説明

磁性粒子分離装置

【課題】磁性粒子jを含む被処理流体を内側周側壁面2gに沿って旋回流動させることでその遠心力により該磁性粒子jを分離するサイクロン式処理容器2を備えた磁性粒子分離装置1において、簡単な構成で該磁性粒子jを確実に分離回収する。
【解決手段】サイクロン式処理容器2の内側周側壁面2gに、下側ほど縮径する逆円錐状部2b,2dを上下2段に亘って形成するとともに、下側逆円錐状部2dの上端の内径がその上側に隣接する上側逆円錐状部2bの下端の内径よりも大きくなるようにし、さらに、該サイクロン式処理容器2の側壁部2iにおける上側逆円錐状部2bの下端部及び下側逆円錐状部2dの上端部に対応する部分に永久磁石10を配設するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性粒子を含む被処理流体を内側周側壁面に沿って旋回流動させることでその遠心力により該磁性粒子を分離するサイクロン式処理容器と、該サイクロン式処理容器の中心部にて上下方向に延び、浄化後の被処理流体を該処理容器外へと導く排出管とを備えた磁性粒子分離装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の磁性粒子分離装置は、工作機械等において切削加工時や研削加工時に生じるスラッジ(加工屑)をクーラント液(被処理流体)から分離・除去するために使用される。
【0003】
具体的には、この磁性粒子分離装置は、サイクロン式処理容器の内側周側壁面が下側ほど縮径する逆円錐状に形成されていて、該サイクロン式処理容器の上部側壁の導入開口から該容器内に導いたクーラント液をその内側周側壁面に沿って旋回流動させることでその遠心力により磁性粒子を該内側壁面近傍に集約して分離する。そして、このクーラント液の旋回流動に伴いその旋回中心部に生じる上昇流によって、磁性粒子を含まない浄化処理されたクーラント液を該旋回中心部に配設された排出管から容器外へと排出する。
【0004】
このような磁性粒子分離装置において、磁性粒子をより効率良く分離・除去するための技術が種々提案されており、例えば特許文献1に示す装置では、サイクロン式処理容器の外周面に沿って上下方向の略全体に亘って磁石を配設することで、旋回流動に伴う遠心力に加えてこの磁石の磁気吸引力でもって磁性粒子をサイクロン式処理容器の内側周側壁面近傍に集約するようにしている。
【0005】
この磁石は、サイクロン式処理容器の外周を囲むリング状の2分割体からなり、各分割体は、エアシリンダ等のアクチュエータ機構により互いに接近/離間する方向に変位可能に構成されている。そして、内側壁面近傍に集約された磁性粒子の量が所定量以上になったときには、アクチュエータ機構により該各分割体を径方向の外側(互いに離間する方向)に変位させて磁性粒子に作用する磁力を弱めることで、該磁性粒子を自重によりサイクロン式処理容器の下側の回収容器へと落下させるようになっている。
【特許文献1】特開2005−21835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の磁性粒子分離装置では、サイクロンのセンターに配置した排出筒の下端の開口部の高さに対して、逆円錐状のサイクロンを下側位置に設けているために、比較的比重の重いものと比較的比重の軽いものとの分離が十分でなく、比較的比重の重いものも排出筒に流れ、装置全体の浄化能力の低下を招くという問題がある。
さらに、サイクロン式処理容器の内側周側壁面に集約された磁性粒子を回収容器へと導くためのアクチュエータ機構を設ける必要があり、このため、装置の大型化及び製造コストの増加を招くという問題がある。
【0007】
また、磁性粒子を自重落下させるべく磁石の各分割体を互いに離間させる方向に変位させると、磁性粒子に作用する磁気吸引力が急激に低下するため、磁性粒子の一部が該落下中にサイクロン式処理容器の中心部の上昇気流に巻き込まれて排出管から容器外へと排出されることとなり、この結果、装置全体の浄化能力の低下を招くという問題がある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、装置全体の小型化及び低コスト化を図りつつ、被処理流体中の磁性粒子を確実に分離除去しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明では、サイクロン式処理容器の内側周側壁面に逆円錐状部を上下方向に複数段に亘って形成するとともに、各逆円錐状部の上端の内径がその上側に隣接する逆円錐状部の下端の内径よりも大きくなるようにし、さらに、該サイクロン式処理容器の側壁部における上下に相隣接する逆円錐状部の境界部を挟んだ上下両側に対応する部分に磁石部材を配設するようにした。
【0010】
具体的には、請求項1の発明では、上下方向に延びる内側周側壁面に、下側ほど縮径する逆円錐状部を形成してなる槽体からなり、磁性粒子を含む被処理流体を該内側周側壁面に沿って旋回流動させることでその遠心力により該磁性粒子を分離するサイクロン式処理容器と、該サイクロン式処理容器の中心部にて上下方向に延び、該サイクロン式処理容器の内外を連通して浄化後の被処理流体を該処理容器外へと導く排出管と、該サイクロン式処理容器の側壁部の上端部に形成され、上記被処理流体を該処理容器内に導入する導入口と、該サイクロン式処理容器の底壁部に形成され、上記分離された磁性粒子を排出する排出口とを備えた磁性粒子分離装置を対象とする。
【0011】
