法))により被覆することがより好ましい。
【0031】
また、別の態様としては、本発明に係る磁性粉は、磁性粉末の表面に絶縁層が形成された圧粉磁心用粉末を含む磁性粉であって、前記絶縁層として、前記磁性粉末の表面から前記絶縁層の層厚さ方向に、少なくとも第一絶縁層と第二絶縁層とが順次形成されており、前記第二絶縁層の硬度は前記第一絶縁層の硬度よりも低い第一の圧粉磁心用粉末と、前記絶縁層として、前記第一の圧粉磁心用粉末の前記第二絶縁層の硬度よりも高い硬質絶縁層が形成された第二の圧粉磁心用粉末と、を前記圧粉磁心用粉末として少なくとも含むことを特徴とするものある。
【0032】
本発明に係る磁性粉によれば、加圧成型時に、第一及び第二の圧粉磁心用粉末が相互に接触する場合に、その接触部分は、第一の圧粉磁心用粉末の軟質絶縁層である第二絶縁層を挟むように、第一の圧粉磁心用粉末の硬質絶縁層である第一の絶縁層と、第二の圧粉磁心用粉末の硬質絶縁層と、が配置されることになる。
【0033】
そして、加圧成型時に、軟質絶縁層である第二の絶縁層が緩衝材として機能し、硬質の第一絶縁層及び硬質絶縁層の変形・破壊を抑制し、磁性粉末間の絶縁性を確保することができる。また、成型後の焼鈍時において、第一の圧粉磁心用粉末の第二の絶縁層が変質した場合であっても、第一絶縁層又は硬質絶縁層のいずれか一方の成分が変質なく絶縁性を確保することができれば、磁性粉末間の絶縁性を確保することができる。さらに、第一の圧粉磁心用粉末のみを用いた場合には、絶縁層が少なくとも二層構造となっているため、成型された圧粉磁心の磁性粉末の占積率は低下し、磁心として使用した際に、磁束密度の低下が懸念されるが、本発明の如く、磁性粉に第二の圧粉磁心用粉末を含めることにより、磁性粉末の占積率の低下は抑えられ、磁束密度の低下を抑制することができる。
【0034】
また、本発明に係る磁性粉は、前記第一絶縁層の硬度及び前記硬質絶縁層の硬度は、前記第一及び第二の圧粉磁心用粉末の磁性粉末の硬度よりも高いことがより好ましく、前記第二絶縁層の硬度は、前記第一及び第二の圧粉磁心用粉末の磁性粉末の硬度よりも低いことがより好ましい。さらに、前記第一絶縁層及び前記硬質絶縁層は酸化物からなり、前記第二絶縁層は高分子樹脂からなり、より好ましくは、前記第一絶縁層及び軟質絶縁層はシリカからなり、前記第二絶縁層はシリコーンからなることがより好ましい。
【0035】
また、上述した圧粉磁心用粉末を含む磁性粉を成型型内に充填し、温間金型潤滑成型法により加圧成型し、乾燥及びクーリングを行い、最後に焼鈍によりひずみ除去熱処理を行うことで、高い磁束密度を有し、絶縁性が確保された圧粉磁心を得ることができる。また、前記温間金型潤滑成型法で圧粉磁心に加圧成型することにより、従来の室温成型に比べてより高い圧力で圧粉磁心に成型することができる。
【0036】
絶縁性及び磁気特性に優れた前記圧粉磁心は、ハイブリッド車や電気自動車の駆動用電動機を構成するステータやロータ、電力変換機を構成するリアクトル用のコア(リアクトルコア)に好適である。
【発明の効果】
【0037】
上記説明から理解できるように、本発明によれば、加圧成型時に圧粉成型用粉末の表面に形成される絶縁層が破壊されることを防止することができ、焼鈍時における絶縁層の凝集を効果的に防止することができるため、高い絶縁性を有する圧粉磁心を得ることができる。さらに、成型された圧粉磁心の磁束密度の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下に、図面を参照して、本発明に係る磁性粉の第一実施形態に基づいて説明する。
【0039】
図1は、第一実施形態に係る磁性粉を示した模式図を示しており、(a)は、磁性粉に含まれる第一の圧粉磁心用粉末10Aの模式図であり、(b)は、前記磁性粉に含まれる第二の圧粉磁心用粉末10Bの模式図である。
【0040】