そして、上記サイクロン式処理容器の内側周側壁面には、上記逆円錐状部が上下方向に複数段に亘って互いに隣接して形成され、上記各逆円錐状部の上端の径寸法は、その上側に隣接する逆円錐状部の下端の径寸法よりも大きいものとされ、上記サイクロン式処理容器の側壁部における上下に相隣接する上記逆円錐状部同士の境界部を挟んだ上下両側に対応する部分には、上記被処理流体内の磁性粒子に対して該処理容器の径方向外側に向かう磁気吸引力を作用させる磁石部材が設けられているものとする。
【0012】
この構成によれば、サイクロン式処理容器の内側周側壁面に設けられた各逆円錐状部の下端部(相隣接する逆円錐状部の境界部の上側部分)において、被処理流体にはその流速が最大となることによって大きな遠心力が作用する。このため、被処理流体が各逆円錐状部の下端部を通過してその下側に隣接する逆円錐状部に流入する際には、被処理流体中に含まれる磁性粒子等の重量の重いものは、その遠心力によって径方向外側への力を受けて、当該逆円錐状部の上端部(相隣接する逆円錐状部の境界部の下側部分)の内側周側壁面近傍に集約される。ここで、各逆円錐状部の上端部は、その上側に隣接する逆円錐状部の下端部よりも内径が大きくなっており(つまり拡径しており)、このため、各逆円錐状部の上端部に被処理流体が流入する際には、遠心力を受けた被処理流体中の磁性粒子はその慣性によりこの拡径部(逆円錐状部の上端部)に集約される一方、磁性粒子が除去されたクリーンな被処理流体(浄化後の被処理流体)が該逆円錐状部の中心部付近に残ることとなる。これにより、被処理流体中の磁性粒子を、該各拡径部に集約することができる。
【0013】
ここで、上記逆円錐状部は、上下方向に隣接して複数段設けられており、このため、各逆円錐状部の下端部にて、予め、比重の重い磁性粒子を遠心力により分離しておいて、この分離状態のまま被処理流体を、次段の逆円錐状部の上端部(拡径部)に流入させてその旋回流動半径を急拡させることで、比重の重い磁性粒子を、径方向外側に一気に流動させて集約する(拡径部に集約する)ことができるとともに、比重の軽いクリーンな被処理流体を中心部に残してその分離を促進することができる。また、逆円錐状部の上端部に流入した被処理液は、直ぐに該逆円錐状部により渦流(旋回流動)されるので、該逆円錐状部を1段だけ設けるようにした場合に比べて、被処理流体に作用する遠心力を十分に高めることができる。このため、上記各拡径部に集約される磁性粒子の集約量を格段に高めて該磁性粒子を団塊状にすることができる。これにより、磁性粒子を回収するための回収装置(アクチュエータ機構等)を別途設けることなく、上記集約された磁性粒子をその自重により落下させて上記排出口から排出させることができる。したがって、磁性粒子の回収を容易に且つ確実に行うことができる。
【0014】
また、本発明では、上記サイクロン式処理容器の側壁部における上記相隣接する逆円錐状部の境界部を挟んで上下両側に対応する部分には磁石部材が設けられている。こうすることで、被処理流体が該逆円錐状部の下端部(相隣接する逆円錐状部の境界部の上側部分)を通過する際には、該被処理流体中の磁性粒子を磁石部材の磁気吸引力により逆円錐状部の側壁部側(径方向外側)に引き寄せて分離し易い状態にすることができる。したがって、この分離後の被処理流体が上記逆円錐状部の下端部を通過してその下側に隣接する逆円錐状部の上端部(拡径部)に流入する際に、該被処理流体中の磁性粒子に対して磁石部材の磁気吸引力をより一層確実に作用させることができる。したがって、被処理流体中の磁性粒子を上記拡径部に確実に集約させて団塊化することが可能となり、この結果、磁性粒子の自重落下による回収をより一層確実に行うことができる。
【0015】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記逆円錐状部のうち少なくとも1つの逆円錐状部の下端の高さ位置は、上記排出管の下端側の開口よりも高い位置にあるものとする。
【0016】
この構成によれば、排出管の下端側の開口よりも上側の位置に、少なくとも一つの逆円錐状部が設けられることとなる。このため、磁性粒子を含む被処理流体を拡径部にて一気に拡大流動させて、磁性粒子が分離除去された後の中心部に残ったクリーンな被処理流体を排出管の該開口から確実に排出することができる。
【0017】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、上記排出管の下端側の開口の高さ位置は、上下に相隣接する上記逆円錐状部同士の境界部の高さ位置と同じか又はその近傍に位置しているものとする。
【0018】
こうすることで、被処理流体中の磁性粒子をより一層確実に分離することができる。すなわち、各逆円錐状部で分離されて団塊化された磁性粒子は、自重により各逆円錐状部の内側周側壁面に沿って下側に落下するとともにその下側の逆円錐状部に流入する際に強い遠心力により上記拡径部に集約され、この落下と集約とを繰り返すことで逆円錐状部の拡径部(該逆円錐状部の上端部)に集約される。ここで、排出管の下側の開口の高さ位置が、この磁性粒子が集約される部分から遠い位置にあると、被処理流体の旋回中心部(逆円錐状部の中心部)に残ったクリーンな流体が、排出管の下側開口に到達するまでに該分離した磁性粒子と混ざり合うこととなって、装置全体の分離効率が低下する。これに対して、本発明では、該開口の高さ位置を上下に相隣接する逆円錐状部同士の境界部の高さ位置と同じか又はその近傍とすることで、磁性粒子の集約箇所と該排出管の開口とを極力近づけることができて、被処理流体中の磁性粒子の分離効率を確実に向上させることが可能となる。
【0019】
請求項4の発明では、請求項1乃至3のいずれか一つの発明において、上記磁石部材は、上記サイクロン式処理容器の側壁部における上記相隣接する逆円錐状部同士の境界部の上下両側の該境界部近傍に対応する部分にのみ設けられているものとする。
【0020】
この構成によれば、上記拡径部に集約される磁性粒子をより一層確実に団塊化することができる。すなわち、磁石部材を、例えばサイクロン式処理容器の側壁部の上下方向の全体に亘って配設したとすると、磁石部材の磁気吸引力により該処理容器の内側周側壁面に吸着される磁性粒子は、該内側周側壁面の上下方向の全体に亘って分布することとなり、この結果、磁性粒子が団塊化され難くなるという問題があるが、本発明によれば、磁性粒子を、相隣接する逆円錐状部間の境界部の上下両側近傍においてのみ集約することができて、該磁性粒子の団塊化を促進することができる。よって、請求項1の発明と同様の作用効果をより一層確実に得ることができる。
【0021】
請求項5の発明では、請求項1乃至4のいずれか一つの発明において、上記サイクロン式処理容器の内側周側壁面における上記相隣接する逆円錐状部の境界部は、下側に向かうほど拡径する円錐状部からなるものとする。
【0022】
この構成によれば、被処理流体が逆円錐状部の下端部から逆円錐状部の上端部に流入する際に、その流路断面積をなだらかに変化させることができる。こうすることで、流路断面積が急激に変化して被処理流体の流れが乱されるのを防止し、延いては、上記団塊化した磁性粒子がこの乱れた流れにより粉砕されるのを確実に防止することができる。
【0023】
請求項6発明では、請求項1乃至5のいずれか一つの発明において、上記磁石部材は、複数の永久磁石からなり、上記サイクロン式処理容器の周方向に等間隔に配置されているものとする。
【0024】
こうすることで、被処理流体中の磁性粒子に対して、サイクロン処理容器の側壁部側に向かう磁気吸引力を均一に作用させることができ、磁性粒子の分離効率を可及的に向上させることができる。
【0025】
また、請求項7の発明では、請求項6の発明において、上記永久磁石における上記サイクロン式処理容器の半径方向外側には、ヨークが配置されているものとする。
【0026】
この構成によれば、ヨークにより永久磁石の磁気吸引力をより一層強化することができ
、磁性粒子の分離効率を可及的に向上させることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明の磁性粒子分離装置によると、サイクロン式処理容器の内側周側壁面に、下側ほど縮径する逆円錐状部を上下方向に複数段に亘って形成するとともに、各逆円錐状部の上端の内径がその上側に隣接する逆円錐状部の下端の内径よりも大きくなるようにし、さらに、該サイクロン式処理容器の側壁部における上下に相隣接する逆円錐状部の境界部を挟んだ上下両側に対応する部分に磁石部材を配設するようにしたことで、磁性粒子を各円錐状部の上端部(拡径部)に確実に分離集約させて自重落下させることができる。したがって、分離された磁性粒子を回収するための装置を別途設けることなく、被処理流体中の磁性粒子を確実に分離回収することができ、装置全体の製造コストを大幅に削減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
(実施形態1)
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る磁性粒子分離装置1を示し、該磁性粒子分離装置1は、研削加工や切削加工や研磨加工等の各種機械加工を行うための機械加工機において、切削液(被処理流体)の中に混入する切粉(すなわち磁性粒子)或いは切粉と砥粒との溶着したもの等からなる切削屑と、切削液とを分離し、切削屑を分離回収する場合に適用したものである。
【0030】
上記磁性粒子分離装置1は、ステンレス、アルミニウムや樹脂等の非磁性体からなるサイクロン式処理容器2と、サイクロン式処理容器2内の浄化後の被処理流体を該処理容器2外(磁性粒子分離装置1外)へと排出する筒状排出管6とを備えており、該サイクロン式処理容器2は、上端部が閉塞された略円筒状の本体部2aと、該本体部2aの下端部に接続される略円筒状の流体渦流部2eとで構成されている。
【0031】
このサイクロン式処理容器2は、上下方向に延びる内側周側壁面2gに、逆円錐状部2b,2dを形成した槽体からなるものであって、後述するように、磁性粒子を含む被処理流体を該内側周側壁面2gに沿って旋回流動させることでその遠心力により該磁性粒子jを分離する。
【0032】
より詳細には、サイクロン式処理容器2の内側周側壁面2gは、その上端部に形成されて内径が上下方向の全体に亘って略一定となる円筒状部2fと、該円筒状部2fの下側に連設され、下側ほど内径が小さくなる上記上側逆円錐状部2bと、該上側逆円錐状部2bに隣接してその下側に形成された下側逆円錐状部2dと、両逆円錐状部2b,2d同士を接続する円錐状部2cとからなる。該円筒状部2f、両逆円錐状部2b,2d、及び円錐状部2cの軸心は一致しており、この軸心が、サイクロン式処理容器2の中心軸50とされる。そして、この中心軸50は、被処理流体の旋回中心軸に略一致している。尚、円筒状部2fは、上記本体部2aの内側周側壁面とされ、両逆円錐状部2b,2d及び円錐状部2cは、上記流体渦流部2eの内側周側壁面とされている。
【0033】
上記円筒状部2fの上端部(つまりサイクロン式処理容器2の上端部)には、上記サイクロン式処理容器2内に被処理流体を導入するための導入口3が形成されている。この導入口3は、上側から見て該円筒状部2fに対してその接線方向から貫通して開口するとともに、該開口から処理容器2内に流入する被処理流体を該円筒状部2fの中心軸(処理容器2の中心軸50)周りに旋回流動させるように構成されている。