また、図2は、図1に示す第一及び第二の圧粉磁心用粉末10A,10Bを含む磁性粉1により圧粉磁心を圧粉成型したときの絶縁層の挙動を説明するための図であり、(a)は、圧粉成型前の磁性粉1を示した模式図であり、(b)は成型型内に投入時に圧粉成型前の磁性粉の状態を説明するための模式図であり、(c)、(d)は、成型後の磁性粉1の状態(圧粉磁心100)を説明するための模式図である。
【0041】
本実施形態に係る磁性粉は、図1(a)及び(b)に示す第一及び第二の圧粉磁心用粉末10A,10Bを少なくとも含むものである。具体的には、図1(a)に示すように、本実施形態に係る磁性粉に含まれる第一の圧粉磁心用粉末10Aは、磁性粉末11の表面に少なくとも絶縁層12Aが被覆された粉末である。より具体的には、絶縁層12Aとして、前記磁性粉末11の表面11aから絶縁層12Aの層厚さ方向に、少なくとも第一絶縁層12aと第二絶縁層12bとが順次形成されている。また、第二絶縁層12bは第二絶縁層12aよりも硬度が高い層となっている。
【0042】
さらに、図1(b)に示すように、本実施形態に係る磁性粉に含まれる第二の圧粉磁心用粉末10Bは、磁性粉末11の表面に少なくとも軟質絶縁層12cが被覆された粉末である。この軟質絶縁層12cは、第一の圧粉磁心用粉末12Aの第二絶縁層12bの硬度よりも低い絶縁層である。
【0043】
第一及び第二圧粉磁心用粉末10A,10Bの磁性粉末11は、ガスアトマイズにより製造された純鉄からなる粉末であり、平均粒径が20〜450μmの範囲の軟磁性金属粉末であることがより好ましい。また、第一絶縁層12a及び軟質絶縁層12cは、電気的な絶縁特性を有する材料からなるのであれば特に限定されないが、磁性粉末11の表面にシリコーン樹脂を塗布することにより、形成されたシリコーン樹脂からなる絶縁層であることがより好ましい。さらに、第二絶縁層12bは、LPGガスとシランガスを用いて、燃焼気相化学蒸着法により、第一絶縁層12aの表面に、被覆されたシリカからなる絶縁層であることがより好ましい。
【0044】
前記材料により第一及び第二の圧粉磁心用粉末10A,10Bを製造することにより、第二絶縁層12bの硬度が第一絶縁層12aの硬度及び軟質絶縁層12cの硬度よりも高い関係を満たし、第一絶縁層12aの硬度が、磁性粉末11の硬度よりも低い関係を満たし、かつ、第二絶縁層12bの硬度が、磁性粉末11の硬度よりも高い関係を満たすことになる。このような関係を同時に満たすことにより、この第一及び第二の圧粉磁心用粉末10A,10Bを含む磁性粉を用いて圧粉成型した圧粉磁心は、従来のものに比べて磁気特性をより向上させることができる。
【0045】
また、さらに、本実施形態に係る磁性粉は、第一の圧粉磁心用粉末10Aと、第二の圧粉磁心用粉末10Bとの重量比が、3:7〜9:1の範囲を満たすように、第一及び第二の圧粉磁心10A,10Bが混合されていることがより好ましい。これは、発明者らの後述する実験等により明らかになったものであり、この範囲で成型された圧粉磁心は、他の範囲のもので成型された圧粉磁心に比べて、より高い比抵抗の確保と、磁束密度の低下のさらなる抑制と、を両立させることができる。
【0046】
以下に圧粉磁心用粉末10を用いた圧粉磁心の製造方法について簡単に説明する。具体的には、まず、図2(a)に示すように、磁性粉末11の表面から、第一絶縁層(シリコーン樹脂層)12a、第二絶縁層(シリカ層)12bが順次形成された第一の圧粉磁心用粉末10Aと、軟質絶縁層(シリコーン樹脂層)12cが形成された第二の圧粉磁心用粉末10Bと、を準備する。
【0047】
そして、第一及び第二の圧粉磁心用粉末10A,10Bを混合し磁性粉1を得る。このとき、上記したように、第一の圧粉磁心用粉末10Aと、第二の圧粉磁心用粉末10Bとの重量比が、3:7〜9:1の範囲を満たすように、第一及び第二の圧粉磁心用粉末10A,10Bを均一に混合する。
【0048】
次に、混合された第一及び第二の圧粉磁心用粉末10A,10Bを含む磁性粉1を成型内(図示せず)に配置する。このとき、図2(b)に示すように、第一及び第二の圧粉磁心用粉末10A,10B同士は接触しているが、結合していない。その後、成型内の第一及び第二の圧粉磁心用粉末10A,10Bを含む磁性粉1を加圧して、圧粉磁心を成型し、成型後、非酸化雰囲気炉内で焼鈍し、ひずみ除去熱処理を行う。
【0049】
このとき、図2(c)に示すように、第一絶縁層12a及び軟質絶縁層12cに比べ硬質である第二絶縁層12bに、成型による応力が作用した場合であっても、第二絶縁層12bと磁性粉末11との間にある軟質の第一絶縁層12a及び軟質絶縁層12cが、前記応力に対する緩衝材として機能し、硬質の第二絶縁層12bの変形・破壊を抑制する。
【0050】
また、図2(d)に示すように、相対的に軟質である第一絶縁層12a及び軟質絶縁層12cが磁性粉末11の表面から押し流され、第一絶縁層12aの成分が粉末間の所定の箇所に凝集した場合であっても、硬質の第二絶縁層12bが、磁性粉末11の間に配置される。
【0051】
また、さらに高い応力が作用して、磁性粉末11の塑性変形に追従できず硬質の第二絶縁層12bが破壊された場合であっても、破壊された第二絶縁層12bの破片13が磁性粉間に分散され、該分散された破片13が磁性粉末11の表面に刺さり、投錨として作用する。これにより、破片間の空間を満たすように、軟質の第一絶縁層12a及び軟質絶縁層12cの一部が流動し、それ以上の流動は抑制される。この結果、磁性粉末11同士の直接接触を回避し、磁性粉末間の絶縁性を確保することができる。
【0052】
さらに、磁性粉が第一の圧粉磁心用粉末10Aと第二の圧粉磁心用粉末10Bとを含むことにより、成型される圧粉磁心の磁性材料及び絶縁材料の割合を適宜調整することができる。この結果、所望の比抵抗と磁束密度を有する圧粉磁心を容易に製造することができる。
【0053】
図3は、第二実施形態に係る磁性粉を示した模式図を示しており、(a)は、磁性粉に含まれる第一の圧粉磁心用粉末の模式図であり、(b)は、前記磁性粉に含まれる第二の圧粉磁心用粉末の模式図である。
【0054】
図3に示すように、本実施形態に係る磁性粉は、第一実施形態(図2(a)及び(b)に示す)とは異なる第一及び第二の圧粉磁心用粉末10C,10Dを少なくとも含むものである。具体的には、図3(a)に示すように、本実施形態に係る磁性粉に含まれる第一の圧粉磁心用粉末10Cは、磁性粉末11の表面に少なくとも絶縁層12Bが被覆された粉末である。より具体的には、絶縁層12Bとして、前記磁性粉末11の表面11aから絶縁層12Bの層厚さ方向に、少なくとも第一絶縁層12dと第二絶縁層12eとが順次形成されている。また、第二絶縁層12eの硬度は第一絶縁層12dの硬度よりも低い。
【0055】
さらに、図3(b)に示すように、本実施形態に係る磁性粉に含まれる第二の圧粉磁心用粉末10Dは、磁性粉末11の表面に少なくとも硬質絶縁層12fが被覆された粉末である。この硬質絶縁層12fは、第一の圧粉磁心用粉末10Cの第二絶縁層12eの硬度よりも高い絶縁層である。
【0056】
第一及び第二圧粉磁心用粉末10C,10Dの磁性粉末11は、第一実施形態に係る粉末と同等の製造方法により製造された粉末であることが好ましく、平均粒径も、第一実施形態に係るものと同等の軟磁性金属粉末であることがより好ましい。また、第一絶縁層12d及び硬質絶縁層12cは、電気的な絶縁特性を有する材料からなるのであれば特に限定されないが、LPGガスとシランガスを用いて、燃焼気相化学蒸着法により、磁性粉末11の表面に、被覆されたシリカからなる絶縁層であることがより好ましい。また、第二絶縁層12eは、磁性粉末11の表面にシリコーン樹脂を塗布することにより、形成されたシリコーン樹脂からなる絶縁層であることがより好ましい。