【0034】
上側逆円錐状部2bの上端部は、該上端部を除く部分に比べて、内径の減少率が大きくなるように形成されている。こうすることで、上記導入口3からサイクロン式処理容器2内に流入した被処理流体を確実にかつ強力に渦流することができる。
【0035】
上記下側逆円錐状部2dの上端の内径は、上側逆円錐状部2bの下端の内径よりも大きくなっており(つまり拡径している)、後述するように、この下側逆円錐状部2dの上端部に磁性粒子が分離集約されるようになっている。
【0036】
上記下側逆円錐状部2dの上端と上側逆円錐状部2bの下端とは、下側ほど拡径する上記円錐状部2cを介して接続されている。下側逆円錐状部2dの下端(つまりサイクロン式処理容器2(流体渦流部2e)の底壁面)には、磁性粒子jを排出するための排出口4が設けられている。これら両逆円錐状部2b,2d及び円錐状部2cを構成する流体渦流部2eは、円筒外筒5に嵌合挿入されて着脱可能になっている。尚、円筒外筒5はステンレス、合成樹脂等の非磁性体で構成するが、永久磁石10の磁力の作用上で影響が無ければ、鋼管としてもよい。また、本体部2a及び流体渦流部2eは互いに別体で構成しているが、一体でもよい。
【0037】
円筒外筒5は、その上端部の外周面に形成された雄ねじ部9bを本体部2aの下端部に形成された雌ねじ部9aに螺合してねじ込み固定されている。流体渦流部2eの上端面の外周縁、及び、円筒外筒5の上端面の内周縁は共に面取り加工が施されていて、両面取り面によりV字状の溝部が形成され、この溝部にOリング8がセットされている。こうすることで、本体部2aと流体下流部2eとの接続部から被処理流体が漏出するのを防止している。特に、円筒外筒5の上端部がねじ込まれて本体部2aの下端部に押しつけられ、且つ流体渦流部2eの上端面がスプリング(図示省略)で上方に押しつけられることで、組み付けでき且つシールできるので、組付性及びメンテナンス性に優れる
サイクロン式処理容器2の中心部には、上下方向に延びる筒状排出管6が配設されている。筒状排出管6の下端部に設けられた流体排出口7の高さ位置は、下側逆円錐状部2dの上端とほぼ同じ高さ位置か、その近傍(例えば、下側逆円錐状部2dの上端よりも上側で上側逆円錐状部2bの下端よりも下側)に位置するように設けられている。
【0038】
また、流体排出口7が設けられた下端部の外周面は僅かに外側に拡径して設けられており、流体に、より確実に遠心力が作用するようにしてある。しかし、場合によれば、下端部は筒状排出管6の本体部分と同径のままでもよい。
【0039】
上記サイクロン式処理容器2(流体渦流部2e)の外側周側壁面2h(側壁部2iの外周面)における上側逆円錐状部2bの下端部に対応する部分には、周方向に互いに所定間隔を隔てて並ぶ複数の凹部11(本実施形態では8つの凹部11)からなる上段凹部列16が形成されており、同様に、下側逆円錐状部2dの上端部に対応する部分には、8つの凹部12からなる下段凹部列17が形成されている。そして、各凹部列16,17の各凹部11,12にはそれぞれ、磁石部材としての永久磁石10及びヨーク20が嵌め込まれている。永久磁石10及びヨーク20は、矩形状の薄板からなり、ヨーク20は、永久磁石10の容器2径方向外側を覆うように該磁石10の裏側(径方向外側)面に重合して配設されている。そして、このヨーク20を設けることによって、該永久磁石10の磁気吸引力をより一層強めることができる。すなわち、ヨーク20を永久磁石10の径方向外側に配置することで、径方向外側に作用する透磁率を阻止することができるので、永久磁石10の径方向内側に作用する磁力が強くなる。したがって、永久磁石10のコンパクト化を図ることができる。また、永久磁石10の径方向外側に、鉄製部材等の強磁性体を配設したとしても該強磁性体に対して永久磁石10から磁気吸引力が作用することもない。このため、サイクロン式処理容器2やその周辺装置を設計する際の設計自由度を高めることができる。
【0040】
各永久磁石10は、図3に示すように、半径方向内側がN極になるものとS極になるものとが、上側から見て時計方向に略12時の位置からN極、N極、S極、N極、S極、S極、N極、S極と配設されている。このことによって、対向する永久磁石10同士が引き合う磁極関係(N極とS極)になるように配設されている。このように、対向する永久磁石10が互いに引き合うように異なる磁極からなることよって、半径方向内側に向かう磁力が強力になり、磁性粒子jが強力に側壁の内側周側壁面2gに吸着される。尚、図3では、下段凹部列17に設けられた各永久磁石10の配置を示すが、上段凹部列16の各永久磁石10の配置も下段凹部列17における永久磁石10の配置と同様であるものとする。
【0041】
以上のように構成された磁性粒子分離装置1における磁性粒子jの分離回収動作について説明する。
【0042】
上記のように、上段凹部列16及び下段凹部列17に嵌め込まれた各永久磁石10は、径方向に相対向する永久磁石10との間で互いに引き付け合う関係にあり、このため、上側逆円錐状部2bの下端部及び下側逆円錐状部2dの上端部においては、それぞれの中心部(軸心部)に、常に、径方向の一側に向かう強力な磁力が作用する状態となる。
【0043】
この状態で、磁性粒子jを含む被処理流体が、高速で、接線方向に導入口3からサイクロン式処理容器2内に導入される。導入された被処理流体は、本体部2aの円筒状部2fにて旋回運動を行う。
【0044】
本体部2aの内部では、導入された被処理流体が本体部2a内(円筒状部2f)を旋回運動することにより旋回流が生じ、逆円錐状部2bに導かれる。そして、被処理流体は、逆円錐状部2bの下端部にて、その旋回流の速度が略最大となり、被処理流体中の磁性粒子jには、大きな遠心力が作用する。そして、上記のように、上側逆円錐状部2bの下端部においては、径方向外側に向かう強い磁気吸引力が作用しているため、被処理流体中の磁性粒子jには、径方向外側へと向かう強い遠心力に加えて該磁気吸引力が作用することとなり、この結果、該磁性粒子jは、側壁面2g側(径方向外側)に分離される一方、磁性粒子jを含まないクリーンな流体は上側逆円錐状部2bの中心部に残ることとなる。
【0045】
そうして、被処理流体は、磁性粒子jが側壁面2g側に偏って分離された状態のまま円錐状部2cに導かれる。
【0046】
円錐状部2cにおいては、被処理流体の旋回流速は若干低下するものの、上記のように、磁性粒子jは、既に側壁面2g側に偏った状態にあって遠心力が作用し易い状態となっているので、径方向外側へとさらに移動する。
【0047】
そうして、円錐状部2cを通過した被処理流体中の磁性粒子jは、下側逆円錐状部2dの上端部に流入すると、下段凹部列17に嵌入された永久磁石10から径方向外側へと向かう磁気吸引力を受けて下側逆円錐状部2dの上端部に分離集約される。
【0048】
そして、下側逆円錐状部2dに流入した被処理流体は、直ぐに旋回流動(渦流)を開始するとともに、中心部の被処理流体には上向き軸方向の力が作用して、流体排出口7から筒状排出管6を通ってクリーンな液体として装置1外に排出される。一方、上記下側逆円錐状部2dの上端部に分離集約された磁性粒子jは、いずれ団塊状になってその自重により下側逆円錐状部2dの傾斜面に沿って落下し、排出口4から排出され、該排出された磁性粒子jは、図示しない回収容器内に回収される。
【0049】
以上の如く上記実施形態1では、上記サイクロン式処理容器2の内側周側壁面2gには、下側ほど内径が小さくなる逆円錐状部2b,2dが上下2段に亘って形成されている。
【0050】
これにより、上側逆円錐状部2bの下端部を通過して下側逆円錐状部2dに流入した被処理流体は、直ぐに旋回流動(渦流)し始めることとなるので、上側逆円錐状部2bの下端部において被処理流体(磁性粒子j)に作用する遠心力を格段に向上させることができる。したがって、磁性粒子jを下側逆円錐状部2dの上端部に確実に分離集約して団塊化することができ、これによって、磁性粒子jの自重による落下を促進することができる。したがって、磁性粒子jを回収容器内(排出口4)に導くための装置を別途設けることなく、磁性粒子jを容易に且つ確実に回収することができる。
【0051】
また、上記実施形態1では、サイクロン式処理容器2の側壁部2iにおける上側逆円錐状部2bの下端部(両逆円錐状部2b,2dの境界部(円錐状部2c)の上側近傍に対応する部分)及び下側逆円錐状部2dの上端部に対応する部分(両逆円錐状部2b,2dの境界部(円錐状部2c)の下側近傍に対応する部分)にのみ、永久磁石10が設けられている。
【0052】
これにより、両逆円錐状部2b,2dの境界部(円錐状部2c)の上下両側近傍においてのみ集約することができ、延いては、該磁性粒子jの団塊化を促進することができる。よって、磁性粒子jの回収を可及的に容易化することができる。
【0053】
また、上記実施形態1では、サイクロン式処理容器2の内側周側壁面2gには、下側に向かうほど拡径して、上側逆円錐状部2bの下端と下側逆円錐状部2dの上端とを接続する円錐状部2cが形成されている。
【0054】
これによれば、被処理流体が上側逆円錐状部2bの下端部から下側逆円錐状部2dの上端部に流入する際に、その流路断面積をなだらかに変化させることができる。したがって、流路断面積が急激に変化して被処理流体の流れが乱されるのを防止し、延いては、上記団塊化した磁性粒子jがこの乱れた流れにより粉砕されるのを確実に防止することができる。
【0055】
また、上記実施形態1では、上記筒状排出管6の下端部の流体排出口7(下端側の開口)の高さ位置は、下側逆円錐状部2dの上端部に位置している。
【0056】
こうすることで、磁性粒子jが集約される箇所である下側逆円錐状部2dの上端部と、筒状排出管6の下端部の流体排出口7とを極力近づけることができる。したがって、下側逆円錐状部2dの中心部のクリーンな流体が、流体排出口7から筒状排出管6内に導かれる際に上記団塊化した磁性粒子jと混ざり合うのを確実に防止することができる。したがって、装置1全体の磁性粒子jの分離効率を可及的に向上させることができる。
【0057】
(実施形態2)
図4は、本発明の実施形態2を示し、サイクロン式処理容器2の上側に浮上物回収タンク15を設けるようにしたものである。尚、図1と実質的に同じ構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明を適宜省略する。すなわち、磁性粒子分離装置1は、ステンレス、アルミニウムや樹脂等の非磁性体からなるサイクロン式処理容器2と、該サイクロン式処理容器2の上側に配設される浮上物回収タンク15と、サイクロン式処理容器2内の浄化後の被処理流体を該処理容器2外(磁性粒子分離装置1外)へと排出する筒状排出管6とを備えており、該サイクロン式処理容器2及び浮上物回収タンク15は、上端部が閉塞された略円筒状の本体部2aと、該本体部2aの下端部に接続される略円筒状の流体渦流部2eとで構成されている。より具体的には、本体部2aの内側空間13は、仕切り板18により上下に仕切られており、この仕切り板18がサイクロン式処理容器2の上壁部を構成するとともに、浮上物回収タンク15の底壁部を構成している。