【0057】
前記材料により第一及び第二の圧粉磁心用粉末10C,10Dを製造することにより、第一絶縁層12dの硬度及び硬質絶縁層12fの硬度が第二絶縁層12eの硬度よりも高い関係を満たし、第一絶縁層12dの硬度が磁性粉末11の硬度よりも高い関係を満たし、かつ、第二絶縁層12eの硬度が磁性粉末11の硬度よりも低い関係を満たすことになる。このような関係を同時に満たすことにより、第一及び第二の圧粉磁心用粉末10A,10Bを含む磁性粉を用いて圧粉成型した圧粉磁心は、従来のものに比べて磁気特性をより向上させることができる。
【0058】
すなわち、このように構成することにより、加圧成型時に、第一及び第二の圧粉磁心用粉末10C,10Dが相互に接触する場合に、その接触部分は、第一の圧粉磁心用粉末10Cの軟質絶縁層である第二絶縁層12eを挟むように、第一の圧粉磁心用粉末10Cの硬質絶縁層である第一の絶縁層12dと、第二の圧粉磁心用粉末10Dの硬質絶縁層12fと、が配置されることになる。
【0059】
この場合、軟質絶縁層である第二の絶縁層12eが緩衝材として機能し、硬質の第一絶縁層12d及び硬質絶縁層12fの変形・破壊を抑制できる。また、成型後の焼鈍時において、第一の圧粉磁心用粉末10Cの第二の絶縁層12eが変質した場合であっても、シリカからなる第一絶縁層12d又は硬質絶縁層12fのいずれか一方の成分が変質なく絶縁性を確保することができる。このようにして、磁性粉末11,11間の絶縁性を確保することができる。さらに、第一の圧粉磁心用粉末10Cのみを用いた場合には、絶縁層12Bが少なくとも二層構造となっているため、成型された圧粉磁心の磁性粉末の占積率は低下し、磁心として使用した際に、磁束密度の低下が懸念されるが、本実施形態の如く、磁性粉に第二の圧粉磁心用粉末10Dを含めることにより、磁性粉末11,11の占積率の低下は抑えられ、磁束密度の低下を抑制することができる。
【実施例1】
【0060】
本実施例として、前記第一実施形態に係る磁性粉を製造した。磁性粉末として平均粒径200μmの純鉄粉を準備した。次に、第一の圧粉磁心用粉末を製造した。具体的には、純鉄粉の表面にシリコーン樹脂を塗布し、層厚さ1μmのシリコーン樹脂からなる第一絶縁層を被覆した。さらに、LPGガスとシラン化合物を原料とした燃焼化学気相蒸着法により、磁性粉末上の第一絶縁層の表面に、層厚さ200nmのシリカからなる第二絶縁層を被覆した。また、第二の圧粉磁心用粉末として、純鉄粉の表面にシリコーン樹脂を塗布し、層厚さ1μmのシリコーン樹脂からなる軟質絶縁層を被覆した。そして、第一の圧粉磁心用粉末を磁性粉に対して50重量%、第二の圧粉磁心用粉末を磁性粉に対して50重量%(第一の圧粉磁心用粉末と第二の圧粉磁心用粉末とが重量比が1:1)となるようにこれらの粉末を混合して、磁性粉を製作した。
【0061】
このようにして製造された磁性粉を所定量準備し、該磁性粉を金型内に充填して温間金型潤滑成型法により成型体を得た。さらに、該成型体を600℃の温度条件で、45分間焼鈍処理を行い、圧粉磁心に相当する試験体を製作した。該試験体に対して、密度及び5kA/mの条件で磁束密度を測定した。この結果を図4に示す。なお、図4に示す密度及び磁束密度は、後述する比較例1の密度及び磁束密度で正規化したものである。
【0062】
[比較例1]
実施例1と同じようにして、磁性粉を製作した。実施例1と相違する点は、磁性粉として、第一の圧粉磁心用粉末のみ(第二の圧粉磁心用粉末を含まない)からなる磁性粉を製作した点である。そして、この磁性粉を用いて、実施例1と同じようにして、圧粉成型、焼鈍を順次行い試験体を製作し、該試験体の密度及び磁束密度を測定した。この結果を図4に示す。
【0063】
[結果1]
図3に示すように、実施例1の密度は、比較例1のものに比べて3%高く、実施例1の磁束密度は、比較例1のものに比べて35%高くなった。
【0064】
[考察1]
実施例1の密度が、比較例1のものに比べて高かったのは、絶縁層が一層からなる第二の圧粉磁心用粉末を磁性粉に含めたため、磁性粉末の成分である鉄の占積率が高くなったことによると考えられる。そして、鉄の占積率が高くなったことに起因して、実施例1の試験片(圧粉磁心)の磁束密度も、比較例1のものに比べて、向上したものであると考えられる。
【実施例2】
【0065】
実施例1と同じようにして、磁性粉を製造し、試験体を製作した。実施例1と相違する点は、図5に示すように、第一の圧粉磁心用粉末と、第二の圧粉磁心用粉末との重量比を、3:7〜9:1の範囲(具体的には、第一の圧粉磁心用粉末と第二の圧粉磁心用粉末の割合を、磁性粉に対して90重量%:10重量%、50重量%:50重量%(実施例1に相当)、30重量%:70重量%)にして混合した磁性粉を使用したことである。そして、実施例1と同じようにして、磁束密度を測定すると共に、試験体の比抵抗も合わせて測定した。この結果を図5に示す。なお、図5に示す磁束密度及び比抵抗は、後述する比較例2の磁束密度及び比抵抗値で正規化したものである。
【0066】
[比較例2]
実施例2と同じようにして、磁性粉を製作した。実施例2と相違する点は、磁性粉として、第一の圧粉磁心用粉末のみ(第二の圧粉磁心用粉末を含まない)からなる磁性粉を製作した点(比較例1に相当)である。そして、この磁性粉を用いて、実施例2と同じようにして、圧粉成型、焼鈍を順次行い試験体を製作し、実施例2と同じようにして、磁束密度及び比抵抗を測定した。この結果を図5に示す。
【0067】
[比較例3]
実施例2と同じようにして、磁性粉を製作した。実施例2と相違する点は、磁性粉として、第二の圧粉磁心用粉末のみ(第一の圧粉磁心用粉末を含まない)からなる磁性粉を製作した点である。そして、この磁性粉を用いて、実施例2と同じようにして、圧粉成型、焼鈍を順次行い試験体を製作し、実施例2と同じようにして、磁束密度及び比抵抗を測定した。この結果を図5に示す。
【0068】
[結果2]
実施例2の磁束密度(◇)は、比較例2のもの(●)に比べて高く、実施例2の比抵抗(◇)は、比較例3のものに比べて(◆)高かった。
【0069】
[考察2]
結果2から、実施例2の磁束密度(◇)が、比較例2のもの(●)に比べて高かったのは、絶縁層が一層からなる第二の圧粉磁心用粉末を磁性粉に含めたため、磁性粉末の成分である鉄の占積率が高くなったことによると考えられる。
【0070】
また、実施例2の比抵抗(◇)が、比較例3のもの(◆)に比べて高かった理由は、比較例3の磁性粉には第一の圧粉磁心用粉末を含まないため、磁性粉末の塑性変形にシリカの絶縁層が追従できず破壊されたことによると考えられる。
【0071】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【0072】
たとえば、本実施形態では、磁性粉末の表面に第一絶縁層、第二絶縁層を順次被覆したが、成型時及び焼鈍時に上述した第一絶縁層と第二絶縁層の機能が確保されるのであれば、磁性粉末の表面と第一絶縁層との間、第一絶縁層と第二絶縁層との間に、新たな層を設けてもよく、第一絶縁層と磁心粉末との濡れ性を向上させるための絶縁層をさらに設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】第一実施形態に係る磁性粉を示した模式図を示しており、(a)は、磁性粉に含まれる第一の圧粉磁心用粉末の模式図であり、(b)は、前記磁性粉に含まれる第二の圧粉磁心用粉末の模式図。