【0058】
上記浮上物回収タンク15は、サイクロン式処理容器2内の上部に浮上した比較的比重の小さい浮上物(例えば、比重の軽い磁性粒子、油成分、浮遊カーボン、浮遊ゴミ等であり、以下浮上物と称す)を回収するためのものであり、浮上物回収タンク15の内側周側壁面15aは、上記サイクロン式処理容器2の円筒状部2fと同軸の円筒状をなしていて、上下方向において径寸法が略一定となるように形成されている。
【0059】
また、浮上物回収タンク15の内側周側壁面15aには、回収した浮上物を含む被処理流体を該回収タンク15外(装置1外)へと排出するための浮上物排出口21が形成されている。この浮上物排出口21は、図5に示すように、上側から見て該回収タンク15の内側周側壁面15aに対してその接線方向から貫通して開口している。
【0060】
上記浮上物回収タンク15の底壁部(つまりサイクロン式処理容器2の上壁部)を構成する仕切り板18には、該処理容器2の上部に浮上した浮上物を浮上物回収タンク15内に導くための回収用貫通孔が形成されている。
【0061】
この回収用貫通孔は、複数のスリット状孔19からなり、各スリット状孔19は、上側から見てサイクロン式処理容器2(円筒状部2f)の中心部側から径方向外側に延びるとともに、該処理容器2の中心軸50(円筒状部2fの中心軸)周りに周方向に等間隔(本実施形態では90°間隔)に配設されている。
【0062】
各スリット状孔19は、仕切り板18の該各スリット状孔19に対応する部分を切り欠いて下側に折り曲げることで形成されている。該仕切り板18の該折り曲げた部分である折曲げ片20は、各スリット状孔19から回収タンク15内へと浮上物を案内する案内用折曲げ片20a(本実施形態では、4つの折曲げ片20のうちの3つ)と、仕切り板18の下面近傍の流れ(サイクロン式処理容器2内の上端部の流れ)を整流するための整流用折曲げ片20bとで構成されている。
【0063】
上記案内用折曲げ片20aは、仕切り板18のスリット状孔19に対応する部分をその幅方向の旋回下流側(被処理流体の旋回方向の下流側であって、図6の右側)の側縁部に沿って折り曲げることで形成されている。換言すると、各案内用折曲げ片20aの基端部は、スリット状孔19の幅方向の旋回下流側の側縁部に接続されている。そして、各案内用折曲げ片20aは、該基端部から下側に向かって被処理流体の流れる向きとは逆向きに傾斜している。すなわち、案内用折曲げ片20aは、下側に行くにしたがって旋回上流側に傾斜するように形成されている。
【0064】
上記整流用折曲げ片20bは、仕切り板18のスリット状孔19に対応する部分をその幅方向の旋回上流側(被処理流体の旋回方向の上流側であって、図7の左側)の側縁部に沿って折り曲げることで形成されている。整流用折曲げ片20bは、上記案内用折曲げ片20aの傾斜方向とは逆に、その基端部から下側に向かって被処理流体の流れる向きに傾斜している。すなわち、整流用折曲げ片20bは、下側に行くにしたがって被処理流体の旋回下流側に傾斜するように形成されている。
なお、実施形態1では、案内用折曲げ片20aと整流用折曲げ片20bとを設けたが、旋回流の渦流形成状態によれば、案内用折曲げ片20aだけとして、整流用折曲げ片20bを省略することもあり得る。
【0065】
上記筒状排出管6(図1参照)は、サイクロン式処理容器2及び浮上物回収タンク15の中心部を通って上下方向に延びるとともに、該処理容器2の内外を連通することで該処理容器2内のクリーンな被処理流体を該処理容器2外(装置1外)へと導くように構成されている。
【0066】
より詳細には、筒状排出管6は、その下端部がサイクロン式処理容器2内に位置していて、そこから上側に向かって延びるとともに、該処理容器2の上壁部(仕切り板18であって浮上物回収タンク15の底壁部)及び浮上物回収タンク15の上壁部(本体部2aの上端部)を貫通して該処理容器2外(装置1外)へと延設されている。換言すると、上記筒状排出管6は、浮上物回収タンク15を串刺すようにその中心部を通って上下方向に延設されている。筒状排出管6の下端部の開口7(以下、流体排出口7という)の高さ位置は、下側逆円錐状部2dの上端とほぼ同じ高さ位置か、その近傍(例えば、下側逆円錐状部2dの上端よりも上側で上側逆円錐状部2bの下端よりも下側)に位置しており、後述するように、磁性粒子が除去されたクリーンな被処理流体は、該流体排出口7から筒状排出管6内を通って装置1外へと導かれる。
【0067】
以上のように構成された磁性粒子分離装置1における磁性粒子jの分離回収動作について説明する。
【0068】
先ず、磁性粒子jを含む被処理流体が、高速で、導入口3(図1参照)からサイクロン式処理容器2内に導入される。導入された被処理流体は、該処理容器2の内側周側壁面2gの円筒状部2fに沿って上記筒状排出管6周りに旋回運動することで旋回流が生じる。ここで、被処理流体中に含まれる比重の小さい浮上物は、これを浮上させようとする浮力の影響が遠心力の影響を上回って、処理容器2内の上部に浮上集約されることとなる。この浮上集約された浮上物は、被処理流体が筒状排出管6周りに旋回流動する過程で、スリット状孔19(図5参照)から浮上物回収タンク15内へと流入する。より具体的には、サイクロン式処理容器2内の上端部(仕切り板18の下面18a近傍)に集約された浮上物は、被処理流体の旋回流動により該処理流体と共にその旋回上流側から旋回下流側へと流れる中で、上記案内用折曲げ片20aの案内面20j(図6参照)に衝突することでその進路を上方へと変更し、回収タンク15内へと導かれる。回収タンク15内へと導かれた浮上物を含む被処理流体は、その旋回慣性により該回収タンク15内においてもその内側周側壁面15aに沿って上記筒状排出管6周りに旋回流動して、上記浮上物排出口21から接線方向に排出され、装置1外へと導かれる。
【0069】
一方、上記導入口3からサイクロン式処理容器2内に流入した被処理流体のうち、回収タンク15内に流入しなかった残りの流体(つまり比重の小さい浮上物が除去された被処理流体)は、上側逆円錐状部2b及び下側逆円錐状2dに導かれて渦流されることで、比重の大きな磁性粒子jが分離除去されることとなる。
【0070】
以上の如く上記実施形態2では、サイクロン式処理容器2の上側には、底壁部が該処理容器2の上壁部(つまり仕切り板18)で構成された浮上物回収タンク15が設けられ、該仕切り板18には、浮上物を該回収タンク15内へと導くためのスリット状孔19(回収用貫通孔)が形成されている。
【0071】
こうすることで、処理容器2内に流入した被処理流体を流体渦流部2eにて遠心分離処理する前に、該被処理流体中に含まれる比重の小さい浮上物を該処理容器2の上部に浮上させて、スリット状孔19から浮上物回収タンク15内へと導くことができる。したがって、流体渦流部2eにおける遠心分離処理では除去しきれない比重の小さな浮上物をも確実に除去することができて、装置1全体の浮上物や磁性粒子jの除去効率を向上させることができる。
【0072】
また、上記実施形態2では、仕切り板18の下面18aには、該仕切り板18の該スリット状孔19に対応する部分を切欠いて下側に折り曲げることにより形成される案内用折曲げ片20a及び整流用折曲げ片20bが設けられており、案内用折曲げ片20aは、その基端部から下側に行くにしたがって旋回上流側に傾斜するように形成されている。これにより、サイクロン式処理容器2内の上部に浮上した浮上物を該案内用折曲げ片20aの案内面20jに沿って浮上物回収タンク15内に確実かつ容易に案内することができる。
【0073】
また、整流用折曲げ片20bは、その基端部から下側に行くにしたがって旋回下流側に傾斜するように形成されている。これにより、仕切り板18の下面近傍の被処理流体が、案内用折曲げ片20aに衝突することで乱れた流れを、該整流用折曲げ片20bの下面20kで押さえ込むようにして整流することができる。したがって、該被処理流体の流れが乱れることに起因して浮上物の挙動が乱れるのを防止することができ、延いては、該浮上物を上記案内用折曲げ片20aにより浮上物回収タンク15内へと確実に案内することができる。
【0074】
また、上記実施形態2では、浮上物回収タンク15の内側周側壁面15aは、サイクロン式処理容器2の円筒状部2fと略同軸に形成された略円筒状をなしており、筒状排出管6は、浮上物回収タンク15を串刺すようにその中心部を通って上下方向に延設されている。
【0075】
こうすることで、スリット状孔19から回収タンク15内へと流入した被処理流体を、その旋回慣性を持続したまま、筒状排出管6周りに旋回流動させることができる。よって、回収タンク15内の被処理流体が流体抵抗となることでスリット状孔19から該回収タンク15内への被処理流体(延いては浮上物)の流入が妨げられるのを確実に防止することができる。
【0076】
また、上記実施形態2では、浮上物排出口21は、上側から見て浮上物回収タンク15の内側周側壁面15aに対してその接線方向に貫通して開口している。これにより、該回収タンク15内に流入してその内側周側壁面15aに沿って旋回流動する被処理流体を、旋回接線方向に高速で確実に排出することができる。したがって、該回収タンク15内の被処理流体の排出性能を十分に高めることができて、該回収タンク15内の被処理流体が流体抵抗となるのを確実に防止することができる。
【0077】
(実施形態3)
図8は、本発明の実施形態3を示し、ヨーク20の形状を上記実施形態2とは異ならせたものである。尚、図4と実質的に同じ構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明を適宜省略する。すなわち、本実施形態では、ヨーク20は、永久磁石10の容器2径方向外側面を覆うのみならずその周壁面を囲むように形成されている。こうすることで、永久磁石10から容器2径方向外側へと漏れる磁力をより確実に遮断することができ、延いては、該永久磁石10から処理容器2内の磁性粒子jに作用する磁気吸引力をより一層強めることができる。したがって、下側逆円錐状部2dの上端部に磁性粒子jを効率的に且つ確実に分離集約することができる。よって、上記実施形態2と同様の作用効果を確実に得ることができる。
【0078】
(他の実施形態)
本発明の構成は、上記各実施形態に限定されるものではなく、それ以外の種々の構成を包含するものである。すなわち、上記各実施形態では、逆円錐状部2b,2dは、サイクロン式処理容器2の内側周側壁面2gに上下2段に亘って形成されているが、必ずしも2段にする必要はなく、3段以上であってもよい。
【0079】
また、上記各実施形態では、永久磁石10は、サイクロン式処理容器2の側壁部2iにおける上側逆円錐状部2bの下端部及び下側逆円錐状部2dの上端部に対応する部分にのみ設けられているが、これに限ったものではなく、例えば、上側逆円錐状部2bの下端部と下側逆円錐状部2dの上端部に対応する部分とに跨って(つまり両逆円錐状部2b,2dの境界部に対応する部分をも含むように)永久磁石10を配設するようにしてもよい。
【0080】