【図2】図1に示す第一及び第二の圧粉磁心用粉末を含む磁性粉により圧粉磁心を圧粉成型したときの絶縁層の挙動を説明するための図であり、(a)は、圧粉成型前の磁性粉を示した模式図であり、(b)は成型型内に投入時に圧粉成型前の磁性粉の状態を説明するための模式図であり、(c)、(d)は、成型後の磁性粉の状態を説明するための模式図。
【図3】第二実施形態に係る磁性粉を示した模式図を示しており、(a)は、磁性粉に含まれる第一の圧粉磁心用粉末の模式図であり、(b)は、前記磁性粉に含まれる第二の圧粉磁心用粉末の模式図。
【図4】実施例1、比較例1の試験体の密度及び比抵抗を示した図。
【図5】実施例2、比較例2、比較例3の試験体の磁束密度及び比抵抗を示した図。
【符号の説明】
【0074】
1:磁性粉、10A,10C:第一の圧粉磁心用粉末、10B,10D:第二の磁性粉末、11:磁性粉末、12A,12B:絶縁層、12a,12c:第一絶縁層、12b,12d:第二絶縁層,12c:軟質絶縁層、12f:硬質絶縁層、100:圧粉磁心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粉末の表面に絶縁層が形成された圧粉磁心用粉末を含む磁性粉であって、
前記絶縁層として、前記磁性粉末の表面から前記絶縁層の層厚さ方向に、少なくとも第一絶縁層と第二絶縁層とが順次形成されており、前記第二絶縁層の硬度が前記第一絶縁層の硬度よりも高い第一の圧粉磁心用粉末と、
前記絶縁層として、前記第一の圧粉磁心用粉末の前記第二絶縁層の硬度よりも低い軟質絶縁層が形成された第二の圧粉磁心用粉末と、
を前記圧粉磁心用粉末として少なくとも含むことを特徴とする磁性粉。
【請求項2】
前記第一の圧粉磁心用粉末と前記第二の圧粉磁心用粉末との重量比は、3:7〜9:1の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の磁性粉。
【請求項3】
前記第一絶縁層の硬度及び前記軟質絶縁層の硬度は、前記第一及び第二の圧粉磁心用粉末の磁性粉末の硬度よりも低いことを特徴とする請求項1又は2に記載の磁性粉。
【請求項4】
前記第二絶縁層の硬度は、前記第一及び第二の圧粉磁心用粉末の磁性粉末の硬度よりも高いことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の磁性粉。
【請求項5】
前記第一絶縁層及び前記軟質絶縁層は高分子樹脂からなり、前記第二絶縁層は酸化物からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の磁性粉。
【請求項6】
前記第一絶縁層及び軟質絶縁層はシリコーン樹脂からなり、前記第二絶縁層はシリカからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の磁性粉。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれかに記載の磁性粉により、成型された圧粉磁心。
【請求項8】
磁性粉末の表面に絶縁層が形成された圧粉磁心用粉末を含む磁性粉であって、
前記絶縁層として、前記磁性粉末の表面から前記絶縁層の層厚さ方向に、少なくとも第一絶縁層と第二絶縁層とが順次形成されており、前記第二絶縁層の硬度が前記第一絶縁層の硬度よりも低い第一の圧粉磁心用粉末と、
前記絶縁層として、前記第一の圧粉磁心用粉末の前記第二絶縁層の硬度よりも高い硬質絶縁層が形成された第二の圧粉磁心用粉末と、
を前記圧粉磁心用粉末として少なくとも含むことを特徴とする磁性粉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−164470(P2009−164470A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2277(P2008−2277)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】