また、上記実施形態2では、サイクロン式処理容器2の上側に浮上物回収タンク15が設けられているが、必ずしも設ける必要はない。
上記実施形態では、下側逆円錐状部2dの内壁に吸着した磁性粒子は自重で落下するが、更に吸着した磁性粒子の落下を促進したい場合には、磁石部材の磁力を弱める機構、例えば、磁石部材及び/またはヨークを上下動させるような機構を設けて積極的に分離除去するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、磁性粒子を含む被処理流体を内側周側壁面に沿って旋回流動させることでその遠心力により該磁性粒子を分離するサイクロン式処理容器と、該サイクロン式処理容器の中心部に沿って上下方向に延び、浄化後の被処理流体を該処理容器外へと導く排出管とを備えた磁性粒子分離装置に有用であり、特に、工作機械等において切削加工時や研削加工時に生じるクーラント液(被処理流体中)のスラッジ(磁性粒子)を分離除去するための装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施形態1に係る磁性粒体分離装置を示す模式図である。
【図2】図1の要部拡大図を示す。
【図3】永久磁石の配設状態を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態2を示す図1相当図である。
【図5】図4のV-V線断面図である。
【図6】図5のVI-VI線断面図である。
【図7】図5のVII-VII線断面図である。
【図8】本発明の実施形態3を示す図1相当図である。
【符号の説明】
【0083】
j 磁性粒子
1 磁性粒子分離装置
2 サイクロン式処理容器
2b 上側逆円錐状部(円錐状部)
2c 円錐状部(境界部)
2d 下側逆円錐状部(円錐状部)
2i 側壁部
3 導入口
4 排出口
6 筒状排出管(排出管)
7 筒状排出管の流体排出口(排出管の下端側の開口)
10 永久磁石(磁石部材)
20 ヨーク(磁石部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる内側周側壁面に、下側ほど縮径する逆円錐状部を形成してなる槽体からなり、磁性粒子を含む被処理流体を該内側周側壁面に沿って旋回流動させることでその遠心力により該磁性粒子を分離するサイクロン式処理容器と、該サイクロン式処理容器の中心部にて上下方向に延び、該サイクロン式処理容器の内外を連通して浄化後の被処理流体を該処理容器外へと導く排出管と、該サイクロン式処理容器の側壁部の上端部に形成され、上記被処理流体を該処理容器内に導入する導入口と、該サイクロン式処理容器の底壁部に形成され、上記分離された磁性粒子を排出する排出口とを備えた磁性粒子分離装置であって、
上記サイクロン式処理容器の内側周側壁面には、上記逆円錐状部が上下方向に複数段に亘って互いに隣接して形成され、
上記各逆円錐状部の上端の径寸法は、その上側に隣接する逆円錐状部の下端の径寸法よりも大きいものとされ、
上記サイクロン式処理容器の側壁部における上下に相隣接する上記逆円錐状部同士の境界部を挟んだ上下両側に対応する部分には、上記被処理流体内の磁性粒子に対して該処理容器の径方向外側に向かう磁気吸引力を作用させる磁石部材が設けられていることを特徴とする磁性粒子分離装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁性粒子分離装置において、
上記逆円錐状部のうち少なくとも1つの逆円錐状部の下端の高さ位置は、上記排出管の下端側の開口よりも高い位置にあることを特徴とする磁性粒子分離装置。
【請求項3】
請求項2記載の磁性粒子分離装置において、
上記排出管の下端側の開口の高さ位置は、上下に相隣接する上記逆円錐状部同士の境界部の高さ位置と同じか又はその近傍に位置していることを特徴とする磁性粒子分離装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁性粒子分離装置において、
上記磁石部材は、上記サイクロン式処理容器の側壁部における上記相隣接する逆円錐状部同士の境界部を挟んだ上下両側の該境界部近傍に対応する部分にのみ設けられていることを特徴とする磁性粒子分離装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の磁性粒子分離装置において、
上記サイクロン式処理容器の内側周側壁面における上記相隣接する逆円錐状部同士の境界部は、下側に向かうほど拡径する円錐状部からなることを特徴とする磁性粒子分離装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の磁性粒子分離装置において、
上記磁石部材は、複数の永久磁石からなり、上記サイクロン式処理容器の周方向に等間隔に配置されていることを特徴とする磁性粒子分離装置。
【請求項7】
請求項6記載の磁性粒子分離装置において、
上記永久磁石における上記サイクロン式処理容器の半径方向外側には、ヨークが配置されていることを特徴とする磁性粒子分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−297677(P2009−297677A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156945(P2008−156945)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(594190574)岡野機工株式会社 (19)
【Fターム(参考)】